(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6037892
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】保護膜の厚さ測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-35616(P2013-35616)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-165361(P2014-165361A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦充
(72)【発明者】
【氏名】西野 曜子
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012-104533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークをレーザー加工する際に発生する加工屑から該板状ワークを保護するために該板状ワークの表面に被膜された水溶性樹脂による保護膜の厚みを測定する保護膜の厚さ測定方法であって、
該水溶性樹脂は、酸性またはアルカリ性を示しており、
pH試験紙の色調と該保護膜の厚みとの相関関係を生成する相関関係生成工程と、
pH試験紙に水を含浸させるpH試験紙含浸工程と、
該pH試験紙含浸工程で水が含浸された該pH試験紙を板状ワークの表面に被膜された該保護膜に載置するpH試験紙載置工程と、
該pH試験紙載置工程において該保護膜に所定時間載置された該pH試験紙の色調によって該相関関係生成工程で生成された該相関関係に基づいて該保護膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、からなる保護膜の厚さ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の表面を保護する保護膜の厚さを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSIなどのデバイスが格子状のストリートによって区画され表面に形成されたシリコン等の半導体ウエーハは、個々のデバイスに分割された後、携帯電話機やパソコンなどの各種電気機器に組み込まれて利用される。半導体ウエーハを個々のデバイスに分割する方法としては、ストリートに沿って切削ブレードにより半導体ウエーハを切削する方法がある。また、ストリートに沿ってパルスレーザー光を照射することによりレーザー加工溝を半導体ウエーハに形成した後、レーザー加工溝に沿って板状ワークを個々のデバイスに分割する方法も提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
半導体ウエーハをレーザー加工する際には、レーザー光が照射された領域に熱エネルギーが集中しシリコンの溶融、熱分解などによりシリコン蒸気等が凝縮して半導体ウエーハに付着する加工屑(デブリ)が発生する。半導体ウエーハのパターン面にデブリが付着すると、個々に分割されたデバイスチップの品質に悪影響を及ぼすという問題がある。そのため、半導体ウエーハのパターン面に水溶性樹脂の保護膜を形成してからレーザー加工を施している(例えば、下記の特許文献2及び特許文献3を参照)。
【0004】
保護膜の形成方法としては、半導体ウエーハを保持した保持テーブルの回転によって半導体ウエーハを回転させながら、半導体ウエーハの表面に樹脂を塗布するスピンコート法が一般的である。このスピンコート法によって半導体ウエーハの表面に保護膜を形成するときは、レーザー加工時にレーザー光の焦点がずれないようにするため、半導体ウエーハの表面に樹脂を均一に塗布する必要があり、保持テーブルの回転速度を変更して半導体ウエーハの表面に被覆される樹脂の厚みを調整している。樹脂の厚みを確認するためには、例えば、下記の特許文献4に示すレーザー加工装置に備える厚み計測手段が用いられている。この厚み計測手段は、光学ユニットを備えており、被加工物の加工面に被膜された保護膜の厚みを計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2006−198450号公報
【特許文献3】特開2008−006379号公報
【特許文献4】特開2008−229706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような光学ユニットは保護膜の厚みを精密に測定できるものの、高額であるという問題がある。また、レーザー加工の際には、半導体ウエーハの表面に塗布される保護膜にはレーザー光が投光されるため、厳密な保護膜の厚みを認識することまでは必要とされていない。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、半導体ウエーハなどの板状ワークの表面に被膜された保護膜の厚みを容易に測定できるようにすることに発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、板状ワークをレーザー加工する際に発生する加工屑から板状ワークを保護するために板状ワークの表面に被膜された水溶性樹脂による保護膜の厚みを測定する保護膜の厚さ測定方法であって、該水溶性樹脂は、酸性またはアルカリ性を示しており、pH試験紙の色調と該保護膜の厚みとの相関関係を生成する相関関係生成工程と、pH試験紙に水を含浸させるpH試験紙含浸工程と、該pH試験紙含浸工程で水が含浸された該pH試験紙を板状ワークの表面に被膜された該保護膜に載置するpH試験紙載置工程と、該pH試験紙載置工程において該保護膜に所定の時間載置された該pH試験紙の色調によって該相関関係生成工程で生成された該相関関係に基づいて該保護膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、からなる保護膜の厚さ測定方法を用いて該保護膜の膜厚を測定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる方法では、相関関係生成工程を実施することによりpH試験紙の色調と保護膜の厚みとの相関関係を生成した後、pH試験紙含浸工程及びpH試験紙載置工程を実施することにより水を含浸させたpH試験紙を板状ワークの表面に被膜された保護膜に所定時間載置すると、pH試験紙の色調が変化するため、あらかじめ生成したpH試験紙の色調と保護膜の膜厚との相関関係に基づいて、板状ワークの表面に被膜された保護膜の膜厚を容易に測定することができる。
したがって、高額な測定用の光学設備を不要にし、レーザー加工に悪影響を及ぼさない程度に板状ワークの表面に被膜された保護膜の膜厚測定を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】表面に保護膜が被覆された板状ワークの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す円形の板状ワークWは、レーザー加工が施され個々のデバイスに分割される被加工物の一例である。板状ワークWは、格子状のストリートSによって区画され複数のデバイスDが形成された面が表面Waとなっており、表面Waと反対側にある面が、自転可能な保持テーブル2に載置される裏面Wbとなっている。
【0012】
ストリートSに沿ってレーザー照射して板状ワークWを個々のデバイスDに分割する前には、板状ワークWの表面Waに、水溶性樹脂による保護膜3を、その厚さが均一になるように被膜する。以下では、保護膜3の膜厚を均一に調整するために、保護膜3の膜厚をpH試験紙(万能試験紙)を用いて測定する一連の工程について説明する。
【0013】
(1) 相関関係生成工程
図1に示すpH試験紙1のpH値に対応する色調と保護膜3の膜厚との相関関係をあらかじめ生成する。
図1に示すように、保持テーブル2に載置された板状ワークWの表面Waに水溶性樹脂による保護膜3を被膜した後、水によって加湿されたpH試験紙1を表面Waに被膜された保護膜3の上に載置し、pH試験紙1の色調に変化が表れるかどうかを確認する。保護膜3を形成する水溶性樹脂は、酸性またはアルカリ性を有するものを使用する。保護膜3としては、例えば、株式会社ディスコが提供する酸性の保護膜である「HogoMax003」を使用することができる。
【0014】
様々な膜厚を有する保護膜3と複数のpH試験紙1とを使用して上記動作を繰り返し、例えば、下記の表1に示すpH試験紙の色調と保護膜の膜厚との相関関係を生成する。
[表1]
なお、変化後のpH試験紙の色調の目安として、表中におけるpH試験紙のpH値がpH7のときは緑色、pH値がpH6のときは黄色、pH値がpH5のときは橙色、pH値がpH4のときは薄い赤みのある橙色、そして、pH値がpH3のときは薄い赤色に変色するものとする。
【0015】
(2) pH試験紙含浸工程
相関関係生成工程を実施した後、pH試験紙1に水を含浸させるpH試験紙含浸工程を実施する。
図2に示すように、pH試験紙1を狭持部4で保持し、水供給源6に接続された供給ノズル5からpH試験紙1に向けて水7を吹きつけ、pH試験紙1に水7を含浸させる。水7は、純水を使用することができる他、保護膜を構成する水溶性樹脂の性質(酸性またはアルカリ性)に応じて酸性の石鹸水またはアルカリ水を使用することができる。なお、加湿機などの装置において加湿された加湿エリアにpH試験紙1を放置または通過させることによって、pH試験紙1に水を含浸させるようにしてもよい。これにより、より一定してpH試験紙1に水を含浸させることができる。
【0016】
(3) pH試験紙載置工程
図3に示すように、板状ワークWにレーザー加工を施す前に、pH試験紙含浸工程で水を含浸させたpH試験紙1を保護膜3が被膜された板状ワークWの表面Waに所定時間載置する。ここで、水を含浸させたpH試験紙1が保護膜3に接触すると、その接触した部分が溶解するため、例えばpH試験紙1がデバイスDの上方にある保護膜3に接触すると、加工時にそのデバイスDを保護できなくなる。したがって、
図3の二点鎖線で示すように、pH試験紙1を板状ワークWの表面WaにおけるデバイスDが形成されていない位置10に載置することが望ましい。pH試験紙1を載置することによってその部分の保護膜3が溶けて板状ワークWの表面Waが露出すると、レーザー加工によって生じたデブリがその部分に付着するおそれがあるが、露出した部分がデバイスDが形成されていない位置10であれば、そこにデブリが付着しても、デバイスDの品質に悪影響を与えることはない。
【0017】
(4) 膜厚測定工程
pH試験紙載置工程を実施した後、
図4に示すように、保護膜3に所定時間載置されたpH試験紙1は、保護膜3が溶解し液状となった部分を吸収して変色する。pH試験紙1が変色したら、相関関係生成工程で生成した表1を基準として、変色後のpH試験紙1が表1のいずれの色調に該当するかを確認する。例えば、pH試験紙1が緑色に変色したら、色調がpH7であり、保護膜3の膜厚が0μm〜0.2μmであると容易に測定することができる。また、pH試験紙1が薄い赤色に変色したら、色調がpH3であり、保護膜3の膜厚が1.2μm〜1.5μmであると容易に測定することができる。
【0018】
以上のように、水を含浸させたpH試験紙1を板状ワークWの表面Waに被膜された保護膜3に所定時間載置すると、pH試験紙1の色調が変化するため、あらかじめ生成したpH試験紙1の色調と保護膜3の膜厚との相関関係に基づいて、pH試験紙1の色調と対応する保護膜3の膜厚を容易に測定することができる。したがって、高額な測定用の光学設備を不要にし、レーザー加工に悪影響を及ぼさない程度に板状ワークWの表面Waに被膜された保護膜3の膜厚測定を簡易化することができる。
【符号の説明】
【0019】
1:pH試験紙 2:保持テーブル 3:保護膜 4:狭持部 5:供給ノズル
6:水供給源 7:水