(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回折微細構造が、互いに隣接又は近接している少なくとも2つの部分領域からなり、その際、1つの部分領域が1つの溝方向を含み、別の部分領域が別の異なる溝方向を含み及び/又は1つの部分領域が1つの格子周期を含み且つ別の部分領域が別の異なる格子周期を含む、請求項1または2に記載のセキュリティデバイス。
両方の部分領域が回折微細構造中にロゴを含み、発光材料の照射時に第1のロゴが明るく見えて、第2のロゴが溝の方向に応じて暗く見え、且つ回転時に第1のロゴが暗く見えて、第2のロゴが明るく見える、請求項3に記載のセキュリティデバイス。
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、セキュリティ文書の分野、更に詳細には複写(違法な複写)及び偽造からセキュリティ文書を保護することを目的としたセキュリティ要素の分野である。光、特にUV光で照射した後に回転及び/又は傾斜でのその視覚的外観が変化するセキュリティ機能を有するセキュリティ要素が開示されている。前記セキュリティ要素を含むセキュリティ文書、並びに前記セキュリティ要素の製造方法も開示されている。
【0002】
EP1998193A1号は、蛍光又は燐光のいずれか1つであるように構成されているセンサであって、前記センサは、
多色偏光又は非偏光のためのゼロ次回析フィルタを含み、前記ゼロ次回析フィルタは
低屈折率n
lowを有する媒体;及び
高屈折率n
highを有する導波路層;
を含み、
前記媒体及び前記導波路層は、格子線を形成するように配置され、該格子線は、フィルタがそのために設計される光の波長よりも小さい周期長さを有し、前記センサは、低屈折率媒体と導波路層との間の境界面を含み、該境界面はナノ構造を構成し;且つ前記ナノ構造の少なくとも幾つかが蛍光又は燐光材料のいずれか1つによって実現されることを特徴とする、前記センサを記載している。
【0003】
EP1998193A1のセンサの場合、ナノ構造を構成する境界面は、蛍光及び燐光材料を含有する。このセンサはゼロ次で可視光を反射し且つ色を示す。この色は、蛍光又は燐光材料が環境と反応する時に変化する。導波路層に導かれた光の減衰を回避するには、蛍光又は燐光材料は導波路層中に含まれていない。
【0004】
センサの製造方法は、以下の工程:
− 第1の基材を形成する媒体で作られている格子線を提供する工程;
− 複数のナノ構造物を第1の境界面上に堆積させる工程、その際、前記ナノ構造物の少なくとも幾つかが蛍光及び燐光材料のいずれか1つによって実施される;及び
− 少なくとも1つの導波路層を格子線及びナノ構造物上に堆積させる工程、その際、導波路層が媒体よりも高い屈折率を有する
を含む。
【0005】
WO2006018232A1号は、エンボス構造及びコーティングを含む、光学的可変構造を有するセキュリティ要素であって、その際、垂直に見る時にコーティングの少なくとも一部が完全に見えるが、角度のある観察では隠れるように、エンボス構造とコーティングが組み合わされている、前記セキュリティ要素に関するものである。エンボス構造は、非線形エンボス要素を含み、これらは観測角度を変える際に、異なる情報が見えるようにコーティングと組み合わされている。コーティングは発光材料を含んでよい。コーティングはエンボス構造のエンボス要素に配置されている。
【0006】
JP2003248414A号は、プレーン型の光学導波の上表面からの入射でできた外部光を導波光に変換する手段及び導波光がそこに入射される時に回析光を生じるホログラムで形成される出力手段を有する波長ホログラム型偽造防止シールに関し、対象の表面への接着剤部分を有する透明なカバーシールで固定される。対照的に、本発明では、インカップリング及びアウトカップリングは互いに分離されていない。両方のプロセスが格子面積全体にわたって行われる。
【0007】
EP1776242A1号は、基材内に埋込まれたゼロ次回析微細構造、及び使用者によって見られるべき基材の表面上に形成された1つ以上の光学構造を含む更なる構造を構成するセキュリティデバイスに関し、これはゼロ次微細構造によって生じる光学特性を改変するものである。1つ以上の更なる光学構造、例えば、ミクロレンズ1又は鋸歯(20、
図2)は、基材(3)の表面2上に形成されてよい。更なる光学構造は、ゼロ次回析微細構造5の光学特性を改変する。色フィルタ機能を有する材料は、デバイス34及び微細構造33の表面の間に加えられてよい。発色団31はポリマー32に加えられてよい。デバイスはホログラムと組み合わせてよい。
【0008】
発色団(色フィルタ機能を有する材料、例えば、蛍光体、燐光染料、ナノ粒子、例えば、Q-Dots又は金属ナノ粒子)は、ゼロ次微細構造の色効果を改変するためにデバイス及び微細構造の表面の間に加えられる。色フィルタは、微細構造での入射光並びに反射光のスペクトルを改変する。
【0009】
EP0420261A2号(EP1241022号)は、一連のデータキャリア、特に身分証明書、価値紙等からなるシステムに関し、その際、システムに属すデータキャリアは標準情報を含む屈折構造を示し、その一連の部分が屈折構造の領域において更なる測定によって変更されるか、又は他の要素と組み合わされて且つその一連の残りとは視覚的に認識可能に区別され、屈折構造の変化及び/又は全体的に美的な印象及び変化を運ぶ他の要素との組み合わせ及び/又は他の要素との組み合わせは、屈折構造の破壊なしに取り消すことができない。
【0010】
多数の可能な変更には、ある光学印象を生成し且つ特別な個別の形態を実現するための異なる印刷技術、染料、インク及び金属化層の使用が含まれる。ルミネセンス又は燐光物質の使用は、特別な照明でのみ実現可能な特別な個別の測定を作り得る。
【0011】
JP2002072835号によれば、基材2上に積層された情報読み取り部6は、上面から剥離層61、光屈折構造層62、光屈折層63、蛍光層64、及び接着層65を含む積層構造中に形成される。
【0012】
JP2001265198号のホログラムでは、支持層1上に少なくとも1つのホログラム形成層2及び反射薄膜層3を有し、これらの層を含むホログラム構造層中の少なくとも1つの層又は中間層領域は、有機蛍光染料を含有し、これはIR光線によって励起され且つIR領域内に光を放射する。
【0013】
支持層1上に層2及び反射薄膜層3を形成する少なくとも1つのホログラムを提供するJP2001255808号のホログラムは、IR領域で光を放射するUV光によって励起される蛍光染料が、上記のそれぞれの層を含むホログラム構造層の中で又は層の間で少なくとも1つの層に含有されることを特徴とする。
【0014】
JP10129107号によれば、画像3、例えば、顔写真等は、基材2上に形成され、その上に赤外線を放射する蛍光剤を含有する、第1の情報パターンユニット14が形成される一方、第2の情報パターンユニット15は、画像受容層4又はホログラム層8のいずれか1つ及び分離保護層5の間に形成されて画像表示する本体を構成する。画像表示する本体に提供された、情報パターンユニットは、特定の波長を有する、赤外線及び紫外線の照射によって発光し、それによって情報パターンが視覚的に確認できる。
【0015】
EP2130884A1号は、可撓性プラスチック箔をベースとした可撓性キャリア基材を含むタンパ耐性セキュリティラベル又は接着テープであって、キャリア基材上に以下のラベル:(a)アルファベット文字、記号、符号、ライン、ギョーシェ模様、数又は筆跡の形の部分的な放出ラッカー;(b)発光色から作られた全体を覆った又は部分的なコーティング;(c)任意に光学特性を有する1つ以上の他の層又は金属層;(d)自己接着剤コーティング又は熱シールラッカーコーティングが適用される、前記ラベル又は接着テープを開示している。
【0016】
キャリア基材は、光学的に活性な構造、例えば、回析構造、ホログラム又は波を示す。部分発光コーティングは、アルファベット文字、記号、符号、ライン、ギョーシェ模様、数字又は筆跡の形で存在する。
【0017】
本発明は、単一のシステムにおいてUVホログラムと蛍光とを組み合わせる(印刷可能な)セキュリティ特徴を作り出すことを目的とする。セキュリティ特徴は、周囲光では観察されないが、例えば、365nmのUV光の励起の下で見えなければならない。ロゴは、セキュリティ特徴の平面で傾斜される及び/又は表面の法線を回転される場合にコントラストをスイッチさせなければならない。
【0018】
前記課題は、セキュリティ要素であって、
低屈折率n
lowを有する媒体もしくは基材;
発光材料を含む、高屈折率n
highを有する導波路層;及び
導波路層の表面上の、又は媒体もしくは基材と導波路層との間の境界面での、又は導波路層から500nm、特に200nm、非常に特に50nmよりも小さい距離での回折微細構造
を含み、その際、低屈折率n
lowを有する媒体もしくは基材と導波路層との間の屈折率の差が少なくとも0.005、特に少なくとも0.01、非常に特に少なくとも0.1であり;
微細構造の周期(Λ)が100〜1500nm、特に100〜1000nm、非常に特に100〜500nmの範囲であり;
導波路層の質量厚さ(d)が30〜1000nm、特に50〜400nm、非常に特に60〜200nmの範囲であり;且つ
微細構造の深さ(t)が50〜1000nm、特に80〜600nm、非常に特に100〜300nmの範囲である、前記セキュリティ要素によって解決されてきた。
【0019】
n
low及びn
highは、発光材料の吸収のピークでの屈折率を表す。低屈折率nlowを媒体もしくは基材と導波路層との間の屈折率の差は、少なくとも0.005、特に少なくとも0.01、非常に特に少なくとも0.1である。
【0020】
図1は、本発明によるセキュリティ特徴の概略的な上面図を示す。この図の左部分では、セキュリティ特徴は、昼光条件、例えば、日光又はネオンランプ照明の条件下で照明される通りに示される。右部分では、UV光照明の下での出現が示される。ロゴはUV光照明の下で(365nmでピークを有するLEDのUV光による場合)のみ見える。
【0021】
図1bは、通常の方向転換でのセキュリティ要素のコントラスト変化を概略的に示す。UVホログラムは、表面に対して通常90°の回転でのコントラストの変化を示す。左の画像は、より暗い蛍光バックグラウンドによって囲まれた未処理の蛍光の略語「BASF」を有する。UVホログラムの90°の旋回の際に、略語「BASF」は暗くなって消える。
【0022】
図2a〜2fは、本発明によるセキュリティ特徴に関する可能性のある層及び微細構造のセットアップの側面図を描く。文字pは、示された回析微細構造の1つの棒の幅を示し、Λは周期であり、tはこの回折微細構造の深さであり、C
hはそれぞれ蛍光又は燐光を発光する材料を含む導波路層の均一な部分の厚さである。この導波路層の全質量厚さdは、両方の場合:d=C
h+t×p/Λである。c
sepは分離層の厚さである。
【0023】
図3は、本発明の実施例1の60°の視野角での波長に対して測定された発光強度のプロットである。発光強度は、導波路層の2つの異なるマトリックス材料、即ちPVK及びPMMA中に埋込まれた1つの発光材料について測定された。更に、使用される線状回析格子の2つの異なる配向、即ち、格子線に対して平行又は垂直な視野方向について測定された。
【0024】
図4aは、通常旋回でのセキュリティ要素のコントラスト変化を概略的に示す。UVホログラムは、表面に対して90°の通常回転でコントラスト変化を示す。左の画像は、暗い背景によって囲まれた未処理の蛍光の略字「BASF」を有する。UVホログラムの90°の旋回は、色の配置を変化させる(暗い略字「BASF」が未処理の蛍光背景によって囲まれる)。コントラスト変化のより良好な可視性は、光源及び「左−右」傾斜に対して45°で格子溝の位置で得られる。
【0025】
図4bは、類似のセキュリティ要素であるが、BASFの文字の代わりにバラを示す蛍光画像を有するものを示す。蛍光画像は回転時に正から負の画像に変化する。
【0026】
昼光下ではロゴが見えないが、UVランプによる照明で見えるようにするために必要なものは、ルミネセンス又は発光材料を含む、導波路層によって被覆された格子である。あるいは、導波路層が最初に堆積されて、その後に、格子で微細構造化される。導波路層は、高屈折率及び指定された波長での高い屈折の共振フィルタ特性、溝方向及び照明角度を有する。励起波長での高い反射は、発光材料の発光をもたらす。
図1は、昼光の下では見えないが、UV光の下では見える効果を概略的に示し、
図2は層及び構造のセットアップの側面図を概略的に示す。
【0027】
本発明によるセキュリティデバイスは、紙幣、クレジットカード、パスポート、チケット及びブランドの保護目的のために製造される際に使用できる。
【0028】
従って、本発明は、例えば、本発明によるセキュリティデバイスを含む、紙幣、クレジットカード、パスポート、又はチケットなどの製品にも関するものである。
【0029】
「導波路層の表面上の回析微細構造」との用語は、回析微細構造が導波路層中に埋込まれていることを意味する。
【0030】
「媒体又は基材と導波路層との間の境界面での回析微細構造」との用語は、回析微細構造が媒体又は基材;又は導波路層内のいずれかに埋込まれていることを意味する。これは、回析微細構造が、媒体又は基材;又は導波路層の一部であることを意味する。
【0031】
「媒体又は基材と導波路層との間の少なくとも1つの境界面の回析微細構造」との用語は、回析微細構造が、別個の層の一部であることを意味し、その際、回析微細構造から導波路層までの距離、即ち、それぞれ別個の層の厚さC
sepは、500nm未満、特に200nm未満、非常に特に50nm未満である。
【0032】
「導波路」層との用語は当該技術分野で公知である。本発明に従ってその機能を実行するために、導波路層は、その表面の1つ又はその境界面の1つに少なくとも1つの回析微細構造を有する。更には、発光材料のピーク吸収のスペクトル範囲の屈折率は、通常、隣接層と比較した場合、少なくとも0.005高い。多くの蛍光又は燐光材料は、UVスペクトル範囲内に吸収ピークを有する。有利には、導波路層は、少なくとも可視光の一部で実質的に透明である。好ましくは、これは隣接層又は媒体に対してシャープな境界面を有する。
【0033】
少なくとも可視スペクトル範囲の一部において;50%より高い、好ましくは90%より高い透過率Tを有する層が実質的に透明である。本発明によるシャープな境界面の厚さは、200nm未満、好ましくは80nm未満、特に好ましくは30nm未満である。境界面は、屈折率が1つの層の値から別の層の値まで変化する、2つの層の間の領域である。好ましくは、導波路層は、その表面の1つに1つの回析微細構造を有する。
【0034】
「回析微細構造」との用語は当該技術分野で公知である。かかる微細構造は、周期Λ、構造の深さt、格子の溝又は棒の幅p、曲線因子(又はデューティーサイクル)f.f=p/Λ、及び微細構造の形状(例えば、矩形、正弦波、三角形又は更に複雑な、好ましくは矩形)によって特徴付けられる。本発明によるセキュリティ要素では、周期は通常、150nm〜1500nmの間、好ましくは200nm〜1000nmの間、特に好ましくは200nm〜500nmの間である。好ましくは、微細構造は直線状、又は交差格子である。
【0035】
「格子線」との用語は当該技術分野で公知である。格子線の形状は微細構造を規定する。通常、直線状の線が使用される。
【0036】
導波路層の全質量厚さdは、好ましくは30nm〜1000nmの範囲、特に好ましくは80nm〜200nmの間である。ここで記載される導波路層は、追加のコンポーネント、例えば、フィルタ、湿潤剤などを含んでよい。かかる添加剤は当該技術分野で公知であり且つ市販されている。
【0037】
本発明による微細構造化された導波路層に適したパラメータを以下にまとめる:
【表1】
【0038】
他に記載されない限り、「屈折率」の全ての値は、365nmの波長について決定されている。特段記載されない限り、高屈折率の層とは、隣接層が低屈折率を有する事実を意味しており、また逆の場合も同様である。更に、物理的法則の範囲内では、最小屈折率が1.0であることが理解されている。従って、例えば、「1.5よりも低い」屈折率とは、常に「1.5よりも低いが少なくとも1.0である」ことを示唆している。
【0039】
回析微細構造は、好ましくは、270±30nmの範囲の微細構造周期(Λ)を有する回析格子であり;導波路層の厚さ(d)は140±50nmの範囲であり;且つ微細構造深さ(t)は140±30nmの範囲である。
【0040】
回析微細構造は、互いに隣接又は近接している少なくとも2つの部分領域からなり、その際、1つの部分領域は1つの溝方向を含み、別の部分領域は、別の異なる溝方向を含み及び/又は1つの部分領域は1つの格子周期を含み且つ別の部分領域は別の異なる格子周期を含む。
【0041】
特に好ましい実施態様では、両方の部分領域は回析微細構造中にロゴを含み、発光材料の照射時に第1のロゴが明るく見えて、第2のロゴは溝の方向に応じて暗く見え、且つ回転時に第1のロゴが暗く見えて第2のロゴは明るく見える。
【0042】
部分領域は、好ましくは、規定された形、例えば、記号、ストライプ、幾何学的な形状、デザイン、文字、英数文字、それらの対象又は部分の表現を有する。
図4を参照されたい。
【0043】
好ましい実施態様では、セキュリティデバイスは、
a)低屈折率n
lowを有する媒体の層;
b)低屈折率n
lowを有する媒体上の回析微細構造;
c)該回析微細構造上に、発光材料を含む、高屈折率n
highを有する導波路層;及び任意に
d)低屈折率n
lowを有する媒体の層
を含む。
【0044】
別の好ましい実施態様では、セキュリティデバイスは、
A)低屈折率n
lowを有する媒体の層;
B)該低屈折率n
lowを有する媒体上に発光材料を含む、高屈折率n
highを有する導波路層;
C)該高屈折率n
highを有する導波路層上に回析微細構造;及び任意に
D)低屈折率n
lowを有する媒体の層
を含む。
【0045】
図2a〜
図2fを参照されたい。
図2a〜2fは、本発明によるセキュリティ特徴のための可能な層と微細構造のセットアップの側面図を描く。文字pは示された回析微細構造の1つの棒の幅を表し、Λは周期であり、tはこの回析微細構造の深さであり、そしてC
hは発光−それぞれ蛍光又は燐光−材料を含む導波路層の均質な部分の厚さである。この導波路層の全質量厚さdは、両方の場合:d=C
h+t×p/Λである。C
sepは分離層の厚さである。
【0046】
図2a及び2bに示したセキュリティデバイスは、低屈折率n
low(2)を有する媒体又は基材と導波路層(1)とからなる。
【0047】
図2aに示したセキュリティデバイスでは、回析微細構造は、低屈折率n
lowを有する媒体又は基材(2)と導波路層(1)との間の境界面にある。
図2bに示したセキュリティデバイスでは、回析微細構造は、導波路層(1)の表面上にある。
【0048】
図2c及び2dに示したセキュリティデバイスは、低屈折率n
lowを有する媒体又は基材(2)、導波路層(1)及び低屈折率n
lowを有する第2の媒体からなる。
【0049】
図2cに示したセキュリティデバイスでは、回析微細構造は、低屈折率n
lowを有する媒体又は基材(2)と導波路層(1)との間の境界面にある。
図2bに示したセキュリティデバイスでは、回析微細構造は、導波路層(1)の表面上にある。
【0050】
図2e及び2fに示したセキュリティデバイスは、低屈折率n
lowを有する媒体又は基材(2)、分離層(4)、導波路層(1)、及び低屈折率n
lowを有する第2の媒体(3)からなる。
【0051】
図2eに示したセキュリティデバイスでは、回析微細構造は、低屈折率n
lowを有する媒体又は基材(2)と導波路層(1)との間の境界面にある。
図2fに示したセキュリティデバイスでは、回析微細構造は、低屈折率n
lowを有する媒体(2)(3)と導波路層(1)との間の境界面にある。
【0052】
発光材料は単独で導波路層を構成することができる。好ましくは、高屈折率n
highを有する導波路層は、マトリックス材料とルミネセンス材料(発光材料)を含む。
【0053】
通常、発光材料は、発光材料とマトリックス材料の量を基準として、0.1〜40質量%、特に0.1〜20質量%の量で使用されている。
【0054】
導波路層は発光材料を含む。発光材料は、単独で導波路層を構成するか又は導波路層の1成分を表すことができる。従って、導波路層は、マトリックス+発光材料のブレンドから作られ得る。マトリックス材料の例は、ポリメチルメタクリレート、又はポリビニルカルバゾールなどのポリマーである。原則として、マトリックス材料は、これがルミネセンスと共に低屈折率n
lowを有する媒体よりも高い屈折率を有する時の材料であってよい。マトリックス材料の例として、低屈折率n
lowを有する媒体について以下に記載した材料が挙げられる。あるいは、マトリックスはUVプライマー(UV硬化性組成物)、又は水溶性の熱可塑性ポリマーであってよい。適した水溶性ポリマーの例は、未改質天然ポリマー、改質天然ポリマー、及び合成ポリマー、例えば、部分的又は完全に加水分解したポリビニルアルコールPVA及びビニルアセテートと他のモノマーとのコポリマー;改質ポリビニルアルコール;(メタ)アクリルアミドのホモポリマー又はコポリマー;ポリエチレンオキシドPEO;ポリビニルピロリドンPVP;ポリビニルアセテート;スターク;セルロース及びその誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース;ゼラチン;ポリウレタンPUからなる群から選択される。
【0055】
目下のところ、最も好ましいマトリックス材料は、ポリビニルカルバゾール、ポリメチルメタクリレート、UVプライマー(UV硬化性組成物)、塩化ビニル及び酢酸ビニルコポリマー及びニトロセルロースから選択される。
【0056】
本発明の更なる実施態様では、導波路層は、−マトリックス及び発光材料の他に−マトリックス材料の1つよりも高い屈折率を有するナノ粒子を含む。例はTiO
2及びZrO
2のナノ粒子である。好ましくは、ナノ粒子のサイズは、5nm〜200nmの範囲、特に好ましくは10nm〜60nmの間である。更に、粒径分布は好ましくは低くあるべきである。
【0057】
原則として、発光材料は、照射後に、可視域で発光する材料であってよい。ルミネセンス又は発光材料は、蛍光材料、燐光材料、又は他の材料であってよい。かかる発光材料は、一般的に温度の大幅な上昇なしに、エネルギー源に応じて電磁エネルギーの特徴的な放射を示す。
【0058】
本発明の好ましい実施態様では、発光材料は、365nm(非可視照射)で照射されて可視発光を示す。前記実施態様では、発光材料は、365nm(365±40nm)に近い吸収極大を有する材料である。
【0059】
発光材料は、金属錯体、蛍光有機染料、蛍光ポリマー、及び無機燐光体から選択され得る。
【0060】
金属錯体、例えば、燐光物質は、発光材料として使用され得る。燐光物質及び関連材料の例は、例えば、WO00/57676号、WO00/70655号、WO01/41512号、WO02/15645号、US2003/0017361号、WO01/93642号、WO01/39234号、US6,458,475号、WO02/071813号、US6.573.651号、US2002/0197511号、WO02/074015号、US6.451.455号、US2003/0072964号、US2003/0068528号、US6,413,656号、US6,515,298号、US6,451,415号、US6,097,147号、US2003/0124381号、US2003/0059646号、US2003/0054198号、EP1239526号、EP1238981号、EP1244155号、US2002/0100906号、US2003/0068526号、US2003/0068535号、JP2003073387号、JP2003073388号、US2003/0141809号、US2003/0040627号、JP2003059667号、JP2003073665号及びUS2002/0121638号に記載されている。
【0061】
IrL
3及びIrL
2L’型のシクロメタル化Ir(III)錯体、例えば、緑色光を放出するfac−トリス(2−フェニルピリジナト−N,C
2’)イリジウム(III)及びビス(2−フェニルピリジナト−N,C
2’)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)の発光波長は、シクロメタル化配位子L上の適切な位置で電子供与基又は電子吸引基の置換によって、又はシクロメタル化配位子Lの異なる複素環の選択によってシフトされ得る。発光波長は、さらに補助配位子L’の選択によってシフトされ得る。赤色発光体の例は、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C
3’)イリジウム(EI)(アセチルアセトネート)、イリジウム(III)ビス(2−メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)、及びトリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C)イリジウム(III)である。青色発光体の例は、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C
2’)イリジウム(III)(ピコリネート)である。
【0062】
燐光物質としてビス(2−(2’−ベンゾ[4,5−a]チエニル)ピリジナト−N,C
3)イリジウム(アセチルアセトネート)[Btp
2lr(acac)]を用いる赤色燐光が報告されている(Adachi, C, La-mansky, S., Baldo, M.A, Kwong, R.C, Thompson, M.E., 及びForrest, S.R., App. Phys. Lett., 78, 1622 1624 (2001年)。緑色燐光は
【化1】
について報告されている。
【0063】
他の蛍光材料としては、シクロメタル化Pt(II)錯体、例えば、シス−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C
2’)白金(II)、シス−ビス(2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C
3’)白金(II)、シス−ビス(2−(2’−チエニル)キノリナト−N,C
5’)白金(II)、又は(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−NC2’)白金(II)アセチルアセトネートが挙げられる。白金(II)ポルフィリン錯体、例えば、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H、23H−ポルフィリン白金(H)も有用な蛍光材料である。
【0064】
他の蛍光材料は、WO06/000544号及びWO08/101842号、WO2005/019373号、WO2006/056418号、WO2005/113704号、WO2007/115970号、WO2007/115981号及びWO2008/000727号に記載されている。
【0065】
更に別の有用な蛍光材料の例としては、三価ランタニド、例えば、Th
3+及びEu
3+の配位錯体(J. Kidoら, Appl. Phys. Lett., 65, 2124 (1994年)及びJ. Kidoら, Chem. Rev. 102 (2002年)第2357頁〜第2368頁)、例えば、
【化2】
(式中、R
21及びR
22は互いに独立してH、フェニル、C
1〜C
18アルキルであり、該基は1つ以上の酸素原子によって中断されてよく、且つR
22及びR
23は互いに独立してC
1〜C
18アルキル、1つ以上のC
1〜C
18アルキル基によって置換されてよいフェニルであり、該基は1つ以上の酸素原子によって中断されてよい;又は1つ以上のC
1〜C
18アルキル基によって置換されてよいビフェニルであり、該基は1つ以上の酸素原子によって中断されてよい)
が挙げられる。
【0066】
黄色蛍光体は、
【化3】
について報告されている。
【0067】
100nm未満の平均粒径を有する好適な無機蛍光体は、例えば、WO2009/077350号(特に実施例1〜3)に記載されている。
【0068】
好適な蛍光着色剤は、クマリン、ベンゾオキサジノン、ベンゾクマリン、キサンテン、ベンゾ[a]キサンテン、ベンゾ[b]キサンテン、ベンゾ[c]キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジン及びベンゾ[c]フェノキサジン、ナフタルイミド、ナフトラクタム、アジアクトン、メチン、オキサジン及びチアジン、ジケトピロロピロール、ペリレン、キナクリドン、ベンゾキサンテン、チオエピンドリン、ラクタムイミド、ジフェニルマレイミド、アセトアセタミド、イミダゾチアジン、ベンゾアントロン、ペリレンモノイミド、ペリレン、フタルイミド、ベンゾトリアゾール、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、ジベンゾフラン及びトリアジンから選択される公知の着色剤に基づくものである。
【0069】
好ましくは、発光材料は、金属錯体、例えば、
【化4】
、蛍光有機染料、例えば、
【化5】
;又は蛍光ポリマー、例えば、
【化6】
及び置換されたフタルイミジン染料、例えば、
【化7】
から選択される。
【0070】
以下の式
【化8】
は、ポリビニルカルバゾール(PVK)と組み合わせた時に、ポリメチルメタクリレートと組み合わせた時よりも高い発光強度を有する(PMMA;365nmで9質量%の
【化9】
及び91質量%のポリビニルカルバゾールの場合、n=1.8006並びに9質量%の
【化10】
及び91質量%のポリメチルメタクリレートの場合、n=1.5201)。
図3は、60°の観察角度で格子線に対して垂直又は水平な方向に見る場合の対応する蛍光発光強度対波長スペクトルを示す。
【0071】
より高い屈折率を有する蛍光材料は、より高い発光強度に導くより良い導波特性を有する。
【0072】
以下の式
【化11】
の場合、この状況は反対になる。発光は、より低い屈折率を有する導波路層の場合に高い(365nmでは9質量%の
【化12】
及び91質量%のポリビニルカルバゾールの場合、n=1.7546並びに9質量%の
【化13】
及び91質量%のポリメチルメタクリレートの場合、n=1.5172)。
【0073】
理論により拘束されないが、この場合、別の効果がより良い導波路効果、即ち、マトリックス材料との相互作用による発光体の消光を支配すると考えられる。蛍光体及び燐光物質の消光は複雑なプロセスであり、かかる材料は異なるマトリックスポリマーと様々に相互作用する。一方では、マトリックスは直接、発光体を消光させ得る。あるいは、膜形成の間の双方間の相互作用は、脱混合を、そして発光体のアグロメレーションをもたらし得る。後者の場合、発光体の自己消光が起こり得る。第1表を参照されたい。
【表2】
【0074】
発光強度は、導波路層内の発光体の量及び/又は励起電力と共に上昇し得る。
【0075】
回折微細構造は、通常、導波路層を堆積させる前に低屈折率の基材に提供される。あるいは、これは、例えば、エンボシングによって導波路層に適用される。
【0076】
低屈折率n
lowを有する媒体の層は、基材層を表し得る。低屈折率n
lowを有する媒体の層は、PET、PC、PMMA、又はアクリレートから作られてよい。低屈折率n
lowを有する媒体は、好ましくは、エンボス可能な層、特にエンボス可能なアクリレートで被覆されたポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートから選択される。
【0077】
別の実施態様では、低屈折率n
lowを有する媒体の層は、UV硬化性ポリマー、例えば、Micro Resist Technology社製のOrmocomp(登録商標)、又はWO2008/061930号(第8頁〜第35頁)に記載されたUV硬化性組成物で作られてよい。
【0078】
あるいは、低屈折率n
lowを有する媒体の層は多孔質層であってよい。かかる多孔質層は当該技術分野で公知である。それらは、有利には無機ナノ粒子、好ましくは1種以上の有機結合剤と組み合わせた無機ナノ粒子を含む。適した無機ナノ粒子は、好ましくは、酸化物、例えば、SiO
2、Al
2O
3又はAlOOHからなる群から選択される。
【0079】
セキュリティ要素の基材は、当業者に公知の任意の好適な材料で作られてよい。基材の選択は、意図した使用及び製造プロセスに依存する。基材は、例えば、ガラス、紙、又はポリマー箔で作られてよい。有利には、透明な可撓性ポリマー箔が使用される。かかる箔は、セルロースエステル(例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート又はセルロースアセテート/ブチレート)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートPET又はポリエチレンナフタレートPEN)、ポリアミド、ポリカーボネートPC、ポリメチルメタクリレートPMMA、ポリイミドPI、ポリオレフィン、ポリビニルアセテート、ポリエーテル、ポリ塩化ビニルPVC及びポリビニルスルホンPSUからなる群から選択され得る。好ましいのは、それらの例外的な安定性のために、ポリエステル、特に、ポリエチレン−テレフタレート、例えば、Mylar(DuPont)又はポリエチレンナフタレートである。適した不透明の可撓性基材は、例えば、ポリオレフィン被覆紙及び白色の不透明ポリエステル、例えば、Melinex(DuPont)である。
【0080】
約300〜500nmの波長での基材の屈折率は、例えば、1.35〜1.80の範囲であるが、通常、1.49(PMMA)〜1.59(PC)の間である。基材の厚さは、意図される用途、及び使用される装置に依存し、好ましくは25μm〜200μmの間である。好ましい実施態様では、基材は「可撓性」であり;これは特にセキュリティ要素を製造するためのロールツーロールプロセスを可能にする曲げ特性に関係する。
【0081】
任意に、基材の接着性は、化学的又は物理的方法によって改善され得る。化学的方法としては、結合剤の堆積、例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル及びアクリル酸のターポリマーの堆積又は塩化ビニリデン、メチルアクリレート及びイタコン酸のターポリマーの堆積が挙げられる。物理的方法としては、コロナ処理などのプラズマ処理が挙げられる。上記の基材は、市販されているか又は公知の方法によって得られる。
【0082】
任意に、本発明によるセキュリティ要素は、導波路層の上面に堆積された、1つ以上の被覆層を含んでよい。被覆層は任意の好適な材料で作られてよい。屈折率n
1を有する導波路層の導波性を維持するために、被覆層は、発光材料n
4<n
low−0.005及び好ましくはn
4<n
low−0.1の吸収ピーク位置で少なくとも屈折率n
4を有していなければならない。被覆層の材料の選択は、セキュリティ要素の意図した用途及びその製造プロセスに依存する。適したものは、例えば、低屈折率の基材の製造に使用できる同じポリマーである。更に、同じ多孔質材料は、低屈折率n
lowを有する媒体の層と同様に使用してよい。
【0083】
任意に、1つ以上の追加の層が、特定の用途又は必要性に適合させるために含まれる。かかる層は、例えば、剥離層又は接着層であってよい。接着層は、基材と反対側にある、セキュリティ要素上の最上層として堆積され得る。剥離層は、基材上の第1の層であってよい。かかる層、その材料及び製法は、当該技術分野で公知である。好ましくは、かかる層の製造はロールツーロールプロセスに含まれる。製造されたセキュリティ要素に応じて、かかる追加の層は、透明である必要があり且つシャープな境界面を要求し得る。
【0084】
本発明によるセキュリティ要素の製造方法は、基材上の層のその後の堆積を含む。従って、セキュリティデバイスの製造方法は、以下の工程:
− 低屈折率n
lowを有する媒体を提供する工程、
− エンボシングによって低屈折率n
lowを有する媒体中に回折微細構造を形成する工程、
− 該回折微細構造上に発光材料を含む(ポリマー)層(導波路層)を堆積させる工程;及び任意に
− 該導波路層上に低屈折率n
lowを有する媒体の層を堆積させる工程;又は
− 低屈折率n
lowを有する媒体を提供する工程、
− 該低屈折率n
lowを有する媒体上に発光材料を含む(ポリマー)層(導波路層)を堆積させる工程;
− 該導波路層上にエンボシングによって回折微細構造を形成する工程、及び任意に
− 該導波路層上に低屈折率n
lowを有する媒体の層を堆積させる工程
を含む。好ましくは全ての堆積工程は、ロールツーロールプロセスの一部である。
【0085】
第1の工程では、低屈折率n
lowを有する媒体の層が、可撓性基材上に堆積される。基材は透明又は不透明であってよい。任意に、有機結合剤又は他の添加剤が分散液に添加される。得られる層は、例えば、空気ファン、赤外線又はマイクロ波放射によって乾燥される。乾燥は、好ましくは、空気流中で60℃未満の温度で行われる。好ましくは、乾燥は堆積直後に行われる。
【0086】
次の工程では、発光材料を含む導波路層は、低屈折率n
lowを有する媒体の層上に堆積される。堆積後に、導波路層は、必要に応じて乾燥される。
【0087】
その後の工程では、回析微細構造が、エンボシングのツール、例えば、ニッケルのシムを用いて、導波路層内にエンボスされる。エンボシングは、高められた温度で及び/又はUV照射(「高熱」及び「UV」エンボシング)により行われてよい。通常、高温エンボシングは、導波路層のガラス転移温度よりも高い温度で行われる。任意に、ポリマー層の硬化が適用され得る。
【0088】
更なる変法では、エンボシング工程は最初に行われる。従って、回析微細構造が、低率の基材上に又は該基材内に直接、又は基材上に堆積される低率のエンボス可能な層内にエンボスされ、好ましくは、高温エンボスされる。次に、導波路層が回析微細構造化した基材上に堆積される。全ての層の屈折率に関して同じ考察が、上記の方法に対して適用可能である。i)溶液又は分散液の粘度、ii)乾燥した層厚さ、及びiii)微細構造の深さに応じて、導波路層の上表面は平坦であるか、又は基材の微細構造に相関がある回析微細構造を有する。任意に、導波路層の上面に、追加の被覆層が堆積されてよい。この層の一機能は、環境の影響及び機械的応力に対して導波路層を保護することである。任意に、上記の通り、追加のポリマートップコート(示さず)が堆積されてよい。基材及び層の可能な材料は、上記と同じである。
【0089】
更なる変法では、被覆された微細構造箔が、色効果を有する接着タグ又はラベルを製造するために使用されている。この目的のために、基材の未被覆側又は積層のトップコートは、接着層及び該接着層を保護する除去可能なキャリアが提供される。後者は、例えば、シリコン被覆紙、又はポリマー箔であってよい。積層で被覆された基材は、その後、所望サイズのタグ又はラベルがキャリアをはぎ取られて、製品、パッケージなどに適用されるように、スライスされる。追加の情報、例えば、バッチ番号、会社のシンボルマーク等を有するタグをラベリングする公知の技術が、本発明によって製造された箔に適用できる。
【0090】
両方の製造方法の別の実施態様では、1つの追加の剥離層が、基材と第1の被覆層との間に堆積され、1つの追加の接着層(例えば、熱活性可能な接着層)が上層として堆積される。これは被覆された積層の基材からの分離を可能にし、そして得られたセキュリティ要素を別の表面に移動させることができる。この方法では、包装、紙幣、セキュリティデバイスなどの別のデバイスの表面に移動可能なセキュリティ要素を、例えば、積層法又はホットスタンピングプロセスによって製造することが可能である。この実施態様によるセキュリティ要素は、上記の実施態様による製品又は包装などに接着剤で接着されたセキュリティ要素と比べてはっきりと薄い。
【0091】
特に好ましい実施態様では、セキュリティを形成するプロセスは、以下の工程;
A)硬化性組成物(UVプライマー、低屈折率n
lowを有する媒体)を基材の少なくとも一部に適用する工程;
B)硬化性組成物の少なくとも一部に回析微細構造を形成する工程;
C)該組成物を硬化する工程;
D)低屈折率n
lowを有する媒体上に発光材料(導波路層)を含む(ポリマー)層を堆積させる工程
を含む。
【0092】
有利には、本発明は、高い生産性と低いコストで、基材の表面上に直接、回析格子を転写することを含む。
【0093】
基材上への回析微細構造の形成は、基材の少なくとも一部の上に硬化性化合物、又は組成物を堆積させることを含む。組成物、一般的にコーティング又はラッカーは、グラビア、フレキソ印刷、インクジェット及びスクリーン印刷によって堆積されてよい。硬化性ラッカーは、化学線、好ましくは紫外線(UV)又は電子ビームによって硬化されてよい。好ましくは、ラッカーはUV硬化される。UV硬化性ラッカーは、BASF SEから得られる。本発明で使用される化学線又は電子ビームに露光されるラッカーは、回析格子像又はパターンの上層内への記録を維持するために、それらが結像シムから再び分離する時に、固化状態に到達することが要求される。ラッカー組成物に特に適しているのは、工業用コーティング及びグラフィック分野の放射線硬化産業で使用される化学物質である。特に適しているのは、化学線に露光されたラッカー層の重合を開始させる1種以上の光潜在性触媒を含有する組成物である。固体状態への急速な硬化及び変換に特に適しているのは、フリーラジカル重合に敏感な1種以上のモノマー及びオリゴマー、例えば、アクリレート、メタクリレート又は少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含有する、モノマー又は/及びオリゴマーを含む組成物である。WO2008/061930号(第8頁〜第35頁)を参照されたい。
【0094】
硬化性組成物は、好ましくは、紫外線(U.V.)又は電子ビームによって硬化される。硬化性組成物は着色されてよい。
【0095】
低屈折率n
lowを有する媒体上の発光材料を含む(ポリマー)層(導波路層)は、好ましくは硬化性ラッカーで作られており、これは化学線、好ましくは紫外線(U.V.)又は電子ビームによって硬化され得る。WO2008/061930号(第8頁〜第35頁)を参照されたい。
【0096】
硬化性組成物は、好ましくはグラビア又はフレキソ印刷によって堆積される。
【0097】
回析格子は、当業者に公知の方法、例えば、US4,913,858号、US5,164,227号、WO2005/051675号及びWO2008/061930号に記載された方法を用いて形成され得る。
【0098】
更に、回析格子を基材上のレジスタ内に直接形成することが有利である。
【0099】
前記実施態様では、基材はシート材料を含んでよい。基材は不透明、実質的に透明又は半透明であってよく、その際、WO08/061930号に記載された方法は、特に、UV光に対して不透明な(非透過な)基材に適している。基材は、紙、革、布、例えば、絹、綿、タイベック(tyvac)、膜状物質(filmic material)又は金属、例えば、アルミニウムを含んでよい。基材は1つ以上のシート又はウェブの形であってよい。
【0100】
基材は、成形製造品、織物、不織布、鋳造品、カレンダー処理品、ブロー品、押出品、及び/又は二軸押出された品であってよい。
【0101】
基材は、紙、布、人工繊維、及びポリマー化合物を含んでよい。基材は、紙、木材パルプ又は綿又は合成木材自由繊維製の紙、及び板を含む群から選択される任意の1つ以上を含んでよい。紙/板は、被覆、カレンダー処理、又は機械グレーズされていてよく、被覆された、非被覆の、綿又はデニム含有物を用いた成形製造品、タイベック、麻、綿、絹、革、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンプロパフィルム(propafilm)、ポリ塩化ビニル、硬質PVC、セルロース、トリアセテート、アセテートポリスチレン、ポリエチレン、ナイロン、アクリル及びポリエーテルイミド(polytherimide)板であってよい。ポリエチレンテレフタレート基材は、Melienex型の膜配向ポリプロピレン(DuPont Films Willimington Delaware 製品ID Melinex HS−2から入手可能)であってよい。
【0102】
基材は、木材パルプ又は綿又は合成木材自由繊維製の紙及び板を含んでよい。該紙/板は、被覆、カレンダー処理、又は機械グレーズされていてよい。
【0103】
基材は透明な膜、又は不透明な基材、例えば、不透明プラスチック、紙であり、限定されずに、紙幣、バウチャー、パスポート、及び他のセキュリティ又は信用書類、接着剤付きの切手及び封印(excise seal)、カード、タバコ、医薬品、コンピュータ用ソフトウェアの梱包材、及び認証の証明書、アルミニウム、及びその種のものを含む。
【0104】
本発明の好ましい実施態様では、基材は非透過の(不透明の)シート材料、例えば、紙である。本発明の別の好ましい実施態様では、基材は透明なシート材料、例えば、ポリエチレンテレフタレートである。
【0105】
セキュリティデバイスは、様々な目的、例えば、(限定されずに)紙幣、クレジットカード、パスポート、チケット、文書セキュリティ、偽造防止、ブランド保護などの目的のために、認証、識別証明、及びセキュリティの分野で使用されていてよい。
【0106】
殆どの用途にとって、追加の保護コーティングは有用であり、従って好ましい。被覆層の追加の機能は、回析微細構造の分析の試みを妨げることである。
【0107】
更なる実施態様では、本発明は、本願明細書に記載されるような、熱間又は冷間転写可能なラベル、接着剤タグなどの形である、セキュリティ要素を提供する。
【0108】
本発明の様々な特徴及び態様は、以下の実施例に更に例示される。これらの実施例は、本発明の範囲内でどのように作用するかを当業者に示すために提示されているが、それらは本発明の範囲における制限として機能せず、かかる範囲は特許請求の範囲に規定されるのみである。以下の実施例並びに明細書及び特許請求の範囲の他の部分に特段示されない限り、全ての部及びパーセンテージは、質量であり、温度は摂氏度であり、そして圧力は大気圧又は大気圧付近である。