【文献】
Min Wang,Jennifer M.Weinberg,and Karen L.Wooley,Synthesis,Characterization and Degradation of Poly(silyl ester)s,Macromolecules,1998年10月10日,vol.31,p7606-7612
【文献】
Jennifer M.Weinberg,Stephen P.Gitto,and Karen L.Wooley,Synthesis and Characterization of Degradable Poly(silyl ester)s,Macromolecules,1998年 1月13日,vol.31,p15-21
【文献】
L.H.Sommer,G.M.Goldberg,G.H.Barnes and L.S.Stone,JR.,Malonic Ester Syntheses with Organosilicon Compounds.New Silicon-containing Malonic Esters,Mono-and Dicarboxylic Acids,Barbituric Acids and a Disiloxanetetracarboxylic Acid,J.Am.Chem.Coc.,1954年,vol.76,No.6,p1609-1612
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(a)成分が、前記(i)成分と前記(ii)成分のモル比(ii)/(i)=1.1〜2.1の範囲で反応させたものであることを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。
前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃における可視光の屈折率が、1.45以上のものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃における光透過率が、80%以上のものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性に優れた硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とする。
また、本発明の硬化性組成物によって半導体素子が被覆され、信頼性に優れた半導体装置を提供することを別の目的とする。
また、本発明の硬化性組成物に好適に用いられるエステル結合含有有機ケイ素化合物を提供することをさらに別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)下記一般式(1)で表され、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有するエステル結合含有有機ケイ素化合物、
【化1】
(式中、Rは独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基であり、R
1は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基、ジメチルシリル基、メチルフェニルシリル基、及びジフェニルシリル基から選ばれる基であり、R
2は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の2価炭化水素基であり、R
3は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するケイ素化合物、及び
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
を含む硬化性組成物を提供する。
【0008】
このような硬化性組成物であれば、ガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性に優れた硬化物を与える硬化性組成物となる。
【0009】
またこのとき、前記(A)成分が、(a)下記一般式(2)で表されるエステル結合含有有機ケイ素化合物と、(b)下記一般式(3)で表される有機化合物、との付加反応生成物であることが好ましい。
【化2】
【化3】
(式中、R、R
1、R
2、R
3、及びnは前記と同様である。)
【0010】
このように(A)成分は、(a)成分と(b)成分との付加反応によって容易に得ることができる。
【0011】
またこのとき、前記(a)成分が、(i)下記一般式(4)で表されるエステル結合含有有機化合物と、(ii)下記一般式(5)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有するケイ素化合物、との付加反応生成物であることが好ましい。
【化4】
【化5】
(式中、R及びR
3は前記と同様であり、R
4は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の付加反応性炭素−炭素二重結合を有する1価炭化水素基である。)
【0012】
このように(a)成分は、(i)成分と(ii)成分との付加反応によって容易に得ることができる。
【0013】
またこのとき、前記(a)成分が、前記(i)成分と前記(ii)成分のモル比(ii)/(i)=1.1〜2.1の範囲で反応させたものであることが好ましい。
このようなモル比で反応させることで、分子鎖両末端にSiH基を有する(a)成分を効率良く得ることができる。
【0014】
またこのとき、前記Rが、置換又は非置換の炭素数3〜10の2価炭化水素基であることが好ましい。
特に、前記Rが、フェニレン基及び炭素数3〜10の2価脂肪族炭化水素基のいずれか又は両方であることが好ましい。
【0015】
このようなRであれば、よりガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性により優れた硬化物を与える硬化性組成物となる。
【0016】
またこのとき、前記nが、1〜5の整数であることが好ましい。
このようなnであれば、よりガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性により優れた硬化物を与える硬化性組成物となる。
【0017】
またこのとき、前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃における可視光の屈折率が、1.45以上のものであることが好ましい。
このような屈折率であれば、光学デバイスや光学部品用材料に好適に用いることができる。
【0018】
またこのとき、前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃における光透過率が、80%以上のものであることが好ましい。
このような光透過率であれば、光学デバイスや光学部品用材料に好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明では、上記の硬化性組成物の硬化物により半導体素子が被覆された半導体装置を提供する。
このような半導体装置であれば、ガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性に優れた硬化物によって被覆されているため、信頼性に優れた半導体装置となる。
【0020】
さらに、本発明では、下記一般式(1)で表され、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有するエステル結合含有有機ケイ素化合物を提供する。
【化6】
(式中、Rは独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基であり、R
1は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基、ジメチルシリル基、メチルフェニルシリル基、及びジフェニルシリル基から選ばれる基であり、R
2は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の2価炭化水素基であり、R
3は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
【0021】
このようなエステル結合含有有機ケイ素化合物であれば、上述の本発明の硬化性組成物に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の硬化性組成物であれば、ガス透過性が低く、耐クラック性に優れ、可視光の屈折率が大きく、短波長領域の光線についても光透過性が高く、透明性に優れ、基材に対する密着性が高い硬化物を与える硬化性組成物となる。
従って、本発明の硬化性組成物は、LED素子の保護、封止、接着、波長変更、波長調整、又はレンズ等の用途に好適に使用できる。また、レンズ材料、光学デバイスもしくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子デバイスもしくは電子部品用絶縁材料、さらにはコーティング材料としても有用である。
また、このような本発明の硬化性組成物の硬化物により半導体素子が被覆された本発明の半導体装置であれば、ガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性に優れた硬化物によって被覆されているため、信頼性に優れた半導体装置となる。
また、本発明のエステル結合含有有機ケイ素化合物であれば、上述の本発明の硬化性組成物に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述のように、銀基板の腐食とクラックの発生を抑制できる光デバイス材料、特に、LED素子用の封止材の開発が求められていた。
【0024】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、エステル結合を主鎖にもつポリマーを光デバイス材料に用いることで、上述した銀基板の腐食とクラックの問題を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
即ち、本発明は、
(A)下記一般式(1)で表され、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有するエステル結合含有有機ケイ素化合物、
【化7】
(式中、Rは独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基であり、R
1は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基、ジメチルシリル基、メチルフェニルシリル基、及びジフェニルシリル基から選ばれる基であり、R
2は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の2価炭化水素基であり、R
3は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するケイ素化合物、及び
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
を含む硬化性組成物である。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
本発明では、下記一般式(1)で表され、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有するエステル結合含有有機ケイ素化合物を提供する。
【化8】
(式中、Rは独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基であり、R
1は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基、ジメチルシリル基、メチルフェニルシリル基、及びジフェニルシリル基から選ばれる基であり、R
2は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の2価炭化水素基であり、R
3は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
【0028】
このようなエステル結合含有有機ケイ素化合物は、以下に詳述する本発明の硬化性組成物の(A)成分として好適に用いることができる。
【0029】
以下、本発明の硬化性組成物について詳しく説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、上述の本発明のエステル結合含有有機ケイ素化合物であり、
即ち、下記一般式(1)で表され、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有するエステル結合含有有機ケイ素化合物である。
【化9】
(式中、Rは独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基であり、R
1は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基、ジメチルシリル基、メチルフェニルシリル基、及びジフェニルシリル基から選ばれる基であり、R
2は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の2価炭化水素基であり、R
3は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、nは1〜10の整数である。)
【0030】
(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合の数は、1分子中に2個以上であり、特に、付加反応性炭素−炭素二重結合を分子鎖両末端のみに(即ち、2個)有するものであれば、硬化物の耐クラック性及び柔軟性が良好となるため好ましい。
【0031】
上記一般式(1)中、Rは独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基であり、好ましくは置換又は非置換の炭素数3〜10の2価炭化水素基、より好ましくはフェニレン基及び炭素数3〜10の2価脂肪族炭化水素基のいずれか又は両方である。
このようなRであれば、よりガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性により優れた硬化物を与える硬化性組成物となるため好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、R
1は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜12の2価炭化水素基、ジメチルシリル基、メチルフェニルシリル基、及びジフェニルシリル基から選ばれる基であり、好ましくはジメチルシリル基である。
【0033】
上記一般式(1)中、R
2は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の2価炭化水素基であり、原料の入手容易性からプロピレン基であることが好ましい。
【0034】
上記一般式(1)中、R
3は独立に、置換又は非置換の炭素数1〜8のアルキル基であり、原料の入手容易性からメチル基であることが好ましい。
【0035】
また上記一般式(1)中、nは1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。
このようなnであれば、よりガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性により優れた硬化物を与える硬化性組成物となるため好ましい。
【0036】
このような(A)成分は、例えば(a)下記一般式(2)で表されるエステル結合含有有機ケイ素化合物と、(b)下記一般式(3)で表される有機化合物、との付加反応によって容易に得ることができる。
【化10】
【化11】
(式中、R、R
1、R
2、R
3、及びnは前記と同様である。)
【0037】
上記(a)成分は、例えば(i)下記一般式(4)で表されるエステル結合含有有機化合物と、(ii)下記一般式(5)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有するケイ素化合物、との付加反応によって容易に得ることができる。
【化12】
【化13】
(式中、R及びR
3は前記と同様であり、R
4は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の付加反応性炭素−炭素二重結合を有する1価炭化水素基である。)
【0038】
上記一般式(4)中、R
4は独立に、置換又は非置換の炭素数2〜8の付加反応性炭素−炭素二重結合を有する1価炭化水素基であり、原料の入手容易性からアリル基であることが好ましい。
【0039】
上記(i)成分の一般式(4)で表されるエステル結合含有有機化合物としては、具体的には以下の構造式で示されるものが好適に用いられるが、(i)成分はこれらに限定されるものではない。
【化14】
【0040】
なお、(i)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0041】
上記(ii)成分の一般式(5)で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有するケイ素化合物としては、具体的には以下の構造式で示されるものが好適に用いられるが、(ii)成分はこれらに限定されるものではない。
【化15】
【0042】
なお、(ii)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0043】
上記(b)成分の一般式(3)で表される有機化合物としては、具体的には以下の構造式で示されるものが好適に用いられるが、(b)成分はこれらに限定されるものではない。
【化16】
【0044】
なお、(b)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0045】
<(A)成分の合成>
(A)成分の合成は、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、エステル結合と付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する上記(i)成分と、SiH基を2個有する上記(ii)成分を、モル比(ii)/(i)が1を越え10以下、好ましくは1を越え5以下、さらに好ましくは1.1以上2.1以下となるように混合し、ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させ、分子鎖両末端にSiH基を有する(a)成分を合成する。
このように(ii)成分が過剰量となるモル比で反応させることで、分子鎖両末端に(ii)成分に由来するSiH基を有する(a)成分を効率良く得ることができる。
【0046】
次に、このようにして合成した(a)成分と、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する上記(b)成分を、モル比(b)/(a)が1を越え10以下、好ましくは1を越え5以下となるように混合し、ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させ、目的の(A)成分を合成する。
このように(b)成分が過剰量となるモル比で反応させることで、分子鎖両末端に(b)成分に由来する付加反応性炭素−炭素二重結合を有する(A)成分を効率良く得ることができる。
【0047】
ヒドロシリル化反応触媒としては、従来から公知のものを使用することができる。
例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、付加反応条件、溶媒の使用等については、特に限定されず通常のとおりとすればよい。
【0048】
なお、(A)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0049】
[(B)成分]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するケイ素化合物であり、この(B)成分中のSiH基は、上述の(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合とヒドロシリル化反応により付加して、硬化物を与えるものである。
なお、得られる硬化物の構造としては、3次元網状構造であることが好ましいため、(B)成分としてはSiH基を1分子中に3個以上有するものであることが好ましい。
【0050】
(B)成分としては、下記平均組成式(6)で表される1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を有し、かつ25℃での粘度が1,000mPa・s以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び下記一般式(7)で表されるオルガノハイドロジェンシランのいずれか、又はこれらの組合せが好ましい。
R’
xH
ySiO
(4−x−y)/2 (6)
R’
zSiH
(4−z) (7)
(式中、R’は同一又は異種の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、x及びyは0.7≦x≦2.1、0.001≦y≦1.0、かつ0.8≦x+y≦2.6、好ましくは0.8≦x≦2、0.01≦y≦1、1≦x+y≦2.4を満たす正数であり、zは1又は2である。)
【0051】
上記R’は、同一又は異種の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜12の一価炭化水素基であるが、特に脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。
このようなR’としては、メチル基又はフェニル基が好ましい。
【0052】
上記オルガノハイドロジェンシランとしては、(CH
3)SiH
3、(CH
3)
2SiH
2、(C
6H
5)SiH
3などが挙げられ、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0053】
上記のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は3〜1,000、特に3〜300程度であることが好ましい。
【0054】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、1,000mPa・s以下、より好ましくは0.1〜500mPa・s、さらに好ましくは0.5〜300mPa・sである。
【0055】
なお、上述の(A)成分がフェニレン基を有する場合、(B)成分のオルガノハイドロジェンシラン又はオルガノハイドロジェンポリシロキサンはフェニル基を有することが、透明性の確保、保存中の分離防止のためにも好ましい。この場合、上記式(6)において、ケイ素原子に結合する全基(R’と水素原子)のうち5モル%以上、より好ましくは8〜50モル%、さらに好ましくは10〜30モル%がフェニル基であることが好ましい。また、式(6)において、ケイ素原子に結合する全基(R’と水素原子)のうち15モル%未満、好ましくは10モル%以上15モル%未満がフェニル基であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ケイ素原子に結合する全基(R’と水素原子)のうち15モル%以上、好ましくは15モル%以上50モル%以下がフェニル基であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを質量比1:9〜9:1、特に3:7〜7:3で併用したものが好ましい。
【0056】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して2〜100質量部、特に10〜100質量部とすることが好ましい。
また、(B)成分は、(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合と(B)成分中のSiH基のモル比(SiH基/付加反応性炭素−炭素二重結合)が0.5〜5、好ましくは0.8〜4、より好ましくは1〜3となる量で配合してもよい。
【0057】
(B)成分としては、上述のオルガノハイドロジェンポリシロキサン又はオルガノハイドロジェンシラン以外のものとして、例えば下記構造式で示されるものを使用してもよい。
【化17】
(式中、Meはメチル基、sは1〜100、好ましくは1〜10の整数である。)
【0058】
なお、(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0059】
[(C)成分]
本発明の硬化性組成物の(C)成分であるヒドロシリル化反応触媒は、上記(A)成分の合成で記載したものと同じである。
(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A)成分と(B)成分との合計質量に対して、白金族金属原子として、通常、1〜500ppm、特に2〜100ppm程度となる量を配合することが好ましい。このような配合量とすることで、硬化反応に要する時間が適度のものとなり、硬化物が着色する等の問題を生じることがない。
【0060】
[他の配合成分]
本発明の硬化性組成物には、上記(A)〜(C)成分に加えて、必要に応じて他の成分を配合してもよい。
【0061】
<酸化防止剤>
本発明の硬化性組成物の硬化物中には、上記(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合が未反応のまま残存している場合があり、未反応の付加反応性炭素−炭素二重結合が含まれていると、大気中の酸素により酸化され硬化物が着色する恐れがある。
そこで、本発明の硬化性組成物に、必要に応じて、酸化防止剤を配合することにより着色を未然に防止することができる。
【0062】
この酸化防止剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。また、これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
なお、この酸化防止剤を使用する場合、その配合量は、酸化防止剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A)成分と(B)成分との合計質量に対して、通常、10〜10,000ppm、特に100〜1,000ppm程度配合することが好ましい。このような配合量とすることで、酸化防止能力が十分発揮され、着色、白濁、酸化劣化等の発生がなく、より光学的特性に優れた硬化物が得られる。
【0063】
<粘度・硬度調整剤>
本発明の硬化性組成物の粘度、もしくは組成物から得られる硬化物の硬度等を調整したり、強度を向上させたり、蛍光体を配合する場合にその分散を良くするために、ナノシリカや、溶融シリカ、結晶性シリカ、酸化チタン、ナノアルミナ、アルミナ等の無機充填剤を添加しても良い。
【0064】
<付加反応制御剤>
また、ポットライフを確保するために、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等の付加反応制御剤を配合してもよい。
【0065】
<光安定剤>
さらに、太陽光線、蛍光灯等の光エネルギーによる光劣化に
対する抵抗性を付与するため光安定剤を用いることも可能である。
この光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系安定剤が適しており、また上述の酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果はより向上する。
光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0066】
<その他>
また、本発明の硬化性組成物を封止材料として用いる場合には、基材との接着性を向上させるためにグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を配合してもよいし、クラック防止のために可塑剤を添加してもよい。
【0067】
本発明の硬化性組成物の硬化条件については、その量により異なり、特に制限されないが、通常、60〜180℃、5〜180分の条件とすることが好ましい。
【0068】
本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃における可視光(波長589nm)の屈折率としては、1.45以上であることが好ましく、このような屈折率であれば、光学デバイスや光学部品用材料に好適に用いることができる。
【0069】
また、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の25℃における光透過率としては、80%以上であることが好ましく、このような光透過率であれば、光学デバイスや光学部品用材料に好適に用いることができる。
【0070】
また、銀基板の腐食抑制の観点から、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物のガス透過率としては、300cc/m
2・
day以下であることが好ましい。
【0071】
以上のように、本発明の硬化性組成物であれば、ガス透過性が低く、耐クラック性に優れ、可視光の屈折率が大きく、短波長領域の光線についても光透過性が高く、透明性に優れ、基材に対する密着性が高い硬化物を与える硬化性組成物となる。
従って、本発明の硬化性組成物は、LED素子の保護、封止、接着、波長変更、波長調整、又はレンズ等の用途に好適に使用できる。また、レンズ材料、光学デバイスもしくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学用材料、電子デバイスもしくは電子部品用絶縁材料、さらにはコーティング材料としても有用である。
【0072】
さらに、本発明では、上述の本発明の硬化性組成物の硬化物により半導体素子が被覆された半導体装置を提供する。
【0073】
このような半導体装置であれば、ガス透過性が低く、耐クラック性及び光透過性に優れた硬化物によって被覆されているため、信頼性に優れた半導体装置となる。
【実施例】
【0074】
以下、合成例、実施例、及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(合成例1) (A−1)成分の合成
撹拌装置、冷却管、滴下ロート、及び温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、p−ジメチルシリルベンゼン155.5g(0.8mol)とトルエン50gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これに白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製)を0.1g加え、さらにフタル酸ジアリル98.5g(0.4mol)を滴下した。滴下終了後、85〜95℃で5時間撹拌し、5時間経過した時点で濃縮し、溶剤のトルエンと未反応のp−ジメチルシリルベンゼンを除去し、下記構造式で示される中間体を得た。除去後、予めヘキサジエン65.6g(0.8mol)とトルエン50g、CAT−PL−50T 0.05gを入れ85℃に加熱されている撹拌装置、冷却管、滴下ロート、及び温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、中間体を滴下した。
【0076】
以下に中間体の構造式を示す。
【化18】
(式中、n
0は1、2、又は3である。)
【0077】
中間体の滴下終了後、85〜95℃で5時間撹拌した。撹拌終了後室温に戻し、活性炭を3g加え1時間撹拌した。撹拌後ろ過、濃縮し、(A−1)成分232gを得た(収率81%)。
(A−1)成分を、NMR、GPC等により分析した結果、(A−1)成分は、下記構造式中のn
1が1である(A−1−1)、n
1が2である(A−1−2)、n
1が3である(A−1−3)の混合物であり、混合物中のモル比は(A−1−1):(A−1−2):(A−1−3)≒4:3:2であった。また、混合物全体としての付加反応性炭素−炭素二重結合の含有割合は、0.17モル/100gであった。
【0078】
以下に(A−1)成分の構造式を示す。
【化19】
(式中、n
1は1、2、又は3である。)
【0079】
(合成例2) (A−2)成分の合成
合成例1において、ヘキサジエンの代わりにオクタジエン88.2g(0.8mol)を用いて、(A−2)成分261gを得た(収率76%)。
(A−2)成分を、NMR、GPC等により分析した結果、(A−2)成分は、下記構造式中のn
2が1である(A−2−1)、n
2が2である(A−2−2)、n
2が3である(A−2−3)の混合物であり、混合物中のモル比は(A−2−1):(A−2−2):(A−2−3)≒4:3:2であった。また、混合物全体としての付加反応性炭素−炭素二重結合の含有割合は、0.13モル/100gであった。
【0080】
以下に(A−2)成分の構造式を示す。
【化20】
(式中、n
2は1、2、又は3である。)
【0081】
(合成例3) (A−3)成分の合成
合成例1において、ヘキサジエンの代わりにジメチルジビニルシラン89.84g(0.8mol)を用いて、(A−3)成分283gを得た(収率82%)。
(A−3)成分を、NMR、GPC等により分析した結果、(A−3)成分は、下記構造式中のn
3が1である(A−3−1)、n
3が2である(A−3−2)、n
3が3である(A−3−3)の混合物であり、混合物中のモル比は(A−3−1):(A−3−2):(A−3−3)≒4:3:1であった。また、混合物全体としての付加反応性炭素−炭素二重結合の含有割合は、0.19モル/100gであった。
【0082】
以下に(A−3)成分の構造式を示す。
【化21】
(式中、n
3は1、2、又は3である。)
【0083】
(実施例1)
合成例1にて合成した(A−1)成分100質量部に、ケイ素原子に結合したメチル基、フェニル基、水素原子(SiH基)の合計に対してフェニル基を30モル%有する水素ガス発生量が150ml/gである粘度10mPa・sのフェニルメチルハイドロジェンシロキサンを25質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.2質量部添加し、シランカップリング剤としてグリシドキシプロピルトリメトキシシランを1質量部添加した。この混合物に白金触媒を白金原子の質量換算で20ppm添加後、均一に混合して硬化性組成物を得た。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、(A−1)成分100質量部の代わりに合成例2にて合成した(A−2)成分100質量部を用いた以外は実施例1と同様の手順で硬化性組成物を得た。
【0085】
(実施例3)
実施例1において、(A−1)成分100質量部の代わりに合成例3にて合成した(A−3)成分100質量部を用いた以外は実施例1と同様の手順で硬化性組成物を得た。
【0086】
(比較例1)
トルエン300g、水300gを仕込み、フェニルトリメトキシシラン109g(0.55mol)、ビニルメチルジクロロシラン35g(0.25mol)、ジメチルジクロロシラン25.8g(0.2mol)を滴下し、50〜60℃で5時間、加水分解反応を行った。反応終了後、水層が中性になるまで水洗を行い、(C
6H
5)SiO
3/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)SiO
2/2単位及び(CH
3)
2SiO
2/2単位からなり、平均組成が(CH
3)
0.65(C
6H
5)
0.55(CH
2=CH)
0.25SiO
1.28のオルガノポリシロキサン共重合体(シリコーンレジン)の50質量%トルエン溶液を190g調製した。
このレジン溶解物100質量部に、両末端がビニルジメチルシリル基によって封鎖され、ケイ素原子に結合したメチル基、フェニル基、ビニル基の合計に対してフェニル基を30モル%有する粘度が700mPa.s、屈折率が1.51のフェニルメチルシロキサンを15質量部添加し、ケイ素原子に結合したメチル基、フェニル基、水素原子(SiH基)の合計に対してフェニル基を30モル%有する水素ガス発生量が150ml/gである粘度10mPa・sのフェニルメチルハイドロジェンシロキサンを15質量部添加し、混合した後、150℃で留出分がなくなるまで減圧下でストリップを行った。これを室温まで冷却した後、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.2質量部添加し、グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1質量部添加した。この混合物に白金触媒を白金原子の質量換算として20ppm添加後、均一に混合して、硬化性組成物を得た。
【0087】
(比較例2)
トルエン500g、水500gを仕込み、フェニルトリクロロシラン116g(0.55mol)、ビニルメチルジクロロシラン35g(0.25mol)、ジメチルジクロロシラン26g(0.2mol)を滴下し、50〜60℃で5時間、加水分解反応を行った。反応終了後、水層が中性になるまで水洗を行い、(C
6H
5)SiO
3/2単位、(CH
2=CH)(CH
3)SiO
2/2単位及び(CH
3)
2SiO
2/2単位からなり、平均組成が(CH
3)
0.65(C
6H
5)
0.55(CH
2=CH)
0.25SiO
1.28で示されるオルガノポリシロキサン樹脂共重合体(シリコーンレジン)の50質量%トルエン溶液を調製した。
このレジン溶解物100質量部に、ケイ素原子に結合したメチル基、フェニル基、水素原子(SiH基)の合計に対してフェニル基を20モル%有する水素ガス発生量が150ml/gである粘度10mPa・sのフェニルメチルハイドロジェンシロキサンを10質量部添加し、混合した後、150℃で留出分がなくなるまで減圧下でストリップを行った。これを室温まで冷却した後、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールを0.2質量部添加し、グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1質量部添加した。この混合物に白金触媒を白金原子の質量換算として20ppm添加後、均一に混合して、硬化性組成物を得た。
【0088】
<性能評価手法>
上記の実施例及び比較例で得られた硬化性組成物の硬化物について、下記手法に従い性能を評価した。
【0089】
[硬さ]
各組成物を撹拌混合、脱泡後、ガラス板を組み合わせた型の中に2mmの厚さになるように流し込み、120℃で30分加熱して硬化させ、150℃の乾燥機で3時間ポストキュアーを行い、サンプルを作製した。ASTM D 2240に準じて、各硬化物の硬度(Shore D)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0090】
[屈折率]
上記の硬さ試験で用いた各硬化物のサンプルについて、ATAGO製デジタル屈折計RX−5000を用いて、25℃における波長589nmの光に対する屈折率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0091】
[光透過率]
上記の硬さ試験で用いた各硬化物のサンプルについて、分光光度計を用いて、25℃における波長400nmの光に対する透過率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0092】
[耐クラック性(耐久性)]
各組成物をチップタイプのLED回路に流し込んだものを260℃に3分間曝し、各LED回路を覆う硬化物部分のクラックの有無を確認した。さらに、各組成物の硬化物で封止されたLED回路を−40℃、30分→120℃、30分を1サイクルとする熱衝撃試験機に入れ、500サイクル後における各LED回路上の硬化物部分のクラックの有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0093】
[酸素ガス透過性]
各組成物を撹拌混合、脱泡後、ガラス板で組んだ型の中に1mm厚になるように流し込み、120℃で30分加熱して硬化させて、150℃の乾燥機で3時間ポストキュアーを行い、サンプルを作製した。各硬化物の酸素ガス透過性を、イリノイインスツルメンツ社製モデル8000を使用し、測定した。測定結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1に示されるように、本発明の硬化性組成物の(A)成分であるエステル結合含有有機ケイ素化合物を含む実施例1〜3の硬化物は、光透過率に優れ、耐久性試験においてクラックが発生せず、また酸素ガス透過性が低かった。
一方、本発明の硬化性組成物の(A)成分を含まない比較例1及び比較例2の硬化物は、耐久性試験においてクラックが発生し、また酸素ガス透過性が高かった。
【0096】
以上のことから、本発明の硬化性組成物であれば、ガス透過性が低く、温度変化によるクラックの発生を抑制でき、光透過性に優れることが示された。また、ガス透過性が低いことから、銀基板の腐食を抑制できることが示唆された。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。