特許第6039079号(P6039079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039079
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】光配向膜用組成物および光配向膜
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20161128BHJP
   C08F 36/20 20060101ALI20161128BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20161128BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20161128BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20161128BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
   G02F1/1337 525
   C08F36/20
   C08F2/46
   C08G73/10
   C08F2/00 C
   C08F2/44 C
【請求項の数】17
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2015-528411(P2015-528411)
(86)(22)【出願日】2013年9月10日
(65)【公表番号】特表2015-527617(P2015-527617A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】KR2013008177
(87)【国際公開番号】WO2014038922
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0100031
(32)【優先日】2012年9月10日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0108197
(32)【優先日】2013年9月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン−ビン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スン−ホ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ドン−ウ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】スン−ヨン・ファン
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−018807(JP,A)
【文献】 特開2009−258650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系光配向性重合体と、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤とを含む光配向膜用組成物であって、
前記環状オレフィン系光配向性重合体は、下記の化学式3または4の繰り返し単位を含み、かつ、下記の化学式1aのシンナメート系光反応基を有する、光配向膜用組成物
【化2】
上記化学式3および4において、
nは、50乃至5,000であり、
pは、0乃至4の整数であり、
、R、R、およびRのうちの少なくとも一つは、下記化学式1aのシンナメート系光反応基であり、残りは、互いに同一もしくは異なってもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数5乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基であり、
【化1】
上記化学式1aにおいて、
lは、0または1であり、
DおよびD’は、それぞれ独立して、単純結合;酸素;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキレン;および置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキレンオキシドからなる群より選択され、
Eは、単純結合;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキレン;または置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリーレンオキシドであり、
YおよびZは、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキルであり、
10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6乃至30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;14族、15族または16族のヘテロ元素を含む炭素数6乃至40のヘテロアリール;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアルコキシアリール;シアノ;ニトリル;ニトロ;およびヒドロキシからなる群より選択される。
【請求項2】
ポリアミック酸エステル系光配向補助剤は、化学式5または6の繰り返し単位を含む請求項1に記載の光配向膜用組成物:
【化3】
上記化学式5および6において、
mは、100乃至10000であり、
qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至4の整数であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基であり、
化学式6において、R21およびR22が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R21同士が互いに連結されるかR22同士が互いに連結されて、炭素数4乃至12の飽和または不飽和環、または炭素数6乃至24の芳香族環を形成するか、R21およびR22が互いに連結されて、炭素数1乃至10のアルキリデングループを形成することができ、
Aは、単純結合、酸素、硫黄、リンまたは−NH−であり、
23およびR24は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基であり、
Raは、置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキルまたは置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリールである。
【請求項3】
ポリアミック酸エステル系光配向補助剤は、化学式5aまたは化学式6aのジアンヒドリド化合物のエステル誘導体と、化学式5bのジアミン化合物の縮重合体である請求項に記載の光配向膜用組成物:
【化4】
上記化学式5a、5bおよび6aにおいて、
qおよびrは、それぞれ独立して、0乃至4の整数であり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基であり、
化学式6aにおいて、R21およびR22が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R21同士が互いに連結されるかR22同士が互いに連結されて、炭素数4乃至12の飽和または不飽和環、または炭素数6乃至24の芳香族環を形成するか、R21およびR22が互いに連結されて、炭素数1乃至10のアルキリデングループを形成することができ、
Aは、単純結合、酸素、硫黄、リンまたは−NH−であり、
23およびR24は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基である。
【請求項4】
環状オレフィン系光配向性重合体:ポリアミック酸エステル系光配向補助剤は、2:1乃至8:1の重量比で含まれる請求項1に記載の光配向膜用組成物。
【請求項5】
光硬化可能なバインダーおよび光開始剤をさらに含む請求項1に記載の光配向膜用組成物。
【請求項6】
光硬化可能なバインダーは、(メタ)アクリレート系化合物を含む請求項に記載の光配向膜用組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリレート系化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acryloyloxyethyl)isocyanurate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)からなる群より選択された1種以上を含む請求項に記載の光配向膜用組成物。
【請求項8】
トルエン(toluene)、アニソール(anisole)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、ジクロロエタン(dichloroethane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、シクロペンタン(cyclopentane)およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propylene glycol methyl ether acetate)からなる群より選択された1種以上の有機溶媒をさらに含む請求項1に記載の光配向膜用組成物。
【請求項9】
組成物の総固形分重量に対して、環状オレフィン系光配向性重合体およびポリアミック酸エステル系光配向補助剤を合した重合体の35乃至75重量%、バインダーの20乃至60重量%および光開始剤1乃至6重量%を含む請求項に記載の光配向膜用組成物。
【請求項10】
固形分含量が1乃至15重量%である請求項に記載の光配向膜用組成物。
【請求項11】
請求項1の光配向膜用組成物またはその硬化物を含む光配向膜。
【請求項12】
少なくとも一部の光反応基が光配向された環状オレフィン系光配向性重合体と、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤を含む請求項11に記載の光配向膜。
【請求項13】
請求項11の光配向膜と、光配向膜上の液晶層とを含む液晶配向膜。
【請求項14】
前記液晶層に隣接した光配向膜の上部表面には、反対側の下部表面に比べて高い含量の環状オレフィン系光配向性重合体が分布する請求項13に記載の液晶配向膜。
【請求項15】
前記液晶層に隣接した光配向膜の上部表面には、反対側の下部表面に比べて低い含量のポリアミック酸エステル系光配向補助剤が分布する請求項13に記載の液晶配向膜。
【請求項16】
TOF−SIMSで分析または測定した時、前記液晶層に隣接した光配向膜の上部表面で、前記環状オレフィン系光配向性重合体の末端に結合された置換基に由来するピークの強度が反対側の下部表面のピーク強度に比べて高い請求項14または15に記載の液晶配向膜。
【請求項17】
請求項13の液晶配向膜を含む液晶セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向膜用組成物および光配向膜に関するものである。より具体的に、本発明は、優れた熱的安定性、配向性および配向速度を示しながらも、液晶セルに適用された時、残像が抑制され電圧保有率をより向上させることができる光配向膜用組成物と、これから形成される光配向膜、液晶配向膜および液晶セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、液晶ディスプレイが大型化されモバイルフォンやノートパソコンなどの個人用から次第に壁掛けTVなどの家庭用に用途が拡張されることにより、液晶ディスプレイに対しては高画質、高品位化および広視野角が要求されている。特に、薄膜トランジスタによって駆動される薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT−LCD)は、個々の画素を独立して、駆動させるため、液晶の応答速度が非常に優れており高画質の動画像を実現することができ、次第に応用範囲が拡張されている。
【0003】
このようなTFT−LCDにおいて液晶が光スイッチとして使用され得るためには、ディスプレイセルの最も内側の薄膜トランジスタが形成された層の上に液晶が一定の方向に初期配向されなければならず、このために液晶配向膜が使用されている。特に、最近はUVのような光によって液晶配向膜を配向させる光配向方法の適用が広く検討されている。
【0004】
通常、このような光配向のためには、液晶層下部に光反応基を有する光配向性重合体を含む光配向膜を形成し、このような光配向膜に線偏光されたUVを照射して光反応を起こす。その結果、光配向性重合体の主鎖が一定の方向に配列するようになる光配向が起こり、このように光配向された光配向膜の影響で上部の液晶層に含まれている液晶が配向され得る。
【0005】
このような光配向性重合体の代表的な例としては、本発明者らの韓国特許登録第0789247号、第0671753号または0982394号などに開示された環状オレフィン系光配向性重合体がある。このような環状オレフィン系光配向性重合体は、環状オレフィン系主鎖構造に起因して優れた熱的安定性を示すだけでなく、優れた光反応性、光配向性および配向速度などを示すことによって、前記光配向性重合体として好ましく使用され得る。
【0006】
しかし、このような環状オレフィン系光配向性重合体およびこれを含む光配向膜を液晶配向のために液晶セルに適用する場合、光反応および光配向がまだ行なわれない光配向性重合体の光反応基や主鎖の揺れなどにより、残像が発生したり電圧保有率が低下する問題点が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許登録第0789247号
【特許文献2】韓国特許登録第0671753号
【特許文献3】韓国特許登録第0982394号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた熱的安定性、配向性および配向速度を示しながらも、液晶セルに適用された時、残像が抑制され電圧保有率をより向上させることができる光配向膜用組成物と、これから形成される光配向膜を提供することである。
また、本発明の目的は、前記光配向膜を含む液晶配向膜および液晶セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、環状オレフィン系光配向性重合体と、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤とを含む光配向膜用組成物を提供する。
また、本発明は、前記光配向膜用組成物またはその硬化物を含む光配向膜を提供する。
本発明はまた、前記光配向膜と、光配向膜上の液晶層とを含む液晶配向膜および液晶セルを提供する。
【0010】
以下、発明の実施形態による光配向膜用組成物、これから形成される光配向膜、液晶配向膜および液晶セルなどについて説明する。
【0011】
本明細書で使用されるいくつかの用語は、特別に異なる意味が説明されない限り、次のような意味に定義され得る。
【0012】
ある物質、重合体または官能基などが“光配向性”または“光反応性”を示すことができるというのは、直線偏光、例えば、線偏光されたUVを照射する場合、該当物質、重合体または官能基などが偏光方向による所定方向に展開または配列され得るため、液晶化合物の整列または配向を誘発することができるのを意味する。
【0013】
ある組成物の“硬化物”または組成物が“硬化された”というのは、該当組成物の構成成分中の硬化または架橋可能な不飽和基を有する構成成分が全部硬化、架橋または重合された場合だけでなく、その一部が硬化、架橋または重合された場合までも包括することができる。
【0014】
一方、発明の一実施形態によれば、環状オレフィン系光配向性重合体と、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤とを含む光配向膜用組成物が提供される。
【0015】
一実施形態の光配向膜用組成物は、基本的に環状オレフィン系光配向性重合体を含み、例えば、後述のシンナメート系光反応基などが環状オレフィン系主鎖に一つ以上結合されたものであってもよい。このような環状オレフィン系光配向性重合体は、本発明者らの韓国特許登録第0789247号、第0671753号または0982394号などに開示されたものであってもよい。
【0016】
このような環状オレフィン系光配向性重合体は、その主鎖構造によって高いガラス転移温度および優れた熱的安定性を示すだけでなく、優れた光反応性を有するシンナメート系光反応基などが主鎖に束縛されず主鎖末端に結合されることによって、優れた光反応性、光配向性および配向速度を示すのが知られている。一実施形態の光配向膜用組成物は、このような環状オレフィン系光配向性重合体を含むことによって、液晶セルに液晶配向などのために適用された時、優れた熱的安定性、配向性および配向速度などを示すことができる。
【0017】
但し、このような環状オレフィン系光配向性重合体は、光反応および光配向がまだ行なわれない光反応基や主鎖の揺れなどによって、液晶セルに適用時、残像が発生したり電圧保有率が低下することがあるのが確認された。
【0018】
しかし、本発明者らの実験結果、光配向膜にこのような環状オレフィン系光配向性重合体と共に、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤を含ませる場合、これら光配向性重合体および光配向補助剤の上昇作用によって、環状オレフィン系光配向性重合体特有の優れた配向性および配向速度を示しながらも、前記残像の発生または電圧保有率低下の問題点が解決できるのが確認された。
【0019】
これは、極性を帯びるポリアミック酸エステル系光配向補助剤が光配向性重合体との上昇作用によってDC電圧に起因する残像を改善する作用、効果を示すことができるためであって、主に次のような原理に基づくと予測できる。即ち、前記光配向膜用組成物で光配向膜を形成する過程で、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤と、光配向性重合体間の微細な相分離が起こるためと予測される。即ち、このような微細相分離によって、光配向補助剤は光配向膜下部に主に分布し、これと同時に光配向性重合体は液晶層と隣接する光配向膜上部に主に分布してもよい。その結果、光配向膜の光配向性重合体と、液晶層間の相互作用性がより向上でき、光配向膜と、液晶層間の電荷移動度がより向上できる。したがって、液晶配向性および電圧保有率がより向上でき、残像を誘発する液晶層中の電荷形態の不純物などがより速く除去され残像が大きく減少する。
【0020】
したがって、一実施形態の光配向膜は、液晶セルの液晶配向などのために非常に好ましく使用され得る。
【0021】
以下、一実施形態の光配向性組成物を各成分別により詳しく説明する。
【0022】
前記一実施形態の組成物は、環状オレフィン系光配向性重合体を含む。このような環状オレフィン系光配向性重合体は、より優れた光反応性、光配向性または配向速度などの側面から、下記の化学式1aのシンナメート系光反応基を有するものであり得る。
【0023】
【化1】
【0024】
上記化学式1aにおいて、lは0または1であり、DおよびD’はそれぞれ独立して、単純結合;酸素;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキレン;および置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキレンオキシドからなる群より選択され、Eは単純結合;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキレン;または置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリーレンオキシドであり、YおよびZはそれぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキルであり、R10、R11、R12、R13およびR14は互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6乃至30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;14族、15族または16族のヘテロ元素を含む炭素数6乃至40のヘテロアリール;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアルコキシアリール;シアノ;ニトリル;ニトロ;およびヒドロキシからなる群より選択される。
【0025】
また、前記環状オレフィン系光配向性重合体は、優れた熱的安定性や、光配向性などの側面から、下記の化学式3または4の繰り返し単位を含むものであり得る:
【0026】
【化2】
【0027】
上記化学式3および4において、nは50乃至5,000であり、pは0乃至4の整数であり、R、R、R、およびRのうちの少なくとも一つは前記化学式1aのシンナメート系光反応基であり、残りは互いに同一もしくは異なってもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数5乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基である。
【0028】
前記化学式3または4のようにノルボルネン系主鎖の末端にシンナメート系光反応基が一つ以上結合された環状オレフィン系光配向性重合体を含むことによって、一実施形態の組成物から形成された光配向膜はより優れた熱的安定性を示すことができる。また、このような化学式3または4のような構造では、光反応基が他の置換基の影響を受けず、より自由に移動して光反応を起こすことができるので、前記環状オレフィン系光配向性重合体は光配向膜のより向上した光配向性または光反応性を担保することができる。
【0029】
前述の環状オレフィン系光配向性重合体としては、韓国特許登録第0789247号、第0671753号または0982394号などに開示されたものを使用するか、その他の様々な光反応基を有する多様な光配向性重合体を使用することができる。
【0030】
一方、前記化学式3および4の繰り返し単位において、前記非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)は、下記官能基からなる群より選択されたものであり得、その他にも多様な極性官能基であり得る:
−OR、−OC(O)OR、−ROC(O)OR、−C(O)OR、−RC(O)OR、−C(O)R、−RC(O)R、−OC(O)R、−ROC(O)R、−(RO)−OR、−(OR−OR、−C(O)−O−C(O)R、−RC(O)−O−C(O)R、−SR、−RSR、−SSR、−RSSR、−S(=O)R、−RS(=O)R、−RC(=S)R−、−RC(=S)SR、−RSO、−SO、−RN=C=S、−N=C=S、−NCO、−R−NCO、−CN、−RCN、−NNC(=S)R、−RNNC(=S)R、−NO、−RNO
【0031】
【化3A】
【化3B】
【化3C】
【化3D】
【0032】
前記極性官能基で、Rは互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数1乃至20の線状または分枝状アルキレン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数2乃至20の線状または分枝状アルケニレン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数3乃至20の線状または分枝状アルキニレン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキレン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリーレン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルコキシレン;またはハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のカルボニルオキシレン、R、RおよびRは互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数1乃至20の線状または分枝状アルキル;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数2乃至20の線状または分枝状アルケニル;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数3乃至20の線状または分枝状アルキニル;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルコキシ;またはハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルおよびシロキシから選択された1以上の置換基に置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のカルボニルオキシであり、kはそれぞれ独立して、1乃至10の整数である。
【0033】
また、前記化学式3および4の繰り返し単位において、前記14族、15族または16族のヘテロ元素が含まれている炭素数6乃至40のヘテロアリール基、または炭素数6乃至40のアリール基は、下記官能基からなる群より選択された1種以上であり得るが、これにのみ限定されるのではない:
【0034】
【化4】
【0035】
上記化学式において、R’10、R’11、R’12、R’13、R’14、R’15、R’16、R’17、およびR’18のうちの少なくとも一つは、置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルコキシであるか、置換もしくは非置換の炭素数6乃至30のアリールオキシであり、残りは互いに同一もしくは異なってもよく、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルコキシ、置換もしくは非置換の炭素数6乃至30のアリールオキシ、または置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリールである。
【0036】
前述の環状オレフィン系光配向性重合体は、化学式3または4の繰り返し単位などの単一の繰り返し単位からなる単一重合体であってもよいが、2種以上の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0037】
また、前述の環状オレフィン系光配向性重合体の構造において、各置換基は次のように定義され得る:
【0038】
まず、“アルキル”は、1乃至20個、好ましくは1乃至10個、より好ましくは1乃至6個の炭素原子の線状または分枝状飽和1価炭化水素部位を意味する。アルキル基は、非置換のものだけでなく、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ヨードメチル、ブロモメチルなどが挙げられる。
【0039】
“アルケニル”は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む2乃至20個、好ましくは2乃至10個、より好ましくは2乃至6個の炭素原子の線状または分枝状1価炭化水素部位を意味する。アルケニル基は炭素−炭素二重結合を含む炭素原子によって、または飽和された炭素原子によって結合され得る。アルケニル基は非置換のものだけでなく、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。アルケニル基の例として、エテニル、1−プロフェニル、2−プロフェニル、2−ブテニル、3−ブテニルを、ペンテニル、5−ヘキセニル、ドデセニルなどが挙げられる。
【0040】
“アルキニル”は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む2乃至20個の炭素原子、好ましくは2乃至10個、より好ましくは2乃至6個の線状または分枝状の1価炭化水素部位を意味する。アルキニル基は炭素−炭素三重結合を含む炭素原子によって、または飽和された炭素原子によって結合され得る。アルキニル基は後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。例えば、エチニルおよびプロピニルなどが挙げられる。
【0041】
“シクロアルキル”は、3乃至12個の環炭素の飽和または不飽和された非芳香族1価単環式、二環式または三環式炭化水素部位を意味し、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロへプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、アダマンチル、ノルボルニル(即ち、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エニル)などが挙げられる。
【0042】
“アリール”は、6乃至40個、好ましくは6乃至12個の環原子を有する1価単環式、二環式または三環式芳香族炭化水素部位を意味し、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。アリール基の例として、フェニル、ナフタレニルおよびフルオレニルなどが挙げられる。
【0043】
“アルコキシアリール”は、前記定義されたアリール基の水素原子1つ以上がアルコキシ基に置換されているものを意味する。アルコキシアリール基の例として、メトキシフェニル、エトキシフェニル、プロポキシフェニル、ブトキシフェニル、ペントキシフェニル、ヘキソキシフェニル、ヘプトキシ、オクトキシ、ナノキシ、メトキシビフェニル、メトキシナフタレニル、メトキシフルオレニルあるいはメトキシアントラセニルなどが挙げられる。
【0044】
“アラルキル”は、前記定義されたアルキル基の水素原子が1つ以上がアリール基に置換されているものを意味し、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。例えば、ベンジル、ベンズヒドリルおよびトリチルなどが挙げられる。
【0045】
“アルキレン”は、1乃至20個、好ましくは1乃至10個、より好ましくは1乃至6個の炭素原子の線状または分枝状の飽和された2価炭化水素部位を意味する。アルキレン基は後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。アルキレン基の例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレンなどが挙げられる。
【0046】
“アルケニレン”は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む2乃至20個、好ましくは2乃至10個、より好ましくは2乃至6個の炭素原子の線状または分枝状の2価炭化水素部位を意味する。アルケニレン基は、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子によっておよび/または飽和された炭素原子によって結合され得る。アルケニレン基は、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。
【0047】
“シクロアルキレン”は、3乃至12個の環炭素の飽和されたまたは不飽和された非芳香族2価単環式、二環式または三環式炭化水素部位を意味し、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレンなどが挙げられる。
【0048】
“アリーレン”は、6乃至20個、好ましくは6乃至12個の環原子を有する2価単環式、二環式または三環式芳香族炭化水素部位を意味し、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。芳香族部分は炭素原子のみを含む。アリーレン基の例として、フェニレンなどが挙げられる。
【0049】
“アラルキレン”は、前記定義されたアルキル基の水素原子が1つ以上がアリール基に置換されている2価部位を意味し、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。例えば、ベンジレンなどが挙げられる。
【0050】
“アルキニレン”は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む2乃至20個の炭素原子、好ましくは2乃至10個、より好ましくは2乃至6個の線状または分枝状の2価炭化水素部位を意味する。アルキニレン基は、炭素−炭素三重結合を含む炭素原子によって、または飽和された炭素原子によって結合され得る。アルキニレン基は、後述の一定の置換基によってさらに置換されたものも包括して称することができる。例えば、エチニレンまたはプロピニレンなどが挙げられる。
【0051】
以上で説明した置換基が“置換もしくは非置換”というのは、これら各置換基自体だけでなく、一定の置換基によってさらに置換されたものも包括されるのを意味する。本明細書で、各置換基にさらに置換され得る置換基の例としては、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルまたはシロキシなどが挙げられる。
【0052】
前述の光配向性重合体の製造方法は、様々な光配向性重合体が開示された多様な文献などから当業者に自明に知られている。このような文献の例は既に前述したとおりである。
【0053】
例えば、前述の光配向性重合体が化学式3の繰り返し単位を含む場合、このような重合体は、10族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、化学式2の単量体を付加重合して化学式3の繰り返し単位を形成する方法で製造できる:
【0054】
【化5】
【0055】
上記化学式2において、p、R、R、R、およびRは化学式3で定義されたとおりである。
【0056】
また、前記光配向性重合体が化学式4の繰り返し単位を含む場合、このような重合体は、4族、6族、または8族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、前記化学式2の単量体を開環重合して化学式4の繰り返し単位を形成する段階を含む方法で製造できる。選択可能な他の方法として、前記化学式4の繰り返し単位を含む光配向性重合体は、前記4族、6族、または8族の遷移金属を含む前触媒および助触媒を含む触媒組成物の存在下に、ノルボルネンメタノールなどのノルボルネン(アルキル)オルを単量体として開環重合して5角環を有する開環重合体を形成した後、このような開環重合体に光反応基を導入して製造することもできる。この時、前記光反応基の導入は、前記開環重合体を化学式1aに対応する光反応基を有するカルボン酸化合物またはアシルクロライド化合物と縮合反応させる反応で行なうことができる。
【0057】
前記開環重合段階では、前記化学式2の単量体に含まれているノルボルネン環中の二重結合に水素が添加されると開環が行なわれ、これと共に重合が行なわれて、前記化学式4の繰り返し単位およびこれを含む光反応性重合体が製造できる。
【0058】
但し、前述の光配向性重合体の製造のための具体的製造工程および反応条件は当業者に広く知られているので、それに対するこれ以上の説明は省略する。
【0059】
一方、一実施形態の光配向膜用組成物は、前述の環状オレフィン系光配向性重合体と共に、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤を含む。このようなポリアミック酸エステル系光配向補助剤が共に含まれることによって、一実施形態の組成物から形成された光配向膜が残像を大きく減少させることができ、液晶配向性および電圧保有率をより向上させることができるのは既に前述したとおりである。
【0060】
このようなポリアミック酸エステル系光配向補助剤としては、例えば、化学式5または6の繰り返し単位を含むものを使用することができる:
【0061】
【化6】
【0062】
上記化学式5および6において、mは100乃至10000であり、qおよびrはそれぞれ独立して、0乃至4の整数であり、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基であり、化学式6において、R21およびR22が水素;ハロゲン;または極性官能基でない場合、R21同士が互いに連結されるかR22同士が互いに連結されて、炭素数4乃至12の飽和または不飽和環、または炭素数6乃至24の芳香族環を形成するか、R21およびR22が互いに連結されて、炭素数1乃至10のアルキリデングループを形成することができ、Aは単純結合、酸素、硫黄、リンまたは−NH−であり、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルケニル;置換もしくは非置換の炭素数2乃至20のアルキニル;置換もしくは非置換の炭素数3乃至12のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリール;置換もしくは非置換の炭素数7乃至15のアラルキル;または酸素、窒素、リン、硫黄、シリコンおよびボロンからなる群より選択された一つ以上の元素を含む非炭化水素極性基(non−hydrocarbonaceous polar group)からなる群より選択される極性官能基であり、Raは置換もしくは非置換の炭素数1乃至20のアルキルまたは置換もしくは非置換の炭素数6乃至40のアリールである。
【0063】
このような化学式5または6の繰り返し単位構造を有するポリアミック酸エステル系光配向補助剤は、前述の光配向性重合体との上昇作用をより効果的に示して、残像抑制、配向性および電圧保有率向上などにより一層寄与することができる。また、このような光配向補助剤は、ポリアミック酸系重合体またはポリイミド系重合体の構造でなく、Raのアルキル基などが導入されたポリアミック酸エステル系重合体の構造を有することによって、多様な有機溶媒に対してより優れた溶解度を示すことができる。したがって、前記化学式5または6の繰り返し単位を含むポリアミック酸エステル系光配向補助剤が一実施形態の組成物に含まれることによって、一実施形態の組成物は基材に対するより優れた塗布性を示すことができ、これから形成された光配向膜はさらに向上した光配向性および配向速度などを示すことができる。
【0064】
一方、前記ポリアミック酸エステル系光配向補助剤は、下記の化学式5aまたは化学式6aのジアンヒドリド化合物のエステル誘導体と、化学式5bのジアミン化合物の縮重合体であり得る:
【0065】
【化7】
【0066】
上記化学式5a、5bおよび6aにおいて、q、r、R21、R22、R23およびR24は化学式5および6で定義されたとおりである。
【0067】
より具体的に、前記化学式5または6の繰り返し単位を含むポリアミック酸エステル系光配向補助剤は、化学式5aまたは6aのジアンヒドリド化合物をアルキルアルコールまたはアリールアルコールとエステル化反応させて前記ジアンヒドリド化合物のエステル誘導体を得た後、このようなエステル誘導体を化学式5bのジアミン化合物と縮重合させて製造できる。このような反応段階の具体的な反応条件などは後述の実施例に記載されている。
【0068】
一方、前述の一実施形態の光配向膜用組成物は、前述の光配向性重合体および光配向補助剤を前記環状オレフィン系光配向性重合体:前記ポリアミック酸エステル系光配向補助剤の重量比が約2:1乃至8:1、あるいは約3:1乃至7:1、あるいは約4:1乃至6:1になるように含んでもよい。前述の光配向性重合体および光配向補助剤をこのような重量比で含むことによって、一実施形態の組成物およびこれから形成される光配向膜がさらに向上した配向性および配向速度などを示しながらも、このような光配向膜を液晶セルなどに適用した時、残像をさらに減少させ電圧保有率をより向上させることができる。
【0069】
前述の一実施形態の光配向膜用組成物は、前述の光配向性重合体および光配向補助剤と共に光硬化可能なバインダーをさらに含んでもよい。このようなバインダーは、光硬化によって網状架橋構造を有するバインダー樹脂を形成して、配向性を安定化することができる。
【0070】
前記バインダーとしては、UVなどの光照射によって硬化可能な任意の重合性化合物、オリゴマーまたは重合体を特別な制限なく使用することができる。但し、好ましい重合、硬化または架橋構造の側面から、(メタ)アクリレート系化合物、例えば、2官能または3官能以上、具体的な例として、3乃至6官能のアクリレート基を有する(メタ)アクリレート系化合物を使用することができる。
【0071】
このようなバインダーの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acryloyloxyethyl)isocyanurate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)などが挙げられ、これらから選択された2種以上を共に使用することもできる。
【0072】
一実施形態の光配向膜用組成物は、前述の各構成成分以外にも光開始剤をさらに含んでもよい。このような光開始剤は、バインダーの光硬化を開始および促進すると知られた任意の開始剤であってもよく、例えば、商品名Irgacure 907または819などと知られた開始剤を使用することができる。
【0073】
また、前記光配向膜用組成物は、前述の各成分を溶解するために、有機溶媒をさらに含んでもよい。このような有機溶媒の例としては、N−メチルピロリドン(NMP)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、アニソール(anisole)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、ジクロロメタン(dichloromethane)、エチルアセテート(etheyl acetate)、ジクロロエタン(dichloroethane)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、シクロペンタノン(cyclopentanone)またはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propylene glycol methyl ether acetate)などが挙げられ、これらから選択された2種以上の混合溶媒を使用することもできる。その他にも、各成分の種類によってこれらを効果的に溶解させて基材上に塗布可能な任意の溶媒を使用することができる。
【0074】
前述の光配向膜用組成物は、総固形分重量を基準に、環状オレフィン系光配向性重合体およびポリアミック酸エステル系光配向補助剤を合した重合体の約35乃至75重量%、バインダーの約20乃至60重量%および光開始剤約1乃至6重量%を含んでもよい。この時、固形分の重量とは、光配向膜用組成物の構成成分中、有機溶媒を除いた残りの成分の重量合を意味する。
【0075】
また、前記光配向膜用組成物内の固形分含量は、約1乃至15重量%であってもよい。これにより、前記組成物が好ましい塗布特性を示すことができる。
【0076】
一方、発明の他の実施形態によれば、前述の光配向膜用組成物から形成される光配向膜が提供される。このような光配向膜は、前述の光配向膜用組成物またはその硬化物を含んでもよい。例えば、前記光配向膜は、少なくとも一部の光反応基が光配向された環状オレフィン系光配向性重合体と、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤を含んでもよく、選択的に前述のバインダーが光硬化された網状架橋構造を有するバインダー樹脂、例えば、(メタ)アクリレート系架橋重合体をさらに含んでもよい。また、一部の光開始剤が前記光配向膜内に残留してもよい。
【0077】
このような光配向膜内で、既に前述したポリアミック酸エステル系光配向補助剤と、光配向性重合体間の微細な相分離が起こることによって、前記光配向補助剤と光配向性重合体間の分布差または勾配が発生するようになる。即ち、このような微細相分離によって、光配向補助剤は光配向膜下部に主に分布し、これと同時に光配向性重合体は液晶層と隣接する光配向膜上部に主に分布するようになる。
【0078】
より具体的に、液晶層に隣接するようになる光配向膜の上部表面には反対側の下部表面に比べて高い含量の環状オレフィン系光配向性重合体が分布し、これと共に前記光配向膜の上部表面には反対側の下部表面に比べて低い含量のポリアミック酸エステル系光配向補助剤が分布するようになる。より具体的な一例によれば、光配向膜の上部側50%厚さ内には、光配向性重合体の全体含量中の約70重量%以上、あるいは約80重量%以上、あるいは約90重量%以上が分布し、下部側50%厚さ内に残量の光配向性重合体が分布するようになる。反対に、前記光配向膜下部側50%厚さ内には光配向補助剤の全体含量中の約70重量%以上、あるいは約80重量%以上、あるいは約90重量%以上が分布し、上部側50%厚さ内に残量の光配向性重合体が分布するようになる。
【0079】
前述の光配向膜内の光配向補助剤と光配向性重合体間の分布差または勾配は、表面分析法の一種であるTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)の方法で光配向膜を分析または測定して確認することができる。より具体的に、前記TOF−SIMSで分析または測定した時、前記液晶層に隣接した光配向膜の上部表面で、前述の光配向性重合体の末端に結合された置換基、例えば、既に前述したR10乃至R14のうちの一つ以上に結合されたフッ素などハロゲンのような置換基に由来するピークの強度が反対側下部表面のピーク強度に比べて高い点から、確認することができる。
【0080】
既に前述したように、光配向膜内での光配向性重合体と光配向補助剤の微細相分離による分布差または分布勾配によって、光配向膜の光配向性重合体と、その上部の液晶層間の相互作用性がより向上でき、光配向膜と、液晶層間の電荷移動度がより向上できる。したがって、液晶配向性および電圧保有率がより向上でき、残像を誘発する液晶層中の電荷形態の不純物などがより速く除去され残像が大きく減少する。
【0081】
一方、前述の光配向膜は、基材上に形成された前述の光配向膜用組成物にUV偏光、例えば、線偏光されたUVを照射して光配向性重合体の少なくとも一部を光配向させる段階を含む方法で形成することができる。このようなUV偏光の照射下に光配向段階を行なうと、前述の光配向性重合体の光反応基の少なくとも一部が異性化(isomerization)または二量化(dimerization)のような光反応を起こして光配向され、その結果、前記光配向された光配向性重合体と、光配向補助剤を含む他の実施形態の光配向膜が形成され得る。
【0082】
一方、前記光配向段階では、前記光配向膜用組成物に波長範囲が約150乃至450nm領域のUV偏光を照射することができる。但し、光配向性重合体の光反応基の種類によって、UV偏光の波長範囲を調節することができる。そして、UVの照射強さは、光配向性重合体やこれに結合された光反応性基の構造によって異なるようになるが、約50mJ/cm乃至10J/cmのエネルギー、好ましくは約500mJ/cm乃至5J/cmのエネルギーであり得る。
【0083】
前記UVは、(i) 石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、(ii) 微細にアルミニウムまたは金属ワイヤーが蒸着された偏光板、または(iii) 石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射させる方法で偏光処理され、このように偏光処理されたUVが組成物に照射され得る。UV偏光は、基板面に垂直に照射されてもよいが、特定の入射角に傾斜照射されてもよい。
【0084】
また、前記UV照射時の基材温度は、常温近辺の温度であってもよいが、場合によっては約100℃以下の温度範囲内で加熱された状態でUVが照射されてもよい。
【0085】
一方、前記光配向段階のUV偏光照射下に、前記光配向膜用組成物に選択的に含まれているバインダーの光硬化が共に行われてもよい。この場合、単一の光配向段階の進行で、硬化された形態の光配向膜が形成できる。但し、より効果的な光硬化のために、前記光配向段階後に、前記光配向膜用組成物にUVを照射してバインダーを光硬化させる段階をさらに行なってもよい。
【0086】
このようにバインダーの光硬化が行なわれると、網状架橋構造を有するバインダー樹脂が形成でき、その架橋構造内に光配向性重合体などが含まれ優れた配向性が安定に維持され得る。
【0087】
一方、前述の製造方法で、前記光配向膜用組成物は基材上に塗布され乾燥された後、前記UV偏光による光配向が行なわれてもよい。この時、前記塗布方法は、光配向性重合体の具体的構造または基材の種類などによって適切に決定できる。例えば、前記塗布方法は、ロールコーティング法、スピンコーティング法、印刷法、インクジェット噴射法またはスリットノズル法などであり得る。
【0088】
このような光配向膜用組成物の塗布、乾燥および光配向過程で、既に前述した光配向性重合体と、光配向補助剤間の微細相分離が起こり、これにより最終形成された光配向膜内でこれら光配向性重合体と、光配向補助剤間の分布差または分布勾配が現れ得る。
【0089】
前述の製造方法で、追加的に基材に対する接着性をさらに向上させるために、官能性シラン含有化合物、官能性フルオロ含有化合物または官能性チタニウム含有化合物を予め基材に塗布してもよい。
【0090】
そして、有機溶媒の除去のための乾燥段階では、塗膜を加熱したり、真空蒸発法などによって乾燥を行なって溶媒を除去することができる。このような乾燥段階は、約50乃至250℃で約1乃至20分間行なうことができる。
【0091】
前述の発明の他の実施形態による光配向膜は、優れた配向性および配向速度を示しながらも、液晶セルに液晶配向などのために適用されて残像を減少させ電圧保有率をより向上させることができる。
【0092】
よって、発明の他の実施形態によれば、前述の光配向膜と、光配向膜上の液晶層を含む液晶配向膜と、これを含む液晶セルが提供される。このような液晶配向膜では、光反応基の少なくとも一部が光配向された光配向膜によって液晶層中の液晶を配向させることができ、この時、液晶配向性および配向安定性が優秀に発現および維持されるようにすることができる。また、前述の光配向膜の影響で、前記液晶セルなどは減少した残像を示し、優れた電圧保有率を示すことができる。
【0093】
このような液晶配向膜で、前記光配向膜内には前記光配向補助剤と光配向性重合体間の分布差または勾配が現れ得るのは既に前述したとおりである。即ち、前記液晶層に隣接するようになる光配向膜の上部表面には反対側の下部表面に比べて高い含量の環状オレフィン系光配向性重合体が分布し、これと共に前記光配向膜の上部表面には反対側の下部表面に比べて低い含量のポリアミック酸エステル系光配向補助剤が分布するようになる。
【0094】
前記液晶配向膜および液晶セルなどの減少した残像および優れた電圧保有率は、このような分布勾配または差異に起因し、光配向性重合体と、液晶層間の相互作用性が向上した結果として示され得る。
【0095】
前記液晶配向膜および液晶セルなどは、発明の他の実施形態の光配向膜が含まれることを除いては通常の方法によって製造できる。例えば、前記光配向膜を有する二つのガラス基板のうちの一つにはボールスペーサが含まれている光反応性接着剤をガラス基板の端部に塗布した後、これに残り一つのガラス基板を合着し、接着剤が塗布された部分のみ紫外線を照射してセルを接合することができる。その後、完成されたセルに液晶(液晶分子)を注入し熱処理することによって、前記液晶配向膜および液晶セルを製造することができる。
【発明の効果】
【0096】
本発明によれば、優れた熱的安定性、配向性および配向速度を示しながらも、液晶セルに適用された時、残像が抑制され電圧保有率をより向上させることができる光配向膜用組成物と、これから形成される光配向膜および液晶配向膜などを提供することができる。また、前記光配向膜用組成物は優れた塗布性を示すことができるので、これを液晶セルの液晶配向などに非常に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1図1は、製造例1で得られたポリアミック酸エステル系光配向補助剤のNMRスペクトルである。
図2図2は、製造例2で得られたポリアミック酸エステル系光配向補助剤のNMRスペクトルである。
図3図3は、製造例3で得られたポリアミック酸エステル系光配向補助剤のNMRスペクトルである。
図4図4は、試験例1で、実施例1乃至5および比較例1の光配向膜を含む液晶セルに対してストレスを印加した後、時間の経過によって輝度変化率を測定した結果(残像評価用)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供させるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるのではない。
【実施例】
【0099】
製造例1:ポリアミック酸エステル系光配向補助剤の製造
8.02g(40.9mmol)のシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(cyclobutane−1,2,3,4−tetracarboxylicdianhydride;CBDA)を100mlのメタノールで8時間還流下に反応させた。ガスクロマトグラフィーを通じて反応終了を確認した後、溶媒を真空状態で除去し、エチルアセテート(EA):シクロヘキサン=3:1(体積比)の混合溶媒で再結晶を行なって3.30g(12.7mmol)のセントロシンメトリックジメチルエステル(centrosymmetrical dimethylester)を31%の収率で製造した。
【0100】
このようなジメチルエステル(dimethylester)の2.50g(9.61mmol)をチオニルクロライドを溶媒として使用して5時間還流させた後、残っている過量のチオニルクロライドを減圧下で蒸留を通じて除去した。溶媒除去後、n−ヘキサンで再結晶を通じて二塩化物(dichloride)形態の化合物を82%の収率で製造した。
【0101】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン(diaminodiphenylmethane;MDA)の0.97g(5.04mmol)と、KOH0.65gを水200mlに溶かした水溶液に、前記二塩化物(dichloride)形態の化合物1.5g(5.04mmol)をキシレンに溶かした溶液を混合し、10乃至20℃で2時間強く攪拌した。その結果物をろ過して沈殿物を得て、24時間真空乾燥した(収率:66%)。このように得られたポリアミック酸エステル系光配向補助剤の生成有無はNMRおよびGPCを通じて確認し、その重量平均分子量は54000、PDIは1.46であるのを確認した。前記ポリアミック酸エステル系光配向補助剤のNMRスペクトルは図1に示されたとおりである。
【0102】
製造例2:ポリアミック酸エステル系光配向補助剤の製造
8.92g(40.9mmol)のピロメリト酸二無水物(Pyromellitic dianhydride;PMDA)を100mlのメタノールで8時間還流下に反応させた。ガスクロマトグラフィーを通じて反応終了を確認した後、溶媒を真空状態で除去し、エチルアセテート(EA):シクロヘキサン=3:1(体積比)の混合溶媒で再結晶を行なって3.30g(11.4mmol)のセントロシンメトリックジメチルエステル(centrosymmetrical dimethylester)を31%の収率で製造した。
【0103】
このようなジメチルエステル(dimethylester)の2.50g(9.61mmol)をチオニルクロライドを溶媒として使用して5時間還流させた後、残っている過量のチオニルクロライドを減圧下で蒸留を通じて除去した。溶媒除去後、n−ヘキサンで再結晶を通じて二塩化物(dichloride)形態の化合物を82%の収率で製造した。
【0104】
4,4’−オキシジアニリン(4,4’−Oxydianiline;ODA)の0.99g(5.04mmol)と、KOH0.65gを水200mlに溶かした水溶液に、前記二塩化物(dichloride)形態の化合物1.5g(5.04mmol)をキシレンに溶かした溶液を混合し、10乃至20℃で2時間強く攪拌した。その結果物をろ過して沈殿物を得て、24時間真空乾燥した(収率:66%)。このように得られたポリアミック酸エステル系光配向補助剤の生成有無はNMRおよびGPCを通じて確認し、その重量平均分子量は38000、PDIは1.75であるのを確認した。前記ポリアミック酸エステル系光配向補助剤のNMRスペクトルは図2に示されたとおりである。
【0105】
製造例3:ポリアミック酸エステル系光配向補助剤の製造
8.92g(40.9mmol)のピロメリト酸二無水物(Pyromellitic dianhydride;PMDA)を100mlのメタノールで8時間還流下に反応させた。ガスクロマトグラフィーを通じて反応終了を確認した後、溶媒を真空状態で除去し、エチルアセテート(EA):シクロヘキサン=3:1(体積比)の混合溶媒で再結晶を行なって3.30g(11.4mmol)のセントロシンメトリックジメチルエステル(centrosymmetrical dimethylester)を31%の収率で製造した。
【0106】
このようなジメチルエステル(dimethylester)の2.50g(9.61mmol)をチオニルクロライドを 溶媒として使用して5時間還流させた後、残っている過量のチオニルクロライドを減圧下で蒸留を通じて除去した。溶媒除去後、n−ヘキサンで再結晶を通じて二塩化物(dichloride)形態の化合物を82%の収率で製造した。
【0107】
4,4’−ジアミノジフェニルメタン(diaminodiphenylmethane;MDA)の0.97g(5.04mmol)と、KOH0.65gを水200mlに溶かした水溶液に、前記二塩化物(dichloride)形態の化合物1.5g(5.04mmol)をキシレンに溶かした溶液を混合し、10乃至20℃で2時間強く攪拌した。その結果物をろ過して沈殿物を得て、24時間真空乾燥した(収率:66%)。このように得られたポリアミック酸エステル系光配向補助剤の生成有無はNMRおよびGPCを通じて確認し、その重量平均分子量は54000、PDIは1.46であるのを確認した。前記ポリアミック酸エステル系光配向補助剤のNMRスペクトルは図3に示されたとおりである。
【0108】
製造例4:環状オレフィン系光配向性重合体の製造
4−フルオロベンズアルデヒド17.1g(0.138mol)、マロン酸28.7g(0.276mol)、ピペリジン0.1当量をピリジン3当量に溶解した。30分間常温で攪拌した後、温度を90℃に上げて5時間攪拌した。温度を再び常温に下げ、3M塩酸水溶液でpH1乃至2まで滴定した。形成された粉末をろ過し、エタノール/物(1/9の体積比)混合溶媒で洗浄して、ポリ(シンナメート−メチル−2−ノルボルネン)を製造した。その収率は72%であり、その重量平均分子量は703,000、PDIは2.0であるのを確認した。
【0109】
製造例5:環状オレフィン系光配向性重合体の製造
250mlシュレンク(schlenk)フラスコにモノマーとして(4−フルオロシンナメート)−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート3g(10.06mmol)と溶媒として精製されたトルエン7mlを投入した。前記フラスコに(CH3CO2)2Pd0.98mg、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)6.4mg、およびトリシクロヘキシルホスフィン1.13mgをジクロロメタン1mlに溶解した溶液を添加し、5時間90℃で攪拌しながら反応させた。反応5時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗で濾して回収した重合体を真空オーブンで65℃で24時間乾燥し、ポリ[(4−フルオロシンナメート)−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート]重合体1.36gを得た(Mw=289,000、PDI=2.76、収率=45%)。
【0110】
製造例6:環状オレフィン系光配向性重合体の製造
250mlシュレンク(schlenk)フラスコにモノマーとして(メチルシンナメート)−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート3g(10.06mmol)と溶媒として精製されたトルエン7mlを投入した。前記フラスコに(CH3CO2)2Pd0.98mg、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(dimethylanilinium tetrakis(pentafluorophenyl)borate)8.38mgをジクロロメタン1mlに溶解した溶液を添加し、5時間100℃で攪拌しながら反応させた。反応5時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗で濾して回収した重合体を真空オーブンで70℃で24時間乾燥し、ポリ[(メチルシンナメート)−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート]重合体1.36gを得た(Mw=94,300、PDI=2.92、収率=56%)。
【0111】
製造例7:環状オレフィン系光配向性重合体の製造
250mlシュレンク(schlenk)フラスコにモノマーとして6−(4−オキシメチルシンナメート)ヘキシル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート5g(12.55mmol)と溶媒として精製されたトルエン5mlを投入した。前記フラスコに(CH3CO2)2Pd0.56mg、トリシクロヘキシルホスホニウム(テトラキスペンタフルオロフェニルボレート4.79mgをジクロロメタン2mlに溶解した溶液を添加し、18時間90℃で攪拌しながら反応させた。反応18時間後に、前記反応物を過量のエタノールに投入して白色の重合体沈殿物を得た。この沈殿物をガラス漏斗で濾して回収した重合体を真空オーブンで65℃で24時間乾燥し、ポリ[6−(4−オキシメチルシンナメート)ヘキシル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート]重合体1.4gを得た(収率=31%)。
【0112】
実施例1乃至5:光配向膜用組成物および光配向膜の製造
製造例1のポリアミック酸エステル系光配向補助剤、PETA(pentaerythritol triacrylate)、Irgacure907および製造例2の環状オレフィン系光配向性重合体をNMPとBCの混合溶媒に溶かして混合した。この時、各成分の含量は下記表1に示されたとおりである。このような混合溶液に対して後述の試験例1の方法で電圧保有率と、残像を測定した。
【0113】
比較例1:光配向膜用組成物および光配向膜の製造
製造例1のポリアミック酸エステル系光配向補助剤を使用しないことを除いては、実施例1と同様な方法で光配向膜用組成物および光配向膜を形成し、後述の試験例1の方法で電圧保有率と、残像を測定した。
【0114】
試験例1:電圧保有率および残像評価
まず、電圧保有率の測定方法は次のとおりであった。
前記光配向膜用組成物をITO基板またはTFT(thin filmtrasnsister)基板上に、スピンコーティング(1000乃至1500rpm、20sec)し、2分間100℃で乾燥した。そしてUV照射器(UV−A、UV−B)を使用して15mw/cmの光を2分間照射して配向膜を形成した。この時、UV照射はUVランプの前に偏光板を置いて行なった。
【0115】
3μmのスペーサ(spacer)が含まれている封止剤(sealant)で前記で製造された配向膜基板を合板し、UVで封止剤を硬化した。そして、IPS液晶を毛細管現象(capillary force)を用いて注入した。液晶が注入されたセルを80℃で20分間安定化させた。
【0116】
前記の方法で製作した実施例1乃至5および比較例1のセルに対して電圧保有率を測定した。測定装備は、TOYO corporationの6254C装備を使用した。フレーム周波数(Frame frequency)は60Hz、パルス幅(pulse width)は64、データ電圧(Data voltage)は5Vを適用して測定した。このような電圧保有率の測定結果は下記表1に共に示した。
【0117】
次に、輝度変化率は、前記方法で製作したサンプルにAC5V、DC0.5Vの電圧を常温で6時間印加した。このようなストレスを印加する前の輝度とストレスを印加した後の輝度をAC1Vで確認をした。輝度変化率は、ストレス印加後の輝度からストレス印加前の輝度を引いた値をストレス印加前の輝度で割り、この値を時間の変化によっての図で示した。このような輝度変化率の測定結果を通じて残像水準を評価した。前記輝度変化率の測定結果は図4に示されたとおりである。
【0118】
【表1】
【0119】
図4によれば、実施例1乃至5の光配向膜用組成物を使用する場合、比較例1に比べてストレス印加後の輝度変化率および残像水準が大きく低いのが確認され、表1によれば電圧保有率も向上するのが確認された。特に、ポリアミック酸エステル系光配向補助剤を0.75重量%以上使用した実施例3乃至5の場合、60分以後からは残像が消滅すると確認された。
【0120】
試験例2:光配向性重合体および光配向補助剤の分布評価
前記光配向膜用組成物をITO基板またはTFT(thin film trasnsister)基板上に、スピンコーティング(1000rpm、30sec)し、20秒間待機した後、30秒間80℃、30秒間95℃でそれぞれ1次および2次熱処理した。そしてUV照射器(UV−A、UV−B)を使用して15mw/cmの光を2分間照射して配向膜を形成した。この時、UV照射はUVランプの前に偏光板を置いて行なった。
【0121】
3μmのスペーサ(spacer)が含まれている封止剤(sealant)で前記で製造された配向膜基板を合板し、UVで封止剤を硬化した。そしてIPS液晶を毛細管現象(capillary force)を用いて注入した。液晶が注入されたセルを80℃で20分間安定化させた。
【0122】
前述の方法で実施例1乃至5の光配向膜およびセルを形成した後、光配向膜の表面をTOF−SIMSで分析して、光配向膜表面のフッ素置換基(製造例2の光配向性重合体の末端に結合された置換基)含量を分析した。また、前記フッ素の含量を光配向膜表面から深さによって分析した。
【0123】
このような分析結果と比較のために、比較例1と、製造例1の光配向補助剤のみを使用して実施例1と同様な方法で光配向膜およびセルを形成した後、同様な方法で光配向膜表面をTOF−SIMSで分析して、光配向膜表面のフッ素置換基含量を分析した。
【0124】
このような分析結果を通じて、実施例1乃至5の光配向膜ではフッ素の含量が光配向膜表面から深さによって減少するのを確認した。
図1
図2
図3
図4