特許第6039348号(P6039348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039348
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】熱電変換式発電装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20161128BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H02N11/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-223521(P2012-223521)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-75551(P2014-75551A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】地主 孝広
(72)【発明者】
【氏名】冨永 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】石島 善三
(72)【発明者】
【氏名】森 正芳
(72)【発明者】
【氏名】山上 武
(72)【発明者】
【氏名】松田 洋
【審査官】 羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−221895(JP,A)
【文献】 特開2011−238693(JP,A)
【文献】 特開平06−235568(JP,A)
【文献】 特開2005−210782(JP,A)
【文献】 特開2009−194299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/30
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配設される加熱側の板部材および冷却側の板部材と、
これら板部材の間に配設される熱電変換モジュールとを備え、
前記加熱側の板部材が加熱されるとともに前記冷却側の板部材が冷却されて前記熱電変換モジュールに温度差が与えられることにより、該熱電変換モジュールが発電する熱電変換式発電装置であって、
前記冷却側の板部材の外面側に押圧板が配設されるとともに、これら冷却側の板部材と押圧板との間に弾性部材が挟持され、
前記弾性部材によって前記冷却側の板部材が前記熱電変換モジュールに加圧されて当接しており、前記冷却側の板部材と前記押圧板との間に冷却媒体が流され、該冷却媒体が前記弾性部材に接触することを特徴とする熱電変換式発電装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記冷却側の板部材もしくは前記押圧板のいずれか一方に接合されており、他方側には非接合状態であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換式発電装置。
【請求項3】
前記弾性部材によって前記熱電変換モジュールに加圧されて当接する前記冷却側の板部材は、
剛性を有し前記熱電変換モジュールに当接させられる剛性部と、
この剛性部に連なって形成され、前記弾性部材の弾性力を受けて変形可能な可撓性を有し、変形することにより前記剛性部を前記熱電変換モジュールに当接させる変形部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱電変換式発電装置。
【請求項4】
前記加熱側の板部材と前記冷却側の板部材とを含む密閉容器を有し、該密閉容器内において各板部材との間に前記熱電変換モジュールが配設され、該密閉容器内が減圧状態とされることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の熱電変換式発電装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、冷却促進用のフィン形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱電変換式発電装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、断面が波形、V型、U型、Ω型等のフィン形状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の熱電変換式発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに温度差を与えて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子を用いて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電技術が知られている。熱電変換素子は、離間した部位に温度差を与えることで高温部と低温部との間に電位差を生じさせるといったゼーベック効果を利用したもので、温度差が大きいほど発電量も大きくなる。このような熱電変換素子は、複数を接合した熱電変換素子モジュールという形態で用いられる。そして、熱電変換モジュールを加熱側の板部材と冷却側の板部材との間に挟み、加熱側の板部材を加熱するとともに冷却側の板部材を冷却することにより熱電変換モジュールに温度差を与えて、熱電変換モジュールから電気を得るといった熱電変換式発電装置が構成される(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−088408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の発電装置においては、上記のように熱電変換モジュールに与えられる温度差が大きいほど発電量が大きくなり、発電性能が向上することが知られている。熱電変換モジュールの温度差を大きくとる方策の1つとして、熱電変換モジュールを挟んで配設された加熱側および冷却側の板部材を、熱電変換モジュールに対し均一な状態で密着させ、これら板部材を介しての熱伝導度を高めることは有効である。
【0005】
例えば上記特許文献1のようにタイロッドやナットといった締結用の部材を用いて各板部材を熱電変換モジュールに加圧状態で密着させることは可能である。しかしながらこのような部材を用いると、均一な圧力で板部材を熱電変換モジュールに加圧することが難しく、また、装置の構成が複雑になったりコストが上がったりする。また、設計やデザインの自由度に制限が生じる場合があり、さらには、できるだけ軽量化を図りたい装置に装備させる場合には不利になるといった問題もある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、熱電変換モジュールに温度差を与えるために熱電変換モジュールの両側に配設される板部材を、装置が複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュールに対し均一な加圧状態で密着させることができるとともに、設計やデザインの自由度の向上や軽量化に寄与することができる熱電変換式発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱電変換式発電装置は、互いに対向して配設される加熱側の板部材および冷却側の板部材と、これら板部材の間に配設される熱電変換モジュールとを備え、前記加熱側の板部材が加熱されるとともに前記冷却側の板部材が冷却されて前記熱電変換モジュールに温度差が与えられることにより、該熱電変換モジュールが発電する熱電変換式発電装置であって、前記冷却側の板部材の外面側に押圧板が配設されるとともに、これら冷却側の板部材と押圧板との間に弾性部材が挟持され、前記弾性部材によって前記冷却側の板部材が前記熱電変換モジュールに加圧されて当接しており、前記冷却側の板部材と前記押圧板との間に冷却媒体が流され、該冷却媒体が前記弾性部材に接触することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、冷却側の板部材が弾性部材の弾性作用によって熱電変換モジュールに対して加圧されて当接し、密着する。タイロッドやナットといった締結用の部材を用いず、弾性部材によって冷却側の板部材を加圧して熱電変換モジュールに対し密着させるため、複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュールに対しその板部材を均一な加圧状態で密着させることができる。そして、ボルト・ナットといった締結用の部材を用いないため、設計やデザインの自由度の向上や軽量化に寄与することができる。また、弾性部材により冷却側の板部材の剛性を向上させることが可能であり、板部材の変形が抑えられ、板部材を熱電変換モジュールに密着させやすくすることができる。
【0009】
た、弾性部材の弾性力に抗して押圧板を冷却側の板部材側に押圧して固定することにより、弾性部材に弾性力を発生させ、かつ保持することができ、弾性部材の弾性力を確実に熱電変換モジュールに付与する構造が得られる。また、冷却側の板部材の温度は弾性部材に伝達し、弾性部材は冷却媒体によって冷却されるため、冷却側の板部材の冷却効率が向上する。すなわち、弾性部材による放熱効果を得ることができる。したがって弾性部材は、冷却促進用のフィン形状に形成されていると好ましい。フィン形状としては、断面が波形、V型、U型、Ω型等が挙げられる。
【0010】
また、本発明では、前記弾性部材は、前記冷却側の板部材もしくは前記押圧板のいずれか一方に接合されており、他方側には非接合状態である形態を含む。この形態では、弾性部材が冷却側の板部材もしくは押圧板のいずれか一方に接合されていることにより、弾性部材の取り扱いが容易となるとともに、組み立てやすいといった効果を得る。また、加熱・冷却によって熱電変換モジュールや冷却側の板部材が膨張・収縮した場合、弾性部材の非接合側は、熱電変換モジュールあるいは冷却側の板部材に対して相対移動可能であり、このため熱影響による応力が生じて変形するといった不具合が起こりにくい。
【0011】
また、本発明では、前記弾性部材によって前記熱電変換モジュールに加圧されて当接する前記冷却側の板部材は、剛性を有し前記熱電変換モジュールに当接させられる剛性部と、この剛性部に連なって形成され、前記弾性部材の弾性力を受けて変形可能な可撓性を有し、変形することにより前記剛性部を前記熱電変換モジュールに当接させる変形部と、を有する形態を含む。この形態では、冷却側の板部材の、熱電変換モジュールに当接して密着する部分を剛性部とすることにより、変形が生じることなく、かつ、確実に面で熱電変換モジュールに当接し、熱電変換モジュールに対する均一な加圧状態を得やすい。
【0012】
また、本発明では、前記加熱側の板部材と前記冷却側の板部材とを含む密閉容器を有し、該密閉容器内において各板部材の間に前記熱電変換モジュールが配設され、該密閉容器内が減圧状態とされる形態を含む。この形態では、密閉容器内が減圧されるため、内部に空気等のガスが常圧で存在する場合に比べて密閉容器内が加熱されにくく、内部ガスが膨張して板部材に影響を与えたり、熱電変換モジュールが加熱されて劣化したりするといった不具合の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱電変換モジュールに温度差を与えるための冷却側の板部材を、装置が複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュールに対し均一な加圧状態で密着させることができるとともに、設計やデザインの自由度の向上や軽量化に寄与することができる熱電変換式発電装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る熱電変換式発電装置の全体斜視図である。
図2】一実施形態の熱電変換式発電装置において封止板を外した状態を示す斜視図である。
図3】一実施形態の熱電変換式発電装置の側面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
図5】一実施形態の熱電変換式発電装置の正面図である。
図6図5のVI−VI断面図である。
図7】(a)一実施形態の熱電変換式発電装置を構成する発電ユニットの正面図、(b)弾性板を除いた側面図である。
図8】同発電ユニットの密閉容器および端部冷却部の構造を模式的に示す断面図であって、(a)冷却ケースを接合する前の状態、(b)冷却ケースを接合して弾性板により可動板部の内側剛性部が熱電変換モジュールに加圧されている状態、を示している。
図9】同発電ユニットの密閉容器および中間冷却部の構造を模式的に示す断面図であって、可動板部の内側剛性部間に挟持された弾性板により内側剛性部が熱電変換モジュールに加圧されている状態を示している。
図10】弾性板の変形例を示す断面図であって、(a)冷却ケースを接合する前の状態、(b)冷却ケースを接合して弾性板により可動板部の内側剛性部が熱電変換モジュールに加圧されている状態、を示している。
図11】もう1つの弾性板の変形例を示す図であって、(a)冷却ケースを接合する前の状態、(b)冷却ケースを接合して弾性板により可動板部の内側剛性部が熱電変換モジュールに加圧されている状態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]熱電変換式発電装置の全体構成
図1図6は、一実施形態の熱電変換式発電装置(以下、発電装置)1を示している。この発電装置1は、密閉容器3を有する複数の発電ユニット2が図中Y方向に冷却部5Aを挟んで並列状態で積層され、装置1全体の両側面、すなわちY方向両端部にも冷却部5Bが配設された構成となっている。発電ユニット2の数は任意であり、この場合は4つの発電ユニット2を積層して発電装置1を構成している。
【0017】
密閉容器3は、縦断面(Y−Z断面)がZ方向に長い略直方体の箱状の筐体30と、筐体30内の中央部に配設された縦断面がZ方向に長い扁平管状の流通管35と、X方向両端の開口を塞ぐ封止カバー38とから構成されている。筐体30および流通管35はいずれもX方向の両端が開口しており、流通管35の内部が、後述する加熱流体がX方向に流される中空部351となっている。
【0018】
図7に示すように、筐体30は、X−Z面と平行な互いに対向する一対の可動板部(本発明の冷却側の板部材)31と、可動板部31の上下の端縁を連結する平板状の一対の端板部32とにより、略直方形の箱状に形成されている。また、流通管35は、X−Z面と平行な互いに対向する一対の内板部(本発明の加熱側の板部材)36と、内板部36の上下の端縁を連結する断面半円弧状の一対の湾曲部37とにより、扁平管状に形成されている。
【0019】
流通管35の内部、すなわち密閉容器3の中空部351には、フィン352が配設されている。フィン352は、例えば板材を折り曲げ加工して波板状に形成したもので、屈曲部の外側が内板部36の内面に当接した状態でろう付け等の接合手段で接合されている。
【0020】
密閉容器3内、すなわち筐体30の内面と流通管35の内面との間には、縦断面がZ方向に長い略環状の内部空間3aが形成されている。そして、この内部空間3aにおけるY方向両側には、筐体30の可動板部31と流通管35の内板部36との間に挟まれた状態で、熱電変換モジュール4がそれぞれ配設されている。
【0021】
内部空間3aのY方向両側の領域に熱電変換モジュール4が一対の状態で配設された複数の密閉容器3は、図4および図6に示すように、可動板部31間に冷却部5Aを挟んでY方向に並列して積層される。また、Y方向両端の可動板部31の外面にも、それぞれ冷却部5Bが配設される。以下、密閉容器3間の冷却部5Aを中間冷却部5A、Y方向両端部の冷却部5Bを端部冷却部5Bと称する。
【0022】
熱電変換モジュール4は、図8に示すように、平面状に並べられた複数の熱電変換素子41の、一方側の面および他方側の面を、銅等からなる電極42によりジグザグ状に連結して構成されたもので、一方の面側の電極42が流通管35の内板部36の内面にろう付け等の接合手段で接合されている。また、熱電変換モジュール4の他方の面側の電極42は、筐体30の可動板部31の、後述する内側剛性部312の内面に当接している。すなわち、熱電変換モジュール4は内側剛性部312と非接合状態であり、双方は互いの当接面に沿って相対移動可能となっている。
【0023】
熱電変換モジュール4を構成する熱電変換素子41は、耐熱温度が高い種類が用いられ、例えば、シリコン−ゲルマニウム系、マグネシウム−シリコン系、マンガン−シリコン系、珪化鉄系等が好適に用いられる。熱電変換モジュール4には、電気を取り出すための一対の端子43が接続されている。この場合、端子43は図7(a)に示すように内部空間3aの上部において上方に延出され、密閉容器3の上側の端板部32を貫通して外部に突出している。端板部32の端子43の貫通孔は、気密的に塞ぐ処理がなされている。
【0024】
図6に示すように、密閉容器3の内部空間3aのX側の開口は、断面が内側にへこんだ断面U字状で全体としては長円状の封止カバー38で塞がれている。封止カバー38は、可動板部31の後述する外側剛性部311の内面と、流通管35のX方向端部の外面に気密的に接合されている。密閉容器3の内部空間3aは、筐体30、流通管35および封止カバー38によって気密的に封止されている。各密閉容器3の筐体30のX方向両端面には外側カバー33が接合され、本装置1のX方向両側が、この外側カバー33で覆われている。各流通管35のX方向両端部は各筐体30から突出しており、この突出端部は、外側カバー33に形成された流通管挿入孔331を貫通して外部に突出している。
【0025】
[2]密閉容器の構成
上記密閉容器3の筐体30を構成する可動板部31は、図7に示すように、外形が長方形の枠状に形成された外側剛性部311と、外側剛性部311の内側に配設された外側剛性部311と同じ厚さの内側剛性部312と、外側剛性部311と内側剛性部312との間に形成される一定幅の隙間314を塞ぐ状態に配設された各剛性部311,312の厚さよりも薄い変形部313とを有している。
【0026】
外側剛性部311の内縁311aは略長円形状に形成されており、内側剛性部312の外縁312aは、外側剛性部311の内縁311aから一定の隙間314を空けて略長円形状に形成されている。内側剛性部312の外面には、可撓性を有する薄板315がろう付け等の接合手段で接合されている。この薄板315は各剛性部311,312の間の隙間314を覆って外側剛性部311の外面に達する大きさを有しており、外縁部が外側剛性部311の外面にろう付け等の接合手段で接合されている。この薄板315により剛性部311,312どうしが同一平面内に存在するように連結された状態となっている。本実施形態では剛性部311,312どうしが同一平面内に存在しているが、各剛性部311,312の位置関係はこれに限定されず、いずれか一方が内側にずれた状態で薄板315により連結されている構成であってもよい。
【0027】
薄板315の隙間314を覆う部分が可撓性を有する略環状の変形部313を構成しており、図8に示すように変形部313の幅方向中央部には、内側に向けて突出する凸条部313aが全周にわたって形成されている。変形部313は、内側剛性部312の周縁面312bの外側から外側剛性部311の内縁311aの外側に延びる状態に設けられている。外側剛性部311のZ方向の両側の端縁は端板部32に一体化した状態に形成されている。すなわち上下一対の端板部32に両側の外側剛性部311が一体成形されており、外側剛性部311に薄板315を介して内側剛性部312が接合されて、筐体30が構成されている。内側剛性部312は、熱電変換モジュール4を覆う大きさを有し、熱電変換モジュール4の片面全面に当接した状態となっている。
【0028】
密閉容器3の上側の端板部32には複数の減圧封止口321が設けられており、これら減圧封止口321を利用して密閉容器3内の内部空間3aは減圧される。
【0029】
[3]冷却部と弾性板
中間冷却部5Aおよび端部冷却部5Bは、それぞれ冷却ケース53A,53Bを備えている。中間冷却部5Aの冷却ケース53Aは、可動板部311の外側剛性部311の周縁に沿った枠状に形成されており、隣接する外側剛性部311の間に挟まれ、これら外側剛性部311の外面周縁部に接合されている。すなわち本装置1においては、隣接する筐体30は、隣接する外側剛性部311どうしが冷却ケース53Aを介して接合された状態となっている。冷却ケース53Aと、冷却ケース53Aを挟む両側の可動板部31とで囲まれた中間冷却部5Aの内部には、冷却水の流路となって可動板部31を冷却する冷却ジャケット53aが形成されている。
【0030】
一方、端部冷却部5Bの冷却ケース53Bは、端部の可動板部31を覆う蓋状に形成されており、片面側に形成された浅い凹所を可動板部31側に向けて、端縁が外側剛性部311の外面周縁部に接合されている。冷却ケース53Bの内面と可動板部31とで囲まれた端部冷却部5Bの内部には、冷却水が供給されて可動板部31を冷却する冷却ジャケット53bが形成されている。
【0031】
中間冷却部5Aおよび端部冷却部5Bの各冷却ケース53A,53Bの、下端面には冷却水供給口51が、また、上端面には冷却水排水口52が、それぞれ形成されている。冷却水供給口51および冷却水排水口52はX方向の中央に形成されており、冷却水供給口51および冷却水排水口52には、それぞれ図示せぬ冷却水供給管および排水管が接続される。
【0032】
中間冷却部5Aおよび端部冷却部5Bの冷却ジャケット53a,53b内には、可動板部31の内側剛性部312を熱電変換モジュール4に対し加圧して当接させる弾性板7が複数設けられている。
【0033】
図8(b)に示すように、端部冷却部5Bにおいては、冷却ケース53Bと内側剛性部312との間に、複数の弾性板7が圧縮した状態で挟持されている。弾性板7は、断面が波状に形成されたフィン形状を有しており、冷却ケース53Bの内面に一端部が接合され、他端部は内側剛性部312に当接し、接合はされていない。
【0034】
図8(a)は冷却ケース53Bが可動板部31の外側剛性部311に接合される前の状態を示しており、自由状態の弾性板7の内側剛性部312側の他端部を、内側剛性部312の外面に当接させている。この状態で、冷却ケース53Bの外側剛性部311への接合端縁は、外側剛性部311に対し離間して対向する。冷却ケース53Bは、弾性板7の弾発力に抗して可動板部31側に移動させ、接合端縁を外側剛性部311に押し付け、この状態を保持して外側剛性部311に接合される。このように冷却ケース53Bを可動板部31に対して組み付けると、冷却ジャケット53b内の弾性板7は、冷却ケース53Bと内側剛性部312との間に弾性的に圧縮した状態で挟持される。
【0035】
図9に示すように、中間冷却部5Aの冷却ジャケット53a内に設けられた複数の弾性板7は、一端部がいずれか一方の内側剛性部312に接合され、他端部が他方の内側剛性部312に当接し、接合はされていない。中間冷却部5Aの弾性板7は、隣接する密閉容器3を冷却ケース53Aを介して接合する際に、隣接する内側剛性部312どうしを近付けることで圧縮され、接合されると内側剛性部312間に挟持された状態に保持される。
【0036】
上記密閉容器3は、減圧封止口321から内部の空気を吸引して密閉容器3内の内部空間3aを所定圧力(例えば1〜100Pa程度)に減圧し、減圧封止口321を溶接するなどして気密的に封止した状態とされる。これにより密閉容器3においては、内部が外部の大気よりも圧力が低いという圧力差が生じ、この圧力差によって、筐体30の可動板部31が内側に加圧される力を受ける。
【0037】
図8(b)は密閉容器3内の内部空間3aを減圧した状態を示しており、内部空間3aが減圧されて可動板部31が内側に加圧されると、可撓性を有する変形部313は、同図に示すように凸条部313aが内側にさらに突出するように変形し、これにより内側剛性部312は、弾性板7の弾発力に加えて熱電変換モジュール4に強く当接し、熱電変換モジュール4に均一に密着した状態となる。換言すると、内側剛性部312の熱電変換モジュール4への当接面が熱電変換モジュール4に均一に強く密着するように動くことを、変形部313が変形することで実現される。
【0038】
[4]発電装置の作用
上記構成からなる発電装置1では、各冷却ジャケット53a,53b内に冷却水を供給して流通させ、密閉容器3の可動板部31を冷却する。一方、各流通管35に、一端側から他端側に向けて高温の加熱流体Hを流して流通管35を加熱する。冷却された可動板部31の温度は熱電変換モジュール4の外面側に伝わり、熱電変換モジュール4の外面側が冷却され、一方、加熱された流通管35の内板部36の温度は熱電変換モジュール4の内面側に伝わり、熱電変換モジュール4の内面側が加熱される。加熱流体Hは中空部351を流れることで拡散せず、流通管35の内板部36が効率よく加熱される。
【0039】
本実施形態では、筐体30の可動板部31が冷却側の板部材となり、流通管35の内板部36が加熱側の板部材を構成する。このようにして熱電変換モジュール4の外面側と内面側に温度差が与えられることで、熱電変換モジュール4は発電し、端子43から電気が取り出される。
【0040】
本実施形態の発電装置1は、例えば工場やゴミ焼却炉で発生する排熱ガスや、自動車の排気ガスなどが、上記加熱流体Hとして利用される。
【0041】
[5]一実施形態の作用効果
上記一実施形態の発電装置1によれば、冷却側の板部材である可動板部31の内側剛性部312が圧縮状態の弾性板7の弾発力によって熱電変換モジュール4に対して加圧されて当接し、密着する。タイロッドやナットといった締結用の部材を用いず、弾性板7によって内側剛性部312を加圧して熱電変換モジュール4に対し密着させるため、複雑かつ高コストになることなく熱電変換モジュール4に対して内側剛性部312を均一な加圧状態で密着させることができる。そして、ボルト・ナットといった締結用の部材を用いないため、設計やデザインの自由度の向上や軽量化に寄与することができる。また、弾性板7により内側剛性部312の剛性を向上させることが可能であり、内側剛性部312の変形が抑えられ、内側剛性部312を熱電変換モジュール4に密着させやすくすることができる。
【0042】
また、内側剛性部312は、密閉容器3内の減圧作用によっても熱電変換モジュール4に加圧状態で密着させられる。内側剛性部312は、熱電変換モジュール4側に加圧されても変形をきたさない厚さに設定され、一方、変形部313は密閉容器3内の内部空間3aを減圧した際に、内側剛性部312の内側への動きに追従して変形可能となっている。このため、内側剛性部312が変形することが抑えられ、かつ、内側剛性部312が熱電変換モジュール4に対し確実に面で当接し、均一に密着した状態を得ることができる。
【0043】
また、図9に示したように、中間冷却部5Aの冷却ジャケット53a内に収容される弾性板7は、それら隣接する密閉容器3の各内側剛性部312間に挟持されて設置される。一方、図8(b)に示したように、端部冷却部5Bの冷却ジャケット53b内に収容される弾性板7は、冷却ケース53Bを筐体30側に押圧して固定することにより弾発力が発生し、かつ保持することができ、弾性板7の弾発力を確実に熱電変換モジュール4に付与することができるようになっている。
【0044】
また、弾性板7は、端部冷却部5Bでは冷却ケース53Bに、また、中間冷却部5Aでは挟持している両側の内側剛性部312のうちの一方側に、それぞれ一端部が接合されており、他端部は他方側に非接合状態で当接している。これにより、弾性板7の取り扱いが容易となり、また、組み立てやすいといった効果を得る。また、加熱・冷却によって熱電変換モジュール4や内側剛性部312が膨張・収縮した場合、弾性板7の非接合側は、熱電変換モジュール4や内側剛性部312に対して相対移動可能であり、このため熱影響による応力が生じて変形するといった不具合が起こりにくい。
【0045】
また、密閉容器3内の内部空間3aが減圧されるので、その内部空間3aに空気等のガスが常圧で存在する場合に比べて内部空間3aは加熱されにくい。このため、内部ガスが膨張して密閉容器3に影響を与えたり、熱電変換モジュール4が加熱されて劣化したりするといった不具合の発生が抑えられる。可動板部31の変形部313は内側剛性部312よりも板厚が小さいことにより変形可能となっており、変形部313を容易に設けることができる。
【0046】
また、本実施形態では、冷却ジャケット53a,53b内に流される冷却水が弾性板7に接触する。内側剛性部312の温度は弾性板7に伝達し、弾性板7は冷却水によって冷却されるため、弾性板7による放熱効果を得ることができる。したがって本実施形態のように弾性板7をフィン形状に形成されていると、冷却効果が向上するので好ましい。
【0047】
[6]実施形態の変形例
弾性板7は内側剛性部312を熱電変換モジュール4に加圧するものであれば、上記実施形態の形状に限定されない。例えば、図10に示すように断面V字状の一対の弾性板7を左右対称の状態に配設したものや、図11に示すように断面Ω状の凸条部71が並列して形成された弾性板7などが挙げられる。これら図は、いずれも(a)が端部冷却部5Bの冷却ケース53Bを可動板部31の外側剛性部311に接合する前の状態、(b)が冷却ケース53Bを外側剛性部311に接合して弾性板7により可動板部31の内側剛性部312が熱電変換モジュール4に加圧されている状態を示している。弾性板7としては、上記のように冷却水が接触して放熱効果を得ることができるフィン形状のものが好適とされる。
【0048】
また、熱電変換モジュール4と、冷却側の板部材(この場合、密閉容器3における可動板部31の内側剛性部312)および加熱側の板部材(この場合、密閉容器3における流通管35の内板部36)の少なくとも一方との間に、例えば柔軟性を有する材料からなる緩衝材を配設する構成としてもよい。このような構成の場合には、密閉容器3が該緩衝材を介して熱電変換モジュール4に加圧状態で当接し、熱電変換モジュール4が緩衝材で保護される。
【符号の説明】
【0049】
1…熱電変換式発電装置
3…密閉容器
31…筐体の可動板部(冷却側の板部材)
312…内側剛性部
313…変形部
36…流通管の内板部(加熱側の板部材)
4…熱電変換モジュール
53B…冷却ケース(押圧板)
7…弾性板(弾性部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11