(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<防眩フィルム>
本発明の防眩フィルムは、透明支持体、および、該透明支持体上に形成され該透明支持体と反対側に微細な凹凸を有する微細凹凸表面を備えた防眩層を含む。本発明の防眩フィルムは、正反射除去方式で測定した視感反射率が1.2%以下であることをその特徴の1つとする。
【0021】
図1は、正反射除去方式で視感反射率を測定するための光学系を模式的に示す図である。
図1には、拡散照明方式の光学系が示されている。拡散照明方式は、積分球などを使って、試料をあらゆる方向から均等に照明する方法であり、
図1では、積分球12(光をほぼ完全に拡散反射する硫酸バリウムなどの白い塗料で内面を塗布した球)が設置されている。光源13から出た光は、積分球12の内部で拡散され、サンプル14の表面で反射される。受光部に対して、正反射方向にある積分球12の位置にはライトトラップ15(
図1では、円錐形の空洞を有する治具がとりつけられており、円錐形の空洞に入った光は、空洞内で吸収され、積分球12中には戻らない仕組みになっている。)が設置されており、受光部に対して正反射方向の光が、サンプル表面にはあたらないようになっている。
【0022】
このようなライトトラップを用いた光学系は正反射除去モード(SCEモード)と呼ばれる。SCEモードで測定したサンプルの反射スペクトルからJIS Z 8722記載の方法に従って計算される視感反射率がすなわち正反射除去方式で測定した視感反射率である。
【0023】
この正反射除去方式で測定した視感反射率が1.2%を上回る場合には、防眩フィルムの表面において使用環境における環境光の使用者方向への反射光が強いこととなり、結果として防眩フィルムの白ちゃけ、明所コントラストの低下が生じることとなる。この正反射除去方式で測定した視感反射率は1.0%以下であることがより好ましく、0.7%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
また本発明の防眩フィルムは、入射角45゜の光に対する反射鮮明度が20%以下であることもその特徴の1つとする。反射鮮明度は、JIS K 7105に規定される方法で測定される。このJISでは、像鮮明度の測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類が規定されている。このうち、幅0.125mmの光学くしを用いた場合、本発明で規定する防眩フィルムにおいては、その測定値の誤差が大きくなることから、幅0.125mmの光学くしを用いた場合の測定値は和に加えないこととし、幅が0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである3種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって反射鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の反射鮮明度の最大値は300%である。この定義による反射鮮明度が20%を超えると、光源などの像が鮮明に映り込むことになり、防眩性に劣るなどの不具合がある。
【0025】
本発明の防眩フィルムは、透過鮮明度が150%以上であることが好ましい。ここで透過鮮明度は、JIS K 7105に規定される方法で測定され、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和を指す。この定義による透過鮮明度の最大値は400%である。この定義による透過鮮明度が150%を下回ると、ギラツキが発生する傾向があり好ましくない。この透過鮮明度は175%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明の防眩フィルムは、ヘイズが0.5%以上4%以下であることが好ましい。ここで、防眩フィルムのヘイズは、JIS K 7136に準拠して測定される。ヘイズが4%を上回る場合には白ちゃけが発生し、明所コントラストが低下する可能性があるため好ましくない。また、ヘイズが0.5%を下回る場合には防眩性が低下する虞があるため好ましくない。本発明の防眩フィルムのヘイズは1%以上2.5%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明の防眩フィルムのヘイズは防眩フィルム表面の微細凹凸によって主に発生していることが好ましい。従来の防眩フィルムは、微粒子を分散させた樹脂溶液を透明支持体上に塗布し、塗布膜厚を調整して微粒子を塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法などによって製造されている。このような微粒子を分散させることにより製造された従来の防眩フィルムでは、防眩フィルム表面の微細凹凸以外にバインダー樹脂と微粒子との間の屈折率差によって発生するヘイズ(内部ヘイズ)を有していることが多い。そのような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した際には、微粒子とバインダー樹脂界面における光の散乱によって、コントラストが低下するため好ましくない。従って、コントラストの低下の原因となる内部ヘイズは小さければ小さいほど好ましい。また、内部ヘイズを発生させないために防眩フィルムは光を散乱させる微粒子を含まないことが好ましい。
【0028】
<金型の製造方法>
本発明は、上述した本発明の防眩フィルムを製造するために用いられる金型を製造する方法であって、以下の工程を含む金型の製造方法についても提供する。本発明の金型の製造方法は、(1)第1めっき工程、(2)研磨工程、(3)感光性樹脂膜形成工程、(4)露光工程、(5)現像工程、(6)第1エッチング工程、(7)感光性樹脂膜剥離工程、(8)第2エッチング工程、ならびに、(9)第2めっき工程を含み、露光工程において感光性樹脂膜上に露光するパターンを、そのパワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフが空間周波数0.03μm
−1以上0.08μm
−1以下に極大値を有し、かつ、該極大値の位置をAμm
−1とし、第2エッチング工程のエッチング深さをBμmとしたときに以下の関係式を満たすことを特徴とする。
【0030】
ここで、「パターン」とは、本発明の防眩フィルムの微細凹凸表面を形成するための画像データや透光部と遮光部を有するマスクのことなどを意味する。このようなパターンとすることで、上述のような特性を有する本発明の防眩フィルムを好適に製造することができる。
【0031】
パターンのパワースペクトルは、たとえば画像データであれば、画像データの階調を二次元関数g(x,y)で表し、式(2)で定義される二次元フーリエ変換によって二次元関数G(f
x,f
y)を求める。
【0033】
ここで、xおよびyは画像データ面内の直交座標を表し、f
xおよびf
yはx方向の周波数およびy方向の周波数であり、長さの逆数の次元を持つ。また、式(2)中のπは円周率、iは虚数単位である。さらに<g>は二次元関数g(x,y)の平均値である。得られた二次元関数G(f
x,f
y)を二乗することによって、二次元パワースペクトルG
2(f
x,f
y)を求めることができる。
【0034】
実際のパターンのパワースペクトルを求める場合には、階調の二次元関数g(x,y)は離散関数として得られる場合が一般的である。よって得られた離散関数g(x,y)と式(3)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数G(f
x,f
y)が求まり、離散関数G(f
x,f
y)を二乗することによって二次元パワースペクトルの離散関数G
2(f
x,f
y)が求められる。
【0038】
ここで、MおよびNはそれぞれパターンのx方向およびy方向のデータ数であり、lは−M/2以上M/2以下の整数であり、mは−N/2以上N/2以下の整数である。また、ΔxおよびΔyはx方向およびy方向のデータ間隔であり、Δf
xおよびΔf
yはそれぞれx方向およびy方向の周波数間隔である。ここで、精度良くパターンの特性を評価するためには、データ間隔ΔxおよびΔyは5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、データ数MおよびNは200個以上が好ましく、ともに500個以上がより好ましい。
【0039】
ここで、本発明の防眩フィルムの微細凹凸表面は凹凸をランダムに形成するため、周波数空間(空間周波数領域)における二次元パワースペクトルG
2(f
x,f
y)は原点(f
x=0,f
y=0)を中心に対称となる。よって、二次元関数G
2(f
x,f
y)は、周波数空間における原点からの距離f(単位:μm
−1)を変数とする一次元関数G
2(f)に変換することができる。
【0040】
具体的には、まず、
図2に示すように周波数空間において、原点O(f
x=0,f
y=0)から(n−1/2)Δf以上(n+1/2)Δf未満の距離に位置する全ての点(
図2中の黒丸の点)の個数Nnを計算する。
図2に示した例ではNn=16個である。次に、原点Oから(n−1/2)Δf以上(n+1/2)Δf未満の距離に位置する全ての点のG
2(f
x,f
y)の合計値G
2n(
図2中の黒丸の点におけるG
2(f
x,f
y)の合計値)を計算し、式(6)に示すように、その合計値G
2nを点の個数Nnで割ったものをG
2(f)の値とした。
【0042】
ここで、M≧Nの場合、nは0以上N/2以下の整数であり、M<Nの場合、nは0以上M/2以下の整数である。また、Δfは(Δf
x+Δf
y)/2とした。
【0043】
図3は、本発明の防眩フィルムを作製するために用いたパターンである画像データの一部を表わした図である。
図3に示したパターンである画像データは33mm×33mmの大きさで、12800dpiで作製した。
【0044】
図4は、
図3に示した画像データの階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたパワースペクトルG
2(f
x,f
y)を原点からの距離fの関数として表した図である。これより
図3に示したパターンは空間周波数0.049μm
−1に極大値を持つことが分かる。
【0045】
防眩フィルムを作製するためのパターンのパワースペクトルが0.03μm
−1以上0.08μm
−1以下に極大値を持つ場合には、結果として得られる防眩フィルムに13μmから35μmの周期を有する表面形状が主に形成されることとなり、効果的に防眩性を向上することができる。また、防眩性の効果的な向上とギラツキの抑制の観点から、防眩フィルムを作製するためのパターンのパワースペクトルが0.04μm
−1以上0.07μm
−1以下に極大値をもつことがより好ましい。この場合には結果として得られる防眩フィルムに15μmから25μmの周期を有する表面形状が主に形成されることとなる。
【0046】
パワースペクトルが0.03μm
−1以上0.08μm
−1以下に極大値を持つパターンを作製するためには、10μm以上20μm未満のドット径をランダムかつ均一に配置すればよい。ランダムに配置するドット径は1種類でも良いし、複数種類でも良い。また、このようにドットをランダムに配置して作製したパターンから、空間周波数において0.03μm
−1以上である特定の空間周波数以下の成分を除去するハイパスフィルターを通過させて得られたパターンを用いて、防眩フィルム作製用のパターンとしてもよい。さらに、ドットをランダムに配置して作製したパターンから、空間周波数において0.03μm
−1以上の空間周波数以下の成分と0.08μm
−1以下である特定の空間周波数以上の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて得られたパターンを用いて、防眩フィルム作製用のパターンとしても良い。ハイパルフィルターやバンドパスフィルターなどを通過させる手法を用いてパターンを作製する場合には、フィルターを通過させる前のパターンとして、乱数もしくは計算機によって生成された擬似乱数により濃淡を決定したランダムな明度分布を有するパターンを用いることもできる。
【0047】
本発明の防眩フィルム製造用金型の製造方法においては、パターンのパワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフの極大値の位置をAμm
−1としたとき、第2エッチング工程のエッチング深さをBμmは以下の関係式を満たすように設定する。
【0049】
ここでパターンのパワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフの極大値の位置Aμm
−1は露光工程における露光部と露光部の平均距離(もしくは非露光部と非露光部の平均距離)、第1エッチング工程によって形成された凹凸表面の凸部と凸部の平均距離(もしくは凹部と凹部の平均距離)の逆数を示しており、第2エッチング工程におけるエッチング深さBμmが上記の関係式を満たすことは、第2エッチング工程におけるエッチング深さが第1エッチング工程によって形成された凹凸表面の凸部と凸部の平均距離の1/2以下であることを意味する。第2エッチング工程におけるエッチング深さが第1エッチング工程によって形成された凹凸表面の凸部と凸部の平均距離の1/2を上回る場合には、第2エッチング工程による第1エッチング工程によって形成された凹凸面を鈍らせる効果が強すぎることとなり防眩性が不十分となる傾向がある。
【0050】
以下、本発明の金型の製造方法における各工程について説明する。
(1)第1めっき工程
まず、第1めっき工程では、金型用基材の表面に、銅めっきを施す。これは、被覆性が高く、平滑化作用が強い銅めっきを施すことにより、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。
【0051】
第1めっき工程において用いられる銅としては、銅の純金属であってもよく、銅を主体とする合金であってもよい。したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味である。銅めっきは、それぞれ電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、通常は電解めっきが採用される。銅めっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地となる金型用基材の表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。形成される銅めっき層の厚みの上限は、コストの観点から、一般的には500μm程度で十分である。
【0052】
なお、金型用基材の形成に好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0053】
また、金型用基材の形状は、当分野において従来より採用されている適宜の形状であれば特に制限されず、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を製造すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
【0054】
(2)研磨工程
続く研磨工程では、第1めっき工程によってめっきが施された表面を研磨する。当該工程を経て、銅めっき層の表面を鏡面に近い状態に研磨する。これは、金型用基材(金属板や金属ロールなど)は、その表面形状を所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあり、また、めっきした状態で表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。
【0055】
銅めっき層の表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法が例示される。また、研磨工程において切削工具を用いて鏡面切削することによって、銅めっき層の表面を鏡面としてもよい。その際の切削工具の材質や形状などは特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。
【0056】
(3)感光性樹脂膜形成工程
続く感光性樹脂膜形成工程では、上述した研磨工程で研磨された面に感光性樹脂を塗布して感光性樹脂膜を形成する。感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができ、たとえば、感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物などを用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としてはフェノール樹脂系やノボラック樹脂系などを用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤などの各種添加剤を配合してもよい。
【0057】
これらの感光性樹脂を銅めっき層の表面に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒などを使用することができる。
【0058】
感光性樹脂溶液の塗布形式としては、該溶液の物性に応じて従来公知の形式を適宜選択しうるが、中でも、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、リングコートが好ましく採用される。また、感光性樹脂溶液を塗布した後、加熱、乾燥処理を施すのが好ましい。
【0059】
(4)露光工程
続く露光工程では、形成された感光性樹脂膜上に、上述したパターンを露光する。露光工程に用いる光源は塗布された感光性樹脂の感光波長や感度などに合わせて適宜選択すればよく、たとえば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nmなど)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)などを用いることができる。
【0060】
本発明の金型の製造方法において表面の凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、上述した特徴を有するパターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、上述したパターンを感光性樹脂膜上に精度よく露光するために、コンピュータ上でパターンを画像データとして作製し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することが好ましい。レーザ描画を行うに際しては印刷版作製用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)などが挙げられる。
【0061】
(5)現像工程
続く現像工程では、パターン露光された感光性樹脂膜を現像する。感光性樹脂膜にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域は現像液によって溶解され、露光されていない領域のみが銅めっき層上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。また、感光性樹脂膜にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域のみ現像液によって溶解され、露光された領域が銅めっき層上に残存し、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0062】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジンなどの環状アミン類などのアルカリ性水溶液、キシレン、トルエンなどの有機溶剤などを挙げることができる。
【0063】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像などの方法を用いることができる。
【0064】
(6)第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、現像された感光性樹脂膜をマスクとして、主に銅めっき層のマスクの無い領域をエッチングし、めっき面に凹凸を形成する。第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl
3)液、塩化第二銅(CuCl
2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH
3)
4Cl
2)などを用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。エッチング量(エッチングにより削られる基材の厚み)は、エッチング処理の手法、エッチング処理に使用する処理液の組成、エッチング処理温度、エッチング処理時間などを調整することにより、制御することができる。
【0065】
(7)感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でのエッチング処理後に、感光性樹脂膜を剥離する。感光性樹脂膜剥離工程では、通常、剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができるが、pH、温度、濃度および浸漬時間などを変化させること、たとえば、現像液よりもpH、温度、濃度を高くしたり、浸漬時間を長くしたりすることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬剥離、スプレー剥離、ブラシ剥離、超音波剥離などの方法を用いることができる。
【0066】
(8)第2エッチング工程
続く第2エッチング工程では、第1エッチング工程によって形成された凹凸形状を、エッチング処理によって鈍らせる。この第2エッチング工程でのエッチング処理によって、第1エッチング工程でのエッチング処理によって形成された凹凸形状における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。
【0067】
第2エッチング工程でのエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl
3)液、塩化第二銅(CuCl
2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH
3)
4Cl
2)などを用い、表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。
【0068】
エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって変わりうるが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる銅めっき層の厚みである。第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。
【0069】
(9)第2めっき工程
続く第2めっき工程では、第2エッチング工程によって鈍らされた凹凸面に、クロムめっきを施す。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO
3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。微細な凹凸形状が形成された銅めっき層の表面に、クロムめっきにより被覆性の高い保護めっき層を形成することによって、工業的に有利に凹凸形状が鈍らせられ、その凹凸形状が防眩フィルム製造用金型として好ましい方向に変化する。
【0070】
上述のような各工程を経て、かつ、前記パターンのパワースペクトルを空間周波数に対する強度として表したときのグラフが空間周波数0.03μm
−1以上0.08μm
−1以下に極大値を有し、かつ、上記式(1)を満たすようにすることで、上述した特性を備える防眩フィルムを製造するために好適な金型を製造することができる。
【0071】
<防眩フィルムの製造方法>
本発明の防眩フィルムは、上述のようにして製造された防眩フィルム製造用金型の表面の凹凸形状を透明樹脂フィルムに転写した後、該凹凸形状が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がすことを含む製造方法により、製造することができる。
【0072】
たとえば、上述のようにして製造された防眩フィルム製造用金型の表面の凹凸形状を、透明支持体上の光硬化性樹脂層などに転写し、次いで該凹凸形状が転写された防眩層と透明支持体とを金型から剥がすことによって、防眩フィルムを作製することを特徴とするエンボス法によって製造することができる。
【0073】
ここで、エンボス法としては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。UVエンボス法は、透明支持体の表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される方法である。具体的には、透明支持体上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明支持体側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明支持体を剥離することにより、金型の凹凸形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
【0074】
UVエンボス法を用いる場合、透明支持体としては、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0075】
また、UVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されないが、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合したものを好適に用いることができる。
【0076】
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明支持体を加熱状態で金型に押し付け、金型の表面形状を透明支持体に転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明支持体としては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化型樹脂を塗工するための透明支持体としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0078】
(正反射除去方式で測定する視感反射率)
分光測色計CM2002(コニカミノルタセンシング製)を用いて、防眩フィルムの正反射除去方式での視感反射率を測定した。サンプルの微細凹凸表面とは反対側からの反射を除去し、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるように黒色アクリル板に貼合してから、測定に供した。
【0079】
(透過鮮明度)
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層の微細な凹凸形状面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
【0080】
(反射鮮明度)
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層の微細な凹凸形状面が表面となるように黒色アクリル基板に貼合してから、測定に供した。この状態で凹凸形状面側から光を45°で入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の反射鮮明度の最大値は300%となる。
【0081】
(ヘイズ)
防眩フィルムのヘイズは、防眩フィルムを光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層形成面とは反対側の面でガラス基板に貼合し、該ガラス基板に貼合された防眩フィルムについて、ガラス基板側から光を入射させ、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて測定した。
【0082】
(映り込み、白ちゃけの目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無、白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込みおよび白ちゃけは、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
【0083】
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
【0084】
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない、
2:白ちゃけが少し観察される、
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
【0085】
(ギラツキの評価)
ギラツキは次の手順で評価した。すなわち、まず
図5に平面図で示すようなユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意した。この図において、ユニットセル40は、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン41が形成され、そのクロム遮光パターン41の形成されていない部分が開口部42となっている。ここでは、ユニットセルの寸法が211μm×70μm(図の縦×横)、したがって開口部の寸法が201μm×60μm(図の縦×横)のものを用いた。図示するユニットセルが縦横に多数並んで、フォトマスクを形成する。
【0086】
そして、
図6に模式的な断面図で示すように、フォトマスク43のクロム遮光パターン41を上にしてライトボックス45に置き、ガラス板47に粘着剤で防眩フィルム1をその凹凸面が表面となるように貼合したサンプルをフォトマスク43上に置く。ライトボックス45の中には、光源46が配置されている。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置49で目視観察することにより、ギラツキの程度を1から3の3段階で次の基準により評価した。
【0087】
ギラツキ 1:ギラツキが観察されない、
2:ギラツキがわずかに観察される、
3:ギラツキが明確に観察される。
【0088】
(防眩フィルム製造用のパターンの評価)
作製したパターンデータの階調を二次元の離散関数g(x,y)で表した。離散関数g(x,y)の水平分解能ΔxおよびΔyはともに2μmとした。得られた二次元関数g(x,y)を離散フーリエ変換して、二次元関数G(f
x,f
y)を求めた。二次元関数G(f
x,f
y)を二乗して二次元パワースペクトルの二次元関数G
2(f
x,f
y)を計算し、原点からの距離fの関数である一次元パワースペクトルの一次元関数G
2(f)を計算した。
【0089】
<実施例1>
(防眩フィルム製造用の金型の作製)
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、
図3に示したパターン(ランダムな明度分布を有するパターンから、特定の空間周波数範囲の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて作製した)を繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行った。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。
【0090】
その後、塩化第二銅液で第1エッチング工程としてのエッチング処理を行った。その際のエッチング量は3μmとなるように設定した。第1エッチング工程後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2エッチング工程としてのエッチング処理を行った。その際のエッチング量は10μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行い、金型Aを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0091】
(防眩フィルムの形成)
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化性樹脂組成物Aを入手した。
【0092】
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
多官能ウレタン化アクリレート 40部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応性生物)
ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド 5部
この紫外線硬化性樹脂組成物Aを厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、乾燥後の塗布厚みが7μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm
2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm
2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、透明な防眩フィルムAを作製した。
【0093】
<実施例2>
第1エッチング工程でのエッチング量を4μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Bを作製し、金型Bを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムBを作製した。
【0094】
<実施例3>
図7に示すパターン(ランダムな明度分布を有するパターンから、特定の空間周波数範囲の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて作製した)を繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、第2エッチング工程でのエッチング量を6μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Cを作製し、金型Cを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムCを作製した。
【0095】
<実施例4>
図8に示すパターン(ランダムな明度分布を有するパターンから、特定の空間周波数範囲の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて作製した)を繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は実施例3と同様にして金型Dを作製し、金型Dを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムDを作製した。
【0096】
<実施例5>
図9に示すパターン(ランダムな明度分布を有するパターンから、特定の空間周波数範囲の成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて作製した)を繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、第1エッチング工程でのエッチング量を4μmとなるように設定し、第2エッチング工程でのエッチング量を12μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Eを作製し、金型Eを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムEを作製した。
【0097】
<比較例1>
第1エッチング工程でのエッチング量を4μmとなるように設定し、第2エッチング工程でのエッチング量を12μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Fを作製し、金型Fを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムFを作製した。
【0098】
<比較例2>
紫外線硬化性樹脂組成物Aの固形分100部に対して、重量平均粒子径が2.7μmの多孔質シリカ粒子「サイリシア」(商品名、富士シリシア化学(株)製)を3部添加し、紫外線硬化性樹脂組成物Bを調製した。
【0099】
この紫外線硬化性樹脂組成物Bを厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、乾燥後の塗布厚みが3μmとなるように塗布し、80℃に設定した乾燥機中で1分間乾燥させた。乾燥後のフィルムの紫外線硬化性樹脂組成物層側より、強度20mW/cm
2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で300mJ/cm
2となるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させて、表面に微細な凹凸形状を有する防眩層(硬化樹脂)を形成し、防眩フィルムGを作製した。
【0100】
<比較例3>
添加する多孔質シリカ粒子の添加部数を5部に変更したこと以外は比較例2と同様にして紫外線硬化性樹脂組成物Cを調整し、紫外線硬化性樹脂組成物Cを使用したこと以外は比較例2と同様にして防眩フィルムHを作製した。
【0101】
評価結果を表1および表2に示した。本発明の要件を全て満たす防眩フィルムA〜Dは非常に優れた防眩性と白ちゃけの抑制を示し、ギラツキも観察されなかった。防眩フィルムEは非常に優れた防眩性と白ちゃけの抑制を示したが、わずかにギラツキが観察された。これは防眩フィルムEの透過鮮明度が本発明の好ましい範囲を下回っていたためと考えられる。また、防眩フィルムEの透過鮮明度が本発明の好ましい範囲を下回った理由は、金型Eを作製する際のパターンの極大値の位置が本発明の好ましい範囲をわずかに下回ったためだと考えられる。防眩フィルムFは反射鮮明度が本発明の好ましい範囲を超えており、防眩性が不十分であった。これは金型Fを作製する際のパターンの極大値の位置と第2エッチング工程のエッチング深さの関係が本発明の要件を満たさなかったためと考えられる。また、金型を作製せずに作製した防眩フィルムG、Hは防眩性は高かったものの、白ちゃけが強く発生し、ギラツキも観察された。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】