(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め設定されたムラ補正値を用いてムラ補正処理を施した画像データに基づいて、主走査方向にノズルが配置されたインクジェットヘッドを用いてシングルパス方式で記録媒体上に濃度ムラ測定用画像を形成する濃度ムラ測定用画像形成工程であって、前記画像データに対して不良ノズルに隣接する補正ノズルを用いて不良補正を施す濃度ムラ測定用画像形成工程と、
前記濃度ムラ測定用画像が乾燥する前に、前記濃度ムラ測定用画像の設定階調値ごとかつ前記ノズルごとの濃度測定値を取得する濃度測定値取得工程と、
乾燥の前後における前記設定階調値ごとかつ前記ノズルごとの濃度測定値の変換関係を表す不良補正部濃度測定値変換値及び非不良補正部濃度測定値変換値について、前記補正ノズルに該当するノズルに対しては不良補正部濃度測定値変換値、前記補正ノズルに該当しないノズルに対しては非不良補正部濃度測定値変換値を用いて、前記取得した濃度測定値を乾燥後の濃度測定値に相当する変換濃度測定値に変換する濃度測定値変換工程と、
前記変換濃度測定値を用いて新たなムラ補正値を導出するムラ補正値導出工程と、
を備えた画像処理方法。
予め設定されたムラ補正値を用いてムラ補正処理を施した画像データに基づいて、前記インクジェットヘッドを用いてシングルパス方式で記録媒体上に設定階調値ごとの濃度測定用画像を形成する濃度測定用画像形成工程であって、予め定めた模擬不良ノズルにインクを吐出させず、前記模擬不良ノズルに隣接する模擬補正ノズルに不良補正用濃度のインクを吐出させる濃度測定用画像形成工程と、
前記濃度測定用画像が乾燥する前に、前記濃度測定用画像の前記設定階調値ごとの乾燥前濃度測定値を取得する乾燥前濃度測定値取得工程と、
前記濃度測定用画像を乾燥させる乾燥工程と、
前記濃度測定用画像が乾燥した後に、前記濃度測定用画像の前記設定階調値ごとの乾燥後濃度測定値を取得する乾燥後濃度測定値取得工程と、
前記乾燥前濃度測定値及び前記乾燥後濃度測定値に基づいて、前記設定階調値ごとの不良補正部濃度測定値変換値を前記模擬補正ノズルごとに算出する不良補正部濃度測定値変換値算出工程と、
を備えた請求項1に記載の画像処理方法。
予め設定されたムラ補正値を用いてムラ補正処理を施した画像データに基づいて、前記インクジェットヘッドを用いてシングルパス方式で記録媒体上に前記設定階調値ごとの濃度測定用画像を形成する濃度測定用画像形成工程と、
前記濃度測定用画像が乾燥する前に、前記濃度測定用画像の前記設定階調値ごとの乾燥前濃度測定値を取得する乾燥前濃度測定値取得工程と、
前記濃度測定用画像を乾燥させる乾燥工程と、
前記濃度測定用画像が乾燥した後に、前記濃度測定用画像の前記設定階調値ごとの乾燥後濃度測定値を取得する乾燥後濃度測定値取得工程と、
前記乾燥前濃度測定値及び前記乾燥後濃度測定値に基づいて、前記設定階調値ごとの非不良補正部濃度測定値変換値を前記ノズルごとに算出する非不良補正部濃度測定値変換値算出工程と、
を備えた請求項1又は2に記載の画像処理方法。
前記濃度測定値変換工程は、前記乾燥の前後における前記設定階調値ごとかつ前記ノズルごとの濃度測定値の変換関係を表す不良補正部濃度測定値変換値及び非不良補正部濃度測定値変換値について、前記補正ノズルに該当するノズルに対しては不良補正部濃度測定値変換値を、前記補正ノズルに該当しないノズルに対しては非不良補正部濃度測定値変換値を、前記取得した濃度測定値に加算して乾燥後の濃度測定値に相当する変換濃度測定値に変換する請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0034】
<第1の実施形態>
〔画像記録装置の構成〕
図1に示すインクジェット記録装置100(画像記録装置の一例)は、シングルパス方式のインクジェットプリンタであり、印刷画像を表す印刷画像データである画像データ102を取得する画像データ取得部104、入力された画像データに基づいてドットデータを生成するドットデータ生成部110、及び生成されたドットデータに基づいて記録媒体140に画像を印刷(記録)する画像記録部150等を備えている。
【0035】
画像データ102は、RGBの色ごとのラスタ形式のデータ(ラスタデータ)である。
【0036】
画像データ取得部104は、入力インターフェース(不図示)を介して画像データ102を取得する。また、ROM(Read Only Memory)等のメモリ(不図示)に予め記憶された画像データ102を読み出して取得してもよい。
【0037】
画像処理部106(画像処理装置の一例)は、ドットデータ生成部110及びムラ補正値生成部120を備えている。
【0038】
ドットデータ生成部110は、赤(R)、緑(G)、青(B)で表された画像データ102をインク色に対応するC、M、Y、Kで表される画像データに変換する色変換処理部(不図示)、C、M、Y、Kで表された多階調の画像データを、色ごとの多階調の画像データに分解する色分解(分版)処理部(不図示)、色ごとの多階調の画像データに対してムラ補正値を用いてムラ補正処理を施すムラ補正処理部108、及びムラ補正処理後の色ごとの多階調の画像データに対してハーフトーン処理を施すハーフトーン処理部(不図示)を備えている。ドットデータ生成部110は、取得した画像データ102に基づいてノズルごとのドットデータを生成し、画像記録部150へ出力する。
【0039】
一方、ムラ補正値生成部120は、濃度測定値を取得する濃度測定値取得部122、取得された濃度測定値を記憶する濃度測定値記憶部124、ムラ補正値等を算出する演算処理部126、濃度測定値変換値を記憶する濃度測定値変換値記憶部128、及びムラ補正値を記憶するムラ補正値記憶部130を備えている。
【0040】
ムラ補正値生成部120は、インクジェットヘッド200のノズル212ごとのムラ補正値を生成し、生成したムラ補正値をムラ補正値記憶部130に記憶する。ドットデータ生成部110のムラ補正処理部108は、ムラ補正値生成部120のムラ補正値記憶部130に記憶されているムラ補正値を読み出し、読み出したムラ補正値に基づいて色ごとの多階調の画像データに対してムラ補正処理を施す。
【0041】
画像記録部150は、記録媒体140に画像を印刷する印刷ユニット152、印刷ユニット152からスキャナ156へ記録媒体140を搬送する搬送部154、記録媒体140に印刷された画像を読み取るスキャナ156、スキャナ156による読取処理後の記録媒体140に対して、乾燥処理及び定着処理を施す乾燥定着ユニット158、及び乾燥処理及び定着処理が施された記録媒体140を排出する排出部160を備えている。
【0042】
印刷ユニット152は、C、M、Y、Kの各色に対応するインクジェットヘッド200(
図2参照)、インクジェットヘッド200を制御して画像を記録する記録制御部(記録制御手段の一例)を備えている。印刷ユニット152は、記録制御部において入力されたドットデータに基づいてインクジェットヘッド200を制御し、搬送部154によって搬送される(相対移動の一例)記録媒体140の記録面に印刷画像を印刷する。
【0043】
搬送部154は、印刷ユニット152の印刷位置からスキャナ156の読取位置まで記録媒体140を固定保持して搬送する。搬送部154による記録媒体140の搬送は、記録媒体140上に印刷された画像の乾燥及び定着が進行しない程度の短期間にされるものである。
【0044】
スキャナ156(濃度測定値取得手段の一例)は、記録媒体140上に印刷された画像を読み取るイメージセンサを含んで構成される。イメージセンサとして、ラインセンサを用いてもよいし、エリアセンサも用いてよい。
【0045】
乾燥定着ユニット158は、送風、加熱等によって記録媒体140の記録面に印刷された画像を乾燥させ、かつ、加熱、加圧等によって画像を記録媒体140の記録面へ定着させる。
【0046】
排出部160は、乾燥定着ユニット158により乾燥処理及び定着処理が施された記録媒体140を装置外部へ排出する。
【0047】
画像処理部106を単独の画像処理装置として構成し、画像記録部150と組み合わせてインクジェット記録装置100を構成することも可能である。
【0048】
インクが乾燥定着した後に画像読み取りをすれば、インクが未乾燥、未定着の状態でイメージセンサへ入射される光量が小さくなるという問題は発生しない。しかしながら、印刷時やイメージセンサによる読み取り時は記録媒体を固定保持する必要があるため、印刷部の直後に乾燥定着部を配置し、その下流側にイメージセンサを配置する装置構成を採用した場合、印刷時に記録媒体を固定保持する手段と読み取り時に記録媒体を固定保持する手段とを個別に備えることになる。その結果、印刷部の直後にイメージセンサが配置される装置構成と比べて、装置サイズ(装置規模)が大きくなってしまう。
【0049】
本実施形態では、印刷を行う印刷ユニット152と印刷画像を読み取るスキャナ156に対して、記録媒体140を固定保持して搬送する手段を搬送部154のみとし、装置サイズの大型化を防止している。
【0050】
〔インクジェットヘッドの構成〕
図2は、印刷ユニット152において用いられるインクジェットヘッド200の概略構成を示す平面図である。
図1に示した印刷ユニット152は、C、M、Y、Kの各色に対応する4つのインクジェットヘッド200を備えている。なお、4つのインクジェットヘッドの構成は共通している。
【0051】
図2に示すインクジェットヘッド200は、記録媒体140の相対搬送方向(Y方向、副走査方向)と直交する記録媒体140の幅方向(X方向、主走査方向)に、n個のヘッドモジュール202を繋ぎ合わせた構造を有している。ここでいう「直交」には、90度未満の角度、又は90度を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90度の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
【0052】
また、各ヘッドモジュール202のノズル面204には、複数のノズル212(
図3参照)が配置されている。すなわち、インクジェットヘッド200は、記録媒体140のX方向の全長に対応する長さに渡って複数のノズル212が配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。
【0053】
図3に示すように、ヘッドモジュール202は、X方向に対して角度βの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とからなる平行四辺形の平面形状を有している。ノズル面204には、V方向に沿う行方向、及びW方向に沿う列方向に沿って、複数のノズル212が配置されている。なお、ノズル212の配置は、
図3に図示した態様に限定されず、X方向に沿う行方向、及びX方向に対して斜めに交差する列方向に沿って複数のノズル212を配置してもよい。
【0054】
ノズル212がマトリクス配置されたヘッドモジュール202は、ノズル212をX方向に並ぶように投影させた投影ノズル列において、X方向にノズル212が等間隔に配置される。すなわち、X方向がノズルの実質的な配置方向であり、この投影ノズル列のノズル212のX方向の間隔がインクジェットヘッド200のX方向の記録解像度となる。
【0055】
図示は省略するが、インクジェットヘッド200(ヘッドモジュール202)は、ノズル212と連通する圧力室、供給口を介して圧力室と連通する供給流路を備えている。ノズル212からインクが吐出されると、供給口を介して供給流路から圧力室へインクが充填される。
【0056】
インクジェットヘッド200のインクの吐出方式は、圧電素子のたわみ変形を利用した圧電方式を適用してもよいし、インクの膜沸騰現象を利用したサーマル方式を適用してもよい。圧電方式では、圧電素子に駆動電圧が印加されると、圧電素子のたわみ変形に応じて圧力室の体積が減少し、圧力室の体積減少分に対応するインクがノズル212から吐出される。
【0057】
また、サーマル方式では、圧力室内のインクを加熱して気泡を発生させ、圧力室の体積に対応するインクがノズル212から吐出される。
【0058】
〔濃度測定値変換値算出処理〕
次に、濃度測定値変換値記憶部128が記憶する濃度測定値変換値の算出処理を、
図4のフローチャートを用いて説明する。濃度測定値変換値は、印刷画像の乾燥定着前の濃度測定値と乾燥定着後の濃度測定値との変換関係を示している。乾燥定着前の画像の濃度測定値に対して濃度測定値変換値を用いた変換処理を行うことで、乾燥定着後の濃度測定値に変換することができる。本実施形態に係る濃度測定値変換値は、ノズル212ごとに算出されるノズル別濃度測定値変換値である。
【0059】
なお、ノズル別濃度測定値変換値は、C、M、Y、Kの各色に対応する4つのインクジェットヘッド200ごとに算出されるが、ここでは1つのインクジェットヘッド200のノズル別濃度測定値変換値の算出処理について説明する。
【0060】
ノズル別濃度測定値変換値の算出は、最初に画像処理部106が画像データ取得部104において濃度測定用テストパターンの画像データを取得する(ステップS1)。
【0061】
図5に示すように、濃度測定用テストパターンの画像データ10は、X方向にテストチャート階調値(設定階調値)が一定であり、Y方向に所定の幅を有するN段の濃度パッチ12−1、12−2、…、12−Nを備えている。画像データ10は、各濃度パッチ12−1、12−2、…、12−Nが、階調値の最も高いテストチャート階調値G
1の濃度パッチ12−1から階調値の最も低いテストチャート階調値G
Nの濃度パッチ12−Nまで階調値順に配置されているが、濃度パッチの配置はこれに限定されるものではない。
【0062】
次に、画像処理部106は、ムラ補正処理部108においてムラ補正値記憶部130から最新のムラ補正値である第1ムラ補正値を読み出し、読み出した第1ムラ補正値に基づいて濃度測定用テストパターンの画像データ10にムラ補正処理を施す(ステップS2)。第1ムラ補正値は、印刷画像のノズル212ごとのムラを補正するための演算に用いられる補正値であり、各色のインクジェットヘッド200のノズル212ごとに、かつ設定階調値ごとに、ムラ補正値記憶部130に記憶されている。本実施形態では、ムラ補正処理部108は、各濃度パッチ12−1、12−2、…、12−Nのテストチャート階調値G
1、テストチャート階調値G
2、…、テストチャート階調値G
Nにノズル212ごとの第1ムラ補正値を乗算し、ノズル212毎にムラ補正処理を施す。
【0063】
このムラ補正処理が施された濃度測定用テストパターンの画像データ10に基づいて、印刷ユニット152のインクジェットヘッド200によって記録媒体140に濃度測定用テストパターンの画像20(濃度測定用画像の一例)を印刷する(ステップS3、濃度測定用画像形成工程の一例)。
図6(a)に、記録媒体140に記録された濃度測定用テストパターンの画像20を示す。この濃度測定用テストパターンの画像20は、Y方向に搬送される記録媒体140に、1つのインクジェットヘッド200の全てのノズル212からインクを吐出して一度の走査において印刷される。したがって、各濃度パッチの用紙搬送方向に直交する方向の長さは、投影ノズル列の幅と等しい。
【0064】
次に、スキャナ156により記録媒体140に印刷された濃度測定用テストパターンの画像20を読み取る(ステップS4)。ここで読み取られる濃度測定用テストパターンの画像20は、乾燥定着ユニット158による乾燥定着前の状態である。なお、この乾燥定着前の画像の読み取りは、インクジェット記録装置100とは別途設けられたスキャナを用いてもよい。
【0065】
画像処理部106は、ステップS4におけるスキャナ156の読み取り値に基づいて、濃度測定値取得部122においてテストチャート階調値ごとかつインクジェットヘッド200のノズル212ごとの濃度測定値をノズル別第1濃度測定値(乾燥前濃度測定値の一例)として取得する(ステップS5、乾燥前濃度測定値取得工程の一例)。すなわち、画像20の各濃度パッチ12−1、12−2、…、12−Nの読み取り値から、ノズル212ごとにノズル別第1濃度測定値を取得する。
図6(a)は、インクジェットヘッド200の複数のノズル212のうち、ノズル番号iのノズル別第1濃度測定値i−1、ノズル別第1濃度測定値i−2、…、ノズル別第1濃度測定値i−Nの取得の一例を示している。
【0066】
画像の濃度が高いとスキャナのイメージセンサの入射光量が小さくなり、イメージセンサの出力信号は小さい値を示す。一方、画像の濃度が低いとイメージセンサの入射光量が大きくなり、イメージセンサの出力信号は大きい値を示す。したがって、ここではイメージセンサの出力信号の大小関係を反転させて濃度測定値とする。濃度測定値取得部122は、このノズル別第1濃度測定値を濃度測定値記憶部124に記憶する。
【0067】
次に、記録媒体140に印刷された濃度測定用テストパターンの画像20を乾燥定着ユニット158により乾燥定着させる(ステップS6、乾燥工程の一例)。
図6(b)に、濃度測定用テストパターンの画像20が乾燥定着した濃度測定用テストパターンの画像22を示す。なお、乾燥定着処理として、濃度測定用テストパターンの画像が乾燥定着状態になるまでの長期間の搬送を適用してもよい。
【0068】
この濃度測定用テストパターンの画像22をスキャナ156により読み取る(ステップS7)。この乾燥定着後の画像の読み取りは、インクジェット記録装置100とは別途設けられたスキャナを用いてもよい。
【0069】
画像処理部106は、濃度測定値取得部122においてステップS7におけるスキャナ156の読み取り値を反転させ、テストチャート階調値ごとかつインクジェットヘッド200のノズル212ごとの濃度測定値をノズル別第2濃度測定値(乾燥後濃度測定値の一例)として取得する(ステップS8、乾燥後濃度測定値取得工程の一例)。すなわち、画像22の各濃度パッチ12−1、12−2、…、12−Nの読み取り値から、ノズル212ごとのノズル別第2濃度測定値を取得する。
図6(b)は、インクジェットヘッド200の複数のノズル212のうち、ノズル番号iのノズル別第2濃度測定値i−1、ノズル別第2濃度測定値i−2、…、ノズル別第2濃度測定値i−Nの取得の一例を示している。濃度測定値取得部122は、このノズル別第2濃度測定値を濃度測定値記憶部124に記憶する。
【0070】
最後に、画像処理部106は、演算処理部126において、ムラ補正値記憶部130に記憶された第1ムラ補正値、濃度測定値記憶部124に記憶されたノズル別第1濃度測定値及びノズル別第2濃度測定値に基づいて、印刷画像の乾燥定着前の濃度測定値(ここではノズル別第1濃度測定値)と乾燥定着後の濃度測定値(ここではノズル別第2濃度測定値)とのノズルごと(ノズルごとの領域)の変換関係を示すノズル別濃度測定値変換値を取得する(ステップS9、濃度測定値変換値算出工程の一例)。
【0071】
図7(a)、(b)に示すように、ノズル別濃度測定値変換値24−iは、ノズル番号iのノズルのテストチャート階調値ごとの乾燥定着前の濃度測定値に対する乾燥定着後の濃度測定値の倍率である。また、このテストチャート階調値は、濃度測定用テストパターンの画像データ10の印刷の際にノズル212ごとに最新のムラ補正値である第1ムラ補正値でムラ補正処理が施されている。すなわち、ノズル別濃度測定値変換値24−iは、テストチャート階調値ごとに、倍率=(乾燥定着後の濃度測定値)/(乾燥定着前の濃度測定値)が算出され、濃度測定用テストパターンの画像を生成する際に適用されたノズルごとの第1ムラ補正値をパラメータとする関数(一次関数)として、又は第1ムラ補正値をインデックスとするテーブル(一次元テーブル)として濃度測定値変換値記憶部128に記憶される。
【0072】
以上により、ノズル別濃度測定値変換値の算出処理を終了する。ここでは、ノズル212ごとの濃度測定値変換値を算出したが、X方向について複数の領域ごとに濃度測定値変換値を算出してもよい。例えば、乾燥定着ユニット158の送風部、加熱部、又は加圧部等の配置に応じた領域ごとに算出することができる。また、複数のノズルごとに算出してもよい。
【0073】
〔ムラ補正値算出処理〕
次に、ムラ補正値記憶部130が記憶するムラ補正値の算出処理(画像処理方法の一例)を、
図8のフローチャートを用いて説明する。ここでは、すでにノズル別濃度測定値変換値が算出されており、現在設定されているムラ補正値を新たなムラ補正値に更新する場合について説明する。なお、ムラ補正値は、C、M、Y、Kの各色に対応する4つのインクジェットヘッド200ごとに算出されるが、ここでは1つのインクジェットヘッド200のムラ補正値の算出処理について説明する。
【0074】
ムラ補正値の算出は、最初に画像処理部106が画像データ取得部104において濃度ムラ測定用テストパターンの画像データを取得する(ステップS11)。濃度ムラ測定用テストパターンの画像データとして、濃度測定値変換値の算出処理と同様に濃度測定用テストパターンの画像データ10(
図5参照)を用いることができる。
【0075】
次に、画像処理部106は、ムラ補正処理部108においてムラ補正値記憶部130から最新のムラ補正値である第2ムラ補正値を読み出し、読み出した第2ムラ補正値に基づいて濃度ムラ測定用テストパターンの画像データにムラ補正処理を施す(ステップS12)。
【0076】
このムラ補正処理が施された濃度ムラ測定用テストパターンの画像データに基づいて、印刷ユニット152(濃度ムラ測定用画像形成手段の一例)は、インクジェットヘッド200によって記録媒体140に濃度ムラ測定用テストパターンの画像(濃度ムラ測定用画像の一例)を印刷する(ステップS13、濃度ムラ測定用画像形成工程の一例)。
【0077】
次に、スキャナ156により記録媒体140に印刷された濃度ムラ測定用テストパターンの画像を読み取る(ステップS14)。ここで読み取られる濃度ムラ測定用テストパターンの画像は、乾燥定着ユニット158による乾燥定着前の状態である。
【0078】
画像処理部106は、スキャナ156の読み取り値に基づいて、濃度測定値取得部122においてテストチャート階調値ごとかつインクジェットヘッド200のノズル212ごとの濃度測定値をノズル別第3濃度測定値として取得する(ステップS15、濃度測定値取得工程の一例)。濃度測定値取得部122は、このノズル別第3濃度測定値を濃度測定値記憶部124に記憶する。
【0079】
続いて、画像処理部106は、演算処理部126において、ムラ補正値記憶部130に記憶された第2ムラ補正値、濃度測定値記憶部124に記憶されたノズル別第3濃度測定値、及び濃度測定値変換値記憶部128に記憶されたノズル別濃度測定値変換値に基づいて、ノズル212ごとの乾燥定着後の濃度測定値(変換濃度測定値)に相当するノズル別第4濃度測定値を算出する(ステップS16、濃度測定値変換工程の一例)。
【0080】
図9に示すように、ノズル別濃度測定値変換値24−iは、階調値に対する乾燥定着前後の濃度測定値の倍率である。階調値としては、第3濃度測定値を取得した際の濃度ムラ測定用テストパターンのテストチャート階調値G
1、G
2…、G
Nが適用される。このテストチャート階調値G
1、G
2…、G
Nは、濃度ムラ測定用テストパターンの印刷の際にノズル212ごとのムラ補正値(ここでは第2ムラ補正値)によってムラ補正処理が施される。すなわち、演算処理部126(濃度測定値変換手段の一例)は、ノズル212ごとに濃度ムラ測定用テストパターンに適用されたムラ補正値の値を入力値として、入力値に対応する濃度測定値変換値を取得する。この取得したノズル別濃度測定値変換値を第3濃度測定値に乗算し、ノズル別第4濃度測定値を算出する。このように、ノズル別第4濃度測定値は、ノズル212ごとかつ階調値ごとに算出される。
【0081】
最後に、画像処理部106は、演算処理部126(ムラ補正値導出手段の一例)において、ノズル別第4濃度測定値に基づいて第3ムラ補正値を導出し(ステップS17、ムラ補正値導出工程)、導出した第3ムラ補正値を最新のムラ補正値としてムラ補正値記憶部130(記憶手段の一例)に記憶させ、ムラ補正値の算出処理を終了する。
【0082】
〔画像データの印刷処理〕
以上のように、新たなムラ補正値である第3ムラ補正値が算出されると、ムラ補正処理部108では、第3ムラ補正値を適用したムラ補正処理を実行する。
図10に示すフローチャートを用いて、画像データにムラ補正処理を施して印刷する印刷処理について説明する。
【0083】
画像データの印刷処理は、最初に画像処理部106が画像データ取得部104において印刷用画像データを取得する(ステップS21)。
【0084】
ドットデータ生成部110は、この印刷用画像データに対して色変換処理、色分解(分版)処理を施す。その後、ムラ補正処理部108においてムラ補正値記憶部130から最新のムラ補正値である第3ムラ補正値をインク色ごとに読み出し、読み出した第3ムラ補正値を適用して色ごとの画像データに対してそれぞれムラ補正処理を施す(ステップS22)。さらに、ムラ補正処理後の画像データに対してハーフトーン処理を施し、色ごとのドットデータを生成する。この色ごとのドットデータを、画像記録部150の印刷ユニット152に入力する。
【0085】
画像記録部150では、色ごとのドットデータに基づいて印刷ユニット152において各色のインクジェットヘッド200を制御し、記録媒体140にドットデータに基づく印刷画像を印刷する(ステップS23)。
【0086】
印刷画像が印刷された記録媒体140は、搬送部154により乾燥定着ユニット158に搬送される。乾燥定着ユニット158は、記録媒体140の記録面に印刷された印刷画像を乾燥定着させる。その後、印刷画像が乾燥定着した記録媒体140を排出部160から排出する。
【0087】
以上説明した濃度測定値変換値算出処理やムラ補正値算出処理は、コンピュータに各工程を実行させるプログラムとして構成し、当該プログラムを記憶した記録媒体を構成することも可能である。
【0088】
〔ムラ補正値とインク量との関係〕
ムラ補正値は、ノズル配列方向におけるインク量の分布を補正するインク量分布補正値と等価である。ムラ補正処理は、あるノズルの吐出量が過小(または過大)の場合に、当該ノズルの吐出量を増加(または減少)させて本来の吐出量が実現している。
【0089】
すなわち、
図11(a)に示すように、ムラ補正処理は、吐出量が過小なノズル(N
1,N
2)についてムラ補正値(インク量設定値)を大きくして、インク量を増加させている処理と等価である。
図11(b)は、ノズル番号N
1、N
2に対応する位置について、局所的にインク26が増量された状態
を示している。
【0090】
各ノズルの吐出状態が変動して、ムラ補正値と各ノズルの吐出特性(記録特性)との関係が適合しなくなると、インク量を増加させたノズルに対応する位置(
図11(a)のノズル番号N
1,N
2に対応する位置)に黒スジが発生しうる。そこで、すでに設定されているムラ補正値を適用してムラ補正処理を施した濃度測定用テストパターンを印刷し、印刷された濃度測定用テストパターンの読取画像を用いて濃度ムラを測定し、測定された濃度ムラに基づいてムラ補正値を更新する。
【0091】
ノズルの吐出状態に応じてムラ補正値を適宜更新することで、印刷の際のノズル212ごとの吐出状態が反映されたムラ補正処理を実現し、ノズルごとの吐出特性に起因する濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0092】
図12(a)は、
図8のフローチャートのステップS15において取得されたノズル別第3濃度測定値(定着乾燥前の濃度測定値)を模式的に示した図であり、
図12(b)は、ステップS16において算出されたノズル別第4濃度測定値である。
【0093】
図12(a)に示す濃度測定値は、インク表面での光反射特性の影響で、ムラ補正処理の誤差やインク吐出量の経時変化などによるインク量の増量(黒スジ)部分における変化が小さく測定されている。したがって、ノズル別第3濃度測定値を用いて算出されたムラ補正値は、現実の濃度むらが適切に反映されたものではない。
【0094】
一方、
図12(b)に示すように、ノズル別濃度測定値変換値を用いて乾燥後の濃度測定値に変換されたノズル別第4濃度測定値は、ムラ補正処理によるインク量の増量が適切に反映されている。すなわち、印刷直後に濃度測定を行う構成においても、実際の濃度測定値である乾燥定着前の濃度測定値を乾燥定着後の濃度測定値に変換し、乾燥定着後の濃度測定値を用いてムラ補正値を算出することで、現実の濃度むらを適切に反映したムラ補正値を算出することができる。
【0095】
紙面領域の位置(ノズル位置)への依存性を考慮しない場合には、ノズルからのインク吐出量のばらつき、乾燥温度などに代表される乾燥条件の紙面内ムラの影響などにより、乾燥定着前後における濃度測定値の変化は紙面内でローカリティを持ってしまう。マルチパスによる印刷など、多重にインクを打滴することで打滴インク量が均一と見なせる場合はローカリティを加味しないでもよい可能性があるが、シングルパス印刷ではヘッドの吐出非均一性がそのまま打滴インク量の非均一性となり、マルチパスに比べて乾燥定着前後における濃度変化のローカリティが大きくなる。そのため1つの濃度測定変換値だけでは乾燥定着前後における濃度変化を吸収するのは厳しく、より適切な補正を実施するにはこのローカリティの影響を加味した濃度測定変換値の形式にしておく必要がある。
【0096】
本実施形態のように、ノズルごとの濃度測定値変換値を用いることで、ノズルからのインク吐出量のばらつきや乾燥温度などに代表される乾燥条件の紙面内ムラの影響を排除したムラ補正を行うことができる。
【0097】
<第2の実施形態>
〔不吐出補正と濃度変換〕
シングルパス方式のインクジェット記録装置において、インクが吐出できない不良ノズル(不吐出ノズル)が発生した場合には、印刷した画像においてそのノズルに対応する部分に画像欠陥(スジ)が発生する。そのため、不吐出補正を実施してスジの発生を防止している。不吐出補正としては、これまで様々な技術が提案されてきており、例えば不吐出ノズル近傍のノズルから吐出するインクのドット径を大きくすることで不吐出ノズルによるスジ部分をカバーする方法が採用される。
【0098】
図13(a)は、各ノズルからインクを吐出した記録媒体上のドットの配置を微視的に示す図である。
図13(a)では、ノズルごとの濃度測定値変換値を使用したムラ補正処理を施しており、同じサイズのドットが均一に配置されている。
【0099】
図13(b)、(c)は、
図13(a)に示したドット配置を巨視的に示す図であり、
図13(b)はドットの乾燥定着前の状態を示しており、
図13(c)
はドットの乾燥定着後の状態を示している。
図13(b)と
図13(c)では、乾燥定着前後で濃度の変化が見られるが、ともに画像内の濃度は一定である。
【0100】
一方、
図14(a)は、各ノズルからインクを吐出した記録媒体上のドットの配置を微視的に示す図であり、不吐出ノズルが存在するために、その両隣のノズルにおいて通常より大きいサイズのドットを配置する不吐出補正を行った様子を示している。この場合も、ノズルごとの濃度測定値変換値を使用したムラ補正処理を施している。
【0101】
また、
図14(b)、(c)は、
図14(a)に示したドット配置を巨視的に示す図であり、
図14(b)はドットの乾燥定着前の状態を示しており、
図14(c)
はドットの乾燥定着後の状態を示している。
図14(b)に示すように、乾燥定着前は画像内の濃度は一定である。これに対し、
図14(c)に示すように、乾燥定着後は不吐出補正を行った部分にスジが発生している。
【0102】
このように、本願発明者は、鋭意検討の結果、不吐出ノズル近傍のノズルではドット径の大きさやドットの配置が通常のノズルとは異なるために、通常印刷用のドットで求めた濃度測定値変換値を不吐出補正部に適用すると、適切な濃度変換がされない場合があることを見出した。
【0103】
〔画像記録装置、インクジェットヘッドの構成〕
第2の実施形態に係るインクジェット記録装置100の構成は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置100と同様である。なお、不吐出補正については、ドットデータ生成部110において行うことができる。ドットデータ生成部110は、予め取得した不吐出ノズル情報に応じて、取得した画像データ102に不吐出補正を施してドットデータを生成する。また、第2の実施形態に係るインクジェットヘッド200の構成は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置100と同様である。
【0104】
〔濃度測定値変換値算出処理〕
濃度測定値変換値記憶部128が記憶する濃度測定値変換値の算出処理を、
図15のフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、通常のノズルに適用するノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値(非不良補正部濃度測定値変換値の一例)と不吐出補正を行うノズルに適用するノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値(不良補正部濃度測定値変換値の一例)とを別個に算出、記憶する。また、ノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値の算出処理(非不良補正部濃度測定値変換値算出工程の一例)については、
図4に示したフローチャートと同様に行えばよい。したがって、ここではノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値の算出処理について説明する。
【0105】
なお、ノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値についても、C、M、Y、Kの各色に対応する4つのインクジェットヘッド200ごとに、ノズル212ごとに算出されるが、ここでは1つのインクジェットヘッド200のノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値の算出処理について説明する。
【0106】
ノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値の算出は、最初に画像処理部106が画像データ取得部104において不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像データを取得する(ステップS31)。
【0107】
不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像データ30は、
図16に示すように、第1の実施形態の濃度測定用テストパターンの画像データ10と同様の、X方向にテストチャート階調値(設定階調値)が一定であり、Y方向に所定の幅を有するN段の濃度パッチの中に、X方向にインクを配置しないラインがn本間隔(nは1以上の整数)で設けられており、インクを吐出しないラインの両隣に不吐出補正部の階調値のラインが配置されている。すなわち、画像データ30は、濃度一定の濃度パッチを印刷する通常ノズルと、n個間隔の非吐出状態に設定されてインクを吐出しない模擬不吐出ノズル(模擬不良ノズルの一例)と、その両隣の2×n個の通常ノズルよりも高い濃度(不良補正用濃度の一例)で印刷する模擬補正ノズルとから印刷される。この模擬補正ノズル(不吐出補正部のノズル)の階調値は、不吐出補正にて使用される不吐出補正用の階調、インク吐出倍率などの吐出条件が使用される。ノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値の算出精度を高めるために、不吐出補正部の階調値は、近傍領域を巨視的に見た際におおよそ周囲の非不吐出補正部の濃度と均一になっている状態、すなわち正常に不吐出補正がなされた状態になっていることが望ましい。
【0108】
なお、各濃度パッチは、階調値の最も高いテストチャート階調値G
1の濃度パッチから階調値の最も低いテストチャート階調値G
Nの濃度パッチまで階調値順に配置されているものとする。
【0109】
次に、画像処理部106は、ムラ補正処理部108においてムラ補正値記憶部130から最新のムラ補正値である第1ムラ補正値を読み出し、読み出した第1ムラ補正値に基づいて不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像データ30にムラ補正処理を施す(ステップS32)。第1ムラ補正値は、印刷画像のノズル212ごとのムラを補正するための演算に用いられる補正値であり、各色のインクジェットヘッド200のノズル212ごとに、かつ設定階調値ごとに、ムラ補正値記憶部130に記憶されている。
【0110】
このムラ補正処理が施された不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像データ30に基づいて、印刷ユニット152のインクジェットヘッド200によって記録媒体140に不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像を印刷する(ステップS33)。
【0111】
次に、スキャナ156により記録媒体140に印刷された不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像を読み取る(ステップS34)。ここで読み取られる不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像は、乾燥定着ユニット158による乾燥定着前の状態である。
【0112】
画像処理部106は、ステップS34におけるスキャナ156の読み取り値に基づいて、濃度測定値取得部122においてテストチャート階調値ごとかつインクジェットヘッド200の不吐出補正部のノズル212ごとの濃度測定値を不吐出補正部第1濃度測定値として取得し(ステップS35)、濃度測定値記憶部124に記憶する。
【0113】
次に、記録媒体140に印刷された不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像を乾燥定着ユニット158により乾燥定着させ(ステップS36)、この不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像をスキャナ156により読み取る(ステップS37)。
【0114】
画像処理部106は、濃度測定値取得部122においてステップS37におけるスキャナ156の読み取り値を反転させ、テストチャート階調値ごとかつインクジェットヘッド200の不吐出補正部のノズル212ごとの濃度測定値を不吐出補正部第2濃度測定値として取得し(ステップS38)、濃度測定値記憶部124に記憶する。
【0115】
最後に、画像処理部106は、演算処理部126において、ムラ補正値記憶部130に記憶された第1ムラ補正値、濃度測定値記憶部124に記憶された不吐出補正部第1濃度測定値及び不吐出補正部第2濃度測定値に基づいて、印刷画像の乾燥定着前の濃度測定値(ここでは不吐出補正部第1濃度測定値)と乾燥定着後の濃度測定値(ここでは不吐出補正部第2濃度測定値)との不吐出補正部のノズル212ごとの変換関係を示すノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値を取得する(ステップS39、不良補正部濃度測定値変換値算出工程の一例)。算出の詳細については、第1の実施形態と同様である。
【0116】
本実施形態では、1つの不吐出補正部濃度測定用テストパターンにつき、2×n個の不吐出補正部のノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値を取得することができる。したがって、全てのノズルが不吐出補正部に該当するまで不吐出補正部のノズルの位置をずらしながら、(インクジェットヘッド200の全ノズル数)/(2×n)枚の不吐出補正部濃度測定用テストパターンを同様に処理することで、インクジェットヘッド200の全てのノズル212についてノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値を取得する。
【0117】
なお、不吐出補正部濃度測定用テストパターンの画像データ30は、スジのラインがn本間隔で設けられている態様に限定されるものではなく、全てのノズルについてノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値を取得できるものであればよい。
【0118】
〔ムラ補正値算出処理〕
次に、ノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値とノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値とを別個に有する場合のムラ補正値の算出処理を、
図17のフローチャートを用いて説明する。ここでは、すでにノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値とノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値とが算出されており、現在設定されているムラ補正値を新たなムラ補正値に更新する場合について説明する。なお、ムラ補正値は、C、M、Y、Kの各色に対応する4つのインクジェットヘッド200ごとに算出されるが、ここでは1つのインクジェットヘッド200のムラ補正値の算出処理について説明する。
【0119】
ムラ補正値の算出は、最初に画像処理部106が画像データ取得部104において濃度ムラ測定用テストパターンの画像データを取得する(ステップS41)。濃度ムラ測定用テストパターンの画像データとして、第1の実施形態と同様に濃度測定用テストパターンの画像データ10(
図5参照)を用いることができる。
【0120】
次に、画像処理部106は、予め取得したインクジェットヘッド200の不吐出ノズル情報に基づいて、ドットデータ生成部110(不良ノズル補正手段の一例)において濃度ムラ測定用テストパターンの画像データに不吐出補正処理を施す(ステップS42)。さらに、画像処理部106は、ムラ補正処理部108においてムラ補正値記憶部130から最新のムラ補正値である第2ムラ補正値を読み出し、読み出した第2ムラ補正値に基づいて濃度ムラ測定用テストパターンの画像データにムラ補正処理を施す(ステップS43)。
【0121】
この不吐出補正処理及びムラ補正処理が施された濃度ムラ測定用テストパターンの画像データに基づいて、印刷ユニット152のインクジェットヘッド200によって記録媒体140に濃度ムラ測定用テストパターンの画像を印刷する(ステップS44)。
【0122】
次に、スキャナ156により記録媒体140に印刷された濃度ムラ測定用テストパターンの画像を読み取る(ステップS45)。ここで読み取られる濃度ムラ測定用テストパターンの画像は、乾燥定着ユニット158による乾燥定着前の状態である。
【0123】
画像処理部106は、スキャナ156の読み取り値に基づいて、濃度測定値取得部122においてテストチャート階調値ごとかつインクジェットヘッド200のノズル212ごとの濃度測定値をノズル別第5濃度測定値として取得する(ステップS46)。濃度測定値取得部122は、このノズル別第5濃度測定値を濃度測定値記憶部124に記憶する。
【0124】
続いて、画像処理部106は、演算処理部126において、ムラ補正値記憶部130に記憶された第2ムラ補正値、濃度測定値記憶部124に記憶されたノズル別第5濃度測定値、予め取得した不吐出ノズル情報、濃度測定値変換値記憶部128に記憶されたノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値及びノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値に基づいて、ノズル212ごとの乾燥定着後の濃度測定値に相当するノズル別第6濃度測定値を算出する(ステップS47)。
【0125】
ここで、
図18に示すように、ノズル212ごとに不吐出補正部であるか否かを判定する(ステップS50)。ノズル212が不吐出補正部でない場合、すなわち隣接ノズルが不吐出ノズルでない場合または自らが不吐出ノズルの場合は、濃度測定値変換値記憶部128からノズル212の第2ムラ補正値を入力値としたノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値を読み出し(ステップS51)、ノズル別第5濃度測定値にノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値を乗算してノズル別第6濃度測定値を算出する(ステップS52)。
【0126】
逆に、ノズル212が不吐出補正部のノズルである場合、すなわち隣接ノズルが不吐出ノズルの場合は、濃度測定値変換値記憶部128からノズル212の第2ムラ補正値を入力値としたノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値を読み出し(ステップS53)、ノズル別第5濃度測定値にノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値を乗算してノズル別第6濃度測定値を算出する(ステップS52)。この処理を全てのノズルについて行う。
【0127】
図17の説明に戻り、画像処理部106は、演算処理部126において、ノズル別第6濃度測定値に基づいて第3ムラ補正値を算出し(ステップS48)、算出した第3ムラ補正値を最新のムラ補正値としてムラ補正値記憶部130に記憶させ、ムラ補正値の算出処理を終了する。
【0128】
以上のように、ノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値とノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値とを別個に算出、記憶することで、不吐出補正部においても適切な濃度変換を行うことができる。
【0129】
〔画像データの印刷処理〕
以上のように、新たなムラ補正値である第3ムラ補正値が算出されると、ムラ補正処理部108では、第3ムラ補正値を適用したムラ補正処理を実行する。
図19に示すフローチャートを用いて、画像データにムラ補正処理を施して印刷する印刷処理について説明する。
【0130】
画像データの印刷処理は、最初に画像処理部106が画像データ取得部104において印刷用画像データを取得する(ステップS61)。
【0131】
ドットデータ生成部110は、この印刷用画像データに対して色変換処理、色分解(分版)処理、及び不吐出補正処理を施す(ステップS62)。その後、ムラ補正処理部108においてムラ補正値記憶部130から最新のムラ補正値である第3ムラ補正値をインク色ごとに読み出し、読み出した第3ムラ補正値を適用して色ごとの画像データに対してそれぞれムラ補正処理を施す(ステップS63)。さらに、ムラ補正処理後の画像データに対してハーフトーン処理を施し、色ごとのドットデータを生成する。この色ごとのドットデータを、画像記録部150の印刷ユニット152に入力する。
【0132】
画像記録部150では、色ごとのドットデータに基づいて印刷ユニット152において各色のインクジェットヘッド200を制御し、記録媒体140にドットデータに基づく印刷画像を印刷する(ステップS64)。
【0133】
印刷画像が印刷された記録媒体140は、搬送部154により乾燥定着ユニット158に搬送される。乾燥定着ユニット158は、記録媒体140の記録面に印刷された印刷画像を乾燥定着させる。その後、印刷画像が乾燥定着した記録媒体140を排出部160から排出する。
【0134】
以上のように、ノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値とノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値とを用いて算出したムラ補正値によってムラ補正を行うことで、不吐出ノズルが存在する場合であっても濃度ムラのない適切な画像を印刷することができる。
【0135】
<第3の実施形態>
〔光量差分モデル〕
第1の実施形態のノズル別濃度測定値変換値、第2の実施形態のノズル別非不吐出補正部濃度測定値変換値、及びノズル別不吐出補正部濃度測定値変換値は、倍率=(乾燥定着後の濃度測定値)/(乾燥定着前の濃度測定値)で表されている。しかしながら、厳密なモデルを鑑みると、測定濃度測定値と変換濃度測定値との関係は単純な倍率計算とはならない。
【0136】
ムラ補正値をV、Vに対する乾燥処理
前の濃度測定値をI_before、乾燥処理後の濃度測定値をI_afterとすると、両者の関係は一般に表す変換関数f ( x0,x1)を用いて、
I_after=f (I_before,V)
と表すことができる。ここで、変換関数f ( x0,x1)の形式は、線形関数、非線形関数、ルックアップテーブルなど任意である。
【0137】
光の反射は、エネルギー収支=足し引きの現象である言える。照明系から与えられる光学濃度をI_all、乾燥処理前の濃度測定値I_beforeに対する光量損失量をI_before_loss、乾燥処理後の濃度測定値I_afterに対する光量損失量をI_after_lossとすると、
I_all = I_before + I_before_loss = I_after + I_after_loss
であるから、
I_after = I_before + (I_before_loss−I_after_loss) = I_before + dI …(式1)
と表すことができる。したがって、このdI = I_before_loss−I_after_lossの値がわかれば、I_beforeからI_afterを推測することができる。
【0138】
ここで、紙面における乾燥前の光学反射率をr_before, 乾燥後の光学反射率をr _afterとすると、
I_before = I_all×r _before
I_after = I_all×r _after
I_before_loss = I_all×(1−r _before)
I_after_loss = I_all×(1−r _after)
より、
I_after = I_before×(r _before/r _after) = I_before×R …(式2)
と表すことができる。したがって、このR=r _before/r _afterの値がわかれば、I_beforeからI_afterを推測することができる。
【0139】
ここで、式1と式2とは、どちらも同じ現象に基づいて導出される式である。第1の実施形態及び第2の実施形態においては、式2に基づき、Rの値を濃度測定値変換値として計測していた。一方で、dIを濃度測定値変換値とみなすことも可能である。この場合は、
図20に示すように、濃度測定値変換値をノズル別第1濃度測定値(乾燥定着前の濃度測定値)とノズル別第2濃度測定値(乾燥定着後の濃度測定値)との差分として算出し、
図21に示すように、濃度測定値変換処理において乾燥定着前の濃度測定値に濃度測定値変換値を加算する(濃度測定値変換工程の一例)、という処理を行えばよい。
【0140】
なお、式1に示す差分モデルと式2に示す比率モデルのいずれを用いた場合であっても、原理上は同じ結果となる。しかし、実際には差分モデルの方が実用的である。すなわち、濃度を測定する場合、測定結果には下記のように計測誤差δが含まれる。
I_before = I_before(正しい値) + δ
【0141】
これを式2に代入すると、I_afterに含まれる誤差はR×δとなる。一方で、式1に代入した場合は、I_afterに含まれる誤差はδのままである。
【0142】
CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の一般的な撮像素子を用いる場合において、計測誤差δは濃度が濃い暗い色になるほど大きくなる。Rの値はインク等にも依存するが、多くインクが打たれている濃度の濃い領域においては多くの場合R>1となる。すなわち、式2を使用した場合には、ノイズが増幅してしまう。したがって、測定誤差に対して安定的な差分モデルを用いた方が補正処理を安定に行うことができる。
【0143】
<第4の実施形態>
〔他の装置構成への応用例〕
次に、上記した画像処理方法、画像処理装置、インクジェット記録装置が適用される他の装置構成について、
図22を用いて説明する。
【0144】
インクジェット記録装置300は、搬送ドラム310、320、インクジェットヘッドユニット324、スキャナ326、チェーングリッパ330、ガイドボード332、加熱ユニット334等を備えて構成される。
【0145】
搬送ドラム310、320は、円筒状に形成され、モータ(不図示)に駆動されて円筒の中心を軸に回転する。搬送ドラム310は、給紙部(不図示)から給紙された記録媒体である用紙Pを外周面に保持して搬送し、搬送ドラム320に受け渡す。搬送ドラム320は、搬送ドラム310から受け渡された用紙Pをチェーングリッパ330に受け渡す。チェーングリッパ330は、搬送ドラム320から受け渡された用紙Pを排紙部(不図示)まで搬送する。
【0146】
インクジェットヘッドユニット324は、インクジェットヘッド322C、322M、322Y、322Kを有している。インクジェットヘッド322C、322M、322Y、322Kとして、
図2に示すインクジェットヘッド200を適用することができる。インクジェットヘッド322C、322M、322Y、322Kは、搬送ドラム320による用紙Pの搬送方向に対して略直交して配置されると共に、そのノズル面が搬送ドラム320の外周面に対向するように配置される。また、インクジェットヘッド322C、322M、322Y、322Kは、
図1に示す画像処理部106を適用した制御部(不図示)から入力された制御信号に基づいて、ノズル面に形成されたノズル(不図示)から、搬送ドラム320(移動手段の一例)に搬送(相対移動の一例)される用紙Pに向けてそれぞれC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出することにより、搬送ドラム320によって搬送される用紙Pの記録面に画像を記録する。
【0147】
スキャナ326は、用紙Pに記録された画像を読み取るためのセンサであり、
図1に示すスキャナ156を適用することができる。
【0148】
その後、搬送ドラム320は、用紙Pをチェーングリッパ330へ受け渡す。
【0149】
チェーングリッパ330は、搬送ドラム320から受け取った用紙Pを排紙部(不図示)まで搬送する搬送手段であり、第1スプロケット330A、第2スプロケット330B、チェーン330C、グリッパ330D等から構成される。
【0150】
第1スプロケット330Aは搬送ドラム320側に設置され、第2スプロケット330Bは排紙部(不図示)側に設置されている。第1スプロケット330Aと第2スプロケット330Bとは、軸受(不図示)に軸支されて回転自在に設けられるとともに、第1スプロケット330Aにはモータ(不図示)が連結される。
【0151】
チェーン330Cは無端状に形成されており、第1スプロケット330A及び第2スプロケット330Bに巻き掛けられている。第1スプロケット330A、第2スプロケット330B、チェーン330Cは、それぞれ一対で構成され、用紙Pの搬送経路の両側(搬送方向に直交する方向における用紙Pの両側)に配設される。
【0152】
グリッパ330Dは、一対で設けられるチェーン330Cに掛け渡されて設置され、チェーン330Cに一定の間隔をもって複数取り付けられている。グリッパ330Dは、搬送ドラム320から用紙Pが受け渡される位置で用紙Pの先端を把持し、排紙部(不図示)に用紙を受け渡す位置で用紙Pの把持を解除するように構成されている。
【0153】
以上のように構成されたチェーングリッパ330は、第1スプロケット330Aに接続されたモータ(不図示)を駆動すると、第1スプロケット330Aが
図22において右回りに回転し、チェーン330Cが走行する。グリッパ330Dは、搬送ドラム320から受け渡された用紙Pの先端を把持し、チェーン330Cの走行経路に沿って移動することで用紙Pを搬送し、排紙部(不図示)に用紙を受け渡す。用紙Pは、排紙部において排紙される。
【0154】
また、チェーングリッパ330による用紙Pの搬送経路には、加熱ユニット334、及びガイドボード332が設けられている。
【0155】
ガイドボード332は矩形の板状部材であり、用紙Pの搬送方向のサイズは加熱ユニット334よりも大きく、用紙Pの搬送方向に直交する方向のサイズは用紙Pの幅よりも大きく形成されている。また、ガイドボード332は、用紙Pを保持する平坦な用紙保持面を備えており、チェーン330Cから一定の距離を離して、用紙保持面を加熱ユニット334に向けて配置されている。用紙保持面には多数の吸着孔(不図示)が設けられており、チェーングリッパ330により搬送される用紙Pを用紙保持面に吸着する。
【0156】
ガイドボード332と対向する位置には、加熱ユニット334が設けられている。加熱ユニット334としては、
図1に示す乾燥定着ユニット158を適用することができる。加熱ユニット334は、チェーングリッパ330によって搬送される用紙Pの記録面を加熱し、用紙Pの記録面に記録された画像を乾燥定着させる。
【0157】
以上のようなインクジェット記録装置300についても、第1の実施形態、第2の実施形態、及び第3の実施形態のノズル別濃度測定値変換値を用いたムラ補正処理等を適用することができる。
【0158】
本発明の技術的範囲は、上記実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合せることができる。