(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記不飽和アルデヒド(II)が、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のブロー成形容器。
(D)エチレン−ビニルアルコール共重合体(I)、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂、及びカルボン酸変性ポリオレフィンを含有する層を備える請求項6に記載のブロー成形容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、溶融成形によるゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥の発生及び着色が抑制され、外観性に優れるブロー成形容器を提供することである。また、製造の際のセルフパージ性が良好であり、十分な強度等の品質を有し、低コストで製造することが可能なブロー成形容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体(I)を主成分とする層(以下、「(A)層」ともいう)
を備えるブロー成形容器であって、
上記(A)層が、不飽和アルデヒド(II)を含有し、
この不飽和アルデヒド(II)の(A)層における含有量が0.01ppm以上100ppm以下であることを特徴とするブロー成形容器である。
【0011】
本発明のブロー成形容器は、不飽和アルデヒド(II)の含有量が上記特定範囲である(A)層を備えることで、溶融成形によるゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥の発生を防止することができ、外観性に優れる。また、上記(A)層が上記特定量の不飽和アルデヒド(II)を含有することで、ブロー成形容器の製造工程におけるセルフパージ性にも優れるため、当該ブロー成形容器の製造コストを低減することができる。
なお、本発明において主成分とは、全体の過半を占める成分をいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
【0012】
上記不飽和アルデヒド(II)が不飽和脂肪族アルデヒド(II−1)であることが好ましく、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0013】
溶融成形時のフィッシュアイやゲル、ストリークの発生を抑制する不飽和アルデヒド(II)の作用は、必ずしも明確ではないが、不飽和アルデヒド(II)は、EVOH(I)に比べ酸化されやすい。このため、加熱溶融時、酸素によるEVOH(I)の酸化劣化は、不飽和アルデヒド(II)がEVOH(I)よりも早く酸化されることで抑制されているものと推定される。
【0014】
上記(A)層が共役ポリエン化合物を含有し、この共役ポリエン化合物の(A)層における含有量が0.01ppm以上1,000ppm以下であることが好ましい。
【0015】
このように(A)層が上記特定量の共役ポリエン化合物をさらに含有することで、溶融成形時の酸化劣化の抑制により、ゲル・ブツ等の欠陥、着色等の発生をより低減し、外観性をさらに向上することができる。また、上記(A)層が上記特定量の共役ポリエン化合物を含有することで、セルフパージ性にもより優れるため、当該ブロー成形容器はコストをさらに低減することができる。
【0016】
上記共役ポリエン化合物としては、ソルビン酸及び/又はソルビン酸塩が好ましい。このように上記共役ポリエン化合物としてソルビン酸及び/又はソルビン酸塩を含有することで、溶融成形時の酸化劣化をより効果的に抑制することができ、ゲル・ブツ等の欠陥の発生及び着色防止性、並びに外観性を効果的に向上することができる。また、上記(A)層が共役ポリエン化合物としてソルビン酸及び/又はソルビン酸塩を含有することで、長時間連続して溶融成形した場合でもゲル・ブツ等の発生が抑制され、耐衝撃性に優れたブロー成形容器を得ることができる。
【0017】
当該ブロー成形容器は、
(B)上記(A)層の内面側及び外面側に配置され、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂を主成分とする層(以下、「(B)層」ともいう)、及び
(C)上記(A)層と(B)層との間に配置され、カルボン酸変性ポリオレフィンを主成分とする層(以下、「(C)層」ともいう)
を備えることが好ましい。
【0018】
当該ブロー成形容器は、(A)層に加えて、(B)層及び(C)層をさらに備えることで、高湿度下でのガス遮蔽性、耐油性、耐衝撃性等を向上させることができる。
【0019】
当該ブロー成形容器は、
(D)エチレン−ビニルアルコール共重合体(I)、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂、及びカルボン酸変性ポリオレフィンを含有する層(以下、「(D)層」ともいう)
を備えることが好ましい。
【0020】
当該ブロー成形容器は、(D)層をさらに有することで、高湿度下でのガス遮蔽性、耐衝撃性等をより向上させることができる。
【0021】
上記(D)層が、ブロー成形容器の製造工程における上記(A)層、(B)層及び(C)層の回収物を用いて形成されることが好ましい。上記(D)層が、ブロー成形容器の製造工程における上記(A)層、(B)層及び(C)層の回収物を用いて形成されることで、当該ブロー成形容器の製造工程において発生するバリ、検定の不合格品等が(D)層に再利用され、材料樹脂を無駄なく利用でき、低廉性が向上する。
【0022】
当該ブロー成形容器は、上記(A)層の層厚みが、全層厚みの5.0%以下であり、かつ上記(D)層におけるエチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量が9.0質量%以下であることが好ましい。当該ブロー成形容器は、(A)層の層厚みを、全層厚みの5.0%以下とし、かつ上記(D)層におけるエチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量を9.0質量%以下とすることで、優れたガス遮蔽性、耐油性、外観性、セルフパージ性等を保持しながら、耐衝撃性をより向上させることができる。
【0023】
当該ブロー成形容器は、燃料容器に好適に用いられる。当該ブロー成形容器はガス遮蔽性、耐油性等に優れると共に、外観性にも優れるため、燃料容器に好適に用いることができる。
【0024】
また、当該ブロー成形容器は、ブロー成形ボトルに好適に用いられる。当該ブロー成形容器はガス遮蔽性、耐油性等に優れると共に、外観性にも優れる。
【0025】
また、当該ブロー成形容器の好ましい製造方法は、
エチレン−ビニルアルコール共重合体(I)を主成分とする樹脂組成物を用いてブロー成形する工程を有し、
上記樹脂組成物が不飽和アルデヒド(II)を含有し、この不飽和アルデヒド(II)の上記樹脂組成物における含有量が0.01ppm以上100ppm以下である。当該ブロー成形容器の製造方法によれば、ゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥の発生及び着色が抑制されるため、外観に優れたブロー成形容器を得ることができる。また、当該ブロー成形容器の製造方法に用いる樹脂組成物はセルフパージ性に優れるため、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のブロー成形容器は、EVOHの特性としての十分なガス遮蔽性、耐油性を有することに加えて、(A)層に特定量の不飽和アルデヒド(II)を含有することで、溶融成形によるゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥の発生及び着色が抑制されるため、外観性に優れる。また、当該ブロー成形容器は、上記(A)層が上記特定量の不飽和アルデヒド(II)を含有することで、製造工程におけるセルフパージ性にも優れるため、当該ブロー成形容器の製造コストを低減することができる。そのため、当該ブロー成形容器は、様々な用途に用いられ、特に燃料容器やブロー成形ボトル容器として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
<ブロー成形容器>
図1のブロー成形容器1は、
(A)エチレン−ビニルアルコール共重合体(I)を主成分とする層4、
(B)上記(A)層の内面側及び外面側に配置され、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂を主成分とする層6、
(C)上記(A)層と(B)層との間に配置され、カルボン酸変性ポリオレフィンを主成分とする層5、及び
(D)エチレン−ビニルアルコール共重合体(I)、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂、及びカルボン酸変性ポリオレフィンを含有する層7を備える。具体的にブロー成形容器1は、容器内部表面2から容器外部表面3に向かって、(B)層6、(C)層5、(A)層4、(C)層5、(D)層7、(B)層6の順に積層した多層構造を有する。なお、
図1はブロー成形容器1の周壁の部分断面図である。以下、各層毎に説明する。
【0030】
<(A)層>
(A)層4は、EVOH(I)を主成分とする層であり、0.01ppm以上100ppm以下の不飽和アルデヒド(II)を含有する。ブロー成形容器1は、上記特定量の不飽和アルデヒド(II)を含有する(A)層4を備えることで、溶融成形によるゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥の発生を抑制することができ、外観性に優れる。また、上記(A)層4が上記特定量の不飽和アルデヒド(II)を含有することで、ブロー成形容器1の製造工程におけるセルフパージ性にも優れるため、製造コストを低減することができる。また、上記(A)層4は、共役ポリエン化合物をさらに含有することが好ましい。さらに、上記(A)層4は、本発明の効果を損なわない限り、ホウ素化合物、酢酸及び/又は酢酸塩、リン化合物、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0031】
[EVOH(I)]
本発明に用いられるEVOH(I)は、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
【0032】
上記EVOH(I)のエチレン含有量としては、通常20モル%以上60モル%以下であり、20モル%以上45モル%以下であることが好ましく、24モル%以上45モル%以下であることが好ましく、27モル%以上42モル%以下であることがより好ましく、27モル%以上38モル%以下であることがさらに好ましい。エチレン含有量が20モル%未満であると、EVOHは、溶融押出時の熱安定性が低下してゲル化しやすくなり、ゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥を発生し易くなる。特に一般的な溶融押出し時の条件よりも高温又は高速の条件下で長時間運転を行うと、EVOHのゲル化は顕著となる。また、EVOHは、エチレン含有量が60モル%を超えるとガス遮断性が低下するおそれがある。
【0033】
上記EVOH(I)のビニルエステル成分のケン化度としては、通常85%以上であり、90%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。EVOHは、上記EVOHのビニルエステル成分のケン化度が85%未満であると熱安定性が不十分となるおそれがある。
【0034】
上記EVOH(I)の製造に用いるビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、それ以外に、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルを使用することができる。
【0035】
上記EVOH(I)は、エチレン及びビニルエステルに加えて、さらにビニルシラン系化合物を共重合体成分として使用することができる。上記EVOHにおけるビニルシラン系化合物の含有量としては、0.0002〜0.2モル%である。
【0036】
上記ビニルシラン系化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランが好ましい。
【0037】
上記EVOH(I)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン、ビニルエステル及びビニルシラン系化合物以外のその他の単量体を共重合体成分として使用してもよい。
【0038】
上記その他の単量体としては、例えば
プロピレン、ブチレン等の不飽和炭化水素;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸又はそのエステル;
N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン等が挙げられる。
【0039】
上記(A)層4におけるEVOH(I)の含有量としては、通常95質量%以上であり、98.0質量%以上であることが好ましく、99.0質量%であることがより好ましく、99.5質量%以上であることがさらに好ましい。EVOH(I)の含有量を上記特定範囲とする上記(A)層4を備えることで、当該ブロー成形品は各種ガス遮蔽性、耐油性等に優れる。
【0040】
[不飽和アルデヒド(II)]
上記(A)層4は、EVOH(I)と共に0.01ppm以上100ppm以下の不飽和アルデヒド(II)を必須成分として含有する。
【0041】
不飽和アルデヒド(II)は、分子内に炭素−炭素二重結合もしくは三重結合を有するアルデヒド類であり、不飽和脂肪族アルデヒド(II−1)が好ましく、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0042】
上記(A)層4における不飽和アルデヒド(II)の含有量としては、0.01ppm以上100ppm以下であり、0.05ppm以上50ppm以下が好ましく、0.1ppm以上30ppm以下が好ましく、0.15ppm以上20ppm以下がより好ましい。ブロー成形容器1は、上記(A)層4における不飽和アルデヒド(II)の含有量が0.01ppm未満であると、製造時のセルフパージ性が不十分となるおそれがある。また、100ppmを超えると、溶融成形時に不飽和アルデヒド(II)が架橋効果を示し、ゲル・ブツ、ストリーク等の欠陥の発生及び着色を誘発するおそれがあるため、外観性が不十分となる場合がある。ここで、上記(A)層4における不飽和アルデヒド(II)の含有量とは、(A)層4を形成するEVOH(I)を主成分とする樹脂組成物(以下、「EVOH含有樹脂組成物」ともいう)の全固形分質量に対する割合で表し、具体的には、乾燥させた乾燥樹脂組成物中に含有される不飽和アルデヒド(II)を定量して得られた値をいう。
【0043】
不飽和アルデヒド(II)としては、不飽和脂肪族アルデヒド(II−1)が好ましく、たとえばアクリルアルデヒド(アクロレイン)、クロトンアルデヒド、メタクリルアルデヒド、2−メチル−2−ブテナール、2−ブチナール、2−ヘキセナール、2,6−ノナジエナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4,6−オクタトリエナール、2−ヘキセナール、5−メチル−2−ヘキセナールなどの分子内に炭素−炭素二重結合を有するアルデヒド類;プロピオルアルデヒド、2−ブチン−1−アール、2−ペンチン−1−アールなどの炭素−炭素三重結合を有するアルデヒド類が好ましく、直鎖又は分岐のある炭素−炭素二重結合を有する不飽和脂肪族アルデヒドがより好ましく、クロトンアルデヒド、2,4−ヘキサジエナールおよび2,4,6−オクタトリエナールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、中でも水への溶解性が高く、沸点が100℃付近のクロトンアルデヒドはたとえば、洗浄工程や乾燥工程で必要に応じて過剰分を除去または不足分を追加することが容易であるので、より好ましい。また、不飽和アルデヒド(II)のアルデヒド部分を含めた炭素数としては、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましく、4、6、8がさらに好ましい。
【0044】
[共役ポリエン化合物]
上記(A)層4は、共役ポリエン化合物をさらに含有することが好ましく、この共役ポリエン化合物の含有量としては、0.01ppm以上1,000ppm以下が好ましく、0.1ppm以上1,000ppm以下がより好ましい。ブロー成形容器1は、上記特定量の共役ポリエン化合物をさらに含有する(A)層4を備えることで、溶融成形時の酸化劣化を抑制することができ、ゲル・ブツ等の欠陥の発生及び着色がより起こり難くなるため、外観性により優れる。また、上記(A)層4が上記特定量の共役ポリエン化合物を含有することで、長時間連続して溶融成形した場合でもゲル・ブツ等の発生が抑制され、耐衝撃性に優れたブロー成形容器を得ることができる。
【0045】
上記共役ポリエン化合物とは、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素−炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。上記共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も上記共役ポリエン化合物に含まれる。
【0046】
上記共役ポリエン化合物としては、共役二重結合の数が7個以下であることが好ましい。上記(A)層4が、共役二重結合を8個以上有する共役ポリエン化合物を含有すると、ブロー成形容器1の着色が起こる可能性がある。
【0047】
上記共役ポリエン化合物は、共役二重結合に加えて、カルボキシル基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基及びその塩、スルホニル基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、二重結合、三重結合等のその他の官能基を有していてもよい。
【0048】
上記共役ポリエン化合物としては、例えば
イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の共役ジエン化合物;
1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物等が挙げられる。なお、上記共役ポリエン化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。上記共役ポリエン化合物の炭素数としては、4〜30が好ましく、4〜10がより好ましい。
【0049】
これらのうち、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、ミルセン及びこれらのうちのいずれかの混合物が好ましく、ソルビン酸、ソルビン酸塩及びこれらの混合物がより好ましい。ソルビン酸、ソルビン酸塩及びこれらの混合物は、高温での酸化劣化の抑制効果が高く、また、食品添加剤としても広く工業的に使用されているため衛生性や入手性の観点からも好ましい。
【0050】
上記共役ポリエン化合物の分子量は、通常1,000以下であり、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましい。上記共役ポリエン化合物の分子量が1,000を超えると、EVOH中への分散状態が悪く、溶融成形後の外観が不良になるおそれがある。
【0051】
上記(A)層4における上記共役ポリエン化合物の含有量としては、0.01ppm以上1,000ppm以下が好ましく、0.1ppm以上1000ppm以下が好ましく、0.5ppm以上800ppm以下がより好ましく、1ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。ブロー成形容器1は、(A)層4における共役ポリエン化合物の含有量が0.1ppm未満であると、溶融成形時の酸化劣化を抑制する効果を十分に得られないため、ゲル・ブツが発生するおそれがある。一方、(A)層4における共役ポリエン化合物の含有量が1,000ppmを超えると、ゲル・ブツの発生を促進し、ブロー成形容器1は、外観が不良となり易い。
【0052】
[ホウ素化合物]
上記(A)層4は、ホウ素化合物をさらに含有することが好ましい。ブロー成形容器1は、ホウ素化合物をさらに含有する(A)層4を備えることにより、溶融成形の際にゲル化を起こし難くなると共に、押出し成形機等のトルク変動を抑制することができるため、外観性により優れる。また、上記(A)層4がホウ素化合物をさらに含有することで、製造時のセルフパージ性にもさらに優れるため、さらに低コストで製造することができる。
【0053】
上記ホウ素化合物としては、例えば
オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸類;
ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステル;
上記ホウ酸類のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩;
水素化ホウ素類等が挙げられる。これらのうち、ホウ酸類が好ましく、オルトホウ酸(以下、単に「ホウ酸」と称することもある)がより好ましい。
【0054】
上記(A)層4における上記ホウ素化合物の含有量としては、100ppm以上5,000ppm以下が好ましく、100ppm以上3,000ppm以下がより好ましく、1,000ppm以上1,500ppm以下がさらに好ましい。ブロー成形容器1は、(A)層4におけるホウ素化合物の含有量を上記特定範囲とすることで、製造工程における加熱溶融時の押出し成形機等のトルク変動を効果的に抑制することができる。また、ホウ素化合物の含有量が100ppm未満であると上記効果を十分に奏することができず、5,000ppmを超えるとゲル化し易くなり、ブロー成形容器1は、外観性が不十分となるおそれがある。
【0055】
[酢酸及び/又は酢酸塩]
上記(A)層4は、酢酸及び/又は酢酸塩を含有することが好ましい。ブロー成形容器1は、酢酸及び/又は酢酸塩をさらに含有する(A)層4を備えることで、着色を防止することができるため、外観性に優れる。
【0056】
上記酢酸及び/又は酢酸塩のうち、酢酸及び酢酸塩の両方を用いることが好ましく、酢酸及び酢酸ナトリウムを用いることがより好ましい。
【0057】
上記(A)層4における酢酸及び/又は酢酸塩の含有量としては、50ppm以上1,000ppm以下が好ましく、100ppm以上1,000ppm以下がより好ましく、150ppm以上500ppm以下がさらに好ましく、200ppm以上400ppm以下が特に好ましい。酢酸及び/又は酢酸塩の含有量が50ppm未満であると、十分な着色防止の効果を得られないため、ブロー成形容器1は、黄変等により外観性が不十分となる場合がある。また、酢酸及び/又は酢酸塩の含有量が1,000ppmを超えると、溶融成形時、特に長時間に及ぶ溶融成形時にゲル化し易くなり、ブロー成形容器1の外観が不良となる場合がある。
【0058】
[リン化合物]
上記(A)層4は、リン化合物をさらに含有することが好ましい。ブロー成形容器1は、リン化合物をさらに含有する(A)層4を備えることにより、ゲル・ブツ等の欠陥の発生及び着色がより抑制され、外観性を向上させることができる。
【0059】
上記リン化合物としては、例えばリン酸、亜リン酸等の各種リン酸、リン酸塩等が挙げられる。
【0060】
上記リン酸塩としては、第1リン酸塩、第2リン酸塩及び第3リン酸塩のいずれの形でもよい。また、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましく、これらのうちリン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムがより好ましく、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2カリウムがさらに好ましい。
【0061】
上記(A)層4におけるリン化合物の含有量としては、1ppm以上200ppm以下が好ましく、2ppm以上200ppm以下がより好ましく、3ppm以上150ppm以下がさらに好ましく、5ppm以上100ppm以下が特に好ましい。ブロー成形容器1は、(A)層4におけるリン化合物の含有量が1ppm未満である場合、又は200ppmを超える場合には、製造工程において熱安定性が低減し、ゲル・ブツの発生や着色が起こり易くなり、外観性が不十分となるおそれがある。
【0062】
[その他の任意成分]
上記(A)層4は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分として、アルカリ金属を含有してもよい。上記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。また、上記アルカリ金属は、アルカリ金属塩として含有することもできる。上記アルカリ金属塩とは、例えば一価の金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、金属錯体等である。具体的には酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。これらのうち、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが好ましい。上記アルカリ金属の上記(A)層4における含有量としては、20ppm以上1,000ppm以下が好ましく、50ppm以上500ppm以下がより好ましい。
【0063】
上記(A)層4は、上記アルカリ金属以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、熱安定剤、他の樹脂、高級脂肪族カルボン酸の金属塩、ハイドロタルサイト化合物等をその他の任意成分として含有してもよい。上記(A)層4は、これらの任意成分を、1種又は2種以上含有してもよく、含有量としては、合計で1質量%以下である。
【0064】
上記酸化防止剤としては、例えば2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0065】
上記紫外線吸収剤としては、例えばエチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オキトシキベンゾフェノン等が挙げられる。
【0066】
上記可塑剤としては、例えばフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
上記帯電防止剤としては、例えばペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等が挙げられる。
【0068】
上記滑剤としては、例えばエチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等が挙げられる。
【0069】
上記着色剤としては、例えばカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等が挙げられる。
【0070】
上記充填剤としては、例えばグラスファイバー、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
【0071】
上記熱安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0072】
上記他の樹脂としては、例えばポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0073】
高級脂肪族カルボン酸の金属塩としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0074】
なお、ゲル発生防止対策として、上記ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪酸カルボン酸の金属塩の1種、又は2種以上を0.01〜1質量%添加することができる。
【0075】
<EVOH含有樹脂組成物の調製方法>
上記(A)層4は、各成分を含有するEVOH含有樹脂組成物により形成することができる。このEVOH含有樹脂組成物の製造方法としては、EVOH中に不飽和アルデヒド(II)を均一にブレンドでき、最終的に得られる(A)層4において、0.01ppm以上100ppm以下の範囲の不飽和アルデヒド(II)を含有させられる製造方法であれば特に限定されないが、
(1)エチレンとビニルエステルとを共重合させる工程、及び
(2)工程(1)により得られた共重合体をケン化する工程
を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物の製造方法であって、
上記樹脂組成物中に0.01ppm以上100ppm以下の不飽和アルデヒド(II)を含有させることを特徴とする樹脂組成物の製造方法が好ましい。
【0076】
上記特定量の不飽和アルデヒド(II)をEVOH含有樹脂組成物中に含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば
上記工程(1)において特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法、
上記工程(2)において特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法、
上記工程(2)により得られたEVOHに、特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法等が挙げられる。しかし、上記工程(1)において特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法、又は上記工程(2)において特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法を採用する場合、得られる樹脂組成物中に所望量の不飽和アルデヒド(II)を含有させるためには、上記工程(1)における重合反応、上記工程(2)におけるケン化反応で消費される量を考慮して添加量を多くする必要がある。また、重合反応やケン化反応の反応条件により消費される量が変動するため、樹脂組成物中の不飽和アルデヒド(II)の含有量を調節することが難しい。したがって、上記工程(2)より後に、上記工程(2)により得られたEVOHに、特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法が好ましい。
【0077】
上記EVOHに特定量の不飽和アルデヒド(II)を添加する方法としては、例えば不飽和アルデヒド(II)を予めEVOHに配合してペレットを造粒する方法、エチレン−ビニルエステル共重合体のケン化後にペーストを析出させる工程で析出させたストランドに不飽和アルデヒド(II)を含浸させる方法、析出させたストランドをカットした後に不飽和アルデヒド(II)を含浸させる方法、乾燥樹脂組成物のチップを再溶解したものに不飽和アルデヒド(II)を添加する方法、EVOH及び不飽和アルデヒド(II)の2成分をブレンドしたものを溶融混練する方法、押出し機の途中からEVOH溶融物に不飽和アルデヒド(II)をフィードし含有させる方法、不飽和アルデヒド(II)をEVOHの一部に高濃度で配合して造粒したマスターバッチを作成しEVOHとドライブレンドして溶融混練する方法等が挙げられる。
【0078】
これらのうち、EVOH中に微量の不飽和アルデヒド(II)を均一に分散することができる観点から、上記不飽和アルデヒド(II)混合工程としては、不飽和アルデヒド(II)を予めEVOHに配合してペレットを造粒する工程であることが好ましい。具体的には、EVOHを水/メタノール混合溶媒等の良溶媒に溶解させた溶液に、不飽和アルデヒド(II)を添加し、その混合溶液をノズル等から貧溶媒中に押出して析出及び/又は凝固させ、それを洗浄及び/又は乾燥することにより、EVOHに不飽和アルデヒド(II)が均一に混合されたペレットを得ることができる。
【0079】
また、重合工程の後工程で共役ポリエン化合物と同時に不飽和アルデヒド(II)を添加することもできる。共役ポリエン化合物と同時に添加することにより、共役ポリエン化合物の補助的な機能を発揮し、熱溶融しにくい物質の生成を抑制する。その結果、外観に優れたフィルムを得ることができる。
【0080】
上記(A)層4中に不飽和アルデヒド(II)以外の各成分を含有させる方法としては、例えば上記ペレットを各成分と共に混合して溶融混練する方法、上記ペレットを調製する際に、不飽和アルデヒド(II)と共に同時に各成分を混合する方法、上記ペレットを各成分が含まれる溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。なお、上記混合には、リボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサー等を用いることができる。
【0081】
<(B)層>
上記(B)層6は、上記(A)層4の内面側及び外面側に配置され、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂を主成分とする層である。
【0082】
ここで、Fedorsの式から算出される溶解性パラメータとは、(E/V)
1/2で表される値である。上記式中、Eは分子凝集エネルギー(cal/mol)であり、E=Σeiで表される。なお、eiは蒸発エネルギーである。また、Vは分子容(cm
3/mol)であり、V=Σvi(vi:モル体積)で表される。この式によって算出される溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂は、耐湿性に優れる。
【0083】
上記(B)層6が含む上記熱可塑性樹脂としては、上記溶解性パラメータが11以下の熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば上記溶解性パラメータが11以下であるポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体、ポリブテンやポリペンテン等のオレフィンの単独重合体又は共重合体、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレンが好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0084】
上記高密度ポリエチレンの密度としては、剛性、耐衝撃性、成形性、耐ドローダウン性、耐ガソリン性等の観点から、0.93g/cm
3以上が好ましく、0.95g/cm
3以上0.98g/cm
3以下であることがより好ましく、0.96g/cm
3以上0.98g/cm
3以下がさらに好ましい。また、上記高密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、0.01〜0.5g/10分(190℃、2160g荷重下)の範囲であることが好ましく、0.01〜0.1g/10分の範囲がより好ましい。
【0085】
なお、上記高密度ポリエチレンは、通常市販品の中から適宜選択して使用することができる。また、上記(B)層6は、本発明の効果を損なわない限り、(A)層4と同様のその他の任意成分を含んでいてもよい。
【0086】
<(C)層>
上記(C)層5は、上記(A)層4と(B)層6との間に配置され、カルボン酸変性ポリオレフィンを主成分とする層である。上記(C)層5は、(A)層4と(B)層6等の他の層との間の接着層として機能させることができる。なお、上記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、オレフィン系重合体に、エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を、付加反応、グラフト反応等により化学的に結合させて得られる、カルボキシル基又はその無水物基を有するオレフィン系重合体のことをいう。
【0087】
上記エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えばモノカルボン酸、モノカルボン酸エステル、ジカルボン酸、ジカルボン酸モノエステル、ジカルボン酸ジエステル、ジカルボン酸無水物等が挙げられる。具体的には、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられる。これらうち、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0088】
上記オレフィン系重合体としては、例えば
低密度、中密度又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテン等のポリオレフィン;
エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のオレフィンとこれらのオレフィンと共重合し得るビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル等のコモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらうち、直鎖状低密度ポリエチレン、酢酸ビニル含有量が5〜55質量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体、及びアクリル酸エチル含有量8〜35質量%であるエチレン−アクリル酸エチル共重合体が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン及び酢酸ビニル含有量が5〜55質量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0089】
上記カルボン酸変性ポリオレフィンは、例えばキシレン等の溶媒、過酸化物等の触媒の存在下で、上記オレフィン系重合体に、上記エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を、付加反応又はグラフト反応により導入することにより得られる。このときのカルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加量若しくはグラフト量(変性度)としては、オレフィン系重合体に対して0.01〜15質量%であることが好ましく、0.02〜10質量%がより好ましい。
【0090】
上記カルボン酸変性ポリオレフィンは、1種を単独で使用してもよいし、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0091】
なお、上記(C)層5は、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボン酸変性ポリオレフィン以外に、(A)層4と同様のその他の任意成分を含んでいてもよい。
【0092】
<(D)層>
上記(D)層7は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、Fedorsの式から算出する溶解性パラメータが11以下である熱可塑性樹脂、及びカルボン酸変性ポリオレフィンを含有する層である。また、上記(D)層7は、ブロー成形容器1の製造工程における上記(A)層4、(B)層6及び(C)層5の回収物を用いて形成されることが好ましい。特にブロー成形容1の製造工程においては、バリの発生が不可避であるため、ブロー成形容器1がこのような回収層としての(D)層7をさらに有することで、かかるバリや、検定の不合格品を再利用することによって、ブロー成形容器1の製造時に使用される樹脂のロスを低減することが可能となる。
【0093】
(D)層7は、上述の(B)層6の代わりとして用いることも可能であるが、一般的には(B)層6よりも(D)層7の機械的強度が低くなることが多いため、(B)層6と(D)層7とを積層して用いることが好ましい。ブロー成形容器1が外部から衝撃を受けた場合には、容器に応力の集中が生じ、応力集中部において衝撃に対する圧縮応力が容器内層側で働き、破損が起こる可能性があることから、強度的に弱い回収層は(A)層4よりも外層側に配置することが好適である。また、バリの発生が多い場合等、多量の樹脂をリサイクルする必要がある場合は、(A)層4の両側に(D)層7として回収層を配置することもできる。
【0094】
(D)層7におけるEVOHの含有量は、9.0質量%以下であることが好ましい。上記(D)層7におけるEVOHの含有量が9質量%を超えると(B)層6との界面でクラックが発生し易くなり、そのクラックを起点としてブロー成形容器1全体の破壊が起こるおそれがある。
【0095】
<ブロー成形容器1の層構成>
(A)層4の内側にある各層の厚みの合計をIとし、(A)層4の外側にある各層の厚みの合計をOとしたときの厚み比(I/O)が1/99〜70/30であることが好ましく、1/99〜55/45であることがより好ましく、30/70〜55/45であることがさらに好ましい。なお、当該ブロー成形容器1の全層又は各層の厚みは、ミクロトームを用いて容器胴部より複数箇所の断面を切り出したサンプルについて、光学顕微鏡観察により求め、全層又はそれぞれの層について平均値を算出し、全層平均厚み又は各層の平均厚みとする。
【0096】
(A)層4の平均厚みとしては、特に限定されるものではないが、バリア性及び機械強度等の観点から、全層平均厚みの5.0%以下であることが好ましく、0.5%〜5%であることがより好ましく、1.0%〜4.5%がさらに好ましく1.5%〜4.0%が特に好ましい。
【0097】
(C)層5の平均厚みとしては、特に限定されるものではないが、全層平均厚みの0.3%〜12%であることが好ましく、0.6%〜9%がより好ましく、1.2%〜6%がさらに好ましい。接着性樹脂層としての(C)層5の厚みが小さ過ぎると接着性が低下し、大き過ぎるとコストが上昇することとなり好ましくない。
【0098】
ブロー成形容器1の全体平均厚みとしては、300〜10,000μmが好ましく、500〜8,500μmがより好ましく、1,000〜7,000μmがさらに好ましい。なお、これらの全体平均厚みはブロー成形容器1の胴部における平均厚みをいう。全体平均厚みが大き過ぎると重量が大きくなり、例えば自動車等の燃料容器に使用する場合には燃費に悪影響を及ぼし、容器のコストも上昇する。一方全体平均厚みが小さ過ぎると剛性が保てず、容易に破壊されてしまうおそれがある。したがって、容量や用途に対応した厚みを設定することが重要である。
【0099】
<ブロー成形容器1の製造方法>
ブロー成形容器1は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を主成分とする樹脂組成物用いてブロー成形する工程を有し、上記樹脂組成物が不飽和アルデヒド(II)を含有し、この不飽和アルデヒド(II)の上記樹脂組成物における含有量が0.01ppm以上100ppm以下である製造方法により製造することが好ましい。不飽和アルデヒド(II)の上記樹脂組成物における含有量としては、0.01ppm以上100ppm以下が好ましく、0.1ppm以上30ppm以下がより好ましく、0.15ppm以上20ppm以下がさらに好ましい。具体的には、(A)層4を形成する乾燥EVOH含有樹脂組成物ペレット、(B)層5を形成する高密度ポリエチレン樹脂等、(C)層6を形成する接着性樹脂、及び(D)層7を形成する回収樹脂等を用い、ブロー成形機にて100℃〜400℃の温度で、例えば(内)B/C/A/C/D/B(外)の4種6層パリソンからブロー成形し、金型内温度10℃〜30℃で10秒間〜30分間冷却し、全層平均厚み300μm〜10,000μmの中空容器を成形することができる。中空容器は、たとえば燃料タンクやブロー成形ボトル容器などとして用いることができる。
【0100】
<その他の実施形態>
本発明のブロー成形容器は、上記
図1の形態に限定されず、少なくとも(A)層を備えていればよい。具体的には、回収層としての(D)層等を備えなくてもよい。さらに、他の層が積層されてもよい。また、接着性がよい樹脂の組合せを選択することで、接着層としての(C)層を省略してもよい。
【0101】
当該ブロー成形容器の層構成としては、(B)層を最外層に配置することが好ましい。すなわち、容器内部表面から容器外部表面に向かって、(B)層/(C)層/(A)層/(C)層/(B)層の配置とすること(以降、(内)B/C/A/C/B(外)のように表す)が耐衝撃性の観点から好ましい。また、回収層等の(D)層を含む場合には、例えば(内)B/C/A/C/D/B(外)、(内)B/D/C/A/C/D/B(外)、(内)D/C/A/C/D(外)等の配置が挙げられ、(B)層の代わりに(D)層を備える構成でもよい。これらの中でも、上述の実施形態のような(内)B/C/A/C/D/B(外)や(内)B/D/C/A/C/D/B(外)の配置が好ましい。なお、(A)〜(D)層がそれぞれ複数用いられている配置の場合、それぞれの層を構成する樹脂は同一でも異なっていてもよい。
【0102】
<燃料容器>
本発明の燃料容器は、上述のブロー成形容器を備えており、必要に応じて、例えばフィルター、残量計、バッフルプレート等が備えられる。当該燃料容器は、上述のブロー成形容器を備えることで、外観性、ガス遮蔽性、耐油性等にも優れるため燃料容器として好適に用いられる。ここで、燃料容器とは、自動車、オートバイ、船舶、航空機、発電機、工業用若しくは農業用機器等に搭載された燃料容器、又はこれら燃料容器に燃料を補給するための携帯用燃料容器、さらには、燃料を保管するための容器を意味する。また、燃料としては、ガソリン、特にメタノール、エタノール又はMTBE等をブレンドした含酸素ガソリン等が代表例として挙げられるが、その他、重油、軽油、灯油等も含まれるものとする。これらうち、当該燃料容器は、含酸素ガソリン用燃料容器として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本実施例における各定量は、以下の方法を用いて行った。
【0104】
[EVOHのエチレン含有量及びケン化度]
DMSO−d
6を溶媒とした
1H−NMR(日本電子株式会社製「JNM−GX−500型」)により求めた。
【0105】
[不飽和アルデヒド(II)の定量]
50質量%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)溶液200mgに、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)50mL、酢酸11.5mL及びイオン交換水8mLを添加し、DNPH調整溶液を作製する。その後、乾燥EVOH含有樹脂組成物ペレット1gをDNPH調整溶液20mLに添加し、35℃にて1時間攪拌溶解させる。この溶液にアセトニトリルを添加してEVOH(I)を沈降させ、溶液を濾過・濃縮し、抽出サンプルを得る。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、不飽和アルデヒド(II)の量を定量した。また、定量に際しては、それぞれの不飽和アルデヒド(II)をDNPH調製溶液と反応させて得た標品を用いて作成した検量線を使用した。なお、本願においては、ブロー成形容器における各層中の各成分の含有量として、その層を形成するために用いた乾燥樹脂組成物における含有量を用いた。
【0106】
[共役ポリエン化合物の定量]
乾燥EVOH含有樹脂組成物ペレットを凍結粉砕により粉砕し、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801−1〜3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物10gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて48時間抽出処理した。この抽出サンプルを高速液体クロマトグラフィーにて定量分析することで、共役ポリエン化合物の量を定量した。なお、定量に際しては、それぞれの共役ポリエン化合物の標品を用いて作成した検量線を使用した。
【0107】
[溶液外観(透明性、着色性)]
乾燥樹脂組成物ペレットを空気中120℃で15時間熱処理したペレット10gを300mlの三角フラスコに取り、水/プロパノール混合溶液(質量比:水/プロパノール=45/55)100mlを加え、75℃で3時間攪拌し、目視にて溶液の透明性と着色を評価した。
【0108】
[モータートルク変動]
乾燥樹脂組成物ペレット60gをラボプラストミル(東洋精機製作所製「20R200」二軸異方向)100rpm、260℃で混練し、混練開始から5分後のトルク値が1.5倍になるまでの所要時間を測定した。
【0109】
<EVOH(I)の合成>
[合成例1]
250Lの加圧反応槽を用いて以下の条件でエチレン−酢酸ビニル共重合体の重合を実施した。
酢酸ビニル83.0kg、
メタノール26.6kg、
2,2‘−アゾビスイソブチルニトリル供給量 1119.5mL/hr
重合温度 60℃
重合槽エチレン圧力 4.93MPa
重合時間 5.0時間
得られた共重合体における酢酸ビニルの重合率は約40%であった。この共重合反応液にソルビン酸を添加した後、追出塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の41%メタノール溶液を得た。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は32mol%であった。このエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に仕込み、苛性ソーダ/メタノール溶液(80g/L)を、共重合体中のビニルエステル成分に対して0.4当量となるように添加し、メタノールを加えて共重合体濃度が20%になるように調整した。この溶液を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら約4時間反応させた。この溶液を円形の開口部を有する金板から水中に押し出して析出させ、切断することで直径約3mm、長さ約5mmのペレットを得た。得られたペレットを遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返した。
【0110】
[EVOH含有樹脂組成物の調製]
上記脱液したペレット20kgを、180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に不飽和アルデヒド(II)、及び共役ポリエン化合物を添加し、さらに1時間攪拌して不飽和アルデヒド(II)及び共役ポリエン化合物を完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂組成物チップを得た。得られた多孔質の樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄を行った。この洗浄液と樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量を上記定量方法により定量し、(A)層における含有量とした。不飽和アルデヒド(II)の添加量、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、不飽和アルデヒド(II)及び共役ポリエン化合物の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。
【0111】
[合成例2及びEVOH含有樹脂組成物の調製]
重合終了後にソルビン酸とクロトンアルデヒドを同時に添加した以外は合成例1と同様に操作し、ペレットを得た。得られたペレット20kgを180kgの水/メタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に入れ、60℃で6時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に共役ポリエン化合物としてのソルビン酸を添加し、さらに1時間攪拌してソルビン酸を完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。この樹脂組成物溶液を直径4mmのノズルより、0℃に調整した水/メタノール=90/10(質量比)の凝固浴中に連続的に押出してストランド状に凝固させた。このストランドをペレタイザーに導入して多孔質の樹脂組成物チップを得た。得られた多孔質の樹脂組成物チップを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びホウ酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物チップを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、樹脂組成物(乾燥樹脂組成物ペレット)を得た。得られた樹脂組成物における各成分の含有量は、上記定量方法を用いて定量した。なお、浸漬処理用水溶液の各成分の濃度を調節することにより、各成分の含有量が表1に記載の通りとなるように樹脂組成物を調製した。
【0112】
<EVOH含有樹脂組成物の評価>
このようにして得られた各EVOH含有樹脂組成物について、以下のように評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0113】
(1)溶液外観(透明性、着色)の評価
3時間加熱攪拌した溶液について、目視にて溶液の透明性と着色を下記評価基準により評価した。
【0114】
(透明性の評価基準)
「良好(A)」:透明、目視で確認できる浮遊物なし。
「やや良好(B)」:やや白濁、目視で確認できる浮遊物あり。
「不良(C)」:白濁、浮遊物あり。
【0115】
(溶液の着色評価基準)
「良好(A)」:無色
「やや良好(B)」:やや着色
「不良(C)」:著しく着色
【0116】
(4)モータートルク変動の評価
加熱状態の粘度変化を以下のように評価した。なお加熱状態での樹脂組成物の粘度は、二次加工時のロングラン性に影響する要因である。
(モータートルク変動の評価基準)
「良好(A)」:60分以上
「やや良好(B)」:40分以上60分未満
「不良(C)」:40分未満
【0117】
<回収樹脂の調製>
上記乾燥EVOH樹脂ペレット4質量部、高密度ポリエチレン樹脂(三井石油化学製 HZ8200B、190℃−2160g荷重におけるMFR=0.01g/10分)86質量部、及び接着性樹脂(三井化学製ADMER GT−6A(商品名)、190℃−2160gにおけるMFR=0.94g/10分)10質量部をドライブレンド後、二軸押出し機(「2D25W」、株式会社東洋精機製作所製;25mmφ、ダイ温度220℃、スクリュー回転数100rpm)を用い、窒素雰囲気下で押出しペレット化を行った。さらにモデル回収樹脂を得るために、この押出ペレットをさらに同押出機および同条件で押出しペレット化を実施、同作業を4回(押出機でのブレンドは計5回)実施し回収樹脂を得た。
【0118】
<ブロー成形容器の製造>
[実施例1〜17、比較例1〜3]
上記乾燥EVOH樹脂ペレット、上記高密度ポリエチレン樹脂、上記接着性樹脂、及び上記回収樹脂を用い、鈴木製工所製ブロー成形機TB−ST−6Pにて210℃で、(内側)高密度ポリエチレン/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/回収樹脂/樹脂組成物(外側)の4種6層パリソンを2時間放流し、2時間加熱状態のまま運転を停止させた。その後運転を再開し、各所定時間後に製造したブロー成形容器を評価した。なお、ブロー成形容器の製造においては、金型内温度15℃で20秒間冷却し、全層厚み1000μm((内側)高密度ポリエチレン/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/回収樹脂/樹脂組成物(外側)=(内側)340/50/40/50/400/120μm(外側))の500mLタンクを成形した。このタンクの底面直径は100mm、高さは400mmであった。なお、実施例1〜11、13〜17、比較例1〜5の乾燥EVOH樹脂ペレットは、上記合成例1によって得た。また、実施例12の乾燥EVOH樹脂ペレットは、上記合成例2によって得た。比較例1の乾燥EVOH樹脂ペレットは、上記合成例1により得ているが、EVOH含有樹脂組成物の調製において不飽和アルデヒド(II)に当たるクロトンアルデヒドは添加しなかった。
【0119】
<ブロー成形容器の評価>
このようにして得られた各ブロー成形容器について、以下のように評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
【0120】
[外観性の評価]
再立ち上げ40分後に成形した500mLタンクについて、目視にてストリーク及び着色を下記基準にて評価し、外観性の評価とした。
【0121】
(ストリークの評価基準)
「良好(A)」:ストリークは認められなかった。
「やや良好(B)」:ストリークが確認された。
「不良(C)」:多数のストリークが確認された。
【0122】
(着色の評価基準)
「良好(A)」:無色
「やや良好(B)」:黄変
「不良(C)」:著しく黄変
【0123】
[耐衝撃性評価]
再立ち上げ20分後、40分後、及び10時間後にブロー成形した500mLタンクに、エチレングリコールを400mL充填し、開口部をポリエチレン40μm/アルミ箔12μm/ポリエチレンテレフタレート12μm構成のフィルムで熱シールして蓋をした。このタンクを−40℃で3日間冷却し、開口部が上になるように6mの高さから落下させ、破壊した個数で評価した(n=10)。再立ち上げ20分後の耐衝撃性がセルフパージ性の指標となる。
(耐衝撃性の評価基準)
「良好(A)」:3個未満
「やや良好(B)」:3個〜6個未満
「不良(C)」:6個以上
【0124】
【表1】
【0125】
表1に示すように、本発明のブロー成形容器は比較例に比べ、ストリークの発生及び着色が抑制され、外観性に優れることがわかった。また、本発明のブロー成形容器は、成形装置の再立ち上げ20分後に成形されたものであっても耐衝撃性に優れていた。本発明のブロー成形容器は、セルフパージ性に優れるEVOH含有樹脂組成物を用いていることで、再立ち上げからわずかな時間で、耐衝撃性を低減させるゲル・ブツ等の発生が起こらなくなることがわかった。