特許第6039665号(P6039665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039665放電生成プラズマEUV源のための電源装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039665
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】放電生成プラズマEUV源のための電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 2/00 20060101AFI20161128BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20161128BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H05G2/00 M
   H01L21/30 531S
   G03F7/20 503
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-519461(P2014-519461)
(86)(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公表番号】特表2014-525126(P2014-525126A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】EP2012057140
(87)【国際公開番号】WO2013007407
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/507,368
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】コーネン,マルティヌス,ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】シーモンズ,グイド,フリードリヒ
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−078199(JP,A)
【文献】 特開2004−304365(JP,A)
【文献】 特開2010−268154(JP,A)
【文献】 特開2006−042560(JP,A)
【文献】 特開2007−088061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 2/00
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ照明源に電力を提供するための電源装置であって、
前記電力を提供する電圧源と、
前記電圧源からの前記電力を伝送する伝送線と、
前記伝送線の入力端部または前記伝送線の出力端部に設けられ、前記伝送線を終端処理して前記伝送線の前記端部におけるRFエネルギーの反射を低減するRF終端と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記伝送線は同軸ケーブルであり、前記RF終端は、前記同軸ケーブルの前記入力端部または前記出力端部において、前記同軸ケーブルの芯線と直列に設けられる、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記同軸ケーブルの前記入力端部または前記出力端部において、前記同軸ケーブルのシールドと直列に設けられる第2のRF終端をさらに備える、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記同軸ケーブルと直列のコモンモードチョークをさらに備え、該コモンモードチョークは、前記同軸ケーブルの前記芯線とシールドのそれぞれに、等しくかつ反対の電流を通す、請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記RF終端は、前記伝送線からみた前記RF終端のインピーダンスが前記伝送線の特性インピーダンスに相当するように、前記伝送線の終端処理を行う、請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
前記RF終端は、前記RF終端を直流電流が流れることを可能にする、前記伝送線と直列のインダクタを備える、請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
前記電圧源は、前記伝送線を通って直流電力を連続的に供給する非スイッチ型電圧源である、請求項1に記載の電源装置。
【請求項8】
前記電圧源は、前記伝送線に正電圧および負電圧を提供する電圧源である、請求項1に記載の電源装置。
【請求項9】
前記伝送線は、第1および第2の同軸ケーブルを備え、前記第1の同軸ケーブルは前記正電圧を前記照明源に接続し、前記第2の同軸ケーブルは前記負電圧を前記照明源に接続する、請求項8に記載の電源装置。
【請求項10】
前記RF終端は、前記第1の同軸ケーブルに接続され、第2のRF終端が前記第2の同軸ケーブルに接続される、請求項9に記載の電源装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電源装置と、前記伝送線に接続された照明源と、を備える装置。
【請求項12】
前記照明源は、EUV放射源である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
電圧源と、伝送線を介して前記電圧源に接続されたリソグラフィ照明源と、を備える装置であって、前記伝送線の端部は、前記端部でのRF反射を低減するための整合回路網に接続される、装置。
【請求項14】
電圧源と、伝送線を介して前記電圧源に接続されたリソグラフィ照明源と、前記照明源と前記電圧源の間のRFアイソレータと、を備える装置。
【請求項15】
前記RFアイソレータは、前記電圧源から前記照明源に直流電流を通す、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記照明源は、EUV放射源である、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
請求項14に記載の装置を備えるリソグラフィ装置。
【請求項18】
リソグラフィ照明源に電力を供給するための電源であって、特性インピーダンスを有する伝送線に接続するためのRF終端を含む出力ポートを備え、前記RF終端は、前記伝送線の前記特性インピーダンスに実質的に相当する、前記伝送線から見たインピーダンスを前記出力ポートに与える、電源。
【請求項19】
前記電源は、正電圧および負電圧を与え、かつ、前記正電圧を前記出力ポートに与え、
前記電源は、第2の特性インピーダンスを有する第2の伝送線に接続する第2のRF終端を含む第2の出力ポートを備え、
前記第2のRF終端は、前記第2の伝送線の前記特性インピーダンスに実質的に相当する、前記第2の伝送線から見たインピーダンスを前記第2の出力ポートに与える、請求項18に記載の電源。
【請求項20】
極端紫外線(EUV)放射を生成する方法であって、
RFアイソレータを介して電源をEUV放射源に接続することと、
前記EUV放射源が前記EUV放射源内のコンデンサを間欠的に放電する間、前記コンデンサを前記電源からの直流電流で連続的に充電することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、2011年7月13日出願の米国仮出願第61/507,368号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 実施形態は、極端紫外線放射源のようなリソグラフィ照明源に電力を供給するための高電圧電源装置、そのような電源装置を含むリソグラフィ照明源、および、そのような照明源を組み込んだリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。その場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。
【0004】
[0004] リソグラフィは、ICやその他のデバイスおよび/または構造の製造において重要なステップの1つとして広く認識されている。しかしながら、リソグラフィを用いて作られるフィーチャの寸法が小さくなるにつれて、リソグラフィは、小型のICあるいはその他のデバイスおよび/または構造の製造を可能とするためのより重要な要因となってきている。
【0005】
[0005] パターン印刷の限界の理論推定値は、式(1)に示す解像度に関するレイリー基準によって与えられることができる。
【数1】

上記式において、Aは使用される放射の波長であり、NAはパターン印刷に使用される投影システムの開口数であり、k1はレイリー定数とも呼ばれるプロセス依存調整係数であり、CDは印刷されたフィーチャのフィーチャサイズ(またはクリティカルディメンジョン)である。式(1)から、フィーチャの最小印刷可能サイズの縮小は、3つの方法、すなわち、露光波長Aを短縮すること、開口数NAを増加させること、あるいはk^の値を下げることによって達成することができる、と言える。
【0006】
[0006] 露光波長を短縮し、それにより最小印刷可能サイズを縮小するために、極端紫外線(EUV)放射源を使用することが提案されてきた。EUV放射は、5〜20nmの範囲内、例えば、13〜14nmの範囲内、あるいは、6.7nmまたは6.8nmといった5〜10nmの範囲内の波長を有する電磁放射である。可能な放射源としては、例えば、レーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源、または電子蓄積リングによってもたらされるシンクロトロン放射に基づく放射源が挙げられる。
【0007】
[0007] EUV放射は、プラズマを使って生成することができる。EUV放射を生成するための放射システムは、燃料を励起してプラズマを提供するためのレーザと、プラズマを収容するためのソースコレクタモジュールとを含んでよい。プラズマは、例えば、好適な材料(例えば、スズ)の粒子、あるいは、XeガスまたはLi蒸気のような好適なガスまたは蒸気の流れといった燃料に、レーザビームを向けることによって作り出すことができる。このようにして得られるプラズマは、出力放射、例えばEUV放射を放出し、この放射が放射コレクタを使って集められる。放射コレクタは、放射を受け取り、これを集束してビームとする、ミラー(mirrored)法線入射放射コレクタであってよい。ソースコレクタモジュールは、プラズマを支持するために真空環境を提供するように配置された閉鎖構造またはチャンバを含んでよい。このような放射システムは、通常、「レーザ生成プラズマ(LPP)源」と呼ばれる。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 本発明の一側面によれば、リソグラフィ照明源に電力を提供するための電源装置が提供される。電源装置は、電力を提供するように配置された電圧源と、電圧源からの電力を伝送するように配置された伝送線と、伝送線の入力端部または伝送線の出力端部の1つまたは複数に設けられた1つまたは複数のRF終端と、を備える。1つまたは複数のRF終端は、伝送線を終端処理して伝送線の端部におけるRFエネルギーの反射を低減する。
【0009】
[0009] 本発明の別の側面によれば、電圧源と、伝送線を介して電圧源に接続されたリソグラフィ照明源と、を備える装置が提供される。伝送線の端部は、当該端部でのRF反射を低減するための整合回路網に接続される。
【0010】
[00010] 本発明の別の側面によれば、電圧源と、伝送線を介して電圧源に接続されたリソグラフィ照明源と、照明源と電圧源の間のRFアイソレータと、を備える装置が提供される。
【0011】
[00011] 本発明の一側面によれば、上述の装置を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0012】
[00012] 本発明の一側面によれば、リソグラフィ照明源に電圧を供給するための電圧源であって、特性インピーダンスを有する伝送線に接続するためのRF終端を含む出力ポートを備える電圧源が提供される。RF終端は、伝送線の特性インピーダンスに実質的に相当する、伝送線から見た終端インピーダンスを出力ポートに与える。
【0013】
[00013] 本発明の別の側面によれば、以後EUV放射と呼ぶ、極端紫外線放射を生成する方法が提供される。この方法は、RFアイソレータを介して電圧源をEUV放射源に接続することと、EUV放射源が該EUV放射源内のコンデンサを間欠的に放電する間、該コンデンサを電圧源からの直流電流で連続的に充電することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[00014] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
図1】[00015] 図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す。
図2】[00016] 図2は、図1の装置を、放電生成プラズマ(「DPP」)ソースコレクタモジュールを含めてより詳細に示す図である。
図3】[00017] 図3は、図1の装置の代替的ソースコレクタモジュールである、レーザ生成プラズマ(「LPP」)ソースコレクタモジュールを示す図である。
図4】[00018] 図4Aおよび図4Bは、極端紫外線放射源の電極に電気パルスを印加するための公知の構成を示す。
図5】[00019] 図5aおよび図5bは、図4に示す回路構成に基づくシミュレーション結果を示す。
図6】[00020] 図6は、図4の回路図に、本発明の一実施形態に係る変更を加えたものを示す。
図7】[00021] 図7aおよび図7bは、図4に示す回路構成に基づくシミュレーション結果であって、図6に示すとおりのモデルから得られるシミュレーション結果を示す。
図8】[00022] 図8Aおよび図8Bは、一実施形態に係る極端紫外線放射源の回路図を示す。
図9】[00023] 図9aおよび図9bは、図8Aの回路のEUV源の端子における電圧のシミュレーション結果を示す。
図10】[00024] 図10Aおよび図10Bは、図6図8図11および図12の回路における同軸ケーブル上のリンギング電流の特性を示す。
図11】[00025] 図11は、対称的終端を有する、別の実施形態に係る極端紫外線放射源の回路図を示す。
図12】[00026] 図12は、対称的終端を有し、さらに、放電中の電極での平衡を図った、さらに別の実施形態に係る極端紫外線放射源の回路図を示す。
図13】[00027] 図13は、高電圧源からの断線をなくした、さらに別の実施形態に係る極端紫外線放射源の回路図を示す。
図14】[00028] 図14は、高電圧源からの断線をなくし、対称的に構成した、さらに別の実施形態に係る極端紫外線放射源の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[00029] 図1は、本発明の一実施形態に係るソースコレクタモジュールSOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示している。この装置は、放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)MAを支持するように構築され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、反射型投影システム)PSと、を含む。
【0016】
[00030] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどのさまざまなタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0017】
[00031] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0018】
[00032] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応するものとしてよい。
【0019】
[00033] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーまたはMEMSベースのアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0020】
[00034] 照明システムと同様、投影システムも、使われている露光放射にとって、あるいは真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せを含むさまざまなタイプの光学コンポーネントを含み得る。他のガスは放射を過剰に吸収してしまうことがあるため、EUV放射にとっては真空を使用することが望ましいことがある。そのため、真空壁と真空ポンプとを用いて全ビーム経路に真空環境を作り出してもよい。
【0021】
[00035] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)である。
【0022】
[00036] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0023】
[00037] 図1を参照すると、イルミネータILは、ソースコレクタモジュールSOから極端紫外線(EUV)放射ビームを受ける。EUV光を生成する方法としては、例えばキセノン、リチウム、またはスズといったEUV範囲内に1以上の輝線をもつ少なくとも1つの元素を有する材料をプラズマ状態に変換する方法があるが、必ずしもこれに限定されない。しばしばレーザ生成プラズマ(「LLP」)と呼ばれるそのような一方法において、所要のプラズマは、所要の線発光元素を有する材料の小滴、流れ、またはクラスタといった燃料にレーザビームを照射することにより生成することができる。ソースコレクタモジュールSOは、図1には示されない、燃料を励起するレーザビームを提供するためのレーザを含むEUV放射システムの一部であってもよい。こうして得られるプラズマは、出力放射、例えばEUV放射を放出し、これがソースコレクタモジュール内に設けられた放射コレクタを用いて集められる。レーザとソースコレクタモジュールとは、例えば、燃料励起のためのレーザビームを提供するためにCOレーザが使用される場合には、別個の構成要素であってもよい。
【0024】
[00038] そのような場合、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、放射ビームは、レーザからソースコレクタモジュールへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源が、しばしばDPP源と呼ばれる放電生成プラズマEUVジェネレータである場合、放射源は、ソースコレクタモジュールの一体部分とすることもできる。
【0025】
[00039] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセットフィールドおよび瞳ミラーデバイスといった、様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0026】
[00040] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、さまざまなターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。
【0027】
[00041] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
1.ステップモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。
2.スキャンモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。
3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0028】
[00042] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0029】
[00043] 図2は、装置100を、ソースコレクタモジュールSO、イルミネータシステムIL、および投影システムPSを含めてより詳細に示す。ソースコレクタモジュールSOは、ソースコレクタモジュールSOの閉鎖構造220内に真空環境を維持できるように構築されかつ配置される。EUV放射放出プラズマ210は、放電生成プラズマ源によって形成し得る。EUV放射は、例えばXeガス、Li蒸気、またはSn蒸気といった、その中で非常に高温のプラズマ210が作り出されて電磁スペクトルのEUV範囲内の放射が放出されるガスまたは蒸気によって生成し得る。非常に高温のプラズマ210は、例えば、少なくとも部分的にイオン化されたプラズマを生じる放電によって作り出される。放射を効率よく生成するためには、例えば分圧10PaのXe、Li、Sn蒸気、あるいはその他の好適なガスまたは蒸気が必要となり得る。一実施形態では、EUV放射を生成するために励起スズ(Sn)のプラズマが提供される。
【0030】
[00044] 高温のプラズマ210から放出された放射は、ソースチャンバ211内の開口部内またはその後方に位置する任意のガスバリアまたは汚染物質トラップ230(汚染物質バリアまたは(回転)フォイルトラップと呼ばれることもある)を介して、ソースチャンバ211からコレクタチャンバ212へと通される。汚染物質トラップ230は、チャネル構造を含んでよい。汚染物質トラップ230はまた、ガスバリア、あるいはガスバリアとチャネル構造との組合せを含んでもよい。本明細書においてさらに言及される汚染物質トラップまたは汚染物質バリア230は、当該技術分野において公知のように、少なくともチャネル構造を含むものとする。
【0031】
[00045] コレクタチャンバ211は、いわゆるかすめ入射コレクタであってもよい放射コレクタCOを含み得る。放射コレクタCOは、放射コレクタ上流側251および放射コレクタ下流側252を有する。コレクタCOを通過する放射は、格子スペクトルフィルタ240で反射し、仮想光源点IFに集束させることができる。仮想光源点IFは、通常、中間焦点と呼ばれるもので、中間焦点IFが閉鎖構造220内の開口部221に位置する、あるいはその近傍に位置するように、ソースコレクタモジュールが配置される。仮想光源点IFは、放射放出プラズマ210の像である。
【0032】
[00046] 放射は続いて照明システムILを通過する。この照明システムILは、パターニングデバイスMAにおいて放射ビーム21に所望の角分布をもたせるとともに、パターニングデバイスMAにおいて所望の放射強度均一性をもたせるように配置されたファセットフィールドミラーデバイス22およびファセット瞳ミラーデバイス24を含み得る。放射ビーム21がサポート構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAで反射されると、パターン付きビーム26が形成され、このパターン付きビーム26が、投影システムPSによって、反射要素28および30を介して、ウェーハステージまたは基板テーブルWTに保持された基板W上に結像される。
【0033】
[00047] 照明光学ユニットILおよび投影システムPSには、通常、図示されるより多くのエレメントが存在し得る。リソグラフィ装置のタイプにより、格子スペクトルフィルタ240が任意選択的に存在してもよい。さらに、図面に示されたものより多くのミラーが存在してもよく、例えば、投影システムPSには、図2に示されたものに対して1〜6個の追加の反射要素が存在してもよい。
【0034】
[00048] 図2に示すとおり、コレクタ光学系COは、コレクタ(またはコレクタミラー)の単なる一例として、かすめ入射リフレクタ253、254および255を有する入れ子状のコレクタとして描かれている。かすめ入射リフレクタ253、254および255は、光軸Oの周りに軸対称となるように配置されており、このようなタイプのコレクタ光学系COは、しばしばDPP源と呼ばれる放電生成プラズマ源と組み合わせて用いられることが好ましい。
【0035】
[00049] あるいは、ソースコレクタモジュールSOは、図3に示されるようなLPP放射システムの一部であってもよい。レーザLAは、キセノン(Xe)、スズ(Sn)またはリチウム(Li)といった燃料にレーザエネルギーを蓄積し、それによって数十eVの電子温度をもつ高イオン化プラズマ210を作り出すように構成されている。これらのイオンの脱励起および再結合中に生じるエネルギー放射がプラズマから放出され、近法線入射コレクタ光学系COによって集められ、閉鎖構造220内の開口部221上に集束される。
【0036】
[00050] 図4Aおよび図4Bは、極端紫外線放射源(例えば、DPP源)に高電圧電気エネルギーを供給するための公知の電源300の等価回路図を示す。この回路は、三相高電圧供給源310からエネルギー供給を受ける。図から分かるとおり、高電圧エネルギー源310は整流機構を備え、それにより、エネルギー源310は高電圧直流電源装置を表す。直流電圧は、スイッチング回路320、RFケーブル330およびコンデンサバンク340を介してEUV源350に供給される。この伝送チェーンにおける個々のコンポーネントについて、EUV源350から以下で説明する。
【0037】
[00051] EUV源350はあらゆるタイプの公知のEUV源であってよく、インダクタL12と、(放電シークエンスを表す)FET Mのゲートに結合されたパルス電源Vを備えるスイッチング機構とによって表される。インダクタL12はEUV電極のインダクタンスを表す。FET Mおよびパルス電源Vは、電気回路のシミュレーションという目的においては、使用中EUV源の電極間に繰り返し生じるアーク放電を等価に表すものである。
【0038】
[00052] EUV源350は、その入力電力をコンデンサバンク340から得る。コンデンサバンク340は、1つまたは複数の並列コンデンサCを備える。これらのコンデンサCは、エネルギー供給源310によって提供されるエネルギーを蓄積し、例えば、EUV源の電極間に十分なEUV源燃料が与えられた場合など、適切なタイミングでEUV源350の電極を介したアーク放電をサポートする。
【0039】
[00053] コンデンサバンク340は、抵抗器RおよびダイオードDからなる直列回路網を含む過電圧・逆電圧保護回路も備える。インダクタL10は、相互接続システムの固有のインダクタンスを表す。1以上のコンデンサCは、RFケーブル330を通してエネルギーが提供されるたびに充電され、EUV源350の電極間にアーク放電が生じるたびに放電されることが理解されるだろう。
【0040】
[00054] 図4Aに記載の回路モデルは、標準的な方法におけるRFケーブル330を、コンデンサCとインダクタLとを備えるローパスフィルタとして表す。
【0041】
[00055] スイッチング回路320は、RFケーブル330とエネルギー供給源310の間に設けられる。スイッチング回路310は、電源装置310によって提供されるエネルギーを継続的に蓄積するためのコンデンサCを備える。インダクタLおよびLは、スイッチング回路320に対して直列の追加のインダクタンスを表す。ダイオードD、抵抗器RおよびコンデンサCを含む回路網が過電圧保護回路を形成する。
【0042】
[00056] EUV源350のパルス電圧源VおよびFET Mとは対照的に、スイッチング回路320のパルス電圧源VおよびFET Mは、単に系内の物理的作用を表すのではなく、スイッチングされる電源装置320内に物理的に存在するコンポーネントを表す。スイッチング回路320は、コンデンサバンクCの充電を間欠的に中断して、EUV源350でのアーク放電によるCの放電を可能にするための手段として設けられる。アーク放電に続いて起こるコンデンサCの放電は、EUV源350の電極における極端紫外線放射を生成しないアーチング(arching)を防ぐために望ましいことと考えられていた。これを達成するため、FET Mが導電状態にあるとき、すなわち、アーク放電がEUV源350内で起きているときにFET Mを導電状態にスイッチングしないようにパルス電圧源が配置されている。したがって、EUV源350の電極でのアーク放電によってコンデンサCの放電ができる。続いて、パルス電圧源VによりFET Mを導電状態にスイッチングすると、コンデンサCが次のアーク放電に備えて再充電される。
【0043】
[00057] 図4Bは、理解を容易にするため、図4Aに明示された回路コンポーネントのうちのいくつかを簡略化した、簡略化されたデバイスを示す。好適なEUV源350の性質を、例えば、図4Bからより容易に認識することができる。この例では、EUV源350は、例えば、ドイツ国、アルスドルフ52477、コンラート−ツーゼ−ストラッセ1のエクストリームテクノロジーズ(XTREME technologies)から入手可能な公知のEUV源のうちの1つである。ただし、代わりに他のEUV源を本発明の一部として使用し得ることが理解されるだろう。図4Bから分かるとおり、コンデンサバンク340およびEUV源350は必要な真空雰囲気を提供するキャビネット内に収容される。このキャビネットはさらに、RF遮蔽を提供するために使用することも可能である。参照符号230で示したコンポーネントは上述の(回転)フォイルトラップに相当する。
【0044】
[00058] 図4Aおよび図4Bに示す回路において、達成可能な最大電圧変化は10nsで約4kVであった。このことは、コンデンサCの放電および充電を左右するため、EUV源350の最大動作周波数に重い上限を課すものであった。
【0045】
[00059] 図5aおよび図5bは、図4Aに示す回路のコンピュータシミュレーション結果を示す。図5aは、30msまでの時間に開始したアーク放電に続いてEUV源350の電極へと流れる電流を示す。図5aから分かるように、アーク放電は10ms続き得る。40msでアーク放電が終了すると、許容できる程度に短い(1ms未満)リンギング影響(ringing artifact)が認められる。
【0046】
[00060] 図5bは、図5aに示す電流の周波数構成を示す。図5bから分かるように、電流内には多数の共振が存在する。
【0047】
[00061] しかしながら、図5aおよび図5bのシミュレーション結果を実験による観察と比較すると、図4Aの等価回路図は回路の実際の挙動を完全に反映してはいないことが示された。本発明者は特に、実際の装置に存在する高周波共振が図4Aの等価回路に基づくシミュレーションでは再現されていないことを確認した。シミュレーションの基礎となる等価回路の正確性を評価するためには、シミュレーションにおいてこの共振を再現することが望ましい。
【0048】
[00062] 上記のシミュレーション結果と実験との相違を考慮し、本発明者は、図4AにおいてRFケーブル330を表していたローパスフィルタを伝送線Tに置き換え、図6に示す等価RFケーブル370を形成することで、図4Aに示す等価回路を変更した。一実施形態において、RFケーブル370は、芯線およびシールドを有する同軸ケーブルであってよい。電源300の他のいずれのコンポーネントについても変更は行わなかった。伝送線T1は、特性インピーダンスZ=50Ωを有し、伝搬遅延時間T=35nsを生じる。
【0049】
[00063] 図6の等価回路に基づくシミュレーション結果を図7aおよび図7bに示す。図7aから分かるように、15msでEUV源のアーク放電が終了した後、かなりの電流が約4ms間認められる。また、図7bに示されるように、およそ1.5MHzに付加的な共振が顕著に見られる。この付加的な共振は、実際の回路において認められるこれまで説明されてきていない共振に類似しているが、当然ながら、この寄生共振の正確な周波数は該当の回路に存在するコンポーネントや作用の正確な値に常に依存するものであることが理解されるだろう。
【0050】
[00064] 本発明者は、この共振が、EUV源350の電極でのアーク放電によるコンデンサCの間欠的放電によって生成されるRF信号によるものであることを見出した。このRF信号は、CからRFケーブル370を通ってスイッチング回路320まで伝搬し、スイッチング回路320によってRFケーブル370に与えられる高インピーダンス/開回路のために、スイッチング回路320で反射される。反射した信号はRFケーブル370を通ってコンデンサCに戻り、同軸ケーブル内に定在波を起こす。
【0051】
[00065] 上記の作用にかかわらず、EUV電源は実際に動作可能であり、かつ、実際に動作してきているが、上記現象の存在はエネルギーを無駄にすることを意味している。上記現象を抑制する手段を図8Aに示す。
【0052】
[00066] 図8Aから分かるように、EUV電源300の回路は図6に示す回路に対応しているが、1つの追加の回路網コンポーネントとして、抵抗器RとインダクタLとを含む並列回路を備える。抵抗器Rは、RFケーブル370を、その特性インピーダンスである50Ωで終端処理することにより、並列R/L回路網と組み合わせた場合のRFケーブル370から見たコンデンサバンク340の入力インピーダンスを50Ωとする。スイッチング回路320によって反射されるいずれのRF信号もこの終端で消散するので、定在波に寄与することがない。それでも、高電圧供給源310/スイッチング回路320によりコンデンサCを充電することができるが、これは、インダクタLがこの目的のための直流経路を提供するからである。
【0053】
[00067] 並列回路網R/Lの存在は、DPP EUV源350の電極におけるCのアーク放電によって生成される上述のRF信号がスイッチング回路320に向けて伝搬しないようにするものではない。スイッチング回路320で反射された後、R/L回路網に戻るように伝搬する信号が、この回路網において減衰する。この地点で、すなわち、RFケーブルの長さによって生じる伝搬遅延2回分の後、EUV源350でのアーク放電により作り出されたRF信号が有し得る影響が取り除かれる。
【0054】
[00068] 上記から、代替的構成において、並列R/L回路網をRFケーブル370の上流端部、つまり、スイッチング回路320とRFケーブル370のインターフェースに配置できることが理解されるだろう。この場合、Cから高電圧電源に戻るように伝搬するRF信号は、RFケーブル370の単一長さによって導入される伝搬遅延に相当する伝搬遅延により生じる時間推移の後、Rで消散するだろう。あるいは、2つの並列R/L回路網を、RFケーブル370の各端部に1つずつ使用することもできる。
【0055】
[00069] 図8Bは、図8Aに記載の実施形態をより概略的に示したものである。図8Bから分かるように、図8Aに示されるインダクタLと抵抗器Rとを備えるRF終端360は、DPP EUV源350およびコンデンサバンク340を取り囲むキャビネット内に位置している。こうすることで、キャビネットによるRFシールドと同軸ケーブル370のシールドとが連続する。
【0056】
[00070] 図9Aおよび図9Bは、図8Aの等価回路に基づくシミュレーション結果を示す。図9Aおよび図9Bから分かるように、図7bにおいて存在した1.5MHzの共振と、図7aに示されるリンギングとが、並列R/L回路の導入により取り除かれた。このシミュレーション結果の正確性を確かめるため、実際の電源の対応する位置にR/L整合回路を導入し、そのように変更した電源の周波数挙動を調べた。その結果、従来認められた望ましくない共振が、シミュレーションで予想されたとおり、整合回路の存在によって抑制されることが確認された。
【0057】
[00071] 本実施形態において取り除かれた寄生共振の存在が、EUV源の動作周波数に上限を課していた。今回、この制限事項の原因が明らかになった。以下、これについて説明する。
【0058】
[00072] 上述のシミュレーションで確認されたとおり、共振は同軸ケーブル上の定在波により作り出された。図10Aのトレース400および図10Bのトレース430は、図6の等価回路を使ってシミュレーションした、RF同軸ケーブル370上のリンギング電流の周波数分布と、そのようなリンギングの経時的電圧分布とを、それぞれ示す。トレース400から分かるように、高い電流強度の共振がケーブル上に多数存在する。さらに、トレース430は、相当の期間にわたって高いリンギング電圧が同軸ケーブル370上に存在していることを示している。スズを燃料材料として使用するEUV源の現状の設計では、EUV生成アーク放電を作り出すために約2.7〜3kVの電圧が必要となる。図10Bから理解されるように、RF同軸ケーブル370上のリンギングと、その結果として生じるDPP EUV源350内の再アーチング(re-arching)によって、上記電圧が周期的に超過される。このような再アーチングはEUV放射をもたらさないため、望ましくない。そのため、本発明がなされる以前には、RF同軸ケーブル上のリンギングがおさまってから初めて、EUV源350内にEUV放射生成アーチングを誘発することが常套手段であった。この常套手段は遅延期間を生じていたが、かかる遅延期間は図8Aに示す回路によって回避し得る。また、図10Bに示されたリンギング期間終了後、コンデンサバンク340に蓄積された電荷は、上記のようなEUV放射生成アーチングをサポートするには不十分である可能性が高く、所望のEUV放射生成アークを生成する前にコンデンサバンク340を再充電する必要によりさらなる遅延が生じていたことも理解されるだろう。このように、シミュレーションにより浮き彫りとなったリンギングが、EUV生成アーチングを作り出すDPP EUV源350の反復周波数に上限を課している。
【0059】
[00073] さらに、図10Bのトレース430から理解されるように、相当量のエネルギーが同軸ケーブル370上のリンギングに関与している。このようなエネルギーは、EUV放射の生成に利用されない(そして無駄になる)だけでなく、上記リンギングによって同軸ケーブルのシールド外部に発せられ得るRF放射が生成され、電磁的安全性の潜在的リスクが生じることになる。
【0060】
[00074] 図10Aおよび図10Bは、図8Aおよび図8Bの実施形態におけるRF同軸ケーブル上を流れる電流も示している。関連するトレースはそれぞれ符号410および440で示されている。図10Bから分かるとおり、リンギングの期間およびリンギング電圧の振幅ともに相当減少しており、したがって、EUV放射生成アーチングを分離する時間の短縮をサポートし、その結果、動作周波数の上昇をサポートする。リンギング電流の振幅の減少は、さらに、同軸ケーブルからの電磁放射が減少し、リンギング現象において無駄になる電力が少なくなることも意味する。
【0061】
[00075] 図11はさらに別の実施形態を示す。本実施形態は図8Aおよび図8Bに示される実施形態に対応するが、RFケーブル370のシールドとDPP EUV源350の第2の電極(図8Aおよび図8Bの実施形態ではRF同軸ケーブル370のシールドを通して接地電位に接続されていた)の間に接続される第2のRF終端回路380を含む。本実施形態において、このRF終端回路380は、RF終端回路360と同様の構成で、同様のコンポーネントを備える。同軸ケーブル370の芯線に接続されたDPP EUV源350の電極における電圧上昇は、結果として上記第2の電極における電圧上昇をもたらす。したがって、第2のRF終端回路380が存在することにより、DPP EUV源350の電気的平衡の向上が図られる。
【0062】
[00076] 図12は、さらに別の改良であって、同軸ケーブル370の下流端部に平衡不平衡変成器390(バラン(BALUN))またはコモンモードチョークを使用したものを示す。バランは、接地に対して不平衡である同軸ケーブル370上の信号を、接地に対して平衡であるDPP EUV源350内の信号に変換する。バラン390は、同軸ケーブル370の芯線とシールドに接続された分岐それぞれに(等しいが反対の)差動電流を通す。RF終端360および380の両方とともにバラン390を使用することは必須ではないことが理解されるだろう。RF終端370は省略してもよい。RF終端がRF同軸ケーブル370の芯線とスイッチング回路320との間、または、スイッチング回路320の一部として接続されると、RF同軸ケーブル370のコンデンサバンク340側のRF終端は不要となり得る。図10Aおよび図10Bのトレース420およびトレース450は、図11および図12に示されるような回路を使用した場合に達成可能なリンギング挙動を示している。シミュレーションによれば、図4Aの回路が同軸ケーブルに最大700Aの電流をもたらし得るのに対し、図12の実施形態の同軸ケーブル上の電流は900mAという低い値になり得ることが示された。
【0063】
[00077] 全ての実施形態において、リンギングが大幅に減少し、コンデンサバンク340の高電圧供給源310/320からのRF分離を効果的に行えることが図10Aおよび図10Bから理解されるだろう。その結果、一実施形態ではスイッチング回路310を省略することができるため、インダクタLを通じたコンデンサバンク340の連続的直流充電のため、電源310がRFケーブルに直接接続される。このことが、DPP EUV源350内でのEUV生成アーチング事象間の期間をさらに短縮し、DPP EUV源350の動作周波数を上昇させ、その結果、DPP EUV源350から出力可能な総EUV放射エネルギーを増加させるさらなる可能性を提供する。スイッチング回路320を除いた実施形態を図13に示す。同図ではスイッチング回路320が短絡したものとして概略的に示されている。当然ながら、実際には、スイッチング回路320は単に省略される。この結果、本実施形態では電源が簡略化されている。
【0064】
[00078] 図14に示す実施形態では、前述の実施形態で用いられた不平衡高電圧供給源310の代わりに平衡電源装置400が用いられている。この平衡型電源装置400が与える電圧は接地に対して等しく、かつ、反対の電圧である。電源装置400からの反対極性の出力をDPP EUV源350のキャビネットに接続するために、2つのRF同軸ケーブル370および410が用いられる。同軸ケーブル370および410のシールドは接地される。2つの同軸ケーブル370および410の芯線はバラン390を介して接続され、バラン390は2つのRF終端360および380に接続される。別の実施形態においては、RF同軸ケーブル370および410の出力側で受け取る電圧の平衡状態を考慮してバラン390を省略してもよい。さらに、代替的または付加的に、同軸ケーブル370および/または410の入力端部にRF終端を設けることも可能であることが理解されるだろう。図13に示すように、本実施形態においてはスイッチング回路を使用しないが、電源装置400によって提供される電圧の一方または両方をスイッチングするように変更されたスイッチング回路を使用することも可能である。平衡型電源装置の使用は、DPP EUV源350内で使用される最大電圧を、不平衡型電源を使用した場合に生じうる電圧より低く維持することができるというさらなる利点を有する一方、DPP EUV源350の電極間の電圧差が所望のアーチングを達成するために十分な大きさとなることも保証する。より低い最大電圧は安全性の理由から望ましく、DPP EUV源350内の電荷運搬導体を接地から分離する距離の短縮を容易にし得る。
【0065】
[00079] DPP EUV源350でのアーチングの間、DPP EUV源350の電極におけるdV/dtが確実に平衡状態になるようにすることにより、電極間に仮想接地が作られる。このことは、(回転)フォイルトラップ230に向かう電位がゼロボルトに近い値まで減少するため、有益である。さらに、EUV源350の個々の電極に接続されるすべての回路のdV/dtから生じる、高電圧キャビネット内部の等価ノイズ源の合計もゼロに近くなるだろう。
【0066】
[00080] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0067】
[00081] 「EUV放射」という用語は、5〜20nmの範囲内、例えば、13〜14nmの範囲内、あるいは、6.7nmまたは6.8nmといった5〜10nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するものとみなしてよい。
【0068】
[00082] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8A
図8B
図9a
図9b
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14