(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の型と第2の型の凸部で赤外線センサ用の光学フィルタを挟む準備工程と、前記第1の型と前記第2の型の間を第1部材で充填する充填工程と、を備える赤外線センサ用フィルタ部材の製造工程と、
赤外線センサ素子を備える赤外線センサ部材を形成する赤外線センサ部材形成工程と、
前記赤外線センサ用フィルタ部材と前記赤外線センサ部材とを接続部材で接続する接続工程と、を備え、
前記接続工程では、
前記赤外線センサ用フィルタ部材に形成された凹部で前記赤外線センサ素子の受光面を覆うように、前記赤外線センサ用フィルタ部材を前記赤外線センサ部材に接続し、
前記準備工程は、
前記第1の型上に粘着シートを配置する工程と、
前記光学フィルタを前記粘着シートの粘着面に貼付する工程と、
前記光学フィルタの前記粘着シートに貼付されていない面側にフッ素樹脂製シートを介して前記第2の型を配置する工程と、を備え、
前記充填工程は、
前記第1の型と前記第2の型とに挟まれた空間であって、前記フッ素樹脂製シートと前記粘着シートとの間に前記第1部材を充填する工程と、
前記フッ素樹脂製シートと前記粘着シートを取り除く工程と、を備える赤外線センサの製造方法。
第1の型と第2の型で赤外線センサ用の光学フィルタを挟む準備工程と、前記第1の型と前記第2の型の間をモールド部材で充填する充填工程と、前記第1の型と前記第2の型を取り外して得られる部材に第1部材を固定して、前記光学フィルタの一方の面を底面の少なくとも一部とし、前記第1部材を側壁とする凹部を形成する凹部形成工程と、を備える赤外線センサ用フィルタ部材の製造工程と、
赤外線センサ素子を備える赤外線センサ部材を形成する赤外線センサ部材形成工程と、
前記赤外線センサ用フィルタ部材と前記赤外線センサ部材とを接続部材で接続する接続工程と、を備え、
前記接続工程では、
前記赤外線センサ用フィルタ部材に形成された前記凹部で前記赤外線センサ素子の受光面を覆うように、前記赤外線センサ用フィルタ部材を前記赤外線センサ部材に接続し、
前記準備工程は、
前記第1の型上に粘着シートを配置する工程と、
前記光学フィルタを前記粘着シートの粘着面に貼付する工程と、
前記光学フィルタの前記粘着シートに貼付されていない面側にフッ素樹脂製シートを介して前記第2の型を配置する工程と、を備え、
前記充填工程は、
前記第1の型と前記第2の型とに挟まれた空間であって、前記フッ素樹脂製シートと前記粘着シートとの間に前記モールド部材を充填する工程と、
前記フッ素樹脂製シートと前記粘着シートを取り除く工程と、を備える赤外線センサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合もある。
【0015】
≪第1実施形態≫
<構成>
(赤外線センサの構成)
図1(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態に係る赤外線センサ100の構成例を示す図である。詳しくは、
図1(a)は平面図であり、
図1(b)はA1−A´1断面図(即ち、X−Z平面に平行な断面図)であり、
図1(c)は背面図であり、
図1(d)はB1−B´1断面図(即ち、Y−Z平面に平行な断面図)である。赤外線センサ100は、IR(即ち、赤外線)を受光するセンサ装置であり、受光した赤外線を電気信号に変換し、変換した電気信号を出力する装置である。
図1(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ100は、赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50と、を備える。赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50は、接続部材90を介して接着させている。まず、赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50について説明する。
【0016】
(赤外線センサ用フィルタ部材の構成)
図1(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ用フィルタ部材10は、貫通した開口部h1を有する第2部材31と、第2部材31の開口部h1内に配置された赤外線センサ用の光学フィルタ33と、第2部材31と光学フィルタ33の側面を覆う第1部材35と、を有する。この例では、光学フィルタ33の光入射面(他方の面)33aと、光入射面33aの反対側の光出射面(一方の面)33b及び、第2部材31の一部が第1部材35からそれぞれ露出している。また、赤外線センサ用フィルタ部材10には、光学フィルタ33の光出射面33bと第1部材35で形成される凹部36が設けられている。凹部36の底面の少なくとも一部は光学フィルタ33の光出射面33bで形成され、凹部の側壁は第1部材35で形成される。
【0017】
視野角内の赤外線量を精度よく定量するという観点から、第2部材31は、放射率が小さい部材であることが好ましく、例えば、放射率が0.3以下の部材であることが好ましい。放射率は、ある物体が熱放射で放出する光のエネルギーを、その物体と同温の黒体が放出する光のエネルギーを1としたときの比で表される。放射率は、0以上、1以下の値である。放射率が小さい部材としては例えば、金属が挙げられ、具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどが挙げられる。以下、第2部材31に銅製のリードフレームを用いた場合を例に説明する。尚、第2部材31が放射率の小さい部材であると、視野角内の赤外線量を精度よく定量することが可能になる理由については後述する。
図2(a)及び(b)はリードフレーム(第2部材)31の構成例を示す図である。詳しくは、
図2(a)はリードフレーム31の表面31a側を示す平面図であり、
図2(b)はリードフレーム31の裏面31b側を示す底面図である。リードフレーム31は、フォトリソグラフィ技術により、その表面31a及び裏面31bの側からそれぞれ選択的にエッチングすることにより形成したものである。
【0018】
図2(a)及び(b)に示すように、リードフレーム31は、表面31a及び裏面31bの両側からそれぞれエッチングすることにより形成した、開口部h1を含む貫通領域を有する。また、リードフレーム31は、その表面31aにハーフエッチングされた領域(即ち、ハーフエッチング領域)とエッチングされていない領域(即ち、非エッチング領域)とを有し、その裏面31bに非エッチング領域を有する。裏面31bにハーフエッチング領域はない。ハーフエッチング領域は第1部材35で覆われる領域であり、非エッチング領域は第1部材35から露出する領域である。リードフレーム31の両面ともエッチングされていない部分の厚さは、例えば0.2mmである。
【0019】
図1(a)〜(d)に戻って、光学フィルタ33は、所望の波長範囲の光を選択的に(即ち、透過率高く)透過させる機能を有するものである。光学フィルタ33は、例えば赤外線のみを透過する機能を有する。光学フィルタ33を構成する光学部材の材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO
2)、サファイヤ(Al
2O
3)、Ge、ZnS、ZnSe、CaF
2、BaF
2など、予め設定した(即ち、所定の)波長範囲の赤外線が透過する材料が用いられる。また、これら光学部材に蒸着される薄膜材料としては、シリコン(Si)、硝子(SiO
2)、サファイヤ(Al
2O
3)、Ge、ZnS、TiO
2、MgF
2、SiO
2、ZrO
2、Ta
2O
5などが用いられる。また、光学部材上に異なる屈折率を有する誘電体を層状に積層した誘電体多層膜フィルタは、表面、裏面異なる所定の厚み構成で両面に作られていてもよいし、また、片面のみに形成されていてもよい。また、不要な反射を防止する目的で反射防止膜が表面、裏面の両面、又は片面の最表層に形成されていても構わない。
【0020】
第1部材35は、リフロー時の高熱に耐えられる部材であることが好ましい。また、視野角内の赤外線量を精度よく定量するという観点から、第1部材35は、放射率が大きい部材であることが好ましい。例えば、放射率が0.7以上の部材であることが好ましい。放射率が大きく、また、リフロー時の高熱に耐えられる部材としては、例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。赤外線センサ用フィルタ部材10のパッケージ形状とその大きさは、例えば直方体であり、縦:横:厚さ=1.6mm:3.4mm:0.8mmである。尚、第1部材35が放射率の大きい部材であると、視野角内の赤外線量を精度よく定量することが可能になる理由については後述する。
【0021】
(赤外線センサ部材の構成)
図1(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ部材50は、貫通した開口部h2及びダイパッド42を有する第3部材41と、第3部材41の開口部h2内に配置されたIRセンサ素子43と、ダイパッド42の一方の面側(即ち、表面41a側)に取り付けられた信号処理IC44と、IRセンサ素子43と第3部材41との間や、信号処理IC44と第3部材41との間、及び、IRセンサ素子43と信号処理IC44との間をそれぞれ電気的に接続する金(Au)等からなるワイヤー45と、第3部材41とIRセンサ素子43、信号処理IC44及びワイヤー45を覆うモールド部材46と、を有する。IRセンサ素子43の受光面(即ち、裏面)43bと、第3部材41の一部は、モールド部材46からそれぞれ露出している。例えば、第3部材41の一部は、赤外線センサ部材50の外表面のうち、赤外線センサ用フィルタ部材10が配置される面で露出している。また、第3部材41の一部は、平面視で、赤外線センサ用フィルタ部材10の外側の領域で赤外線センサ部材50の外表面から露出している。また、IRセンサ素子43の表面43a及び側面と、信号処理IC44はモールド部材46で覆われている。
【0022】
視野角内の赤外線量を精度よく定量するという観点から、第3部材41は、放射率が小さい部材であることが好ましい。例えば、放射率が0.3以下の部材であることが好ましい。放射率が小さい部材としては例えば、金属が挙げられ、具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどが挙げられる。以下、第3部材41(ダイパッド42を含む)に銅製のリードフレームを用いた場合を例に説明する。尚、第3部材41の放射率が小さい部材であると、視野角内の赤外線量を精度よく定量することが可能になる理由については後述する。
図3(a)及び(b)はリードフレーム(第3部材)41の構成例を示す図である。詳しくは、
図3(a)はリードフレーム41の表面41a側を示す平面図であり、
図3(b)はリードフレーム41の裏面41b側を示す底面図である。リードフレーム41は、フォトリソグラフィ技術により、その表面41a及び裏面41bの側からそれぞれ選択的にエッチングし、ニッケル(Ni)−パラジウム(Pd)−金(Au)等のめっき(鍍金)処理を施すことにより形成したものである。
【0023】
図3(a)及び(b)に示すように、リードフレーム41は、表面41a及び裏面41bの両側からそれぞれエッチングすることにより形成した、開口部h2を含む貫通領域を有する。また、リードフレーム41は、例えば、表面41aにハーフエッチング領域と非エッチング領域とを有し、裏面41bも同様にハーフエッチング領域と非エッチング領域とを有する。
図3(a)及び(b)の斜線部分がハーフエッチング領域である。なお、ハーフエッチング領域はモールド部材46で覆われる領域であり、非エッチング領域はモールド部材46から露出する領域である。リードフレーム41の両面ともエッチングされていない部分の厚さ(後述するように、赤外線センサ部材の厚さに相当する。)は、例えば0.4mmである。
【0024】
図4(a)及び(b)は、IRセンサ素子43の構成例を示す平面図と、IRセンサ素子43の受光部と赤外線センサ用フィルタ部材との位置関係を模式的に示す断面図である。IRセンサ素子43は、赤外線を検出するセンサ素子である。
図4(a)に示すように、IRセンサ素子43は、赤外線を透過する光透過基板と、この光透過基板の裏面側に形成された受光部144と、を備える。光透過基板としては、GaAs基板が用いられる。また、GaAs基板の他に、例えば、Si、InAs、InP、GaP、Geなどの半導体基板、若しくは、GaN、AlN、サファイヤ基板、ガラス基板などの基板が用いられる。このような基板を光透過基板として用いることにより、赤外線等の特定波長の光を、IRセンサ素子43の裏面43bから表面43a側へ効率的に透過させることができる。
IRセンサ素子43は、入射した赤外線に応じた信号を出力するものである。信号の取り出し方としては電流出力でもよいし、電圧出力であってもよい。
【0025】
IRセンサ素子43には、視野角内の温度の絶対量に応じた信号を出力するものと、視野角内の温度の変化量に応じた信号を出力するものが存在する。前者の例としては量子型赤外線センサ素子などが挙げられ、後者の例としては焦電型赤外線センサ素子などが挙げられる。視野角内の温度の絶対量に応じた信号を出力するIRセンサ素子の方が、視野角内の温度の変化量に応じた信号を出力するIRセンサ素子に比べて、より多くの情報を出力するため、視野角内の温度の絶対量に応じた信号を出力するIRセンサ素子が好適に用いられている。
量子型赤外線センサ素子の具体的な構成としては、PNまたはPIN接合を有する半導体積層部を有するものが挙げられる。PNまたはPIN接合を有する半導体積層部の具体例としては、インジウムおよびアンチモンを含む化合物半導体層を用いるものなどが挙げられる。冷却機構なく室温動作可能なものとする観点から、半導体積層部の一部にバンドギャップの大きいバリア層を設けることが好ましい。バンドギャップの大きいバリア層の一例としては、AlInSbが挙げられる。
【0026】
また、受光部144は、平面視で例えば上下左右の各位置に分割された、4つの受光領域144a〜144dを有する。
図4(b)に示すように、受光部144は、凹部36の空間を介して光学フィルタ33と対向しており、各受光領域144a〜144dは光学フィルタ33を透過した赤外線を受光することが可能となっている。
なお、
図4(a)に示したように、各受光領域144a〜144dは平面視でそれぞれ位置が異なる。また、
図4(b)に示すように、各受光領域144a〜144dの視野角(即ち、IRが入射可能な視野の範囲)は、凹部36の内側側面36aと光学フィルタ33の側面によってそれぞれ制限されている。
図1(a)〜(d)に戻って、モールド部材46は、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂からなり、リフロー時の高熱に耐えられるようになっている。モールド部材46の外形及びその大きさ、即ち、赤外線センサ部材50のパッケージ形状とその大きさは、例えば直方体であり、縦:横:厚さ=4.0mm:4.0mm:0.4mmである。
【0027】
<製造方法>
赤外線センサ100の製造工程は、赤外線センサ用フィルタ部材10の製造工程と、赤外線センサ部材50の製造工程と、赤外線センサ部材50と赤外線センサ用フィルタ部材10を接続部材で接続する工程と、を有する。赤外線センサ用フィルタ部材10は、凹部36がIRセンサ素子43の受光面を覆うように、赤外線センサ部材50上に接続部材90を介して接続される。接続部材90は接着剤でも粘着剤でもよい。接続部材90の一例としては、例えば絶縁ペースト(一例として、熱硬化性のエポキシ樹脂)が挙げられる。
赤外線センサ用フィルタ部材10の製造工程は、赤外線センサ部材50の製造工程と前後して、又は並行して行う。ここでは、まず、赤外線センサ用フィルタ部材10の製造方法について説明し、次に、赤外線センサ部材50の製造方法について説明し、その後、両部材の接続方法について説明する。
【0028】
(赤外線センサ用フィルタ部材の製造方法)
図5〜
図10は、赤外線センサ用フィルタ部材10の製造方法を工程順に示す断面図である。ここでは、
図2(b)に示したB2−B´2線及びA2−A´2線でリードフレーム(第2部材)31等を切断した断面に沿って、各工程を説明する。
図5(a)及び(b)に示すように、まず始めに、耐熱性の粘着シート51を用意する。次に、この粘着シート51の粘着層にリードフレーム31の表面31aを貼付する。なお、粘着シート51としては、粘着性を有すると共に、耐熱性を有する樹脂製のテープが用いられる。粘着性については、粘着層の糊厚がより薄い方が好ましい。また、耐熱性については、約150℃〜200℃の温度に耐えることが必要とされる。このような粘着シート51として、例えばポリイミドテープを用いていることができる。ポリイミドテープは、約280℃に耐える耐熱性を有している。このような高い耐熱性を有するポリイミドテープは、後のトランスファーモールドや、ワイヤーボンディング時に加わる高熱にも耐えることが可能である。
【0029】
また、粘着シート51としては、ポリイミドテープの他に、以下のテープを用いることも可能である。
・ポリエステルテープ 耐熱温度、約130℃(但し使用条件次第で耐熱温度は約200℃にまで達する)。
・テフロン(登録商標)テープ 耐熱温度:約180℃
・PPS(ポリフェニレンサルファイド) 耐熱温度:約160℃
・ガラスクロス 耐熱温度:約200℃
・ノーメックペーパー 耐熱温度:約150〜200℃
・他に、アラミド、クレープ紙が粘着シート51として利用し得る。
【0030】
次に、
図6(a)及び(b)に示すように、リードフレーム31が有する貫通した開口部h1内に光学フィルタ33を配置して、例えばその表面(即ち、光入射面)33aを粘着シート51の粘着層に貼付する。なお、光学フィルタ33の表面33aや裏面(即ち、光出射面)33bには、予め、図示しない保護膜を貼付してもよい。
次に、
図7(a)及び(b)に示すように、リードフレーム31の表面31a側に下金型57を配置すると共に、リードフレーム31の裏面31b側に上金型55を配置する。そして、上金型55と下金型57とにより光学フィルタ33を挟み込み、上金型55と下金型57とに挟まれた空間(即ち、キャビティ)にサイドから溶融した第1部材を注入し、充填する。第1部材として例えばエポキシ樹脂を用いる。これにより、第1部材35を形成(成型)する。
図7(a)及び(b)に示すように、例えば上金型55の下側(即ち、キャビティ側)の面は断面視で凹凸形状となっており、凸部55aが光学フィルタ33と対向している。この凸部55aによって、
図8(a)及び(b)に示すように、凹部36が形成される。
【0031】
また、この第1部材35の形成工程では、上金型55の凸部55aと光学フィルタ33とがフッ素樹脂製シート58を介して隙間無く接触し、且つ、リードフレーム31の表面31a側の非エッチング領域と下金型57とが粘着シート51を介して隙間無く接触した状態で、エポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、第1部材35の形成後は、リードフレーム31の表面31aの非エッチング領域と、光学フィルタ33の表面33a及び裏面33bが、それぞれモールド部材35から露出した状態となる。リードフレーム31の裏面31bと、及び表面31aのハーフエッチング領域と、光学フィルタ33の側面は第1部材35で覆われている。
【0032】
次に、上金型55及び下金型57をそれぞれ上方向及び下方向に移動させて、
図8(a)及び(b)に示すように、第1部材35が形成されたリードフレーム31を両金型間から取り出す。そして、リードフレーム31の表面31a側から粘着シート51を除去する。粘着シート51の除去後、第1部材35をより硬化させるためのポストキュアと、第1部材35による薄バリを完全に除去するのに必要ならばウェットブラストを施し、さらに、光学フィルタ33の表面33aや裏面33bに図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
【0033】
次に、
図9(a)及び(b)に示すように、第1部材35の裏面側(即ち、凹部36を有する側)にダイシングテープ59に貼付し、ダイシング装置によりダイシングして、
図2(a)及び(b)に示したようなカーフ幅でリードフレーム31及び第1部材35を切断する。これにより、
図10(a)及び(b)に示すように、第1部材35及びリードフレーム31は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、
図1(a)〜(d)に示した赤外線センサ用フィルタ部材10が完成する。
【0034】
(赤外線センサ部材の製造方法)
図11(a)〜(f)は、赤外線センサ部材50の製造方法を工程順に示す断面図である。ここでは、
図3(a)に示したA3−A´3線でリードフレーム(第3部材)41等を切断した断面に沿って、各工程を説明する。
図11(a)に示すように、まず始めに、耐熱性の粘着シート61を用意する。次に、この粘着シート61の粘着層に、上記のようにNi/Pd/Auを外装めっきした銅製リードフレーム41の裏面41bを貼付する。なお、粘着シート61としては、上記の粘着シート51と同様のテープを用いることができる。
【0035】
次に、
図11(b)に示すように、リードフレーム41が有する貫通した開口部h2内にIRセンサ素子43を配置して、IRセンサ素子43の裏面(即ち、受光面)43bを粘着シート61の粘着層に貼付する。また、図示しないが、例えば、銀(Ag)ペーストを用いて、リードフレーム41のダイパッド上に信号処理ICを取り付ける。
次に、
図11(c)に示すように、信号処理ICとリードフレーム41との間、及び、IRセンサ素子43と信号処理ICとの間をそれぞれワイヤー45で電気的に接続する。図で示しているワイヤー45は、図示しないIRセンサ素子43の奥側に配置された信号処理ICとリードフレーム41との間を電気的に接続するワイヤーである。なお、信号処理ICとリードフレーム41との接続は、リードフレーム41の端子部から信号処理ICのパッド電極に向かってワイヤー45を伸ばすこと(つまり、信号処理ICから見て逆ボンディング)によって行うことが好ましい。信号処理ICのパッド電極よりもリードフレーム41の端子部の方が低い位置にあるため、ボンディング後のワイヤー45の高さを低くすることができる。
【0036】
次に、
図11(d)に示すように、リードフレーム41の表面41a側に上金型65を配置すると共に、リードフレーム41の裏面41b側に下金型67を配置する。そして、上金型65と下金型67とによりリードフレーム41を挟み込み、上金型65と下金型67とに挟まれた空間内にサイドから溶融したエポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、モールド部材46を形成(成型)する。なお、モールド部材46の材料としては、上記の第1部材35と同様の材料を用いることができる。
【0037】
次に、上金型65及び下金型67をそれぞれ上方向及び下方向に移動させて、
図11(e)に示すように、モールド部材46が形成されたリードフレーム41を両金型間から取り出す。そして、リードフレーム41の裏面41b側から粘着シート61を除去する。粘着シート61の除去後、モールド部材46をより硬化させるためのポストキュアと、第1部材35による薄バリを完全に除去するのに必要ならばウェットブラストを施す。
その後、モールド部材46及びリードフレーム41を図示しないダイシングテープに貼付し、ダイシング装置によりダイシングして、
図3(a)及び(b)に示したようなカーフ幅でリードフレーム41及びモールド部材46を切断する。これにより、
図11(f)に示すように、モールド部材46及びリードフレーム41は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、
図1(a)〜(d)に示した赤外線センサ部材50が完成する。
【0038】
(両部材の接続方法)
図12(a)〜(c)は、赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50の接続方法を示す工程図である。
図12(a)に示すように、まず、赤外線センサ部材50を用意する。次に、
図12(b)に示すように、赤外線センサ部材50の裏面側に接続部材である絶縁ペースト90を塗布する。絶縁ペースト90を塗布する領域は光学フィルタ33以外の領域であればよい。例えば、リードフレーム41のダイパッド42の裏面42b側(即ち、信号処理ICを取り付ける面42aの反対側)に絶縁ペースト90を塗布する。上述したように、絶縁ペースト90は例えば熱硬化性のエポキシ樹脂であり、その塗布はディスペンサ又はスタンプを用いて行う。そして、
図12(c)に示すように、絶縁ペースト90が塗布された赤外線センサ部材50の裏面側に、赤外線センサ用フィルタ部材10の裏面側を接触させ、例えば熱処理を施して絶縁ペースト90を硬化させる。このように赤外線センサ用フィルタ部材10を赤外線センサ部材50に取り付けて、
図1(a)〜(d)に示した赤外線センサ100が完成する。
<変形例>
図12(a)〜(c)は赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50を1対1で載せる工程図であるが、
図11(e)に記載の赤外線センサ部材50が連なった部材を、赤外センサ用フィルタ部材10が連なった部材に接続し、
図11(f)に示すように、個々に切り離して、赤外線センサ100を完成させてもよい。
【0039】
<第1実施形態の効果>
本発明の第1実施形態は、以下の効果を奏する。
(1)IRセンサ素子43の受光面43bと対向する光学フィルタ33の光出射面33bは、赤外線センサ用フィルタ部材10の凹部36の底面に位置する。このため、赤外線センサ用フィルタ部材10を赤外線センサ部材50に絶縁ペースト90で取り付ける場合でも、赤外線センサ用フィルタ部材10の被接着領域(即ち、絶縁ペースト90と接する領域)11と光出射面33bは断面視で同一平面上になく、被接着領域11に対して光出射面33bは凹んだ位置にある。従って、光学フィルタ33の光出射面33bが接着剤で汚染されることを防ぐことができる。
【0040】
(2)また、凹部36の内側側面36aは、凹部36の底面(即ち、光学フィルタ33の裏面33b側)から開口面に向かって該凹部36の径が徐々に大きくなるように、底面に対して傾斜している。即ち、凹部36の内側側面36aは、凹部36の開口面の面積が凹部36の底面の面積よりも大きくなるように、底面に対して傾斜している。これにより、凹部の内側側面が底面に対して垂直な場合と比べて、光学フィルタ33の光出射面33bからの赤外線が反射してIRセンサ素子受光面43bに入るのを防ぐことができる。
【0041】
(3)また、受光部144は、平面視で例えば上下左右の各位置に分割された4つの受光領域144a〜144dを有する。これら受光領域144a〜144dの視野角は、凹部36の内側側面と光学フィルタ33の側面によってそれぞれ制限されている。これにより、各受光領域144a〜144dにおいて、一方の受光領域の視野角を、他方の受光領域の視野角と一部が重ならないようにすることができる。
【0042】
例えば、平面視で上側に位置する受光領域144aは、そこからさらに上側の視野が凹部36の内側側面36aで制限される。このため、受光領域144aは、該受光領域144aから見て斜め上側から入射するIRを受光することはできるが、その受光可能な角度の範囲は、該受光領域144aから見て斜め下側から入射するIRよりも制限される。同様に、平面視で左側に配置された受光領域144bは、そこからさらに左側の視野が凹部36の内側側面36aで制限される。このため、受光領域144bは、該受光領域144bから見て斜め左側から入射するIRを受光することはできるが、その受光可能な角度の範囲は、該受光領域144bから見て斜め右側から入射するIRよりも制限される。以下、受光領域144c、144dについても同様である。
【0043】
(4)また、赤外線センサ用フィルタ部材10は、ダイパッド42の裏面42b側に絶縁ペースト90で固定されている。これにより、赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50の接着面積を広く確保することが容易となる。
(5)また、赤外線センサ用フィルタ部材10の被接着領域11は凹部となっている。即ち、赤外線センサ用フィルタ部材10の被接着領域11は、赤外線センサ用フィルタ部材10のうちの赤外線センサ部材50と接する他の面よりも断面視で若干凹んでいる。この被接着領域11の凹部の深さは、絶縁ペースト90の塗布厚を考慮した深さ(例えば、塗布厚と同じ深さ、若しくは塗布厚よりも若干浅い深さ)となっている。これにより、赤外線センサ用フィルタ部材10を赤外線センサ部材50に取り付ける際に、被接着領域11の凹部に絶縁ペースト90を留めることができ、絶縁ペースト90が被接着領域11の外側へはみ出さないようにすることができる。従って、光学フィルタ33が絶縁ペースト90で汚染されることをさらに防ぐことができる。
【0044】
(6)また、光学フィルタ33を配置するための開口部h1はリードフレーム31に形成されており、IRセンサ素子43を配置するための開口部h2はリードフレーム41に形成されている。従って、例えば、1枚のリードフレームに、光学フィルタとIRセンサ素子の両方を配置可能な深い開口部を形成する必要はない。開口部h1、h2の深さをそれぞれ小さくすることができ、深さに応じてその開口幅もそれぞれ小さくすることができる。これにより、赤外線センサの小型化が可能となる。また、赤外線センサ部材と赤外線センサ用フィルタ部材に金属製のリードフレームを用いているので、強度が高いという効果を有する。
【0045】
(7)また、上金型55と下金型57とを用いて(即ち、トランスファーモールド技術を用いて)第1部材35を形成する。トランスファーモールド技術を使うことにより、第1部材35を予め設定した形状、大きさに精度良く形成することができる。また、粘着シート51とフッ素樹脂製シート58とを用いることにより、光学フィルタ33の光入射面33aと光出射面33bにエポキシ樹脂等が付着することを防ぐことができる。
【0046】
<変形例>
(1)上記の第1実施形態では、赤外線センサ用フィルタ部材10を赤外線センサ部材50に取り付ける接続部材として、絶縁ペースト90を用いる場合について説明した。しかしながら、この接着剤は絶縁ペースト90ではなく、導電ペースト(例えば、銀(Ag)ペースト)でもよい。このような場合であっても、赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50の裏面同士を接着することができる。
【0047】
(2)また、赤外線センサ100は、その内部から外部に至る貫通した開口部又は溝部を有していても良い。
図13(a)及び(b)は、赤外線センサ用フィルタ部材10の変形例を示す平面図と斜視図である。例えば
図13(a)及び(b)に示すように、赤外線センサ用フィルタ部材10の裏面10b側には、被接着領域11及び凹部36から、赤外線センサ用フィルタ部材10の外部(ダイシング前であればカーフ幅)へ至る溝部12が設けられていても良い。このような構成であれば、被接着領域11及び凹部36にエアが残留している場合でも、この残留エアの少なくとも一部を溝部12を通して外部へ逃がすことができる。これにより、残留エアが熱膨張することにより生じる力、例えば、残留エアが熱膨張して赤外線センサ用フィルタ部材10を赤外線センサ部材50から引き離そうとする力を低減することができる。
なお、上記の溝部12は、例えば
図7(a)及び(b)に示した上金型55に溝部12の形状及び大きさに対応した凸部を設けておくことにより形成することができる。トランスファーモールド技術を用いることにより、第1部材35と溝部12を同時に形成することができるため、溝部12を形成するための専用工程は不要である。また、凹部形状は、円錐であっても角錐形状であってもよい。
【0048】
≪第2実施形態≫
上記の第1実施形態では、赤外線センサ部材50が有するリードフレーム41のダイパッド42の裏面42b側を赤外線センサ用フィルタ部材10が覆う場合について説明した。しかしながら、本発明の第2実施形態において、ダイパッド42の裏面42b側はその一部又は全部が赤外線センサ用フィルタ部材10下から露出していてもよい。
即ち、第3部材41の少なくとも一部は、平面視で、赤外線センサ用フィルタ部材210の外側の領域で赤外線センサ部材50の外表面から露出している。また、本発明の第2実施形態において、第2部材231の少なくとも一部は、平面視で、光学フィルタ33の光入射面33aを取り囲むように赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面から露出している。また、本発明の第2実施形態において、第2部材231の少なくとも一部は、赤外線センサ用フィルタ部材210の外側側面から露出している。第2実施形態では、このような態様について説明する。
【0049】
<構成>
図14(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態に係る赤外線センサ200の構成例を示す図である。詳しくは、
図14(a)は平面図であり、
図14(b)はA14−A´14断面図(即ち、X−Z平面に平行な断面図)であり、
図14(c)は背面図であり、
図14(d)はB14−B´14断面図(即ち、Y−Z平面に平行な断面図)である。
図14(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ200は、赤外線センサ用フィルタ部材210と赤外線センサ部材50と、を備える。赤外線センサ用フィルタ部材210と赤外線センサ部材50は、例えば絶縁ペースト90を介して、その裏面を互いに接着させている。
【0050】
図14(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ用フィルタ部材210は、貫通した開口部h1を有する第2部材231と、第2部材231の開口部h1内に配置された光学フィルタ33と、第2部材231と光学フィルタ33の側面を覆って封止する第1部材235と、を有する。この例では、光学フィルタ33の光入射面33aと光出射面33b及び、第2部材231の一部が第1部材235からそれぞれ露出している。
具体的には、第2部材231の少なくとも一部は、平面視で、光学フィルタ33の光入射面33aを取り囲むように赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面から露出している。また、第2部材231の少なくとも一部は、赤外線センサ用フィルタ部材210の外側側面から露出している。また、赤外線センサ用フィルタ部材210には、光学フィルタ33の光出射面33bと第1部材235で形成される凹部36が設けられている。凹部36の底面の少なくとも一部は光学フィルタ33の光出射面33bで形成され、凹部36の側壁は第1部材235で形成される。また、図示しないが、赤外線センサ用フィルタ部材10と同様に、赤外線センサ用フィルタ部材210の被接着領域にも凹部が設けられており、この凹部に絶縁ペースト90を留めることができるようになっている。尚、スタンプ法等で、絶縁ペースト量をコントロール可能な塗布法ならば被接着領域に凹部は設けなくてもよい
【0051】
視野角内の赤外線量を精度よく定量するという観点から、第2部材231は、放射率が小さい部材であることが好ましく、例えば、放射率が0.3以下の部材であることが好ましい。放射率が小さい部材としては例えば、金属が挙げられ、具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどが挙げられる。以下、第2部材231に銅製のリードフレームを用いた場合を例に説明する。尚、第2部材231を放射率が小さい部材にすると、赤外線量を精度よく定量することが可能になる理由については後述する。
図15(a)及び(b)はリードフレーム(第2部材)231の構成例を示す図である。詳しくは、
図15(a)はリードフレーム231の表面231a側を示す平面図であり、
図15(b)はリードフレーム231の裏面231b側を示す底面図である。リードフレーム231は、フォトリソグラフィ技術により、その表面231a及び裏面231bの側からそれぞれ選択的にエッチングすることにより形成したものである。
【0052】
図15(a)及び(b)に示すように、リードフレーム231は、表面231a及び裏面231bの両側からそれぞれエッチングすることにより形成した、開口部h1を含む貫通領域を有する。また、リードフレーム231は、その表面231aにハーフエッチング領域と非エッチング領域とを有し、その裏面231bに非エッチング領域を有する。裏面231bにハーフエッチング領域はない。リードフレーム231の両面ともエッチングされていない部分の厚さは、例えば0.2mmである。
図14(a)〜(d)に戻って、第1部材235は、リフロー時の高熱に耐えられる部材であることが好ましい。また、赤外線量を精度よく定量するという観点から、第1部材235は、放射率が大きい部材であることが好ましく、例えば、放射率が0.7以上の部材であることが好ましい。放射率が大きく、また、リフロー時の高熱に耐えられる部材としては例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。赤外線センサ用フィルタ部材210のパッケージ形状とその大きさは、例えば直方体であり、縦:横:厚さ=1.6mm:1.6mm:0.8mmである。
【0053】
<製造方法>
赤外線センサ200の製造方法は、赤外線センサ用フィルタ部材210の製造工程と、赤外線センサ部材50の製造工程と、赤外線センサ用フィルタ部材210と赤外線センサ部材50の接続工程と、を有する。赤外線センサ用フィルタ部材210の製造工程は、第1実施形態で説明した赤外線センサ用フィルタ部材10の製造工程と同様である。以下、具体的に説明する。
図16(a)〜(f)は、赤外線センサ用フィルタ部材210の製造方法を工程順に示す断面図である。ここでは、
図15(b)に示したA15−A´15線でリードフレーム231等を切断した断面に沿って、各工程を説明する。
図16(a)に示すように、まず始めに、耐熱性の粘着シート51を用意し、この粘着シート51の粘着層にリードフレーム231の表面231aを貼付する。次に、
図16(b)に示すように、リードフレーム231が有する貫通した開口部h1内に光学フィルタ33を配置して、例えばその表面(即ち、光入射面)33aを粘着シート51の粘着層に貼付する。第1実施形態と同様、光学フィルタ33の表面(即ち、光入射面)33aや裏面(即ち、光出射面)33bには、予め、図示しない保護膜を貼付してもよい。
【0054】
次に、
図16(c)に示すように、リードフレーム231の表面231a側に上金型255を配置すると共に、リードフレーム231の裏面231b側に下金型257を配置する。そして、上金型255と下金型257とにより光学フィルタ33を挟み込み、上金型255と下金型257とに挟まれた空間にサイドから溶融した第1部材を注入し、充填する。第1部材としてエポキシ樹脂等を用いる。これにより、第1部材235を形成(成型)する。
図16(c)に示すように、例えば上金型255の下側の面は断面視で凹凸形状となっており、凸部255aが光学フィルタ33と対向している。この凸部255aによって、
図16(d)に示すように、第1部材235に凹部236が形成される。
【0055】
第1部材235の形成工程では、上金型255の凸部255aと光学フィルタ33とがフッ素樹脂製シート58を介して隙間無く接触し、且つ、リードフレーム231の表面231a側の非エッチング領域と下金型257とが粘着シート51を介して隙間無く接触した状態で、エポキシ樹脂等を注入し、充填する。
次に、第1部材235が形成されたリードフレーム231を、上金型255及び下金型257間から取り出す。そして、リードフレーム231の表面231a側から粘着シート51を除去する。粘着シート51の除去後、必要に応じてポストキュアとウェットブラストを施し、さらに、光学フィルタ33の表面33aや裏面33bに図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。
【0056】
次に、
図16(e)に示すように、第1部材235の裏面側にダイシングテープ59に貼付し、ダイシング装置によりダイシングして、
図15(a)及び(b)に示したようなカーフ幅でリードフレーム231及び第1部材235を切断する。これにより、
図16(f)に示すように、第1部材235及びリードフレーム231は個々の製品に切り離されてパッケージ化され、
図14(a)〜(d)に示した赤外線センサ用フィルタ部材210が完成する。リードフレーム(第2部材)231の少なくとも一部は、平面視で、光学フィルタ33の光入射面33aを取り囲むように赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面から露出している。また、リードフレーム(第2部材)231の少なくとも一部は、赤外線センサ用フィルタ部材210の外側側面から露出している。
【0057】
赤外線センサ用フィルタ部材210と赤外線センサ部材50の接続工程も、第1実施形態で説明した赤外線センサ用フィルタ部材10と赤外線センサ部材50の接続工程と同様である。例えば、赤外線センサ部材50の裏面側に絶縁ペースト90を塗布する。絶縁ペースト90を塗布する領域は光学フィルタ33以外の領域であればよい。次に、絶縁ペースト90が塗布された赤外線センサ部材50の裏面側に、赤外線センサ用フィルタ部材10の裏面側を接触させ、例えば熱処理を施して絶縁ペースト90を硬化させる。このように赤外線センサ用フィルタ部材210を赤外線センサ部材50に取り付けて、
図14(a)〜(d)に示した赤外線センサ200が完成する。
【0058】
<第2実施形態の効果>
本発明の第2実施形態は、第1実施形態の効果(1)〜(7)と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態では、第2部材231の放射率が小さく、また、第2部材231の少なくとも一部が赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面から露出しているので、赤外線量を精度よく定量することが可能となる。以下、その理由について説明する。
赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面から放射率の小さい第2部材231が露出している。このため、測定対象物から赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面に向けて出力された赤外線は吸収されずに反射される。これにより、赤外線センサ用フィルタ部材210の温度変化が抑制される。量子型赤外線センサ素子は、外部から入力される赤外線エネルギーと、量子型赤外線センサ素子自身が出力する赤外線エネルギーの差分に応じた信号を出力するものである。この外部から入力される赤外線エネルギーの発生源は、光学フィルタの外側である外部視野と赤外線センサ用フィルタ部材の凹部の内壁(内部視野)となる。上述のとおり、赤外線センサ用フィルタ部材の温度変化が抑制されるので、内部視野から入力される赤外線量の変動が小さくなる。
【0059】
以上の理由により、赤外線センサ用フィルタ部材210の外表面から放射率の小さい第2部材231が露出していると、赤外線量を高精度に定量することが可能となる。一般に、光学フィルタ周辺が最も赤外線の照射量が大きくなるため、放射率の小さい第2部材231が、平面視で、光学フィルタの光入射面を取り囲むように赤外線センサ用フィルタ部材の外表面から露出していることが好ましい。また、放射率の小さい第2部材は、赤外線センサ用フィルタ部材の外側側面から露出していてもよい。第2部材231は、放射率が0.3以下の部材であることが好ましい。放射率が小さい部材としては例えば、金属が挙げられ、具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどが挙げられる。
また、第2実施形態では、第3部材41の放射率が小さく、また、第3部材41の少なくとも一部は、平面視で、赤外線センサ用フィルタ部材210の外側の領域で赤外線センサ部材50の外表面から露出している。このため赤外線量を精度よく定量することが可能となる。以下その理由について説明する。
【0060】
第2実施形態では、第3部材41の少なくとも一部は、平面視で、赤外線センサ用フィルタ部材210の外側の領域で赤外線センサ部材50の外表面から露出している。このため、測定対象物から赤外線センサ部材50の外表面に向けて出力された赤外線は吸収されずに反射される。これにより、赤外線センサ部材50の温度変化が抑制され、量子型赤外線センサ素子の温度変化が抑制される。上述の通り、量子型赤外線センサ素子は、外部から入力される赤外線エネルギーと、量子型赤外線センサ素子自身が出力する赤外線エネルギーの差分に応じた信号を出力する。量子型赤外線センサ素子の温度変化が抑制されることで、量子型赤外線センサ素子自身が出力する赤外線エネルギーの温度変化が抑制されるため、赤外線量を精度よく定量することが可能となる。
第3部材41は、放射率が0.3以下の部材であることが好ましい。放射率が小さい部材としては例えば、金属が挙げられ、具体的には、銅、銀、金、白金、ニッケル、パラジウムなどが挙げられる。
【0061】
また、第2実施形態では、凹部36の内壁を形成する第1部材235の放射率が大きいので、予め定めた視野角の外から入力される赤外線エネルギーは凹部36の内壁で吸収される。これにより、視野角内の赤外線量を精度よく定量することが可能となる。第1部材235は、放射率が0.7以上の部材であることが好ましい。放射率が大きい部材としては例えば、エポキシ系の熱硬化型樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマーなどが挙げられる。
ところで、赤外線センサ用フィルタ部材の凹部に入射した赤外線が凹部内部で乱反射すると、赤外線センサ素子に入力する赤外線の量にばらつきが発生し、検出量にばらつきが生じる。第2実施形態では、赤外線センサ素子の受光面が赤外線センサ部材から露出しており、赤外線センサ素子の受光面は、赤外線センサ部材の外表面のうち、赤外線センサ素子の受光面が露出している面において、放射率が0.7以上の部材に取り囲まれている。これにより、凹部内部での乱反射を吸収することが可能となる。
<変形例>
本発明の第2実施形態に、第1実施形態で説明した変形例(1)、(2)を適用してよい。
第2実施形態での第2部材に銅製のリードフレームを用いた場合を例にしたが、赤外線センサ部材の製造方法と同様、Ni/Pd/Auを外装めっきしたリードフレーム241としてもよい。この場合、リードフレームの酸化等の経時変化を防ぐ効果がある。
【0062】
≪第3実施形態≫
上記の第1、第2実施形態では、赤外線センサ用フィルタ部材の凹部の側壁を構成する第1部材がエポキシ系の熱硬化型樹脂であり、放射率が高い部材の例を中心に説明した。第3実施形態では、凹部の側壁を構成する第1部材が放射率0.3以下の部材で、金属部材である例を中心に説明する。
<構成>
図17(a)〜(d)は、本発明の第3実施形態に係る赤外線センサ300の構成例を示す図である。詳しくは、
図17(a)は平面図であり、
図17(b)はA17−A´17断面図(即ち、X−Z平面に平行な断面図)であり、
図17(c)は背面図であり、
図17(d)はB17−B´17断面図(即ち、Y−Z平面に平行な断面図)である。
図17(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ300は、赤外線センサ用フィルタ部材310と赤外線センサ部材50と、を備える。赤外線センサ用フィルタ部材310と赤外線センサ部材50は、例えば絶縁ペースト90を介して、その裏面を互いに接着させている。
【0063】
図17(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ用フィルタ部材310は、貫通した開口部h1を有するリードフレーム330と、リードフレーム330の開口部h1内に配置された光学フィルタ33と、リードフレーム330と光学フィルタ33の側面を覆ってモールドするモールド部材340と、を有する。この例では、光学フィルタ33の光入射面33aと光出射面33b及び、リードフレーム330の一部がモールド部材340からそれぞれ露出している。
【0064】
モールド部材340の外形及びその大きさ、即ち、赤外線センサ用フィルタ部材310のパッケージ形状とその大きさは、例えば直方体であり、縦:横:厚さ=1.6mm:1.6mm:0.8mmである。
リードフレーム330は、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを有する。
図17(b)及び(d)に示すように、下層リードフレーム332上に上層リードフレーム331が積層されている。この積層した状態は、例えばモールド部材340により固定されている。赤外線センサ用フィルタ部材310には、光学フィルタ33の光出射面33bと下層リードフレーム332で形成される凹部336が設けられている。
凹部336の底面の少なくとも一部は光学フィルタ33の光出射面33bで形成され、凹部336の側壁は下層リードフレーム332で形成される。下層リードフレーム332が、本発明の第1実施形態と第2実施形態の第1部材に該当する。また、下層リードフレーム(第1部材)332は、凹部336の内側側面336aに露出した部分を有し、この露出した部分は黒化処理されている。ここで、黒化処理とは、黒色化又は濃色化する処理のことである。黒化処理により、下層リードフレーム332の露出面での光の反射を防止することができる。
【0065】
図18(a)及び(b)はリードフレーム330の構成例を示す図である。詳しくは、
図18(a)は上層リードフレーム331の表面331a側を示す平面図であり、
図18(b)は下層リードフレーム332の裏面332b側を示す底面図である。上層リードフレーム331は、例えば、Cu板を、フォトリソグラフィ技術により、その表面及び裏面の側からそれぞれ選択的にエッチングすることにより形成したものである。下層リードフレーム332も同様の方法により形成したものである。
図18(a)に示すように、上層リードフレーム331は、表面331a及び裏面の両側からそれぞれエッチングすることにより形成した、開口部h1aを含む貫通領域を有する。また、上層リードフレーム331は、その表面330aにハーフエッチング領域と非エッチング領域とを有し、その裏面に非エッチング領域を有する。図示しないが、上層リードフレーム331の裏面にはハーフエッチング領域はない。
【0066】
同様に、
図18(b)に示すように、下層リードフレーム332は、表面332a及び裏面の両側からそれぞれエッチングすることにより形成し貫通した、開口部h1bを含む貫通領域を有する。また、下層リードフレーム332は、その表面332aにハーフエッチング領域と非エッチング領域とを有し、その裏面に非エッチング領域を有する。図示しないが、下層リードフレーム332の裏面にはハーフエッチング領域がない。開口部h1a、h1bの重ね合わせにより、開口部h1が構成されている。上層リードフレーム331、下層リードフレーム332の両方とも、エッチングされていない部分の厚さは、例えば0.4mmである。
【0067】
<製造方法>
図19(a)及び(b)は、本発明の第3実施形態に係る赤外線センサ用フィルタ部材310の製造方法を工程順に示す断面図である。ここでは、
図17(a)に示したB17−B´17線でリードフレーム330等を切断した断面に沿って、各工程を説明する。
図19(a)に示すように、まず始めに、耐熱性の粘着シート51を用意する。次に、この粘着シート51の粘着層に、上層リードフレーム331の表面331aの、図示しない非エッチング領域を貼付する。次に、上層リードフレーム331が有する貫通した開口部h1a内に光学フィルタ33を配置して、例えばその表面(即ち、光入射面)33aを粘着シート51の粘着層に貼付する。なお、光学フィルタ33の表面(即ち、光入射面)33aや裏面(即ち、光出射面)33bには、予め、図示しない保護膜を貼付してもよい。
【0068】
次に、
図19(b)に示すように、上層リードフレーム331の表面331a側に下金型357を配置すると共に、上層リードフレーム331の裏面331b側に上金型355を配置する。そして、上金型355と下金型357とにより光学フィルタ33を挟み込み、上金型355と下金型357とに挟まれた空間(即ち、キャビティ)にサイドから溶融したエポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、上層リードフレーム331と光学フィルタ33の側面をモールドするモールド部材341を形成(成型)する。
このモールド部材341の形成工程では、上金型355と、光学フィルタ33及び上層リードフレーム331の裏面側とがフッ素樹脂製シート58を介して隙間無く接触し、且つ、上層リードフレーム331の表面331a側の非エッチング領域と下金型357とが粘着シート51を介して隙間無く接触した状態で、エポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、モールド部材341を形成する。
【0069】
モールド部材341の形成後は、上層リードフレーム331の表面331a及び裏面331bの各非エッチング領域と、光学フィルタ33の表面33aと裏面33bが、それぞれモールド部材341から露出した状態となる。上層リードフレーム331の表面331a及び裏面331bのハーフエッチング領域と、光学フィルタ33の側面はモールド部材341で覆われて封止される。なお、モールド部材341は、上述した第1部材35と同様、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂からなり、リフロー時の高熱に耐えられるようになっている。
その後、上金型355及び下金型357をそれぞれ上方向及び下方向に移動させて、
図19(c)に示すように、モールド部材341が形成された上層リードフレーム331を両金型間から取り出す。
【0070】
次に、
図19(d)に示すように、上層リードフレーム331の裏面側に下層リードフレーム332を配置する。ここでは、下層リードフレーム332の裏面と上層リードフレーム331の裏面とを向かい合わせ、この状態で開口部h2が光学フィルタ33と上下で重なるように、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを位置合わせする。そして、位置合わせした状態で、上層リードフレーム331の裏面側に下層リードフレーム332を配置し、固定する。これにより、積層構造のリードフレーム330が構成される。
【0071】
なお、ここでは、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを接着剤等によって接着してもよい。或いは、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とが相対的に位置ずれしないように仮止めするだけでもよい。仮止めの場合は、後述のモールド部材342の形成工程で、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とをモールド部材342で固定する。仮止めは、例えばピン等を用いた方法がある。
【0072】
即ち、上層リードフレーム331の外周部と、下層リードフレーム332の外周部にそれぞれ複数の貫通穴(図示せず)を設けておく。これらの貫通穴は、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを正しく位置合わせした際に上下で重なるように、予めその形成位置が調整されている。上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを位置合わせし、上下で重なる複数の貫通穴にそれぞれピン等(図示せず)を嵌合することによって、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを位置ずれしないように仮止めすることができる。位置合わせした後、四隅をアーク溶接してもよいし、四隅のみ接着剤で接着させてもよい。
【0073】
次に、
図19(e)に示すように、下層リードフレーム332の表面332a側に上金型365を配置すると共に、上層リードフレーム331の表面331a側に下金型367を配置する。そして、上金型365と下層リードフレーム332の表面332a側とがフッ素樹脂製シート58を介して隙間無く接触した状態で、下層リードフレーム332の表面331a側のハーフエッチング領域にサイドから溶融したエポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、モールド部材342を形成(成型)する。
なお、モールド部材342の形成工程では、開口部h2は下層リードフレーム332の側面で囲まれている。このため、開口部h2内に溶融したエポキシ樹脂等が注入されることを防ぐことができる。また、モールド部材342は、モールド部材341と同様、例えばエポキシ系の熱硬化型樹脂からなり、リフロー時の高熱に耐えられるようになっている。
【0074】
次に、上金型365及び下金型367を取り外した後、上層リードフレーム331の表面331a側から粘着シート51を除去する。粘着シート51の除去後、ポストキュアや必要に応じてウェットブラストを施す。さらに、光学フィルタ33の表面33aや裏面33bに図示しない保護膜が形成されている場合は、当該保護膜を除去する。また、これらの工程と前後して、
図19(f)に示すように、開口部h2の内側側面(即ち、
図17(b)に示した凹部336の内側側面336a)を黒化処理する。例えば、リードフレームが銅の材料であり、アルカリ溶液中で、亜塩素酸塩を用いて銅表面を酸化処理し酸化被膜を形成することにより黒化処理を行う。以上の工程を経て、
図17(a)(b)及び(d)に示した赤外線センサ用フィルタ部材310が完成する。
【0075】
<第3実施形態の効果>
本発明の第3実施形態は、第1実施形態の効果(1)、(3)〜(4)、(6)、(7)と同様の効果を奏する。
また、本発明の第3実施形態は凹部336の側壁の外側側面336bを構成する部材が金属であるので、測定対象物から赤外線センサ用フィルタ部材340の外表面に向けて出力された赤外線は吸収されずに反射される。これにより、赤外線センサ用フィルタ部材340の温度変化が抑制され、第2実施形態同様、赤外線量を精度よく定量することが可能となる。
また、本発明の第3実施形態は凹部336の側壁の内側側面336aが黒化処理されているので、凹部336の側壁の内側側面336aの放射率が大きい。これにより、予め定めた視野角の外から入力される赤外線エネルギーを凹部36の内側側面336aで吸収することが可能となり、第2実施形態同様、予め定めた視野角内の赤外線量を精度よく定量することが可能となる。
【0076】
<変形例>
本発明の第3実施形態に、第1実施形態で説明した変形例(1)、(2)を適用してよい。
また、上記の第3実施形態では、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを積層した後で、モールド部材342を形成する場合について説明した。しかしながら、赤外線センサ用フィルタ部材310の形成方法はこれに限定されるものではない。例えば、上層リードフレーム331と下層リードフレーム332とを積層する前に予め、モールド部材342を形成してもよい。
【0077】
図20(a)〜(d)は、赤外線センサ用フィルタ部材310の製造方法(変形例)を工程順に示す断面図である。
図20(a)に示すように、まず、粘着シート51を用意し、この粘着シート51の粘着層に下層リードフレーム332の裏面332bを貼付する。次に、
図20(b)に示すように、下層リードフレーム332の表面332a側に上金型375を配置すると共に、下層リードフレーム332の裏面332b側に下金型377を配置する。そして、上金型375と下層リードフレーム332の表面332a側とがフッ素樹脂製シート58を介して隙間無く接触した状態で、下層リードフレーム332の表面331a側のハーフエッチング領域にサイドから溶融したエポキシ樹脂等を注入し、充填する。これにより、モールド部材342を形成(形成)する。
【0078】
次に、
図20(c)に示すように、上金型及び下金型を取り外し、下層リードフレーム332の裏面332b側から粘着シートを除去する。粘着シートの除去後、ポストキュアや必要に応じてウェットブラストを施す。その後、
図20(d)に示すように、モールド部材342が形成された下層リードフレーム332の裏面側と、モールド部材341が形成された上層リードフレーム331の裏面側とを接合する(即ち、積層する)。この接合には、例えば図示しない接着剤を用いる。また、この接合と前後して、開口部h2の内側側面を黒化処理する。
なお、上層リードフレーム331に対する光学フィルタ33の配置、モールド部材341の形成方法は、例えば
図19(a)〜(c)を参照しながら説明した通りである。以上の工程を経て、
図17(a)(b)及び(d)に示した赤外線センサ用フィルタ部材310が完成する。
【0079】
≪第4実施形態≫
上記の第1実施形態では、
図4(a)及び(b)に示したように、IRセンサ素子43が上下左右の各位置に分割された4つの受光領域144a〜144dを有する場合について説明した。しかしながら、本発明の実施形態において、IRセンサ素子のチップ数や構造はこれに限定されない。例えば、赤外線センサ部材において、受光領域が分割されていない(即ち、一つの受光領域を有する)2個のIRセンサ素子を互いに離して配置し、それぞれのIRセンサ素子上に第2実施形態で示したような赤外線センサ用フィルタ部材210を配置してもよい。
【0080】
<構成>
図21(a)〜(d)は、本発明の第4実施形態に係る赤外線センサ400の構成例を示す図である。詳しくは、
図21(a)は平面図であり、
図21(b)はA21−A´21断面図(即ち、X−Z平面に平行な断面図)であり、
図21(c)は背面図であり、
図21(d)はB21−B´21断面図(即ち、Y−Z平面に平行な断面図)である。
図21(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ400は、例えば2個の赤外線センサ用フィルタ部材210と赤外線センサ部材450と、を備える。赤外線センサ用フィルタ部材210と赤外線センサ部材450は、例えば絶縁ペースト90を介して、その裏面を互いに接着させている。
【0081】
赤外線センサ部材450は、ダイパッド42の周囲に配置された2個のIRセンサ素子443を有する。ここで、IRセンサ素子443は受光領域が分割されていない(即ち、一つの受光領域を有する)センサ素子である。2個のIRセンサ素子443は平面視で例えば上下(又は、左右)の各位置に離して配置されており、その表面(即ち、受光面の反対側の面)及び側面がモールド部材46で覆われている。また、2個のIRセンサ素子443の裏面(即ち、受光面)はモールド部材46からそれぞれ露出している。
また、2個のIRセンサ素子443上にはそれぞれ赤外線センサ用フィルタ部材210が配置されている。これにより、2個のIRセンサ素子443はそれぞれ凹部236の空間を介して光学フィルタ33と対向し、光学フィルタ33を透過した赤外線を受光することが可能となっている。
【0082】
<第4実施形態の効果>
本発明の第4実施形態は、第1実施形態の効果(1)、(2)、(4)〜(7)と同様の効果を奏する。
また、赤外線センサ部材450は、2個のIRセンサ素子443を有する。これら2個のIRセンサ素子443は、平面視で例えば上下(又は、左右)の各位置に離して配置されているため、一方のIRセンサ素子443の視野角を、他方のIRセンサ素子443の視野角と一部が重ならないようにすることができる。
<変形例>
本発明の第4実施形態に、第1実施形態で説明した変形例(1)、(2)を適用してもよい。
【0083】
≪第5実施形態≫
上記の第4実施形態では、互いに離して配置した2個のIRセンサ素子443上に赤外線センサ用フィルタ部材210をそれぞれ配置する場合について説明した。しかしながら、これらの赤外線センサ用フィルタ部材210は一体化していてもよい。
<構成>
図22(a)〜(d)は、本発明の第5実施形態に係る赤外線センサ500の構成例を示す図である。詳しくは、
図22(a)は平面図であり、
図22(b)はA22−A´22断面図(即ち、X−Z平面に平行な断面図)であり、
図22(c)は背面図であり、
図22(d)はB22−B´22断面図(即ち、Y−Z平面に平行な断面図)である。
図22(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ500は、例えば赤外線センサ用フィルタ部材510と赤外線センサ部材450とを備える。赤外線センサ用フィルタ部材510は、第4実施形態で説明した2個の赤外線センサ用フィルタ部材210を一体化したものである。赤外線センサ用フィルタ部材510と赤外線センサ部材450は、例えば絶縁ペースト90を介して、その裏面を互いに接着させている。
2個のIRセンサ素子443上にはそれぞれ、赤外線センサ用フィルタ部材510の凹部536と光学フィルタ33とが配置されている。これにより、各IRセンサ素子443はそれぞれ凹部536の空間を介して光学フィルタ33と対向し、光学フィルタ33を透過した赤外線を受光することが可能となっている。
<第5実施形態の効果>
本発明の第5実施形態は、第4実施形態と同様の効果を奏する。
<変形例>
本発明の第5実施形態に、第1実施形態で説明した変形例(1)、(2)を適用してもよい。
【0084】
≪第6実施形態≫
上記の第4、第5実施形態では、2個のIRセンサ素子443を互いに離して配置する場合について説明した。しかしながら、本発明の実施形態において、IRセンサ素子443の個数は2個に限定されるものではない。
<構成>
図23(a)〜(d)は、本発明の第6実施形態に係る赤外線センサ600の構成例を示す図である。詳しくは、
図23(a)は平面図であり、
図23(b)はA23−A´23断面図(即ち、X−Z平面に平行な断面図)であり、
図23(c)は背面図であり、
図23(d)はB23−B´23断面図(即ち、Y−Z平面に平行な断面図)である。
【0085】
図23(a)〜(d)に示すように、赤外線センサ600は、例えば赤外線センサ用フィルタ部材610と赤外線センサ部材650と、を備える。赤外線センサ用フィルタ部材610と赤外線センサ部材650は、例えば絶縁ペースト90を介して、その裏面を互いに接着させている。
赤外線センサ部材650は、ダイパッド42の周囲に配置された4個のIRセンサ素子443を有する。4個のIRセンサ素子443は平面視で上下左右の各位置に離して配置されており、その表面(即ち、受光面の反対側の面)及び側面がモールド部材46で覆われている。また、4個のIRセンサ素子443の裏面(即ち、受光面)はモールド部材46からそれぞれ露出している。
【0086】
赤外線センサ用フィルタ部材610は、平面視で上下左右の各位置に離して配置された4個の光学フィルタ33を有する。各光学フィルタ33の側面はモールド部材35で覆われており、光入射面33aと光出射面33bは第1部材35からそれぞれ露出している。また、赤外線センサ用フィルタ部材610には、各光学フィルタ33の光出射面33bを底面の少なくとも一部とし、第1部材35を側壁とする4つの凹部36が設けられている。これにより、4個のIRセンサ素子443はそれぞれ凹部36の空間を介して光学フィルタ33と対向し、光学フィルタ33を透過した赤外線を受光することが可能となっている。
【0087】
<第6実施形態の効果>
本発明の第6実施形態は、第1実施形態の効果(1)、(2)、(4)〜(7)と同様の効果を奏する。
また、赤外線センサ部材650は、4個のIRセンサ素子443を有する。これら4個のIRセンサ素子443は、平面視で例えば上下左右の各位置に離して配置されているため、各IRセンサ素子443の視野角を、他のIRセンサ素子443の視野角と一部が重ならないようにすることができる。
このような赤外線センサ部材650と赤外線センサ用フィルタ部材610を備える赤外線センサ600は、上述した赤外線センサ400、500と比べて、より広範囲な視野角を持つことが可能である。
【0088】
<変形例>
本発明の第6実施形態に、第1実施形態で説明した変形例(1)、(2)を適用してもよい。
<放射率の測定方法について>
放射率の測定方法の1例としては、測定したい試料と放射率の基準とする黒体を用意し、赤外分光光度計であるFTIR装置を組み合わせて、試料の放射率を測定する方法がある。試料と黒体をある温度、例えば50度に加熱し、FTIR装置を用いて試料と黒体の熱放射による赤外線量を測定する。そして、黒体の熱放射による赤外線量に対する試料の熱放射による赤外線量の比から、放射率を算出する。FTIR装置での赤外線量検出の際は、試料と黒体の熱放射を測定する面積はアパーチャーなどを用いて等しくする必要がある。
【0089】
≪その他≫
第1〜第6実施形態で説明した赤外線センサ100、200、300、400、500、600はそれぞれ、各種電子機器等に組み込むことが可能であり、例えば、ユーザーが席を離れるとモニターを自動で非表示状態にして節電を行い、ユーザーが席に戻るとモニターを自動で表示状態に回復するような、離席センサとして好適に用いることができる。
また、本発明は、以上に記載した各実施形態に限定されうるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態に設計の変更等を加えることが可能であり、そのような変更等を加えた態様も本発明の範囲に含まれる。