特許第6040012号(P6040012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6040012試料台及び荷電粒子線装置及び試料観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040012
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】試料台及び荷電粒子線装置及び試料観察方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20161128BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01J37/20 A
   H01J37/22 501B
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-257030(P2012-257030)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-107036(P2014-107036A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】大南 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 卓
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐博
【審査官】 波多江 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−283978(JP,A)
【文献】 特開2008−262886(JP,A)
【文献】 実開昭58−148654(JP,U)
【文献】 特開2006−147430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を照射することによって観察される試料が搭載される試料台において、
当該試料台の少なくとも一部をなし、前記試料の内部を透過または散乱してきた荷電粒子によって発光する発光部材を有し、
前記発光部材の上に直接または所定の部材を介して前記試料が配置され、
少なくとも前記試料が配置される箇所と、当該試料台における前記試料が配置される箇所と対向する面との間が特定のまたは全ての波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光が通過可能であることを特徴とする試料台。
【請求項2】
請求項1に記載の試料台において、
当該試料台は透過型光学顕微鏡の試料台として利用できることを特徴とする試料台。
【請求項3】
請求項2に記載の試料台において、
前記試料を当該試料台に配置したまま前記透過型光学顕微鏡にて観察可能であることを特徴とする試料台。
【請求項4】
請求項1に記載の試料台において、
前記発光部材を支持する土台が具備され、
前記土台は特定のまたは全ての波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光が通過可能であることを特徴とする試料台。
【請求項5】
請求項4に記載の試料台において、
前記土台の周縁部に側壁を有することを特徴とする試料台。
【請求項6】
請求項4に記載の試料台において、
前記試料を配置する箇所と、前記土台の前記試料を載置する側の面とが、同じ高さであることを特徴とする試料台。
【請求項7】
請求項4に記載の試料台において、
前記土台における前記試料を載置する面側の面全てが前記発光部材であることを特徴とする試料台。
【請求項8】
請求項4に記載の試料台において、
前記土台上に複数の前記発光部材が配置されることを特徴とする試料台。
【請求項9】
請求項1に記載の試料台において、
前記所定の部材は、前記発光部材と前記試料との間に設けられ、前記荷電粒子線の少なくとも一部が透過可能な厚みであることを特徴とする試料台。
【請求項10】
請求項4に記載の試料台において、
前記発光部材の試料を配置する側の面と前記土台の試料を載置する側の面との距離が数百マイクロメートル以下であることを特徴とする試料台。
【請求項11】
請求項4に記載の試料台において、
前記発光部材は、前記土台の厚みと同じ厚みを持つことを特徴とする試料台。
【請求項12】
請求項4に記載の試料台において、
前記発光部材または前記土台上に、前記試料の情報を記載可能な部位を有することを特徴とする試料台。
【請求項13】
一次荷電粒子線を試料に照射する荷電粒子光学鏡筒と、
前記荷電粒子光学鏡筒の内部を真空引きする真空ポンプと、
前記試料の内部を透過または散乱してきた荷電粒子によって発光する発光部材または当該発光部材を有する試料台を着脱可能に配置する試料ステージと、
少なくとも前記試料が配置される箇所と、前記試料台における前記試料が配置される箇所と対向する面との間を通過した前記発光部材からの発光を、電気信号に変換する光変換検出器と、を備え、
前記試料台は、少なくとも前記試料が配置される箇所と、当該試料台における前記試料が配置される箇所と対向する面との間が特定のまたは全ての波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光が通過可能であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
前記試料が載置された空間と前記荷電粒子光学鏡筒とを隔離するように配置され、前記一次荷電粒子線を透過または通過させる着脱可能な隔膜を有し、
前記試料および前記発光部材を有する試料台は荷電粒子光学鏡筒の内部とは異なる圧力状態の雰囲気下に保持され、
前記発光部材は前記試料に対して前記隔膜の反対側に載置されることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項15】
請求項13に記載の荷電粒子線装置において、
少なくとも前記試料が配置される箇所と、前記試料台における前記試料が配置される箇所と対向する面との間を通過した特定のまたは全ての波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光によって光学顕微鏡画像を結像する、前記荷電粒子光学鏡筒と同軸に配置された光学顕微鏡と、を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項16】
荷電粒子線顕微鏡にて荷電粒子線を照射することによって試料を観察する試料観察方法において、
試料台の少なくとも一部をなし前記試料の内部を透過または散乱してきた荷電粒子によって発光する発光部材の上に直接または所定の部材を介して配置された前記試料に対して、前記荷電粒子線を照射するステップと、
前記発光部材の発光を検出して荷電粒子顕微鏡画像を取得するステップと、
前記試料を前記試料台に配置したまま、光学顕微鏡によって光学顕微鏡画像を取得するステップとを有することを特徴とする試料観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の内部を観察することが可能な荷電粒子線装置及びその試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の微小な領域の内部構造を観察するために、走査型透過電子顕微鏡(STEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などが用いられる。このような電子顕微鏡を用いて試料内部を観察するための一般的な観察方法として、多数の空孔を備えたメッシュ状の試料台の上に電子線が透過可能な程度に薄くスライスされた試料を配置し、試料面に対して電子源側とは反対側に配置された検出器にて透過電子線を取得することが知られている。しかし、この方法では試料がメッシュの空孔上で浮いた構成となるために、試料台に搭載する作業は非常に困難を極めている。そこで、特許文献1では、観察用の試料を直接載置することが可能な電子検出器が提案されている。
【0003】
また、物体の微小領域は電子顕微鏡だけでなく光学顕微鏡によっても観察することが可能である。光学顕微鏡を用いることで電子顕微鏡では原理的に取得することが不可能な色情報を取得することが可能である。光学顕微鏡では、ある一面側から白色光または特定の光を照射してその反対面側の光学系によって試料に吸収または試料から放出された色情報をもつ光を結像することで透過光学像を得ることができる。これにより、例えば、生体細胞試料などに特定の染色材を入れることにより細胞内の特定領域だけを染めることができるので、その色を観察することによってどの領域が染まっているのかまたは染まっていないのかを観察することが可能である。特に、透過光学像は反射型光学像より一般的に分解能が高いため、病理診断やライフサイエンスの分野で広く用いられている。
【0004】
電子顕微鏡では色情報は取得できない一方で、電子顕微鏡では光学顕微鏡では観察できない微小領域を高分解能で観察することが可能である。また、電子顕微鏡画像から得られる情報は試料の密度差を反映した情報であり、光学顕微鏡で得られる情報とは異質なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−283978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように電子顕微鏡と光学顕微鏡では得られる情報が異なるため、電子顕微鏡と光学顕微鏡の両方で同一試料を観察したい要求が近年非常に増えている。しかしながら、特許文献1の検出器兼試料台は光を透過することができず、実質的に、光学顕微鏡による観察ができない電子顕微鏡向けの試料台であった。このため電子顕微鏡向けの試料と光学顕微鏡向けの試料を作り分けなければならず、試料作成に手間がかかる等の問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたもので、一つの試料により、従来の一般的な光学顕微鏡の観察と透過荷電粒子による観察の両方が可能な試料台及び荷電粒子線装置及び試料観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、試料台の少なくとも一部をなし、試料の内部を透過または散乱してきた荷電粒子によって発光する発光部材の上に直接または所定の部材を介して前記試料が配置され、少なくとも試料が配置される箇所と、試料台における前記試料が配置される箇所と対向する面との間が特定のまたは全ての波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光が通過可能である試料台を用いて試料の透過荷電粒子顕微鏡画像および光学顕微鏡画像を取得することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、試料台の少なくとも一部をなし試料の内部を透過または散乱してきた荷電粒子によって発光する発光部材の上に配置された試料に対して、荷電粒子線を照射し、この発光部材の発光を検出して荷電粒子顕微鏡画像を取得し、この試料を試料台に配置したまま、光学顕微鏡によって光学顕微鏡画像を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一つの試料により、従来の一般的な光学顕微鏡の観察と透過荷電粒子による観察の両方が可能な試料台及び荷電粒子線装置及び試料観察方法を提供することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光学顕微鏡観察と荷電粒子線顕微鏡観察の概略説明図。
図2】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図3】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図4】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図5】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図6】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図7】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図8】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図9】検出素子を具備した試料台の詳細図。
図10】検出素子からの透過荷電粒子を検出するための説明図。
図11】実施例1における荷電粒子顕微鏡観察を実施するための全体構成図。
図12】実施例1における荷電粒子顕微鏡観察を実施するための全体構成図。
図13】実施例1における光学顕微鏡観察を実施するための構成図。
図14】実施例2における荷電粒子線顕微鏡と光学顕微鏡の複合装置の構成図。
図15】検出素子からの透過荷電粒子線を検出するための説明図。
図16】実施例3における荷電粒子線顕微鏡と光学顕微鏡の複合装置の構成図。
図17】実施例4における荷電粒子線顕微鏡と光学顕微鏡の複合装置の構成図。
図18】実施例5における荷電粒子線顕微鏡と光学顕微鏡の複合装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて各実施形態について説明する。
【0014】
以下では、本発明における試料台の詳細及び当該試料台が適応される荷電粒子線装置について説明する。ただし、これは本発明の単なる一例であって、本発明は以下説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明は、走査電子顕微鏡、走査イオン顕微鏡、走査透過電子顕微鏡、これらと試料加工装置との複合装置、またはこれらを応用した解析・検査装置にも適用可能である。
【0015】
また、本明細書において「大気圧」とは大気雰囲気または所定のガス雰囲気であって、大気圧または若干の負圧状態の圧力環境のことを意味する。具体的には約105Pa(大気圧)から〜103Pa程度である。
【実施例1】
【0016】
<概要>
はじめに、図1を用いて、本実施例の概要に関して説明する。図1には本実施例における荷電粒子線を光に変換または増幅して発光させることが可能な検出素子500(発光部材ともいう)を具備する試料台600と、荷電粒子線顕微鏡601と、光学顕微鏡602を示す。試料台600上には試料6が搭載可能である。
【0017】
この試料台の具備された検出素子は透明な部材で作られている。以下、本明細書において、「透明」の意味は、特定の波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光が通過可能、またはすべての波長領域の可視光もしくは紫外光がもしくは赤外光通過可能ということである。波長領域としてはおおよそ380nmから750nmなどの領域である。例えば、多少の色が混在されていても透けて見えれば特定の波長領域の可視光が通過可能ということであり、無色透明であればすべての波長領域の可視光が通過可能という意味である。ここで「通過可能」とは少なくとも当該波長領域の光によって光学顕微鏡観察が可能な光量の光が通過することを指す(例えば透過率50%以上であることが望ましい)。また、ここで特定の波長領域とは少なくとも光学顕微鏡の観察に用いる波長領域を含む波長領域である。そのため、本実施例の試料台の一面側からの光が試料を透過することによって得られる「光透過信号」を試料台のもう一面側から検出することが可能な一般的な光学顕微鏡(透過型光学顕微鏡)に用いることが可能である。光学顕微鏡としては、生物顕微鏡、実体顕微鏡、倒立型顕微鏡、金属顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザ顕微鏡等の光を用いた顕微鏡ならばどんなものでもかまわない。また、ここでは説明のため「顕微鏡」としているが、本発明は画像の拡大率に関らず、試料に光を照射することで情報を取得する装置一般に適用可能である。
【0018】
本実施例では、荷電粒子線顕微鏡内で発生された荷電粒子線が試料6に照射された後に試料の内部を透過または散乱した「荷電粒子透過信号」を試料台に具備された検出素子にて検出することにより透過荷電粒子顕微鏡画像を取得することも可能である。後述するように、検出素子500からの光を電気信号に変換及び増幅するために荷電粒子線顕微鏡601内には光検出器503を備える。
【0019】
本実施例の試料台は電子顕微鏡などの荷電粒子線顕微鏡装置に搭載可能であるため、光学顕微鏡と共用に用いられる共通試料台となりうる。つまり、図中矢印で図示したように同一試料台を各顕微鏡間で移動させて観察することで、それぞれの顕微鏡観察向けに試料を複数作製したり試料を移し変えたりすることなく、一つの試料台に試料を配置したまま荷電粒子線観察と光学観察が可能である。なお、図1のように個別に配置された各顕微鏡にて同一試料台を搭載してもよいし、後述するように、光学顕微鏡と荷電粒子顕微鏡が一体化された複合型顕微鏡装置を用いてもよい。以下で、試料台、試料搭載方法、画像取得原理、装置構成等の詳細に関して説明する。
【0020】
<試料台の説明>
図2を用いて、本実施例における試料台の詳細について説明する。本実施例の試料台は荷電粒子線を光に変換する透明な検出素子500とそれを支持する透明部材501(土台ともいう)から構成される。試料6は検出素子500上に直接搭載される。または、後述するように膜などの部材を介して間接に搭載されても良い。透明部材501は、理想的には無色透明であるが、多少の色が混在されていてもかまわない。透明部材501としては、透明ガラス、透明プラスチック、透明の結晶体などである。蛍光顕微鏡など観察したい場合は、蛍光が吸収されない方がよいのでプラスチックがよい。本実施例の試料台では、少なくとも、試料が配置される箇所と試料台において試料が配置される箇所と対向する面との間にある検出素子と透明部材とが「透明」であればよい。
【0021】
検出素子500は数keVから数十keVのエネルギーで飛来してくる荷電粒子線を検知し、荷電粒子線が照射されると可視光や紫外光や赤外光などの光を発光する素子である。検出素子としては例えばシンチレータ、ルミネッセンス発光材、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)素子やYAP(イットリウム・アルミニウム・ペロブスカイト)素子などである。荷電粒子線を光に変換可能な素子であれば検出素子500はどのような材料であってもかまわない。なお、検出素子は着脱可能な固体ではなく、荷電粒子線が照射されることによって蛍光を発生する蛍光剤がコーティングされた薄膜や微粒子であってもよい。本実施例では、これらも含め、荷電粒子を受光面に受けることにより光を発生する部材を総称して発光部材と称する。荷電粒子線の固体内平均自由行程は荷電粒子線の加速電圧に依存するが数十nmから数十μmである。そのため、検出素子500の上面の発光領域も検出素子表面から同程度の厚みの領域となる。よって、検出素子500の厚みはこの厚みを上回っていればよい。一方で、前述の通り光学顕微鏡にて観察した際の光透過信号ができるかぎり透過可能な必要があるので、多少の色が混在された検出素子の場合はできるかぎり薄いほうがよい。
【0022】
光学顕微鏡にて良く用いられる試料台としてスライドグラス(又はプレパラート)やディッシュ(又はシャーレ)などの透明試料台がある。つまり、本実施例における荷電粒子線を光変換することが可能な検出素子を具備した試料台をこれら光学顕微鏡向けの一般的なスライドグラス(例えば約25mm×約75mm×約1.2mm)の形状にすれば、これまでユーザが使用していたような経験や感覚で試料搭載や試料観察が可能である。このため、光学顕微鏡で一次的にスクリーニングし、選別された試料をそのまま荷電粒子顕微鏡で詳細観察するといった使い方をすることができる。または、一般の高性能の透過型荷電粒子線顕微鏡装置での試料調製は大変な労力を要するので、本実施例における試料台による観察を高性能の透過型荷電粒子線顕微鏡観察前のスクリーニングとすることも可能である。また光学顕微鏡ユーザが保有している光学顕微鏡用のスライドグラスのケースや試料搭載装置などもそのまま利用することができる。図2ではスライドグラスの断面図のような形状を図示したが、図3のようにディッシュ(又はシャーレ)の形状としてもよい。図3(a)は断面図で、図3(b)は矢視図である。図2と比べて試料が配置される箇所の周縁部に側壁504があるので、液体など試料が漏れ出ることがない。
【0023】
図2図3では検出素子500の上面と透明部材501の上面位置が一致して図示している。これまで光学顕微鏡ユーザがスライドグラスやシャーレを使っていた時と同じ感覚や経験で試料搭載ができるようにするためには、このように検出素子500の上面(すなわち試料を配置する箇所)と透明部材501の上面を同じ高さに一致させて、検出素子500と透明部材501との間に凹凸があまりない状態とするのが望ましい。図4に、検出素子500の上面と透明部材501の上面とが一致している試料台の例を示す。製作方法としては、検出素子500と透明部材501を別々に製作し、透明部材501はガラスやプラスチックなどの透明材に凹部をつけて、そこに検出素子500をはめ込めばよい。もし、どちらかが出っ張っているようなら磨くなどの光学研磨平面出しを行ってもよい。透明部材501と検出素子500間は接着剤や両面テープや機械的なはめあいなどで固定されている。または化学結合によって結合されていてもよい。または、はじめから埋め込んで製作した後で検出素子が試料台表面に露出するまで光学研磨をしてもよい。
【0024】
もし、非常に大きな検出素子を使うことが可能であれば、図5(a)のように試料台全面を検出素子としてもよい。すなわち、検出素子自体を試料台として用いる、または透明部材の試料を載置する面側の全ての領域が発光部材となっていてもよい。この場合、試料台上のどこにおいても荷電粒子線による透過信号を取得することが可能となる。また別の形態として、図5(b)のように透明部材上に検出素子を複数配置してもよい。試料が複数ある場合などはこのようにすることで、どの検出素子位置にどの試料があるかなどが分かりやすくすることができる。
【0025】
前述のように荷電粒子線の固体内平均自由行程は荷電粒子線の加速電圧に依存するが数十nmから数十μmであるため、その平均自由行程よりも十分薄い膜502を検出素子500と試料との間に配置してもよい。すなわち、検出素子500を覆う薄い膜502の上に試料が載置される。この試料台を図6(a)に示す。この厚みは図中Aで記載されている。この薄い膜502は、荷電粒子線および光に対して透明である必要がある。すなわち、荷電粒子線の少なくとも一部が透過可能な厚さおよび材質である必要がある。このような薄い膜502を配置すると、検出素子500の表面の汚れや傷などを防止することが可能である。但し、薄い膜502が絶縁物の場合、真空中にて荷電粒子線が検出素子500に照射される際に帯電し、試料の観察が難しくなることがある。そのため、図6(a)の薄い膜502を導電部材とすることにより前記帯電を除去することも可能となる。また、図6(b)のように薄い膜502と透明部材501を一体成形して同一部材としてもよい。つまり、透明部材501内部に検出素子500を埋め込んで製造して、その後光学研磨により検出素子500の上面と透明部材501との距離をAまで研磨することにより図6(b)の試料台の製作が可能となる。これは、図6(a)の試料台と比べて部材種類が少ないので、低価格で検出素子500の表面の汚れや傷などを防止することが可能となる。
【0026】
また、ユーザのこれまでの経験や感覚で試料搭載が可能であれば、図7(a)のように検出素子500は試料台600の表面から多少出っ張っていてもかまわない。例えば、数百μm以下の厚みをもつ検出素子500を透明部材501上に貼りつけるといった方法により製作可能である。この場合では透明部材501が非常に簡単な形状をしており、検出素子500の面積も小さいので、低コストに試料台の製作が可能である。また、検出素子500自体が低コストに製作可能または入手可能であれば、図7(b)のように、透明部材と検出素子との厚みが同じであり、試料台上面から下面までが検出素子500となっている形状としてもよい。この場合、透明部材501は検出素子500を支持するための土台の役割となる。または、図示しないが、検出素子500が非常に低コストで製作可能であるのであれば試料台600全体が検出素子500としてもよい。つまり、透明な部材501が検出素子500となる。
【0027】
図8に説明するように、本実施例の試料台は培養容器と一体化することも可能である。試料台600の上に容器700を配置する(図8(a))。容器700は例えば上側及び下側が開放面となっている円管状部材である。次に、容器700内部に細胞などの試料6及び培養液などの培地701を搭載する(図8(b))。なお、培地701が試料台600と容器700間から漏れ出ないように、ゴムやパッキンなどの漏れ防止部材を具備されていてもよい。その後、培養した後で、培養液などの培地701を除去する(図8(c))。その後、容器700を試料台600からはがすことで、試料6が検出素子500に貼りついた状態を作ることが可能となる(図8(d))。図中、検出素子500および容器700は一つしか記載されていないが、一つの試料台の上に複数配置してもよい。なお、荷電粒子線及び光が透過しなければならないために試料は薄い必要がある。例えば、数十nmから数十μm程度の厚みである。そのため、前述の培養された培養細胞は培養された後に前記厚み程度となっている必要がある。培養細胞としては、培養された神経細胞や血球細胞あるいはiPS細胞などがある。または、細菌やウイルス類でもかまわない。当該手法を用いることにより、試料台600上で培養した細胞試料を、試料台600に搭載されたままで透過荷電粒子顕微鏡画像及び光学顕微鏡画像を取得することが可能となる。
【0028】
試料台600は荷電粒子線顕微鏡だけでなく光学顕微鏡によって用いられることが可能であるが、後述する通り、試料が搭載されている面とは反対側に対物レンズ251が配置された倒立型光学顕微鏡によっても当該試料台上の試料を観察することが可能である。このような場合、光学顕微鏡の対物レンズ251を出来る限り試料に接近させたい場合がある。対物レンズ251と試料6との距離をLにしたいとすると、Lを数百μm程度以下にしたい場合がある。
【0029】
検出素子500を備えた試料台600全体を距離L以下に薄くする方法が考えられるが、試料台600そのものが薄すぎて強度が弱いことがある。そこで、試料台の試料が載置される部分の透明部材を他の部分より薄くしてもよい。すなわち、図9(a)のように試料台600の厚み(図中B部)よりも、試料が配置されている部及び検出素子500部の厚みが薄い領域を作ることによって、試料6と対物レンズ251との距離をLとすることが可能となる。これによれば試料台の両端が分厚いので試料台600自体の強度は高くできる。また、ユーザのこれまでの経験や感覚で試料搭載が可能であれば、図9(b)のように両端が厚い領域は反対側にあってもよいし、試料載置面の上下両側に厚い領域があってもよい。
【0030】
また、前述のように、検出素子500は荷電粒子線が照射されることによって蛍光を発生する蛍光剤がコーティングされた薄膜や微粒子であってもよい。製作方法としては、例えば、蛍光剤を水やアルコールなどの溶媒に溶かして、プレパラート上にスピンコーティングやディップコーティングする方法を採用することが可能である。またはスプレーなどでコーティングしてもよい。
【0031】
光学顕微鏡にて良く用いられるスライドグラス(又はプレパラート)やディッシュ(又はシャーレ)では、試料が試料台と分離しないように、試料と試料台の密着性を高めるための物質が試料台に塗布されている場合がある。例えば、試料が細胞等の生体試料の場合、細胞表面は脂質二重層のリン酸脂質による負の荷電状態であるため、正の荷電状態の分子(リジンやアミノシランなど)をスライドグラスなどの試料台上に塗布することによって、細胞試料が試料台からの剥離することを防止することがある。試料台600または検出素子500にも同様に正の荷電状態の分子が付着されていてもよい。または、液体を多く含んだ状態の試料を搭載しやすくなるように親水性を有する材料が塗布されていてもよい。または、生きた細胞や細菌が搭載または培養しやすくなるようにコラーゲンのような生体試料と親和性が高い材料を塗布してもよい。なお、ここで塗布とは、散布、浸漬、コーティング等試料台表面にコーティング材を付着させる方法を広く含むものとする。
【0032】
また、試料台600上に試料6に関する情報である文字、番号、バーコード、絵などが記載可能な紙やシール部を備えてもよい。この場合、試料台に搭載された試料6の管理をすることが容易となる。
【0033】
<方法及び原理の説明>
以下で、本実施例の試料台を用いた光検出方法及び透過荷電粒子線が取得可能な原理について説明する。図10に、検出素子500上に試料6が配置されている状態を示している。試料台の下には光検出器503を示している。光検出器503は検出素子500からの光信号を電気信号に変換または増幅することが可能である。変換または増幅された電気信号は通信線を介して制御部やコンピュータに入力され、これらの制御系により画像化される。取得された画像(透過荷電粒子線画像)はモニタ等に表示されてもよい。
【0034】
光検出器503と試料台との間(図中h部分)は空間があってもよいが、光を出来る限り効率よく検出するためには、この高さhは出来る限り短い方がよい。試料台と光検出器503は接触していてもよい。また、光検出器503の受光面積を大きくすることによって、光を出来る限り効率よく検出してもよい。または、試料台と光検出器503の間の空間のh部に光を効率よく伝達させる光伝達路を配置してもよい。また、図中、光検出器503は試料台600の下側に配置されているが、後述するように横方向などに配置されていてもかまわない。
【0035】
ここでは、試料内で密度が高い部位508と密度が低い部位509があることを考える。試料内で密度が高い部位508に一次荷電粒子線510が照射された場合、荷電粒子線は大多数が後方散乱されるため、検出素子500には荷電粒子線は到達しない。一方、試料内で密度が低い部位509に一次荷電粒子線511が照射された場合、荷電粒子線は検出素子500まで透過することが可能となる。その結果、検出素子500にて試料内部の密度差を検出することが可能となる。この透過具合は荷電粒子線の加速エネルギーによってかわる。そのため、荷電粒子線の加速エネルギーを変えることで観察したい内部情報とその領域を変えることも可能である。
【0036】
試料台に試料を搭載する方法を以下で述べる。荷電粒子線及び光が透過しなければならないために、試料は薄い必要がある。例えば、数十nmから数十μm程度の厚みである。検出素子500上に直接搭載可能な試料としては例えば細胞が含まれている液体や粘膜、血液や尿など液状生体検体、切片化された細胞、液体中の粒子、菌やカビやウイルスのような微粒子、微粒子や有機物などを含むソフトマテリアル材などである。試料の搭載方法は、例えば綿棒の先端に試料を付着させこれを検出器上に塗りつけてもよいし、スポイトで垂らしてもよい。また微粒子の場合は検出器上に振りかけてもよい。スプレーなどで塗布してもよいし、液体を試料台に高速回転させて塗布するスピンコーティング法を用いてもよいし、液体に試料台をつけて引き上げることによって塗布するディップコーティング法を用いてもよい。いずれの方法にしても、試料厚みを数十nmから数十μm程度の厚みにすることができればどのような方法であってもかまわない。
【0037】
<真空の荷電粒子線装置観察時の説明>
ここで、図11に、一般的な荷電粒子線装置に本実施例の試料台を搭載した装置を記載する。荷電粒子顕微鏡は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する筐体7(以下、真空室と称することもある)およびこれらを制御する制御系によって構成される。荷電粒子顕微鏡の使用時には荷電粒子光学鏡筒2と筐体7の内部は真空ポンプ4により真空排気される。真空ポンプ4の起動および停止動作も制御系により制御される。図中、真空ポンプ4は一つのみ示されているが、二つ以上あってもよい。
【0038】
荷電粒子光学鏡筒2は、一次荷電粒子線を発生する荷電粒子源8、発生した荷電粒子線を集束して鏡筒下部へ導き、一次荷電粒子線を試料6上に走査する光学レンズ1などの要素により構成される。荷電粒子光学鏡筒2は筐体7内部に突き出すように設置されており、真空封止部材123を介して筐体7に固定されている。荷電粒子光学鏡筒2の端部には、上記一次荷電粒子線の照射により得られる二次的荷電粒子(二次電子または反射電子等)を検出する検出器3が配置される。検出器3は図示した位置ではなく筺体7内部であればどこでもよい。
【0039】
試料6に到達した荷電粒子線によって試料内部または表面から反射荷電粒子や透過荷電粒子などの二次的荷電粒子を放出する。この二次的荷電粒子を検出器3にて検出する。検出器3は数keVから数十keVのエネルギーで飛来してくる荷電粒子線を検知及び増幅することができる検出素子である。例えば、シリコン等の半導体材料で作られた半導体検出器や、ガラス面またはその内部にて荷電粒子信号を光に変換することが可能なシンチレータ等である。
【0040】
本実施例の荷電粒子顕微鏡は、制御系として、装置使用者が使用するコンピュータ35、コンピュータ35と接続され通信を行う上位制御部36、上位制御部36から送信される命令に従って真空排気系や荷電粒子光学系などの制御を行う下位制御部37を備える。コンピュータ35は、装置の操作画面(GUI)が表示されるモニタと、キーボードやマウスなどの操作画面への入力手段を備える。上位制御部36、下位制御部37およびコンピュータ35は、各々通信線43、44により接続される。
【0041】
下位制御部37は真空ポンプ4、荷電粒子源8や光学レンズ1などを制御するための制御信号を送受信する部位であり、さらには検出器3の出力信号をディジタル画像信号に変換して上位制御部36へ送信する。図では検出器3からの出力信号を、プリアンプなどの増幅器53を経由して下位制御部37に接続している。もし、増幅器が不要であればなくてもよい。
【0042】
上位制御部36と下位制御部37ではアナログ回路やディジタル回路などが混在していてもよく、また上位制御部36と下位制御部37が一つに統一されていてもよい。なお、図11に示す制御系の構成は一例に過ぎず、制御ユニットやバルブ、真空ポンプまたは通信用の配線などの変形例は、本実施例で意図する機能を満たす限り、本実施例の荷電粒子線顕微鏡の範疇に属する。
【0043】
筐体7には、一端が真空ポンプ4に接続された真空配管16が接続され、内部を真空状態に維持できる。同時に、筐体内部を大気開放するためのリークバルブ14を備え、筐体7を装置内部に導入時に筐体7の内部を大気開放することができる。リークバルブ14は、なくてもよいし、二つ以上あってもよい。また、筐体7におけるリークバルブ14の配置箇所は、図11に示された場所に限られず、筐体7上の別の位置に配置されていてもよい。
【0044】
筐体7は側面に開口部を備えており、この開口部には蓋部材122及び真空封止部材124によって装置内部の真空気密を保っている。本実施例の荷電粒子顕微鏡は、前述のように試料台に搭載された試料を筺体7内部にいれた後に試料と荷電粒子光学鏡筒との位置関係を変更するための試料ステージ5を備えている。試料ステージ5には前述の発光部材または発光部材を有する試料台が着脱可能に配置される。蓋部材122が支持する底板となる支持板107が取り付けられており、ステージ5が支持板107に固定されている。ステージ5は、面内方向へのXY駆動機構および高さ方向へのZ軸駆動機構などを備えている。支持板107は、蓋部材122の対向面に向けて筺体7内部に向かって延伸するよう取り付けられている。Z軸駆動機構およびXY駆動機構からはそれぞれ支軸が伸びており、各々蓋部材122が有する操作つまみ51および操作つまみ52と繋がっている。装置ユーザは、これらの操作つまみを操作することにより、試料の位置を調整することが可能である。また、後述するように、蓋部材122上には光学顕微鏡が具備できる構成としてもよい。
【0045】
試料ステージ5の上には検出素子500を具備した試料台600を搭載できる。前述の通り検出素子500では荷電粒子線を光に変換する。この光を検出して電気信号に変換及び信号増幅するための光検出器503が試料ステージ5上またはステージ近傍に備える。前述の通り、光信号を効率よく検出するために、検出素子500を備えた試料台とこの光検出器は近接していてもよいし、接触していてもよい。またはこれらの間に光伝達路を配置してもよい。図では、光検出器は試料ステージに具備されているが、光検出器503は筐体7のどこかに固定されていてもよいし、筐体7の外部にあってもよい。筺体7外部にある場合は、検出素子500で変換された光信号はガラスや光ファイバなどの光を伝達するための光伝達路が試料台500近傍にあり、その光伝達路の中を光信号が伝達することにより光検出器にて信号を検出することが可能となる。光検出器は例えば半導体検出素子やフォトマルチプライヤーなどである。いずれにしても、本実施例の光検出器では前述の試料台の検出素子で発光され、透明部材を通過した光を検出するものである。
【0046】
図ではステージ5の上部に光検出器503が具備されている様子を図示している。ステージ5に具備された光検出器503からは配線504経由でプリアンプ基板505が接続される。プリアンプ基板505は配線507などを経由し下位制御部37に接続される。図では、プリアンプ基板505は筐体7内部にあるが筐体7外部にあってもよい。試料ステージ5上に突起506がありここに試料台600を配置する。これにより試料台5の固定ができ位置ずれ防止をすることができる。また、試料台600とステージ5上の両面テープなどで固定してもよい。但し、前述のとおり本試料台は光学顕微鏡にて用いられるので、試料台600の下面に両面テープを張り付けることは好ましくなく、試料台600の側面などに両面テープなどで位置づけ防止部材を取り付けることが望ましい。試料台600を光検出器503上に搭載すると、試料台501の真下に本光検出器503が配置されるために、試料6を透過して検出素子500にて発光した光を効率よく検出することが可能である。これらの装置及び方法により荷電粒子線装置を用いた透過荷電粒子画像を取得することが可能であるとともに、本実施例の試料台は透明部材で形成されているので、試料台を荷電粒子線装置外部に取り出した後に光学顕微鏡にて観察することも可能である。
【0047】
また、本実施例の荷電粒子線装置には検出器3と検出素子500の両方があるので、検出器3で試料から発生または反射してきた二次的荷電粒子を取得し、同時に検出素子500にて試料を透過または散乱されてきた透過荷電粒子を取得することができる。したがって、下位制御部37等を用いて、二次的荷電粒子線画像と透過荷電粒子画像のモニタ35への表示を切り替えることが可能である。また、前記二種類の画像を同時に表示させることも可能である。
【0048】
<大気圧の荷電粒子線装置観察時の説明>
次に、図12を用いて、大気圧下で観察可能な荷電粒子線装置に本実施例を適応した構成を説明する。本実施例の荷電粒子線装置は、主として、荷電粒子光学鏡筒2、荷電粒子光学鏡筒を装置設置面に対して支持する第1の筐体(以下、真空室と称することもある)7、第1の筐体7に挿入して使用される第2の筐体(以下、アタッチメントと称することもある)121、第2の筐体内に配置される試料ステージ5、およびこれらを制御する制御系によって構成される。制御系などの基本的な構成は図9と同等なので詳細な説明は省略する。
【0049】
第2の筐体121の直方体形状の側面のうち少なくとも一側面は開放面となっている。本体部121の直方体形状の側面のうち隔膜保持部材155が設置される面以外の面は、第2の筺体121の壁によって構成されている。または第2の筺体121自体には壁がなく第1の筺体7に組み込まれた状態で第1の筺体7の側壁によって構成されても良い。第2の筐体121は、上記の開口部を通って第1の筐体7内部に挿入され、第1の筺体7に組み込まれた状態で観察対象である試料6を格納する機能を持つ。第1の筐体7と第2の筺体121間は真空封止部材126を介して上記側面側の外壁面に固定される。第2の筺体121は第1の筺体7の側面または内壁面または荷電粒子光学鏡筒のいずれに固定されても良い。これによって、第2の筐体121全体が第1の筐体7に嵌合される。上記の開口部は、荷電粒子顕微鏡の真空試料室にもともと備わっている試料の搬入・搬出用の開口を利用して製造することが最も簡便である。つまり、もともと開いている穴の大きさに合わせて第2の筐体121を製造し、穴の周囲に真空封止部材126を取り付ければ、装置の改造が必要最小限ですむ。また、第2の筐体121は第1の筐体7から取り外しも可能である。
【0050】
第2の筐体121の側面は大気空間と少なくとも試料の出し入れが可能な大きさの面で連通した開放面であり、第2の筐体121の内部に格納される試料6は、観察中、大気圧状態または若干の負圧状態または所望のガス種状態に置かれる。なお、図12は光軸と平行方向の装置断面図であるため開放面は一面のみが図示されているが、図10の紙面奥方向および手前方向の第1の筺体の側面により真空封止されていれば、第2の筺体121の開放面は一面に限られない。第2の筺体121が第1の筺体7に組み込まれた状態で少なくとも開放面が一面以上あればよい。第2の筺体の開放面により、試料は第2の筺体(アタッチメント)内部と外部の間で搬入および搬出が可能である。
【0051】
第2の筺体121の上面側には荷電粒子線が透過または通過可能な隔膜10が設けられている。この隔膜10は第2の筺体121から着脱可能である。第1の筐体7には真空ポンプ4が接続されており、第1の筐体7の内壁面と第2の筐体の外壁面および隔膜10によって構成される閉空間(以下、第1の空間とする)を真空排気可能である。これにより、本実施例では、隔膜10により第1の空間11が高真空に維持される一方、第2の空間12は大気圧または大気圧とほぼ同等の圧力のガス雰囲気に維持されるので、装置の動作中、荷電粒子光学鏡筒2側を真空状態に維持でき、かつ試料6および前述の試料台を大気圧または所定の圧力の雰囲気に維持することができる。隔膜10は隔膜保持部材155によって保持され、隔膜10の交換は隔膜保持部材155を交換することで可能となる。
【0052】
本実施例の荷電粒子顕微鏡の場合、第2の筐体121の少なくとも一側面をなす開放面を蓋部材122で蓋うことができるようになっている。蓋部材122には試料ステージなどが具備されている。
【0053】
本実施例の荷電粒子顕微鏡においては、第2の筐体121内に置換ガスを供給する機能または第一の空間とは異なった気圧状態を形成可能な機能を備えている。荷電粒子光学鏡筒2の下端から放出された荷電粒子線は、高真空に維持された第1の空間を通って、図12に示す隔膜10を通過し、更に、大気圧または若干の負圧状態に維持された第2の空間に侵入する。すなわち第2の空間は第1の空間より真空度が悪い(低真空度の)状態である。大気空間では荷電粒子線は気体分子によって散乱されるため、平均自由行程は短くなる。つまり、隔膜10と試料6の距離が大きいと一次荷電粒子線または一次荷電粒子線の照射により発生する二次荷電粒子、反射荷電粒子もしくは透過荷電粒子が試料及び検出器3や検出素子500まで届かなくなる。一方、荷電粒子線の散乱確率は、気体分子の質量数や密度に比例する。従って、大気よりも質量数の軽いガス分子で第2の空間を置換するか、少しだけ真空引きすることを行えば、荷電粒子線の散乱確率が低下し、荷電粒子線が試料に到達できるようになる。また、第2の空間の全体ではなくても、少なくとも第2の空間中の荷電粒子線の通過経路、すなわち隔膜と試料との間の空間の大気をガス置換できればよい。置換ガスの種類としては、窒素や水蒸気など、大気よりも軽いガスであれば画像S/Nの改善効果が見られるが、質量のより軽いヘリウムガスや水素ガスの方が、画像S/Nの改善効果が大きい。
【0054】
以上の理由から、本実施例の荷電粒子顕微鏡では、蓋部材122にガス供給管100の取り付け部(ガス導入部)を設けている。ガス供給管100は連結部102によりガスボンベ103と連結されており、これにより第2の空間12内に置換ガスが導入される。ガス供給管100の途中には、ガス制御用バルブ101が配置されており、管内を流れる置換ガスの流量を制御できる。このため、ガス制御用バルブ101から下位制御部37に信号線が伸びており、装置ユーザは、コンピュータ35のモニタ上に表示される操作画面で、置換ガスの流量を制御できる。また、ガス制御用バルブ101は手動にて操作して開閉してもよい。
【0055】
置換ガスは軽元素ガスであるため、第2の空間12の上部に溜まりやすく、下側は置換しにくい。そこで、蓋部材122でガス供給管100の取り付け位置よりも下側に第2の空間の内外を連通する開口を設ける。例えば図10では圧力調整弁104の取り付け位置に開口を設ける。これにより、ガス導入部から導入された軽元素ガスに押されて大気ガスが下側の開口から排出されるため、第2の筐体121内を効率的にガスで置換できる。なお、この開口を後述する粗排気ポートと兼用しても良い。
【0056】
また、ヘリウムガスのような軽元素ガスであっても、電子線散乱が大きい場合がある。その場合は、ガスボンベ103を真空ポンプにすればよい。そして、少しだけ真空引きすることによって、第2の筐体内部を極低真空状態(すなわち大気圧に近い圧力の雰囲気)にすることが可能となる。例えば、第2の筐体121または蓋部材122に真空排気ポートを設け、第2の筐体121内を一度真空排気する。その後置換ガスを導入してもよい。この場合の真空排気は、第2の筐体121内部に残留する大気ガス成分を一定量以下に減らせればよいので高真空排気を行う必要はなく、粗排気で十分である。
【0057】
ただし、生体試料など水分を含む試料などを観察する場合、一度真空状態に置かれた試料は、水分が蒸発して状態が変化する。従って、完全に蒸発する前に観察するか、上述のように、大気雰囲気から直接置換ガスを導入する方が好ましい。上記の開口は、置換ガスの導入後、蓋部材で閉じることにより、置換ガスを効果的に第2の空間内に閉じ込めることができる。
【0058】
このように本実施例では、試料が載置された空間を大気圧(約105Pa)から約103Paまでの任意の真空度に制御することができる。従来のいわゆる低真空走査電子顕微鏡では、電子線カラムと試料室が連通しているので、試料室の真空度を下げて大気圧に近い圧力とすると電子線カラムの中の圧力も連動して変化してしまい、大気圧(約105Pa)〜103Paの圧力に試料室を制御することは困難であった。本実施例によれば、第2の空間と第1の空間を薄膜により隔離しているので、第2の筐体121および蓋部材122に囲まれた第2の空間の中の雰囲気の圧力およびガス種は自由に制御することができる。したがって、これまで制御することが難しかった大気圧(約105Pa)〜103Paの圧力に試料室を制御することができる。さらに、大気圧(約105Pa)での観察だけでなく、その近傍の圧力に連続的に変化させて試料の状態を観察することが可能となる。
【0059】
上記開口の位置に三方弁を取り付ければ、この開口を粗排気ポートおよび大気リーク用排気口と兼用することができる。すなわち、三方弁の一方を蓋部材122に取り付け、一方を粗排気用真空ポンプに接続し、残り一つにリークバルブを取り付ければ、上記の兼用排気口が実現できる。
【0060】
上述の開口の代わりに圧力調整弁104を設けても良い。圧力調整弁104は、第2の筐体121の内部圧力が1気圧以上になると自動的にバルブが開く機能を有する。このような機能を有する圧力調整弁を備えることで、軽元素ガスの導入時、内部圧力が1気圧以上になると自動的に開いて窒素や酸素などの大気ガス成分を装置外部に排出し、軽元素ガスを装置内部に充満させることが可能となる。なお、図示したガスボンベまたは真空ポンプ103は、荷電粒子顕微鏡に備え付けられる場合もあれば、装置ユーザが事後的に取り付ける場合もある。
【0061】
本荷電粒子線装置の試料ステージ5の上には検出素子500を具備した試料台を搭載できる。試料ステージの上に前述の試料台を載置した状態において、検出素子500は試料に対して隔膜の反対側に載置された状態となる。試料ステージ近傍の光検出器503などの配置構成などは図11と同様である。本構成の場合は、真空引き等により発生する水分蒸発などの形状変化を最大限に低減させた透過荷電粒子線信号の取得が可能である。また、試料空間を高真空に真空引きすることが不要であるため非常に高スループットで試料台600上試料の透過荷電粒子線顕微鏡画像の取得が可能となる。
【0062】
<光学顕微鏡観察時の説明>
図13に、光学顕微鏡にて観察する場合を示す。はじめに、光学顕微鏡250に関して説明する。光学顕微鏡250は対物レンズ252などの光学レンズを備える。光学レンズを経由した顕微鏡情報は接眼レンズ207に投影される。または、CCDカメラなどによってディジタル信号に変換され図示しないモニタに表示させてもよい。本実施例における試料台600は光学顕微鏡の光軸251に対して図中横方向か紙面方向に動かすことが可能なXY駆動機構や対物レンズ252との距離を変更することが可能なZ軸駆動機構などの駆動機構204を備えた試料ステージ258上に配置される。試料ステージ258上の光学顕微鏡の光軸251部周辺は開口部259の上に当該発明の試料台600が配置される。光学顕微鏡250には白色光や紫外光や波長が制御された光やレーザなどの光子線を発することが可能な光源をそなえる。光源は図中試料台600の上側から光を照射するための光源255、または試料台600の下側から光を照射するための光源256などである。なお、光源は光学顕微鏡250が配置された部屋の光源や太陽光などでもかまわない。なお、光源は図示しない通信線や電線などによって光の光量及び消灯点灯用の電源が供給・制御される。図では上記説明した2か所に光源が配置されているが最低1つあればよい。以上、2つの光源位置を例にあげたが、上記以外の場所に配置されてもよい。試料台上の試料6の観察倍率または焦点位置を変更するために光学顕微鏡250には光学レンズ駆動機構253を有する。光学レンズ駆動機構253によって対物レンズ252を光学顕微鏡の光軸251方向に動かすことによって、試料台600上の試料6に焦点を合わせることができる。また、図示しないが対物レンズ252ではなく、光学顕微鏡250内部の光学レンズが光軸251方向に動くことによって焦点を変えてもよい。
【0063】
光源256から発せられた光は光学顕微鏡250内部のミラー等を経由して対物レンズ251あるいはその周辺部から放出され、試料台600に到達する。試料台600に到達した光子線は透明部材501及び検出素子500を通過し、試料に到達される。試料から反射してきた反射光は再度検出素子500及び透明部材501を通過して、対物レンズ251に到達する。これにより、対物レンズ251に照射された光信号は光学顕微鏡251内部で結像され、接眼レンズ207にて試料の光学顕微鏡観察が実施できる。また、光源位置が光源255の場合は、光源255から放出された光子線はまず試料に照射される。試料から透過してきた光子線を検出素子500及び透明部材501を通過し、対物レンズ等を経由して光学顕微鏡像を形成することが可能となる。
【0064】
なお、本図で説明した光学顕微鏡は光学レンズ等が試料下側に配置された倒立型光学顕微鏡であるが、光学系が試料上に配置された正立型光学顕微鏡であってもよい。その場合も光源がどこにあってもよい。
【0065】
以上、光学顕微鏡により本実施例における試料台600上の試料6を観察する方法及び装置について説明した。前述の通り、検出素子500及び透明部材501が光源からの光に対して透明であるために、このように試料及び試料台に光を透過させた光学顕微鏡観察が可能であるとともに図9図10で示したような荷電粒子線顕微鏡装置にて真空中または大気中の荷電粒子顕微鏡画像を取得することが可能となる。
【実施例2】
【0066】
<基本装置構成の説明>
実施例1では、個別に配置された光学顕微鏡と荷電粒子線顕微鏡に同じ試料台600を用いることに関して説明した。以下では、光学顕微鏡と荷電粒子線顕微鏡が一体化された複合顕微鏡装置構成に関して説明する。
【0067】
はじめに、図14を用いて、本構成における概要に関して説明する。各要素の動作・機能あるいは各要素に付加される付加要素は、実施例1とほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
本構成では、荷電粒子線顕微鏡装置の筺体7内部に光学顕微鏡250が配置されている。光学顕微鏡250は前述の試料台の透明部材を通過した、特定のまたは全ての波長領域の可視光もしくは紫外光もしくは赤外光によって光学顕微鏡画像を結像する。光学顕微鏡250は試料ステージ5を支持する支持板107上に配置されており、試料台600の下側から観察する構成を示している。荷電粒子線顕微鏡と光学顕微鏡による観察位置を合わせるために、荷電粒子光学鏡筒2の光軸200と光学顕微鏡250の光軸251をそれぞれ合わせる必要がある。そのため、光学顕微鏡250の位置を変更することが可能な光軸調整機構260を備える。ここでは、光軸調整機構260が蓋部材122に具備される様子を図示する。蓋部材122には光軸調整機構260の操作部が備えられている。光軸調整機構260を回すなどして、光学顕微鏡250をガイドやレール等のベース263の上または横を滑らせて位置を変更する。図中光軸調整機構260は一つしか図示されていないが、図中紙面垂直方向にも動かす必要があるので、複数の光軸調整機構260があってもよい。
【0069】
また、別の形態として、図示しないが、光軸調整機構260は第2の筐体内部だけにあってもよい。この場合、蓋部材122を引き出した状態で、光学顕微鏡250の位置を変更することになる。この構成により、各光軸をあわせることができるので、荷電粒子光学鏡筒2より試料6の観察ができるとともに、その同一部位を光学顕微鏡250にて光学顕微鏡画像が取得することが可能となる。また、図で示している通り、試料ステージ5と光学顕微鏡250は独立して配置されているので、試料ステージ5を動かしても、光学顕微鏡250の位置は変更されない。
【0070】
本構成では光学顕微鏡の光学レンズを経由した顕微鏡情報は筐体7内部に配置されたCCDカメラ254に伝達される。CCDカメラ254は、光学情報を電気情報などのディジタル信号に変換する信号形成部としての役割を担う。CCDカメラ254によって電気情報に変換された画像情報は通信線209や通信線45を使って制御部などに伝達させ、モニタ上に表示させる。もちろん、CCDカメラ以外の撮像装置であってもよい。通信線209や通信線45との間に筺体7と装置外部との雰囲気分離をしながら信号伝達が可能な配線接続部208が配置される。画像撮像部は図13のように接眼レンズ254を用いた直接観察としてもよい。
【0071】
なお、光学顕微鏡の光源は図13で示したように光学顕微鏡250に具備されていてもよいし、荷電粒子光学鏡筒2側に配置されていてもよい。
【0072】
本構成での荷電粒子線顕微鏡では検出器3による反射荷電粒子顕微鏡画像を取得できるだけでなく、検出素子500による透過荷電粒子線顕微鏡画像も取得することが可能である。本実施例における試料台600は試料ステージ上に具備される点は図11と同様である。
【0073】
図15(a)に試料台600周辺部の第一の構成を図示する。本構成の場合は、光検出器503は中心に開口部607が空いた光検出器503を配置された構成を示している。これにより、光学顕微鏡の対物レンズ252が試料台600に接近した位置に配置することが可能であり、試料台600上の試料6の少なくとも一部が観察することができるので、図中下側より光学顕微鏡観察ができる。さらに、試料6から透過荷電粒子線が光検出器503に照射されて発生した光を開口部607周辺の光検出器503にて光信号を電気信号に変換または増幅することが可能となる。
【0074】
図15(b)に第二の構成を図示する。この場合、試料台600横側に光検出器503が備わっており、試料台600内部を伝達した光を光検出器503横側から検出する。この場合は、図15(a)のように光学顕微鏡と試料台600との間に光検出器がないので、広い視野の光学顕微鏡画像を取得することが簡単になる。なお、図示しないが、試料横側から効率よく光を集めるために、試料台600内部で光が反射するような処理をしていてもよい。例えば、試料台600の上面、下面、側面などに反射材の取付けまたは表面粗さをつけるなどの光反射加工などをしておくなどの処理などである。例えば、図15(b)中の一点鎖線608で示したような部位に光反射加工処理を行う。但し、光学顕微鏡により観察される部位などの光反射加工処理されていない観察部位609も必要となる。
【0075】
このような構成にすることによって、荷電粒子線装置による荷電粒子透過信号と光学顕微鏡による光透過信号を同一装置内部で取得することが可能となる。さらに、試料6の同一部位の荷電粒子線顕微鏡像と光学顕微鏡像を取得することが可能となる。本構成にすることによって、図1で示したように光学顕微鏡250と荷電粒子顕微鏡装置601の中に試料台600を交互に入れる手間が省け、一回で光学顕微鏡250と荷電粒子顕微鏡装置601での観察が可能となる。
【0076】
さらに、本実施例の荷電粒子線装置には検出器3も具備されているので、検出器3で試料から発生または反射してきた二次的荷電粒子を取得し、検出素子500にて試料を透過または散乱されてきた透過荷電粒子を取得し、光学顕微鏡により光学顕微鏡画像を取得することができる。これらの画像を同時に取得することができるので、下位制御部37等を用いて、二次的荷電粒子画像と透過荷電粒子画像と光学顕微鏡画像のモニタ35への表示を切り替えることが可能である。また、前記三種類の画像を同時に表示させことも可能である。
【実施例3】
【0077】
大気圧下で観察可能な大気圧荷電粒子線顕微鏡装置と光学顕微鏡装置を複合化させて本実施例における試料台を用いることも可能である。本構成を図16に示す。これらの装置は基本的に図12図14を組み合わせた装置構成であるが重複する説明は割愛する。
【0078】
本構成の特徴は大気圧下で観察可能な荷電粒子光学顕微鏡装置と光学顕微鏡250間に上述した試料台が大気圧下に配置されることである。液体を多く含むような試料の同じ部位に対する透過荷電粒子顕微鏡画像と光学顕微鏡画像とを取得したい時は本実施例の装置構成が望ましい。
【0079】
本実施例での装置は、試料空間を高真空にする必要がないため非常に高スループットで試料搬入出が可能となる。また、前述のように、第2の筺体7内部は所望のガス種や圧力にすることが可能であるので、所望のガス下での透過荷電粒子顕微鏡と光学顕微鏡による観察が可能となる。
【実施例4】
【0080】
実施例では、前述の実施例と異なり、第2の筐体121がない場合の例について説明する。隔膜10周辺部、試料ステージ5および光学顕微鏡250周辺の構成は前述の実施例1から3とほとんど同じなので、以下では相違点を主に説明する。
【0081】
図17に、本実施例の荷電粒子顕微鏡の全体構成を示す。本構成では、荷電粒子光学鏡筒2が筐体271にはめ込まれおり、真空封止部材123にて真空シールされる。筐体271は柱269によって支えられている。柱269は土台270によって支えられている。図中柱269は一つだけ図示しているが筐体を支えるために実際は複数本あるのが好ましい。この構成によって、試料6の雰囲気状態が装置外部と同等になるので、試料状態を完全な大気下状態に曝すことが可能となる。
【0082】
ガスボンベ103からのガス供給は試料6近傍方向を向いたガスノズル272によってなされる。ガスノズル272は例えば支え273によって筐体271に接続されている。ガスボンベ103とガスノズル272とは連結部102によって接続される。上記構成は一例であるが、本構成により試料6近傍に所望のガスを噴射することが可能となる。ガス種としては、電子線散乱を低減できるように、大気よりも軽いガスである窒素や水蒸やヘリウムガスや水素ガスなどである。ガスはユーザが自由に交換可能である。また、隔膜10と試料6との間を真空引きするためにガスボンベ103を真空ポンプに替えてもよい。
【0083】
光学顕微鏡250は筐体271の直下、すなわち荷電粒子光学鏡筒の光軸と同軸に配置される。これにより試料ステージ5上に配置された試料台600上の試料6に、隔膜10を通過した荷電粒子線を照射して荷電粒子線顕微鏡像を取得するとともに、光学顕微鏡250による光学顕微鏡像を取得することが可能となる。光軸調整機構260、光学顕微鏡の内部レンズを光学顕微鏡250の光軸251方向に駆動するための光学レンズ駆動機構253等の構成は前述までの実施例に示した通りである。
【0084】
本実施例での構成により、隔膜10及び試料6及び光学顕微鏡250が非接触の状態で、荷電粒子線顕微鏡と光学顕微鏡による同じ部位の観察が可能となる。
【0085】
本構成の場合、試料配置空間に制限がないので、試料台600の大きさが非常に大きい場合に有用である。
【実施例5】
【0086】
次に、大気圧下で観察可能な大気圧荷電粒子線顕微鏡装置と光学顕微鏡装置を複合化させた例を示す。本実施例では、前述の実施例の荷電粒子光学鏡筒2が隔膜10に対して下側にある構成に関して説明する。
【0087】
図18に、本実施例の荷電粒子顕微鏡の構成図を示す。真空ポンプや制御系などは省略して図示する。また、真空室である筺体7や荷電粒子光学鏡筒2は装置設置面に対して柱や支え等によって支持されているものとする。各要素の動作・機能あるいは各要素に付加される付加要素は、前述の実施例とほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0088】
試料台600に搭載された試料6と隔膜10を非接触にするために試料ステージ5が隔膜保持部材または筐体上に具備される。つまり、図中試料6の下側部分に荷電粒子線が照射されることになる。試料ステージ5を操作するための操作部204を使うことによって、試料の図中下側面を隔膜10部に接近させることが可能である。
【0089】
また、光学顕微鏡602は荷電粒子光学鏡筒2及び試料台600の上側に配置され、荷電粒子光学鏡筒の光軸と同軸に配置される。これにより試料ステージ5に配置された試料6に、隔膜10を通過した荷電粒子線を照射して荷電粒子線顕微鏡像を取得するとともに、光学顕微鏡602による光学顕微鏡像を図中上から取得することが可能となる。
【0090】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0091】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
【0092】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1:光学レンズ、2:荷電粒子光学鏡筒、3:検出器、4:真空ポンプ、5:試料ステージ、6:試料、7:筐体、8:荷電粒子源、10:隔膜、11:第1の空間、12:第2の空間、14:リークバルブ、15:開放面、16:真空配管、17:ステージ支持台、18:支柱、19:蓋部材用支持部材、20:底板、35:コンピュータ、36:上位制御部、37:下位制御部、43,44,45:通信線、
100:ガス供給管、101:ガス制御用バルブ、102:連結部、103:ガスボンベまたは真空ポンプ、104:圧力調整弁、107:支持板、108:操作つまみ、109:操作つまみ、121:第2筐体、122:蓋部材、123,124,125,126,128,129:真空封止部材、154:信号増幅器、155:保持部材、156,157,158:信号線、159:隔膜保持土台、
200:荷電粒子線の光軸、204:駆動機構、207:接眼レンズ、208:電気接続部、209:配線、250:光学顕微鏡、251:光学顕微鏡の光軸、252:対物レンズ、253:光学レンズ駆動機構、254:CCDカメラ、255、256、257:光源、258:試料ステージ、259:開口部、
260:光学顕微鏡位置調整機構、263:ベース又はレール又はガイド、
267:微粒子試料、268:つなぎ部、269:柱、270:土台、271:筐体、272:ノズル、273:支え、274:支え、
500:検出素子、501:透明部材、502:薄い膜、503:光検出器、504:側壁、505:プリアンプ基板、506:突起、507:配線、508:密度が高い部分、509:密度が低い部分、510:一次荷電粒子線、511:一次荷電粒子線、
600:試料台、601:荷電粒子線顕微鏡、602:光学顕微鏡、603:光源、604:荷電粒子線検出器、606:光学顕微鏡の光軸、607:開口部、608:光反射部、609:観察部位、
700:容器、701:培地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18