(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記官能基を3つ以上有する化合物(A)が、3官能以上の多官能エポキシ樹脂、3価以上の多価フェノール化合物、又は両者であることを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造方法。
前記官能基を1つ有する化合物(B)が、1官能エポキシ樹脂、1価フェノール化合物、又は両者であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から電気積層板に使用するハンダの鉛フリー化に対する要求が高まっている。鉛を含まないハンダの融点は従来用いられていたSn/Pb共晶ハンダよりも高いため、鉛フリー化に伴ってリフロー処理温度が従来の240℃から260℃に上昇する。このため、積層板に使用する有機材料に対して更なる耐熱性の向上が求められている。
【0003】
電気積層板の薄型化や小型化に対する要求も高まっている。そのため、使用する半導体チップの実装方式として、金属ワイヤを用いて接続する従来のワイヤボンディング方式に代えて、チップ電極上にバンプと呼ばれる突起電極を形成し、基板電極とチップ電極とをバンプを介して直接接続するフリップチップ接続方式が注目されている。
【0004】
フリップチップ接続方式としては、ハンダバンプを用いる方式、金バンプと導電性接着剤を用いる方式、熱圧着方式、超音波方式などが知られている。これらの方式では、チップと基板の熱膨張係数差に由来する熱ストレスが接続部分に集中して接続信頼性が低下するという問題がある。このような接続信頼性の低下を防止するために、一般に、チップと基板の間隙を充填するアンダーフィルが樹脂により形成される。アンダーフィルへの分散により熱ストレスが緩和されるため、接続信頼性を向上させることが可能である。
【0005】
アンダーフィルを形成する方法としては、チップと基板を接続した後に液状樹脂をチップと基板の間隙に注入する方法や、アンダーフィルとなる樹脂をあらかじめ基板上又はチップ上に供給しておき、チップと基板を接続する工程においてアンダーフィル形成も完了させる方法がある。
【0006】
液状樹脂を注入する方法では100μm以下の狭い間隙に樹脂を充填するのに長時間を要し、生産性の低下につながる傾向がある。一方、アンダーフィルとなる樹脂をあらかじめ供給しておく方法は、NCP(NonConductivePaste)などのペースト状樹脂を用いる方法(特許文献1)と、NCF(NonConductiveFilm)などのフィルム状樹脂を用いる方法(特許文献2)に分けられ、ペースト状樹脂を用いる方法ではボイドの残存や薄型チップを用いた時に起こるチップ裏面の汚染などの課題がある。フィルム状樹脂を用いる方法によれば、取り扱いが容易で、生産プロセスの簡略化が可能となる。
【0007】
アンダーフィルを形成させるための樹脂としては、エポキシ樹脂などの三次元架橋性樹脂成分を含む樹脂組成物が広く用いられている。特に、フィルム状樹脂を用いる方法の場合、単体でフィルム形成が可能な樹脂を三次元架橋性樹脂と組み合わせて良好なフィルム形成性が確保された樹脂組成物が用いられる。
【0008】
三次元架橋性樹脂と組み合わせる樹脂としては、フェノキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂が主に用いられている(特許文献3)。
【0009】
ところで、エポキシ樹脂の内部応力を緩和して強靭化する目的で、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物中に液状ゴムや、架橋ゴム、コアシェル型のゴム粒子を分散させる方法が知られている(非特許文献1)。しかし、ゴムを分散させた硬化物は、ゴムを用いないものと比較してガラス転移温度が低下することが知られており、高耐熱性が要求される分野では信頼性を低下させる原因となる。ゴム分散系でガラス転移温度を向上させるためにエポキシ樹脂の架橋密度を増加させる方法が考えられる。しかしこの場合、ゴム分散の効果を低下させて硬化物が脆くなるとともに吸水率が増加して、信頼性の低下を招くという問題がある。
【0010】
一方、ガラス転移温度を低下させずにエポキシ樹脂を強靭化させる方法として、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミドなどのエンジニアリングプラスチップと呼ばれる高耐熱性熱可塑樹脂をエポキシ樹脂とブレンドし、硬化物中に相分離構造を形成する方法が知られている。しかしこの場合、含有量の少ない熱可塑性樹脂成分がマトリックス(連続相)となるためにエポキシ樹脂本来の電気特性などが失われる可能性がある(非特許文献2)。
【0011】
また、ガラス転移温度が130℃以上のポリヒドロキシポリエーテル樹脂をブレンドすることも提案されている。しかしこの場合、樹脂粘度が比較的大きいため、実用粘度に下げるため希釈成分を多く使用する必要があった。この希釈成分の使用量が多いと、接着剤層の耐湿性を悪化させ、絶縁信頼性が低下する可能性がある(特許文献4、5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来、チップと基板をアンダーフィルとしての接着剤を介して接続したときに、高温高湿下で接着剤とチップ又は基板との界面での接着力が低下するという問題があった。また、従来、高温高湿下での接続信頼性の点でも改善が求められていた。例えば、温度サイクル試験条件下でチップと基板の熱膨張係数差に由来する熱ストレスが接続部に生じることによって、接続抵抗の増大や接着剤の剥離が生じる場合があった。また、半導体パッケージでは高温高湿条件で吸湿させた後にリフロー処理を行うため、接着剤中に吸収された水分が急激に膨張することによって、接続抵抗の増大や接着剤の剥離が生じる場合があった。
【0015】
ガラス転移温度が130℃以上のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を使用する接着剤系では高い耐熱性を有するが、溶融粘度が比較的大きくなるため、実用粘度に下げるため反応性希釈剤などの希釈成分を必要以上に使用するという問題があった。この反応性希釈剤などの希釈成分の使用量が多いと、接着剤層の耐湿性を悪化させ、絶縁信頼性が低下する場合があった。
【0016】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、良好なフィルム形成性と高い耐熱性を有するとともに、比較的粘度が低く、接着剤として用いられたときに必要以上の希釈成分を必要としないため、高温高湿環境下に曝された後も高い接着力を維持することが可能な樹脂組成物を得ることを可能とするポリヒドロキシポリエーテル樹脂を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、良好なフィルム形成性と高い耐熱性を有するとともに、接着剤として用いられたときに高温高湿環境下に曝された後も高い接着力を維持することが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、高い耐熱性及び高温高湿環境下に曝された後の高い接着力を発現するとともに、接続信頼性の向上が可能な電気積層板用部材の接着剤を提供することを目的とする。
【0019】
更には、本発明は、電気積層板用部材同士が高い接着力で接着されるとともに、接続信頼性が改善された電気積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、2官能エポキシ樹脂と2価フェノール化合物とでポリヒドロキシポリエーテル樹脂を製造する際に、官能基を3つ以上有する化合物と官能基を1つしか持たない化合物の量を規定することで、フルオレン骨格などの高耐熱骨格を導入しても高粘度にならずに比較的低粘度なポリヒドロキシポリエーテル樹脂を提案するものである。
【0021】
すなわち、本発明は、2官能エポキシ樹脂(X)、2価フェノール化合物(Y)、エポキシ基又はエポキシ基と反応性の活性水素含有基から選ばれる官能基を3つ以上有する化合物(A)、及び該官能基を1つ有する化合物(B)とを反応原料として、触媒の存在下で重合反応して重量平均分子量が15,000〜100,000であるポリヒドロキシポリエーテル樹脂を製造する方法において、反応原料中の化合物(A)と(B)の量が、下記式
0.0005≦A/(X+Y+A+B)≦0.05
0.0005≦B/(X+Y+A+B)≦0.05
(X、Y、A、及びBは、それぞれ2官能エポキシ樹脂(X)、2価フェノール化合物(Y)、化合物(A)、及び化合物(B)の仕込み量(質量)である。)
を満足することを特徴とするポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造方法である。
ここで、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、示差走査熱量測定によるガラス転移温度が130℃以上であり、かつ240℃での溶融粘度が10,000Pa・s未満である。なお、2官能エポキシ樹脂(X)、及び2価フェノール化合物(Y)は、上記官能基を2つだけ有し、2官能エポキシ樹脂(X)はエポキシ基を2つ有する。更に、反応原料は下記要件i) 及び要件ii) の少なくとも一方を満足する。
i) 2官能エポキシ樹脂(X)が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表わされるフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂のうちの少なくともいずれか1つであること。
ii) 2価フェノール化合物(Y)が、下記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)表わされるフェノール化合物から選ばれる少なくとも1つを、2価フェノール化合物(Y)中の50〜100質量%含むものであること。
【0022】
本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造方法の好ましい態様を、次に示す。
(1) 前記官能基を3つ以上有する化合物(A)が、3官能以上の多官能エポキシ樹脂、3価以上の多価フェノール化合物、又は両者であること。
(2) 前記官能基を1つ有する化合物(B)が、1官能エポキシ樹脂、1価フェノール化合物、又は両者であることを。
(3) 前記2官能エポキシ樹脂(X)が、2価フェノール化合物を主成分とするフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂であって、副生成物として含有する3官能以上の多官能エポキシ樹脂(A)の含有量が0.05〜5質量%であり、かつ副生成物として含有する1官能エポキシ樹脂類(B)の含有量が0.05〜5質量%であること。
【0023】
(4) 前記2官能エポキシ樹脂類(X)が、a)下記一般式(1)で表わされるフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂、b)下記一般式(2)で表わされるフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂、又はc)下記一般式(3)で表わされるフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂のうちの少なくともいずれか1つであること。
【0024】
【化1】
【化2】
【化3】
(式(1)〜(3)中、R
1〜R
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。)
【0025】
(5) 前記2価フェノール化合物(Y)が、上記一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)表わされるフェノール化合物から選ばれる少なくとも1つを、2価フェノール化合物(Y)中の50〜100質量%含むものであること。
【0026】
また、本発明は
上記反応原料を、触媒の存在下で重合反応して得られた重量平均分子量が15,000〜100,000であり、ガラス転移温度が130℃以上であり、240℃での溶融粘度が10,000Pa・s未満であるポリヒドロキシポリエーテル樹脂である。
ここで、反応原料は上記要件i) 及び要件ii) の少なくとも一方を満足する。
【0027】
また、本発明は上記のポリヒドロキシポリエーテル樹脂と、三次元架橋性樹脂成分を含有し、その質量比がポリヒドロキシポリエーテル樹脂/三次元架橋性樹脂成分=1/99〜99/1である樹脂組成物である。
前記三次元架橋性樹脂成分がエポキシ樹脂と硬化剤であり、かつ加熱及び/又は光照射により硬化するものであることは、この樹脂組成物の好ましい実施態様である。
【0028】
また、本発明は上記の樹脂組成物を支持ベースフィルム上でフィルム状に形成することを特徴とする絶縁フィルムである。更に、本発明は上記の樹脂組成物を、金属箔に塗布してなることを特徴とするプリント配線板用樹脂付き金属箔である。また、本発明は上記の樹脂組成物を、繊維からなるシート状補強基材に塗工及び/又は含浸することを特徴とするプリプレグである。
【0029】
また、本発明は上記の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。更に、本発明は上記の樹脂組成物から得られる電気積層板であり、また上記絶縁フィルムから得られる電気積層板であり、更に上記のプリント配線板用樹脂付き金属箔から得られる電気積層板であり、また上記のプリプレグから得られる電気積層板である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造方法によって得られるポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、吸湿性が小さく、流動性が良いため、これを含有する樹脂組成物としたとき、反応性希釈材などの吸湿性を悪化させる成分を多く使用する必要がない。そのため、高い耐熱性を有するとともに、接着剤として用いられたときに高温高湿環境下に曝された後も高い接着力を維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0033】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造は、2価フェノール化合物とエピハロヒドリンの直接反応による方法や2官能エポキシ樹脂と2価フェノール化合物の付加重合反応による方法が知られているが、本発明に用いられるポリヒドロキシポリエーテル樹脂は2官能エポキシ樹脂と2価フェノール化合物の付加重合反応によって得られる。そして、少量の官能基を3つ以上有する化合物(A)と、官能基を1つ有する化合物(B)を共存させる。以下、官能基を3つ以上有する化合物(A)を化合物(A)と、官能基を1つ有する化合物(B)を化合物(B)と略記することがある。
【0034】
本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、2官能エポキシ樹脂(X)と2価フェノール化合物(Y)を、化合物(A)と化合物(B)を共存させ、アミン系、イミダゾール系、トリフェニルフォスフォニウム、フォスフォニウム塩系など公知の触媒存在下で反応させることによって得られる。2官能エポキシ樹脂(X)の使用量をXとし、2価フェノール化合物の使用量をYとすれば、この反応でのX/Yの好ましい当量比は、1/0.94〜1.06であり、より好ましくは1/0.96〜1.04であり、最も好ましくは1/0.975〜1.025である。この範囲を超えた当量比では所定の重量平均分子量が得られない。
【0035】
本発明でいう官能基とは、エポキシ基又はエポキシ基と反応性の活性水素含有基から選ばれる。これらエポキシ基は、フェノール性水酸基と反応性であり、活性水素含有基はエポキシ基と反応性であるため、反応系において、反応原料として関与して、一定範囲の量であれば、得られるポリヒドロキシポリエーテル樹脂の特性を改良する。したがって、官能基はエポキシ基であっても、活性水素含有基のいずれであってもよく、エポキシ基を含む化合物と、活性水素含有基を含む化合物の両者の化合物を含む場合は、両者の合計を化合物(A)又は化合物(B)の量とする。例えば、モノエポキシ樹脂類が1質量%で、モノフェノール化合物類が2質量%の場合、化合物類(B)の含有量は3質量%となる。
【0036】
活性水素含有基としては、エポキシ基と反応性の官能基である水酸基やアミノ基やカルボキシル基や活性リンなどの官能基があり、好ましい官能基はフェノール性水酸基である。
【0037】
官能基を3つ以上有する化合物(A)の使用量の好ましい範囲は、X+Y+A+Bの合計に対し、0.05〜5質量%であることがよく、より好ましい範囲は、0.2〜3質量%、最も好ましくは0.3〜2質量%である。ここで、Aは化合物(A)の使用量であり、Bは2価フェノール化合物(B)の使用量である。
化合物(A)が5質量%より多い場合では、化合物(B)の使用量がどの範囲であっても、重合反応時の3次元架橋反応が制御できず不溶化する恐れがある。また、化合物(A)を含まずに重合反応すると、比較的低粘度のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得ることができない。
【0038】
官能基を1つ有する化合物(B)の使用量の好ましい範囲は、X+Y+A+Bの合計に対し、0.05〜5質量%であることがよく、より好ましい範囲は0.1〜4質量%であり、最も好ましくは0.2〜3質量%である。化合物(B)が5質量%より多い場合では、官能基を3つ以上有する化合物類(A)の含有量がどの範囲であっても、得られるポリヒドロキシポリエーテル樹脂の低分子量成分が増加し可塑性が失われて十分なフィルム性能を得ることができない。また、化合物(B)を含まずに重合反応すると、3次元架橋反応が制御できず不溶化する恐れがある。
【0039】
また、本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、重量平均分子量Mwが15,000〜100,000の範囲である。ここで、重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量をいう。Mwが15,000未満では、熱可塑性が失われて十分なフィルム性能を得ることができず、100,000を超えると極めて高粘度化してしまい、樹脂の取り扱いが困難となる。フィルム性能と低粘度化の両面からみて、好ましくは15,000〜70,000であり、より好ましくは20,000〜60,000であり、最も好ましくは25,000〜40,000である。Mwは、エポキシ基とOH基のモル比を制御するなどの手段により、変化させることができる。
【0040】
本発明で使用する2官能エポキシ樹脂(X)について説明する。一般に、2官能エポキシ樹脂類と2価フェノール化合物類とを反応させて高分子量エポキシ樹脂、いわゆるフェノキシ樹脂を製造する場合の2官能エポキシ樹脂の純度は96質量%以上が好ましいとされている。96質量%未満で、モノエポキシ樹脂が多いと反応が進行せずに高分子量化できない。また、96質量%未満で、3官能以上の多官能エポキシ樹脂が多いと反応時に3次元網目構造化が進み反応制御が困難になることが知られている(特許文献6、特許文献7)。
【0041】
一方、一般にフェノール化合物とエピハロヒドリンでエポキシ樹脂を製造する場合、主反応で得られるエポキシ樹脂以外にさまざまな副生成物が生成されるのとが知られている(非特許文献3)。
【0042】
2価フェノール化合物類とエピクロルヒドリンとの反応で副生成物のうち、本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を製造する上でその含有量を考慮しなければならない副生成物として、(1)加水分解性塩素体、(2)1,2−グリコール体、(3)反応溶媒であるアルコール成分との付加体、(4)高分子量体となった2級水酸基とエポキシ基の付加反応物が挙げられる。
【0043】
これらの副生成物は液体クロマトグラフで簡単に定性・定量することができる(特許文献8)。理論的にはこれらの副生成物は繰り返し体を有しているはずであるが、n=0体以外は液体クロマトグラフで検出限界以下であり無視できる含有量である。
【0044】
これらの副生成物のうち、官能基を3つ以上有する化合物(A)、即ち、3官能以上の多官能エポキシ樹脂類は、(4)高分子量体に生成した2級水酸基とエポキシ基の付加反応物(以下、成分A1という。)であり、官能基を1つ有する化合物(B)、即ち、モノエポキシ樹脂類は、(1)加水分解性塩素体(以下、成分B1という。)、(2)1,2−グリコール体(以下、成分B2という。)、(3)反応溶媒であるアルコール成分との付加体(以下、成分B3という。)である。
【0045】
また、市販されている2価フェノール化合物の中にはビスフェノールFのように不純物として3価以上の多価フェノール化合物類を含有しているものもある。これらのフェノール化合物とエピハロヒドリンから得られるエポキシ樹脂には3官能以上の多官能エポキシ樹脂が含まれる。これらの成分は化合物(A)に相当する。以下、原料フェノール中に含まれる3価以上の多価フェノール類を成分A2といい、エポキシ樹脂中で生成した3官能以上の多官能エポキシ樹脂を成分A3いう。
【0046】
2官能エポキシ樹脂に含まれる不純物としての3官能以上の多官能エポキシ樹脂(成分A3)は通常精製工程で取り除かれる場合が多いが、工程の簡素化やエポキシ樹脂の反応性向上のため意図的に残されていることもある。また、2価フェノール化合物類に不純物として含まれる3価以上の多価フェノール化合物(成分A2)は通常精製工程で取り除かれる場合が多いが、工程の簡素化のため残されていることもある。本発明では、官能基を3つ以上有する化合物(A)の含有量は、2官能エポキシ樹脂類の不純物成分や2価フェノール化合物類の不純物成分や反応時に添加する多官能成分も区別せずにその総和で論じる。但し、化合物(A)としては、上記成分A1、A2、A3に限らず、上記官能基を3以上有する任意の他の3官能以上の化合物を含む。なお、検出限界以下の場合は、0とする。
【0047】
2官能エポキシ樹脂類に含まれる不純物としてのモノエポキシ樹脂類は通常精製工程でほとんど取り除かれるが、エポキシ樹脂の改質を目的に意図的に多く残すことがある。例えば、特許文献9では、1,2−グリコール体(成分B2)を増やす製造方法が開示されている。
【0048】
また、ドデカン酸などのモノカルボン酸やパラターシャリーブチルフェノールなどのモノフェノール類で代表される1価の活性水素含有基を有する化合物と2官能エポキシ樹脂との付加反応後に得られるエポキシ樹脂類は、モノエポキシ樹脂類(以下、成分B4という。)となる。
【0049】
本発明では、官能基を1つ有する化合物類(B)の含有量は、2官能エポキシ樹脂類の副生成成分やフェニルグリシジルエーテルなどのモノエポキシ樹脂類、1価の活性水素基を有する化合物類、1価の活性水素基を有する化合物類と2官能エポキシ樹脂類から生成する1官能エポキシ樹脂類(B)や2価フェノール化合物類の副生成成分や1価の活性水素基を有する化合物類を含めた総和で論じる。但し、化合物(B)としては、上記成分B1、B2、B3、B4に限らず、上記官能基を1つ有する任意の他の1官能の化合物を含む。
【0050】
例えば、2官能エポキシ樹脂:97.99質量%、成分B1:0.05質量%、成分B2:0.5質量%、成分B3:0.5質量%、成分A1:1質量%のエポキシ樹脂95部(質量部。以下、同じ。)と、2官能エポキシ樹脂30質量%と3官能以上のエポキシ樹脂70質量%からなるノボラックエポキシ樹脂5部をエポキシ
樹脂とし、
3核体(3価フェノール化合物)を不純物として0.5質量%含有する2価フェノール化合物99部を2価フェノール
化合物として用いて本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を製造する場合、化合物(A)と化合物(B)のそれぞれの含有量は、計算で簡単に求められる。即ち、官能基を3つ以上有する化合物(A)は、(1×95+70×5+0.5×99)/(95+5+99)=2.48質量%、官能基を1つ有する化合物(B)は、((0.05+0.5+0.5)×95+0×5+0×99)/(95+5+99)=0.50質量%となる。
【0051】
従来のポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造では、前述したとおり、これらの不純物のない原料、又は無視できる程度に微量な量しかない原料を選別して使用することが一般的である。
【0052】
本発明の製造方法で使用されるエポキシ樹脂(X)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなどの単環2価フェノールのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、2価アルコールのジグリシジルエーテル、フタル酸、イソフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸などの2価カルボン酸のジグリシジルエステルのようなエポキシ樹脂が挙げられ、好ましくは一般式(1)〜(3)で表わされるフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、又はビフェノール型エポキシ樹脂である。これらのエポキシ樹脂はアルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの悪影響のない置換基で置換されていても良い。これらのエポキシ樹脂は複数種を併用して使用することもできる。
【0053】
具体的な例としてはエポトートZX−1201(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、エポトートTX−0710、エポトートTX−0902(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、エピクロンEXA−1515(大日本化学工業株式会社製ビスフェノールS型エポキシ樹脂)、jER YX4000H(三菱化学株式会社製ビフェニル型エポキシ樹脂)、エポトートYD−128、エポトートYD−8125、エポトートYD−825GS(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、エポトートYDF−170、エポトートYDF−8170、YDF−870GS(新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、YSLV−80XY(新日鉄住金化学株式会社製テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エポトートYDC−1312(ヒドロキノン型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1355、エポトートZX−1711(新日鉄住金化学株式会社製ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、YSLV−120TE(新日鉄住金化学株式会社製ビスチオエーテル型エポキシ樹脂)、エポトートZX−1684(新日鉄住金化学株式会社製レゾルシノール型エポキシ樹脂)、TX−0929、TX−0934、TX−1032(新日鉄住金化学株式会社製アルキレングリコール型エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0054】
また、2価フェノール化合物(Y)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレンなどのビスフェノール類、ビフェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレンなどのようなフェノール化合物が挙げられ、好ましくは一般式(1)〜(3)で表わされるビスフェノールフルオレン、ビスフェノールS、又はビフェノールである。これらの少なくとも1つを、2価フェノール化合物(Y)中の50〜100質量%含むことがよい。
2価フェノール化合物は、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基などの悪影響のない置換基で置換されていても良い。これらの2価フェノール化合物は複数種を併用して使用することもできる。具体的にこれらの2価フェノールの中で好ましいものは、4,4’−(9H−フルオレン−9,9−ジイル)ビスフェノール、ビスフェノールS、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールである。
【0055】
式(1)〜(3)中、R
1〜R
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐アルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜12のアリール基が好ましく挙げられ、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、炭素数7〜13のアリール基が好ましく挙げられる。
具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基や、シクロヘキシル基などの炭素数6の環状アルキル基や、フェニル基、ナフチル基、トリル基、トリチル基、キシリル基、インデニル基などの置換基を有していてもよいアリール基や、ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、3,5−ジメチルベンジル基、α−メチルベンジル基などの置換基を有していてもよいアラルキル基などの置換基が挙げられ、好ましい置換基はメチル基、エチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシル基、フェニル基、α−メチルベンジル基である。これらの置換基は1種類でも複数種でも置換されていて良い。
【0056】
本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造方法では、その合成反応の工程において溶媒を用いても良く、その溶媒としてはポリヒドロキシポリエーテル樹脂を溶解し、反応に悪影響のないものであればどのようなものでも良い。例えば、芳香族系炭化水素、ケトン類、アミド系溶媒、グリコールエーテル類などが挙げられる。芳香族系炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサンなどが挙げられる。アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの溶媒は2種以上併用することができる。使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、固形分濃度が35%〜95%となるようにすることが好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じる場合は反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留などにより除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0057】
反応温度は使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度は、好ましくは50〜230℃、より好ましくは120〜200℃であり、最も好ましくは150〜170℃である。反応圧力は通常、常圧であるが、アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶剤のフラッシュ蒸発・凝縮還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0058】
本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂には難燃性の付与のためにハロゲン元素やリン元素を導入しても良い。ハロゲン元素導入により難燃性を付与する場合は、ハロゲン含有量が5質量%未満では十分な難燃性を付与できない。5質量%以上ではどの濃度でも難燃性が付与可能となるが、40質量%以上の濃度にしても難燃性の向上は認められないことから、実用上、ハロゲン含有量を5質量%から40質量%の範囲に制御するのが好ましい。本発明において、ハロゲン元素の種類はいずれのものでもよいが、商業生産の観点からは市販されている臭素化合物、塩素化合物、フッ素化合物の中から上記ハロゲン含有量の範囲のものを利用することになる。
【0059】
また、リン元素導入により難燃性を付与する場合は、リン含有量が0.5質量%未満では十分な難燃性を付与できない。6質量%以上ではどの濃度でも難燃性が付与可能となるが、6質量%以上の濃度にしても難燃性の向上は認められないことから、実用上、リン含有量を0.5質量%から6質量%の範囲に制御するのが好ましい。本発明において、リン元素の導入は、商業生産の観点からは市販されている9,10−ジヒドロ−10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなどのリン含有2価フェノール化合物や9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなどの1価の活性水素含有基を有するリン化合物を、官能基を1つ有する化合物類(B)の含有量の範囲内で利用することになる。
【0060】
従来のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を含んだ樹脂組成物では、ガラス転移温度を上げると高耐熱性が得られるが樹脂粘度も高くなり、実用粘度に下げるため好ましくない希釈成分の配合が必要だったが、本発明では好ましくない希釈成分の配合が必要ない。これらの効果はガラス転移温度が高いほど顕著に表れ、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のガラス転移温度が130℃以上の場合、粘度低下効果が顕著となる。ガラス転移温度は150℃以上であればさらに好ましい効果を示し、ガラス転移温度は180℃以上ではより効果が大きく示される。なお、200℃以上のガラス転移温度の場合、本発明の手法をとらないと実用可能な比較的低粘度のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得ることができない。配合時に物性上好ましくない希釈成分が必要となる溶融粘度は用途によっても異なるが、おおむね240℃での溶融粘度が10,000Pa・s以上の場合である。240℃での溶融粘度が5,000〜10,000Pa・sの場合は、希釈成分以外の配合物、例えば、エポキシ樹脂や硬化剤の選択で実用的な配合が可能である。
【0061】
本発明で述べるガラス転移温度は、JIS K−7121に順じる。即ち、示差走査熱量測定(DSC)において、5℃/minの昇温速度で、室温から280℃まで昇温した時の2回目の接線より求めた値を示す。
【0062】
また、溶融粘度はハーケ社製RheoStress600を分析装置に使用し、ずりによる応力制御を、直径20mmのパラレルコーンを用いて、Ghamma:0.2%、ギャップ:0.5mmの設定で試料0.2gを測定し、240℃のずり応力からの粘度換算値から求めた。
【0063】
本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂を必須成分とする樹脂組成物には、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に加えて、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶剤、無機充填剤、繊維基材などの種々の材料を併用することができる。
【0064】
併用することができるエポキシ樹脂としては分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂が使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とグリオキサールやヒドロキシベンズアルデヒドやクロトンアルデヒドなどのアルデヒド類との縮合ノボラック類にエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などの種々のエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物中に使用することができる硬化剤としては、各種フェノールノボラック樹脂、酸無水物類、アミン類、ジシアンジアミドなどが挙げられる。具体的に例示すれば各種フェノールノボラック樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオールなどの2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノールなどに代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類などの1価のフェノール類や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオールなどの2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−キシリレングリコールなどの縮合剤により合成される多価フェノール性化合物などが挙げられる。これらのフェノール性硬化剤にインデン又はスチレンを反応させたものを硬化剤に用いても良い。酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。また、アミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香族アミン類や、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族アミン類が挙げられる。これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。硬化剤の添加量としては、通常、本発明の樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、10〜100質量部の範囲である。
【0066】
さらに必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、公知の硬化促進剤を用いることができる。使用できる硬化促進剤を具体的に例示すれば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボランなどのホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、ルイス酸などが挙げられる。これら硬化促進剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。硬化促進剤は本発明の樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、0.02〜5.0質量部が必要に応じて用いられる。硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げることができるし、硬化時間を短縮することができる。
【0067】
さらに、必要に応じて溶剤を添加しても良く、その溶剤としては、具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノールなどが挙げられ、これらの溶剤は単独又は、2種類以上混合して使用することができる。
【0068】
さらに、必要に応じて本発明の組成物には、フィラーを用いることができる。具体的には水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、ベーマイト、酸化チタン、ガラス粉末、球状あるいは破砕状の溶融シリカ、結晶シリカなどのシリカ粉末、シリカバルーンなどの無機フィラーが挙げられる。一般的無機充填材を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を用いた場合、難燃助剤として作用し、難燃剤の量を減らすことができる。特に配合量が10%以上でないと、耐衝撃性の効果は少ない。しかしながら、配合量が150%を越えると積層板用途として必要な項目である接着性が低下する。また、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維などの繊維質充填材や微粒子ゴム、熱可塑性エラストマーなどの有機充填材を上記樹脂組成物に含有することもできる。
【0069】
さらに、必要に応じて本発明の組成物には、その他、保存安定性の為の紫外線防止剤、可塑剤など、カップリング剤としてシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤など、繊維基材が使用可能である。繊維基材としては例えばガラス布などの無機繊維布、ガラス繊維不織布、有機繊維不織布などが挙げられる。また、難燃性を付与する為に、ハロゲン系、リン系、窒素系、シリコン系などの難燃剤などを添加しても良い。
【0070】
さらに、本発明の樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂などのオリゴマー又は高分子化合物を適宜配合してもよいし、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤などの添加剤を配合してもよい。顔料としては、有機系又は無機系の体質顔料、鱗片状顔料などがある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系などを挙げることができる。また更に必要に応じて、本発明のエポキシ樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックスなどの離型剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのカップリング剤、カーボンブラックなどの着色剤、三酸化アンチモンなどの難燃剤、シリコンオイルなどの低応力化剤、ステアリン酸カルシウムなどの滑剤などを使用できる。
【0071】
これらの樹脂組成物は従来の多層電子回路基板やビルドアップ法などの新しいプリント配線板に使用できる。特にビルドアップ法プリント配線板用材料として使用される樹脂付き銅箔、接着フィルムなどの形態での使用が好ましい。ビルドアップ法とは、ガラスプリプレグを積層した内層回路板上に、40〜90μmのフィルム(絶縁層)あるいは、銅箔付きのフィルム(銅箔:9〜18μm)からなる絶縁層であるビルドアップ層を積層していく方法であり、一般的に回路形成工程として、積層プレス工程・レーザー又はドリルによる穴あけ工程・デスミア/メッキ工程となる。そして、従来の積層板に比べ同性能のものなら、実装面積・重量ともに約1/4になる、小型・軽量化のための優れた工法である。特に、本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、フィルム化に適しておりビルドアップ絶縁層として好適に使用することができる。
本発明でいう電気積層板とは、プリント配線板、ビルドアップ積層板やフレキシブル積層板などを含む絶縁基板に用いられる積層板のことである。
【0072】
本発明に係る絶縁フィルムを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、(イ)本発明の樹脂組成物を押出機にて混練した後に押出し、Tダイやサーキュラーダイなどを用いてシート状に成形する押出成形法、(ロ)本発明の樹脂組成物を有機溶剤などの溶媒に溶解又は分散させた後、キャスティングしてシート状に成形するキャスティング成形法、(ハ)従来公知のその他のシート成形法などが挙げられる。また、絶縁フィルムの膜厚は、特に限定はされないが、例えば10〜300μm、好ましくは25〜200μm、より好ましくは40〜180μmである。ビルドアップ法で使用する場合は40〜90μmが最も好ましい。膜厚が10μm以上であれば絶縁性を得ることができるし、300μm以下であれば電極間の回路の距離が必要以上に長くならない。なお、絶縁フィルムの溶媒の含有量は特に限定はされないが、樹脂組成物全体に対し、0.01〜5質量%であることが好ましい。フィルム中の溶媒の含有量が樹脂組成物全体に対し、0.01質量%以上であれば、回路基板へ積層する際に密着性や接着性が得られ、また、5質量%以下であれば加熱硬化後の平坦性が得られる。なお、これらの絶縁フィルムには接着性を有した接着フィルムも含んでいる。
【0073】
本発明の樹脂組成物を硬化することによって樹脂硬化物を得ることができる。硬化の際には例えば樹脂シート、樹脂付き金属箔、プリプレグなどの形態とし、積層して加熱加圧硬化することで積層板を得ることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明する。以下の合成例、実施例及び比較例に於いて、「部」は「質量部」を示す。
【0075】
本発明では以下の分析方法を使用した。
(エポキシ当量) JIS K−7236に記載の方法。即ち、試料をクロロホルム10mLに溶解し、無水酢酸20mL、20%の臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mLをそれぞれ加えて、電位差滴定装置を用いて0.1mol/L過塩素酸酢酸標準液で滴定する。
【0076】
(加水分解性塩素) JIS K−7243−2に記載の方法。即ち、試料を2−ブトキシエタノール25mLに溶解し、120g/L水酸化ナトリウムの2−ブトキシエタノール溶液25mLを加えて室温で30分反応させる。次いで電位差滴定装置を用いて0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定する。
【0077】
(1,2−グリコール) 試料をクロロホルム25mLに溶解し、0.2mol/L過よう素酸のメタノール溶液を加えて、室温で2時間反応させる。反応後、冷水100mL、10%硫酸水溶液5mLを加え、更に20%よう化カリウム水溶液20mLを加えて、でんぷん溶液を指示薬として0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定する。同時に空試験を実施して、空試験との滴定量の差をサンプル量で除した値を1,2−グリコール(meq/100g)とした。
【0078】
(粘度) JIS K−7233に記載の方法。即ち、500mLの円筒缶に樹脂400gをはかりとり、25±0.2℃の恒温水槽で5時間放置して恒温にする。回転粘度計のローターを樹脂に浸漬して測定を行う。
【0079】
(液体クロマトグラフ分析) 試料を0.10gはかりとりアセトニトリル10mLにて溶解した。溶解した試料をオートサンプラーにセットして注入量0.8μLで測定した。なお、分析条件は以下のとおりである。
HPLC分析装置:ヒューレットパッカード社製シリーズ1100
検出器:紫外可視検出器測定波長260nm
カラム:インタクト社製カデンツァCD−C18内径4.6mm×長さ10cm
カラム温度:40℃
移動相:水/アセトニトリル(グラジエント分析)
アセトニトリル60%(5分保持)→13分→アセトニトリル100%(7分保持)
流量:1mL/min
【0080】
(分子量) ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンによる重量平均分子量の換算値を分子量とした。なお、分析条件は以下のとおりである。
GPC分析装置:東ソー社製HLC−8020
カラム:東ソー社製HXL−H×1本+G2000HXL×1本+GMHXL×2本
試料濃度:1%テトラヒドロフラン溶液
注入溶液量:100μL
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1mL/min
検出器:示差屈折率計
較正法:標準ポリスチレンによる換算
【0081】
(溶融粘度) ハーケ社製RheoStress600を分析装置に使用し、ずりによる応力制御を、直径20mmのパラレルコーンを用いて、Ghamma:0.2%、ギャップ:0.5mmの設定で試料0.2gを測定し、240℃のずり応力からの粘度換算値を溶融粘度とした。
【0082】
(ガラス転移温度) JIS K−7121に順じる。即ち、示差走査熱量測定(DSC)において、5℃/minの昇温速度で、室温から280℃まで昇温した時の2回目の接線から求めた。
【0083】
(接着力) JIS K6854−1に記載の方法。即ち、オートグラフにて、90度剥離強度を23℃、65%RHの雰囲気下、剥離速度:50mm/minの条件により測定した。
【0084】
(ハンダ耐熱性試験) 100℃、2時間煮沸後のサンプルを、n=5で、260℃の半田浴に浸け、全て20秒以上膨れや剥がれを生じなかったものを○とし、それ以外を×とした。
【0085】
(吸湿率) 試験片を125℃のオーブン中で24時間乾燥した後の乾燥質量を測定し、引き続き、温度85℃、湿度85%RHに調整した処理槽内に168時間保管した後の質量を測定し、乾燥質量からの増加分に基づいて吸湿率を測定した。
【0086】
(回路埋め込み性) 外層銅箔を剥がした後の内層回路に、樹脂が全ての箇所に埋め込まれているものを○とし、それ以外を×とした。
【0087】
(2官能エポキシ樹脂(X)の品質)
2官能エポキシ樹脂(X)として、
3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノール(試薬、水酸基当量=121g/eq)とエピクロルヒドリンから得られた3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル(品質差からエポキシ樹脂(1)とエポキシ樹脂(2)の2種類に区別した)、
9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガス株式会社製、製品名:BPF、水酸基当量=175g/eq)とエピクロルヒドリンから得られた9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル(品質差からエポキシ樹脂(3)〜エポキシ樹脂(5)の3種類に区別した)と、
3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(試薬、製品名:TMBPS、水酸基当量=153g/eq)とエピクロルヒドリンから得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンのジグリシジルエーテル(エポキシ樹脂(6))を使用した。
また、多官能エポキシ樹脂として、YDPN−638(新日鉄住金化学株式会社製、フェノールノボラックエポキシ樹脂)を使用した。
また、副生成物として含有する、官能基を3つ以上有する化合物(A)の含有量と官能基を1つ有する化合物(B)の含有量は、液体クロマトグラフ分析で求めた。
図1にはエポキシ樹脂(1)の液体クロマトグラフチャートを示した。表1には使用した各種エポキシ樹脂の品質を示した。
【0088】
図1中、(a)は1,2−グリコール体(成分B1)を、(b)は加水分解性塩素体(成分B2)を、(c)はn=0の2官能エポキシ樹脂を、(d)はn=0の2官能エポキシ樹脂と反応溶媒である2−プロパノールとの付加体(成分B3)を、(e)はn=1の2官能エポキシ樹脂を、(f)はn=1の2官能エポキシ樹脂の2級水酸基とエピクロルヒドリンとの付加体(成分A1)を、(g)はn=2の2官能エポキシ樹脂を、(h)はn=1の2官能エポキシ樹脂の2級水酸基とn=0の2官能エポキシ樹脂との付加体(成分A1)を、(i)はn=3の2官能エポキシ樹脂を、(j)はn=2の2官能エポキシ樹脂の2級水酸基とn=0の2官能エポキシ樹脂との付加体(成分A1)をそれぞれ示している。官能基を3つ以上有する化合物(A)は、(f)と(h)と(j)であり、官能基を1つ有する化合物(B)は、(a)と(b)と(d)である。
【0089】
【表1】
【0090】
(2価フェノール(Y)の品質)
2価フェノール(Y)として、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(前述、BPF)、4,4’−ビフェノール(本州化学工業株式会社製、製品名:ビフェノール、水酸基当量=93g/eq)、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(前述、TMBPS)を使用した。
また、3価以上の多価フェノール化合物として、フェノールノボラック樹脂(本州化学工業株式会社製、製品名:BRG−555、水酸基当量=105g/eq)を使用した。
また、1価フェノール化合物としてパラフェニルフェノール(試薬特級、水酸基当量=170g/eq)を使用した。
その他の原料として、官能基を3つ以上有する化合物類(A)としてパラアミノフェノール(試薬特級、活性水素当量=36g/eq)を、官能基を1つ有する化合物類(B)としてドデカン酸(試薬特級、カルボキシル基当量=200g/eq)を使用した。
官能基を3つ以上有する化合物類(A)の含有量と官能基を1つ有する化合物類(B)の含有量は、液体クロマトグラフ分析で求めた。表2に使用した各種化合物の品質を示した。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例1
エポキシ樹脂(1)106.7g、BPF93.4g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成式会社製、製品名:2E4MZ)0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。6時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(I)という。)190gを得た。
【0093】
樹脂(I)30gを混合溶媒(メチルエチルケトン/トルエン/テトラヒドロフラン=2/2/1[質量比])30gに溶解した溶液をセパレータフィルム(PETフィルム)上にロールコータを用いて塗布し、130℃のオーブン中で30分間乾燥して、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。樹脂フィルムを4mm×20mmの大きさに切り出してガラス転移温度測定用試験片とした。
【0094】
樹脂(I)の重量平均分子量(Mw)は43,800であり、数平均分子量(Mn)は10,100であり、Mw/Mnは4.34であった。樹脂(I)の溶融粘度は2,000Pa・sであった。樹脂(I)のガラス転移温度は158℃であった。結果を表3に示した。
【0095】
実施例2
エポキシ樹脂(1)77.8g、エポキシ樹脂(2)29g、BPF93.4g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒としてトリフェニルホスフィン(北興化学株式会社製、製品名:TPP)0.3gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。5時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(II)という。)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0096】
実施例3
エポキシ樹脂(2)106.8g、BPF93.4g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。9時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(III)という。)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0097】
実施例4
エポキシ樹脂(3)135.3g、パラフェニルフェノール(試薬特級、水酸基当量=170g/eq)6.8gを撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して均一に溶融させた後、触媒としてn−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(日本化学工業株式会社製、製品名:ヒシコーリンBTPPBr)0.05gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら2時間撹拌を続けた。その後、YDPN−638(前述)8.7g、ビフェノール(前述)49.3g、及びシクロヘキサノン67gを加え、均一に溶解させた後、触媒としてヒシコーリンBTPPBr(前述)0.25gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。5時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(IV)とする)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0098】
実施例5
エポキシ樹脂(3)59.7g、エポキシ樹脂(4)59.7g、BPF80.6g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。4時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(V)とする)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0099】
実施例6
エポキシ樹脂(4)55.3g、エポキシ樹脂(5)64.0g、BPF80.7g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。9時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(VI)とする)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0100】
実施例7
エポキシ樹脂(6)118.5g、TMBPS72.0g、パラフェニルフェノール3.6g、BRG−5555.9g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ(前述)0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。6時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(VII)とする)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0101】
実施例8
エポキシ樹脂(5)120.3g、BPF77.0g、パラアミノフェノール1.0g、ドデカン酸1.7g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒としてTPP0.3gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。8時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(VIII)とする)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0102】
比較例1
エポキシ樹脂(5)119.3g、BPF80.8g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。8時間撹拌した後、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(IX)とする)190gを得た。実施例1と同様にして、評価した結果を表3に示す。
【0103】
比較例2
エポキシ樹脂(2)113.6g、TMBPS86.5g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。1.5時間撹拌した時点で反応液の増粘が始まり、シクロヘキサノン67gを追加し均一化したが増粘傾向は収まらず、2時間たった時点で撹拌不能となった。反応液をテトラヒドロフランに溶解しようとしたが不溶のため分子量の測定はできなかった。
【0104】
比較例3
エポキシ樹脂(4)147.3g、ビフェノール52.8g、及びシクロヘキサノン67gを、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、マントルヒーターで130℃まで加熱しながら撹拌して完全に溶解させた後、触媒として2E4MZ0.06gを加え、反応温度を160℃〜170℃に保ちながら撹拌を続けた。6時間での分子量は14,600であった。さらに撹拌を続けたが、12時間での分子量は14,900であったため、反応が進行しない判断し、メチルエチルケトン134gを加えて均一にした後、反応液をステンレス製バットに受け、160℃に保持されている真空オーブン中に入れ、オーブンの内部圧力が0.4kPaに到達してから60分保持して溶剤を除去し、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(樹脂(X)とする)190gを得た。
【0105】
樹脂(I)の代わりに樹脂(X)を使用した以外は実施例1と全く同様に操作を行ったが、乾燥後の樹脂はフィルム状にならなかった。
結果をまとめて表3に示す。成分(A)量、成分(B)量は、化合物(A)、化合物(B)の含有率(質量%)である。
【0106】
【表3】
【0107】
比較例1は高純度の2官能エポキシ樹脂と高純度の2価フェノ−ル化合物から得られる従来製法のポリヒドロキシポリエーテル樹脂である。実施例5や実施例6と比較例1を比較すると、分子量がほとんど変わらないのに溶融粘度が実施例の方がかなり低くなっている。また、実施例6は高分子量にもかかわらず、比較例1より溶融粘度が半分以下になっている。比較例2では3官能以上の多官能エポキシ樹脂(A)が多いため、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造に大きな問題がある。比較例3では官能基を1つ有する化合物類(B)が多いため、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂をフィルム化可能な分子量まで高くすることができない。しかしながら、このような原料を使用しても、実施例2や実施例3のように3官能以上の多官能エポキシ樹脂(A)と官能基を1つ有する化合物(B)の量を制御することで目的とするポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得ることができる。また、実施例4や実施例7のように意図的にモノエポキシ変性した樹脂を使用しても3官能以上の多官能エポキシ樹脂や3価以上の多価フェノール化合物を適当量配合することで、目的とするポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得ることができる。実施例8のように意図的に3官能以上の官能基を有する化合物(A)と官能基を1つ有する化合物(B)を同時に適当量配合することで、目的とするポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得ることができる。
【0108】
実施例9
(樹脂組成物の評価)
実施例1で得られた樹脂(I)100gとビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:YD−128、エポキシ当量:187g/eq、粘度:12,800mPa・s/25℃、加水分解性塩素:240ppm)100gを混合溶媒(前述)200gに溶解した後、硬化剤としてジシアンジアミド(日本カーバイト株式会社製、以後、DICYとする)5.6gを別に混合溶解しておいたDICY溶液(DICY(前述)/エチレングリコールモノメチルエーテル/N,N−ジメチルホルムアミド(質量比)=5.6/21/21)として加え、さらに硬化促進剤として2E4MZ0.5gを10質量%メチルエチルケトン溶液として加え、均一に混合して樹脂組成物ワニスを得た。この樹脂組成物ワニスをセパレータフィルム(ポリイミドフィルム)上にロールコータを用いて塗布し、130℃のオーブン中で30分間乾燥して、厚さ50μmの樹脂フィルムを得た。セパレータフィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを200℃のオーブン中で60分間硬化させて硬化フィルムを得た。硬化フィルムから4mm×20mmの大きさに切り出してガラス転移温度測定用試験片とした。硬化フィルムから20mm×20mmの大きさに切り出して吸湿率測定用試験片とした。それとは別に、樹脂組成物ワニスを厚さ35μmの銅箔のアンカー面に溶剤乾燥後の樹脂厚みが50μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃のオーブンで10分間溶剤乾燥を行って接着剤付き銅箔を得た。一方、模擬内層回路基板として、線間100μmピッチの銅黒化処理済みのガラスエポキシ銅張両面板積層板を用い、この模擬内層回路基板の両面に前記の接着剤付き銅箔をドライラミネーターでラミネートし、180℃、2時間加熱硬化させて、4層のプリント配線板を得た。結果は表4に示した。
【0109】
実施例10
実施例3で得られた樹脂(III)を使用した以外は実施例9と全く同様に硬化フィルム、ガラス転移温度測定用試験片、吸湿率測定用試験片、接着剤付き銅箔、及び4層のプリント配線板を得た。結果は表4に示した。
【0110】
実施例11
実施例4で得られた樹脂(IV)を使用した以外は実施例9と全く同様に硬化フィルム、ガラス転移温度測定用試験片、吸湿率測定用試験片、接着剤付き銅箔、及び4層のプリント配線板を得た。結果は表4に示した。
【0111】
実施例12
実施例6で得られた樹脂(VI)を使用した以外は実施例9と全く同様に硬化フィルム、ガラス転移温度測定用試験片、吸湿率測定用試験片、接着剤付き銅箔、及び4層のプリント配線板を得た。結果は表4に示した。
【0112】
比較例4
比較例1で得られた樹脂(IX)を使用した以外は実施例9と全く同様に硬化フィルム、ガラス転移温度測定用試験片、吸湿率測定用試験片、接着剤付き銅箔、及び4層のプリント配線板を得た。結果は表4に示した。
【0113】
比較例5
比較例1で得られた樹脂(IX)100gとYD−128(前述)80gと反応性希釈材料としてシクロヘキサンジメタノールとエピクロルヒドリンから得られたシクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:ZX−1658、エポキシ当量:139g/eq、粘度:45mPa・s/25℃、加水分解性塩素:90ppm)20gを混合溶媒(前述)200gに溶解した後、硬化剤としてDICY(前述)6gを別に混合溶解しておいたDICY溶液(前述)として加え、さらに硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.55gを10質量%メチルエチルケトン溶液として加え、均一に混合して樹脂組成物ワニスを得た。この樹脂組成物ワニスを使用した以外は実施例9と全く同様に硬化フィルム、ガラス転移温度測定用試験片、吸湿率測定用試験片、接着剤付き銅箔、及び4層のプリント配線板を得た。結果は表4に示した。
【0114】
【表4】
【0115】
実施例と比較例を比較すると、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の溶融粘度の高い比較例4のみが回路埋め込み性が悪い。また、樹脂粘度を下げるために反応性希釈材を使用した比較例5では、回路埋め込み性は改善されたが、吸湿性が悪化し、ハンダ耐熱性が悪化した。