(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第12レンズ群は、物体側から順に、互いに隣接する1枚の正レンズと、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズと、像側に凹面を向けた1枚の負レンズとを有する請求項1記載の撮像レンズ。
前記3枚接合レンズは、像側に凸面を向けた正レンズ、負レンズ、および像側に凸面を向けた正レンズを物体側からこの順に接合してなる請求項1または2記載の撮像レンズ。
無限遠物体から近距離物体へのフォーカス調整において、前記第2レンズ群における前記3枚接合レンズの像側の前記1枚以上のレンズから、前記第2レンズ群の最も像側のレンズまでが固定されている請求項8または9記載の撮像レンズ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラ、特に一眼レフカメラの交換レンズとして用いられる撮像レンズにおいては、レンズ系と撮像素子との間に各種光学素子を挿入するため、あるいはレフレックスファインダー用の光路長を確保するために、長いバックフォーカスが必要な場合がある。このような場合、レトロフォーカスタイプのパワー配置が適している。
【0006】
一方、上述したAPSフォーマット等の大型の撮像素子を用いた撮像装置においても、レフレックスファインダーを持たないレンズ交換式のカメラ、あるいはレンズ一体型のコンパクトカメラ等、その構成によっては、一眼レフカメラ用の交換レンズほどの長いバックフォーカスを必要としない場合がある。
【0007】
ここで、特許文献1〜3に記載の撮像レンズは、共通して、最も物体側に負レンズが配置され、絞りから像面側には、負レンズ、正レンズおよび正レンズが配置された構成となっている。このようなタイプの撮像レンズにおいては、長いバックフォーカスおよび光学性能の双方を確保するために、光学全長が必然的に長くなってしまう。
【0008】
特許文献1〜3に記載された撮像レンズを、上述したAPSフォーマット等の大型の撮像素子を用いた撮像装置に対して適用した場合、高い光学性能を確保することができる。しかしながら、システム全体が小型で携帯性に優れた撮像装置に応じて、撮像レンズも小型化することが望まれている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、大型の撮像素子に対応できる光学性能を確保しつつ、全長が短く大口径の明るい撮像レンズ、およびこの撮像レンズを適用した撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、絞り、および正の屈折力を有する第2レンズ群からなり、
第1レンズ群は、物体側から順に、最も広い空気間隔で第11レンズ群と第12レンズ群とに分けられ、
第11レンズ群は負の屈折力を有し、少なくとも1枚の像側に凹面を向けた負レンズからなり、
第12レンズ群は正の屈折力を有し、
第2レンズ群は、物体側から順に 少なくとも1面に非球面を有する非球面レンズと、正レンズ、負レンズ、および正レンズを物体側からこの順に接合した3枚接合レンズとを有
し、
以下の条件式を満足することを特徴とするものである。
Nd2>1.8 … (1)
ただし、
Nd2:3枚接合レンズのうちの正レンズの材質のd線に対する屈折率の平均値
【0011】
本発明においては、凸面、凹面、平面、両凹、メニスカス、両凸、平凸および平凹等といったレンズの面形状、正および負といったレンズの屈折力の符号は、非球面が含まれているものについては特に断りのない限り近軸領域で考えるものとする。また、本発明においては、曲率半径の符号は、面形状が物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負とすることにする。
【0012】
なお、本発明による撮像レンズにおいては、第12レンズ群は、物体側から順に、互いに隣接する1枚の正レンズと、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズと、像側に凹面を向けた1枚の負レンズとを有することが好ましい。
【0013】
また、本発明による撮像レンズにおいては、3枚接合レンズは、像側に凸面を向けた正レンズ、負レンズ、および像側に凸面を向けた正レンズを物体側からこの順に接合してなるものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明による撮像レンズにおいては、第11レンズ群は、少なくとも2枚の像側に凹面を向けた負レンズを有することが好ましい。
【0015】
また、本発明による撮像レンズにおいては、第2レンズ群は、3枚接合レンズの像側に1枚以上のレンズを有し、
無限遠物体から近距離物体へのフォーカス調整は、第2レンズ群のうち、非球面レンズおよび3枚接合レンズを含む一部、または第2レンズ群全体を物体側に移動させることにより行うように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明による撮像レンズにおいては、無限遠物体から近距離物体へのフォーカス調整において、第1レンズ群が固定されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明による撮像レンズにおいては、無限遠物体から近距離物体へのフォーカス調整において、第2レンズ群における3枚接合レンズの像側の1枚以上のレンズから、第2レンズ群の最も像側のレンズまでが固定されていることが好ましい。
【0018】
この場合、固定されているレンズまたはレンズ群は、負の屈折力を有することが好ましい。
【0019】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(1
−1)から(5)のいずれかを満足することが好ましい。なお、好ましい態様としては、条件式(1)から(5)のいずれか1つを満足するものでもよく、あるいは任意の組合せを満足するものでもよい。
【0020】
Nd2>1.85 … (1−1)
Nd12a>1.8 … (2)
Nd12a>1.85 … (2−1)
0<θgF12b−0.6415+0.001618×νd12b … (3)
0.012<θgF12b−0.6415+0.001618×νd12b
…(3−1)
νd12b<35 … (4)
νd12b<27 … (4−1)
νd2p−νd2n>5 … (5)
ただし、
Nd2:3枚接合レンズのうちの正レンズの材質のd線に対する屈折率の平均値
Nd12a:第12レンズ群のうちのd線に対する屈折率が最も高い正レンズの材質のd線に対する屈折率
νd12b :第12レンズ群に含まれる正レンズのうちの1枚のレンズL12bの材質のd線に対するアッベ数
θgF12b:第12レンズ群に含まれる正レンズのうちの1枚のレンズL12bの材質のg線とF線間の部分分散比
νd2p:3枚接合レンズのうちの2枚の正レンズのうち、d線に対するアッベ数が大きい方のレンズの材質のアッベ数
νd2n:3枚接合レンズのうちの負レンズの材質のd線に対するアッベ数
本発明による撮像装置は、上述した本発明による撮像レンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、絞り、および正の屈折力を有する第2レンズ群からなり、第1レンズ群および第2レンズ群のレンズ構成を好適に設定し
、条件式(1)を満足しているため、全長が短く、大口径であり、かつ球面収差および色収差等を含む諸収差が良好に補正された、高い光学性能を有するものとすることができる。
【0022】
本発明による撮像装置は、本発明の撮像レンズを備えているため、小型で安価に構成でき、諸収差が補正された明るく解像度の高い良好な像を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る撮像レンズの構成例を示す断面図であり、後述する実施例1の撮像レンズに対応している。また
図2〜
図5は、本発明の実施形態に係る別の構成例を示す断面図であり、それぞれ後述する実施例2〜5の撮像レンズに対応している。
図1〜
図5に示す例の基本的な構成は、2つのレンズ群を構成するレンズの枚数が異なる点を除いて互いに同様であり、図示方法も同様であるので、ここでは主に
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る撮像レンズについて説明する。
【0025】
図1では左側を物体側、右側を像側として、無限遠合焦状態での光学系配置を示している。また、
図1には、無限遠の距離にある物点からの軸上光束2および最大画角の光束3の各光路を示している。これは、後述する
図2〜
図5においても同様である。
【0026】
本実施形態の撮像レンズは、レンズ群として物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1および正の屈折力を有する第2レンズ群G2から構成されている。なお、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間には、開口絞りStが配置されている。
【0027】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、最も広い空気間隔で第11レンズ群G11と第12レンズ群G12とに分けられている。
【0028】
第11レンズ群G11は、負の屈折力を有し、少なくとも1枚の負レンズ(負の屈折力を有するレンズ)から構成されている。本実施形態では、第11レンズ群G11は、1枚の負レンズL111から構成されている。
【0029】
なお、後述する実施例2,5においても、第11レンズ群G11は同様の構成とされる。一方、実施例3,4では、第11レンズ群G11は、像側に凹面を向けた負の屈折力を有する2枚のレンズL111およびレンズL112から構成されている。
【0030】
第12レンズ群G12は、正の屈折力を有し、かつ物体側から順に、互いに隣接する1枚の正レンズと、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズと、像側に凹面を向けた1枚の負レンズとを有している。本実施形態においては、物体側から順に、1枚の正レンズL121と、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズL122および像側に凹面を向けた1枚の負レンズL123を接合した接合レンズと、両面が非球面とされた、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL124とから構成されている。
【0031】
なお、後述する実施例2においても、第12レンズ群G12は同様の構成とされる。一方、実施例3,4では、レンズL124は両面が球面とされた物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズから構成されている。また、実施例5では、第12レンズ群G12は、物体側から順に、1枚の両凹レンズL121と、1枚の正レンズL122と、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズL123と、両凸レンズL124および両凹レンズL125を接合した接合レンズとから構成されている。
【0032】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、少なくとも1面に非球面を有する非球面レンズと、正レンズ、負レンズ、および正レンズを物体側からこの順に接合した3枚接合レンズとを有している。本実施形態においては、第2レンズ群G2は、物体側から順に、両面が非球面とされたレンズL21と、像側に凸面を向けた正レンズL22、負レンズL23、および像側に凸面を向けた正レンズL24をこの順に接合した3枚接合レンズと、両凸レンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズとから構成されている。
【0033】
なお、後述する実施例2においても第2レンズ群G2は同様の構成とされる。一方、実施例3では、両凸レンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズに代えて、像側に凸面を向けた1枚の負のメニスカスレンズL25から構成されている。また、実施例4では、両凸レンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズに代えて、1枚の両凹レンズL25から構成されている。また、実施例5では、両凸レンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズに代えて、像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズから構成されている。
【0034】
なお、
図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。またここに示すSimは結像面であり、後述するようにこの位置に、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等からなる撮像素子が配置される。
【0035】
また、
図1には、第2レンズ群G2と結像面Simとの間に、平行平板状の光学部材PPが配置された例を示している。撮像レンズを撮像装置に適用する際には、レンズを装着する撮像装置側の構成に応じて、光学系と結像面Simの間にカバーガラス、赤外線カットフィルタやローパスフィルタ等の各種フィルタ等を配置することが多い。上記光学部材PPは、それらを想定したものである。
【0036】
なお、本実施形態の撮像レンズにおいて、フォーカス調整は、第2レンズ群G2における,3枚接合レンズの像側に配置されたレンズL25およびレンズL26の接合レンズを固定し、第2レンズ群G2のレンズL21および3枚接合レンズのみを光軸Zに沿って移動させることにより行われる。ここで、フォーカス調整の際に固定されているレンズL25およびレンズL26の接合レンズは負の屈折力を有する。なお、後述する実施例2,4,5においても、フォーカス調整は、第2レンズ群G2のレンズL21および3枚接合レンズを光軸Zに沿って移動させることにより行われる。なお、実施例4,5において、フォーカス調整の際に固定されている1枚のレンズL25は負の屈折力を有する。一方、実施例3においては、フォーカス調整は、第2レンズ群G2の全体を光軸Zに沿って移動させることにより行われる。
【0037】
本実施形態の撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、絞り、および正の屈折力を有する第2レンズ群G2を配置し、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2が有するレンズ構成を好適に設定しているため、全長が短く、大口径で明るく、球面収差や色収差を始めとする諸収差が良好に補正された、高い光学性能を有するものとすることができる。
【0038】
特に、開口絞りStの物体側に、第12レンズ群G12として、物体側から順に、互いに隣接する1枚の正レンズL121と、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズL122と、像側に凹面を向けた1枚の負レンズL123とを配置することにより、大口径に有利であり、明るいレンズとすることができる。
【0039】
また、第12レンズ群G12の物体側に配置された第11レンズ群G11を少なくとも1枚の負レンズL111から構成することにより、広角化を達成することができる。特に、第11レンズ群G11を、2枚の負レンズL111,L112から構成することにより、負のパワーを2枚に分散させることができ、球面収差および像面湾曲の補正が容易となる。
【0040】
また、開口絞りStの像側に、少なくとも1面に非球面を有する非球面レンズL21と、正レンズL22、負レンズL23、および正レンズL24を物体側からこの順に接合した3枚接合レンズとを配置することにより、非球面レンズにより球面収差を、3枚接合レンズにより軸上色収差および倍率色収差を良好に補正することができる。
【0041】
また、この3枚接合レンズを、像側に凸面を向けた正レンズL22、負レンズL23、および像側に凸面を向けた正レンズL24から構成することで、強い曲率半径としつつも、各面において画角の大きな軸外光線が大きく屈折することを回避でき、収差発生量を抑制することができる。
【0042】
また、フォーカス調整を、第2レンズ群G2のレンズL21および3枚接合レンズのみを光軸Zに沿って移動させることにより、3枚接合レンズの像側に配置されたレンズにより、フォーカス調整時の球面収差の変動および像面湾曲の変動を抑えることが可能となる。また、フォーカス調整時に、第1レンズ群G1を固定することにより、移動するレンズの重量を軽くすることができるため、フォーカススピードを向上できる。また、第2レンズ群G2において、フォーカス調整時に固定されているレンズまたはレンズ群を負の屈折力を有するものとすることにより、フォーカス調整時における収差変動を少なくすることができる。
【0043】
本実施形態の撮像レンズは、上記構成を有するとともに、下記条件式(1)を満足することが好ましい。
【0044】
Nd2>1.8 … (1)
ただし、
Nd2:第2レンズ群G2に含まれる3枚接合レンズのうちの正レンズL22,L24の材質のd線に対する屈折率の平均値
条件式(1)を満足することで、球面収差の増加を防止し、非球面レンズL21が担う球面収差の補正の負担を軽減でき、球面収差とともに、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0045】
また、本実施形態の撮像レンズは、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
【0046】
Nd12a>1.8 … (2)
ただし、
Nd12a:第12レンズ群G12のうちのd線に対する屈折率が最も高い正レンズの材質のd線に対する屈折率
なお、後述する実施例1,2において、第12レンズ群G12のうちのd線に対する屈折率が最も高い正レンズはレンズL121,L122であり、実施例3,4においてはレンズL121であり、実施例5においてはレンズL122,L124である。
【0047】
条件式(2)を満足することで、球面収差の増加を防止し、非球面レンズL21が担う球面収差の補正の負担を軽減でき、球面収差とともに、像面湾曲を良好に補正することができる。
【0048】
また、本実施形態の撮像レンズは、下記条件式(3)、(4)を満足することが好ましい。
【0049】
0<θgF12b−0.6415+0.001618×νd12b … (3)
νd12b<35 … (4)
ただし、
νd12b:第12レンズ群G12に含まれる正レンズのうちの1枚のレンズL12bの材質のd線に対するアッベ数
θgF12b:第12レンズ群G12に含まれる正レンズのうちの1枚のレンズL12bの材質のg線とF線間の部分分散比
なお、あるレンズのg線とF線間の部分分散比θgFとは、そのレンズのg線、F線、C線の屈折率をそれぞれNg、NF、NCとしたとき、θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)で定義されるものである。また、実施例1〜5において、レンズL12bはレンズL122である。
【0050】
条件式(3)、(4)を満足することで、主に軸上の色収差の2次スペクトルを良好に補正することができる。
【0051】
また、本実施形態の撮像レンズは、下記条件式(5)を満足することが好ましい。
【0052】
νd2p−νd2n>5 … (5)
ただし、
νd2p:第2レンズ群G2の3枚接合レンズのうちの2枚の正レンズL22,L24のうち、d線に対するアッベ数が大きい方のレンズの材質のアッベ数
νd2n:第2レンズ群G2の3枚接合レンズのうちの負レンズL23の材質のd線に対するアッベ数
条件式(5)を満足することで、波長による球面収差の差が増大することを防止でき、主に軸上色収差および倍率色収差を良好に補正することができる。
【0053】
上述した条件式(1)〜(4)それぞれを満足した場合に得られる効果をさらに高めるためには、条件式(1)〜(4)それぞれに代わり下記条件式(1−1)〜(4−1)それぞれを満足することがより好ましい。
【0054】
Nd2>1.85 … (1−1)
Nd12a>1.85 … (2−1)
0.012<θgF12b−0.6415+0.001618×νd12b
…(3−1)
νd12b<27 … (4−1)
なお、本発明の撮像レンズは、上述した好ましい態様の1つまたは任意の組合せを適宜選択的に採用することが可能である。また、
図1〜
図5には示していないが、本発明の撮像レンズは、フレアの発生を抑制するための遮光手段を設けたり、レンズ系と像面Simとの間に各種フィルタ等を設けたりしてもよい。
【0055】
次に、本発明の撮像レンズの実施例について、特に数値実施例を主に詳しく説明する。
【0056】
<実施例1>
実施例1の撮像レンズのレンズ群の配置を
図1に示す。なお、
図1の構成におけるレンズ群および各レンズの詳細な説明は上述した通りであるので、以下では特に必要のない限り重複した説明は省略する。
【0057】
表1に、実施例1の撮像レンズの基本レンズデータを示す。ここでは、光学部材PPも含めて示している。表1において、Siの欄には最も物体側にある構成要素の物体側の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するように構成要素に面番号を付したときのi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示す。Riの欄にはi番目の面の曲率半径を示し、Diの欄にはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。また、Ndjの欄には最も物体側の構成要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の構成要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjの欄にはj番目の構成要素の材質のd線に対するアッベ数を示している。また、θgFjはj番目の光学要素の部分分散比を示している。また、この基本レンズデータには、開口絞りStも含めて示しており、開口絞りStに相当する面の曲率半径の欄には、∞と記載している。
【0058】
表1の曲率半径Rおよび面間隔Dの値の単位はmmである。また表1中では、所定の桁でまるめた数値を記載している。そして曲率半径の符号は、面形状が物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。また表1の基本レンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。以上述べた表1の記載の仕方は、後述する表3,5,7,9においても同様である。
【0059】
また表2に、実施例1の撮像レンズの非球面データを示す。ここでは、非球面の面番号と、その非球面に関する非球面係数を示す。ここで非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は、「×10
-n」を意味する。なお非球面係数は、下記非球面式における各係数KA、Am(m=3、4、5、…10)の値である。
【0060】
Zd=C・h
2/{1+(1−KA・C
2・h
2)
1/2}+ΣAm・h
m
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数(m=3、4、5、…10)
以上述べた表2の記載の仕方は、後述する表4,6,8,10においても同様である。
【0061】
また、後掲の表11に実施例1の撮像レンズの諸元、および条件式(1)〜(5)の対応値を他の実施例2〜5のものと併せて示す。
【0062】
以下に記載する表では全て、上述したように長さの単位としてmmを用い、角度の単位として度(°)を用いているが、光学系は比例拡大または比例縮小して使用することが可能であるため、他の適当な単位を用いることもできる。
【表1】
【表2】
【0063】
実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、倍率色収差を、それぞれ
図6の(A)〜(D)に示す。 各収差図には、d線(587.56nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図には、波長656.27nm(C線)および波長435.83nm(g線)についての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。倍率色収差図には、C線およびg線についての収差も示す。球面収差図のFno.はF値を意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。以上述べた収差の表示方法は、後述する
図7〜
図10においても同様である。
【0064】
<実施例2>
図2に、実施例2の撮像レンズにおけるレンズ群の配置を示す。実施例2の撮像レンズは、上述した実施例1の撮像レンズと略同様の構成とされている。
【0065】
表3に実施例2の撮像レンズの基本レンズデータを、表4に実施例2の撮像レンズの非球面データを示す。
図7の(A)〜(D)に、実施例2の撮像レンズの各収差図を示す。
【表3】
【表4】
【0066】
<実施例3>
図3に、実施例3の撮像レンズにおけるレンズ群の配置を示す。実施例3の撮像レンズは、上述した実施例1の撮像レンズと略同様の構成とされているが、第11レンズ群G11が、像側に凹面を向けた2枚の負の屈折力を有するレンズL111およびレンズL112から構成され、第12レンズ群G12の非球面レンズL124に代えて、物体側に凸の正のメニスカスレンズL124から構成され、第2レンズ群G2を構成する両凸レンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズに代えて、像側に凸面を向けた1枚の負のメニスカスレンズL25から構成され、フォーカス調整を第2レンズ群G2の全体を光軸Zに沿って移動させることにより行う点において相違している。なお、この実施例1に対する相違点のうち、第11レンズ群G11の相違点および第12レンズ群G12の相違点は、後述する実施例4においても同様であり、実施例4の説明ではその点を繰り返し述べることはしない。
【0067】
表5に実施例3の撮像レンズの基本レンズデータを、表6に実施例3の撮像レンズの非球面データを示す。
図8の(A)〜(D)に、実施例3の撮像レンズの各収差図を示す。
【表5】
【表6】
【0068】
<実施例4>
図4に、実施例4の撮像レンズにおけるレンズ群の配置を示す。実施例4の撮像レンズは、上述した実施例3の撮像レンズと略同様の構成とされているが、第2レンズ群G2を構成する像側に凸面を向けた負のメニスカスレンズL25に代えて、両凹レンズL25から構成されている点において相違している。
【0069】
表7に実施例4の撮像レンズの基本レンズデータを、表8に実施例4の撮像レンズの非球面データを示す。
図9の(A)〜(D)に、実施例4の撮像レンズの各収差図を示す。
【表7】
【表8】
【0070】
<実施例5>
図5に、実施例5の撮像レンズにおけるレンズ群の配置を示す。実施例5の撮像レンズは、上述した実施例1の撮像レンズと略同様の構成とされているが、第12レンズ群G12が、物体側から順に、1枚の両凹レンズL121と、1枚の正レンズL122と、物体側に凸面を向けた1枚の正レンズL123と、両凸レンズL124および両凹レンズL125を接合した接合レンズとから構成され、第2レンズ群G2を構成する両凸レンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズに代えて、像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズL25および両凹レンズL26をこの順に接合した接合レンズから構成されている点において相違している。
【0071】
表9に実施例5の撮像レンズの基本レンズデータを、表10に実施例5の撮像レンズの非球面データを示す。
図10の(A)〜(D)に、実施例3の撮像レンズの各収差図を示す。
【表9】
【表10】
【0072】
表11に上記実施例1〜実施例5の撮像レンズの諸元、条件式(1)〜(4)の対応値を示す。表11のfは全系の焦点距離、BFはバックフォーカス、2ωは全画角、Fno.はF値、θgFは第12レンズ群G12に含まれる正レンズのうちの1枚のレンズL12bの材質のg線とF線間の部分分散比である。表11に示す値はd線を基準とするものである。表11に示すように、実施例1〜5の撮像レンズはいずれも条件式(1)、(2)、(5)を満たし、実施例3,4の撮像レンズは条件式(1)〜(5)の全てを満たし、さらには条件式(1)〜(4)が規定する範囲内のより好ましい範囲を示す条件式(1−1)〜(4−1)も全て満たしている。これによって得られる効果は、先に詳しく説明した通りである。
【表11】
【0073】
なお、
図1には、レンズ系と結像面Simとの間に光学部材PPを配置した例を示したが、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよく、あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0074】
以上の各数値データおよび各収差図から分かるように、実施例1〜5に係る撮像レンズは、小型化を図りつつ、F値は1.45と明るいレンズ系となっていることが分かる。また、各収差が良好に補正されていることが分かる。
【0075】
〔撮像装置の実施形態〕
次に、本発明による撮像装置について説明する。
図11に、本発明の一実施形態によるカメラの斜視形状を示す。ここに示すカメラ10は、コンパクトデジタルカメラであり、カメラボディ11の正面および内部には本発明の実施形態に係る小型の撮像レンズ12が設けられ、カメラボディ11の正面には被写体に閃光を発光するための閃光発光装置13が設けられ、カメラボディ11の上面にはシャッターボタン15と、電源ボタン16とが設けられ、カメラボディ11の内部には撮像素子17が設けられている。撮像素子17は、小型の広角レンズ12により形成される光学像を撮像して電気信号に変換するものであり、例えば、CCDやCMOS等により構成される。
【0076】
上述したように、本発明の実施形態に係る撮像レンズ12は十分な小型化が実現されているため、カメラ10は、沈胴式を採用しなくても携帯時と撮影時の両方においてコンパクトなカメラとすることができる。あるいは、沈胴式を採用した場合には、従来の沈胴式のカメラよりもさらに小型で携帯性の高いカメラとすることができる。また、本発明による撮像レンズ12が適用されたこのカメラ10により取得された画像を、明るい良好な画質を有するものとすることができる。
【0077】
次に、本発明による撮像装置の別の実施形態について、
図12を参照して説明する。ここに斜視形状を示すカメラ30は、交換レンズ20が取り外し自在に装着される、いわゆるミラーレス一眼形式のデジタルスチルカメラであり、同図の(A)はこのカメラ30を前側から見た外観を示し、(B)はこのカメラ30を背面側から見た外観を示している。
【0078】
このカメラ30はカメラボディ31を備え、その上面にはシャッターボタン32と電源ボタン33とが設けられている。またカメラボディ31の背面には、操作部34および35と表示部36とが設けられている。表示部36は、撮像された画像や、撮像される前の画角内にある画像を表示するためのものである。
【0079】
カメラボディ31の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント37が設けられ、このマウント37を介して交換レンズ20がカメラボディ31に装着されるようになっている。交換レンズ20は、本発明による撮像レンズを鏡筒内に収納したものである。
【0080】
そしてカメラボディ31内には、交換レンズ20によって形成された被写体像を受け、それに応じた撮像信号を出力するCCD等の撮像素子(図示せず)、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路、およびその生成された画像を記録するための記録媒体等が設けられている。このカメラ30では、シャッターボタン32を押すことにより1フレーム分の静止画の撮影がなされ、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0081】
このようなミラーレス一眼カメラ30に用いられる交換レンズ20に、本発明による撮像レンズを適用することにより、このカメラ30はレンズ装着状態において十分小型で、またこのカメラ30により取得された画像を、明るい良好な画質を有するものとすることができる。
【0082】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。