【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)少なくとも一つの実施形態に係る肋骨筋入れ装置は、
家畜屠体から得られる背骨及び肋骨を含む食肉の肋骨先端部を肉部から分離するための肋骨筋入れ装置であって、
U字形状を有し、前記肋骨先端部を囲む部位が異なる大きさを有する複数の刃と、
前記複数の刃が周方向に設けられた回転軸と、
前記複数の刃の一つが切断位置に配置されるように前記回転軸を周方向に回転させる駆動部と、
圧力気体によって前記回転軸を往復動させる気体圧シリンダと、
少なくとも前記気体圧シリンダが固定される基部と、
前記基部に設けられ前記食肉に係止して前記基部を前記食肉に対して位置決めするための係止部と、
を備え、
前記複数の刃は、前記肋骨先端部の筋入れ方向に対して前記複数の刃が後退する方向へ傾斜している。
【0008】
上記(1)の構成の肋骨筋入れ装置を用いて肋骨先端部の筋入れ作業を行う場合、まず、上記駆動部を駆動して上記回転軸を回転させ、上記複数の刃のうち、肋骨先端部を囲む部位が筋入れ対象となる肋骨先端部の大きさに合う刃を切断位置に位置させる。次に、作業員は肋骨筋入れ装置を手に取り、上記係止部を上記食肉に係止して家畜屠体に対する上記基部の相対位置を固定する。その後、上記気体圧シリンダを駆動して上記刃を肋骨先端部と肉部との間に挿入し、肋骨先端部から肉部を剥離させる。
【0009】
上記(1)の構成の肋骨筋入れ装置は低コストでかつ軽重量とすることができ、取り扱いが容易である。この装置を用いて肋骨先端部の筋入れを行うことで、手作業と比べて、作業員の負荷を軽減でき、かつ作業効率を向上できる。
また、上記係止部を食肉に係止させ、食肉に対して装置の相対位置を固定するので、上記刃の筋入れ位置への位置決めが容易になる。
また、上記複数の刃のうち、筋入れ対象である肋骨先端部の大きさに合う刃を事前に選択できるので、肋骨先端部に付着する筋を肋骨先端部に残さず除去できる。
上記刃は、筋入れ工程中、上記回転軸によって筋入れ方向へ引張られる引張力と共に、食肉から反力を受ける。上記複数の刃は肋骨先端部の筋入れ方向に対して前記複数の刃が後退する方向へ傾斜しているため、上記引張力と上記反力との合力により、刃は肋骨先端部の表面に接する方向へ付勢され、自然に肋骨先端部の表面に沿う位置に配置する。刃が肋骨先端部に沿うことで、刃に加わる食肉の反力が弱まるため、作業員の負荷が軽減されると共に、肋骨表面に筋をほぼ残留させることなく筋を切断できる。
【0010】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記気体圧シリンダに前記圧力気体を給排する第1給排路と、
前記第1給排路に設けられ、かつ前記基部に取り付けられ、前記気体圧シリンダへの前記圧力気体の給排を切り替える切替弁と、
前記切替弁を作動させる第1操作レバーと、
前記駆動部に前記圧力気体を給排して前記駆動部を作動させる第2給排路と、
前記第2給排路に設けられ、かつ前記基部に取り付けられ、前記駆動部の作動を制御する制御弁と、
前記制御弁を作動させる第2操作レバーと、
を備える。
【0011】
上記(2)の構成によれば、上記切替弁及び上記第1操作レバーを備えることで、筋入れ作業中に上記気体圧シリンダの往動作及び復動作の切り替えが可能になる。
また、上記制御弁及び上記第2操作レバーを備えることで、筋入れ作業中に切断位置への刃の入れ替えを行うことができる。そのため、肋骨先端部の太さが変わっても、その太さに合う大きさの刃に容易に切り替えできる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記(2)の構成において、
前記基部を挟んで前記基部の両側に固定された第1把持部及び第2把持部を備え、
前記第1操作レバー及び前記第2操作レバーは、前記第1把持部又は前記第2把持部の一方に隣接して配置される。
上記(3)の構成によれば、上記基部の両側に固定された上記第1把持部及び上記第2把持部を作業員が把持することで、作業員の左右の腕には肋骨筋入れ装置の重量が均等に加わるため、肋骨筋入れ装置を安定して支持できる。これによって、筋入れ作業の効率を向上できる。
また、上記第1操作レバー及び上記第2操作レバーは第1把持部又は第2把持部のどちらか一方に隣接して配置されるので、作業員は、筋入れ作業中に装置を両手で把持しながら、気体圧シリンダ及び駆動部の作動をこれらレバーに隣接した把持部を把持する一方の手のみで操作できる。従って、これら操作レバーの操作が作業の妨げとならない。
【0013】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記係止部は、前記複数の刃との間隔が異なる位置に配置された複数の係止部で構成される。
上記(4)の構成によれば、筋入れ対象となる食肉の大きさに応じて、上記複数の係止部のうちから、肋骨先端部との間隔が食肉の大きさに合った係止部を選択することで、刃を肋骨先端部に対して近接した筋入れしやすい位置に位置決めできる。これによって、筋入れ作業を効率的に行うことができる。
【0014】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記食肉は、内臓を除去した後の前記家畜屠体を長手方向に半割りした枝肉を大分割した後のロースバラ部位であり、
前記係止部は前記ロースバラ部位の背骨に形成された髄管に係止される。
髄管とは、家畜屠体の背骨の内部に存在する脊髄が除去された後の空隙であり、家畜屠体が長手方向に背骨の中心で半割りされたロースバラ部位では、背骨の切断面に凹部となって形成されるものである。
上記(5)の構成によれば、ロースバラ部位に存在する髄管(凹部)に上記係止部を係止させることで、基部を食肉に対して安定して固定できる。また、髄管を利用して係止部を係止させるため、係止部を食肉に新たに形成する手間が省けると共に、ロースバラ部位に手を加える必要がないので、ロースバラ部位を痛めない。
【0015】
(6)一実施形態では、前記(5)の構成において、
前記複数の刃は、
前記肋骨先端部を囲む部位が、前記ロースバラ部位のうち前駆体側にある前記肋骨先端部に合わせた大きさを有する第1刃と、
前記肋骨先端部を囲む部位が、前記ロースバラ部位のうち後駆体側にある前記肋骨先端部に合わせた大きさを有する第2刃と、
を含む。
【0016】
ロースバラ部位に存在する肋骨の先端部は、前駆体側にある肋骨と後駆体側にある肋骨とでは太さが異なり、前駆体側にある肋骨先端部のほうが径が大きい。
上記(6)の構成によれば、前駆体側にある肋骨に対しては上記第1刃で筋入れし、後駆体側にある肋骨に対しては上記第2刃で筋入れすることで、肋骨先端部の表面に刃面を隙間なく当てることができる。これによって、食肉から刃に加わる反力が軽減され、作業員の負荷が軽減されると共に、肋骨先端部に筋をほぼ残留させることなく筋を切断できる。
【0017】
(7)一実施形態では、
前記(3)の構成において、
前記切替弁及び前記制御弁は前記基部の上面に固定され、
前記第1把持部は前記基部の長手方向端の一方から前記長手方向に沿って突設され、
前記気体圧シリンダは、前記基部において前記長手方向端の他方の下面に固定されると共に、前記長手方向に沿って前記第1把持部とは逆方向に突設され、
前記第2把持部は前記気体圧シリンダの突出側端に前記長手方向と交差する方向に配置され、
前記第1操作レバー及び前記第2操作レバーは前記第1把持部に隣接して配置され、
前記第1把持部の下方に位置するブラケットをさらに備えると共に、
前記係止部は前記ブラケットに設けられ下方に突出する突起で構成される。
【0018】
上記(7)の構成によれば、肋骨筋入れ装置を全体としてコンパクト化できる。また、第1把持部と第2把持部とは基部を挟んで基部の両側に配置され、作業員が第1把持部及び第2把持部を両手で把持することで、一方の腕に重量が偏らない。また、第2把持部の長手方向は第1把持部の長手方向に対して交差する方向に配置されるので、装置を安定して持ち上げることができる。
また、第1操作レバー及び第2操作レバーは第1把持部に隣接配置されるので、第1把持部を把持する手で第1把持部を把持しながら第1操作レバー及び第2操作レバーを操作できる。
また、係止部は作業員が把持する第1把持部の下方に位置するブラケットに設けられるので、係止部の位置決めが容易になる。