特許第6040331号(P6040331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6040331
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】肋骨筋入れ装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/00 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   A22C17/00
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-86170(P2016-86170)
(22)【出願日】2016年4月22日
【審査請求日】2016年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】日野 和睦
(72)【発明者】
【氏名】濱野 圭三
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−000173(JP,A)
【文献】 特開2006−230289(JP,A)
【文献】 特開2011−182755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜屠体から得られる背骨及び肋骨を含む食肉の肋骨先端部を肉部から分離するための肋骨筋入れ装置であって、
U字形状を有し、前記肋骨先端部を囲む部位が異なる大きさを有する複数の刃と、
前記複数の刃が周方向に設けられた回転軸と、
前記複数の刃の一つが切断位置に配置されるように前記回転軸を周方向に回転させる駆動部と、
圧力気体によって前記回転軸を往復動させる気体圧シリンダと、
少なくとも前記気体圧シリンダが固定される基部と、
前記基部に設けられ前記食肉に係止して前記基部を前記食肉に対して位置決めするための係止部と、
を備え、
前記複数の刃は、前記肋骨先端部の筋入れ方向に対して前記複数の刃が後退する方向へ傾斜していることを特徴とする肋骨筋入れ装置。
【請求項2】
前記気体圧シリンダに前記圧力気体を給排する第1給排路と、
前記第1給排路に設けられ、前記気体圧シリンダへの前記圧力気体の給排を切り替える切替弁と、
前記切替弁を作動させる第1操作レバーと、
前記駆動部に前記圧力気体を給排して前記駆動部を作動させる第2給排路と、
前記第2給排路に設けられ、前記駆動部の作動を制御する制御弁と、
前記制御弁を作動させる第2操作レバーと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の肋骨筋入れ装置。
【請求項3】
前記基部を挟んで前記基部の両側に固定された第1把持部及び第2把持部を備え、
前記第1操作レバー及び前記第2操作レバーは、前記第1把持部又は前記第2把持部の一方に隣接して配置されることを特徴とする請求項2に記載の肋骨筋入れ装置。
【請求項4】
前記係止部は、前記複数の刃との間隔が異なる位置に配置された複数の係止部で構成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の肋骨筋入れ装置。
【請求項5】
前記食肉は、内臓を除去した後の前記家畜屠体を長手方向に半割りした枝肉を大分割した後のロースバラ部位であり、
前記係止部は前記ロースバラ部位の背骨に形成された髄管に係止されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の肋骨筋入れ装置。
【請求項6】
前記複数の刃は、
前記肋骨先端部を囲む部位が、前記ロースバラ部位のうち前駆体側にある前記肋骨先端部に合わせた大きさを有する第1刃と、
前記肋骨先端部を囲む部位が、前記ロースバラ部位のうち後駆体側にある前記肋骨先端部に合わせた大きさを有する第2刃と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の肋骨筋入れ装置。
【請求項7】
前記切替弁及び前記制御弁は前記基部の上面に固定され、
前記第1把持部は前記基部の長手方向端の一方から前記長手方向に沿って突設され、
前記気体圧シリンダは、前記基部において前記長手方向端の他方の下面に固定されると共に、前記長手方向に沿って前記第1把持部とは逆方向に突設され、
前記第2把持部は前記気体圧シリンダの突出側端に前記長手方向と交差する方向に配置され、
前記第1操作レバー及び前記第2操作レバーは前記第1把持部に隣接して配置され、
前記第1把持部の下方に位置するブラケットをさらに備えると共に、
前記係止部は前記ブラケットに設けられ下方に突出する突起で構成されることを特徴とする請求項3に記載の肋骨筋入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、家畜屠体の解体に当り、背骨及び肋骨を含む部位の肋骨先端部を肉部から分離するための肋骨筋入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
豚、牛、羊などの家畜屠体の解体工程は、内臓を除去した後、例えば、家畜屠体を長手方向に2分割し、2分割された枝肉を前駆体、中躯体及び後躯体に大分割し、夫々の部位で脱骨解体作業を行う。このうち、中躯体はロースバラ部位と称され、大きく分けて背骨と肋骨の2種類の骨が存在している。
ロースバラ部位の脱骨解体は、例えば、肋骨の先端部に筋入れ(切り込み)を行い、切り込みにひもを掛け、ひもを背骨側へ引くことで肋骨と肉部とを分離する。その後、肋骨と背骨との関節を中心として肋骨を折り曲げて背骨から切り離す。
【0003】
特許文献1には、ひも掛けによる肋骨と肉部との分離作業を、手作業でなく機械で行う肋骨剥離装置が開示されている。
特許文献2及び3には、肋骨先端部の筋入れ作業及びひも掛けによる分離作業を機械により自動化した除骨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平08−6474号公報
【特許文献2】特開2006−230289号公報
【特許文献3】特開2006−230290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肋骨先端部は細かく強い筋が肉部と結合しているため、ひも掛けによる分離作業の前に、肋骨先端部を肉部から分離させる筋入れ作業が必要になる。この筋入れ作業は、ナイフを肋骨先端部の外形形状に沿って三次元に動かす必要があり、作業員が手作業で行う場合、作業員の負荷が大きい。
特許文献2及び3に開示された自動化装置は、大掛かりで高コストな機械設備とならざるを得えないという問題がある。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は、低コストでかつ軽重量で取り扱いが容易であって、作業員の負荷を軽減できる肋骨先端部の筋入れ装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)少なくとも一つの実施形態に係る肋骨筋入れ装置は、
家畜屠体から得られる背骨及び肋骨を含む食肉の肋骨先端部を肉部から分離するための肋骨筋入れ装置であって、
U字形状を有し、前記肋骨先端部を囲む部位が異なる大きさを有する複数の刃と、
前記複数の刃が周方向に設けられた回転軸と、
前記複数の刃の一つが切断位置に配置されるように前記回転軸を周方向に回転させる駆動部と、
圧力気体によって前記回転軸を往復動させる気体圧シリンダと、
少なくとも前記気体圧シリンダが固定される基部と、
前記基部に設けられ前記食肉に係止して前記基部を前記食肉に対して位置決めするための係止部と、
を備え、
前記複数の刃は、前記肋骨先端部の筋入れ方向に対して前記複数の刃が後退する方向へ傾斜している。
【0008】
上記(1)の構成の肋骨筋入れ装置を用いて肋骨先端部の筋入れ作業を行う場合、まず、上記駆動部を駆動して上記回転軸を回転させ、上記複数の刃のうち、肋骨先端部を囲む部位が筋入れ対象となる肋骨先端部の大きさに合う刃を切断位置に位置させる。次に、作業員は肋骨筋入れ装置を手に取り、上記係止部を上記食肉に係止して家畜屠体に対する上記基部の相対位置を固定する。その後、上記気体圧シリンダを駆動して上記刃を肋骨先端部と肉部との間に挿入し、肋骨先端部から肉部を剥離させる。
【0009】
上記(1)の構成の肋骨筋入れ装置は低コストでかつ軽重量とすることができ、取り扱いが容易である。この装置を用いて肋骨先端部の筋入れを行うことで、手作業と比べて、作業員の負荷を軽減でき、かつ作業効率を向上できる。
また、上記係止部を食肉に係止させ、食肉に対して装置の相対位置を固定するので、上記刃の筋入れ位置への位置決めが容易になる。
また、上記複数の刃のうち、筋入れ対象である肋骨先端部の大きさに合う刃を事前に選択できるので、肋骨先端部に付着する筋を肋骨先端部に残さず除去できる。
上記刃は、筋入れ工程中、上記回転軸によって筋入れ方向へ引張られる引張力と共に、食肉から反力を受ける。上記複数の刃は肋骨先端部の筋入れ方向に対して前記複数の刃が後退する方向へ傾斜しているため、上記引張力と上記反力との合力により、刃は肋骨先端部の表面に接する方向へ付勢され、自然に肋骨先端部の表面に沿う位置に配置する。刃が肋骨先端部に沿うことで、刃に加わる食肉の反力が弱まるため、作業員の負荷が軽減されると共に、肋骨表面に筋をほぼ残留させることなく筋を切断できる。
【0010】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記気体圧シリンダに前記圧力気体を給排する第1給排路と、
前記第1給排路に設けられ、かつ前記基部に取り付けられ、前記気体圧シリンダへの前記圧力気体の給排を切り替える切替弁と、
前記切替弁を作動させる第1操作レバーと、
前記駆動部に前記圧力気体を給排して前記駆動部を作動させる第2給排路と、
前記第2給排路に設けられ、かつ前記基部に取り付けられ、前記駆動部の作動を制御する制御弁と、
前記制御弁を作動させる第2操作レバーと、
を備える。
【0011】
上記(2)の構成によれば、上記切替弁及び上記第1操作レバーを備えることで、筋入れ作業中に上記気体圧シリンダの往動作及び復動作の切り替えが可能になる。
また、上記制御弁及び上記第2操作レバーを備えることで、筋入れ作業中に切断位置への刃の入れ替えを行うことができる。そのため、肋骨先端部の太さが変わっても、その太さに合う大きさの刃に容易に切り替えできる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記(2)の構成において、
前記基部を挟んで前記基部の両側に固定された第1把持部及び第2把持部を備え、
前記第1操作レバー及び前記第2操作レバーは、前記第1把持部又は前記第2把持部の一方に隣接して配置される。
上記(3)の構成によれば、上記基部の両側に固定された上記第1把持部及び上記第2把持部を作業員が把持することで、作業員の左右の腕には肋骨筋入れ装置の重量が均等に加わるため、肋骨筋入れ装置を安定して支持できる。これによって、筋入れ作業の効率を向上できる。
また、上記第1操作レバー及び上記第2操作レバーは第1把持部又は第2把持部のどちらか一方に隣接して配置されるので、作業員は、筋入れ作業中に装置を両手で把持しながら、気体圧シリンダ及び駆動部の作動をこれらレバーに隣接した把持部を把持する一方の手のみで操作できる。従って、これら操作レバーの操作が作業の妨げとならない。
【0013】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記係止部は、前記複数の刃との間隔が異なる位置に配置された複数の係止部で構成される。
上記(4)の構成によれば、筋入れ対象となる食肉の大きさに応じて、上記複数の係止部のうちから、肋骨先端部との間隔が食肉の大きさに合った係止部を選択することで、刃を肋骨先端部に対して近接した筋入れしやすい位置に位置決めできる。これによって、筋入れ作業を効率的に行うことができる。
【0014】
(5)一実施形態では、前記(1)〜(4)の何れかの構成において、
前記食肉は、内臓を除去した後の前記家畜屠体を長手方向に半割りした枝肉を大分割した後のロースバラ部位であり、
前記係止部は前記ロースバラ部位の背骨に形成された髄管に係止される。
髄管とは、家畜屠体の背骨の内部に存在する脊髄が除去された後の空隙であり、家畜屠体が長手方向に背骨の中心で半割りされたロースバラ部位では、背骨の切断面に凹部となって形成されるものである。
上記(5)の構成によれば、ロースバラ部位に存在する髄管(凹部)に上記係止部を係止させることで、基部を食肉に対して安定して固定できる。また、髄管を利用して係止部を係止させるため、係止部を食肉に新たに形成する手間が省けると共に、ロースバラ部位に手を加える必要がないので、ロースバラ部位を痛めない。
【0015】
(6)一実施形態では、前記(5)の構成において、
前記複数の刃は、
前記肋骨先端部を囲む部位が、前記ロースバラ部位のうち前駆体側にある前記肋骨先端部に合わせた大きさを有する第1刃と、
前記肋骨先端部を囲む部位が、前記ロースバラ部位のうち後駆体側にある前記肋骨先端部に合わせた大きさを有する第2刃と、
を含む。
【0016】
ロースバラ部位に存在する肋骨の先端部は、前駆体側にある肋骨と後駆体側にある肋骨とでは太さが異なり、前駆体側にある肋骨先端部のほうが径が大きい。
上記(6)の構成によれば、前駆体側にある肋骨に対しては上記第1刃で筋入れし、後駆体側にある肋骨に対しては上記第2刃で筋入れすることで、肋骨先端部の表面に刃面を隙間なく当てることができる。これによって、食肉から刃に加わる反力が軽減され、作業員の負荷が軽減されると共に、肋骨先端部に筋をほぼ残留させることなく筋を切断できる。
【0017】
(7)一実施形態では、前記(3)の構成において、
前記切替弁及び前記制御弁は前記基部の上面に固定され、
前記第1把持部は前記基部の長手方向端の一方から前記長手方向に沿って突設され、
前記気体圧シリンダは、前記基部において前記長手方向端の他方の下面に固定されると共に、前記長手方向に沿って前記第1把持部とは逆方向に突設され、
前記第2把持部は前記気体圧シリンダの突出側端に前記長手方向と交差する方向に配置され、
前記第1操作レバー及び前記第2操作レバーは前記第1把持部に隣接して配置され、
前記第1把持部の下方に位置するブラケットをさらに備えると共に、
前記係止部は前記ブラケットに設けられ下方に突出する突起で構成される。
【0018】
上記(7)の構成によれば、肋骨筋入れ装置を全体としてコンパクト化できる。また、第1把持部と第2把持部とは基部を挟んで基部の両側に配置され、作業員が第1把持部及び第2把持部を両手で把持することで、一方の腕に重量が偏らない。また、第2把持部の長手方向は第1把持部の長手方向に対して交差する方向に配置されるので、装置を安定して持ち上げることができる。
また、第1操作レバー及び第2操作レバーは第1把持部に隣接配置されるので、第1把持部を把持する手で第1把持部を把持しながら第1操作レバー及び第2操作レバーを操作できる。
また、係止部は作業員が把持する第1把持部の下方に位置するブラケットに設けられるので、係止部の位置決めが容易になる。
【発明の効果】
【0019】
幾つかの実施形態によれば、家畜屠体(豚、牛、羊等)から得られる食肉の肋骨先端部の筋入れを行うに際し、低コストかつ軽重量で取り扱いが容易な肋骨筋入れ装置を用いることができ、これによって、作業員の負荷を軽減でき、作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係る肋骨筋入れ装置の斜視図である。
図2】一実施形態に係る肋骨筋入れ装置の別方向から視た斜視図である。
図3】一実施形態に係る肋骨筋入れ装置の正面図である。
図4】一実施形態に係る肋骨筋入れ装置の側面視断面図(図3中のA−A断面)である。
図5】一実施形態に係る筋入れ作業中の肋骨筋入れ装置の斜視図である。
図6】一実施形態に係る筋入れ作業中の肋骨筋入れ装置の上面図である。
図7】家畜屠体から得られるロースバラ部位の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
少なくとも一つの実施形態に係る肋骨筋入れ装置10は、家畜屠体から得られる背骨及び肋骨を含む食肉の肋骨先端部を肉部から分離するための肋骨筋入れ装置である。
肋骨筋入れ装置10は、図1図4に示すように、肋骨先端部を囲む部位がU字形状を有すると共に、U字形状が異なる大きさを有する複数の刃12(12a、12b)を備える。複数の刃12は回転軸14の周方向に設けられる。回転軸14は、駆動部16によって、複数の刃12の一つが切断位置に配置されるように周方向に回転される。
肋骨筋入れ装置10は、気体圧シリンダ18を備え、回転軸14は気体圧シリンダ18によって回転軸14を筋入れ方向(図3中の矢印d方向)へ往復動させる。肋骨筋入れ装置10は基部20を備え、気体圧シリンダ18は基部20に固定される。基部20に係止部22(22a、22b)が設けられ、係止部22は除骨対象となる食肉に係止し、基部20を食肉に対して位置決めかつ固定するために用いられる。
また、図3に示すように、複数の刃12は、肋骨先端部106aの筋入れ方向(矢印d方向)に対して、複数の刃12の先端部は後退する方向へ傾斜している。
【0023】
上記構成において、作業員は、駆動部16を駆動し、上記複数の刃12のうち、肋骨先端部を囲む部位が筋入れ対象となる肋骨先端部の大きさに合う刃を選んで切断位置(図1〜4において下端部の位置)に位置させる。
次に、係止部22を食肉に係止して食肉に対する基部20の相対位置を固定する。その後、気体圧シリンダ18を駆動させ、図3に示すように、刃12を肋骨先端部と肉部との間に挿入して肋骨先端部の筋入れを行う。
【0024】
図7は、除骨対象となる食肉のうち、豚のロースバラ部位(中躯体)100を示している。
家畜屠体の解体工程は、内臓を除去した家畜屠体を背骨の中心で長手方向に半割りし、半割りされた枝肉を前駆体、中躯体及び後駆体に大分割し、その後、夫々の部位で除骨解体作業を行う。
ロースバラ部位100は、図7に示すように、肉部102の中に背骨104、肋骨106及び棘突起108が存在する。図7中、矢印b方向が前駆体側であり、矢印c方向が後駆体側である。ロースバラ部位100は、図3及び図5に示すように、内臓が存在した側の表面に肋骨106が露出し、外皮側に脂肪層110が存在する。
肋骨106を肉部102から剥離させる方法として、例えば、肋骨106にひもを掛けて肋骨106の長手方向へ引くことで、肋骨106と肉部102とを分離させる方法が行われる。しかし、肋骨先端部106aは骨と肉とが強い筋で結合されているため、ひもを用いた分離法のみでは対処できない。
【0025】
肋骨筋入れ装置10は、上記構成を有するため、低コストでかつ軽重量とすることができ、取り扱いが容易であり、作業員が手に持って容易に操作できる。肋骨筋入れ装置10を用いて、肋骨先端部106aの筋入れを行うことで、作業員の負荷を軽減でき、かつ作業効率を向上できる。
また、係止部22を食肉に係止させ、食肉に対する肋骨筋入れ装置10の相対位置を固定するので、刃12の筋入れ位置への位置決めが容易になる。
また、複数の刃12のうち、筋入れ対象となる肋骨先端部106aの大きさに合う刃を事前に選択できるので、肋骨先端部106aに付着する筋を肋骨先端部に残さず除去できる。
【0026】
また、筋入れ工程中、刃12は回転軸14によって筋入れ方向へ引張られる引張力と共に、食肉の肉部から移動方向と逆方向の反力を受ける。複数の刃12は肋骨先端部106aの筋入れ方向に対して複数の刃12が後退する方向へ傾斜しているため、これら引張力及び反力の合力により、刃12は肋骨先端部106aの表面に接する方向へ付勢され、自然に肋骨先端部表面に沿う位置に配置する。これによって、刃12に対する食肉反力が弱まるため、作業員の負荷が軽減されると共に、肋骨先端部の表面に筋をほぼ残留させることなく筋を切断できる。
【0027】
図示した実施形態では、複数の刃12は回転軸14の外周面に周方向に等間隔に放射状に設けられる。
また、基部20の上面にリング23が取り付けられ、肋骨筋入れ装置10はリング23に締結されたチェーン(不図示)などで吊り下げられた状態で作業員が操作できる。これによって、作業員の負荷を軽減できる。
また、図3に示すように、肋骨106の除骨作業は、例えば、ロースバラ部位100を平坦な表面を有するまな板60上に載置して行う。
【0028】
一実施形態では、図2に示すように、気体圧シリンダ18に圧力気体を給排する第1給排路24と、第1給排路24に設けられ、気体圧シリンダ18への圧力気体の給排を切り替える切替弁26と、切替弁26を作動させる第1操作レバー28と、を備える。
また、駆動部16に圧力気体を給排して駆動部16を作動させる第2給排路30と、第2給排路30に設けられ、駆動部16の作動を制御する制御弁32と、制御弁32を作動させる第2操作レバー34と、を備える。
【0029】
上記構成によれば、切替弁26及び第1操作レバー28を備えることで、筋入れ作業中に気体圧シリンダ18の往動作(肋骨先端部106aに接近する動作)及び復動作(肋骨先端部106aから離れる動作)の切り替えが可能になる。
また、制御弁32及び第2操作レバー34を備えることで、筋入れ作業中に作業員が肋骨筋入れ装置10を把持したまま切断位置への刃12の入れ替えを行うことができる。そのため、肋骨先端部106aの太さが変わっても、その太さに合う大きさの刃に容易に切り替えできる。
【0030】
図示した実施形態では、図2に示すように、気体圧シリンダ18に供給される圧力気体は圧力空気aである。圧力空気aは管路36及び管路38aを通って切替弁26まで供給され、その後、第1給排路24を介して気体圧シリンダ18に給排される。圧力空気aは管路36及び管路38bを通って制御弁32まで供給され、その後、第2給排路30を介して駆動部16に給排供給される。
また、切替弁26及び制御弁32は直方体形状の外形を有する基部20の上面に固定される。例示的な実施形態では、制御弁32は切替弁26の上方に配置されている。
また、複数の刃12の切断位置は回転軸14の下端部であり、回転軸12の下端部に配置された刃12で肋骨先端部106aの筋入れを行う。
【0031】
図示した実施形態では、図1図3に示すように、第1操作レバー28は、第1把持部44を把持する作業員の手によって、第1把持部44と共に把持されることで、気体圧シリンダ18の内部に形成された2つの圧力室(不図示)に圧力空気aの給排を行う。これによって、ピストンロッド18aは、矢印で示すように、図3に図示した位置(実線表示)と突出した位置18a’(破線表示)との間を往復動する。
ピストンロッド18aの先端には上下方向に配置された台板40が結合され、台板40の下部には駆動部16が取り付けられる。回転軸14の先端は上下方向に配置された台板42によって回転可能に支持される。図3に示すように、台板40、42及び回転軸14は、ピストンロッド18aと共に往復動する。台板40及び42の上端は基部20によってスライド可能に支持される。
第2操作レバー34は、作業員の手によって横方向へ押されることで、制御弁32が作動し、駆動部16に圧力空気aが給排される。
【0032】
一実施形態では、図1図3に示すように、基部20を挟んで基部20の両側に固定された第1把持部44及び第2把持部46を備える。そして、第1操作レバー28及び第2操作レバー34は、第1把持部44又は第2把持部46の一方に隣接して配置される。
上記構成によれば、作業員が第1把持部44及び第2把持部46を夫々両手で把持して筋入れを行うことで、作業員の左右の腕には肋骨筋入れ装置10の重量が均等に加わるため、肋骨筋入れ装置10を安定して支持できる。これによって、筋入れ作業の効率を向上できる。
また、第1操作レバー28及び第2操作レバー34は、第1把持部44又は第2把持部46のどちらか一方に隣接して配置されるので、肋骨筋入れ装置10の操作中に、これら操作レバーに隣接した把持部を把持する作業員の一方の手のみでこれら操作レバーを操作できる。そのため、これら操作レバーの操作が作業の妨げとならない。
【0033】
図示した実施形態では、第1把持部44及び第2把持部46は簡易な丸棒で構成され、第2把持部46は例えば樹脂製で構成される。これによって、肋骨筋入れ装置10の重量増加を避けることができる。
また、第2把持部46の一端には円形の鍔部48が形成され、鍔部48によって手の握りの滑りを防止できる。
図示した実施形態では、第1操作レバー28及び第2操作レバー34は第1把持部44に隣接して配置されている。これによって、作業員は一方の手で第1把持部44を握りながら、同時に第1操作レバー28及び第2操作レバー34を操作できる。特に、第2操作レバー34は第1把持部44に近接して位置で第1把持部44にほぼ平行に配置されているので、作業員は第1把持部44を握る手で同時に第2操作レバー34を把持できるため、第2操作レバー34の操作が容易になる。
【0034】
一実施形態では、図7に示すように、筋入れ対象となる背骨及び肋骨を含む食肉は、内臓を除去した後の家畜屠体を長手方向に半割りして枝肉とし、この枝肉を前駆体、中躯体及び後駆体に大分割した後の中躯体(ロースバラ部位100)である。前駆体側の肋骨先端部106aの径は後駆体側の肋骨先端部106aの径より大きい。
この実施形態では、図4に示すように、複数の刃12は、肋骨先端部106aを囲む部位がロースバラ部位100のうち前駆体側(図7中の矢印b方向側)にある肋骨先端部106aに合わせた大きさを有する第1刃12aを含む。また、複数の刃12は、肋骨先端部106aを囲む部位が、ロースバラ部位100のうち後駆体側(図7中の矢印c方向側)にある肋骨先端部106aに合わせた大きさを有する第2刃12bと、を含む。第1刃12aのU字形状は第2刃12bのU字形状より大きい径を有する。
【0035】
上記構成によれば、前駆体側にある肋骨106に対しては第1刃12aで筋入れし、後駆体側にある肋骨106に対しては第2刃12bで筋入れすることで、肋骨先端部106aの表面に刃面を隙間なく当てることができる。これによって、ロースバラ部位100から第1刃12a及び第2刃12bに加わる反力が軽減され、作業員の負荷が軽減されると共に、肋骨先端部106a筋をほぼ残留させることなく筋を切断できる。
【0036】
一実施形態では、図1図3に示すように、係止部22は複数の刃12との間隔が異なる位置に配置された複数の係止部22(22a、22b)で構成される。
上記構成によれば、筋入れ対象となる食肉の大きさに応じて、複数の係止部22のうちから、肋骨先端部106aとの間隔が食肉の大きさに合った係止部を選択することで、刃12を肋骨先端部106aに対して近接した筋入れしやすい位置に位置決めできる。これによって、筋入れ作業を効率的に行うことができる。
【0037】
図5及び図6は、肋骨筋入れ装置10を用いた肋骨106の除骨作業を示している。図5図7に示すように、前駆体側の肋骨先端部106aの長さは後駆体側の肋骨先端部106aの長さより長い。
図示した実施形態では、筋入れ方向において、第1係止部22aは第2係止部22bより刃12から離れた位置に配置されている。前駆体側の肋骨先端部106aを筋入れする場合、第1係止部22aを用いて基部20をロースバラ部位100に固定し、後駆体側の肋骨先端部106aを筋入れする場合、第2係止部22bを用いて基部20をロースバラ部位100に固定する。
これによって、ロースバラ部位100の肋骨先端部106aを筋入れするとき、刃12を肋骨先端部106aに対して近接した筋入れしやすい位置に常に位置決めできる。これによって、筋入れ作業を正確にかつ効率的に行うことができる。
【0038】
一実施形態では、図7に示すように、除骨対象となる背骨及び肋骨を含む食肉は、内臓を除去した後の家畜屠体を長手方向に半割りした枝肉を大分割した後のロースバラ部位100であり、係止部22(22a、22b)は、図3図5及び図6に示すように、ロースバラ部位100の背骨104に形成された髄管112に係止される。
前述のように、髄管112とは、家畜屠体の背骨の内部に存在する脊髄が除去された後の空隙であり、家畜屠体が長手方向に背骨の中心で半割りされたロースバラ部位100では、背骨104の切断面に凹部となって形成されるものである。
上記構成によれば、ロースバラ部位100に存在する髄管112に係止部22を係止させることで、基部20をロースバラ部位100に対して安定して固定できる。また、髄管112を利用して係止部22を係止させるため、係止部位をロースバラ部位100に新たに形成する手間が省けると共に、ロースバラ部位100に手を加える必要がないので、ロースバラ部位を痛めない。
【0039】
一実施形態では、図5及び図6に示すように、切替弁26及び制御弁32は外形が直方体形状の基部20の上面に固定される。第1把持部44は基部20の長手方向端の一方から基部20の長手方向に沿って突設される。気体圧シリンダ18は、基部20の長手方向端の他方の下面に固定されると共に、基部20の長手方向に沿って第1把持部44とは逆方向に突設され、第2把持部46は、気体圧シリンダ18の突出側端に基部20の長手方向と交差する方向に配置される。第1操作レバー28及び第2操作レバー34は第1把持部44に隣接して配置される。
また、第1把持部44の下方にブラケット50が設けられ、係止部22はブラケット50に設けられ下方に突出する突起で構成される。
【0040】
上記構成によれば、肋骨筋入れ装置10を全体としてコンパクト化できる。また、第1把持部44と第2把持部46とは、基部20を挟んで基部20の両側に配置され、作業員が第1把持部44及び第2把持部46を両手で把持することで、一方の手に重量が偏ることなく、安定して持ち上げることができる。
また、第1操作レバー28及び第2操作レバー34は第1把持部44に隣接配置されるので、肋骨筋入れ装置10の操作中に第1把持部44を把持する手で第1把持部44を把持しながら第1操作レバー28及び第2操作レバー34を操作できる。
また、第2把持部46の長手方向は第1把持部44の長手方向に対して交差する方向に配置されるので、肋骨筋入れ装置10を安定して持ち上げることができる。
また、係止部22は作業員が把持する第1把持部44の下方に位置するブラケット50に設けられるので、係止部22の位置決めが容易になる。
【0041】
図示した実施形態では、図5及び図6に示すように、第2把持部46は基部20の長手方向とほぼ直交した方向に延在する。こうした第2把持部46と基部20の長手方向に沿って延在する第1把持部44との配置関係によって、これらの把持部を両手で把持する作業員による肋骨筋入れ装置10の操作が容易になる。
また、駆動部16の下方に位置するようにストッパ52が設けられる。ストッパ52とハウジング2とは、刃12が筋入れ方向に移動し、筋入れ終端位置まで移動したとき、ストッパ52が肋骨先端部106aに接する位置関係を有する。これによって、刃12を所望の筋入れ終端位置で確実に停止させることができる。
【0042】
図示した実施形態では、図1図3に示すように、ブラケット50には、長手方向に長辺を有する複数の長孔56が形成され、係止部22が形成された基板54は、長孔56に挿入されたボルト58に螺合している。こうして、基板54はブラケット50の長手方向の位置を調整できる。そのため、ロースバラ部位100の肋骨先端部106aの位置に応じて、係止部22と刃12との間隔を調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
幾つかの実施形態によれば、豚、牛、羊等の家畜屠体から得られる背骨及び肋骨を含む食肉の肋骨先端部を筋入れする際に、低コストでかつ軽重量で取り扱いが容易な肋骨筋入れ装置を用いることで、作業員の負荷を軽減でき、作業効率を向上できる。
【符号の説明】
【0044】
10 肋骨筋入れ装置
12 刃
12a 第1刃
12b 第2刃
14 回転軸
16 駆動部
18 気体圧シリンダ
18a、18a’ ピストンロッド
20 基部
22 係止部
22a 第1係止部
22b 第2係止部
23 リング
24 第1給排路
26 切替弁
28 第1操作レバー
30 第2給排路
32 制御弁
34 第2操作レバー
36、38a、38b 管路
40、42 台板
44 第1把持部
46 第2把持部
48 鍔部
50 ブラケット
52 ストッパ
54 基板
56 長孔
58 ボルト
60 まな板
100 ロースバラ部位
102 肉部
104 背骨
106 肋骨
106a 肋骨先端部
108 棘突起
110 脂肪層
112 髄管
a 圧力空気
d 筋入れ方向
【要約】      (修正有)
【課題】家畜屠体から得られる背骨及び肋骨を含む食肉の肋骨先端部の筋入れを行うに際し、作業員の負荷を軽減でき、軽重量で取り扱いが容易な筋入れ装置を実現する。
【解決手段】家畜屠体から得られる背骨104及び肋骨106を含む食肉の肋骨先端部を肉部から分離するための肋骨筋入れ装置10で、U字形状を有し、肋骨先端部106aを囲む部位が異なる大きさを有する複数の刃12a,12bと、複数の刃が周方向に設けられた回転軸14と、複数の刃の一つが切断位置に配置されるように回転軸を周方向に回転させる駆動部16と、圧力気体で回転軸を往復動させる気体圧シリンダ18と、少なくとも気体圧シリンダが固定される基部20と、基部に設けられ家畜屠体に係止して基部を家畜屠体に対して位置決めするための係止部22a,22bと、を備え、複数の刃は、肋骨先端部の筋入れ方向に対して複数の刃が後退する方向へ傾斜している。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7