特許第6040532号(P6040532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040532
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】プローブ及び接続治具
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20161128BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20161128BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   G01R1/073 E
   G01R1/067 C
   H01L21/66 B
   !H05K3/00 T
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-14141(P2012-14141)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-152200(P2013-152200A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲宏
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/132613(WO,A1)
【文献】 特開2010−091358(JP,A)
【文献】 特開2002−056915(JP,A)
【文献】 特開2002−231399(JP,A)
【文献】 特表2002−501289(JP,A)
【文献】 国際公開第99/035715(WO,A1)
【文献】 特開2006−084212(JP,A)
【文献】 特開2010−281601(JP,A)
【文献】 特開2011−089801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/073
G01R 1/067
H01L 21/66
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に設けられた接続点との電気接続を行うための接続治具に用いられるプローブであって、
導電性を有し、略筒状の形態を有する外側導体と、
導電性を有し、その先端部が前記外側導体の先端側から突出し、かつその後端部が前記外側導体の後端側から突出しないように前記外側導体内に挿入されるとともに、前記外側導体と電気接続され、その先端部が前記検査対象の前記接続点に当接されて電気接続される内側導体と、
前記外側導体と前記内側導体とを固定する固定部と、
を備え、
前記外側導体の周壁には、前記プローブの軸方向に伸縮する第1及び第2のばね部が、前記第1のばね部が前記第2のばね部の先端側に位置するように、軸方向に間隔をあけて設けられ、
前記固定部は、前記外側導体の前記第1のばね部と前記第2のばね部との間に位置する中間部分と前記内側導体とを固定し、
前記内側導体は、略棒状であり、
前記外側導体の前記第1のばね部のばね定数は、前記第2のばね部のばね定数よりも小さいことを特徴とするプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブにおいて、
前記外側導体の前記第1のばね部及び前記第2のばね部は、前記外側導体の前記周壁に形成された略螺旋状のばねを有しており、
自由状態における前記第1のばね部の前記ばねの前記軸方向に対する1周当たりのピッチは、前記第2のばね部の前記ばねの前記軸方向に対する1周当たりのピッチよりも小さく設定されていることを特徴とするプローブ。
【請求項3】
請求項1に記載のプローブにおいて、
前記外側導体の前記第1のばね部の前記ばねの該ばねの延伸方向と垂直な方向に沿った幅は、前記第2のばね部の前記ばねの該ばねの延伸方向と垂直な方向に沿った幅よりも小さいことを特徴とするプローブ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプローブにおいて、
前記内側導体の前記先端部が前記検査対象の前記接続点に当接された際の荷重によって前記内側導体が後端側に押し込まれて前記外側導体の前記第2のばね部が前記軸方向に圧縮されるのに伴って、前記外側導体の前記中間部分と前記内側導体とが一体に前記プローブの軸周りに回転されることを特徴とするプローブ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプローブを用いた接続治具であって、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の前記プローブと、
前記プローブの前記外側導体の後端部が当接されて電気接続される電極部と、
前記プローブの前記内側導体の先端側の部分が前記検査対象側に突出されるように挿通されて保持される第1の貫通孔が設けられるとともに、前記第1の貫通孔の内面又は前記検査対象と反対側の開口部に、前記プローブの前記外側導体の先端側端部が当接する当接部が設けられ、前記電極部との間で前記外側導体を前記軸方向に圧縮した状態に保持する第1のプローブ保持部材と、
前記プローブの後端側の部分が挿通されて保持される第2の貫通孔が設けられた第2のプローブ保持部材と、
前記電極部を保持する電極保持部材と、
を備えることを特徴とする接続治具。
【請求項6】
検査対象に設けられた接続点との電気接続を行うための接続治具に用いられるプローブであって、
導電性を有し、略筒状の形態を有する外側導体と、
導電性を有するとともに略筒状の形態を有し、その先端部及び後端部が前記外側導体の先端側及び後端側から突出するように前記外側導体内に挿入されるとともに、前記外側導体と電気接続され、その先端部が前記検査対象の前記接続点に当接されて電気接続される内側導体と、
前記外側導体と前記内側導体とを固定する固定部と、
を備え、
前記外側導体の周壁における前記固定部よりも先端側に位置する部分には、前記プローブの軸方向に伸縮する第1のばね部が設けられ、
前記内側導体の周壁における前記固定部の先端側に位置する部分及び後端側に位置する部分の少なくともいずれか一方には、前記第1のばね部よりも大きなばね定数を有し、前記軸方向に伸縮する第2のばね部が設けられることを特徴とするプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象に設けられた接続点との電気接続を行うための接続治具に用いられるプローブ及び接続治具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の接続治具は、例えば検査治具又は検査カードと呼ばれるものであり、複数のプローブを備えていて、そのプローブを経由して、検査対象に予め設定される接続点に、検査装置等からの電流あるいは電気信号を供給するとともに、接続点から電気信号を検出することによって、接続点間の電気的特性を検出して、導通検査やリーク検査の動作試験等をする。
【0003】
その検査対象としては、例えば、プリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板又は半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板や、半導体ウェハや半導体チップやCSP (chip size package) などの半導体装置(LSI(Large Scale Integration)など)が該当する。
【0004】
この種の従来のプローブとしては、特許文献1に記載のものがある。この特許文献1に記載のプローブでは、導電性の極細の筒状体によりプローブが構成されるとともに、その筒状体の周壁面に軸方向に伸縮するばね部が形成されている。このため、このプローブは、その先端部が検査対象の接続点に当接された際に接続点から受ける反力(荷重)によりばね部が軸方向に圧縮されるようになっている。また、このプローブを接続治具に装着する際、ばね部を軸方向に圧縮した状態で装着することにより、ばね部の弾発力によりプローブの後端が電極部に押し当てられ、プローブと電極部との電気的な接触状態(例えば、接触抵抗等)が安定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−164028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のプローブでは、接続治具に装着されたときの予圧に伴うプローブの反力の調節が難しく、反力が大きくなりやすいという問題がある。接続治具には数百本から数万本のプローブが装着されるため、予圧の反力が大きすぎると、プローブの先端側を反力に抗して抜け止め保持しているプローブ保持部材が、予圧の反力により変形してしまう等の不都合が生じる。
【0007】
なお、この種のプローブでは、ばね部のばね特性(例えば、ばね定数等)は、プローブが検査対象の接続点に当接される際の押圧力とばね部の軸方向の圧縮寸法との関係等が優先される傾向にあり、予圧に最適なばね定数よりも大きなばね定数に設定される傾向がある。
【0008】
また、プローブの予圧による反力を小さくするために、プローブに予圧を与えるためのプローブの軸方向の圧縮寸法を小さくすることが考えられる。しかし、この構成では、プローブの長さのバラツキの影響により、各プローブの予圧のための圧縮寸法にバラツキが生じ、各プローブの予圧にバラツキが生じてしまう。
【0009】
また、近年、LSIの形成プロセスが向上し、LSIの微細化が推進され、LSI検査用パッドの狭ピッチ化や多数化が進んだことにより、検査対象の基板の複雑化や微細化がより進み、基板に設定される対象点がより狭く又は小さく形成されるようになったため、プローブがより細く形成されている。そのため、多数の微細なプローブであっても確実に先端部と接続点との電気的接続が図れることが求められている。
【0010】
そこで、本発明の解決すべき課題は、プローブが検査対象の接続点に当接される際のばね特性を損ねることなく、接続治具に装着されたときのプローブの予圧の反力を効果的に抑制できるプローブ及び接続治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係るプローブの第1の局面では、検査対象に設けられた接続点との電気接続を行うための接続治具に用いられるプローブであって、導電性を有し、略筒状の形態を有する外側導体と、導電性を有し、その先端部が前記外側導体の先端側から突出し、かつその後端部が前記外側導体の後端側から突出しないように前記外側導体内に挿入されるとともに、前記外側導体と電気接続され、その先端部が前記検査対象の前記接続点に当接されて電気接続される内側導体と、前記外側導体と前記内側導体とを固定する固定部と、を備え、前記外側導体の周壁には、前記プローブの軸方向に伸縮する第1及び第2のばね部が、前記第1のばね部が前記第2のばね部の先端側に位置するように、軸方向に間隔をあけて設けられ、 前記固定部は、前記外側導体の前記第1のばね部と前記第2のばね部との間に位置する中間部分と前記内側導体とを固定し、前記内側導体は略棒状であり、前記外側導体の前記第1のばね部のばね定数は、前記第2のばね部のばね定数よりも小さい。
【0012】
また、本発明に係るプローブの第2の局面では、上記第1の局面において、前記外側導体の前記第1のばね部のばね定数は、前記第2のばね部のばね定数よりも小さい。
【0013】
また、本発明に係るプローブの第3の局面では、上記第2の局面において、前記外側導体の前記第1のばね部及び前記第2のばね部は、前記外側導体の前記周壁に形成された略螺旋状のばねを有しており、自由状態における前記第1のばね部の前記ばねの前記軸方向に対する1周当たりのピッチは、前記第2のばね部の前記ばねの前記軸方向に対する1周当たりのピッチよりも小さく設定されている。
【0014】
また、本発明に係るプローブの第4の局面では、上記第2の局面において、前記外側導体の前記第1のばね部の前記ばねの該ばねの延伸方向と垂直な方向に沿った幅は、前記第2のばね部の前記ばねの該ばねの延伸方向と垂直な方向に沿った幅よりも小さい。
【0015】
また、本発明に係るプローブの第5の局面では、上記第2ないし第3のいずれかの局面において、前記内側導体の前記先端部が前記検査対象の前記接続点に当接された際の荷重によって前記内側導体が後端側に押し込まれて前記外側導体の前記第2のばね部が前記軸方向に圧縮されるのに伴って、前記外側導体の前記中間部分と前記内側導体とが一体に前記プローブの軸周りに回転される。
【0016】
また、本発明に係る接続治具の第1の局面では、上記第1ないし第5のいずれかの局面に係るプローブを用いた接続治具であって、上記第1ないし第5のいずれかの局面に係るプローブと、前記プローブの前記外側導体の後端部が当接されて電気接続される電極部と、前記プローブの前記内側導体の先端側の部分が前記検査対象側に突出されるように挿通されて保持される第1の貫通孔が設けられるとともに、前記第1の貫通孔の内面又は前記検査対象と反対側の開口部に、前記プローブの前記外側導体の先端側端部が当接する当接部が設けられ、前記電極部との間で前記外側導体を前記軸方向に圧縮した状態に保持する第1のプローブ保持部材と、前記プローブの後端側の部分が挿通されて保持される第2の貫通孔が設けられた第2のプローブ保持部材と、前記電極部を保持する電極保持部材とを備える。
【0017】
また、本発明に係るプローブの第6の局面では、検査対象に設けられた接続点との電気接続を行うための接続治具に用いられるプローブであって、導電性を有し、略筒状の形態を有する外側導体と、導電性を有するとともに略筒状の形態を有し、その先端部及び後端部が前記外側導体の先端側及び後端側から突出するように前記外側導体内に挿入されるとともに、前記外側導体と電気接続され、その先端部が前記検査対象の前記接続点に当接されて電気接続される内側導体と、前記外側導体と前記内側導体とを固定する固定部とを備え、前記外側導体の周壁における前記固定部よりも先端側に位置する部分には、前記プローブの軸方向に伸縮する第1のばね部が設けられ、前記内側導体の周壁における前記固定部の先端側に位置する部分及び後端側に位置する部分の少なくともいずれか一方には、前記第1のばね部よりも大きなばね定数を有し、前記軸方向に伸縮する第2のばね部が設けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプローブの第1の局面によれば、外側導体の周壁に第1及び第2のばね部が、第1のばね部が第2のばね部の先端側に位置するように、軸方向に間隔をあけて設けられている。それ故、プローブが接続治具に装着され、プローブの外側導体が軸方向に圧縮されて予圧がかけられた状態では、第1のばね部と第2のばね部の合成ばね定数と外側導体の圧縮寸法とに応じた予圧の反力が接続治具のプローブ保持部材等に作用することとなる。このとき、第1のばね部と第2のばね部の合成ばね定数は、第1のばね部のばね定数及び第2のばね部のばね定数よりも小さくなるため、予圧圧縮時にプローブ(ここでは、外側導体)を圧縮する際のばね定数を小さく抑制することができる。このため、プローブが接続治具に装着された際のプローブの予圧の反力を効果的に抑制でき、プローブ保持部材が、予圧の反力により変形してしまう等の不都合を防止できる。
【0019】
また、内側導体の後端側の部分が、外側導体内に挿入されて外側導体と電気接続された状態で、外側導体の第1のばね部と第2のばね部との間に位置する中間部分と固定部により固定されている。それ故、検査時に、プローブが接続治具に装着されて予圧が加えられた状態において、プローブの内側導体の先端部が検査対象の接続点と当接され、押圧力により内側導体の先端部が後端側に押し込まれる際のプローブの圧縮変位は、外側導体の後端側に設けられる第2のばね部が圧縮されることにより対応されることとなる。このときのプローブのばね定数は、上記の予圧圧縮時のばね定数(合成ばね定数)よりも大きくなる。このため、検査時にプローブの先端部を検査対象の接続点に当接させる際のプローブのばね特性については、十分に大きなばね定数を設定できる。
【0020】
その結果、プローブが検査対象の接続点に当接される際のばね特性を損ねることなく、接続治具に装着されたときのプローブの予圧の反力を効果的に抑制できるプローブを提供できる。
【0021】
本発明に係るプローブの第2の局面によれば、外側導体の先端側に設けられる第1のばね部のばね定数が、後端側に設けられる第2のばね部のばね定数よりも小さく設定されている。このため、上記のように予圧圧縮時にプローブの外側導体を軸方向に圧縮する際のばね定数(合成ばね定数)については、ばね定数の小さい方の第1のばね部のばね定数よりも小さく抑制できる。その一方、上記のように検査時に内側導体の先端部が後端側に押し込まれるようにプローブが圧縮される際のばね特性については、ばね定数が大きい方の第2のばね部のばね定数によって規定されるため、大きなばね定数を設定できる。その結果、プローブが検査対象の接続点に当接される際のばね特性を損ねることなく、接続治具に装着されたときのプローブの予圧の反力をさらに効果的に抑制できる。
【0022】
本発明に係るプローブの第3の局面によれば、外側導体の第1のばね部及び第2のばね部は、外側導体の前記周壁に形成された略螺旋状のばねを有しており、自由状態における第1のばね部の前記ばねの軸方向に対する1周当たりのピッチは、第2のばね部の前記ばねの軸方向に対する1周当たりのピッチよりも小さく設定されている。このため、外側導体にばね定数の異なる第1及び第2のばね部を容易にかつ確実に形成できるとともに、第1及び第2のばね部のばね定数の差を容易に調節できる。
【0023】
本発明に係るプローブの第4の局面によれば、外側導体の第1のばね部の前記ばねの該ばねの延伸方向と垂直な方向に沿った幅は、第2のばね部の前記ばねの該ばねの延伸方向と垂直な方向に沿った幅よりも小さい。このため、外側導体にばね定数の異なる第1及び第2のばね部をさらに容易にかつ確実に形成できるとともに、第1及び第2のばね部のばね定数の差をさらに容易に調節できる。
【0024】
本発明に係るプローブの第5の局面によれば、内側導体の先端部が検査対象の接続点に当接され、荷重によって内側導体が後端側に押し込まれるのに伴って、外側導体の中間部分と内側導体とが一体にプローブの軸周りに回転される。それ故、プローブの内側導体の先端部が検査対象の接続点に当接された際に、回転する内側導体の先端部により接続点表面の酸化膜等が切り裂かれるようにして確実に除去され、これによって、プローブと接続点との電気接続を安定して行うことができる。
【0025】
本発明に係る接続治具の第1の局面によれば、プローブが検査対象の接続点に当接される際のプローブのばね特性を損ねることなく、接続治具に装着されたときのプローブの予圧の反力を効果的に抑制できる接続治具を提供できる。
【0026】
本発明に係るプローブの第6の局面によれば、検査対象の接続点に当接される際のばね特性を損ねることなく、接続治具に装着されたときのプローブの予圧の反力を効果的に抑制できるプローブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るプローブが備えられた接続治具の概略の構成を示す一部断面正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るプローブの概略構成を示す図である。
図3図1のプローブに備えられる外側導体の概略構成を一部破断して示す図である。
図4図1の接続治具におけるプローブの先端側の構成を示す断面図である。
図5図1の接続治具におけるプローブの後端側の構成を示す断面図である。
図6図1の接続治具においてプローブの先端部が基板の接続点に当接される際の様子を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るプローブの概略構成を示す図である。
図8図7のプローブに備えられる内側導体の概略構成を一部破断して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る接続治具及びプローブは、検査対象が有する検査対象部に、検査装置から電力あるいは電気信号を所定検査位置である接続点に供給するとともに、その接続点を介して検査対象部から電気信号を検出することによって、検査対象部の電気的特性を検出したり、動作試験を行ったりすることを可能にする。
【0029】
なお、以下の各添付図において、各部材の厚さ、長さ、形状、部材同士の間隔等は、理解の容易のために、適宜、拡大・縮小・変形・簡略化等を行っている。
【0030】
<第1実施形態>
<接続治具の概略の構成>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るプローブが用いられた接続治具の概略の構成について説明する。接続治具10は、第1のプローブ保持部材12、第2のプローブ保持部材14、電極部15(図5参照)及び電極保持部材16を備える。第1及び第2のプローブ保持部材12,14は、樹脂あるいはセラミックス等の絶縁性の板状部材からなる。第1及び第2のプローブ保持部材12,14は、棒状の支持部材11及びその周囲に環装されたスペーサ11sによって所定の距離だけ離隔されて保持されている。
【0031】
第1のプローブ保持部材12には、本発明に係る第1の貫通孔に対応する複数の貫通孔12hが形成されていて、それに挿入されて保持されたプローブ20の先端部が所定の位置に案内される。第2のプローブ保持部材4には、本発明に係る第2の貫通孔に対応する複数の貫通孔14hが形成されていて、それに挿入されて保持されたプローブ20の後端部が電極部15へ案内される。検査対象が微細になるのに伴い接続点間の距離が非常に小さくなっているため、各貫通孔12h,14hの内径及び隣り合う貫通孔12h,14h同士の間隔も非常に小さくなっている。
【0032】
プローブ20の後端部は、電極部保持部材16に保持(固定)された後述する電極部15の検査対象側表面と当接される。本実施形態では、例えば電極部15は電極保持部材16に固定された導線18の端部によって構成されており、その導線18は図示せぬ検査装置に接続されている。なお、図1においては、図面の簡略化のために、一部のプローブ20のみを示している。
【0033】
また、図1に示すように、検査対象の検査時には、接続治具10の下方に、検査対象である被検査物30(例えば、基板)を配置し、接続治具10を下降させてプローブ20の先端部を所定の接続点、例えば、30dnに接触させ、それにより、検査対象部の電気的特性の検査を行う。
【0034】
<プローブの構成>
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係るプローブ20の構成について説明する。このプローブ20は、図2及び図3に示すように、外側導体22、内側導体24及び固定部26を備えて構成されている。
【0035】
外側導体22は、導電性を有するとともに、略筒状の形態(本実施形態では、円筒状の形態)を有している。内側導体24は、導電性を有する細長い略棒状(本実施形態では、円柱状)の部材であり、その先端部24aには、検査対象の接続点に当接される先鋭状の当接端24cが設けられている。このような内側導体24は、その先端部24aが外側導体22の先端側から突出し、かつその後端部24bが外側導体22の後端側から突出しないように外側導体22内に挿入されるとともに、外側導体22と電気接続されている。固定部26は、外側導体22と内側導体24とを固定している。本実施形態では、外側導体22と内側導体24との電気接続は、内側導体24が外側導体22内に挿入された際に生じる両者の接触箇所、及び固定部26とにより行われている。
【0036】
外側導体22の円筒状の周壁には、プローブ20の軸方向に伸縮するばね定数の異なる第1及び第2のばね部221,222が、ばね定数の小さい方の第1のばね部221が第2のばね部222の先端側に位置するように設けられている。このような第1及び第2のばね部221,222は、外側導体22の周壁に形成された略螺旋状(より詳細には、細長い板ばねを螺旋状に巻いたような形状)のばね221a,222aによって構成されている。なお、第1及び第2のばね部221,222において、ばね部221,222の全長に渡ってばね221a,222aを軸方向に連続的に形成してもよいし、1又は複数箇所にばね221a,222aを形成しない部分(非伸縮部分)を設けてもよい。
【0037】
そして、より具体的には、本実施形態では、自由状態において、第1のばね部221のばね221aの軸方向に対する1周当たりのピッチP1は、第2のばね部222のばね222aの軸方向に対する1周当たりのピッチP2よりも小さく設定されている。また、第1のばね部221のばね221aの該ばね211aの延伸方向と垂直な方向に沿った幅W1は、第2のばね部222のばね222aの該ばね222aの延伸方向と垂直な方向に沿った幅W2よりも小さく設定されている。なお、このような外側導体22の形成方法については後述する。
【0038】
固定部26は、外側導体22の第1のばね部221と第2のばね部222との間に位置する中間部分22cと、その中間部分22cに対向する内側導体24の部分とを固定している。このため、外側導体22の第1及び第2のばね部221,222の伸縮に伴って、内側導体24が外側導体22の中間部分22cと共に軸方向に動くようになっている。なお、外側導体22内に挿入された内側導体24の後端部24bの位置は、内側導体24が後端側に押し込まれて第2のばね部222が軸方向に圧縮された際に、その後端部24bが外側導体22の後端から外部に突出しないように設定されている。
【0039】
本実施形態では、固定部26には、例えば電気溶接による固定が採用されているが、レーザー溶接等の他の溶接、かしめ固定、接着剤による固定など、種々の構成が採用可能である。
【0040】
また、外側導体22の第1及び第2のばね部221,222は、上述の如く、外側導体22の周壁に形成された略螺旋状のばね22a,222aによって構成されているため、軸方向への伸縮に伴い、ばね部211,222の軸方向の両端部間で、両者の位置関係が軸周りにねじれる(回転する)ようになっている。それ故、外側導体22の後端部22bの軸周りの回転を止めた状態で第2のばね部222を軸方向に伸縮させると、その伸縮に伴って、内側導体24が外側導体22の中間部分22cとともに軸周りに回転するようになっている。このため、内側導体24の先端部24aが検査対象の接続点に当接された際の荷重によって内側導体24が後端側(外側導体22内)に押し込まれて外側導体2の第2のばね部222が軸方向に圧縮されるのに伴って、外側導体22の中間部分22cと内側導体24とが一体に軸周りに回転するようになっている。
【0041】
なお、上述の内側導体24が外側導体22内に押し込まれる際の内側導体24の回転動作に関して補足すると、内側導体24が押し込まれる際の内側導体24の先端部24aと接続点との当接面積よりも、外側導体22の後端部22bが電極部15等と当接する当接面積の方が大きい。それ故、内側導体24が押し込まれる際に内側導体24の先端部24aと接続点との間に働く摩擦力に対して、外側導体22の後端部22bとそれが当接する電極部15等との間に働く摩擦力の方が大きい。このため、第2のばね部222が軸方向に圧縮されるのに伴って、外側導体22の後端部22bは回転することなく、外側導体22の中間部分22c及び内側導体24の方が回転するようになっている。
【0042】
また、本実施形態に係る内側導体22において、先端部24aの当接端24cを、内側導体24及び外側導体22の中心軸A上からずれた位置(偏心した位置)に設けられることもできる。この構成の場合、上記のように内側導体24が外側導体22内に押し込まれて内側導体24が回転した際、内側導体24の当接端24cが中心軸A周りに円を描くように旋回する。これによって、内側導体24の当接端24cが検査対象の接続点に当接した際、当接端24cが接続点の表面の酸化膜等を切り裂くようにして接続点に摺接され、接続点の表面の酸化膜等が効果的に除去される。
【0043】
ここで、プローブ20及びその各部の寸法について記載する。プローブ20の全長L1は、例えば2〜12mm程度に設定され、プローブ20及び外側導体22の外径R1は、例えば30〜100μm程度に設定される。外側導体22の全長L2は、例えば1〜10mm程度に設定され、その内径R2は、例えば20〜80μm程度に設定される。内側導体24の全長L3は、例えば1〜10mm程度に設定され、その外径は、内側導体24が外側導体22内で摺動可能なように外側導体22の内径R2によりもやや小さな値に設定される。
【0044】
また、外側導体22の第1のばね部221の軸方向の長さL4は、例えば0.5〜4mm程度に設定される。第2のばね部221の軸方向の長さL5は、例えば1〜8mm程度に設定される。第1のばね部221のばね221aの前記ピッチP1は、例えば50〜150μmm程度に設定され、前記幅W1は、例えば20〜100μmm程度に設定される。第2のばね部221のばね221aの前記ピッチP1は、例えば100〜300μmm程度に設定され、前記幅W1は、例えば50〜300μmm程度に設定される。
【0045】
また、第1及び第2のばね部221,222のばね定数の比は、例えば第2のばね部222のばね定数が第1のばね部221のばね定数の2〜10倍程度になるように設定される。また、より具体的には、第1のばね部221のばね定数は、例えば1〜5gf/mm程度に設定される。第2のばね部222のばね定数は、例えば4〜20gf/mm程度に設定される。第1及び第2のばね部221,222のばね定数の比は、例えば第2のばね部222のばね定数が第1のばね部221のばね定数の2〜10倍程度になるように設定される。
【0046】
また、外側導体22の材料としては、例えばニッケル又はニッケル合金のチューブ等(例えば、電鋳チューブ等)を用いることができる。また、外側導体22の先端部22aの端面及び後端部22bの端面を除いて、周面は必要に応じて絶縁被覆してもよい。内側導体24の材料としては、例えばタングステン、工具用炭素鋼(SK材)又はベリリウム銅等が挙げられる。
【0047】
また、内側導体24の先端部24aの形状、特に当接端24cの形状としては、例えば図2に示すように、内側導体24の中心軸を斜めに交差する面に沿って内側導体24の先端部24aを切断したような形状が挙げられる。
【0048】
ここで、内側導体24の先端部24aの形状に関する変形例として、次のような構成が採用可能でさる。第1の変形例としては、先端である当接端24cが中心軸Aに対して偏心するように、内側導体24の中心軸を斜めに交差する4つの面で切断した形状が挙げられる。第2の変形例としては、マイナスドライバ(ねじ回し)の先端のような形状が挙げられる。
【0049】
<接続治具の構成>
次に、図4ないし図6を参照して、接続治具10の細部の構成について説明する。図4に示すように、第1のプローブ保持部材12の貫通孔12hの内面又は検査対象と反対側の開口部に、プローブ20の外側導体22の先端部22aの端面が当接する当接部(図4の構成では、内径が変化する境界部における段部)121が設けられている。そして、プローブ20は、その内側導体24の先端部24aが貫通孔12hに検査対象の反対側から検査対象側に向けて挿通された際、外側導体22の先端部22aの端面が当接部121に当接するようになっている。このように外側導体22の端面が当接部121に当接したとき、内側導体24の先端部24aが貫通孔12hを介して第1のプローブ保持部材12の検査対象側の表面から所定の突出寸歩で突出するようになっている。
【0050】
一方、プローブ20の後端部を構成する外側導体22の後端部22bは、図6に示すように、第2のプローブ保持部材14の貫通孔14hに挿通されて案内され、電極保持部材16によって保持された電極部15に当接されて電気接続される。
【0051】
第1のプローブ保持部材12の当接部121と電極部15との間の間隔は、第1及び第2のばね部221,222が自由状態にあるときのプローブ20の外側導体22の長さL2よりも、所定の予圧圧縮寸法だけ小さく設定されている。このため、プローブ20が接続治具10に装着された際、当接部121と電極部15との間で外側導体22が所定の予圧寸法だけ軸方向に圧縮された状態となる。このとき、外側導体22の第1及び第2のばね部221,222の両方が軸方向に圧縮されることとなる。これにより、外側導体22の後端部22bが電極部15に所定の押圧力で押し付けられて予圧がかけられ、外側導体22の後端部22bと電極部15との電気接続が安定化される。
【0052】
この予圧状態における外側導体22の圧縮変位に対するばね特性は、第1及び第2のばね部221,222のばね定数の合成ばね定数によって規定されることとなる。ここで、合成定数をKとし、第1のばね部221のばね定数をk1、第2のばね部222のばね定数をk2とすると、K、k1及びk2の関係は、
1/K=1/k1 +1/k2
の関係式によって規定される。
【0053】
この予圧状態における合成ばね定数Kは、ばね定数が小さい方の第1のばね部221のばね定数k1よりもさらに小さな値になるため、外側導体22を予圧のために圧縮する予圧圧縮寸法として十分な寸法を確保しながら、予圧の反力を効果的に抑制できるようになっている。その結果、第1のプローブ保持部材12が、予圧の反力により変形してしまう等の不都合を防止できる。ここで、予圧のために外側導体22が圧縮される寸法(予圧圧縮寸法)は、例えば10〜100μm程度に設定される。また、予圧圧縮時の荷重は、例えば0.05〜0.5gf程度に設定される。
【0054】
そして、基板等の被検査物の検査時には、図6に示すように、接続治具10を下降させてプローブ20の先端部24aを被検査物30の配線等の対象部上の所定の接続点30d1に当接させる。さらに接続治具10が下降すると、プローブ20の内側導体24は、押し上げられて第1のプローブ保持部材12の貫通孔12h内に入り込む。このとき、プローブ20の内側導体24は外側導体22の中間部分22cと固定されているため、内側導体24の押し込みに伴って外側導体22の第2のばね部222が軸方向に圧縮されるとともに、内側導体24が外側導体22内に押し込まれる。
【0055】
この検査時にプローブ20が軸方向に圧縮される検査圧縮寸法(すなわち、検査点30d1からの荷重により内側導体24が第1のプローブ保持部材12の貫通孔12h内に押し込まれる寸法)は、予圧状態における第1のばね部221の予圧圧縮寸法よりも所定の本圧縮寸法だけ大きな値に設定される。このため、内側導体24の先端部221aが被検査物30の接続点30d1に当接されてから、プローブ20が予圧状態の軸方向の長さを基準として第1のばね部221の予圧圧縮寸法分だけ圧縮されるまでは、プローブ20、すなわち第2のばね部222の圧縮に伴って、第1のばね部221が伸張し、外側導体22の先端部22aの端面が当接部121に当接したままの状態が維持される。この段階におけるプローブ20の圧縮に対するばね定数は、第2のばね部222のばね定数k2から第1のばね部221のばね定数k1を引き算した値となる。ここで、前記検査圧縮寸法は例えば10〜100μm程度に設定され、前記本圧縮寸法は例えば20〜200μm程度に設定される。また、検査時にプローブ20の先端部24aに与えられる荷重は、例えば 1〜10gf程度に設定される。
【0056】
さらにプローブ20が予圧状態の長さを基準として第1のばね部221の予圧圧縮寸法分を超えて圧縮されると、第1のばね部22が圧縮状態から完全に開放されるとともに、第2のばね部222のみが圧縮されることとる。この段階でプローブ20が圧縮される際のばね定数は、第2のばね部222のばね定数と等しくなる。このため、検査時にプローブ20の先端部24aを被検査物30の接続点30d1に当接される際のプローブ20のばね特性については、十分に大きなばね定数を設定できる。なお、最終的にプローブ20が予圧状態の長さを基準として第1のばね部221の予圧圧縮寸法分を前記本圧縮寸法だけ超えて圧縮された状態(この状態で被検査物30の検査が行われる)では、図6に示すように、外側導体22の先端部22aの端面が当接部121からプローブ20の後端側に離反している。
【0057】
その結果、プローブ20が被検査物30の接続点30d1に当接される際のばね特性を損ねることなく、接続治具10に装着されたときのプローブ20の予圧の反力を効果的に抑制できるプローブ20及び接続治具10を提供できる。
【0058】
また、上記の如く、プローブ20の先端が被検査物30の接続点30d1に当接され、プローブ20が予圧状態から圧縮され、外側導体22の第2のばね部222が圧縮されるのに伴って、図6の矢印B1で示すように、内側導体24が外側導体22の中間部分22cとともに中心軸A周りに回転する。これに伴い中心軸Aに対して偏心されている内側導体24の先鋭状の当接端24cが、中心軸A周りに旋回するようにして接続点30d1に摺接される。これによって、接続点30d1の表面の酸化膜等が効果的に除去され、プローブ20と接続点30d1との電気接続を安定して行うことができる。
【0059】
また、上記の如く、プローブ20の自由状態において、第1のばね部221のばね221aのピッチP1は、第2のばね部222のばね222aのピッチP2よりも小さく設定されているとともに、第1のばね部221のばね221aの幅W1は、第2のばね部222のばね222aの幅W2よりも小さく設定されている。このため、このため、プローブ20の外側導体22に、ばね定数の異なる第1及び第2のばね部221,222を容易にかつ確実に形成できるとともに、第1及び第2のばね部221,222のばね定数の差を容易に調節できる。
【0060】
なお、本実施形態では、外側導体22の第1のばね部221のばね定数を第2のばね部222のばね定数よりも小さくしたが、第1のばね部221のばね定数と第2のばね部222のばね定数とを同じにしてもよい。この場合でも、検査時に内側導体24が後端側に押し込まれてプローブ20が圧縮される際のばね定数を維持しながら、予圧圧縮に外側導体22が圧縮される際のばね定数を効果的に抑制できる。
【0061】
<外側導体22の製法例>
次に、プローブ20の外側導体22の製法例について説明する。まず、所定の芯材の外周面上に金めっき層を形成し、さらにその上にニッケルめっき層を形成することより電鋳チューブを作製する。芯材としては、例えば外径が5μmから300μmの金属線や樹脂線を用いることができる。金属線としては、例えばSUS線を用いることができ、樹脂線としては、例えばナイロン樹脂やポリエチレン樹脂等の合成樹脂線を用いることができる。また、金めっき層の厚さは、例えば約0.1μmから1μmであり、ニッケルめっき層の厚さは、例えば約5μmから50μmである。電鋳チューブの長さは、搬送作業の容易性等の観点から例えば50cm以下が望ましいが、それに限定されるものではなく、切断することなく連続的に製造してもよい。
【0062】
続いて、電鋳チューブのニッケルめっき層の外周面上に絶縁膜を形成する。絶縁膜は後述の所定の溝の形成の際にレジストとしても機能する。その絶縁膜の厚さは、例えば約2μmから50μmである。絶縁膜として、例えば、フッ素コーティング又はシリコーン樹脂材を用いて形成してもよい。
【0063】
続いて、絶縁膜の複数箇所においてその一部を螺旋状に除去することにより、螺旋溝を形成する。このとき、絶縁層の複数箇所においてその一部を周状に除去することにより、電鋳チューブを部品単位に分断するための周溝も形成される。それらの溝を形成した部分には、ニッケルめっき層が露出する。このような溝を形成する際には、絶縁膜にレーザービームを照射して、絶縁膜を除去する方法を採用することができる。この場合、芯材を周方向に回転させながら、溝の位置にレーザービームを直接照射し、その照射により絶縁膜を除去する。
【0064】
続いて、絶縁膜をマスクとして用いて、溝を介して露出したニッケルめっき層をエッチング除去して金めっき層を露出させる。その際、ニッケルめっき層と芯材との間に金めっき層が存在するため、エッチングの際にニッケルエッチング液が芯材まで到達することを防止することができる。
【0065】
続いて、超音波洗浄を行って、溝を介して露出した金めっき層を除去する。続いて、芯材の両端に張力を加えて延伸させて、その断面積が小さくなるように変形させる。芯材が延伸してその断面積が小さくなると、芯材の外周面を被覆していた金めっき層がその外周面から剥離して電鋳チューブの内側に残り、芯材と金めっき層との間に空間が形成される。続いて、芯材を抜き取ると、電鋳チューブが周溝によって各部品単位に分離され、第1及び第2のばね部221,222を有する複数の外側導体22が得られる。
【0066】
このように形成された外側導体22は、導電性材料の円筒形状チューブのニッケルめっき層を備え、そのニッケルめっき層の外周に絶縁層が形成されている。この製法例では、絶縁膜を形成し、それを必要に応じて、レジスト膜として使用したが、絶縁膜は必ずしも必要ではないので、エッチングの際には、レジスト膜を使用してもよい。
【0067】
<第2実施形態>
図7及び図8を参照して、本発明の第2実施形態に係るプローブについて説明する。このプローブ40は、図7及び図8に示すように、外側導体41、内側導体42及び固定部43を備えて構成されている。
【0068】
外側導体41は、導電性を有するとともに、略筒状の形態(本実施形態では、円筒状の形態)を有している。内側導体42は、導電性を有するとともに、略筒状の形態(本実施形態では、円筒状の形態)を有しており、その先端部42aには、検査対象の接続点に当接される先鋭状の当接端42cが設けられている。このような内側導体42は、その先端部42aが外側導体41の先端側から突出し、かつその後端部42bが外側導体22の後端側から突出するように外側導体41内に挿入されるとともに、外側導体41と電気接続されている。固定部43は、外側導体41と内側導体42とを固定している。本実施形態では、外側導体41と内側導体42との電気接続は、内側導体42が外側導体41内に挿入された際に生じる両者の接触箇所、及び固定部43とにより行われている。
【0069】
外側導体41の周壁における固定部43よりも先端側に位置する部分には、プローブ40の軸方向に伸縮する第1のばね部411が設けられている。また、内側導体42の周壁における固定部43の先端側に位置する部分及び後端側に位置する部分の少なくともいずれか一方(本実施形態では、その両方)には、外側導体41の第1のばね部411よりも大きなばね定数を有し、軸方向に伸縮する第2のばね部421が設けられている。このような第1及び第2のばね部411,421は、外側導体41又は内側導体42の周壁に形成された略螺旋状(より詳細には、細長い板ばねを螺旋状に巻いたような形状)のばね411a,421aによって構成されている。第1及び第2のばね部411,421のばね定数の調節は、第1実施形態に係る第1及び第2のばね部221,222の場合とほぼ同様に、ばね411a,421aの前記ピッチ及び前記幅等を調節することにより行われる。
【0070】
固定部43は、外側導体41の第1のばね部411の後端側に位置する部分と、内側導体42の先端側の第2のばね部421と後端側の第2のばね部421との間に位置する部分(中間部分)とを固定している。固定部43には、第1実施形態の固定部26の場合と同様に、例えば電気溶接による固定が採用されているが、レーザー溶接等の他の溶接、かしめ固定、接着剤による固定など、種々の構成が採用可能である。
【0071】
また、内側導体42の先端部42aにおいて、中心軸A上からずれた位置(偏心した位置)に位置する先鋭状の当接端42cを形成することができる。
【0072】
このようなプローブ40は、第1実施形態に係るプローブ20とほぼ同様な要領で接続治具20に装着される。但し、装着状態において、外側導体41の先端部41aの端面が第1のプローブ保持部材12の貫通孔12h内の当接部121に当接される点は同じであるが、このプローブ40では、外側導体41ではなく内側導体42の後端部42bの端面が電極部15に当接されるようになっている。そして、その装着状態において、外側導体41の第1のばね部411及び内側導体42の後端側の第2のばね部421が圧縮され予圧が掛けられるようになっている。このプローブ40の予圧圧縮のためのばね特性は、外側導体41の第1のばね部411のばね定数と内側導体42の後端側の第2のばね部421のばね定数との合成ばね定数により規定され、この合成ばね定数はばね定数が小さい第1のばね部411よりもさらに小さな値になる。これにより、第1のプローブ保持部材12に掛かる予圧の反力が効果的に抑制される。
【0073】
また、検査時において、プローブ40の先端部42aが被検査物30の接続点30d1に当接され、内側導体42の先端部41aが外側導体41の第1のばね部411の予圧圧縮寸法分を超えて後端側に押し込まれる際のプローブ40のばね特性は、内側導体42の先端側及び後端側の第2のばね部42のばね定数の合成ばね定数により規定されるため、十分に大きなばね定数を設定できる。
【0074】
その結果、プローブ40が被検査物30の接続点30d1に当接される際のばね特性を損ねることなく、接続治具10に装着されたときのプローブ40の予圧の反力を効果的に抑制できるプローブ40を提供できる。
【0075】
また、このプローブ40においても、プローブ40の先端が被検査物30の接続点30d1に当接され、プローブ40が予圧状態から圧縮され、内側導体42の先端側及び後端側の第2のばね部421が圧縮されるのに伴って、内側導体42の先端部42aが後端部42bに対して中心軸A周りに回転する。これに伴い中心軸Aに対して偏心されている内側導体42の先鋭状の当接端42cが、中心軸A周りに旋回するようにして接続点40d1に摺接されるようになっている。
【0076】
また、本実施形態に係るプローブ40の外側導体41及び内側導体42についても、上述の第1実施形態に係るプローブ20の外側導体22とほぼ同様な製法により作製できる。
【符号の説明】
【0077】
10 接続治具、12 第1のプローブ保持部材、12h 貫通孔、121 当接部、14 第2のプローブ保持部材、14h 貫通孔、15 電極部、16 電極保持部材、20 プローブ、22 内側導体、221 第1のばね部、222 第2のばね部、24 内側導体、26 固定部、30 被検査物、30d1,・・・,30dn 接続点、40 プローブ、41 外側導体、411 第1のばね部、42 内側導体、421 第2のばね部、43 固定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8