(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体31と、該導電性支持体31上にこの順で積層された電荷発生層35、電荷輸送層37、表面層39と、を備え、前記電荷輸送層37が、下記一般式(1)で表される正孔輸送材料と、下記一般式(2)で表される化合物と、を含有することを特徴とする。
【0025】
[一般式(1)中、R1〜R26は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0027】
[一般式(2)中、R27、R28はそれぞれ置換基を有していても良いアルキル基またはアリール基を表す。]
【0028】
次に、本発明に係る電子写真感光体(以下、単に感光体と称することもある。)、画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジについて図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0029】
<電子写真感光体>
図1は、本発明の感光体の構成を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層(37)とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層(37)上に表面層(39)が設けられてなる。
【0030】
〔導電性支持体〕
導電性支持体(31)としては、体積抵抗10
10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
【0031】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明において導電性支持体(31)として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0032】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明における導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
【0033】
[電荷発生層]
電荷発生層(35)は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層(35)には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられる。これら電荷発生物質は単独で用いても2種以上混合して用いても構わない。
電荷発生層(35)は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂と共に適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0034】
必要に応じて用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前、分散後のどちらでも構わない。
【0035】
電荷発生層(35)の形成に用いる塗布液の溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロルメタン、ジクロルエタン、モノクロルベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0036】
電荷発生層(35)は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波等の公知の分散方法を用いて溶剤中に分散して、塗工液を得ることができる。電荷発生層(35)は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の種々の添加剤が含まれていてもよい。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
【0037】
電荷発生層(35)の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0038】
[電荷輸送層]
電荷輸送層(37)は、電荷輸送材料およびバインダー樹脂を主成分とする層である。
本発明においては電荷輸送層に少なくとも下記一般式(1)で表される正孔輸送材料と下記一般式(2)で表される化合物とを含む。
【0040】
上記一般式(1)中、R1〜R26は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0042】
上記一般式(2)中、R27、R28はそれぞれ置換基を有していても良いアルキル基またはアリール基を表す。
ここで、R27、R28は、好ましくは置換基を有しないフェニル基、ハロゲン原子で置換されたフェニル基、あるいは、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基、または、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0043】
前記一般式(1)で表される正孔輸送材料の具体例として以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに何ら限定される物ではない。
【0049】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例として以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに何ら限定される物ではない。
【0052】
前記一般式(1)で表される正孔輸送材料を用いることで、非常に高感度であり、露光部電位が低く、Job内変動も抑制した感光体とすることができる。しかし化学的安定性は充分でなく、酸化性ガス等により劣化しやすい。
本発明においては、詳細を後述する表面層が設けられているため、ある程度は酸化性ガスから守られるが、酸化性ガスは少しずつ浸透し、電荷輸送層に到達する。従って電荷輸送層/表面層界面の正孔輸送材料は少しずつではあるが、曝露され続けることになり、非常に長期にわたる使用により画像ボケを発生してしまうと考えられる。
しかしここに前記一般式(2)で表される化合物が存在する場合には、長期間にわたる使用においても画像ボケを抑制することができる。理由は明らかにはなっていないが、前記一般式(2)で表される化合物はアクセプター性を有するため、前記一般式(1)で表される正孔輸送材料と電荷移動錯体を形成することで、酸化性ガスとの反応を妨げているものと推測される。また酸化防止剤等と異なり、酸化性ガスと反応しないため、材料の分解・劣化がなく、これがJob内変動も長期にわたり抑制できる理由と考えられる。
表面層に架橋性樹脂を用いた場合は、耐摩耗性が向上し、機械的にはより長期の使用が可能となるが、架橋性樹脂は三次元網目構造であるため、酸化性ガスが浸透しやすく、画像ボケが発生しやすい状況にある。しかし本発明に用いられる一般式(1)で表される正孔輸送材料と一般式(2)で表される化合物を組み合わせた場合には画像ボケが発生しにくいため、長期の使用においても画像ボケやJob内変動を抑制できるという本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0053】
電荷輸送層を構成するバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0054】
前記一般式(1)で表される正孔輸送材料の含有量は、バインダー樹脂100重量部に対して、20〜300重量部が好ましく、40〜150重量部がより好ましい。
前記一般式(2)で表される化合物の含有量は、前記一般式(1)で表される正孔輸送材料100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく1〜5重量部がより好ましい。含有量が少ないと本発明の効果が得られず、また多いと露光部電位やJob内変動が大きくなってしまう。
【0055】
電荷輸送層(37)は、電荷輸送材料をバインダー樹脂と共に溶剤中に溶解して、塗工液を得ることができる。
前記電荷輸送層(37)の形成に用いる塗布液の溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロルメタン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等、従来の塗工方法を用いることができる。
【0056】
電荷輸送層の膜厚は、50μm以下が好ましく、解像度・応答性の点から25μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上が好ましい。
【0057】
[表面層]
次に、表面層について説明する。
本発明の電子写真感光体の表面層(39)使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。特に、バインダー樹脂としてウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル/メタクリル樹脂、シロキサン、エポキシ樹脂等の架橋性樹脂を用いた架橋表面層とすることが好ましい。
表面層に架橋性樹脂を用いた場合には耐摩耗性が向上し、機械的にはより長期の使用が可能となるが、架橋性樹脂は三次元網目構造であるため、酸化性ガスが浸透しやすく、画像ボケが発生しやすい状況にある。しかし本発明の一般式(1)で表される正孔輸送材料と一般式(2)で表される化合物を組み合わせた場合には画像ボケが発生しにくいため、長期の使用においても画像ボケやJob内変動を抑制できるという本発明の効果をより顕著に得ることができる。
【0058】
架橋表面層においては、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物とを硬化させることが望ましい。これにより、耐摩耗性や耐傷性を損なわずに、電子写真感光体の電荷輸送性能を維持することができる。
【0059】
なお、重合とは、高分子化合物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた重合の前者の重合反応形態を示し、その形態が主にラジカルあるいはイオン等の中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合等のことをいう。また、重合性化合物とは、上記反応形態が可能な官能基を有する化合物を意味する。また、硬化とは一般に上記の官能基を有するモノマーやオリゴマーが、熱、可視光あるいは紫外線等の光、電子線やγ線等の放射線等のエネルギーを与えることによって分子間で結合(例えば、共有結合)し、三次元網目構造を形成する反応である。
【0060】
硬化性樹脂としては、熱によって重合する熱硬化性樹脂、紫外線や可視光線等の光によって重合する光硬化性樹脂、電子線によって重合する電子線硬化性樹脂等があり、必要に応じて硬化剤や触媒、重合開始剤等と組み合わせて用いられる。
【0061】
硬化した表面層を得るためには、重合性化合物(例えば、モノマーやオリゴマー等)中に重合反応を起こす官能基を有していることが必要である。それらの官能基としては、重合反応を起こす官能基であればいずれのものでも使用可能であるが、一般的には不飽和重合性官能基や開環重合性官能基が知られており、本発明においても有効である。
不飽和重合性官能基とは、ラジカルやイオンなどによって不飽和基が重合する反応であり、例えば、C=C、C≡C、C=O、C=N、C≡Nなどの官能基が挙げられる。
開環重合性官能基とは、炭素環やオクソ環や窒素ヘテロ環等のひずみを有する不安定な環状構造が、開環すると同時に重合を繰り返し、鎖状高分子を生成する反応であり、イオンが活性種として作用するものが大半である。これらの一例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等の炭素−炭素二重結合を有する基、シラノール基、環状エーテル基等の開環重合を起こす基、あるいは2種以上の分子の反応によるものが挙げられる。
また、硬化反応において、反応性モノマーの1分子に有する官能基数は、より多い方が3次元網目構造はより強固になり、3官能以上で特に有効である。これにより、硬化密度が高まり、高硬度で高弾性、かつ均一で平滑性も向上し、電子写真感光体の高耐久化や高画質化に有効となる。
【0062】
本発明における架橋表面層は、電荷輸送構造を有しない重合性化合物と電荷輸送性構造を有する重合性化合物とが硬化した層が好ましく、従来公知の材料を使用することができ、材料及び手段によらず高い効果を得ることができる。本発明においては、多くの硬化性樹脂の中でもアクリル/メタクリル樹脂が、耐摩耗性や耐傷性に強く、本発明の効果が得やすいことから、良好に使用できる。
【0063】
表面層を硬化させると、電荷輸送性構造を有しない重合性化合物と電荷輸送性構造を有する重合性化合物との硬化反応により、3次元的に発達した網目構造を形成する。この場合、硬化剤や触媒、重合開始剤等を予め混合することで、硬化度をさらに高めることが可能であり、本発明においては特に有効である。これにより、表面層の耐摩耗性が一段と向上し、さらに未反応官能基も残存しにくくなるため、耐摩耗性の向上や静電特性劣化の抑制に有効である。また、反応が均一であるためにクラックや歪みが生じにくくなり、クリーニング性が改善できる等、感光体の高耐久化、高画質化に対して高い効果を得ることができる。
【0064】
一方、電荷輸送性構造を有する重合性化合物は、電荷輸送性を示す構造が含まれ、かつ上記硬化性樹脂と反応するための官能基を有するものであればよく、従来公知の材料を使用することができる。電荷輸送性構造とは電荷輸送物質に含まれる構造であり、それによって電荷輸送性を発現する構造をいう。電荷輸送性構造とは主にホールを輸送する構造と電子を輸送する構造に大別されるが、本発明においてはそのどちらも含まれる。
ここで、電荷輸送性構造、すなわちホール輸送性構造あるいは電子輸送性構造が化合物中に一つであっても、あるいは複数であってもよく、複数の方が電荷輸送性に優れるためより好ましい。また、電荷輸送性構造を有する反応性化合物の分子中に、ホール輸送性構造と電子輸送性構造が共に含まれたバイポーラー性を有するものであってもよい。
【0065】
電荷輸送性構造のうち、ホール輸送性構造の一例としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、スチルベン、α−フェニルスチルベン、ベンジジン、ジアリールメタン、トリアリールメタン、9−スチリルアントラセン、ピラゾリン、ジビニルベンゼン、ヒドラゾン、インデン、ブタジエン、ピレン、ビススチルベン、エナミン等の一般に電子供与性を示す構造が挙げられる。一方、電子輸送性構造の一例としては、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2、4、7−トリニトロ−9−フルオレノン、2、4、5、7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2、4、5、7−テトラニトロキサントン、2、4、8−トリニトロチオキサントン、2、6、8−トリニトロ−4H−インデノ〔1、2−b〕チオフェン−4−オン、1、3、7−トリニトロジベンゾチオフェン−5、5−ジオキサイド、縮合多環キノン、ジフェノキノン、ベンゾキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、シアノ基やニトロ基を有する芳香族環等、一般に電子受容性を示す構造が挙げられる。
【0066】
次に、硬化性樹脂としてアクリル樹脂を例に挙げて詳細に説明する。
本発明に用いられる電荷輸送性を有しない重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送性構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を有する化合物である。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、重合可能な基であれば何れでもよいが、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
【0067】
電荷輸送性構造を有しない重合性化合物(モノマーもしくはオリゴマー)の官能基数はより多官能の方が好ましく、3官能以上がより好ましい。3官能以上の重合性モノマーを硬化した場合、3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度且つ高弾性な層が得られ、かつ均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。しかし、硬化条件や用いる材料によっては硬化反応において瞬時に多数の結合を形成させるため、体積収縮による内部応力が発生し、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる場合がある。その場合には1官能あるいは2官能の重合性モノマーを用いたり、あるいはそれらを混合して用いたりすることで改善できる場合がある。
【0068】
以下、耐摩耗性の向上に有効な3官能以上の電荷輸送性構造を有しない重合性化合物について説明する。
3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
【0069】
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物の具体例としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明において使用する上記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性(アルキレン変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性(エチレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性(プロピレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性(エピクロロヒドリン変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。前記変性を行った理由はこれらの化合物の粘度を下げ、扱いやすくするためである。
【0070】
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物は、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示した化合物等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
【0071】
架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物の成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。モノマー成分が20質量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、モノマー成分が80質量%以上では電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
【0072】
次に、電荷輸送性構造を有する重合性化合物について説明する。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、例えばトリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、重合可能な基であれば何れでもよいが、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
【0073】
本発明の架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、官能基がいくつのものでも使用可能であるが、1官能のものが静電特性の安定性や膜質の点からより好ましい。2官能以上の場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化層構造の歪みが大きくなり、層の内部応力が高まる原因となる。また、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が発生しやすくなる恐れがある。
【0074】
電荷輸送性構造を有する重合性化合物の電荷輸送性構造としては、電荷輸送機能を付与できるものであれば如何なる材料でも使用可能であるが、中でもトリアリールアミン構造が高い効果を有し有用である。
【0075】
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20質量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下し、露光部電位上昇等の電気特性の劣化が現れる。また、この成分が80質量%を超えると電荷輸送構造を有しないラジカル重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概にはいえないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
【0076】
本発明で用いられる架橋表面層は、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を反応させて硬化することにより形成されることが好ましい。ただし、架橋表面層はこれ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減等の機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーのいずれか又は複数を併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0077】
1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー等が挙げられる。
【0078】
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0079】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレート等のフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチル等のポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0080】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0081】
1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招くことがある。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し、50質量部以下、好ましくは30質量部以下に制限することが好ましい。
【0082】
本発明で用いる架橋表面層は、架橋性樹脂のモノマーを含む塗工液を塗布し、これを重合、硬化することにより形成されるものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために該塗工液中に重合開始剤(例えば熱重合開始剤や光重合開始剤)を含有させて使用してもよい。
【0083】
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0084】
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、等のアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、等のベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、等のベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、等のチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0085】
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0086】
次に、表面層に含有されるフィラーについて説明する。本発明において、表面層にフィラーを含有させることが可能であり、耐摩耗性が著しく向上するため、非常に有効である。
【0087】
フィラーとしては、以下のようなものが使用できる。
有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、カーボン微粒子などが挙げられる。カーボン微粒子としては、炭素が主成分の構造を有する粒子のことである。非晶質、ダイヤモンド、グラファイト、無定型炭素、フラーレン、ツェッペリン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の構造を有する粒子である。これらの構造の中で水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する粒子は、機械的及び化学的耐久性が良好である。水素を含有するダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン膜とは、SP3軌道を有するダイヤモンド構造、SP2軌道を有するグラファイト構造、非晶質カーボン構造などの類似構造が混在した粒子のことである。ダイヤモンド状カーボンもしくは非晶質カーボン微粒子は、炭素だけで構成されるのではなく、水素、酸素、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素等の他の元素が含有されていてもかまわない。
無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の金属酸化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、アルミナ、酸化チタンが有効に使用できる。また、コロイダルシリカやコロイダルアルミナなどの微粒子も有効に使用できる。
【0088】
また、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、フィラーの分散性を高める上で好ましい場合がある。フィラーの分散性の低下は露光部電位を上昇させるだけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、更には耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来公知の表面処理剤を使用することができる。
【0089】
フィラーの平均一次粒径は、0.01〜1.0μmであることが光透過性や耐摩耗性の点から好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。フィラーの平均一次粒径がこれよりも小さい場合には、フィラーの凝集や耐摩耗性の低下等が起こりやすくなり、またフィラーの表面積が増大するため、露光部電位上昇を引き起こす場合がある。また、フィラーの平均一次粒径がこれよりも大きい場合にはフィラーの沈降性が促進されたり、フィラーの凝集により画質劣化あるいは異常画像が発生したりする場合もある。
【0090】
また、フィラーの添加量としては、表面層に含まれる全固形分に対して、0.1重量%〜50重量%が好ましく、より好ましくは3重量%〜30重量%、さらに好ましくは5重量%〜20重量%である。フィラーの添加量がこれよりも少ないと、要求される耐摩耗性が得られない場合があり、またフィラーの添加量がこれよりも多い場合には、露光部電位上昇や解像度の低下等、画質劣化の影響が増大する傾向がある。
【0091】
前記フィラー材料は、少なくとも有機溶剤、さらに好ましくは分散剤とともにボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの従来方法を用いて分散できる。使用されるメディアの材質については、従来使用されているジルコニア、アルミナ、メノウ等のメディアを使用することができるが、フィラーの分散性及び残留電位低減効果の点からアルミナを使用することがより好ましく、耐摩耗性に優れたα型アルミナが特に好ましい。ジルコニアは、分散時のメディアの摩耗量が大きく、それらの混入によって残留電位が著しく増加するだけでなく、その摩耗粉の混入によって分散性が低下し、フィラーの沈降性が大幅に低下する。一方、メディアにアルミナを使用した場合には、分散時のメディアの摩耗量は低く抑えられる上に、混入した摩耗粉が残留電位に与える影響が非常に小さい。また、摩耗粉が混入しても分散性に対する影響が他のメディアに比べて少ない。したがって、分散に使用するメディアにはアルミナを使用することがより好ましい。
【0092】
分散剤は、塗工液中のフィラーの凝集、さらにはフィラーの沈降性を抑制し、フィラーの分散性が著しく向上させることから、フィラーや有機溶剤とともに分散前に添加することが好ましい。一方、バインダー樹脂や電荷輸送物質は、分散前に添加することも可能であるが、その場合分散性が若干低下する場合が見られる。したがって、バインダー樹脂や電荷輸送物質は、有機溶剤に溶解された状態で分散後に添加することが好ましい。
【0093】
表面層には、さらに酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、滑剤、紫外線吸収剤等、各種材料を添加することが可能である。
【0094】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物類、ヒンダードフェノール系化合物類、ヒンダードアミン系化合物類、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機リン化合物類等、公知の材料を使用することが可能であり、その添加量は塗工液の層固形分に対し10重量%以下、好ましくは5重量%以下が適当である。
【0095】
表面層に可塑剤を含有させることも、本発明においては有効である。可塑剤の添加によって、表面層に加わる応力を緩和したり、クラックの発生を防止したり、接着性を高める効果を得ることができる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その添加量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下が適当である。
【0096】
表面層にレベリング剤を含有させることも、本発明においては有効である。レベリング剤の添加によって、塗膜欠陥の発生を低減し、膜厚も均一化され、表面の潤滑性が高まるために、フィルミングや異物付着などの防止にも有効である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用できるが、特に重合性官能基を有するレベリング剤がより好ましい。その添加量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0097】
架橋表面層の塗工方法はいかなる方法でもよく、スプレー塗工法、浸漬塗工法、リングコート法、ビードコート法等、従来公知の方法が用いられる。これらの中でも、薄い膜厚を均一に塗工する上でスプレー塗工法により塗工するのが最も好ましい。塗工液は溶媒により希釈して塗布することも可能であり、このとき、用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系等が挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。塗工液の固形分濃度は組成物の溶解性、目的とする膜厚により任意に設定可能であるが、概ね15%以上であることが好ましい。
【0098】
表面層の膜厚は、1μm〜10μmが好ましく、2μm〜6μmがより好ましい。膜厚がこれより薄い場合には、充分な耐久性が得られず、膜厚がこれより厚い場合には著しい露光部電位上昇を引き起こす恐れがある。
【0099】
架橋表面層は、表面に塗布した後、外部からエネルギーを与えて硬化させ、形成される。このとき、用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線があり、いずれの方法を使用することも可能である。
【0100】
熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素等の気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは導電性支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は、100℃以上170℃以下が好ましい。加熱温度が100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。一方、加熱温度が170℃より高温では反応が不均一に進行し、架橋表面層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、さらに100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
【0101】
光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm
2以上、好ましくは500mW/cm
2以上、より好ましくは1000mW/cm
2以上である。1000mW/cm
2より強い照度の照射光を用いることで、重合反応の進行速度が大幅に大きくなり、より均一な架橋表面層を形成することが可能となる。
放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。
光エネルギーまたは放射線エネルギーにより表面層を硬化した場合は、硬化後に残留溶媒を除去するため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の温度及び時間は、架橋表面層の塗工液に用いられた溶媒の沸点により任意に選択できるが、概ね100℃〜150℃、10分〜30分程度が好ましい。
【0102】
〔下引き層〕
本発明の電子写真感光体においては、導電性支持体(31)と電荷発生層35との間に下引き層(図示せず)を設けることができる。
【0103】
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に電荷発生層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
【0104】
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0105】
これらの下引き層は、前述の感光層(電荷発生層、電荷輸送層)の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。また本発明においては下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできるし、Al
2O
3を陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO
2、SnO
2、TiO
2、ITO、CeO
2等の無機物を真空薄膜作成法により設けたものも良好に使用できる。更に、この他に公知のものを用いることもできる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0106】
〔必要に応じて添加される添加剤〕
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)、下引き層等の各層に公知の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
【0107】
<画像形成方法、画像形成装置>
本発明の画像形成方法とは、本発明の電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、トナー画像を画像保持体(転写媒体、転写紙)へ転写し、さらに必要により定着及び感光体表面のクリーニングという過程よりなるものである。また、本発明の画像形成装置とは、本発明の架橋型電荷輸送層を有した電子写真感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の手段を経た後、画像保持体(転写媒体、転写紙)へのトナー画像の転写の各手段よりなり、さらに必要により定着及び感光体表面のクリーニングという手段よりなるものである。本発明の画像形成装置は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体からなる画像形成要素が複数配列された構成とすることもできる。
【0108】
即ち、本発明に係る画像形成方法は、上述した本発明に係る電子写真感光体を帯電させる帯電工程と、帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する画像露光工程と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を転写媒体に転写する転写工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する画像露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする。
【0109】
図2は、本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
電子写真感光体を帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような、感光体組成物の分解の原因となる帯電手段からの近接放電が生じるような帯電手段を用いた場合に特に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
【0110】
次に、帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0111】
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に負帯電を施し、画像露光を行なうと、反転現像の場合には感光体表面上には正の静電潜像が形成される。これを負極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
正規現像の場合には感光体表面上には負の静電潜像が形成される。これを正極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また負極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0112】
次に、感光体上で可視化されたトナー像をレジストローラ対(8)より転写位置に搬送されてきた転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0113】
次に、転写体(9:転写媒体)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段と同様の方式が利用可能である。
【0114】
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。
また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
【0115】
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。また、転写方式としては、中間転写ベルトを用いた中間転写方式を使用してもよい。
【0116】
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
【0117】
<プロセスカートリッジ>
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段と、を有し、画像形成装置本体に着脱可能としたものである。
【0118】
プロセスカートリッジの一例を
図3に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105:転写媒体)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
【実施例】
【0119】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0120】
最初に、実施例で用いる電荷発生物質(チタニルフタロシアニン結晶)の合成例について記載する。
【0121】
(チタニルフタロシアニン結晶の合成)
合成は、特開2004−83859号公報に準じた。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄した。次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。
【0122】
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40部をテトラヒドロフラン200部に投入し、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た。前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。なお、合成の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
【0123】
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を
図4に示す。
【0124】
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
【0125】
(実施例1)
Al製支持体(外径60mmφ)に、下記の下引き層塗工液を用いて、130℃で20分乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
【0126】
〈下引き層塗工液〉
二酸化チタン粉末(石原産業社製、タイベークCR−EL): 400部
メラミン樹脂(DIC社製、スーパーベッカミンG821−60): 65部
アルキッド樹脂(DIC社製、ベッコライトM6401−50): 120部
2−ブタノン: 400部
【0127】
上記形成した下引き層上に、下記電荷発生層塗工液を用いて浸漬塗工し、90℃で20分加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0128】
〈電荷発生層塗工液〉
チタニルフタロシアニン: 8部
ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、BX−1): 5部
2−ブタノン: 400部
【0129】
この電荷発生層上に、下記電荷輸送層用塗工液を用いて浸積塗工し、120℃で20分加熱乾燥させ、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
【0130】
〈電荷輸送層用塗工液〉
Z型ポリカーボネート(帝人化成社製、TS−2050): 10 部
下記構造の正孔輸送材料(CTM3): 11 部
下記構造の化合物:(ETM1) 0.3部
テロラヒドロフラン: 100 部
【0131】
【化14】
【0132】
【化15】
【0133】
この電荷輸送層上に下記構成の架橋表面層塗工液を用いて、スプレー塗工し、メタルハライドランプ、照射強度:500mW/cm
2、照射時間:160秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で30分乾燥を加え4.0μmの架橋表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
【0134】
〈架橋表面層塗工液〉
ラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパンアクリレート)
(日本化薬社製、KAYARAD TMPTA): 10部
下記構造式(1)の化合物: 10部
光重合開始剤
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184): 1部
テトラヒドロフラン: 100部
【0135】
【化16】
【0136】
(実施例2)
実施例1において、正孔輸送材料(CTM3)を下記構造(CTM17)の正孔輸送材料に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0137】
【化17】
【0138】
(実施例3)
実施例1において、正孔輸送材料(CTM3)及び化合物(ETM1)をそれぞれ下記構造の正孔輸送材料(CTM7)及び下記構造の化合物(ETM3)に変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0139】
【化18】
【0140】
【化19】
【0141】
(実施例4)
実施例1において、電荷輸送層用塗工液及び架橋表面層塗工液を下記のものに変更した以外は実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0142】
〈電荷輸送層用塗工液〉
Z型ポリカーボネート(帝人化成社製、TS−2050): 10 部
下記構造の正孔輸送材料(CTM14): 11 部
下記構造の化合物(ETM1): 0.3部
テロラヒドロフラン: 100 部
【0143】
【化20】
【0144】
【化21】
【0145】
〈架橋表面層塗工液〉
アルミナ(住友化学社製、AA02): 3.0 部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー
(BYKケミー製、BYK−P104): 0.06部
ラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパンアクリレート)
(日本化薬社製、KAYARAD TMPTA): 5 部
ラジカル重合性モノマー
(ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート)
(日本化薬社製、KAYARAD DPCA−120): 5 部
前記構造式(1)の化合物: 10 部
光重合開始剤
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184): 1 部
テトラヒドロフラン: 100 部
【0146】
(実施例5)
実施例4において、化合物(ETM1)を下記構造の化合物(ETM4)に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0147】
【化22】
【0148】
(実施例6)
実施例4において、正孔輸送材料(CTM14)及び化合物(ETM1)をそれぞれ下記構造の正孔輸送材料(CTM12)及び下記構造の化合物(ETM5)に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0149】
【化23】
【0150】
【化24】
【0151】
(実施例7)
実施例4において、正孔輸送材料(CTM14)及び化合物(ETM1)をそれぞれ下記構造の正孔輸送材料(CTM27)及び下記構造の化合物(ETM8)に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0152】
【化25】
【0153】
【化26】
【0154】
(実施例8)
実施例4において、正孔輸送材料(CTM14)及び化合物(ETM1)をそれぞれ下記構造(CTM35)の正孔輸送材料及び下記構造(ETM9)の化合物に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0155】
【化27】
【0156】
【化28】
【0157】
(実施例9)
実施例4において、化合物(ETM1)の添加量を0.06部に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0158】
(実施例10)
実施例4において、化合物(ETM1)の添加量を0.1部に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0159】
(実施例11)
実施例4において、化合物(ETM1)の添加量を0.5部に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0160】
(実施例12)
実施例4において、化合物(ETM1)の添加量を1部に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0161】
(実施例13)
まず、実施例4と同様にして、感光体の電荷輸送層まで形成した。
次いで、下記構成の架橋表面層用塗工液をスプレー塗工後、1分間自然乾燥し、その後、150℃で30分間加熱し、5μmの表面架橋層を設け、感光体を作製した。
【0162】
〈架橋表面層塗工液〉
ポリオール: 20 部
[スチレン、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートからなるスチレン−アクリル共重合体]
(藤倉化成社製、LZR−170)
下記構造式(2)の化合物: 20 部
イソシアネート: 38 部
[トリレンジイソシアネートのポリオールアダクト体]
(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)
シリコーンオイル(信越化学工業製、KF50−100CS): 0.05部
シクロヘキサノン: 50 部
テトラヒドロフラン: 200 部
【0163】
【化29】
【0164】
(実施例14)
まず、実施例4と同様にして、感光体の電荷輸送層まで形成した。
次いで、下記構成の表面層用塗工液をスプレー塗工後、1分間自然乾燥し、その後、150℃で30分間加熱し、5μmの表面層を設け、感光体を作製した。
【0165】
〈表面層塗工液〉
アルミナ(住友化学社製、AA03): 3.0 部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー
(BYKケミー製、BYK−P104): 0.03部
下記構造式(4)で表される電荷輸送材料: 4部
Z型ポリカーボネート(帝人化成社製、TS−2050): 5.5 部
テトラヒドロフラン: 220 部
シクロヘキサノン: 80 部
【0166】
【化30】
【0167】
(実施例15)
実施例4において、化合物(ETM1)の添加量を0.03部に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0168】
(実施例16)
実施例4において、化合物(ETM1)の添加量を1.6部に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0169】
(比較例1)
実施例4において化合物(ETM1)を添加しない以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0170】
(比較例2)
実施例13において化合物(ETM1)を添加しない以外は実施例13と同様にして感光体を作製した。
【0171】
(比較例3)
実施例4において、正孔輸送材料(CTM14)を下記構造式(3)の正孔輸送材料に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0172】
【化31】
【0173】
(比較例4)
実施例4において、正孔輸送材料(CTM14)を前記構造式(4)の正孔輸送材料に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0174】
(比較例5)
実施例4において、化合物(ETM1)を下記構造式(5)の化合物に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0175】
【化32】
【0176】
(比較例6)
実施例4において、化合物(ETM1)を下記構造式(6)の化合物に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0177】
【化33】
【0178】
(比較例7)
実施例4において、化合物(ETM1)を下記構造式(7)の化合物に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0179】
【化34】
【0180】
(比較例8)
実施例4において、「化合物(ETM1):0.3部」を「下記構造式(8)の化合物:1部」に変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0181】
【化35】
【0182】
(比較例9)
実施例4において、化合物(ETM1)を添加せず、更に架橋表面層塗工液を下記構成のものに変更した以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0183】
〈架橋表面層塗工液〉
アルミナ(住友化学社製、AA02): 3.0 部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー(BYKケミー製、BYK−P104):0.06部
ラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパンアクリレート)
(日本化薬社製、KAYARAD TMPTA): 5 部
ラジカル重合性モノマー: 5 部
(ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート)
(日本化薬社製、KAYARAD DPCA−120)
前記構造式(1)の化合物: 10 部
前記構造式(8)の化合物: 0.5 部
光重合開始剤: 1 部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)
テトラヒドロフラン: 100 部
【0184】
(比較例10)
実施例4において、架橋表面層を設けない以外は実施例4と同様にして感光体を作製した。
【0185】
以上のように作製した電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジに装着し、タンデム方式のフルカラーデジタル複写機リコー製imagioMPC7500改造機に搭載し、書き込み率5%チャート(A4全面に対して、画像面積として5%相当の文字が平均的に書かれている)を用い通算50万枚印刷する耐刷試験をおこなった。その際、初期及び耐刷試験後の露光部電位(VL)、Job内変動、さらに耐刷試験後の解像力(画像ボケ)について評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0186】
Job内変動の評価は、最初に表面電位計を用いて感光体の露光部電位(VL)を測定し、続けて50枚連続印刷を1Jobとして、それを10回繰り返した後再度露光部電位を測定し、〈繰り返し印刷後のVL〉−〈最初のVL〉をJob内変動として評価した。また、計測値のほか、そのプロセスで使用する上で補正可能な範囲か否かについての判定結果を示す。
【0187】
・Job内変動の判定基準
◎:問題ないレベル
○:若干変化が認められるが、補正できる範囲で問題にならないレベル
△:変化が明らかに認められ、若干許容範囲を超えたレベル
×:変化が大きく、問題視されるレベル
【0188】
解像力の評価は、画像サンプルを出力し、マイクロスコープを用いて画像サンプルを拡大観察することによって評価を行った。
【0189】
・解像力の判定基準
◎:問題が認められないレベル
○:若干解像力が低下している様子が認められるが、許容できるレベル
△:明らかに解像力が低下しており、許容レベルを超えたレベル
×:画像がボケており、問題視されるレベル
【0190】
【表1】
【0191】
本発明の実施例1〜14の電子写真感光体は、非常に長期の繰り返し使用に対しても感光体特性が安定しており、Job内変動が少なく、繰り返し使用後においてもあまり増加せず、さらに画像ボケも発生していない。
一般式(2)の化合物の含有量の少ない実施例15では、僅かながら画像ボケが発生、逆に一般式(2)の化合物の含有量の多い実施例16では、画像ボケは発生せず、繰り返し使用によるJob内変動の上昇は少ないが、初期から値が大きくなってしまっている。
一方、一般式(2)の化合物を含まない比較例1,2の場合にはJob内変動は低く抑えられるが、画像ボケが発生してしまう。
また比較例3,4は一般式(1)以外の正孔輸送材料を用いた場合、比較例5〜7は一般式(2)以外の化合物を用いた場合であるが、Job内変動も大きく、画像ボケも発生してしまう。これらの組合せでは、正孔輸送材料と化合物との相互作用が弱く、酸化性ガス等による劣化を抑制出来ていないものと考えられる。
比較例8,9はアルキルアミノ基を有する化合物を電荷輸送層、架橋表面層に添加した場合であるが、画像ボケに対する効果は十分であるが、Job内変動が大きくなってしまう。
架橋表面層を設けなかった比較例10においては、摩耗が大きく、耐刷試験を継続することができなかった。
【0192】
以上のように、本発明によれば、非常に長期の繰り返し使用においても画像ボケが発生せず、またJob内変動も抑制し、高画質画像が長期に渡って安定に得られる電子写真感光体を提供することができる。
また本発明によれば前記電子写真感光体を用いることにより、画像濃度や色味の変化が少ない、すなわち画質一貫性に優れた画像出力が可能な画像形成方法、画像形成装置、及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供される。