(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接続用のタブを備えた複数枚の電池用極板の複数枚の前記タブを積層してなる積層タブを端子部材の被溶接部に接触させた状態で前記積層タブにレーザを照射して前記積層タブを前記端子部材に溶接するために、前記積層タブの前記レーザが照射される側の側面に沿って前記タブの材質よりもレーザの吸収率が高い材料からなるターゲットを配置し、前記ターゲットに沿って前記レーザを照射することにより電池用極板群を製造する電池用極板群の製造方法であって、
前記ターゲットが、前記端子部材の前記被溶接部に固定されて前記積層タブを貫通する複数のターゲット・ピンから構成されていることを特徴とする電池用極板群の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池では、導電率が高く比較的安価な銅、アルミまたはこれらの合金を用いて極板の集電板及びタブを形成する。しかしながら銅及びアルミは、レーザの反射率が高くレーザの吸収率が低い。特許文献1〜3のような従来の極板群では、単純にレーザを積層タブに照射して極板群を製造しているものの、レーザが照射される側の積層タブの側面付近のタブしか溶融しないために、積層タブの積層枚数を増やし過ぎると、端子部材と積層タブとの電気的接続が十分でない場合が生じる。
【0006】
そのため、特許文献1〜3のような従来の電池用極板群では、所望の出力が得られない問題が生じる。また端子部材に十分に溶接されない極板の枚数が増加すると、極板のタブ同士の間及び極板のタブと端子部材との間の接触抵抗が大きくなり、発熱量が増大する問題が生じる。そのため特許文献1〜3に示す電池用極板群では、溶接不良が発生すると、各極板及び端子部材の温度が非常に高くなって、電池が発火するおそれもあり、電池の安全性が低くなる問題がある。
【0007】
なお、全てのタブをレーザの吸収率が高い材料から構成することも考えられる。しかしながら、レーザの吸収率が高い材料は、抵抗値も高いため、電池の出力が低くなる問題がある。
【0008】
本発明の目的は、電池用極板のタブを積層した積層タブを端子部材に確実に溶接することができる電池用極板群の製造方
法を提供することにある。
【0009】
上記目的に加えて本発明の他の目的は、接続される極板の枚数を増やしても、各タブを電気的に確実に端子部材に接続することができる電池用極板群の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、接続用のタブを備えた複数枚の電池用極板の複数枚のタブを積層してなる積層タブを端子部材の被溶接部に接触させた状態で積層タブにレーザを照射して、積層タブを端子部材に溶接することにより電池用極板群を製造する電池用極板群の製造方法を改良の対象とする。本発明では、積層タブのレーザが照射される側の側面に沿って、タブの材質よりもレーザの吸収率が高い材料からなるターゲットを配置する。そしてこのターゲットに沿ってレーザを照射する。
【0011】
このように構成すると、まずターゲットがレーザを吸収して溶融する。ターゲットは、タブの材質よりもレーザの吸収率が高いので、積層タブにレーザを照射してタブを溶融させる場合よりも、ターゲットは簡単に溶融する。溶融して高温状態にあるターゲットは、隣接する積層タブの金属の温度を上げるため、積層タブに照射されたレーザにより積層タブの温度が上昇し、タブをスムーズに溶融させることができる。そのため本発明によれば、積層タブだけにレーザを照射する場合よりも、積層タブを確実に溶融することができる。特に、溶融したターゲットにレーザを照射し続けると、溶融したターゲットが照射されたレーザを吸収し続けて、溶融状態がレーザの進行方向へと進み、その部分の積層タブを完全に溶融することができる。その後レーザをターゲットに沿って移動させると、溶融した金属に隣接する積層タブの部分も温度が上昇しているために容易に溶融し、積層タブをある程度の長さ範囲に亘って完全に溶融させることができて、積層タブの端子部材への溶接が完了する。よって本発明によれば、従来よりも接続される極板の枚数を増やしても、溶融したターゲットが積層タブの各タブを確実に溶融して各タブ同士及びタブと端子部材とを溶接するので、積層タブを端子部材に確実に溶接することができる。
【0012】
ターゲットは、端子部材の被溶接部に固定されて積層タブを貫通する複数のターゲット・ピンから構成することができる。このように構成すると、積層タブの積層方向全体にターゲット金属が存在するため、ターゲット・ピンの位置において、短い時間で積層タブの積層方向全体に温度の高い溶融した金属を存在させることができる。その結果、短い時間で積層タブの端子部材への溶接を完了することができる。また溶接開始前においては、積層タブを複数のターゲット・ピンで貫通させるため、積層タブと端子部材の被溶接部との位置決めを行うことができる。
【0013】
複数のターゲット・ピンは、レーザが走査される方向に伸びる1以上の列を形成するように端子部材の被溶接部に配置されていることが好ましい。このように構成すると、ターゲット・ピンの列に沿ってレーザを走査することにより、順番にターゲット・ピンを溶融させて、少なくともターゲット・ピンを含む複数の領域において積層タブを端子部材に溶接することができる。
【0014】
接続される極板の枚数が多くなる場合には、極板同士を互いに密着させるために、積層タブを間に挟むように端子部材に固定されて積層タブを被溶接部に押し付ける押し付け部材を設けるのが好ましい。この場合には、押し付け部材にターゲットを設けるように構成してもよい。このように構成すると、端子部材にターゲットを固定する必要がなくなるので、端子部材の構造が簡単になるだけでなく、既存の端子部材を使用することもできる。
【0015】
押し付け部材は、ターゲットとして積層タブに押し付けられるまたは差し込まれる複数のターゲット・ピンを備えるように構成してもよい。この場合には複数のターゲット・ピンの基部がレーザ光源側に露出した状態になるように構成する。このように構成すると、押し付け部材にレーザを照射せずに、レーザをターゲット・ピンに直接照射することができるので、押し付け部材を用いたとしても、ターゲット・ピンに確実にレーザを照射することができる。
【0016】
押し付け部材は、ターゲットとともにレーザの吸収率が高い材料によって一体成形されていることが好ましい。このように構成すると、ターゲットを押し付け部材に取り付ける工程をなくすことができる。
【0017】
具体的な電池用極板としては、例えばタブを銅またはアルミから形成し、ターゲットを銅よりもレーザの吸収率が高いニッケルまたはニッケル合金から形成する。
【0018】
積層タブには、ターゲット・ピンが貫通する貫通孔を設けておいてもよい。貫通孔を設けておくと、積層タブを複数のターゲット・ピンに簡単に貫通させることができる。
【0019】
本発明の電池用極板群の製造方法で製造した電池用極板群では、レーザ溶接により形成された溶接金属が、タブの材質よりもレーザの吸収率が高い材料を中心領域に含むこととなる。その結果、少なくとも中心領域においては確実に溶融が行われており、その部分では電気抵抗が最も小さくなっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の電池用極板群の製造方法の実施の形態を本発明を適用して製造した電池用極板群の実施の形態とともに詳細に説明する。
図1は、本発明の電池用極板群の製造方法の第1の実施の形態を適用したリチウムイオン二次電池1の平面図であり、
図2は
図1のリチウムイオン二次電池の内部の構成を説明するための一部破断正面図である。なお本実施の形態では、理解を容易にするため、一部の部品の厚み寸法を誇張して描いており、また極板の枚数を実際よりも少なく描いている。
【0022】
図1及び2に示すように、本実施の形態のリチウムイオン二次電池1は、極板群3と、極板群3を内部に収容するステンレス製の角型電池容器5とを備えている。電池容器5は、一方の端部が開口する電池缶7と、電池蓋9とを備えており、極板群3を電池缶7に挿入した後、電池缶7の開口周縁部と、電池蓋9の周縁部とを溶接することで密閉されている。
【0023】
電池蓋9には、アルミニウム製の正極端子11及び負極端子13が固定されている。正極端子11及び負極端子13は、電池蓋9の蓋板を貫通して電池容器5の外部に突出する端子部11a及び13aと、電池容器内に配置される端子本体部11b及び13bとをそれぞれ有している。正極端子11及び負極端子13と電池蓋9の間には、円環状の内側パッキン15がそれぞれ設けられている。電池蓋9の外側には、電池蓋9を介して内側パッキン15と対向する位置に、円環状の外側パッキン17と、ワッシャ19とが重ねられた状態で設けられている。正極端子11及び負極端子13は、内側パッキン15、外側パッキン17、ワッシャ19を介して、ネジ部の先端に設けられたナットNにより、電池蓋9にそれぞれ固定されている。電池蓋9の正極端子11及び負極端子13が設けられた部分は、内側パッキン15及び外側パッキン17により、電池容器5内の密閉・封止状態を確保している。
【0024】
電池蓋9には、ステンレス箔を溶接したガス排出弁9a及び注液口9bが配設されている。ガス排出弁9aは、電池内圧上昇時にステンレス箔が開裂して内部のガスを放出する機能を有している。注液口9bからは、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)または4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)を溶解した図示しない非水電解液が注入される。電解液注入後、液口栓により注液口9bは密閉されている。
【0025】
正極端子11の端子本体部11bには、後述する複数枚の正極板21の複数枚の正極タブ21aが積層されてなる正極積層タブがレーザ溶接により溶接されている。また、負極端子13の端子本体部13bには、後述する複数枚の負極板23の複数枚の負極タブ23aが積層されてなる負極積層タブがレーザ溶接により溶接されている。
【0026】
図3は、レーザ溶接前の極板群の拡大正面図であり、
図4は、レーザ溶接前の状態の極板群の拡大左側面図である。また
図5(A)はレーザ溶接前の正極端子11の正面図であり、(B)はレーザ溶接前の正極端子11の左側面図である。
【0027】
なお
図3及び
図4においては、理解を容易にするために各構成部材を模式的に示している。そのため、
図3及び
図4に示した各構成部材は、実際の電極群の構成部材とは、形状及び寸法等が異なる。極板群3は、複数枚の正極板21と、複数枚の負極板23とがセパレータ25を介して交互に積層されて構成されている。セパレータ25は、正極板21と負極板23とが接触して短絡することを防止している。
【0028】
正極板21は、ほぼ長方形形状の板状に形成されたアルミニウム箔からなる正極集電体と、正極集電体の両面に設けられた正極活物質層とを有している。正極活物質層は、例えばリチウムマンガン複酸化物粉末と、導電材として鱗片状黒鉛と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを重量比85:10:5の割合で混合し、これに分散溶媒のN−メチルピロリドン(NMP)を添加、混練したスラリを、正極集電体に塗布した後、乾燥、プレスすることにより形成することができる。正極集電体には、電池容器5内に収容されたときに電池蓋9に沿って延びる辺に、正極タブ21aが一体に形成されている。複数枚の正極タブ21aが積層されてなる正極積層タブ31が、正極端子11の端子本体部11bにレーザ溶接により接合される。
【0029】
負極板23は、ほぼ長方形形状の板状に形成された電解銅箔からなる負極集電体と、負極集電体の両面に設けられた負極活物質層とを有している。負極活物質層は例えば、負極活物質としての非晶質炭素粉末90質量部に対し、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを10質量部添加し、これに分散溶媒のNMPを添加、混練したスラリを、厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗布した後乾燥、プレスすることにより形成することができる。負極集電体には、電池容器5内に収容されたときに電池蓋9に沿って延びる辺に、負極タブ23aが一体に形成されている。この負極タブ23aは、正極板21及び負極板23を積層したときに、正極タブ21aと対向しないように形成されている。複数枚の負極タブ23aが積層されてなる負極積層タブ33が、負極端子13の端子本体部13bにレーザ溶接により接合されている。
【0030】
セパレータ25は、リチウムイオンが通過可能なポリエチレン製の多孔質材によりほぼ長方形形状のシート状に形成されている。なおセパレータ25は、正極板21の正極集電体と負極板23の負極集電体とが積層状態で接触することを阻止できる大きさを有している。
【0031】
なお、
図4においては、図示を容易にするために、負極板及びセパレータの図示を省略しているが、実際には、正極板21及び負極板23はセパレータを介して交互に積層されている。
【0032】
本実施の形態では、
図3及び
図4に示すように、正極端子11の端子本体部11bには,積層方向に対向する面11cに、ニッケルから構成される複数のターゲット・ピン27が固定されている。複数のピン27は、面11c上に2列に並んで配置されている。また負極端子13の端子本体部13bの積層方向に対向する面13cにも同様に、複数のターゲット・ピン27が固定されている。
【0033】
特に本実施の形態の端子本体部11bでは、正極端子11の端子本体部11bの面11cと積層方向に対向する面11dにも複数のターゲット・ピン27が固定されている。また、負極端子13の端子本体部13bの面13cと積層方向に対向する面13dにも複数のターゲット・ピン27が固定されている。そして複数のターゲット・ピン27は、二つの列を形成するように並んで配置されている。
【0034】
複数枚の正極タブ21a及び複数枚の負極タブ23aには、複数のターゲット・ピン27が貫通する複数の貫通孔21b及び23bがそれぞれ設けられている。複数枚の正極タブ21aは、複数の貫通孔21bに複数のターゲット・ピン27を貫通させることにより積層されて、正極積層タブ31を構成して正極端子11に取り付けられる。本実施の形態では、複数枚の正極タブ21aは2分されて、2つの正極積層タブ部分31a及び31bが構成されている。正極積層タブ部分31a及び31bは、端子本体部11bの面11c及び面11dにそれぞれレーザ溶接されている。複数枚の負極タブ23aは、複数の貫通孔23bに複数のターゲット・ピン27を貫通させることにより、負極積層タブ33を構成している。本実施の形態では、複数枚の負極タブ23aは2分されて、2つの負極積層タブ部分33a及び33bが構成されている。負極積層タブ部分33a及び33bは、端子本体部13bの面13c及び面13dにそれぞれレーザ溶接されている。
【0035】
なお本実施の形態では、負極側の極板群は、正極側の極板群の構造と同じ構造を有している。そこで
図4及び
図5に括弧内に負極側の構成部材の符号を付して負極側の極板群の図示を省略する。
【0036】
本実施の形態では、
図4に示すように構成した極板群の複数のターゲット・ピン27にレーザを照射して電池用極板群を製造する。レーザは、複数のターゲット・ピン27の各列に沿って複数のターゲット・ピン27の先端(端子本体部に固定されない端部)に照射される。ニッケルから構成された複数のターゲット・ピン27は、レーザが照射されるとレーザを吸収して先端から溶融し、レーザの照射を継続すると、端子本体部13b側へとニッケル・ピンの溶融が進行する。
【0037】
溶融したニッケルは、隣接する正極タブ21a及び負極タブ23aを加熱する。加熱された正極タブ21a及び負極タブ23aの一部は溶融を開始し、さらに走査により移動するレーザからのエネルギーで溶融をする。その結果、溶融したターゲット・ピン27の溶融金属とターゲット・ピン27の周囲にあって溶融した正極タブ21aの溶融金属部分及び負極タブ23aの溶融金属部分とが結合した状態になって、正極端子11の端子本体部11b及び負極端子13の端子本体部13bに溶接されることになる。またレーザは、ニッケルからなる複数のターゲット・ピンの列に沿って照射されるので、外観上は
図2に示すように連続した溶接部が得られる。レーザの照射により溶融してタブ同士及びタブと端子部本体とを結合する溶融金属には、タブの材質である銅及びアルミよりも、ニッケルの含有量が多くなっている。
【0038】
照射するレーザのスポット径が小さい場合には、2列のターゲット・ピンの列に対して、列が延びる方向に個別にレーザを走査して照射を行う。レーザのスポット径が大きい場合には、2列のターゲット・ピンの列に対して1回の走査で同時にレーザを照射してもよい。また照射するレーザのパワー及びレーザの走査速度は、良好な溶接部が得られるように、実験により適宜に定める。生産性を考えると、できるだけ少ないパワーで走査速度は速くできるのが好ましい。
【0039】
図6は、本発明の電池用極板群の製造方法の第2の実施の形態を適用したリチウムイオン二次電池のレーザ溶接前の極板群の拡大正面図であり、
図7は拡大左側面図である。なお
図7においては、理解を容易にするために、正極側押し付け部材141を断面にして図示している。また
図8(A)は正極側押さえ部材の正面図であり、
図8(B)は
図8(A)のB−B線断面図である。
図6乃至
図8においては、
図1乃至
図5に示した実施の形態を構成する部分と同じ部分には、
図1乃至
図5に付した符号の数に100の数を加えた数を符号として付して、詳細な説明を省略する。なお本実施の形態では、負極側の極板群は、正極側の極板群の構造と同じ構造を有している。そこで
図7及び
図8に括弧内に負極側の構成部材の符号を付して負極側の極板群の図示を省略する。
【0040】
本実施の形態の極板群は、
図6に示すように、正極側押し付け部材141と負極側押し付け部材143とを備えている。
【0041】
正極側押し付け部材141は、横断面形状が略U字状をなす細長い本体144に複数のターゲット・ピン127が設けられた形状を有している。具体的な形状については後述する。正極側押し付け部材141には、長手方向の両側端部に、ボルト(図示せず)が貫通する2つの貫通孔145が形成されている。また、正極端子111の端子本体部111bには、面111c及び111dに開口するように、ボルトが螺合される2つのネジ孔(図示せず)が形成されている。ネジ孔の内部には、ボルトの外周面に設けられた雄ネジと螺合される雌ネジが形成されている。正極側押し付け部材141は、正極端子111の端子本体部111bの面111c及び111dとの間に正極積層タブ131を挟んだ状態で、ボルトにより端子本体部111bに取り付けられている。
【0042】
負極側押し付け部材143は、正極側押し付け部材141と同様に形成されており、長手方向の両側端部にボルトが貫通する2つの貫通孔145が形成されている。負極端子113の端子本体部113bには、面113c及び113dに開口するように、ボルトが締結される2つのネジ孔(図示せず)が形成されている。ネジ孔は、面113c及び113dの長手方向の両側端部に形成される。ネジ孔の内部には、ボルトの先端に設けられたネジ部と螺合される雌ネジが形成されている。負極側押し付け部材143は、負極端子113の端子本体部113bの面113c及び113dとの間に負極積層タブ133を挟んだ状態で、ボルトにより端子本体部113bに取り付けられる。
【0043】
図8(A)及び(B)に示すように、正極側押し付け部材141と負極側押し付け部材143は、細長い本体144の中央部に厚み方向の一方の側面に開口する細長い孔部141a(143a)を備えている。この本体144は、例えば、アルミニウムまたは銅によって形成されている。そして本体144の細長い孔部141a(143a)が開口する側面とは反対側の側面には、ニッケルからなる複数のターゲット・ピン127が二つの列を形成するように植設されている。複数のターゲット・ピン127は、基部が細長い孔部141a(143a)の内底面に露出するように本体144に植設されている。
【0044】
本実施の形態では、正極側押し付け部材141と正極端子111の端子本体部111bとの間に正極積層タブ131を挟み、ボルトで正極側押し付け部材141を正極端子111の端子本体部111bに取り付けることにより、正極積層タブ131を正極端子111に押し付けている。また、負極側押し付け部材143と負極端子113の端子本体部113bとの間に負極積層タブ133を挟み、ボルトで負極側押し付け部材143を負極端子113の端子本体部113bに取り付けることにより、負極積層タブ133を負極端子113に押し付けている。そのため
図7に示すように、正極タブ121a及び負極タブ123aには、
図4に示したような貫通孔は形成されていない。また複数のターゲット・ピン127は、正極積層タブ131及び負極積層タブ133を貫通するだけの長さを有していない。そのためレーザ溶接前の複数のターゲット・ピン127は、正極積層タブ131及び負極積層タブ133の表面に接触して、積層タブを部分的に圧縮している状態にある。
【0045】
本実施の形態では、
図7に示すように、正極側押し付け部材141と負極側押し付け部材143の、細長い本体144に設けた細長い孔部141a(143a)の内底面に露出する複数のターゲット・ピン127の基部にレーザを照射して積層タブを端子本体部にレーザ溶接する。レーザは、正極側押し付け部材141の孔部141a及び負極側押し付け部材143の孔部143aを通って、複数のターゲット・ピン127の各列に沿って、複数のターゲット・ピン127の基部に照射される。レーザの照射によりニッケルから構成された複数のターゲット・ピン127は、正極側押し付け部材141(負極側押し付け部材143)に取り付けられた基部から溶融する。溶融したニッケルは、複数のターゲット・ピン127と接触する正極タブ121a(負極タブ123a)を加熱して溶融する。溶融したニッケルにレーザの照射を継続すると、溶融したニッケルが照射されたレーザを吸収し続けて、その熱が更に積層タブ中に伝わり、複数枚の正極タブ121a(負極タブ123a)の複数のターゲット・ピン127に対応する複数の部分が順次溶融し、積層タブは正極端子111の端子本体部111b(負極端子113の端子本体部113b)に溶接される。複数のターゲット・ピン127の間隔(ピッチ)を小さくしておけば、積層タブ中に形成される溶接部は実質的に連続したものとなる。
【0046】
なお本実施の形態でも、正極タブ121a及び負極タブ123aに貫通孔(貫通孔21b及び23bに相当する孔)を形成しておき、正極側押し付け部材141及び負極側押し付け部材143に設けた複数のターゲット・ピンが、正極タブ121a及び負極タブ123aの貫通孔を貫通するように構成してもよいのは勿論である。
【0047】
上記各実施の形態では、リチウムイオン二次電池について本発明を適用した実施の形態について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、他の電池及びその電池用極板群に適用しても良いのは勿論である。
【0048】
また、上記各実施の形態では、端子本体部の積層方向に対向する2つの面にそれぞれ積層タブを保持しているが、一方の面のみに積層タブを保持させてもよいのは勿論である。
【0049】
具体的な電池用極板としては、タブを銅またはアルミから形成し、ターゲットをニッケルから形成しているが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。