(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a)、両末端に1級アミノ基を有するシリコーン化合物(b)、酸性置換基を有するアミン化合物(c)及び分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)を配合してなる熱硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a)と、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物(b)、酸性置換基を有するアミン化合物(c)及び分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)が配合されたものである。
【0015】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a)を用いることにより、低熱膨張率化がなされ、かつ耐デスミア性を向上させることができる。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a)としては、下記一般式(II〜VIII)で表されるものが挙げられる。
【0017】
(式(II)中、R
1は水素原子または1価のハロゲン非含有有機基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0019】
(式(III)中、nは1〜10の整数を表す。)
【0021】
(式(IV)中、nは1〜10の整数を表す。)
【0023】
(式(V)中、nは1〜10の整数を表す。)
【0026】
(式(VII)中、R
2は単結合または2価のハロゲン非含有有機基を表す。)
【0028】
(式(VIII)中、R
3は単結合または2価のハロゲン非含有有機基を表し、R
4は水素原子または1価のハロゲン非含有有機基を表す。)
【0029】
一般式(II)中のR
1、及び一般式(VIII)中のR
4で示される1価のハロゲン非含有有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などのアルキル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基などのアリール基;ピリジル基などが挙げられる。また、一般式(VII)中のR
2、及び一般式(VIII)中のR
3で示される2価のハロゲン非含有有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基などのアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基などのアリーレン基;ピリジレン基などが挙げられる。
これらの中で耐熱性、耐デスミア性の観点から一般式(II)で表される構造が好ましく、低熱膨張性の観点から下記の一般式(IX)で表されるナフトール/クレゾールノボラック型骨格を有するエポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0032】
上記一般式(IX)で表されるナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a)としては、市販品を用いることができ、例えば、「EXA−9520」(水酸基当量244)、「EXA−9530」(水酸基当量249)、「EXA−9540」(水酸基当量231)、〔以上、DIC(株)製〕、「NC―7000L」(水酸基当量231)、「EXA−4750」(水酸基当量188)、〔以上、日本化薬(株)製〕が挙げられる。
【0033】
両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物(b)としては、市販品を用いることができ、例えば、両末端にアミノ基を有する「PAM−E」(官能基当量130)、「KF−8010」(官能基当量430)、「X−22−161A」(官能基当量800)、「X−22−161B」(官能基当量1500)、「KF−8012」(官能基当量2200)、「KF−8008」(官能基当量5700)〔以上、信越化学工業(株)製〕、「BY16−871」(官能基当量130)、「BY16−853U」(官能基当量460)〔以上、東レダウコーニング(株)製〕等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0034】
酸性置換基を有するアミン化合物(c)としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられ、これらの中で、溶解性や合成の収率の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましく、低熱膨張性の点からp−アミノフェノールが特に好ましい。
【0035】
1分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)としては、例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0036】
これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の点から、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、安価である点からビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0037】
分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(e)としては、例えば、ジアミノベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル−6,6'−ジスルホン酸、2,2'−5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、1,3'−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノ−3,3'−ビフェニルジオール、9,9'−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、o‐トリジンスルホン等が挙げられる。
【0038】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述の(a)〜(d)成分が配合されたものであり、さらに好適には、上記(e)成分を配合したものである。また、これらの成分のうち、両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物(b)、酸性置換基を有するアミン化合物(c)、分子構造中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)、及び分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(e)を、必要により加熱・保温し,あらかじめ反応させておくことができ、当該反応で得られる、アミノ基、イミド基及びN−置換マレイミド基を有する変性シリコーン化合物を、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含有させておくことができる。
この反応の際のマレイミド化合物(d)の使用量は、ゲル化の防止と耐熱性の観点から、マレイミド化合物(d)のマレイミド基の当量が、シリコーン化合物(b)とジアミン化合物(e)の1級アミノ基の当量を超える範囲であることが望ましい。
また、当該反応の反応温度は70〜200℃とすることが好ましく、反応時間は0.5〜10時間とすることが好ましい。
【0039】
以上の反応で使用される有機溶媒は、特に制限されないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン、及びジメチルアセトアミドが好ましく、低毒性であることや揮発性が高くプリプレグの製造時に残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0040】
有機溶媒の使用量は、溶解性と反応時間の観点から、シリコーン化合物(b)、酸性置換基を有するアミン化合物(c)、マレイミド化合物(d)及び分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(e)の合計量100質量部に対して、25〜1000質量部とすることが好ましく、40〜700質量部とすることがより好ましい。
また、上記反応には、必要により任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒は、特に限定されないが、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、硬化促進剤を含有させることができる。硬化促進剤としては、下記の式(I)に示す構造のヘキサメチレンジイソシアネートと2−エチル−4−メチルイミダゾールの付加反応物が最も好ましい。
【0043】
さらに、必要に応じて、硬化促進剤として、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩等を加えてもよく、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0044】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、任意に無機充填材を含有させることができる。無機充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、EガラスやTガラス、Dガラス等のガラス粉や中空ガラスビーズ等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で使用することもできるし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0045】
無機充填材としては、誘電特性、耐熱性、低熱膨張性の点からシリカが特に好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカが挙げられる。これらの中で、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から溶融球状シリカが好ましい。
【0046】
無機充填材として溶融球状シリカを用いる場合、その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。該溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0047】
無機充填材の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分換算樹脂成分合計量100質量部に対して、20〜300質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがより好ましい。無機充填材の配合量を20〜300質量部にすることで、プリプレグの成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0048】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、樹脂組成物として熱硬化性の性質を損なわない程度に、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を使用できる。
【0049】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂が挙げられる。
【0050】
エラストマーの例としては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリルが挙げられる。
【0051】
有機充填材の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる均一構造の樹脂フィラー
;アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラーが挙げられる。
【0052】
難燃剤の例としては、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が挙げられる。
【0053】
その他、紫外線吸収剤の例としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化防止剤の例としてはヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系酸化防止剤、光重合開始剤の例としてはベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤、蛍光増白剤の例としてはスチルベン誘導体の蛍光増白剤、接着性向上剤の例としては尿素シラン等の尿素化合物やシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤が挙げられる。
また、配合時、無機充填材をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理、あるいはインテグラルブレンド処理することも好ましい。
【0054】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、通常、希釈溶媒として有機溶媒を使用し、ワニスとして使用される。該有機溶媒は特に制限されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メチルセロソルブ等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
最終的に得られるワニス中の樹脂組成物は、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量を40〜90質量%にすることで、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
【0055】
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化してなるものである。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は、吹付け、押出し等の方法で塗工した後、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造する。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
【0056】
本発明のプリプレグに用いられる基材として、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物が挙げられる。
これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。
【0057】
基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmのものを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。
該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させることで、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0058】
本発明の積層板は、絶縁樹脂層が本発明のプリプレグを用いて形成されたものであり、前述のプリプレグを用いて、積層成形して、本発明の積層板を形成することができる。例えば、前述のプリプレグを、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより積層板を製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用積層板で用いるものであれば特に制限されない。また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【0059】
本発明のプリント配線板は、本発明の積層板における絶縁樹脂層の片面又は両面に配置された金属箔を回路加工して得られたものである。すなわち、本発明の積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化した後、ドリル加工又はレーザ加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0060】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定・評価した。
【0061】
(1)ガラス転移温度(Tg)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製「TMA2940」)を用いて圧縮法で熱機械分析をおこなった。評価基板を当該装置のX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるTgを求め、耐熱性を評価した。
(2)熱膨張率
上記(1)ガラス転移温度の評価方法と同様にして熱機械分析を行い、2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
(3)曲げ弾性率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた50mm×25mmの評価基板を作製し、(株)オリエンテック社製「5トンテンシロン」を用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmで測定した。
(4)銅箔接着性(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより3mm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(ピール強度)を測定した。
(5)耐デスミア性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた40mm×40mmの評価基板を、下記の表(A)に示す工程によりデスミア処理した。薬液はアトテック社製を用いた。耐デスミア性の評価は、130℃におけるデスミア処理前、デスミア処理後の乾燥重量差から重量減少量を算出した。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1〜11及び比較例1〜4
以下に示す各成分を第1表〜第3表に示した配合割合(質量部)で混合し、溶媒にメチルエチルケトンを用いて樹脂分65質量%の均一なワニスを作製した。次に、このワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量48質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。得られた銅張積層板の試験・評価した結果を第1表〜第3表に示す。
【0064】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(a)
(a−1)α−ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名:NC−7000L〕
(a−2)ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:EXA−9520〕
(a−3)3官能ナフタレン型エポキシ樹脂〔DIC(株)製、商品名:EXA−4750〕
【0065】
両末端にアミノ基を有するシリコーン化合物(b)
(b−1)両末端ジアミン変性シロキサン〔信越化学工業(株)製、商品名:X−22−161A〕
(b−2)両末端ジアミン変性シロキサン〔信越化学工業(株)製、商品名:KF−8012〕
【0066】
酸性置換基を有するアミン化合物(c)
(c−1)芳香族アミン〔関東化学(株)製、p−アミノフェノール〕
(c−2)芳香族アミン〔関東化学(株)製;m−アミノフェノール〕
【0067】
少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)
(d−1)ビス(4−マレイミドフェニル)メタン〔ケイ・アイ化成(株)製、商品名:BMI〕
(d−2)2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン〔大和化成工業(株)製、商品名:BMI−4000〕
【0068】
分子構造中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(e)
(e−1)3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン〔日本化薬(株)製、商品名:KAYAHARD A−A〕
(e−2)2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン〔和歌山精化工業(株)製、商品名:BAPP〕
【0069】
製造例1(変性シリコーン化合物(X−1)の製造)
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、X−22−161A(b−1成分)99.2gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(e−1成分)54.4gと、p−アミノフェノール(c−1成分)4.8gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(d−1成分)125.3g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(有機溶媒)250.0gを入れ、100℃で3時間反応させて、変性シリコーン化合物(X−1)含有溶液を得た。
【0070】
製造例2(変性シリコーン化合物(X−2)の製造)
製造例1と同様の反応容器を用い、これにKF−8012(b−2成分)23.8gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン(e−1成分)15.0gと、p−アミノフェノール(c−1成分)4.7gと、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン(d−1成分):123.2g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(有機溶媒)250.0gを入れ、115℃で3時間反応させて、変性シリコーン化合物(X−2)含有溶液を得た。
【0071】
エポキシ樹脂(f)
(f−1)フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC(株)製;商品名:N−770〕
(f−2)ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製;商品名:NC−3000H〕
【0072】
硬化促進剤:下記の式(I)に示す構造のヘキサメチレンジイソシアネートと2−エチル−4−メチルイミダゾールの付加反応物
【0073】
【化11】
【0074】
無機充填材:溶融シリカ((株)アドマテックス製、商品名:SC2050−KNK)
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
第1表及び第2表から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた実施例では、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張率、弾性率、銅箔接着性及び耐デスミア性の全てに優れている。一方、第3表から明らかなように、比較例では、ガラス転移温度(Tg)、熱膨張率、弾性率、銅箔接着性及び耐デスミア性の全ての特性を同時に満たすものはなく、特に低熱膨張性及び耐デスミア性の特性に劣っている。従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることで、特に低熱膨張性及び耐デスミア性に優れた積層板が得られる。