【文献】
Macromol. Chem. Phys.,2002年,Vol. 203, No. 13,pp. 1958-1964
【文献】
Journal of Electroanalytical Chemistry,1998年,Vol. 443, No. 2,pp. 217-226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、
(1)導電材料として用いられる新規な水溶性のチオフェン化合物を提供すること、及び
(2)導電材料として用いられる新規な水溶性のポリチオフェン類を提供すること、
である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示すとおりの新規なチオフェン化合物、水溶性の導電性ポリマー及びその製造法である。
【0015】
[1]下記式(1)で表されることを特徴とするチオフェン化合物。
【0016】
【化1】
[上記式(1)中、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表す。Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Li、Na及びKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(R
1)
3又はHNC
5H
5を表す。R
1は各々独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは0〜6の整数を表す。mは0又は1の整数を表す。lは1〜4の整数を表す。]
[2]上記式(1)において、Arが置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基であることを特徴とする上記[1]に記載のチオフェン化合物。
【0017】
[3]下記式(2)で表されるチオフェン化合物。
【0018】
【化2】
[上記式(2)中、Mは水素原子、Li、Na及びKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(R
1)
3又はHNC
5H
5を表す。R
1は各々独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。R
2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。nは0〜6の整数を表す。mは0又は1の整数を表す。lは1〜4の整数を表す。]
[4]上記式(2)で表されるチオフェン化合物において、R
2が水素原子を表し、l=1であることを特徴とする上記[3]に記載のチオフェン化合物。
【0019】
[5]下記式(3)
【0020】
【化3】
[上記式(3)中、Yはトシレート、メシレート、トリフラート、クロライド、ブロマイド又はアイオダイドを表す。nは0〜6の整数を表す。]
で表されるチオフェン化合物と下記式(4)
【0021】
【化4】
[上記式(4)中、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表す。Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Li、Na及びKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(R
1)
3又はHNC
5H
5を表す。R
1は各々独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。mは0又は1の整数を表す。lは1〜4の整数を表す。]
で表される化合物とを、非プロトン性の極性溶媒中、塩基存在下に反応させることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のチオフェン化合物の製造法。
【0022】
[6]下記式(10)
【0023】
【化5】
[上記式(10)中、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表す。Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。Mは水素原子、Li、Na及びKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(R
1)
3又はHNC
5H
5を表す。R
1は各々独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。nは0〜6の整数を表す。mは0又は1の整数を表す。lは1〜4の整数を表す。]
で表される構造単位及び下記式(11)
【0024】
【化6】
[上記式(11)中、Ar、X、n、m、lは上記式(10)と同意義を示す。]
で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン類。
【0025】
[7]下記式(12)
【0026】
【化7】
[上記式(12)中、Mは水素原子、Li、Na及びKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(R
1)
3又はHNC
5H
5を表す。R
1は各々独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。R
2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。nは0〜6の整数を表す。mは0又は1の整数を表す。lは1〜4の整数を表す。]
で表される構造単位及び下記式(13)
【0027】
【化8】
[上記式(13)中、R
2、X、n、m、lは上記式(12)と同意義を示す。]
で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む上記[6]に記載のポリチオフェン類。
【0028】
[8]上記式(12)又は(13)で示される構造単位において、R
2が水素原子であり、l=1であることを特徴とする上記[7]に記載のポリチオフェン類。
【0029】
[9]上記式(12)で示される構造単位及び上記式(13)で示される構造単位において、R
2が水素原子であり、l=1であることを特徴とする上記[7]に記載のポリチオフェン類。
【0030】
[10]ポリチオフェン類の重量平均分子量が、ポリスチレンスルホン酸換算で1千〜100万の範囲であることを特徴とする上記[6]乃至[9]のいずれかに記載のポリチオフェン類。
【0031】
[11]水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のチオフェン化合物を重合させることを特徴とする上記[6]乃至[10]のいずれかに記載のポリチオフェン類の製造法。
【0032】
[12]上記[6]乃至[10]のいずれかに記載のポリチオフェン類の水溶液からなる水溶性導電性ポリマー水溶液。
【0033】
[13]上記[12]に記載の水溶液を基材に塗布し乾燥することを特徴とする導電性被膜の製造法。
【0034】
[14]上記[12]に記載の水溶液の導電性被膜への使用。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、水溶性導電性高分子の原料モノマーとして有用な新規のチオフェン化合物を簡便な製造法で提供できる。
【0036】
また本発明によれば、良好な導電性と成型加工に十分な水溶性を兼ね備えた新規なポリチオフェン類を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のチオフェン化合物は、上記式(1)で表される化合物である。
【0040】
上記式(1)中、Arは置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表す。なお、Arが置換基を有するアリーレン基である場合の当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0041】
上記式(1)において、Arとしては、特に限定するものではないが、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基等が挙げられる。
【0042】
上記式(1)中、Xは置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。なお、Xが置換基を有するアルキレン基である場合の当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0043】
上記式(1)において、Xとしては、特に限定するものではないが、具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が例示される。
【0044】
上記式(1)中、Mは、水素原子、Li、Na及びKからなる群より選ばれるアルカリ金属、NH(R
1)
3又はHNC
5H
5を表す。
【0045】
その際、R
1は各々独立して水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。置換基R
1としては特に限定するものではないが、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基等の炭素数1〜6のアルキル基等を挙げることができる。好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基である。また、R
1が置換基を有するアルキル基である場合の当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数1〜20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0046】
上記式(1)中、nは0〜6の整数を表す。
【0047】
上記式(1)中、mは0又は1の整数を表す。
【0048】
上記式(1)中、lは1〜4の整数を表す。
【0049】
本発明において、上記式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えばO−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸ナトリウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸リチウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸カリウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸アンモニウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸トリエチルアンモニウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸ピリジニウム、
O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸ナトリウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸リチウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸カリウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸アンモニウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸トリエチルアンモニウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−3−フェノールスルホン酸ピリジニウム、
O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸ナトリウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸リチウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸カリウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸アンモニウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−4−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸トリエチルアンモニウム、O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−2−フェノールスルホン酸ピリジニウム、
2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸、2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸スルホン酸リチウム、2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム、2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸トリエチルアンモニウム、2−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ピリジニウム、
3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸、3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム、3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム、3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸トリエチルアンモニウム、3−メチル−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ピリジニウム、
2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸、2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム、2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム、2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸トリエチルアンモニウム、2−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ピリジニウム、
3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸、3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム、3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム、3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸トリエチルアンモニウム、3−メトキシ−4−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)ベンゼンスルホン酸ピリジニウム、
(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−2−エタン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−3−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−2−エタン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−3−プロパン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−4−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−4−ブタン−1−スルホン酸ピリジニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸ナトリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸リチウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸カリウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸アンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸トリエチルアンモニウム、(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシベンゼン−3−イル)−6−ヘキサン−1−スルホン酸ピリジニウム等が例示される。
【0050】
上記式(1)において、Arは置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基であることが好ましい。
【0051】
また、上記式(1)で表される化合物としては、上記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0052】
上記式(2)中、R
2は水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す
上記式(2)において、R
2としては、特に限定するものではないが、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基等の炭素数1〜6のアルキル基若しくはアルキレン基等を挙げることができる。好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基である。また、R
2が置換基を有するアルキル基又はアルコキシ基である場合の当該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0053】
上記式(2)中、n、m、l及びMは上記式(1)と同意義である。
【0054】
上記式(2)で表されるチオフェン化合物においては、R
2が水素原子を表し、l=1であることが好ましい。
【0055】
本発明の上記式(1)で表されるチオフェン化合物は、上記式(3)で表されるチオフェン化合物と上記記式(4)で表される化合物とを、非プロトン性の極性溶媒中、塩基存在下に反応させることにより簡便に得ることができる。
【0056】
上記式(3)中、Yはトシレート、メシレート、トリフラート、クロライド、ブロマイド、又はアイオダイドを表す。
【0057】
上記式(3)で表される化合物としては、具体的には、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルクロライド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルブロマイド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルアイオダイド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルトシレート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルメシレート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルトリフラート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルクロライド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルエチルブロマイド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルエチルアイオダイド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルエチルトシレート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルエチルメシレート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルエチルトリフラート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルプロピルクロライド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルプロピルブロマイド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルプロピルアイオダイド、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルプロピルトシレート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルプロピルメシレート、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルプロピルトリフラート等が例示される。
【0058】
上記式(4)中、Ar、X、M、n、m及びlは上記と同じ定義である。
【0059】
上記式(4)で表される化合物としては、具体的には、4−フェノールスルホン酸、4−フェノールスルホン酸ナトリウム、4−フェノールスルホン酸カリウム、4−フェノールスルホン酸リチウム、4−フェノールスルホン酸アンモニウム、
3−フェノールスルホン酸、3−フェノールスルホン酸ナトリウム、3−フェノールスルホン酸カリウム、3−フェノールスルホン酸リチウム、3−フェノールスルホン酸アンモニウム、
2−フェノールスルホン酸、2−フェノールスルホン酸ナトリウム、2−フェノールスルホン酸カリウム、2−フェノールスルホン酸リチウム、2−フェノールスルホン酸アンモニウム、
2,4−フェノールジスルホン酸、2、4−フェノールジスルホン酸ナトリウム、2、4−フェノールジスルホン酸カリウム、2、4−フェノールジスルホン酸リチウム、2、4−フェノールジスルホン酸アンモニウム、
3,4−フェノールジスルホン酸、3、4−フェノールジスルホン酸ナトリウム、3、4−フェノールジスルホン酸カリウム、3、4−フェノールジスルホン酸リチウム、3、4−フェノールジスルホン酸アンモニウム、
2−メチル−4−フェノールスルホン酸、2−メチル−4−フェノールスルホン酸ナトリウム、2−メチル−4−フェノールスルホン酸カリウム、2−メチル−4−フェノールスルホン酸リチウム、2−メチル−4−フェノールスルホン酸アンモニウム、
2−メチル−3−フェノールスルホン酸、2−メチル−3−フェノールスルホン酸ナトリウム、2−メチル−3−フェノールスルホン酸カリウム、2−メチル−3−フェノールスルホン酸リチウム、2−メチル−3−フェノールスルホン酸アンモニウム、
4−メチル−2−フェノールスルホン酸、4−メチル−2−フェノールスルホン酸ナトリウム、4−メチル−2−フェノールスルホン酸カリウム、4−メチル−2−フェノールスルホン酸リチウム、4−メチル−2−フェノールスルホン酸アンモニウム、
3−メチル−2,4−フェノールジスルホン酸、3−メチル−2、4−フェノールジスルホン酸ナトリウム、3−メチル−2、4−フェノールジスルホン酸カリウム、3−メチル−2、4−フェノールジスルホン酸リチウム、3−メチル−2、4−フェノールジスルホン酸アンモニウム、
2−メチル−3,4−フェノールジスルホン酸、2−メチル−3、4−フェノールジスルホン酸ナトリウム、2−メチル−3、4−フェノールジスルホン酸カリウム、2−メチル−3、4−フェノールジスルホン酸リチウム、2−メチル−3、4−フェノールジスルホン酸アンモニウム等が例示される。
【0060】
本反応に用いる極性溶媒としては、反応が進行する溶媒であれば特に限定するものではないが、例えば、N,N−ジメチルアミノホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、アセトン、水等が挙げられる。これらのうち、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。これらは単一で使用しても任意に混合して使用してもよい。
【0061】
極性溶媒の使用量としては、原料となる上記式(3)及び式(4)で表される化合物が溶解する量であれば特に限定するものではないが、例えば、上記式(3)及び式(4)で表される化合物の仕込量の0.1〜200重量倍の範囲が好ましく、より好ましくは1〜100重量倍の範囲である。
【0062】
本反応に用いる塩基としては、反応が進行する溶媒であれば特に限定するものではないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム、アンモニア水、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムである。
【0063】
塩基の使用量としては、特に限定するものではないが、例えば、上記式(3)及び式(4)で表される化合物の総モル数に対して、通常1〜100倍モルの範囲、好ましくは1〜10倍モルの範囲、さらに好ましくは2〜5倍モルの範囲である。
【0064】
本反応の反応温度は、反応が進行する温度であれば特に限定するものではないが、例えば、通常は−20〜200℃の範囲、好ましくは30〜180℃の範囲、さらに好ましくは50〜130℃の範囲である。
【0065】
本反応の反応雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中、窒素中、又はアルゴン中が好ましく、より好ましくは、窒素中である。
【0066】
本反応の反応圧力は、常圧系であっても加圧系であってもよく、特に限定するものではないが、好ましくは常圧系である。
【0067】
本発明のチオフェン化合物としては、当該化合物が水に室温下又は加温下に0.5重量%以上溶解する程度の水溶性を示すものがより好ましい。
【0068】
次に、本発明のポリチオフェン類について説明する。
【0069】
本発明におけるポリチオフェン類は、上記式(10)で表される構造単位及び上記式(11)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン類である。
【0070】
上記式(10)において、Ar、X、M、n、m、lは上記式(1)と同意義を示す。
【0071】
また、上記式(11)中、Ar、X、n、m、lは上記式(10)と同意義を示す。上記式(11)で表される構造単位は、上記式(13)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
【0072】
ドーピングにより絶縁体−金属転移を引き起こすドーパントは、アクセプタとドナーに分けられる。
【0073】
前者は、ドーピングにより導電性ポリマーの高分子鎖の近くに入り主鎖の共役系からπ電子を奪う。結果として、主鎖上に正電荷(正孔、ホール)が注入されるため、p型ドーパントとも呼ばれる。具体的には、ハロゲン類(Br
2、I
2、Cl
2)、ルイス酸(BF
3、PF
5、AsF
5)、プロトン酸(H
2SO
4、HCl、CF
3SO
3H)、遷移金属ハライド(FeCl
3)、有機物質(TCNQ)等が例示される。
【0074】
また、後者は、逆に主鎖の共役系に電子を与えることになり、この電子が主鎖の共役系を動くことになるため、n型ドーパントとも呼ばれる。具体的には、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs)、アルキルアンモニウムイオン等が例示される。
【0075】
本発明におけるドーパントは、ポリマー分子内に共有結合で結びついたスルホ基又はスルホナート基であり、p型ドーパントである。このように外部からドーパントを添加することなく導電性を発現するポリマーは自己ドープ型ポリマーと呼ばれている。
【0076】
本発明におけるポリチオフェン類は、具体的には、上記式(12)で表される構造単位及び上記式(13)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましい。
【0077】
上記式(12)において、R
3、X、M、n、m、lは上記式(2)と同意義を示す。
【0078】
また、上記式(13)中、R
2、X、n、m、lは上記式(12)と同意義を示す。上記式(13)で表される構造単位は、上記式(12)で表される構造単位のドーピング状態を表す。
【0079】
水溶性導電性ポリマー用途を考慮すると、上記式(12)で表される構造単位、上記式(13)で表される構造単位において、R
2が水素原子であり、l=1であるポリチオフェン類がより好ましい。
【0080】
本発明のポリチオフェン類の重量平均分子量は、特に限定するものではないが、ポリスチレンスルホン酸換算で通常1千〜100万の範囲であり、水溶性導電性ポリマー用途として好ましくは1千〜20万の範囲である。ポリマーから未反応のモノマーや低分子不純物及び無機塩を除去する観点から、より好ましくは3.5千〜10万の範囲である。
【0081】
本発明のポリチオフェン類を水溶液にすることで、水溶性導電性ポリマー水溶液として、各種用途への成型加工が容易となる。水溶性導電性ポリマー水溶液の調製方法は、特に限定するものではないが、室温や加温下(100℃以下が好ましい)で水と混合溶解させることで達成される。その際、スターラーチップや攪拌羽根による一般的な混合溶解操作を用いることもできるし、その他の方法として、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザ−、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0082】
水溶性導電性ポリマー水溶液中のポリチオフェン類の濃度は、特に限定するものではないが、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、粘性の観点からより好ましくは10重量%以下である。
【0083】
なお、本発明において、各種用途への成型加工に十分な水溶性とは、室温または加温下で調製した10重量%以下のポリマー水溶液において、粒度分布測定装置で測定した粒子径(D50)が20nm以下であり、且つ0.05μmのフィルターを通液する程度の水溶性をいう。
【0084】
また、本発明において、良好な導電性とは、フィルム状態での導電率(電気伝導度)が10
−1S/cm以上の導電性をいう。
【0085】
次に、本発明のポリチオフェン類の製造法について説明する。
【0086】
本発明のポリチオフェン類の製造法は、水又はアルコール溶媒中、酸化剤の存在下に、上記した本発明のチオフェン化合物を重合させることをその特徴とする。チオフェン化合物としては、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
本重合反応に用いる溶媒は、水又はアルコール溶媒である。水としては、純水であればよく、蒸留水、イオン交換水でもよい。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコール溶媒は、単独でも使用しても、水と併用してもよい。本発明において、好ましくは水又はメタノールであり、より好ましくは水である。また、溶媒を脱気や窒素等の不活性ガスで置換していてもよい。
【0088】
本重合反応に用いる溶媒量は、本発明のチオフェン化合物が溶解する量であれば特に限定されないが、本発明のチオフェン化合物の仕込量に対して0.1〜100重量倍が好ましく、より好ましくは1〜20重量倍である。
【0089】
本重合反応に用いる酸化剤としては、酸化的脱水素化反応による酸化重合を進行させるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、過硫酸類、鉄塩(III)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、酸素等が挙げられ、単独で又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0090】
ここで、過硫酸類としては、具体的には、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が例示される。
【0091】
また、鉄塩(III)としては、具体的には、FeCl
3、Fe
2(SO
4)
3、過塩素酸鉄、パラ−トルエンスルホン酸鉄(III)等が例示される。これらは無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。
【0092】
また、過マンガン酸塩としては、具体的には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸マグネシウム等が例示される。
【0093】
また、重クロム酸塩としては、具体的には、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム等が例示される。
【0094】
これらの酸化剤のうち、好ましくは、FeCl
3、Fe
2(SO
4)
3、又は過硫酸塩と鉄塩(III)の併用系である。
【0095】
本重合反応に用いる酸化剤の量としては、特に限定するものではないが、本発明のチオフェン化合物の仕込モル数に対して、0.5〜50倍モルである。より好ましくは、1〜20倍モルである。さらに好ましくは、1〜10倍モルである。
【0096】
本重合反応の圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0097】
本重合反応の反応雰囲気は、大気中であっても、窒素やアルゴン等の不活性ガス中であってもよい。より好ましくは不活性ガス中である。
【0098】
本重合反応の反応温度は、本発明のチオフェン化合物を酸化重合できる温度であれば特に限定されないが、−10〜150℃が好ましく、さらに好ましくは20〜100℃の範囲である。
【0099】
本重合反応の反応時間は、本発明のチオフェン化合物を酸化重合が十分進行する時間であれば特に限定されないが、0.5時間〜200時間が好ましく、さらに好ましくは0.5〜80時間である。
【0100】
本重合反応の反応方法は、特に限定されないが、例えば、本発明のチオフェン化合物を水溶液にして、これに酸化剤を一度に又はゆっくりと滴下してもよく、逆に酸化剤の固体又は水溶液に本発明のチオフェン化合物の水溶液を一度に又はゆっくりと滴下してもよい。
【0101】
本重合反応で得られた本発明のポリチオフェン類の精製法としては、特に限定するものではないが、例えば、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等が挙げられる。それぞれ単独で行っても又は組み合わせても良い。
【0102】
例えば、本発明のポリチオフェン類の典型的な単離精製方法は、以下のとおりである。
【0103】
まず、重合反応後のポリマー水溶液をアセトン等の貧溶媒に添加し、ポリマーを沈殿させた後、減圧ろ過で得たポリマーを当該貧溶媒でろ液が無色透明になるまで洗浄する。このポリマーに、水に不溶なFe塩が含まれている場合、一度水酸化ナトリウム水溶液中に添加し、水に溶解するNa塩型ポリマーに変換することが好ましい。
【0104】
次に、これをアルコール等の貧溶媒に添加してポリマーを沈殿させるとともに、アルカリ分を除去し、減圧濾過により得た固体をアルコール等の貧溶媒で洗浄する。次いでアセトン等の貧溶媒で洗浄し、Na塩型ポリマーを得る。
【0105】
得られたNa塩型ポリマーを、引き続き、H型ポリマーに変換する場合には、陽イオン交換樹脂で処理する。処理方法としては、例えば、得られたNa塩型ポリマーの水溶液を陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに通液させる方法や、陽イオン交換樹脂を水溶液に添加するボディーフィード法等が挙げられる。この場合、処理後にろ紙で陽イオン交換樹脂を除去することが好ましい。このようにして得られた水溶液を粗濃縮し、アセトン等の貧溶媒に添加して沈殿させ、減圧ろ過して得た固体を当該貧溶媒でよく洗い、減圧乾燥してH型ポリマーが得られる。
【0106】
さらに、各種アミンとの塩を形成させる場合には、例えば、H塩型ポリマーの水溶液に、各種アミンの原液若しくはその水溶液又はその他適当な溶媒で希釈したものを加えることで容易にアミン塩型ポリマーに変換することができる。例えば、アンモニア水で処理した場合には、反応液を粗濃縮し、その水溶液をアセトン等の貧溶媒に添加してポリマー沈殿させた後、減圧濾過により得た固体を当該貧溶媒で洗浄し、減圧乾燥することでアンモニウム塩型ポリマーが得られる。
【0107】
重合後処理の各工程では必要に応じて、遠心沈降、ホモジナイズ処理を行ってもよい。これにより、ろ過効率の改善を図ることができる。さらに、重合酸化剤として過硫酸塩を使用した場合には、無機塩の除去として限外ろ過や透析、陽・陰イオン交換樹脂混合処理を行う。
【0108】
本発明のポリチオフェン類を用いて導電性被膜を製造することができる。例えば、上記した水溶性導電性ポリマー水溶液を、基材に塗布・乾燥することで導電性被膜が簡単に得られる。基材としては、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、レジスト基板等が挙げられる。塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、インクジェット印刷法等が挙げられる。膜厚としては特に限定するものではないが、10
−2〜10
2μmの範囲が好ましい。得られる塗膜の表面抵抗値としては特に限定するものではないが、1〜10
9Ω/□の範囲のものが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下に本発明のチオフェン化合物に関する実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0110】
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC−2014。
【0111】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200。
【0112】
本発明に係る化合物は下記スキームで合成できる。出発原料(3)は市販の化合物(5)から3,4−エチレンジオキシチオフェン合成で使用される既知法で合成した。
【0113】
【化9】
合成例1 2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチルブロマイドの合成[下記式(7)で表される化合物].
冷却管、温度計挿入管、攪拌羽根、窒素導入管を備えた500mLセパラブルフラスコに、3,4−ジメトキシチオフェン[上記化合物(5)に相当]20.0g(134.5mmol)、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール[上記化合物(6)に相当]25.0g(161.5mmol)、パラトルエンスルホン酸・一水和物(5.33g、30.9mmol)、トルエン340mlを仕込んだ。その後、窒素雰囲気下、90℃で20時間反応させた。得られた黒色液を放冷し、塩化メチレンで希釈し水洗した。得られた緑褐色の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ液を濃縮して黄褐色の液体を得た。引き続きシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/トルエン=4/1)で精製し、濃縮後に18.9gの下記式(7)で表される化合物が得られた(白色固体、収率58%)。
【0114】
【化10】
実施例1 O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸カリウムの合成[下記式(8)で表される化合物].
冷却管、温度計挿入管、スターラーチップ、窒素導入管を備えた200mLの3つ口フラスコに、合成例1で得た上記式(7)で表される化合物2.24g(9.53mmol)、p−フェノールスルホン酸[上記化合物(4)に相当]2.08g(11.9mmol)、炭酸カリウム(塩基)5.78g(41.8mmol)、N、N−ジメチルホルムアミド(極性溶媒)120mLを仕込み、窒素雰囲気下100〜120℃で24時間反応させた。TLC分析及びGC分析から上記式(7)で表される化合物の消失を確認した。放冷後、析出物をろ過し、ジメチルホルムアミドで洗浄した。得られたろ液を粗濃縮し、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒で洗浄し、減圧濾過して目的の下記式(8)で表される化合物を白色固体として1.96g得た(収率56%)。この化合物は1重量%以上の水溶性を示した。また、大気中での保存・取扱いが可能だった。
【0115】
【化11】
1H−NMR(200MHz,D
2O,2,2,3,3−d(4)−3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム)δ(ppm)7.78−7.68(2H、m)、7.11−6.96(2H、m)6.56−6.54(2H,m)、4.76−4.61(1H、m)、4.37−4.28(4H、m)。
【0116】
13C−NMR(50MHz,D
2O,2,2,3,3−d(4)−3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム)δ(ppm)68.14、69.35、75.02、103.21、103.35、117.47、130.09、138.11、142.85、143.20、162.70。
【0117】
実施例2 O−(2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメチル)−4−フェノールスルホン酸ナトリウムの合成[下記式(9)で表される化合物].
冷却管、温度計挿入管、スターラーチップ、窒素導入管を備えた1Lのセパラブルフラスコに、合成例1で得た化合物(7)10.0g(42.1mmol)、p−フェノールスルホン酸ナトリウム二水和物(一般式(4)の化合物)11.9g(50.5mmol)、炭酸カリウム(塩基)25.6g(185.3mmol)、N、N−ジメチルホルムアミド(極性溶媒)630mLを仕込み、窒素雰囲気下120℃で24時間反応させた。TLC分析及びGC分析から化合物(7)の消失を確認した。放冷後、析出物をろ過し、ジメチルホルムアミドで洗浄した。得られたろ液を粗濃縮し、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒で洗浄し、減圧濾過して目的の化合物(9)を白色固体として8.6g得た(収率58%)。この化合物は1%以上の水溶性を示した。また、大気中での保存・取扱いが可能だった。
【0118】
【化12】
1H−NMR(200MHz,D
2O,2,2,3,3−d(4)−3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム)δ(ppm)7.78−7.68(2H、m)、7.11−6.96(2H、m)6.56−6.54(2H,m)、4.76−4.61(1H、m)、4.37−4.28(4H、m)。
【0119】
13C−NMR(50MHz,D
2O,2,2,3,3−d(4)−3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム)δ(ppm)68.14、69.35、75.02、103.21、103.35、117.47、130.09、138.11、142.85、143.20、162.70。
【0120】
次に、本発明のポリチオフェン類に関する実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0121】
[UV−Vis−NIR分析]
装置:SHIMADZU製、UV−3100。
[GPC測定]
装置:東ソー社製,
カラム:α−6000+α−3000
検出器:UV−8020。
【0122】
[IR分析]
装置:パーキンエルマー社製、System2000 FT−IR。
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP−T600。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[粒子径測定]
装置:日機装社製 Microtrac Nanotrac UPA−UT151。
【0123】
[フィルター通液試験]
フィルター:日本インテグリス社製オプチマイザー V−47 ディスポーザブルフィルター(親水性)、除粒子径0.05μm。
【0124】
実施例3 ポリマー(16)の合成[下記式(14)又は下記式(15)で表される構造単位を含む重合体].
実施例1で得られた上記式(8)で表される化合物1.17g(3.18mmol)を水16mLに溶解させてモノマーの水溶液を得た。次に、窒素ラインを備えた30mL反応管中に予め仕込んでおいたFeCl
3 4.14g(25.5mmol)に対してモノマーの水溶液をゆっくり添加した。その後、窒素下に80℃で60時間攪拌した。得られた黒色液を攪拌下にアセトン500mLにゆっくり添加し、得られた沈殿物を減圧ろ過により回収した(0.41g、深緑色固体)。この固体を水5mLに懸濁させて激しく攪拌しながら、0.1NのNaOH水溶液50g加えると、濃青色液が得られた。引き続き、攪拌下にエタノール800mLにこの液をゆっくり添加し、得られた沈殿物を減圧ろ過で回収した。引き続き、水50gに再溶解して得たポリマー水溶液を減圧ろ過して水酸化鉄を除去した。ろ液を濃縮、乾燥して目的のNa塩型ポリマー(16)を330mg得た(黒色固体)。このポリマーを100ppm含む水溶液のUV−Vis−NIR分析を行った結果、ドーピングに起因する長波長吸収が観測された(
図1参照)。
図5にはそのIR分析の結果を示した。3600〜1800cm
−1辺りにドーピングに起因する特徴的なバンド吸収を観測した。さらに、本ポリマーの0.5重量%水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は4.3S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下であり、また0.05μmフィルターを通液した。GPCによる重量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸換算、以下同じ)は18,000だった。
【0125】
【化13】
【0126】
【化14】
実施例4 ポリマー(19)の合成[下記式(17)又は下記式(18)で表される構造単位を含む重合体].
実施例3で得られたNa塩型ポリマー(16)150mgを水で150mLに希釈溶解させた。この水溶液を超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US−300T)で処理した後、陽イオン交換樹脂アンバーライト(IR120H型)を添加して一晩攪拌した。減圧ろ過でアンバーライトを除去して濃青色H型ポリマー水溶液を得た。さらに粗濃縮した水溶液をアセトン中に添加して得られた沈殿物を減圧ろ過で回収した。乾燥後、目的のH型ポリマー(19)を黒色固体として85mg(収率57%)得た。このポリマーを100ppm含む水溶液のUV−Vis−NIR分析を行った結果、ドーピングに起因する長波長吸収が観測された(
図2参照)。
図6にはそのIR分析の結果を示した。3600〜1800cm−1辺りにドーピングに起因する特徴的なバンド吸収を観測した。さらに、本ポリマーの0.5重量%水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は9.0S/cmだった。1.0重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下であり、また0.05μmフィルターを通液した。
【0127】
【化15】
【0128】
【化16】
実施例5 ポリマー(22)の合成[下記式(20)又は下記式(21)で表される構造単位を含む重合体].
実施例3で得られたNa塩型ポリマー(16)150mgを水で15gに希釈溶解させた。この水溶液に、陽イオン交換樹脂アンバーライト(IR120H型)を添加して一晩攪拌した。減圧ろ過でアンバーライトを除去して濃青色H型ポリマー水溶液を得た。粗濃縮した水溶液に、モノマーの繰返し単位当りのモル数に対して過剰量の2.8重量%のアンモニア水を加え、窒素下に室温で一晩攪拌した。減圧ろ過で得たろ液を粗濃縮し、その水溶液をアセトン中に添加して得られた沈殿物を減圧ろ過で回収した。乾燥後、目的のNH
4塩型の黒色ポリマー(22)を90mg(収率60%)得た。このポリマーを100ppm含む水溶液のUV−Vis−NIR分析を行った結果、ドーピングに起因する長波長吸収が観測された(
図3参照)。
図7にはそのIR分析の結果を示した。3600〜1800cm−1辺りにドーピングに起因する特徴的なバンド吸収を観測した。さらに、本ポリマーの0.5重量%水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は7.5S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下であり、また0.05μmフィルターを通液した。
【0129】
【化17】
【0130】
【化18】
実施例6 ポリマー(22)の合成[上記式(20)又は上記式(21)で表される構造単位を含む重合体].
実施例4で得られたH型ポリマー(19)80mgを水で8mLに希釈溶解させた。この水溶液に、モノマーの繰返し単位当りのモル数に対して過剰量の2.8重量%のアンモニア水を加え、窒素下に室温で一晩攪拌した。減圧ろ過で得たろ液を粗濃縮し、その水溶液をアセトン中に添加して得られた沈殿物を減圧ろ過で回収した。乾燥後、目的のNH
4塩型の黒色ポリマー(22)を40mg(収率50%)得た。このポリマーを100ppm含む水溶液のUV−Vis−NIR分析及びIR分析は、実施例5と同様の結果を示した。さらに、本ポリマーの0.5重量%水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は6.0S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下であり、また0.05μmフィルターを通液した。
【0131】
実施例7 ポリマー(16)の合成[上記式(14)又は上記式(15)で表される構造単位を含む重合体].
窒素ラインを備えた30mLの反応管に、実施例2で得られた上記式(9)で表される化合物580mg(1.58mmol)を水6.3gに溶解させてモノマーの水溶液を得た。次に、FeCl
3を13mg(0.08mmol)とNa
2S
2O
8を754mg(3.17mmol)を水7.9gに溶解した酸化剤水溶液を別途調製し、モノマーの水溶液にゆっくり添加した後、室温で14時間重合させた。その間に赤紫色溶液から濃青紫色溶液へと変化した。得られた重合液をアセトン500mLに攪拌下にゆっくり添加し、得られた沈殿物を減圧ろ過により回収した(0.82g、青色固体)。この固体を水30mLに溶解させて水溶液とし、透析(透析膜:Spectra/Por MWCO=0.1−0.5K)により無機塩を除去した(2日間)。精製された水溶液を粗濃縮し、それをアセトン中に添加して得られた沈殿物を減圧ろ過で回収した。乾燥後、目的のNa塩型の淡緑色ポリマー(16)を170mg(収率29%)得た。このポリマーを100ppm含む水溶液のUV−Vis−NIR分析を行った結果、ドーピングに起因する長波長吸収が観測された(
図4参照)。さらに、本ポリマーの0.5重量%水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は2.8S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下であり、また0.05μmフィルターを通液した。GPCによる重量平均分子量は7,800だった。
【0132】
実施例8 ポリマー(19)の合成[上記式(17)又は上記式(18)で表される構造単位を含む重合体].
窒素ラインを備えた30mLの反応管に、実施例2で得られた上記式(9)で表される化合物1.0g(2.85mmol)を水14.3gに溶解させてモノマーの水溶液を得た。次に、FeCl
3を0.23g(1.42mmol)を加えて30分攪拌した。この溶液に、Na
2S
2O
8 1.36g(5.70mmol)を水8.0gに溶解した酸化剤水溶液をゆっくり添加した後、室温で12時間重合させた。その間に赤紫色溶液から濃青紫色溶液へと変化した。得られた重合液をアセトン500mLに攪拌下にゆっくり添加し、得られた沈殿物を減圧ろ過により回収した(1.18g、青緑色固体)。この固体を水300gに溶解させて水溶液とし、陽イオン交換樹脂アンバーライト(IR120H型)を添加して一晩攪拌した。減圧ろ過によりアンバーライトを除去して濃青色H型ポリマー水溶液を得た。さらに粗濃縮して1%水溶液を調製し、透析(透析膜:Spectra/Por MWCO=3500)により無機塩を除去した(2日間)。精製された水溶液を粗濃縮し、それをアセトン中に添加して得られた沈殿物を減圧ろ過で回収した。乾燥後、目的のH型の黒色ポリマー(19)を88mg(収率9%)得た。このポリマーを100ppm含む水溶液のUV−Vis−NIR分析を行った結果、ドーピングに起因する長波長吸収が観測された。さらに、本ポリマーの0.5重量%水溶液を無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は4.1S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下であり、また0.05μmフィルターを通液した。GPCによる重量平均分子量は14,000だった。
【0133】
比較例1 ポリマー(29)の合成[下記式(27)又は下記式(28)で表される構造単位を含む重合体].
マクロモレキュールズ、1995年、975〜984頁を参考に、下記スキームに従って合成した。
【0134】
【化19】
(1A)3−アリルチオフェン(24)の合成.
300mLの4つ口フラスコに、3−ブロモチオフェン(23)20.1g(123.4mmol)、ジエチルエーテル(脱水)80mLを仕込み、−78℃に冷却した。その後、1.6Mのノルマル−ブチルリチウム92mL(147.2mmol)を滴下ロートで1時間かけてゆっくりと滴下した。同温度で2時間熟成させた後、アリルブロミド15.0g(123.6mmol)をシリンジでゆっくり添加し、同温度で5時間熟成させた。0℃まで昇温した後、飽和塩化アンモウム水溶液100mLでクエンチして、有機層を抽出した。さらに、水と飽和食塩水で洗浄し、分液して得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過して得た有機層を50℃、<20Torrで濃縮すると、褐色油状物が3.2g得られた。これをKugelrohr蒸留(70−125℃、25Torr)で精製し、無色透明油状物として目的の化合物(24)を2.5g得た(収率16%)。
(1B)3−(3−チエニル)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム(25)の合成.
100mLのナスフラスコに、上記(1A)で合成した3−アリルチオフェン(24)3g(24.2mmol)をメタノール37mLに溶解させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.05g(0.30mmol)を添加した。さらに、NaHSO
3 2.9g(27.9mmol)とNa
2S
2O
3 0.59g(4.60mmol)を水24mLに溶かした液を室温下で加えた後、80℃で一晩攪拌した。その間に反応液は懸濁液から均一溶液に変化した。冷却後、濃縮すると白色固体が7.30g得られた。引き続き、ジエチルエーテル35mLで洗浄し、ろ過して得られた白色固体を乾燥して5.14gの粗体を得た。さらに、エタノール100mLでその固体を抽出洗浄し、減圧ろ過で得たろ液を濃縮乾燥すると、目的の化合物(25)が2.21gの白色結晶として得られた(収率52%)。
【0135】
(1C)ポリマー(26)の合成.
上記(1B)で得られた化合物(25)を0.85g(3.72mmol)、水7.6からなるモノマーの水溶液を、予め30mLの反応管に仕込んでおいたFeCl
3 2.40g(14.8mmol)にゆっくり添加した。その後、室温で22時間重合させた。その間に反応液は緑色を帯びた黒色溶液となった。重合後、アセトン150mLにゆっくり攪拌下に注ぎ、ポリマーを沈殿させた。アセトンでよく洗浄した後、黒色ポリマーを0.17g得た。このポリマーを水2gに懸濁させて激しく攪拌しながら、1NのNaOH水溶液1.5mLを添加した。NaOH水溶液を加えることで懸濁液から赤褐色均一溶液に変化した。続いて、メタノール20mLに注ぎ、ポリマーを析出させた。ろ過、乾燥後、目的のNa塩型ポリマー(26)を黒色固体として0.12g得た(収率14%)。
【0136】
(1D)ポリマー(29)の合成.
30mLの反応管に、上記(1C)で得られたポリマー(26)122mgを15mLの水に懸濁させて2時間攪拌した。その後、減圧ろ過すると濃赤色溶液が得られた。陽イオン交換樹脂(Lewatit S100 H型)2gをその溶液に添加して一晩攪拌した。ろ過により得たろ液を濃縮乾燥して目的の酸型ポリマー(29)を黒色固体として76mg(収率63%)で得た。本ポリマーの0.5重量%水溶液を調製し、無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は0.06S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は10nmだった。
【0137】
比較例2 ポリマー(35)の合成[下記式(33)又は下記式(34)で表される構造単位を含む重合体].
特許第3182239号公報を参考に、下記スキームに従って合成した。
【0138】
【化20】
(2A)1、3−ジヒドロイソチアナフテン(31)の合成.
2Lのセパラブルフラスコに、化合物(30)を10.0g(38.0mmol)、テトラ−ノルマル−ブチルアンモニウム硫化水素を25.7g(75.8mmol)、クロロホルム950mLを仕込んだ。窒素バブリング後、別途調製した硫化ナトリウム9水和物13.9g(57.8mmol)、炭酸水素ナトリウム6.4g(75.6mmol)を水700mLに溶解した水溶液を室温で1.5時間かけて滴下し、さらに1時間熟成させた。反応後、有機層を分液し、さらに水250mLで2回洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥した有機層を濃縮すると白色固体と油状物の混合物が得られた。引き続き、シリカゲルカラムクロマトグラフィ精製(溶離液:ヘキサン/クロロホルム=4/1)により、目的の化合物(31)を2.8gの無色透明油状物として得た(収率55%)。
【0139】
(2B)ポリマー(32)の合成.
30mLの反応管に、30%発煙硫酸3.0gを仕込み、氷浴中で冷却した。さらに窒素気流下に、上記(2A)で得た化合物(31)をシリンジで発煙硫酸中へ滴下した。室温で1時間攪拌した後、70℃で1時間反応させた。反応液は滴下直後に褐色から濃群青色に変化した。反応後、0.1N NaOH−メタノール溶液200mLに滴下し、ポリマーを析出沈殿させた。遠心分離(3000rpm)でポリマーを沈降させて、乾燥後1.4gの黒色粉末を得た。引き続き、水100gに溶解させ、透析(透析膜:Spectra/Por MWCO=0.1−0.5K)により無機塩を除去した。精製した水溶液を濃縮乾燥して目的のNa塩型ポリマー(32)を黒色固体として1.1g得た(収率64%)。
【0140】
(2C)ポリマー(35)の合成.
30mLの反応管に、上記(2B)で得られたNa塩型ポリマー(32)を160mg、水を23g仕込み、水溶液を調製した。そこへ予め酸型化した陽イオン交換樹脂(Lewatit S100)2.5gを添加して一晩攪拌した。ろ過でイオン交換樹脂を除き、得られたろ液を濃縮乾燥して目的の酸型ポリマー(35)を黒色固体として140mg得た(収率89%)。本ポリマーの0.5重量%水溶液を調製し、無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は0.1S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は6nmだった。
【0141】
比較例3 ポリマー(40)の合成[下記式(38)又は下記式(39)で表される構造を含む重合体].
ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー、1998年、217〜226頁と、ケミストリー・オブ・マテリアルズ、2009年、1815〜1821頁を参考に、下記スキームに従って合成した。
【0142】
【化21】
(3A)化合物(37)の合成.
100mLナスフラスコに、市販の化合物(36)1.83g、トルエン45mL、60%NaHを0.32g(13.2mmol)を仕込み、還流条件下で1時間反応させた。トルエン12mLに溶解した1,4−ブタンスルトン1.46g(10.7mmol)を還流下に滴下した。さらに2時間熟成させた後、室温まで冷却し、アセトン200mLに添加して、ゼリー状固体を沈殿させた。ろ紙でろ過後、減圧乾燥して目的の化合物(37)を淡褐色固体として2.0g得た(収率56%)。
【0143】
(3B)ポリマー(40)の合成.
50mLシュレンク管に、上記(3A)で得た化合物(37)を0.81g(2.44mmol)、水12mLを仕込んでモノマーの水溶液を得た。そこへ別途調製したNa
2S
2O
8 1.16g(4.86mmol)とFeCl
3 0.02g(0.10mmol)を水12mLに溶かして調製した酸化剤水溶液をモノマー水溶液にゆっくり添加した。室温で16時間重合させた後、アセトン160mLに重合液を注ぎ、ポリマーを析出させた。得られたスラリーを遠心沈降(3000rpm)で完全に沈殿させ、1.4gの黒色固体が得られた。引き続き、水で全量80gの水溶液を調製し、透析(透析膜:Spectra/Por MWCO=0.1−0.5K)により無機塩を除去した。精製した水溶液を濃縮乾燥して目的のNa塩型ポリマー(40)を黒色固体として553mg得た(収率69%)。本ポリマーの0.5重量%水溶液を調製し、無アルカリガラス板にキャストして得た膜の導電率は0.3S/cmだった。0.5重量%水溶液におけるポリマーの粒径(D50)は検出限界(0.8nm)以下だった。