(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040672
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】フマル酸ジエステル系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 22/14 20060101AFI20161128BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
C08F22/14
C08F2/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-212019(P2012-212019)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65819(P2014-65819A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤島 崇
(72)【発明者】
【氏名】下里 伸治
【審査官】
中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−215346(JP,A)
【文献】
特開2011−021102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00
C08F 22/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、フマル酸ジイソプロピル以外のフマル酸ジエステル系化合物1〜50重量部を、油溶性ラジカル開始剤の存在下、フマル酸ジイソプロピルとフマル酸系化合物の合計100重量部に対しメチルブチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン及び/又は芳香族系溶媒0.1〜5重量部を水性媒体と混合した混合水性媒体中で懸濁重合を行うことを特徴とするフマル酸ジエステル系重合体の製造方法。
【請求項2】
フマル酸ジイソプロピル以外のフマル酸ジエステル系化合物が、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn−プロピル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジn−ペンチル、フマル酸ジn−ヘキシル、フマル酸ジn−ヘプシル、フマル酸ジn−オクチル、フマル酸ジn−ノニル、フマル酸ジn−デシル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジターシャリーブチル及びフマル酸ジ−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる1種以上のフマル酸ジエステル系化合物であることを特徴とする請求項1に記載のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法。
【請求項3】
芳香族系溶媒がトルエンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法。
【請求項4】
フマル酸ジイソプロピル以外のフマル酸ジエステル系化合物が、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn−ブチル及びフマル酸ジターシャリーブチルからなる群より選ばれる1種以上のフマル酸ジエステル系化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフマル酸ジエステル系重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、重合体粒子同士の凝集・ブロッキングが抑制された生産安定性に優れるフマル酸ジエステル系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フマル酸ジエステルを重合して得られる単独重合体又は共重合体(フマル酸ジエステル系重合体)は、一般に熱可塑性ビニル重合体と比べて高い耐熱性を示し、さらに透明性に優れた重合体となることが知られている。例えば、フマル酸ジイソプロピルやフマル酸ジシクロヘキシルから得られる単独重合体は、200℃以上でも軟化点及びガラス転移点を示さず、光学分野における様々な用途に使用可能な透明性重合体として有望な材料である。(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
フマル酸ジエステル系重合体は、ラジカル重合によって製造することができる。また、その方法は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、沈殿重合等の従来公知の方法により製造することができる。しかしながら、塊状重合は重合系の温度制御が困難となるといった問題があり、乳化重合では乳化剤の除去が困難であるといった問題、溶液重合は比較的低分子量の重合体しか製造できないといった問題があった(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、懸濁重合は比較的広い分子量範囲の重合体を製造できること、重合系の温度制御が容易であること、重合条件により重合体の粒子径を制御できること、水媒体中で実施可能であること及び重合後の分散剤の除去が比較的容易であることから、工業的に好ましい製造方法である。
【0005】
一般にフマル酸ジエステル系重合体は分子量に対する諸物性の変化が大きく、用途に合わせて分子量を調整する必要がある。そして、懸濁重合において、フマル酸ジエステル系重合体の分子量は、重合温度、開始剤濃度により変化させることができる。しかしながら、重合温度を大きく変化させると重合中に凝集が発生する問題があった。また、フマル酸ジエステルの重合では、一般的なラジカル重合と比べてラジカル開始剤濃度が高く、さらにラジカル開始剤濃度を上げて分子量調整することは、取扱い及び後処理が煩雑になるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平05−040281号公報
【特許文献2】特開2001−048935号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大津隆行著、未来材料、2002年、Vol.2、No.12発行、(第70〜第74頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、重合体粒子同士の凝集・ブロッキングが抑制された生産安定性に優れるフマル酸ジエステル系重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の溶媒の存在下で懸濁重合を行うことによりフマル酸ジエステル系重合体粒子同士の凝集・ブロッキングの抑制が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、フマル酸ジイソプロピル以外のフマル酸ジエステル系化合物1〜50重量部を、油溶性ラジカル開始剤の存在下、フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエステル系化合物の合計100重量部に対しケトン系及び/又は芳香族系溶媒0.1〜5重量部を水性媒体と混合した混合水性媒体中で懸濁重合を行うことを特徴とするフマル酸ジエステル系重合体の製造方法に関するものである。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法は、フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、フマル酸ジイソプロピル以外のフマル酸ジエステル系化合物1〜50重量部を、油溶性ラジカル開始剤の存在下、フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエステル系化合物の合計100重量部に対しケトン系及び/又は芳香族系溶媒0.1〜5重量部を混合した混合水性媒体中で懸濁重合を行うものである。
【0013】
本発明におけるフマル酸ジイソプロピル以外のフマル酸ジエステル系化合物は、透明性、光学補償性能等により優れるフマル酸ジエステル系重合体を提供することが可能となることから、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn−プロピル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジn−ペンチル、フマル酸ジn−ヘキシル、フマル酸ジn−ヘプシル、フマル酸ジn−オクチル、フマル酸ジn−ノニル、フマル酸ジn−デシル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジターシャリーブチル及びフマル酸ジ−2−エチルヘキシルからなる群より選択される1種以上のフマル酸ジエステル系化合物が好ましく、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn−ブチル及びフマル酸ジターシャリーブチルからなる群より選択される1種以上のフマル酸ジエステル系化合物であることがさらに好ましい。そして、該フマル酸ジエステル系化合物は、フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し1〜50重量部を用いるものである。ここで、該フマル酸ジエステル系化合物が1重量部未満である場合、得られるフマル酸ジエステル系重合体は光学補償性能に劣るものとなる。一方、該フマル酸ジエステル系化合物が50重量部を超える場合、重合体粒子の凝集等が発生しやすい傾向になる。また、該フマル酸ジエステル系化合物は、より良好な重合性及び光学補償性能を示すため、フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、10〜15重量部を用いることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法においては、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、その他共重合可能な単量体、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル等を併用することも可能である。
【0015】
本発明のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法における油溶性ラジカル開始剤としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーブチルピバレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。ここで、水溶性ラジカル開始剤である場合、懸濁重合が安定しなくなる傾向となる。また、油溶性ラジカル開始剤の添加量としては、所望の分子量に応じて適宜選択可能であり、フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエステル系化合物の合計量100重量部に対し懸濁重合が安定しやすいため、0.001〜1重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0016】
本発明における混合水性媒体とは、ケトン系及び/又は芳香族系溶媒と水性媒体とを混合したものであり、ケトン系及び/又は芳香族系溶媒を混合することにより懸濁重合反応中のフマル酸ジエステル系重合体の凝集・ブロッキングを抑制し効率的な製造を可能とするものである。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等を挙げることができ、その中でも凝集・ブロッキング抑制効果により優れることから、メチルイソブチルケトンが好ましい。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、パラキシレン、エチルベンゼン等を挙げることができ、その中でも凝集・ブロッキング抑制効果により優れることから、トルエンが好ましい。そして、その際のケトン系及び/又は芳香族系溶媒の使用量は、フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエステル系化合物の合計量100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲であり、凝集・ブロッキング抑制効果により優れることから、好ましくは1.5〜5重量部である。ケトン系及び/又は芳香族系溶媒が0.1重量部未満である場合、また、5重量部を超える場合、フマル酸ジエステル系重合体の凝集・ブロッキングを抑制することが困難となる。また、水性媒体としては、特に制限はなく、例えば、水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を挙げることができる。
【0017】
本発明のフマル酸ジエステル系重合体の製造方法においては、懸濁重合反応において一般的に用いられる分散剤を使用することも可能であり、該分散剤に特に制限はなく、公知の分散剤を使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系分散剤;メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロースヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のセルロース系分散剤等を挙げることができ、その中でも懸濁重合がより安定することから、セルロース系分散剤が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。
【0018】
本発明における懸濁重合方法としては、公知のラジカル懸濁重合法を採用可能であり、混合水性媒体を用いる限り特に制限はない。また、ラジカル共重合を行なう際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には加熱や冷却の容易さのため、40〜150℃の範囲で行なうことが好ましい。
【0019】
本発明における懸濁重合反応装置としては、特に制限はなく、公知の装置を使用することができ、例えば、撹拌翼、温度調整装置等を備えたグラスライニング(GL)、ステンレス(SUS)製等の反応釜等を挙げることができる。また、撹拌翼については、例えば、パドル翼、4枚パドル翼、アンカー翼、3枚後退翼、6枚タービン翼、ブルーマージン翼等を挙げることができる。
【0020】
本発明の製造方法では、未反応フマル酸ジエステル,その他共重合可能な単量体、場合によっては分散剤等を除去するため、フマル酸ジエステル系重合体を洗浄することが好ましい。具体的には、懸濁重合後のフマル酸ジエステル系重合体を、該重合体を不溶かつ未反応フマル酸ジエステル,その他共重合可能な単量体を可溶とする溶剤で洗浄する工程、及び該重合体を不溶かつ分散剤を可溶とする溶剤で洗浄する工程を経た後乾燥することにより、フマル酸ジエステル系重合体を製造することができる。また、乾燥前に必要に応じて水系溶剤等で洗浄してもよい。フマル酸ジエステル系重合体の洗浄では、未反応フマル酸ジエステル,その他共重合可能な単量体が除去できればよく、未反応フマル酸ジエステル,その他共重合可能な単量体を同一の溶剤で同時に除去することもでき、異なる溶剤で個別に除去することもできる。
【0021】
本発明のフマル酸ジエステル系重合体の乾燥方法としては、公知の方法で乾燥可能であり、特に制限はない。また、乾燥温度としては品質の安定化のため、0〜200℃の範囲で行うことが好ましい。さらに乾燥機は、公知の乾燥機が使用可能であり、容器回転式乾燥機、竪型混合乾燥機、ろ過乾燥機、流動層乾燥機、移動層乾燥機、棚段乾燥機等を挙げることができる。
【0022】
本発明で得られるフマル酸ジエステル重合体の数平均分子量は、良好な光学補償性能を示すため、好ましくは60000〜500000であり、さらに好ましくは80000〜400000であり、特に好ましくは100000〜300000である。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、重合体粒子同士の凝集・ブロッキングを抑制することができフマル酸ジエステル系重合体を生産効率よく製造することができる。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH−50)2.3g、蒸留水600g、フマル酸ジイソプロピル358g、フマル酸ジエチル42g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、11.7重量部)、メチルイソブチルケトン10g(フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエチルの合計100重量部に対して、2.4重量部)及び重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート3.1gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することにより懸濁ラジカル重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水2000gで5回洗浄を行った後、メタノール2000gで5回洗浄し、80℃で6時間真空乾燥することによりフマル酸ジエステル系重合体310gを得た。
【0026】
実施例2
フマル酸ジイソプロピル358g、フマル酸ジエチル42g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、11.7重量部)、メチルイソブチルケトン10g(フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエチルの合計100重量部に対して、2.4重量部)の代わりに、フマル酸ジイソプロピル365g、フマル酸ジエチル35g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、9.6重量部)、トルエン17g(フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエチルの合計100重量部に対して、4重量部)とした以外は、実施例1と同様の方法によりフマル酸ジエステル系重合体305gを得た。
【0027】
実施例3
フマル酸ジイソプロピル358g、フマル酸ジエチル42g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、11.7重量部)、メチルイソブチルケトン10g(フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエチルの合計100重量部に対して、2.4重量部)の代わりに、フマル酸ジイソプロピル358g、フマル酸ジエチル21g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、5.9重量部)、フマル酸ジターシャリーブチル21g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、5.9重量部)、メチルイソブチルケトン12.4g(フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジエチルとフマル酸ジターシャリーブチルの合計100重量部に対して、3.1重量部)とした以外は、実施例1と同様の方法によりフマル酸ジエステル系重合体320gを得た。
【0028】
実施例4
実施例1と同様の方法により、懸濁重合を行い反応器より内容物を回収したのち、反応器の洗浄を行わず同様の懸濁重合を20回繰り返し、フマル酸ジエステル系重合体の製造を繰り返し、安定的にフマル酸ジエステル系重合体6211gを製造した。
【0029】
実施例5
実施例2と同様の方法により、懸濁重合を行い反応器より内容物を回収したのち、反応器の洗浄を行わず同様の懸濁重合を20回繰り返し、フマル酸ジエステル系重合体の製造を繰り返し、安定的にフマル酸ジエステル系重合体6189gを製造した。
【0030】
比較例1
メチルイソブチルケトン10g(フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエチルの合計100重量部に対して、2.4重量部)を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法によりフマル酸ジエステル系重合体の製造を行った。
【0031】
フマル酸ジエステル系重合体は210gしか得られず、粒子同士の凝集した固まりが見られた。また、反応器内、攪拌翼へのスケール・ブロッキングは激しいものであった。
【0032】
比較例2
トルエン17g(フマル酸ジイソプロピルとフマル酸ジエチルの合計100重量部に対して、4重量部)を用いなかった以外は、実施例2と同様の方法によりフマル酸ジエステル系重合体の製造を行った。
【0033】
フマル酸ジエステル系重合体は196gしか得られず、粒子同士の凝集した固まりが見られた。また、反応器内、攪拌翼へのスケール・ブロッキングは激しいものであった。
【0034】
比較例3
メチルイソブチルケトン12.4g(フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジエチルとフマル酸ジターシャリーブチルの合計100重量部に対して、3.1重量部)の代わりに、メチルイソブチルケトン0.2g(フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジエチルとフマル酸ジターシャリーブチルの合計100重量部に対して、0.05重量部)とした以外は、実施例3と同様の方法によりフマル酸ジエステル系重合体の製造を行った。
【0035】
フマル酸ジエステル系重合体は220gしか得られず、粒子同士の凝集した固まりが見られた。また、反応器内、攪拌翼へのスケール・ブロッキングは激しいものであった。
【0036】
比較例4
比較例1と同様の方法により懸濁重合を行い、その後、反応器より内容物を回収したのち、反応器の洗浄を行わず同様の懸濁重合を20回繰り返すことを試みたが、3回目から懸濁重合反応が安定せず、その後の製造を行うことが不可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の製造方法により、透明部材材料、光学補償材料等への展開が期待されるフマル酸ジエステル系重合体を効率よく、安定的に製造することが可能となり、その産業的価値は極めて高いものである。