(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同画像形成装置の機構部の正面説明図、
図2は同機構部の搬送部分の正面説明図、
図3は印刷媒体の説明に供する要部正面説明図である。
【0014】
この画像形成装置は、装置本体100内に、給紙装置となる給紙部101と、画像形成手段である画像形成部102と、搬送手段である搬送部103と、排紙搬送手段である排紙搬送部104と、印刷媒体2の搬送時及び引き戻し時に印刷媒体2を案内するガイド手段106とが配置されている。
【0015】
給紙部101には、印刷媒体2をロール状に巻き回したロール体4が装填される。
【0016】
ここで、印刷媒体2は、
図3に示すように、画像を形成可能な媒体(以下、「印刷面」ともいう。)2aの一面に粘着層(以下、「粘着面」という。)2bを形成した連続体であり、粘着面2bに台紙(剥離紙、セパレータ)を貼り付けていない状態でロール状にしたライナーレスラベル紙である。
【0017】
ロール体4はスプール5に嵌め込まれ、スプール5は両端部をロールホルダ部材6に配置した第1ないし第3の回転体である第1のコロ111、第2のコロ112、第3のコロ113の三点で回転可能に保持されている。
【0018】
なお、本件発明において、「スプール」とは芯部材と別体に設けられ、芯部材に嵌め込んで用いられる部材に限られず、ロールホルダ部材6,6で保持される部位であれば、ロール体4の芯部材と一体に形成されたものでもよい。また、ロール体4の芯部材を直接保持する場合は、このような芯部材も「スプール」に含まれる。
【0019】
ここで、第1のコロ111はスプール5の両端部を嵌め込むスプール受け部材7に、第2のコロ112はスプール受け部材7に開閉可能に設けた開閉部材8に、第3のコロ113はコロホルダ115にそれぞれ回転可能に保持されている。なお、コロホルダ115は軸114で回転可能に保持されて、スプリング116で第3のコロ113をスプール5側に加圧する方向に勢いを付けられている。
【0020】
画像形成部102は、印刷媒体2に液滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド11を搭載したキャリッジ12を備えている。キャリッジ12は、主ガイド部材13及び従ガイド部材14に移動可能に保持されて、印刷媒体2の搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復移動される。
【0021】
ここでは、記録ヘッド11に2つのノズル列を有する液体吐出ヘッドを使用し、2つの記録ヘッド11を使用して、4列のノズル列でそれぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインク液滴を吐出するようにしている。ただし、これに限るものではなく、またライン型ヘッドを使用することもできる。
【0022】
また、記録ヘッド11に対するインク供給は、装置本体1に対して交換可能に装着されるインクカートリッジ15から供給チューブ16を介して所要の色のインクをキャリッジ12に搭載した図示しないヘッドタンクに供給し、ヘッドタンクから記録ヘッド11にインクを供給する方式としている。
【0023】
また、記録ヘッド11の性能を維持回復するためのメンテナンス動作などで生じるインクの廃液は、装置本体1に対して交換可能に装着される廃液タンク17に排出されて収容される。
【0024】
なお、画像形成部102は、液体吐出ヘッドの形態に限らず、接触および非接触で画像を形成する各種画像形成手段を用いることができる。
【0025】
搬送部103は、記録ヘッド11の下方に、無端状の搬送ベルトである保護ベルト21が配置されている。保護ベルト21は、搬送ローラ22とテンションが付与された従動ローラ23とに周回移動可能に掛け回されている。
【0026】
このとき、保護ベルト21は粘着面2bに対し粘着性を持たないことが好ましいが、搬送時に保護ベルト21から印刷媒体2が浮いてしまうことを防止するために粘着面2bに対し再剥離可能な程度の弱い被粘着性を有していてもよい。保護ベルト21を粘着面2bにあてがうことで粘着面2bを保護し、同時に粘着面2bが装置内に接触することが防止されることで搬送安定性が得られるとともに、保護ベルト21が粘着面2bから剥離可能であることから、印刷媒体2のみを排紙することが可能になる。
【0027】
つまり、本実施形態では、保護ベルト21は搬送ベルトであるとともに、印刷媒体2の粘着面2bを保護する機能を併せ持っている。
【0028】
搬送ローラ22に対向して対向ローラ24が配置されている。これらの搬送ローラ22と対向ローラ24とからなる搬送ローラ対(回転体対)によって、印刷媒体2と保護ベルト21とを一緒に挟み込んで、記録ヘッド11による画像形成領域に搬送する搬送手段を構成している。
【0029】
また、保護ベルト21には多数の吸引孔が形成されている。そして、保護ベルト21の内側には、画像形成部102の記録ヘッド11に対向して、吸引孔を介して印刷媒体2を保護ベルト21の表面に向けて吸引する吸引ファン27が配置されている。
【0030】
なお、ここでは、吸引によって保護ベルト21に印刷媒体2を吸着する構成としているが、これに限らず、静電力で吸着することもできる。また印刷媒体2の粘着面2bの粘着性を利用して保護ベルト21から浮かないように固定してもよい。
【0031】
また、従動ローラ23側には、拍車コロ群28a,28b、28cが配置されている。なお、拍車コロ群28a〜28cは、それぞれが搬送方向と直交する方向に複数の拍車コロが配置されて構成されている。上流側の拍車コロ群28a、28bは保護ベルト21に対向し、最下流側の拍車コロ群28cは排紙搬送部104の受け部材30に対向する。
【0032】
排紙搬送部104は、保護ベルト21と拍車コロ群28bとの間から送り出された印刷媒体を案内する受け部材30の搬送方向下流側に、印刷媒体2を所望の長さに切断して印刷媒体片(ラベル片)200とする切断手段であるカッタユニット31が配置されている。
【0033】
カッタユニット31は、印刷媒体2を受ける受け部材30の下流側端面で形成される下刃と、下刃との間で印刷媒体2を切断する切断刃(上刃:カッタ)313とを有し、カッタ313が搬送方向と直交する方向に移動することで印刷媒体2を切断する。
【0034】
そして、カッタユニット31の下流側には、排紙ローラ32が配置されている。排紙ローラ32に対向して拍車コロ33が配置されている。これらの排紙ローラ32と拍車コロ33によって、カッタユニット31で切断された状態のラベル片200の先端を装置本体1の排出口105に送り出した状態で保持する。
【0035】
ここで、排紙ローラ32のラベル片200を保持する表面は、例えば非粘着性処理(粘着面が付着しない処理)を施して、ラベル片200の粘着面2bを剥離可能としている。この場合、排紙ローラ32自体を剥離可能な材質で形成することもできる。
【0036】
また、印刷媒体2の有無を検知する用紙センサ34が配置されている。用紙センサ34はフォトセンサやメカニカルなレバーとフォトセンサの組合せなどで構成することができる。
【0037】
ガイド手段106は、搬送部103を構成している第1ローラを兼ねる対向ローラ24の下流側で、画像形成部102の上流側に配置された分離ローラとなる第2ローラ42と、対向ローラ24を挟んで第2ローラ41と反対側に配置された第3ローラ43とを有し、これらの対向ローラ24、第2ローラ42及び第3ローラ43との間に無端状のガイドベルト44を掛け回している。
【0038】
ここで、ガイドベルト44は、例えば、ポリイミドを基材とし、表層に印刷媒体2の粘着面2bとの離型性を良好にする離型層(例えばシリコーンコーティング)を有するベルト状部材である。
【0039】
そして、これらの対向ローラ24、第2ローラ42及び第3ローラ43は、ホルダ部材45に回転可能に保持されている。ホルダ部材45は軸46を回転中心として回転可能に配置され、対向ローラ24が搬送ローラ22に対向する位置と、対向ローラ24が搬送ローラ22から離間して対向ローラ24と搬送ローラ22との間を開放する位置との間で変位可能としている。
【0040】
なお、ロール体4を装填して印刷媒体2を保護ベルト21上にセットするときには対向ローラ24と搬送ローラ22との間を開放し、印刷媒体2を搬送するときには対向ローラ24を搬送ローラ22側に押し付ける。そのため、対向ローラ24はばねなどの加圧手段によって搬送ローラ22側に加圧されている。また、第2ローラ42もばねなどの加圧手段によって保護ベルト21側に加圧されている。
【0041】
本実施形態では、上述したように、印刷媒体2の粘着面2bを保護ベルト21側にして画像形成を行う構成で説明しているが、印刷媒体2の粘着面2bに画像形成を行う構成とすることもできる。この場合には、前述したガイドベルト44の表面に非粘着性処理(粘着面が付着しない処理)を施すことが好ましい。
【0042】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部101に装填されたロール体4から引き出された印刷媒体2と保護ベルト21とを、搬送ローラ22と対向ローラ24との間に一緒に挟み込む。
【0043】
そして、搬送ローラ22を回転駆動することによって、印刷媒体2の粘着面2bが保護ベルト21で保護された状態で搬送され、画像形成部102の記録ヘッド11によって所望の画像が形成される。
【0044】
画像が形成された印刷媒体2から保護ベルト21が剥離されて、印刷媒体2のみが排紙搬送部104に送られ、カッタユニット31によって所要の位置で切断されてラベル片200となり、排紙ローラ32と拍車コロ33との間で、装置本体1の排出口105から抜き取り可能な状態で保持される。
【0045】
また、ガイド手段106は、特に、印刷媒体2の粘着面2b側に画像を形成する場合に、搬送時及び引き戻し時に対向ローラ24に印刷媒体2が巻き込まれることを防止する。
【0046】
つまり、対向ローラ24の表面に非粘着性処理をしたとしても、対向ローラ24の曲率が小さいために、対向ローラ24だけでは印刷媒体2の粘着面2bが対向ローラ24の周面に貼り付いて巻き込まれる可能性がある。この場合、対向ローラ24の曲率を大きくすれば良いのであるが、そうすると対向ローラ24と搬送ローラ22とのニップ領域の面積が小さくなって安定した搬送力を得ることができなくなる。
【0047】
そこで、搬送時には、ガイドベルト44で印刷媒体2を押えながら搬送させ、ガイドベルト44を曲率の小さな分離ローラとなる第2ローラ42によって印刷媒体2から確実に分離することで、搬送時の対向ローラ24への巻き込みを防止している。
【0048】
また、印刷媒体2を引き戻すときにも、印刷媒体2の粘着面2b側をガイドベルト44で受けて印刷媒体2が対向ローラ24に巻き込まれることを防止している。
【0049】
画像形成が終了し、カッタユニット31によって印刷媒体2を切断した段階では、印刷媒体2の先端はカッタユニット31の位置にあり、印刷媒体2の画像形成部102に対向している領域は未使用領域となる。このまま、次の画像形成動作を再開すると、印刷媒体2の未使用領域は無駄になる。そこで、印刷媒体2の先端が画像形成部102の手前(上流側)になる位置まで印刷媒体2を引き戻し方向(搬送方向と逆方向)に引き戻すようにしている。
【0050】
次に、ロール体の巻き方について
図4を参照して説明する。
図4は同説明に供する模式的説明図である。
【0051】
図4(a)に示すロール体4Aは、印刷面2aが表側になるように巻いた表巻きのロール体である。
図4(b)に示すロール体4Bは、粘着面2bが表側になるように巻いた裏巻きのロール体である。
【0052】
次に、ロール体の搬送時と巻き戻し時の回転方向について
図5を参照して説明する。
図5は同説明に供する模式的説明図である。なお、
図5では搬送ローラのみ図示し、保護ベルトや対向ローラは図示を省略する。
【0053】
ここでは、後述するように一方向クラッチを介して搬送ローラ22の回転をスプール5に伝達し、一方向クラッチは、搬送ローラ22が印刷媒体2を搬送する方向に回転するときにはスプール5へ回転を伝達せず、搬送ローラ22が印刷媒体2を巻き戻す方向に回転するときにはスプール5へ回転を伝達するものとする。
【0054】
したがって、例えば上述したように印刷面2aに画像を形成する場合、ロール体4から引き出した印刷媒体2を搬送ローラ22で搬送するとき、
図5(a)に示すように、表巻きのロール体4Aの回転方向は、搬送ローラ22の回転方向Aと同じ回転方向Aになる。
【0055】
これに対し、
図5(b)に示すように、裏巻きのロール体4Bは、搬送ローラ22の回転方向Aと逆の方向の回転方向Bになる。
【0056】
そのため、ロール体4に印刷媒体2を巻き戻すとき、
図5(a)に示すように、表巻きのロール体4Aは、スプール5を搬送ローラ22と同じ回転方向Bに回転させることで、搬送ローラ22とスプール5の回転速度に速度差を持たせれば、巻き戻す印刷媒体2にテンション(バックテンション)を付与することができる。
【0057】
これに対し、
図5(b)に示すように、裏巻きのロール体4Bは、スプール5を搬送ローラ22と同じ回転方向Bに回転させると、巻き戻される印刷媒体2に弛みが発生して、粘着面2b同士が付着したり、粘着面2bが他の部材に付着するなどして、巻き戻しができなくなるおそれがある。
【0058】
この場合、搬送ローラ22とスプール5とを別の駆動源で駆動するのであれば、ロール体4が表巻き及び裏巻きのいずれの場合も適切な回転方向に回転させることができる。しかしながら、巻き戻しのためにスプール5に別駆動源を使用し、回転方向の駆動制御を行うのでは、構成が複雑になるという不都合が生じることなる。
【0059】
そこで、本発明では搬送ローラ22とスプール5とを単一駆動源で駆動しつつスプール5の回転方向を切替えられるようにすることで、いずれの場合でも適切なバックテンションを付与しつつ印刷媒体の巻き戻しを行えるようにしている。
【0060】
まず、本発明の第1実施形態について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は同実施形態の説明に供する駆動源からスプールまでの駆動伝達系の概要を説明する模式的説明図、
図7は搬送ローラからスプールまでの駆動力伝達手段の説明図である。なお、
図7(a)は第1伝達経路を構成した状態を、
図7(b)は第2伝達経路を構成した状態を示している。
【0061】
搬送ローラ22は、駆動源である駆動モータ201によって回転駆動される。そして、搬送ローラ22が印刷媒体2を巻き戻す方向に回転するときの駆動力を、一方向クラッチ202を介して駆動力伝達手段203に伝達して、駆動力伝達手段203を介してロール体4を嵌め込んだスプール5を回転させる。
【0062】
ここで、駆動力伝達手段203は、印刷媒体2をロール体4に巻き戻すとき、ロール体4の周速VAと搬送ローラ22の周速VBとが、VA≧VBとなる速度差を有する減速比設定として、ロール体4と搬送ローラ22との間でバックテンションを与えるようにしている。
【0063】
この駆動力伝達手段203は、搬送ローラ22の軸22aに一方向クラッチ202を介して取付けられたギヤ211と、ギヤ211に噛み合うギヤ212、213とを有する。ここで、ギヤ212とギヤ213とは、搬送ローラ22の軸22aを回転中心として矢印C方向に変位可能に配置されている。
【0064】
そして、ギヤ212に噛み合い可能に配置されたギヤ214と、ギヤ213と噛み合い可能に配置され、ギヤ214と噛み合うギヤ215と、ギヤ214に噛み合うギヤ216とを有し、ギヤ216をスプール5に設けたギヤ217に噛み合わせている。
【0065】
なお、ここでは、駆動力伝達手段203をギヤ列で構成した例で説明しているが、例えばタイミングベルトなどを介在させることもでき、ギヤ列に限るものではない。
【0066】
このように構成した駆動力伝達手段203においては、
図7(a)に示すように、ギヤ212、213を切替えて、ギヤ212をギヤ214に噛み合わせることで,クラッチ202のギヤ211からギヤ212、214、216を経てスプール5のギヤ217に至る第1伝達経路231が構成される。
【0067】
一方、
図7(b)に示すように、ギヤ212、213を切替えて、ギヤ213をギヤ215に噛み合わせることで,クラッチ202のギヤ211からギヤ213、215、214、216を経てスプール5のギヤ217に至る第2伝達経路232が構成される。
【0068】
ここで、搬送ローラ22によって印刷媒体2を搬送するときの搬送ローラ22の回転方向とスプール5の回転方向が同じであるとき、つまり、前述した
図5(a)に示すように、搬送時の搬送ローラ22及びスプール5の回転方向が回転方向Aで同じであるときには、ロール体4は表巻きのロール体4Aであるので、巻き戻し時には、前記第1伝達経路231に切り替える。
【0069】
これによって、搬送ローラ22及びスプール5はいずれも回転方向Bに回転して、ロール体4の周速度と搬送ローラ22の周速度との間に速度差を持たせることで、巻き戻す印刷媒体2に対してバックテンションを付与することができ、印刷媒体2の弛みを防止できる。
【0070】
これに対し、搬送ローラ22によって印刷媒体2を搬送するときの搬送ローラ22の回転方向とスプール5の回転方向が逆であるとき、つまり、前述した
図5(b)に示すように、搬送時の搬送ローラ22の回転方向が回転方向Aで、スプール5の回転方向が回転方向Bで同じであるときには、ロール体4は裏巻きのロール体4Bであるので、巻き戻し時には、前記第2伝達経路232に切り替える。
【0071】
これによって、搬送ローラ22は回転方向Bに回転し、スプール5は回転方向Aに回転して、ロール体4の周速度と搬送ローラ22の周速度との間に速度差を持たせることで、巻き戻す印刷媒体2に対してバックテンションを付与することができ、印刷媒体2の弛みを防止できる。
【0072】
なお、粘着面に画像形成を行うときには、印刷面に画像を形成するときとロール体4のセットの仕方が逆になり、表巻きのロール体4Aを使用する場合には
図5(b)のような引き出し方向で、裏巻きのロール体4Bを使用する場合には、
図5(a)のような引き出し方向でセットすることになる。したがって、第1伝達経路231と第2伝達経路232の切替えも表巻きの場合と裏巻きの場合との切替えが上記実施形態とは逆になる。
【0073】
このように、搬送回転体と同じ方向にスプールを回転させる第1伝達経路と、搬送回転体と逆方向にスプールを回転させる第2伝達経路と、を有し、搬送手段で印刷媒体を搬送するときの搬送回転体の回転方向とスプールの回転方向が同じであるときには第1伝達経路に切替え、搬送手段で印刷媒体を搬送するときの搬送回転体の回転方向とスプールの回転方向が逆であるときには第2伝達経路に切替えることが可能である構成とすることで、ロール体の巻き方に関わらず巻き戻し時のバックテンションを付与でき、特にライナーレスラベル紙のように粘着面が露出しているロール状印刷媒体を使用する場合でも巻き戻し時の粘着面同士の付着や他の部材への粘着面の付着を防止して、安定した巻き戻しを行うことができる。
【0074】
次に、本発明の第2実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【0075】
本実施形態は、上記第1実施形態におけるギヤ212、213の切替動作をユーザーが手動で行えるようにしたものである。
【0076】
つまり、搬送ローラ22の軸22aに回転可能に設けられたレバー部材240を有している。このレバー部材240にはギヤ保持部241が設けられ、ギヤ保持部241の両端部でギヤ212の軸212a及びギヤ213の軸213aをそれぞれ回転可能に保持している。
【0077】
そこで、レバー部材240を回転操作することにより、
図8(a)に示すように、ギヤ212をギヤ214に噛み合わせて第1伝達経路231に切替え、この状態からレバー部材240を矢印D方向に回転させることで、
図8(b)に示すようにギヤ213をギヤ215に噛み合わせて第2伝達経路232に切替えることができる。
【0078】
次に、本発明の第3実施形態について
図9を参照して説明する。
図9は同実施形態の説明に供する模式的説明図である。
【0079】
本実施形態では、印刷媒体搬送時のスプール5の回転方向を検知する回転方向検知手段としてのロータリエンコーダ251を設けている。ロータリエンコーダ251は、スプール5に設けたエンコーダホイール251aと、エンコーダホイール251aのスリットを読取るエンコーダセンサ251bで構成される。
【0080】
このように構成したので、搬送ローラ22を回転駆動して印刷媒体2を搬送するとき、ロータリエンコーダ251の検出結果からスプール5の回転方向を検出することができる。つまり、搬送ローラ22の回転方向とスプール5の回転方向が同じであるか逆であるかを検知することができる。なお、搬送時の搬送ローラ22の回転方向は予め定まっており、また、搬送ローラ22にも媒体送り制御を行うためのロータリエンコーダが備えられるので、当該ロータリエンコーダの検知結果から回転方向を得ることもできる。
【0081】
これにより、例えば、装填されているロール体4が表巻きのロール体4Aであるか、裏巻きのロール体4Bであるかを判別することができるので、例えば前記第2実施形態のレバー部材240を作動させるアクチュエータを備えて、判別結果に応じて、第1伝達経路231と第2伝達経路232を切替えて巻き戻し動作を行うようにすることができる。
【0082】
なお、ここでは、スプール5に回転方向検知手段としてのロータリエンコーダ251を備えているが、搬送ローラ22の搬送方向への回転に伴い回転する他の部分に設けることもできる。
【0083】
次に、本発明の第4実施形態について
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は同実施形態の説明に供する模式的説明図、
図11は同じく回転検知手段の配置の説明に供する説明図である。
【0084】
本実施形態では、スプール5の回転に伴い回転する回転部材252を設け、この回転部材252に前述した回転方向検知手段としてのロータリエンコーダ251を設けている。
【0085】
具体的には、
図11に示すように、スプール5とともに回転するロール体4の軸方向両端部を押えるフランジ部材9に従動して回転する回転部材252を設けて、この回転部材252の回転をロータリエンコーダ251で検知している。
【0086】
このように構成したので、上記第3実施形態と同様に、搬送ローラ22を回転駆動して印刷媒体2を搬送するとき、ロータリエンコーダ251の検出結果からスプール5の回転方向を検出することができる。
【0087】
そして、この場合には、回転部材252及びロータリエンコーダ251は、装置本体100側に配置することができる。これにより、ロール体4の交換に伴って取り外されるスプール5にエンコーダを設ける場合よりもエンコーダの損傷を防止できる。
【0088】
次に、上述した回転方向検知手段を備える実施形態における伝達経路切替制御の一例について
図12及び
図13のフロー図を参照して説明する。
【0089】
図12を参照して、搬送ローラ22をCW方向(前述した回転方向A)に回転して印刷媒体2を搬送する。そして、ロータリエンコーダ251の検知結果からロール体4(
図12及び
図13ではロール紙と表記)の回転方向を判別する。
【0090】
このとき、ロール体4の回転方向がCW方向であれば、表巻きのロール体4Aであると判別し、
図12の以下の処理に移行する。また、ロール体4の回転方向がCCW方向(前述した回転方向B)であれば、裏巻きのロール体4Bであると判別し、
図13の処理に移行する。
【0091】
ここで、装置本体1にロール体4の巻き戻し方向を自動で切替え可能とする手段を備えている場合には、判別したロール体4の巻き方向に応じてロール紙巻き戻し方向を設定する。
【0092】
具体的には、ロール体4の回転方向がCW方向であれば(表巻きと判別したときには)、
図12に示すように、ロール紙巻き戻し方向をCCW方向に設定する。また、ロール体4の回転方向がCCW方向であれば(裏巻きと判別したときには)、
図13に示すように、ロール紙巻き戻し方向をCW方向に設定する。この際に、設定すべき方向と初期に設定された方向が異なる場合には、ロール紙巻き戻し方向の切替えを自動にて行う。
【0093】
また、巻き戻し方向の切替えを手動操作で行う場合には、以下の制御を行う。
【0094】
まず、セットされているロール体4が表巻きのロール体4Aであるときには、
図12に示すように、搬送ローラ22をCCW方向に回転するように駆動モータ201を駆動してロール体4への印刷媒体2の巻き戻しを行い、ロータリエンコーダ251の検知結果からロール体4の回転方向を判別する。ここでの巻き戻しは回転方向が判別できればよいため、回転量はわずかでよい。
【0095】
このとき、ロール体4の回転方向がCCW方向であれば、駆動切替え状態(伝達経路の選択)が正しいと判断して、印刷準備を完了する。
【0096】
これに対し、ロール体4の回転方向がCW方向であれば、駆動切替え状態(伝達経路の選択)が誤っていると判断し、アラーム表示を出してユーザーに巻き戻し方向の切替えが必要である旨を通知する。
【0097】
一方、セットされているロール体4が裏巻きのロール体4Bであるときには、
図13に示すように、搬送ローラ22をCCW方向に回転するように駆動モータ201を駆動してロール体4への印刷媒体2の巻き戻しを行い、ロータリエンコーダ251の検知結果からロール体4の回転方向を判別する。ここでの巻き戻しは回転方向が判別できればよいため、回転量はわずかでよい。
【0098】
このとき、ロール体4の回転方向がCW方向であれば、駆動切替え状態(伝達経路の選択)が正しいと判断して、印刷準備を完了する。
【0099】
これに対し、ロール体4の回転方向がCCW方向であれば、駆動切替え状態(伝達経路の選択)が誤っていると判断し、アラーム表示を出してユーザーに巻き戻し方向の切替えが必要である旨を通知する。
【0100】
なお、上記の処理においては、手動操作で切替えられた巻き戻し方向が不明であり、実際にロール体4の巻き戻し動作を行うことで切替えられた方向を特定しているが、例えば
図8のレバー部材240に設けられたセンサ等によって、手動操作で切替えられた巻き戻し方向の情報を装置内で保持している場合には、ロール体4の巻き戻し動作を行わずに、判別された巻き方向の情報と、装置内に保持している巻き戻し方向の情報とを比較して、印刷準備の完了かアラーム表示かを判断してもよい。
【0101】
以上のようにアラームを表示して、ユーザーが巻き戻し方向を切替えた後は、そのまま印刷ジョブを開始してもよいし、切替えができたことを確実に確認するために、再度
図12及び
図13の処理を繰り返してもよい。
【0102】
以上各実施形態における巻き戻し時におけるロール体の巻き方と回転方向の関係について
図14を参照してまとめて説明する。
【0103】
図14(a)は表巻きロール体4Aを使用した場合であり、搬送ローラ22の巻き戻し方向であるCCW方向に対して、ロール体4AもCCW方向に回転させるように駆動力の伝達経路を切替えることで、バックテンションを付与しながらロール体4に印刷媒体2を巻き戻すことができる。
【0104】
図14(b)は裏巻きロール体4Bを使用した場合であり、搬送ローラ22の巻き戻し方向であるCCW方向に対して、ロール体4BはCW方向に回転させるように駆動力の伝達経路を切替えることで、バックテンションを付与しながらロール体4に印刷媒体2を巻き戻すことができる。
【0105】
また、以上の各実施形態では、剥離紙なしのライナーレスラベル紙で説明しているが、粘着面に剥離紙を設けたロール状印刷媒体や、粘着面を有しないロール紙などを使用する場合にも、本発明は同様に適用することができる。
【0106】
なお、本願における「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0107】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。
【0108】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。