(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理体の周辺部の下面を保持する複数の保持ピン部を有し、且つ旋回及び上下動可能になされた載置台に対して接近及び離間が可能になされて先端に被処理体の存否を検出する検出部を設けたピック部を有する搬送機構の位置決め方法において、
前記検出部によって前記保持ピン部の上端エッジを検出して前記ピック部の高さ基準位置を決定する高さ方向決定工程と、
前記保持ピン部を通る前記載置台の半径方向と前記ピック部の前進方向とのずれ角度を求めて前記ピック部の前進角度を修正する前進角度決定工程と、
前記保持ピン部を通る前記載置台の半径方向と前記ピック部の前進方向とのずれ水平距離を求めて前記ピック部の前進起点位置を修正する前進起点位置決定工程と、
前記保持ピン部の座標から前記ピック部の前進基準量を求める前進量決定工程と、
を有することを特徴とする搬送機構の位置決め方法。
被処理体の周辺部の下面を保持する複数の保持ピン部と該複数の保持ピン部の内周側に配置された複数の中間ピン部とを有し、且つ旋回及び上下動可能になされた載置台に対して接近及び離間が可能になされて先端に被処理体の存否を検出する検出部を設けたピック部を有する搬送機構の位置決め方法において、
前記検出部によって前記保持ピン部の上端エッジを検出して前記ピック部の高さ基準位置を決定する高さ方向決定工程と、
前記ピック部の回転中心を起点とする前記保持ピン部の座標である第1の座標を求める第1の座標決定工程と、
前記ピック部の回転中心を起点とする前記中間ピン部の座標である第2の座標を求める第2の座標決定工程と、
前記第1及び第2の座標に基づいて前記載置台の回転中心の座標である第3の座標を求める第3の座標決定工程と、
前記第1、第2及び第3の座標に基づいて前記ピック部の前進角度と前進起点位置と前進基準量とを求める最終工程と、
を有することを特徴とする搬送機構の位置決め方法。
前記搬送機構は搬送室に設けられており、前記載置台は被処理体に対して所定の処理を施す処理室内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の搬送機構の位置決め方法。
前記保持ピン部は、前記載置台の回転中心を中心としてその周方向に等間隔で3箇所設けられており、前記測定工程では、各保持ピン部における前記位置関係を求めるために前記載置台を120度ずつ回転させることを特徴とする請求項11又は12記載の被処理体の位置ずれ量算出方法。
前記位置関係は、前記被処理体のエッジと前記上端突起の外周端との間の距離であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の被処理体の位置ずれ量算出方法。
前記位置関係は、前記被処理体のエッジと前記上端突起の内周端との間の距離であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の被処理体の位置ずれ量算出方法。
前記測定工程では、最初に前記検出部により前記被処理体の高さレベルの位置を求めることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の被処理体の位置ずれ量算出方法。
前記測定工程では、前記検出部が設けられた前記ピック部を、前記被処理体と同じ高さレベルに沿って前進させることにより前記位置関係を求めることを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の被処理体の位置ずれ量算出方法。
前記測定工程では、前記検出部が設けられた前記ピック部を、所定のピッチの前進移動又は後退移動と垂直方向への移動とを交互に繰り返すことにより前記位置関係を求めることを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の被処理体の位置ずれ量算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る搬送機構の位置決め方法、被処理体の位置ずれ量算出方法及び搬送機構のティーチングデータの修正方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の搬送機構の位置決め方法を実施する処理システムの一例を示す全体構成図、
図2は搬送機構のピック部を示す拡大平面図、
図3は処理室の内部と載置台の一例を示す概略図である。まず処理システムの全体構成について説明する。
【0028】
まず、
図1に示すように、この処理システム2は、複数、例えば3つの熱処理を行う第1〜第3の処理室4A、4B、4Cと、矩形の大気圧雰囲気の大気搬送室6と、被処理体であるシリコン基板等よりなる半導体ウエハWを搬送するための搬送機構8とを主に有している。
【0029】
上記3つの処理室4A〜4Cは、共通に且つ同様に形成されており、ここでは処理室4Aを例にとって説明する。尚、各処理室4A〜4Cが互いに異なる処理を行ってもよい。この処理室4Aの外殻を形成する処理容器12(
図3参照)内には、半導体ウエハWを保持するための載置台14が設けられている。この載置台14は、
図3にも示すように容器底部より起立した回転支持軸16に支持された、複数本、図示例では3本の保持アーム18を有している。この保持アーム18は、その周方向に沿って120度の等間隔で配置されている。
【0030】
各保持アーム18には、その先端にウエハWの周辺部の下面を保持する保持ピン部20が設けられ、その内周側、すなわち保持アーム18の半径方向の途中には中間ピン部22が設けられており、ウエハWの下面と接触してこれを保持するようになっている。ここで上記保持ピン部20は、
図3(C)にも示すように、外周端に上端突起24を有する段部状に形成されており、この段部のところにウエハWの周辺部を載置して保持するようになっている。また、保持ピン部20と中間ピン部22とは、載置台14の半径方向の直線上に精度良く一致するように配置されている。
【0031】
この保持ピン部20の全体の高さHは14mm程度であり、上端突起24の半径方向の長さL1は4mm程度であり、保持ピン部20の半径方向の長さL2は10mm程度である。またウエハWの厚さは0.7mm程度である。尚、この保持ピン部20の形状及び寸法は単に一例を示したに過ぎず、これに限定されない。
【0032】
そして、上記回転支持軸16は、回転可能になされると共に、上下方向(Z軸方向)へも移動可能になされており、回転角度及び上下方向への移動量は制御可能になっている。また、処理容器12の側壁には、N
2 等の不活性ガスを供給するガス供給手段26が設けられ、底部には容器内の雰囲気を排気する排気系28が設けられている。また処理容器12の天井部には、石英等よりなる天井板30が設けられ、この天井板30の外側には、平面アンテナ32を含むマイクロ波導入手段34が設けられている。そして、マイクロ波導入手段34から処理容器12内へ導入したマイクロ波によりウエハWに対して熱処理を施すようになっている。
【0033】
この熱処理としては、アニール処理、酸化拡散処理、改質処理等を行うようになっている。また、この熱処理は、大気圧雰囲気或いはこれより少し低い減圧雰囲気でなされるが、このプロセス圧力は特に限定されない。また各処理室4A〜4Cでそれぞれ異なる処理を行うようにしてもよい。
【0034】
そして、大気搬送室6は矩形の箱状になされており、長辺の一方の側壁には、3つのゲート開口36が形成されると共に、このゲート開口36に上記3つの処理室4A〜4Cがそれぞれ開閉可能になされたゲートバルブGを介して横並びで接合されている。これにより、このゲート開口36を介して大気搬送室6と各処理室4A〜4Cとの間でウエハWの搬出入ができるようになっている。
【0035】
また、上記大気搬送室6の長辺の他方の側壁には、複数、ここでは3つの搬出入口38が形成されると共に、この搬出入口38にそれぞれ開閉可能になされた開閉ドア40がスライド可能に設けられている。そして、この各搬出入口38に対応させてその外側には導入ポート42がそれぞれ設けられ、この導入ポート42にそれぞれ1つずつ収納容器44を載置できるようになっている。
【0036】
この収納容器44内には、図示しない保持棚が高さ方向に複数段に亘って設けられており、この保持棚にウエハWの周辺部の下面を当接させてウエハWを複数枚、例えば25枚保持できるようになっている。
【0037】
上記大気搬送室6内は、清浄空気やN
2 等の不活性ガスよりなるダウンフローが形成されている。
【0038】
また、この大気搬送室6内の短辺の一方の端には、処理後のウエハWを冷却するクーリング機構48が設けられている。そして、この大気搬送室6内の中央部には、ウエハWを搬送するための上記搬送機構8が設けられている。この搬送機構8は、ここでは個別独立して操作できる2つのピック部を有しており、搬送機構8の全体は、屈伸及び旋回可能になされている。
【0039】
具体的には、この搬送機構8は、第1アーム50及び第2アーム52を順次直列的に互いに旋回可能に連結して設けられており、この第2アーム52の先端部に、2つのピック部54、56を同軸状に個別に旋回可能に設けている。また、第1アーム50の基端部は、Z軸機構の回転軸58に取り付け固定されている。この回転軸58は2軸状態になっている。
【0040】
そして、この回転軸58を正逆方向へ回転させることにより、この搬送機構8の方向付けと屈伸(前進後退)と各ピック部54、56の個別旋回とを行うようになっている。これにより、水平面内(X軸方向とY軸方向)を移動できることになる。また、この回転軸58は、上下方向(Z軸方向)へ昇降できるようになっており、搬送機構8の全体の高さレベルを変化させることができるようになっている。この搬送機構8により、上記導入ポート42の収納容器44、オリエンタ46、各処理室4A〜4C及びクーリング機構48との間でウエハWを搬送できるようになっている。
【0041】
また上記2つのピック部54、56は、例えばアルミニウム合金板により2股状に形成されている。そして、一方のピック部54の上面の先端側に2つの段部状の載置パッド60(
図2参照)を設け、基端側に2つの平板状の載置パッド62を設けている。そして、
図2にも示すように、この載置パッド60、62上にウエハWの周辺部の裏面を当接させて保持するようになっている。上記載置パッド60、62を設けていないピック部56は高温用のピック部となっている。尚、図示例では1つのピック部に4つの載置パッドを設けたが、この数量及び形状は特に限定されない。
【0042】
また、この一方のピック部54には、前進及び後退が可能になされたプッシャーアーム(図示せず)が設けられており、ウエハWを上記段部状の載置パッド60との間で挟んで搬送時の脱落を防止するようになっている。また、上記2つのピック部54、56の内のいずれか一方のピック部、ここではピック部54の先端部には、上記収納容器44内の複数の保持棚に半導体ウエハWが保持されているか否かを検出する検出部、例えばマッピングセンサ部64が設けられている。以下、「検出部」を「マッピングセンサ部」とも称す。このマッピングセンサ部64は、2股状のピック部54の一方の先端部に設けた発光素子64Aと他方の先端部に設けた受光素子64Bとを有している。
【0043】
そして、半導体ウエハWとピック部54とが干渉しないで且つ半導体ウエハWの周辺部が上記発光素子64Aから受光素子64Bに至る光路上に位置するポジションにおいて、このピック部54を上下方向(Z軸方向)へ移動させることによって、上記光路が遮断されたか否かを検出することでウエハWの存否を検出してその情報、すなわちマッピング情報を得ると共にその時の高さ位置を検出できるようになっている。
【0044】
図1へ戻って、この処理システム2はシステム全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなるシステム制御部66を有している。そして、この処理システム全体の動作制御に必要なプログラムはフレキシブルディスクやCD(Compact Disc)やハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体68に記憶されている。具体的には、このシステム制御部66からの指令により、各ガスの供給の開始、停止や流量制御、プロセス温度(半導体ウエハ温度)及びプロセス圧力(処理室内の圧力)の制御、各ゲートバルブGの開閉、各処理室4A〜4Cの各載置台14の駆動制御、搬送機構8の制御による半導体ウエハの搬送作業等が行われる。
【0045】
また上記システム制御部66は、以下に説明するティーチング操作を予め作成されたティーチング用の移動プログラムに基づいて実行する。すなわち、この移動プログラムに基づいてピック部54、56、各載置台4等をミリ単位以下の移動精度で回転方向、水平方向及び上下方向へ自動的に移動制御することになる。具体的には、搬送機構8、載置台14(保持ピン部20)、クーリング機構48等の構造体(ユニット)が、処理システム2の設計上の位置(座標)に組み込まれ、またそれぞれの構造体が設計上の初期状態(原点)とする。また、搬送機構8がそれぞれの初期状態の構造体(の位置)へ安全距離を見込んで移動するための移動プログラムを予め作成しておく。この移動プログラムを実行することにより、ピック部54、即ちマッピグセンサ部64が初期状態の構造体の位置に移動して構造体を検出するようになっている。そして、この時、1回目の検出が終了したら、自動で1回目の位置とは異なる検出位置にピック部54が移動し、2回目以降の検出を実行するようになっている。この際,各検出位置(決定された基準位置)等は移動プログラムに順次反映されて行く。
【0046】
<処理システムの説明>
まず、本発明の位置決め方法(ティーチング方法)を説明する前に、この処理システムの動作について説明する。まず、導入ポート42に設置された収納容器44の開閉蓋(図示せず)は、開閉ドア40を開くときに取り外され、この収納容器44からは、未処理の例えばシリコン基板よりなる半導体ウエハWが搬送機構8の一方のピック部54を用いて大気搬送室6内に取り込まれる。
【0047】
取り込まれたこの半導体ウエハWは、上記ピック部54により取り上げられ、第1〜第3の処理室4A〜4Cの内のいずれか1つの処理室内へ搬入される。この処理室内では、ゲートバルブGを閉じて処理室内を密閉した後に、大気圧雰囲気下或いは減圧雰囲気下で所定の熱処理、例えばアニール処理や改質処理等が行われる。処理後のウエハWは高温状態、例えば熱処理の種類にもよるが、最大600℃程度になっており、この高温状態のウエハWは搬送機構8の地方のピック部56を用いて取り上げられる。
【0048】
上記ピック部54、56と処理室4A〜4C内の載置台14との間のウエハWの受け渡しは、ウエハWを載置台14に置きに行く時はウエハWを載置台14の上方に侵入させたなら、ピック部54、56を降下させてウエハWを受け渡すようにし、ピック部54、56がウエハWを取りに行く時は上記と逆の操作を行う。
【0049】
そして、この高温状態のウエハWは、更に連続して熱処理を行う必要がある場合には、他の処理室内へ搬送される。また、この処理システム2での熱処理が終了した場合には、上記高温状態のウエハWは、ピック部56を用いて取り上げられ、搬送室6内の他端に設けたクーリング機構48へアクセスされ、このクーリング機構48においては、大気搬送室6内に形成されている清浄気体のダウンフローにより例えば100℃程度まで冷却される。
【0050】
そして、このように冷却されたウエハWは、次に搬送機構8のピック部54を用いて取り上げて保持され、導入ポート42に載置されている処理済みのウエハWを収容する収納容器44内へ搬入されることになる。
【0051】
<位置決め方法>
次に、上述したような一連の処理を行う前に行われる搬送機構の位置決め方法について説明する。この位置決め方法は、処理システム2を新たに組み上げた場合や、メンテナンス等により搬送機構8の構成部品を交換したり、導入ポート42や処理室4A〜4C等の着脱を行ったりした場合のように、位置ずれが生ずる恐れのあるメンテナンス等を行った後に行われる。
【0052】
ここでは、処理室4A〜4Cの載置台14に対する搬送機構8の位置決め方法を
図4乃至
図13も参照して説明する。尚、実際には、平面方向の座標は、ピック部の回転中心の角度と、この回転中心からのピック部の長さ(半径)により決まる極座標で制御されるが、この極座標はXY座標と変換可能なので、ここではXY座標を主に用いて説明する。
【0053】
<第1の発明>
まず、搬送機構の位置決め方法の第1の発明について説明する。
図4は搬送機構の位置決め方法の第1の発明の概略的な流れを示すフローチャート、
図5は第1の発明の高さ方向決定工程の内容を示すフローチャート、
図6は高さ方向決定工程におけるピック部と保持アームとの位置関係を示す図、
図7は第1の発明の前進角度決定工程の内容を示すフローチャート、
図8は前進角度決定工程におけるピック部と保持アームとの位置関係を示す図、
図9は前進角度決定工程での角度補正を示す図、
図10は第1の発明の前進起点位置決定工程の内容を示すフローチャート、
図11は前進起点位置決定工程におけるピック部と保持アームとの位置関係を示す図、
図12は前進起点位置決定工程での起点位置の補正を示す図、
図13は第1の発明の前進量決定工程の内容を示すフローチャートである。
【0054】
搬送機構8のピック部54、56が載置台14に対して接近してアクセスする時のティーチングに関しては、ピック部54、56と載置台14の保持アーム18、保持ピン部20との間の相対的な位置関係を座標上において決定する必要がある。そのためには、ピック部54、56の高さ位置、ピック部54、56とゲート開口36の周辺との干渉を避けるためにピック部54、56の前進角度、ピック部54、56が前進する時のX方向の位置、前進すべき量(長さ)、すなわちY方向の量を求める必要がある。ここで便宜上、大気搬送室6の長さ方向をX方向とし、大気搬送室6から載置台14の中心に向かう方向をY方向とし、高さ方向をZ方向とする。
【0055】
ここでは搬送機構8のピック部54と処理室4Aの載置台14との位置合わせを例にとって説明する。まず、搬送機構の位置決め方法の第1の発明では、
図4に示すように、搬送機構8のピック部54の高さ方向の位置合わせである高さ基準位置を決定する高さ方向決定工程と、ピック部54の前進角度(前進方向)を決定する前進角度決定工程と、ピック部54が前進する時の起点位置の水平方向(X方向)のずれ量(ずれ水平距離)を求めて修正する前進起点位置決定工程と、ピック部54の前進量(Y方向)を求める前進量決定工程とを有し、各工程をこの順序で順次行うようになっている。
【0056】
以下に説明する位置決め方法であるティーチング操作は、前述したように予め作成されたティーチング用の移動プログラムに基づいて自動的に実行される。
[高さ方向決定工程]
具体的には、移動プログラムが開始されると、まず高さ方向決定工程では、所定の高さ位置において載置台14を回転することによって、
図5に示すように処理室4A(
図1参照)内における3つの保持ピン部の内の1つの保持ピン部20を
図6(A)に示すように搬入搬出側へ向ける第1の工程を行う(S1)。この搬入搬出側はゲート開口36(
図1参照)を臨む方向である。この載置台14の回転角度、高さ位置はエンコーダ等により認識されている。
【0057】
更に移動プログラムが実行されて、以下の一連の動作が順次行われる。すなわち、次に、第2の工程(S2)及び
図6(B)に示すように、ピック部54を上記保持ピン部20に向けて少しずつ接近させつつ保持ピン部20を矢印70に示すように上下動させる。この動作をマッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出するまで行う。尚、
図6(B)以降は側面図を示している。この場合、ピック部54の高さ位置は、設計図等により予め安全性を見込んで仮の高さ方向基準位置を決めておく。
【0058】
ここでの動作は、ピック部54を僅かに前進(ピック部に接近)させては停止して、そこで保持ピン部20を上下動させるというステップをマッピングセンサ部64が検出するまで繰り返し行うことになる。この時の僅かずつの前進量は、上記保持ピン部20の半径方向の長さL2(
図3(C)参照)よりも短い長さ、例えば5mm程度に決定する。尚、この場合、ピック部54を低速度で継続的に前進させながら、保持ピン部20を連続的に往復上下動させるようにして保持ピン部20を検出するようにしてもよい。
【0059】
上述のようにマッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出したならば、第3の工程では
図6(C)に示すように保持ピン部20を検出した状態でマッピングセンサ部64が保持ピン部20を未検出になるまでピック部54を矢印72に示すように少しずつ後退させて未検出になったことに応答してピック部54を停止させる(S3)。
【0060】
このように未検出になったならば、第4の工程では
図6(D)に示すようにピック部54を上記保持ピン部20の長さよりも小さい僅かな距離だけ矢印74に示すように前進させて保持ピン部54を検出させて再び検出した状態にする(S4)。この場合、上記保持ピン部20の長さは、上端突起24の長さL1(
図3(C)参照)で例えば4mmであり、これよりも小さい僅かな前進距離は例えば2mm程度である。
【0061】
このようにマッピングセンサ部64が保持ピン部20を再度検出した状態になったならば、第5の工程では
図6(E)に示すように、保持ピン部20を検出した状態でこの保持ピン部20を矢印76に示すように下方へ少しずつ移動させて保持ピン部20を未検出になったことに応答して保持ピン部20の上端エッジを検出(認識)する(S5)。すなわち、保持ピン部20が未検出になった時に保持ピン部20の上端突起24(
図3(C)参照)の上端エッジを検出したことになる。
【0062】
そして、第6の工程では、この保持ピン部20の上端エッジを検出した時のピック部54(マッピングセンサ部64)の高さ位置に基づいて高さ方向基準位置が決定されることになる(S6)。すなわち、この上端エッジを検出したことによってピック部54と保持アーム18の保持ピン部20との高さ方向の位置関係が決定されることになる。ここで上記載置台14の保持ピン部20とゲート開口36の高さ方向の位置関係は予め精度良く調整されている。例えば載置台14の高さが5.0mmの時に、上記上端エッジの高さがゲート開口36の高さ方向の中央に位置するように予め精度良く調整されている。
【0063】
従って、上記ステップS5において、例えば上端エッジを検出した時の載置台14の高さが7.0mmであると仮定すると、その時のピック部54の高さ方向の位置は、ゲート開口36の高さ方向の中央よりも2mmだけ上方に位置していることが判る。従って、上記2mmだけ仮の高さ方向基準位置を補正して真の高さ方向基準位置が求められることになる。これにより、ピック部54が前進する際には、これがゲート開口36や載置台14の保持ピン部20と干渉することを防止することができる。
【0064】
[前進角度決定工程]
次に、前進角度決定工程では、まず
図7の第21の工程(S21)に示すように、ピック部54を保持ピン部20から一旦離間(後退)させて保持ピン部20を未検出状態とし、その後、
図8(A)に示すようにマッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出するまでピック部54を矢印78に示すように保持ピン部20に向けて前進(接近)させる。この場合、先の高さ方向決定工程で保持ピン部20を検出する位置が判っているので、円滑にピック部54を前進させることができる。
【0065】
また、ここではマッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出したことに応答して、直ちにピック部54の前進を停止させるようにしてもよいし、或いは検出後、更に僅かな距離だけピック部54を前進させた後に止めるようにしてもよい。
【0066】
次に
図7の第22の工程(S22)に示すように、保持ピン部20を検出している状態で、
図8(B)に示すように保持ピン部20を矢印79のように左右に回転(揺動)させて上記マッピングセンサ部64が上記保持ピン部20を検出しなくなった時の左右の回転角度θ1、θ2(
図9参照)を求める。すなわち、保持アーム18を回転することにより、保持アーム18の端部にある保持ピン部20が左右に回転するので、マッピングセンサ部64の光路80を遮断していた保持ピン部20の先端が、この光路80から逸脱することになり、その時の回転角度θ1、θ2を求める。
【0067】
そして、次に
図7の第23の工程(S23)に示すように、上記回転角度θ1、θ2に基づいて上記ピック部54の前進方向のずれ角度θx(
図9参照)を求める。換言すれば、(θ1+θ2)/2の角度方向にピック部54の前進方向を一致(平行)させるようにする。この時の状況は
図9に示されており、
図9中においてX軸、Y軸は載置台14側の座標であり、点P1は保持ピン部20の回転中心(載置台14の回転中心)、点P2はピック部54の回転中心であり、ピック部54は前進方向82の先端にて直交する方向にマッピングセンサ部64の光路(光軸)80が通っている。
【0068】
保持アーム18の先端である保持ピン部20の回転軌跡84が上記光路80と交差する点が交差点P3、P4となり、それぞれが回転中心P1においてY軸となす角度が回転角度θ1、θ2となる。そして、線分86がX軸と平行で且つY軸と光路80との交点P5を通る直線であり、ピック部54の回転中心P2を通って上記線分86に直交する直線を線分88とする。従って、前進方向82と上記線分88とがなす角度がずれ角度θxを表している。また回転角度(θ1+θ2)の2等分線を線分89とする。
【0069】
そして、点P1、P3、P5がなす角度がθ3、点P3、P5、P1がなす角度がθ4、点P4、P5、P1がなす角度がθ5とすると、ずれ角度θxは次の式で表される。
θx=90−θ5
θ5=180−(θ3+θ2)
θ3=1/2×{180−(θ1+θ2)}
従って、”θx=(θ2−θ1)/2”となる。
このようにしてずれ角度θxを求めたならば、次に
図7の第24の工程(S24)に示すように、上記ずれ角度θxに基づいてピック部54の前進角度を修正することになる。これにより、ピック部54の前進する方向が保持ピン部20及び載置台14の回転中心P1を通る方向、すなわち保持ピン部20を通る載置台14の半径方向と一致するようになる。
【0070】
[前進起点位置決定工程]
次に前進起点位置決定工程では、まず、
図10の第31の工程(S31)に示すように、ピック部54を保持ピン部20から一旦離間(後退)させて保持ピン部20を未検出状態とし、その後、
図11(A)に示すようにマッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出するまでピック部54を矢印78に示すように保持ピン部20に向けて前進(接近)させる。この第31の工程は、先の第21の工程(S21)と全く同じである。
【0071】
次に、
図10の第32の工程(S32)及び
図11(B)に示すように、ピック部54を矢印90のように僅かな距離だけ後退させてマッピングセンサ部64が保持ピン部20を未検出の状態にする。この僅かな距離は、以下に記すようにピック部54を左右に回転した時に保持ピン部20を共に検出できる程度の距離であり、例えば数mm程度である。
【0072】
次に、
図10の第33の工程(S33)及び
図11(C)に示すように、ピック部54を矢印92のように左右に回転(揺動)することによってマッピングセンサ部64が保持ピン部20検出した時の左右の回転角度α1、α2を求める。すなわち、ピック部54を左右に回転するとにより、これに設けたマッピングセンサ部64の光路80上に保持ピン部20が侵入して光路80を遮断することになり、その時の回転角度α1、α2を求める。
【0073】
次に、
図10の第34の工程(S34)及び
図12に示すように、上記回転角度α1、α2に基づいて水平面内におけるピック部54のずれ量であるずれ水平距離Δhを求める。この時の状況を
図12において模式的に示している。
図12において、点Oはピック部54の回転中心であり、三角形ODEがピック部54を左右に回転する前の位置であり、辺DEがマッピングセンサ部64の光路を示す。
【0074】
また三角形OGHがピック部54を左に回転した時の状況を示し、三角形OIJがピック部54を右に回転した時の状況を示す。辺GH、IJはその時の光路を示し、点Cが保持ピン部20が光路を遮断した時の位置である。そして、ピック部54を左に回転させて保持ピン部20を検出した時の回転角度をα1で示し、ピック部54を右に回転させて保持ピン部20を検出した時の回転角度をα2で示している。そして、ピック部54の回転中心Oと点Fを通る線分と保持アーム18の延長方向、すなわち載置台の保持ピン部20を通る半径方向とのずれ量(距離)がずれ水平距離Δhとして示されている。
【0075】
ここで三角形OACと三角形OBCとは合同である。従って、線分OFと線分OCとが形成する微小角度Δxは以下のようになる。
Δx=(α2−α1)/2
この結果、ずれ水平距離Δhは、ピック部54の回転半径である線分OFの長さをRとした場合、以下の式のように求められる。
Δh=R×tanΔx
R:線分OFの長さ
【0076】
このようにして、ずれ水平距離Δhを求めたならば、次に、
図10の第35の工程(S35)に示すように、上記ずれ水平距離Δhだけピック部54の前進方向を平行移動させることによりピック部54の前進起点位置、すなわちピック部54の回転中心Oの位置を修正する。すなわち、回転中心Oをずれ水平距離ΔhだけX軸方向へ修正することになる。
これにより、ピック部54の前進する方向が、保持ピン部20及び載置台14の回転中心P1を通る方向と一致し、且つゲート開口36の横幅方向の中心部を通るようになる。
【0077】
[前進量決定工程]
次に、前進量決定工程では、
図13の第41の工程(S41)に示すように、先の第33の工程(S33)で求めた左右の回転角度α1、α2に基づいて保持ピン部20の座標を求める。ここでは座標上においてピック部54の前進方向と保持ピン部20を有する保持アーム18の長さ方向(半径方向)とが同一直線上に一致した状態となっている。
【0078】
そして、
図13の第42の工程(S42)に示すように、上記座標からピック部54の前進基準量を求めることになる。この場合、載置台14の回転中心に対する各保持アーム18の長さ及び各保持ピン部20の半径方向における取り付け位置は予め精度良く求められている。従って、ウエハWの中心を載置台14の中心に位置させるために必要なピック部54の前進量、すなわち前進すべき移動量は容易に計算により求めることができる。
【0079】
尚、上記ティーチング操作の説明では、ピック部54の前進方向と保持ピン部20を有する保持アーム18の長さ方向とを同一直線上に一致させた状態でピック部54を動作させるようにしたが、これに限定されず、他のティーチング操作も行うことができる。例えば前進角度決定工程で求めたずれ角θx(
図9参照)と前進起点位置決定工程で求めたずれ水平距離Δhと左右の回転角度α1、α2(
図12参照)とに基づいて保持ピン部20の座標が上述のように求まるので、この結果、載置台14の回転中心P1の座標(
図9参照)を求めることができる。
【0080】
そして、この載置台14の回転中心P1に半導体ウエハWの中心を一致させるように搬送機構8(ピック部)のX方向及びY方向の各移動量を求めることで、ティーチングを行うことができる。この場合には、ピック部54の前進方向と保持ピン部20を有する保持アーム18の長さ方向とが同一直線上に一致しない状態でも搬送機構8をティーチングすることができる。
【0081】
以上のようなピック部54に対するティーチング操作は、全ての処理室4A〜4Cに対して行われることになる。また、他方のピック部56はマッピングセンサ部64を有していないが、両ピック部54、56は、互いに精度良く調整されているので、上記ピック部54に対する座標のデータは、他方のピック部56に対してもそのまま適用されることになる。以上のようにして求められた座標等の各種のデータ等は、ティーチングデータとしてシステム制御部66側に記憶され、実際のウエハの搬送時には、このティーチングデータを基にして搬送機構8により搬送されることになる。
【0082】
このようにして、ピック部54によりウエハWを搬送する時に、ウエハWをゲート開口36に干渉させることなく、載置台14上の適正な位置に精度良く載置することが可能となる。また、このティーチング操作に際しては、半導体ウエハを用いないので処理室の天井蓋を開閉する必要もなく迅速に、且つ容易に行うことが可能となる。
【0083】
以上のように、搬送機構の位置決め方法の第1の発明によれば、ティーチング操作の作業性が向上して作業者間のバラツキを低減し、ピック部と被処理体とが干渉する危惧を抑制することが可能となる。
【0084】
<第2の発明>
次に、本発明の搬送機構の位置決め方法の第2の発明について説明する。先の第1の発明では、保持ピン部20に対してピック部54の相対位置関係を決定したが、この第2の発明では、保持ピン部20のみならず、中間ピン部22(
図3参照)に対する相対位置関係を求めることにより、ティーチング操作を行うようにしている。
【0085】
図14は搬送機構の位置決め方法の第2の発明の概略的な流れを示すフローチャート、
図15は第2の発明の第1座標決定工程の内容を示すフローチャート、
図16は第2の発明の第2の座標決定工程の内容を示すフローチャート、
図17は第3の座標決定工程及び最終工程におけるピック部と保持アームとの位置関係を示す図である。
【0086】
まず、搬送機構の位置決め方法の第2の発明では、
図14に示すように、先の第1の発明の高さ方向決定工程(
図4参照)と同一内容を実施する高さ方向位置決定工程と、ピック部54の回転中心を起点とする保持ピン部20の座標である第1の座標を求める第1の座標決定工程と、ピック部54の回転中心を起点とする中間ピン部22の座標である第2の座標を求める第2の座標決定工程と、第1及び第2の座標に基づいて載置台14の回転中心の座標である第3の座標を求める第3の座標決定工程と、上記第1、第2及び第3の各座標に基づいてピック部54の前進角度と前進起点位置と前進基準量とを求める最終工程とを有しており、この順序で各工程を順次実施することになる。
【0087】
[高さ位置決定工程]
上述のように、まず、高さ方向決定工程では、
図5に示す第1の工程S1〜第6の工程S6(
図6(A)〜
図6(E))を先に説明したように順次行って、ピック部54の高さ方向の位置決めを行って真の高さ方向基準位置を求める。
【0088】
[第1の座標決定工程]
次に、第1の座標決定工程では、まず、
図15の第41の工程に示すように、ピック部54を保持ピン部20から一旦離間(後退)させて保持ピン部20を未検出状態とし、その後、
図11(A)に示すようにマッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出するまでピック部54を矢印78に示すように保持ピン部20に向けて前進(接近)させる。この第41の工程は、先の第31の工程(S31)と全く同じである。
【0089】
次に、
図15の第42の工程(S42)及び
図11(B)に示すように、ピック部54を矢印90のように僅かな距離だけ後退させてマッピングセンサ部64が保持ピン部20を未検出状態にする。この第42の工程は、先の第32の工程(S32)と全く同じである。
【0090】
次に、
図15の第43の工程(S43)及び
図11(C)に示すように、ピック部54を矢印92に示すように左右に回転(揺動)することによって、マッピングセンサ部64が保持ピン部20を検出した時の左右の回転角度α1、α2を求める。この第43の工程は、先の第33の工程(S33)と全く同じである。また、この時の回転角度α1、α2の状況は、
図12において同様に示されている。
【0091】
次に、
図15の第44の工程(S44)及び
図12に示すように、上記左右の回転角度α1、α2に基づいて上記ピック部54の回転中心を起点とする保持ピン部20の座標である第1の座標を求める。先に説明したような内容から、ピック部54の回転中心Oと保持ピン部20の位置である点C(保持ピン部20が光路を遮断した位置)との線分OCの長さは以下のようになる。
【0092】
線分OC=線分OA/cos[(α1+α2)/2]
線分OA:ピック部54の長さ
上述のように線分OCの長さが求まり、また”ずれ角度Δx=(α2−α1)/2”であるので、保持ピン部20である点Cのピック部54の回転中心Oを起点(原点)とした座標1を求めることができる。
【0093】
[第2の座標決定工程]
次に、第2の座標決定工程では、
図16のS51に示すように、中間ピン部22(
図3(A)及び
図3(B)参照)に対して、先の第41、第42、第43及び第44の各工程
と同様な工程を順次行うことによって、この中間ピン部22の座標である第2の座標を求める。
【0094】
[第3の座標決定工程]
この第3の座標決定工程では、上述したように、上記第1及び第2の各座標に基づいて載置台14の回転中心、すなわち保持アーム18の回転中心の座標である第3の座標を求める。具体的には、
図17に示すように、保持アーム18の先端の保持ピン部20の座標をX1、中間ピン部22の座標をX2とし、保持アーム18の回転中心P1の座標をX3とし、またピック部54の回転中心Oの座標を起点(0、0)、すなわち原点とする。
【0095】
ここで、保持ピン部20、中間ピン部22及び保持アーム18の回転中心P1は同一直線上に位置しており、しかも、回転中心P1と中間ピン部22との間の長さや回転中心P1と保持ピン部20との間の長さは先に正確に規定されている。従って、座標X3を上記関係から求めることができる。
【0096】
[最終工程]
以上のようにして座標X3が求められると、座標X1、X2、X3とピック部54の回転中心Oの原点(0、0)との関係から、ピック部54の前進方向と保持アーム18の長さ方向とのずれ角度θx(
図9参照)及びずれ水平距離Δh(
図12参照)が求められるので、ピック部54の前進角度、前進起点位置及び前進基準量をそれぞれ修正して正確な値を設定することができる。このような一連のティーチング操作は、各処理室4A〜4Cに対して、同様に行われることになる。
【0097】
このように、この第2の発明においても、ティーチング操作の作業性が向上して作業者間のバラツキを低減し、ピック部と被処理体とが干渉する危惧を抑制することができる。
【0098】
<位置ずれ量算出方法>
次に、以上のようなティーチング操作により求められたティーチングデータに基づいて搬送された半導体ウエハの搬送精度がどの程度正確なのかを検証するための被処理体の位置ずれ量算出方法について
図18乃至
図22も参照して説明する。
【0099】
図18は被処理体の位置ずれ量算出方法を説明する概略的な流れを示すフローチャート、
図19は半導体ウエハのエッジと保持ピン部の上端突起との位置関係を説明する説明図、
図20は半導体ウエハのエッジと上端突起との位置関係を求める時のピック部の動作を説明する説明図、
図21は載置台の保持アームと半導体ウエハとの位置ずれ量を説明するための平面図、
図22は位置ずれ量を算出する時の演算の一例を示す図である。尚、
図1乃至
図17において説明した構成部材と同一構成部材については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0100】
この位置ずれ量検出方法は、ティーチング操作の直後だけでなく、運用されている搬送機構の搬送精度を評価する場合にも用いることが可能である。この被処理体の位置ずれ量算出方法は、
図18に示すようにピック部を有する搬送機構を用いて上記被処理体を上記載置台に載置して支持させる載置工程S61と、上記搬送機構のピック部に設けた検出部により上記被処理体のエッジと上記保持ピン部の外周端に設けられた上端突起との位置関係を各保持ピン部について求める測定工程S62と、上記求めた位置関係に基づいて上記被処理体の位置ずれ量を求めるずれ量算出工程S63とを有する。
【0101】
[載置工程]
具体的には、上記載置工程では、前述のようにティーチング操作が完了した上記搬送機構8のピック部、例えばピック部54を用いて半導体ウエハWを先に記憶したティーチングデータに従って搬送し、載置台14に載置して支持させる。この際、載置台14の3本の保持アーム18の内の1本の保持アームをゲート開口36側に向けておく。この保持アーム18は前述したようにこの回転中心P1を中心としてその周方向に120度の等間隔で設けられており、その先端部に保持ピン部20が取り付けられている。
【0102】
[測定工程]
次に、測定工程では、検出部としてマッピングセンサ部64が設けられているピック部54を用いて、
図19に示すようにウエハWのエッジと保持ピン部20の上端突起24との位置関係を測定して求める。ここで、
図19に示すように上記位置関係は、ウエハWのエッジ(外周端)と上端突起24の外周端(外周面)との間の距離H1やウエハWのエッジと上端突起24の内周端(内周面)との間の距離H2を求めることになる。
【0103】
ここで上記距離H2は、ウエハWの厚さ方向のほぼ中央の高さレベルにおける距離であるが、この場合、上端突起24の内周端の面はテーパ面となっているので、距離H2の値は、高さレベル(上下方向の位置)が僅かに変化するだけで、測定時に容易に変動してしまうので安定していない。これに対して、上端突起24の外周端の面は上下方向に垂直な面になっているので、高さレベルが変化しても距離H1は安定した値となる。従って、上記位置関係としては、距離H1を求めるのが好ましい。以下の説明では、この距離H1を求める場合を例にとって説明する。
【0104】
まず、この測定工程では、最初にマッピングセンサ部64(
図2参照)を、
図20(A)に示す軌跡100のように動かす。すなわち、マッピングセンサ部64をウエハWの例えば上方に水平方向から侵入させてエッジよりも十分に内側に位置させ、そして、このマッピングセンサ部64を下方へ降下させてウエハWを横切るようにする。
【0105】
これにより、マッピングセンサ部64の光路がウエハWの厚さ部分で遮断されるので、センサのオンオフが切り替わるポイントA、Bの高さ位置が検出される。従って、ポイントA、Bの部分の高さの中央の値、”(A+B)/2”が高さレベル102となる。上記の場合、マッピングセンサ部64をウエハWの下方に侵入させた後に、これを上方へ移動させるようにしてもよい。
【0106】
このように、ウエハWの高さレベル102を求めたならば、次に、上記距離H1を求める。この方法には、概略的には
図20(B)〜
図20(D)に示すように大きく3つの方法が存在する。尚、ウエハWの厚さは0.8mm程度である。
【0107】
図20(B)に示す第1の方法では、マッピングセンサ部64をウエハと同じ高さレベル102に沿って前進させて、その時にセンサのオンオフを検出することにより距離H1を求める。この第1の方法の場合には、迅速に距離H1を求めることができるが、実際の動作ではマッピングセンサ部64を設けてあるピック部54は、前進しながら僅かに上下に揺動することは避けられないので、誤検知する恐れも僅かに存在する。
【0108】
図20(C)に示す第2の方法では、マッピングセンサ部64を軌跡104に示すように上下方向へ大きく振りながら少しずつ前進させて行き、その時のセンサのオンオフを検出することにより距離H1を求める。この場合、測定対象箇所よりも十分に前の位置からマッピングセンサ部64の上下動を行う。この軌跡104に沿った移動は、例えば前進→下方移動→前進→上方移動→前進→下方移動→前進→…のように繰り返して行く。この際、前進時のピッチは、例えば0.1mm程度であり、上下方向への移動は例えば数mm程度である。尚、測定対象箇所でない部分を前進するには、上記ピッチに限定されず、その部分では前進移動量を長くして測定時間を短くするのがよい。
【0109】
この第2の方法の場合には、上記第1の方法よりも測定時間が長くなるが、ピック部54の上下の揺動に対して誤検出が生ずる恐れが少ないので、検出精度を向上させることができる。
【0110】
図20(D)に示す第3の方法は、上記第1の方法と第2の方法を組み合わせたものであり、マッピングセンサ部64を軌跡106に示すように上下方向へ僅かに振りながら少しずつ前進させて行き、その時のセンサのオンオフを検出することにより距離H1を求める。この場合、マッピングセンサ部64をウエハWの高さレベル102を中心として僅かに上下動させる。この軌跡106に沿った移動は、例えば、前進→下方移動→前進→上方移動→前進→下方移動→前進→…のように繰り返して行く。
【0111】
この際、前進時のピッチは、例えば0.1mm程度、高さレベル102を中心とした上下方向への移動は例えば±0.1mm程度である。尚、測定対象箇所でない部分を前進するには、上記ピッチに限定されず、その部分では前進移動量を長くして測定時間を短くするのがよい。
【0112】
この第3の方法の場合には、第2の方法と同じような高い検出精度が得られ、しかも第2の方法よりも測定時間を大幅に短くすることができる。尚、上記第2の方法及び第3の方法において、上端突起24の外周端を検出する部分では、誤検出の恐れが少ないのでマッピングセンサ部付64を上下動させないで、高さレベル102に沿って水平に前進させるようにして検出するようにしてもよい。
【0113】
更に、
図20(A)〜
図20(D)で示した軌跡に沿って逆方向からマッピングセンサ部を移動させるようにしてもよい。この場合には、マッピングセンサ部は少しずつ後退することになる。また上記第1〜第3の方法は、距離H1の測定の一例を示したに過ぎず、これらに限定されない。
【0114】
以上のようにして、ある1箇所の保持ピック部20における距離H1を測定したならば、載置台14を120度回転させ、上述したと同様な方法で距離H1を求め、更に載置台14を120度回転させて上述したと同様な方法で距離H1を求めて、3箇所の保持ピック部20における各距離H1を求める。
【0115】
ここで
図21に示すように、3本の保持アーム18の各支持ピン部20で支持された半導体ウエハWの各支持ピン部20、すなわち第1支持ピン20−1、第2支持ピン20−2、第3支持ピン20−3において得られた測定値である各距離H1を、ウエハWの反時計回りに沿ってH11、H12、H13とする。
【0116】
[ずれ量算出工程]
次に、ずれ量算出工程では、例えば以下に示すような演算によりウエハWの位置ずれ量を求める。ここでは、便宜上、平面内において直交する方向、すなわちX方向とY方向の2方向の位置ずれ量を求める。
【0117】
まず、ウエハWが載置台14の保持アーム18に支持されている状態において、ウエハWの中心と載置台14の回転中心P1が一致している場合のウエハエッジと保持ピン部20の上端突起24の外周端との間の距離H1の値は、設計値(適正値)Cとして予め求められており、上記測定値と設計値Cとの差がずれ量となる。この設計値Cは例えば5.5mm程度である。
【0118】
そして、上記設計値Cに基づいて各保持ピン部20におけるずれ量を求める。第1〜第3支持ピン部20−1〜20−3におけるずれ量Z1、Z2、Z3は以下のようになる。
Z1=H11−C
Z2=H12−C
Z3=H13−C
【0119】
次に、位置ずれ量のX方向の成分XdとY方向Ydの成分とを求める。
Xd=(Z3×sin60°−Z1×sin60°)/2(
図22(A)及び
図22(B)参照)
Yd=Z2−Xd×tanα(
図22(C)参照)
【0120】
ここで”α=θ/2”である。
すなわち
図22(C)において、以下のようになる。
θ=Asin(Xd/150)(尚、”Asin”は、アークサインである)。
また、”α+β=π/2”及び”π=θ+2β”であるので、上述のように”α=θ/2”となる。
以上のようにして位置ずれ量のX方向の成分XdとY方向の成分Ydが求められる。これにより、搬送機構により載置台に対して載置して支持させた被処理体の位置ずれ量を精度良く求めることができる。
【0121】
このようにして求められた位置ずれ量の成分Xd、Ydは、システム制御部66(
図1参照)に送られて、このシステム制御部66が有する図示しないディスプレイやプリンタ等に表示され、その評価結果を示すことになり、オペレータ等に認識させることになる。
【0122】
また、上記評価結果の表示と共にシステム制御部66や記憶媒体68に記載されている先のティーチングデータに対して、上記位置ずれ量を相殺するように修正を加え、新たなティーチングデータとして記憶する。
【0123】
これにより、先のティーチングデータを微調整して搬送精度を向上させることが可能となる。また、このようなティーチングデータの評価や微修正は、プロセスの実施の途中(合間)に行うことにより、処理室内の熱等による構成部材の経時変化を確認し、これに対応することが可能となる。このように、被処理体を載置台に対して載置させるための搬送機構のティーチングデータを微調整して修正することにより搬送精度を向上させることができる。
【0124】
尚、ここで説明した処理システム2の構成は単に一例を示したに過ぎず、これらの構成に限定されないのは勿論である。また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。