(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光素子を例示するものであって、本発明は発光素子を以下のものに特定しない。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一又は同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
なお、
図1A及び
図2Aの平面図においては、第1透光性絶縁層16、65の外縁を図示せず、第2透光性絶縁層15、65の外縁のみを表している。
【0012】
実施形態1
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態に係る発光素子10は、半導体層24と、電極構造体23とを備える。
【0013】
(半導体層)
半導体層24は、例えば、基板11上に、任意にバッファ層等の1層又は複数層(図示せず)を介して、第1(以下「n型」と記載することがある)半導体層12、発光層13及び第2(以下「p型」と記載することがある)半導体層14がこの順に積層されて構成されている。
半導体層24は、第2半導体層14側から厚み方向に一領域が除去され、つまり、部分的に除去され、そこから第1半導体層12が露出しており、この露出した領域以外の第1半導体層12の他の領域上に、発光層13および第2半導体層14が順に積層されて構成されている。
本実施形態の発光素子においては、便宜上、半導体層24を第2半導体層14として説明するが、この半導体層は、第1半導体層12であってもよい。この場合には、以下の説明において、第2半導体層14を第1半導体層12と読み替える。
【0014】
半導体層24を構成する第1半導体層12、発光層13及び第2半導体層14としては、特に限定されるものではなく、例えば、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系化合物半導体が好適に用いられる。これらの窒化物半導体層は、それぞれ単層構造でもよいが、組成及び膜厚等の異なる層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に、発光層13は、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸又は多重量子井戸構造であることが好ましい。
【0015】
(基板)
基板11としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、窒化物半導体(例えば、GaN等)、GaAs等の公知の絶縁性基板又は導電性基板を用いることができる。絶縁性基板は、最終的に取り除いてもよいし、取り除かなくてもよい。
絶縁性基板を最終的に取り除かない場合、通常、p側の電極及びn側の電極はいずれも半導体層の同一面側に形成されることになる(
図1B及び
図2B参照)。また、最終的に絶縁性基板を除去する場合又は導電性基板を用いる場合、p側の電極及びn側の電極はいずれも半導体層の同一面側に形成してもよいし、異なる面にそれぞれ形成してもよい。
【0016】
(電極構造体)
電極構造体23は、半導体層24と電気的に接続された透光性導電層21と、透光性導電層21上の一部に設けられた金属部材22と、前記半導体層と透光性導電層との間であって、半導体層に接して設けられた第1透光性絶縁層15と、第1透光性絶縁層15上に設けられ、かつ平面視において、金属部材22と重なる位置に配置された第2透光性絶縁層16とを有する。
以下、第2半導体層14と電気的に接続された透光性導電層21と、透光性導電層21上の一部に設けられた金属部材22とをあわせて第2電極20と称することがある。つまり、第2電極20は、第2半導体層14上の第1透光性絶縁層15及び第2透光性絶縁層16が形成されていない領域に直接接触しており、これら第1透光性絶縁層15及び第2透光性絶縁層16を被覆するように、第2半導体層14とオーミック接続されている。
【0017】
(透光性導電層)
第2電極20のうち透光性導電層21が、第2半導体層14とオーミック接続されている。ここでオーミック接続とは、当該分野で通常用いられている意味であり、例えば、その電流−電圧特性が直線又は略直線となる接続を指す。また、デバイス動作時の接合部での電圧降下及び電力損失が無視できるほど小さいことを意味する。
【0018】
透光性導電層21は、第2半導体層14への均一な電流の供給を意図するものであるため、第2半導体層14上の略全面に、広い面積で配置されることが好ましい。ここで略全面とは、上面に露出する第2半導体層14の外縁及び第1半導体層の露出した領域の外縁以外の領域を指す。例えば、発光素子の平面積の90%以上であるのが好ましく、さらには95%以上であることが好ましい。これにより、第2電極20の第2半導体層14への接触面積を最大限として、金属部材22から直下にある半導体層(特に活性層13)に流れ込む電流を、広範な透光性導電層によって拡散することができ、接触抵抗を低下させて駆動電圧を低減させることができる。また、より均一な電流分布で、電流を第2半導体層の全面に供給することができる。
【0019】
透光性導電層21は、発光層13からの光を効率的に取り出すために、発光層13から出射される光に対して、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上透過させる材料から形成されるのが好ましい。例えば、亜鉛、インジウム、錫、マグネシウム、カドミウム、ガリウム、鉛からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物、具体的には、ITO、ZnO
2、InO
2、SnO、MgO等の導電性酸化物膜の単層膜又は積層膜が挙げられる。また、透光性を有するものであれば、一般に電極に使用される薄膜状の金属又は合金の単層膜又は積層膜でもよい。
【0020】
透光性導電層21の厚みは、例えば、順方向電圧(Vf)を低減できる50nm以上、かつ発光層13から出射された光の媒質伝搬による光損失が低減できる300nm以下程度の厚みとするのが好ましい。
【0021】
(金属部材)
金属部材22は、透光性導電層21上の一部に設けられ、かつ導電性ワイヤなどの外部接続部材が接続可能な部材である。
金属部材22は、その全部が透光性導電層21上に配置されていることが好ましい。金属部材22は透光性導電層21と電気的に接続されており、透光性導電層21よりも小さい面積を有していることが好ましい。つまり、金属部材22は、第2導電型半導体層14に直接接触していないことが好ましい。第2半導体層14と後述する第1透光性絶縁層16との界面や、第1透光性絶縁層16と第2透光性絶縁膜層15との界面などにおいて、活性層13からの光を反射させることにより、金属部材22による光の吸収を回避するためである。
金属部材22は、発光素子の形状、大きさ及び使用態様(フェイスアップ実装形態、フェイスダウン実装形態等)等によって、発光素子10内における位置、大きさ等を適宜調整することができる。
【0022】
金属部材22は、ワイヤボンディングの接続部となる領域を含むことが好ましい。この場合、ワイヤボンディングが可能となる面積、ワイヤボンディングに使用する導電性ワイヤとの密着性を考慮した大きさ、積層構造又は表面層、ワイヤボンディングの際の衝撃に耐えるだけの厚さ等を適宜調整して形成することができる。
また、金属部材22は、発光素子10の全面により均一に電流を供給するために、ワイヤボンディングの接続部となる領域以外に、この領域から延伸した延伸部を備えていることが好ましい。延伸部の形状、大きさ等は特に限定されないが、例えば、5〜500μm程度、5〜50μm程度の太さ、発光素子の一辺(例えば、長辺)20〜70%程度、30〜60%程度の長さを有するものが好ましい。また、延伸部は、直線状及び曲線状のいずれもよく、1本又は2本以上のいずれでもよく、分岐構造を有していてもよい。
特に、金属部材22の接続部は、発光素子10の全面により均一に電流を供給するために発光素子10において、周辺部又は端部に偏って配置されていることが好ましく、延伸部は、後述する第1電極30に向かって延伸していることが好ましい。例えば、本実施形態における金属部材22は、その接続部から後述する第1電極30を挟むように2つの延伸部がU字状に延伸し、それぞれが第1電極30の接続部から延伸する延伸部と略平行となるように対向して配置されている。
【0023】
金属部材22は、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ランタン(La)、銅(Cu)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、金(Au)、アルミニウム(Al)等の金属又は合金、Al、Si及びCuの合金(Al−Si−Cu合金)等の単層膜又は積層膜によって形成することができる。
【0024】
特に、金属部材22は、ワイヤボンディングなどの他の端子との接続のために通常用いられる導電性材料、例えば、金、白金等を、その上面側(接続領域)に配置させることが好ましい。さらに、後述する保護膜17との密着性の良好な材料、例えばNiやTi、Cr、Al、Wなどを金属部材22の上面に配置させることが好ましい。
【0025】
金属部材22は、総膜厚が100nm〜5μm程度となる範囲で適宜調整することができ、例えば、その上にAuバンプを形成する場合には、金属部材22を比較的厚めに、共晶(Au−Sn等)バンプを形成する場合には金属部材22を比較的薄めに設定するなどが適している。
【0026】
(第2透光性絶縁層)
第2透光性絶縁層15は、上述した金属部材22からその直下にある発光層13に流れ込む電流を低減するとともに、電流のより広範囲にわたる拡散を果たす役割を有する。そのために、第2透光性絶縁層15は、第2半導体層12と透光性導電層21との間に配置されている。特に、その上面の全面が、透光性導電層21に接触して配置されていることが好ましい。また、透光性導電層21を介して、金属部材22の一部と重なる位置に配置されている限り、その全部と重なる位置に配置されていてもよい。
【0027】
第2透光性絶縁層15は、このような機能を果たすものであれば、その形状、大きさ、材料、厚み等は特に限定されるものではなく適宜調整することができる。
例えば、金属部材22と同じ形状及び大きさであってもよいし、形状が同じで、若干小さめ(1%〜十数%程度の縮尺)又は大きめ(1%〜十数%程度の拡大)であることが適している。特に、金属部材22と同じか大きく、金属部材22の全部が、第2透光性絶縁層15の上方に配置されていることが好ましい。この場合には、第2透光性絶縁層15の材料によって、発光層13から出射される光を、第2透光性絶縁層15と透光性導電層21との界面で、より大面積で、より確実に反射させることができるために、出射光の金属部材22による吸収を最小限に止めることができ、光反射効率を向上させることができる。
【0028】
第2透光性絶縁層15は、透光性を有する絶縁体からなるものであればよく、例えば、酸化物膜として、Al
2O
3、SiO
2、SiN、HfO、TiO
2、SiO
xN
y等が挙げられ、窒化物膜としては、SiN、TiN等が挙げられ、これらの単層膜又は積層膜であってもよい。
特に、第2透光性絶縁層15は、第2半導体層14と屈折率が異なるものが好ましく、第2半導体層14よりも屈折率が小さいものがより好ましく、さらには後述する第1透光性絶縁層16よりも屈折率が小さいものが好ましい。具体的には、窒化物半導体層がGaN層である場合は、その屈折率が2.4〜2.5程度であることから、第2透光性絶縁層15の屈折率は、例えば、2.0程度以下、1.8程度以下、1.6程度以下のもの、なかでもSiO
2の単層膜を用いるのがより好ましい。
このように、第2透光性絶縁層15の屈折率が第2半導体層14よりも(及び第1透光性絶縁層16よりも)小さい場合には、第2半導体層14又は第1透光性絶縁層16と第2透光性絶縁層15との界面で活性層13からの光が反射され、特に、臨界角以上で略全反射され、その上の電極材料による光損失を最小限にとどめることができ、より光取り出し効率を向上させることができる。
【0029】
第2透光性絶縁層15の厚みは、例えば、後述する第1透光性絶縁層16との界面において発光層13からの光を全反射することができるように100nm程度以上、好ましくは200nm程度以上とすることが挙げられ、さらに好ましくは、発光層の発光ピーク波長以上の厚み(エバネッセント場よりも外側に透光性導電層21が配置される厚み)である。これにより、臨界角以上で入射される光が全反射されずに透光性導電層21に抜けるのを抑制することができる。具体的には、第2透光性絶縁層15の厚みは、製造における作業時間やコストなども考慮して100〜1000nm程度が好ましく、200〜500nm程度がより好ましく、発光層の発光ピーク波長以上の厚み〜500nm程度がさらに好ましい。
【0030】
(第1透光性絶縁層16)
第1透光性絶縁層16は、第2半導体層14と第2透光性絶縁層15とをより強度に密着させるために、半導体層と透光性導電層との間、特に、第2半導体層14と第2透光性絶縁層15との間に配置される。従って、第1透光性絶縁層16は、第2透光性絶縁層15よりも第2半導体層14との密着力が高い材料により形成される。また、第1透光性絶縁層16は、第2透光性絶縁層15が第2半導体層14と接触しない形状、大きさ等であることが好ましい。第1透光性絶縁層16は、第2半導体層14上であって、第2透光性絶縁層15の外縁よりも外側にその外縁を配置するものが好ましい。これによって、第2透光性絶縁層15の第2半導体層14への密着性の弱さを第1透光性絶縁層16で確実に補助することができる。
また、第1透光性絶縁層16の外縁は、第2透光性絶縁層15の外縁に対して特に限定されることなく、例えば、数十nm〜数μm程度、具体的には10nm〜2μm程度の距離で外側に配置されていることが好ましい。
【0031】
第1透光性絶縁層16は、第2透光性絶縁層15と屈折率が異なるものが好ましく、第2透光性絶縁層15よりも屈折率が大きいものがより好ましく、第2透光性絶縁層15よりも第2半導体層14に近い屈折率であるものがさらに好ましい。具体的には、窒化物半導体層であるGaN層は、屈折率が2.4〜2.5程度であることから、第1透光性絶縁層16の屈折率は、これと同等又はこれよりも小さい、例えば、1.6程度以上、1.8程度以上、2.0程度以上のものが好ましい。
【0032】
第1透光性絶縁層16は、第2透光性絶縁層よりも半導体層との密着力が高い材料により形成されることにより、通常使用されていた透光性導電層と半導体層との間に配置されていた絶縁層よりも、半導体層との密着性を確保することができると共に、より均一な電流分布で確実に半導体層への電流の供給が可能となる。
ここで、第1透光性絶縁層16の半導体層との密着力は、第1透光性絶縁層16、半導体層の組成等によって変動し、また、第2透光性絶縁層の組成によっても、第1透光性絶縁層16の半導体層との間で必要とされる密着力の大きさが変動する。よって、第1透光性絶縁層16を構成する材料は、用いる第2透光性絶縁層及び半導体層によって適宜選択することができる。
【0033】
第1透光性絶縁層16は、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化マグネシウム、チタン酸ビスマスよりなる群から選択される材料等が挙げられる。なかでも、酸化ニオブが好ましい。特に、第2透光性絶縁層15が酸化シリコンである場合に、第1透光性絶縁層16を酸化ニオブとすることにより、第2半導体層14との密着性をより強固とすることができる。また、第2半導体層14と第1透光性絶縁層16との屈折率差をほぼ無いくらいまで小さくすることができる一方、第1透光性絶縁層16と第2透光性絶縁層15との屈折率差を大きくすることができるために、第1透光性絶縁層16と第2透光性絶縁層15との界面における臨界角を小さく設定でき、効率良く発光層13からの光を全反射させることができる。このため、第2電極又は後述する第1電極の一部による光の吸収を最小限にとどめ、より光取り出し効率を図ることが可能となる。
【0034】
第1透光性絶縁層16は、第2半導体層14との密着性を考慮して1nm以上の厚み、3nm以上、5nm以上、10nm以上の厚み、かつ第1透光性絶縁層16自体に光が吸収されるのを軽減できる100nm以下の厚み、50nm以下の厚みを有するものが好ましい。具体的には、1〜100nm程度が好ましく、3〜100nm程度がより好ましく、10〜50nmがさらに好ましい。
このような第1透光性絶縁層16が、極薄膜で、第2半導体層14と第2透光性絶縁層15との間に介在することにより、第2透光性絶縁層15の第2半導体層14への密着性を確保することができ、製造工程の途中で第2透光性絶縁層15が剥がれることなく、高い歩留まりで発光素子を製造することができる。
また、第2透光性絶縁層15よりも外縁が外側に設けられた第1透光性絶縁層16は、上述した第2透光性絶縁層15と共に、金属部材22からその直下にある活性層13に流れ込もうとする電流を水平方向により拡散させることができる。
さらに、このような構成を有する第1透光性絶縁層15及び第2透光性絶縁層16は、その界面で、活性層13からの光を反射することができる。よって、金属部材22による光吸収を軽減することができる。
【0035】
(第1電極30)
発光素子10の第1半導体層12の上面(活性層13及び第2半導体層14が設けられた領域とは異なる他の領域)には、第1電極30が形成されている。この電極30は、第1半導体層12上に直接接触しており、オーミック接続されていればよい。例えば、Al、Rh、W、Mo、Ti、V等の金属材料、ZnO、In
2O
3、SnO
2、ITO等の導電性酸化物等が挙げられる。第1電極30は、単層構造でもよいし、積層構造でもよい。また、上述した第2電極21と同じ積層構造を有していてもよい。つまり、オーミック接続されている透光性導電層31と、この透光性導電層31上に配置された金属部材32とを有していてもよい。この積層構造を選択することにより、第2電極20のための積層構造の形成の際に、同時に積層し、同時にパターニングすることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0036】
この第1電極30、特に、透光性導電層31は、第1半導体層12への均一な電流の供給を意図するものであるため、第1半導体層12上の略全面に、広い面積で形成されることが好ましい。これにより、第1電極30の第1半導体層12への接触面積を最大限として、接触抵抗を低下させて駆動電圧を低減させることができるとともに、効果的に電流を第1半導体層12の全面に供給することができる。
【0037】
(保護膜17)
半導体層の側面、第2電極20の一部、第1半導体層12の露出領域、第1電極30の一部の表面には、通常、保護膜32が形成されている。
保護膜17は、光を吸収しにくい材料で形成する場合には、発光層13からの光の吸収を最小限に留めて、光の取出効率を向上させることができる。例えば、Si、Ti、V、Zr、Nb、Hf、Taよりなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化膜、窒化膜、酸化窒化膜等が挙げられる。特に、SiO
2、ZrO
2、SiN、BN、SiC、SiOC、AlN、AlGaNが挙げられる。保護膜17は、単一の材料の単層膜又は積層膜でもよいし、異なる材料の積層膜でもよい。
また、保護膜17の厚みは、外部環境から発光素子を保護するために、例えば、10〜2000nm程度が適しており、100〜1000nm程度がより好ましい。
【0038】
(発光素子の製造方法)
本発明の発光素子の製造方法では、まず、(a)半導体層上の所定領域にレジスト層を形成する。
半導体層は、当該分野で通常利用されている方法により、上述した半導体層の積層構造を得るために、条件等を適宜調整して形成することができる。
例えば、MOVPE、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線エピタキシャル成長法(MBE)等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0039】
次いで、(b)レジスト層上から、スパッタ法により第1透光性絶縁層及び第2透光性絶縁層をこの順に形成し、その後、レジスト層を除去する。
例えば、第1透光性絶縁層及び第2透光性絶縁層の形成を意図する領域に開口を有するレジスト層を形成し、レジスト層上からスパッタ法により第1透光性絶縁層及び第2透光性絶縁層の材料膜をこの順に第2半導体層上に形成する。その後、レジスト層並びにその上に形成された第1透光性絶縁層及び第2透光性絶縁層の材料膜を除去すること(リフトオフ法)によって、
図3(a)に示したように、所望の形状にパターニングされた第1透光性絶縁層16及び第2透光性絶縁層15を形成する。
なお、第1透光性絶縁層を成膜する場合のスパッタ法の条件は、第2透光性絶縁層を成膜する場合の条件よりも緩和とすることが好ましい。通常、第1透光性絶縁層及び第2透光性絶縁層をスパッタ法により成膜する場合には、
図3(a)に示したように、半導体層の表面にスパッタした粒子が衝突し、表面荒れ、結晶の歪等によるダメージ領域14aが形成されるが、スパッタ法の条件を緩和とすることにより、第1透光性絶縁層を成膜する際の半導体層表面のスパッタ効果を緩和して、半導体層表面のダメージ、荒れ又は結晶の歪等を回避することができ、第1透光性絶縁層16の半導体層14への密着性をより向上させることができる。
【0040】
ここで形成される第1透光性絶縁層は、その上に形成される第2透光性絶縁層よりも半導体層との密着力が高い材料により形成されるのが好ましく、第2透光性絶縁層よりも半導体層の屈折率に近い屈折率を有するのが好ましい。また、第2透光性絶縁層は、第1透光性絶縁層の屈折率よりも小さい屈折率を有するのが好ましい。
【0041】
その後、(c)得られた第1透光性絶縁層16及び第2透光性絶縁層15のうち、第2透光性絶縁層15の外縁を除去して、
図3(b)に示したように、第2透光性絶縁層16の外縁を、第1透光性絶縁層16の外縁よりも内側に配置する。
このような除去は、例えば、これら層を構成する材料によるエッチングレートの差異を利用して行うことができる。具体的には、ドライエッチング又はウェットエッチングによるエッチャントの選択、エッチング時間、ドライエッチングにおける電力、RF、エッチャントの濃度又は純度等を制御することなどによって、エッチングレートの差異を利用することができる。
特に、フッ化水素とフッ化アンモニウムとを含む水溶液(バッファードフッ酸、BHF)を用いたウェットエッチングが好ましい。バッファードフッ酸は、水溶液の濃度を調整することにより、エッチングレートを制御することができる。例えば、ウェットエッチングは、15〜50℃程度の温度で0.5〜30分間程度処理する方法が挙げられる。
このような加工を行うことにより、通常、比較的厚膜の透光性絶縁層をリフトオフ法によってパターン形成した際に、透光性絶縁層の端部に発生するバリ等を効果的に除去することができる。また、エッチングによって、第2透光性絶縁層の外縁を、第1透光性絶縁層の外縁よりも内側に配置することができるために、第2透光性絶縁層が直接半導体層に接触することを回避することができ、それらの接触の脆弱による第2透光性絶縁層の剥離を防止することができる。加えて、第2透光性絶縁層の端面を、より半導体層から遠ざけることができるため、半導体層、第1透光性絶縁層及び第2透光性絶縁層の端面付近における応力を回避して、第2透光性絶縁層の剥がれをより効果的に防止することができる。
【0042】
続いて、
図3(c)に示したように、(d)これら第1透光性絶縁層16及び第2透光性絶縁層15並びにその周囲の半導体層の表面を被覆するように透光性導電層21を形成する。さらに、(e)透光性導電層21上であって、第2透光性絶縁層15と重なる位置に金属部材22を形成する。
ここでの、透光性導電層21及び金属部材22は、当該分野における電極の形成と同様の方法、例えば、フォトリドグラフィー及びエッチング方法によって、所望の形状にパターニングすることによって形成することができる。
【0043】
なお、工程(a)において、フォトリドグラフィー及びRIE等のエッチング法などを用いて、第2半導体層及び発光層、任意に第1半導体層の厚み方向の一部を除去し、第1半導体層を露出させることによって、第1半導体層と、第1半導体層の一領域上に設けられた発光層と、発光層上に設けられた第2半導体層とを有する半導体層を形成する。
【0044】
これらの工程の後、保護膜17を形成してもよい。保護膜17は、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、ECRプラズマスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法又はこれらの方法の2種以上を組み合わせる方法、あるいはこれらの方法と酸化処理(熱処理)とを組み合わせる方法等、種々の方法を利用することができる。
【0045】
実施形態2
図2A及び
図2Bに示すように、本実施形態に係る発光素子40は、半導体層と、電極構造体23、33とを備える。
この実施形態の発光素子40では、第2半導体層14上に形成された電極構造体23に加えて、第1半導体層12上にも電極構造体33を配置する以外、実施形態1の発光素子10と実質的に同様の構成を有する。
【0046】
つまり、
図2A及び
図2Bに示すように、透光性導電層51と第1半導体層12との間には、第2半導体層14と透光性導電層21との間と同様に、第2透光性絶縁層65及び第1透光性絶縁層66が配置されている。この場合、第2透光性絶縁層65は、金属部材52の全部と重なる位置に配置されていてもよいが、金属部材52の一部と重なる位置に配置されていることが好ましい。特に、第2透光性絶縁層65は、金属部材52の一部と重なり、発光素子の外縁側において、透光性導電層51を第1半導体層12と接触させるように配置されていることが好ましい。これによって、より好適に、発光層13への電流の均一な供給を実現することができる。
【0047】
このような発光素子は、上述した工程(a)において、第2半導体層14上及び第1半導体層12の他の領域(露出領域)上に開口を有するレジスト層を形成し、このレジスト層を用いて上述した工程(b)〜(e)を行うことにより、形成することができる。
【0048】
第1電極50側の電極構造体33と、第2電極20側の電極構造体23とを同じ材料膜によって形成する場合には、形成しようとする領域、例えば第1半導体層の他の領域(露出領域)上および第2半導体層上に開口を有するレジスト層をパターン形成し、このレジスト層をマスクとして用いて同時に形成することができる。
【0049】
また、第2半導体層14上への電極構造体23の形成とは別個に、上述した工程(a)において、第1半導体層12の他の領域(露出領域)上に開口を有するレジスト層を形成し、このレジスト層を用いて上述した工程(b)〜(e)と同様の工程を行うことにより、第2半導体層14上と、第1半導体層12上とに、別個に電極構造体33を形成することができる。
【0050】
以下に、本発明の実施形態に係る発光素子及びその製造方法について、詳細に説明する。
実施例1
この実施例の発光素子10は、
図1A及び1Bに示すように、半導体層24と、電極構造体23とを有する。
半導体層24は、サファイアからなる基板11上に、バッファ層等の複数層(図示せず)を介して、第1(例えば、n型)半導体層12、発光層13及び第2(例えば、p型)半導体層14をこの順に積層した半導体層が形成されている。半導体層は、部分的に除去されて、そこからn型半導体層12が露出する露出領域が形成されている。
【0051】
第2半導体層14の上面には、発光素子10の全外周及び素子内の露出領域の全外周を除く全面に、ITOによる透光性導電層21と金属部材22とからなる第2電極20が形成されている。
透光性導電層21は、その一部を除いて、第2半導体層14上に直接接触しており、オーミック接続されている。
透光性導電層21の上には、導電性ワイヤ等の外部接続部材が電気的に接続されるパッド電極として機能する金属部材22が配置されている。この金属部材22によって、透光性導電層21を介して電流を第2半導体層14の全体に供給することができる。
例えば、金属部材22は、半導体層側から、Rh膜(膜厚:100nm)、W膜(膜厚:50nm)及びAu膜(膜厚:500nm)が順次積層されて構成されている。
【0052】
第2半導体層14と透光性導電層21との間には、酸化ニオブからなる第1透光性絶縁層16と、酸化シリコンからなる第2透光性絶縁層15とが半導体層側から順に配置されている。
上述した透光性導電層21、金属部材22、第1透光性絶縁層16及び第2透光性絶縁層15により、電極構造体23が形成されている。
第2透光性絶縁層15は、その外縁が、第1透光性絶縁層16の外縁よりも外側に位置するように、つまり、第2透光性絶縁層15の全面が、第1透光性絶縁層16上に配置するように積層されている。
また、第2透光性絶縁層15は、その外縁が、金属部材22の外縁よりも外側に位置するように、つまり、金属部材22の全面が、透光性導電層21を介して第2透光性絶縁層15上に位置するように形成されている。
【0053】
第1半導体層12の上面には、透光性導電層21及び金属部材22からなる第2電極20と同様の材料によって、透光性導電層31及び金属部材32からなる第1電極30が形成されており、透光性導電層31の全面が、第1半導体層12上に直接接触しており、オーミック接続されている。
【0054】
この実施例の発光素子10では、例えば、素子サイズが700×300μm、第2半導体層14に接続する第1透光性絶縁層16の総面積が20000μm
2、透光性導電膜(ITO)と第2半導体層14との接触面積が150000μm
2である。
【0055】
このような発光素子は、以下の製造方法により作製することができる。
(半導体層の形成)
サファイアからなる基板11の上に、MOVPE反応装置を用い、Al
0.1Ga
0.9Nよりなるバッファ層を10nm、ノンドープGaN層を1.5μm、第1半導体層12として、SiドープGaNよりなるn型コンタクト層を2.165μm、GaN層(4nm)とInGaN層(2nm)とを交互に10回積層させた超格子のn型クラッド層64nmを形成する。その上に、最初に膜厚が3nmのIn
0.3Ga
0.7Nからなる井戸層と膜厚が15nmのアンドープGaNからなる障壁層が、障壁層から繰り返し交互に6層ずつ積層され、最後に障壁層が積層されて形成された多重量子井戸構造の発光層13(総膜厚123nm)を形成する。その上に、第2半導体層14として、MgドープAl
0.1Ga
0.9N層(4nm)とMgドープInGaN層(2nm)とを交互に10回積層させた超格子のp型クラッド層を0.2μm、MgドープGaNよりなるp型コンタクト層を0.5μmの膜厚でこの順に成長させ、ウェハを得た。
【0056】
得られたウェハを反応容器内で、窒素雰囲気中、600℃にてアニールし、p型クラッド層及びp型コンタクト層をさらに低抵抗化した。
【0057】
(電極の形成)
アニール後、ウェハを反応容器から取り出し、第2半導体層14上に、所定形状のパターンを有するレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして使用して、スパッタ法によって、酸化ニオブ及び酸化シリコンを順次成膜した。その後、リフトオフ法を利用して、
図3(a)に示したように、これら膜を所望形状にパターニングして、半導体層14上に、第1透光性絶縁層16及び第2透光性絶縁層15を形成した。なお、第1透光性絶縁層16及び第2透光性絶縁層15が積層された半導体層14の表面には、スパッタでの粒子の衝突によるダメージ領域14aが発生する。また、第1透光性絶縁層16は、第2透光性絶縁層15に比較して、非常に薄膜であるために、リフトオフ法によるバリ等はほとんど発生しない。
【0058】
続いて、バッファードフッ酸を用いて、常温でウェットエッチングを行い、第2透光性絶縁層15の外縁を、第1透光性絶縁層16の外縁よりも内側に位置するように第2透光性絶縁層15を加工した。なお、このウェットエッチングによっては、第1透光性絶縁層16はほとんどエッチングされず、第2透光性絶縁層16の周辺に発生するバリ及びその側面がエッチングされ、若干その大きさが小さくなる。
その後、得られたウェハの表面に、ITOからなる膜を成膜してパターニングすることにより、
図3(c)に示したように、第2半導体層14及び露出した第1半導体層12の略全面に、それぞれ透光性導電層21,31を形成した。
次に、得られたウェハ上に、Rh膜(厚み100nm)、W膜(厚み50nm)及びAu膜(厚み500nm)を順次積層し、上述した形状にパターニングして、
図3(c)に示したように、金属部材22,32をそれぞれ形成し、第2電極20及び第1電極30を形成した。
【0059】
さらに、サファイアからなる基板11を裏面側から研磨して薄膜化し、続いて、スクライブすることによって、発光素子のチップを形成した。
【0060】
実施例2
この実施例2の発光素子40は、
図2A及び
図2Bに示したように、第1半導体層12の上に電極構造体33が配置されている以外は、実施形態1の発光素子10と同様の構成を有する。
つまり、第1半導体層12と、その上に形成された第1電極50との間に、第1透光性絶縁層66及び第2透光性絶縁層65が配置されている。
ここで、第1半導体層12上の第1透光性絶縁層66及び第2透光性絶縁層65は、第2半導体層14上のそれらと同様の材料によって形成されているが、第2透光性絶縁層65の外縁は、第1透光性絶縁層66の外縁よりも内側に位置している。
また、第2透光性絶縁層65の外縁は、透光性導電層51の外縁の内側であり、かつ、金属部材52の外縁の外側に配置している。
【0061】
(発光素子の評価1)
第2透光性絶縁層(酸化シリコン)/第1透光性絶縁層(酸化ニオブ)の厚みを変化させる以外、実施例1と同様にして得られたウェハにおいて、製造時の熱応力で剥がれた第2透光性絶縁層の個数を自動外観装置にてカウントし、第2透光性絶縁層の剥がれ率(ppm)を算出した。なお、さらにウェハから個片化した発光素子を砲弾型(直径5mm)の発光装置に実装し、通常の使用電流域にて発光させた場合の順方向電圧(V)及び光出力(mW)についても確認した。
比較例として、第1透光性絶縁層を形成しない以外、上記と同様にして得られた発光装置を用いた。
【0062】
【表1】
評価例1A〜1Dは、比較例2と比べて光出力および順方向電圧を維持したまま、顕著に剥がれ率を低減することができた。また、第1透光性絶縁層の厚みが大きくなるにつれて、剥がれ率をより低減することができた。
【0063】
(発光素子の評価2)
第2透光性絶縁層(酸化シリコン)/第1透光性絶縁層(酸化ニオブ)の厚みを変化させる以外、実施例1と同様にして得られたウェハにおいて、製造時の熱応力で剥がれた第2透光性絶縁層の個数を自動外観装置にてカウントし、第2透光性絶縁層の剥がれ率(ppm)を算出した。なお、さらにウェハから個片化した発光素子を砲弾型(直径5mm)の発光装置に実装し、通常の使用電流域にて発光させた場合の順方向電圧(V)及び光出力(mW)についても確認した。
比較例として、第1透光性絶縁層を形成しない以外、上記と同様にして得られた発光装置を用いた。
【0064】
【表2】
評価例2A〜2Dはいずれも、比較例2と比べて光出力および順方向電圧を維持したまま、顕著に剥がれ率を低減することができた。また、第1透光性絶縁層の厚みが大きくなる、特に10nm以上のとき剥がれをなくすことができた。
なお、本評価に用いた各サンプルは、評価1に用いたサンプルと同様の条件で作成したものではあるが、評価1とは別のウェハから得られたサンプルであるため、評価例1Dと評価例2Aとで異なる剥がれ率を示している。ただし、同一ウェハから得られたサンプル同士を比較する場合、剥がれ率には同様の傾向が現れるため、評価2における剥がれ率の比較自体に問題は無いものとする。