特許第6040846号(P6040846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040846
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】セレンテラジン類縁体
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20161128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161128BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALI20161128BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C07D487/04 144
   C07D487/04CSP
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/66
   G01N21/76
【請求項の数】17
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-80734(P2013-80734)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-201565(P2014-201565A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 由依子
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−515977(JP,A)
【文献】 特開2008−000073(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090319(WO,A1)
【文献】 特開2004−002212(JP,A)
【文献】 特開2002−325578(JP,A)
【文献】 特開2009−065925(JP,A)
【文献】 Biochemical and Biophysical Research Communications,1997年,233(2),349-353
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C12N 15/00
C12Q 1/66
G01N 21/76
CAplus/REGISTRY(STN)
MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
で表わされる化合物
(式中、
1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルプロペニル、またはチオフェン−2−イルである)。
【請求項2】
一般式(1)において、R1はベンジル、たはp−ヒドロキシベンジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)において、R1はベンジルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
下記一般式(1)
【化2】
で表わされる化合物
(式中、
1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルプロペニル、またはチオフェン−2−イルである)
の製造方法であって、
下記一般式(2)
【化3】
で表わされる化合物(式中、R1フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルプロペニル、またはチオフェン−2−イルである)を、
下記一般式(3)
【化4】
で表わされる化合物と反応させて、一般式(1)で表わされる化合物を得ることを含む方法。
【請求項5】
一般式(1)において、R1はベンジル、たはp−ヒドロキシベンジルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
一般式(1)において、R1はベンジルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(i) 請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物;ならびに
(ii) ルシフェラーゼ、前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転換体から選択される少なくとも1つ;
を含む、キット。
【請求項8】
前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質である、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
である、請求項7に記載のキット。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物とルシフェラーゼとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
【請求項12】
前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドをレポーター遺伝子として用い、発光基質として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物を用いることを含む、プロモーター制御に関与する配列の活性を測定する方法。
【請求項15】
前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンテラジン類縁体、その使用方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
生物発光は、ルシフェリン(発光基質)−ルシフェラーゼ(発光を触媒する酵素)反応と呼ばれる生体内における化学反応にもとづく現象である。国内外で古くからルシフェリンやルシフェラーゼの同定研究をはじめ、分子レベルでの発光メカニズムの解明など、数多くの研究が行われてきた。
【0003】
生物発光反応で使用される発光基質の中で、イミダゾピラジノン骨格を有する化合物を利用する海洋性生物が多く知られている。
【0004】
中でもセレンテラジン(coelenterazine: CTZ)は、レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ、オプロフォーラス(Oplophorus)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ等の発光基質、またはオワンクラゲ由来の発光タンパク質イクオリンの発光源としても知られている。種々のルシフェラーゼ及び発光タンパク質の発光基質として利用されている共通の化合物であり、CTZについてこれまでに多くの研究成果が蓄積している(非特許文献1〜9)。
【0005】
【化1】
【0006】
セレンテラジンを発光基質とする発光反応系は、発光基質と酸素のみで発光反応が進むため、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイが汎用されている。
【0007】
これまでに50種類程度のセレンテラジン類縁体(CTZアナログ)が合成され、それらを基質として、各種ルシフェラーゼについてその発光特性が検討されてきた(非特許文献6〜10)。
【0008】
さらに、セレンテラジン自身は水溶液中において、容易に酸化分解することもと示されている(非特許文献9)。
【0009】
オプロフォーラスルシフェラーゼは分子量35kDaの蛋白質と19kDaの蛋白質より構成されている。発光を触媒するドメインは、19kDa蛋白質にあり、近年、19kDa蛋白質へのアミノ酸の変異導入により、天然19kDa蛋白質より高い活性を示す19kDa発光触媒ドメインが開示されている (非特許文献10)。
【0010】
特に、オプロフォーラスルシフェラーゼおよび発光を触媒する19 kD蛋白質は、他のセレンテラジン系ルシフェラーゼに比べて、基質特性が広く、セレンテラジンに比べ5倍以上高い発光活性を示すセレンテラジン類縁体を見出すことは容易ではない(非特許文献6〜10)。さらに、生物発光イメージング等に使用する場合、発光反応液である水溶液中で酸化分解しにくいセレンテラジンも所望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Teranishi K. (2007) Bioorg. Chem. 35, 82−111.
【非特許文献2】Shimomura O. et al. (1990) Biochem. J. 270, 309−312.
【非特許文献3】Shimomura O. et al. (1988) Biochem. J. 251, 405−410.
【非特許文献4】Shimomura O. et al. (1989) Biochem. J. 261, 913−920.
【非特許文献5】Inouye S.& Shimomura O. (1997) Biochem. Biophys. Res. Commun. 233, 349−353
【非特許文献6】Nakamura H. et al. (1997)Tetrahedron Lett. 38, 6405−6406.
【非特許文献7】Wu C. et al. (2001) Tetrahedron Lett. 42, 2997−3000.
【非特許文献8】Inouye S. & Sasaki S. (2007) Protein Express. Purif. 56, 261−268.
【非特許文献9】Inouye S. et al. (2013) Protein Express. Purif. 88, 150−156.
【非特許文献10】Hall M.P. et al. ACS Chem. Biol. 2012; 7: 1848−1857.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
セレンテラジンは数多くの海洋性発光生物由来ルシフェラーゼ共通の発光基質となるが、これらルシフェラーゼ間の一次構造に顕著な相同性は見られず、触媒部位も明らかになっていない。そのため、発光基質やルシフェラーゼ蛋白質を精密分子設計しルシフェラーゼ蛋白質に最適なルシフェリンを予測することは不可能であり、個々のルシフェラーゼについて適した基質を見つけるには、セレンテラジン類縁体の中よりスクリーニングする必要がある。
上記状況に下、各種ルシフェラーゼに対して公知のセレンテラジン類縁体と異なる発光特性を示すセレンテラジン類縁体などが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セレンテラジンの2位のベンゼン環上の水酸基の代りにフッ素及び6位のベンゼン環より水酸基を脱離した新規セレンテラジン類縁体が、各種ルシフェラーゼに対して公知のセレンテラジン類縁体と異なる発光特性を有することなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示す、セレンテラジン類縁体、セレンテラジン類縁体の製造方法、キット、発光方法などを提供する。
[1] 下記一般式(1)
【化2】
で表わされる化合物
(式中、
1は、水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;または複素環基である)。
[2] 一般式(1)において、
1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプロペニル、アダマンチルメチルまたはチオフェン−2−イルである、上記[1]に記載の化合物。
[3] 一般式(1)において、R1はベンジル、α−ヒドロキシベンジルまたはp−ヒドロキシベンジルである、上記[2]に記載の化合物。
[4] 一般式(1)において、R1はベンジルである、上記[3]に記載の化合物。
[5] 下記一般式(1)
【化3】
で表わされる化合物
(式中、
1は、水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;または複素環基である)
の製造方法であって、
下記一般式(2)
【化4】
で表わされる化合物(式中、R1は水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;または複素環基である)を、
下記一般式(3)
【化5】
で表わされる化合物と反応させて、一般式(1)で表わされる化合物を得ることを含む方法。
[6] 一般式(1)において、
1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプロペニル、アダマンチルメチルまたはチオフェン−2−イルである、上記[5]に記載の方法。
[7] 一般式(1)において、R1はベンジル、α−ヒドロキシベンジルまたはp−ヒドロキシベンジルである、上記[6]に記載の方法。
[8] 一般式(1)において、R1はベンジルである、上記[7]に記載の方法。
[9] (i) 上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物;ならびに
(ii) ルシフェラーゼ、前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転換体から選択される少なくとも1つ;
を含む、キット。
[10] 前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)ルシフェラーゼの19kDa蛋白質である、上記[9]に記載のキット。
[11] 前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、上記[9]に記載のキット。
[12] 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
である、上記[9]に記載のキット。
[13] 上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物とルシフェラーゼとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
[14] 前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)ルシフェラーゼの19kDa蛋白質である、上記[13]に記載の方法。
[15] 前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、上記[13]に記載の方法。
[16] ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドをレポーター遺伝子として用い、発光基質として、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を用いることを含む、プロモーター制御に関与する配列の活性を測定する方法。
[17] 前記ルシフェラーゼが、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)ルシフェラーゼの19kDa蛋白質である、上記[16]に記載の方法。
[18] 前記ルシフェラーゼが、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質:
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質
である、上記[16]に記載の方法。
[19] 前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド:
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
である、上記[16]に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、各種ルシフェラーゼに対して公知のセレンテラジン類縁体と異なる発光特性を示すセレンテラジン類縁体を提供する。本発明の好ましい態様のセレンテラジン類縁体は、基質特異性の広い天然オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質より高い活性を示す変異19kDa蛋白質に適した基質となる。また、本発明の好ましい態様のセレンテラジン類縁体は、セレンテラジンと比較して水溶液中での安定性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ガウシアルシフェラーゼの分泌配列を有する発現べクター pcDNA3−GLspのプラスミドマップを示す図である。
図2】pcDNA3−GLsp−nanoKazのプラスミドマップを示す図である。
図3】セレンテラジン類による組換えnanoKAZの発光パターンの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。

1.本発明のセレンテラジン類縁体
本発明は、次の下記一般式(1)で表わされる化合物(本明細書中において「本発明のセレンテラジン類縁体」という場合がある)を提供する。
【0018】
【化6】
(式中、
1は、水素;置換若しくは非置換のアリール;置換若しくは非置換のアリールアルキル;置換若しくは非置換のアリールアルケニル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル;脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル;脂肪族環式基;または複素環基である)
【0019】
1の「置換若しくは非置換のアリール」は、例えば、1〜5個の置換基を有するアリール、又は非置換のアリールである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、及び炭素数1〜6個のジアルキルアミノからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。本発明のいくつかの態様では、置換基は水酸基である。「置換若しくは非置換のアリール」は、具体的には、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、p−アミノフェニル、p−ジメチルアミノフェニルなどであり、好ましくは、フェニル、又はp−ヒドロキシフェニルである。本発明のいくつかの態様では、「置換若しくは非置換のアリール」は、非置換のアリールであり、例えば、フェニルである。
【0020】
1の「置換若しくは非置換のアリールアルキル」は、例えば1〜5個の置換基を有する炭素数7〜10個のアリールアルキル、又は非置換の炭素数7〜10個のアリールアルキルである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、及び炭素数1〜6個のジアルキルアミノが挙げられる。「置換若しくは非置換のアリールアルキル」は、例えば、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、p−ジメチルアミノベンジル、又はフェニルエチルであり、好ましくは、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、又はフェニルエチルである。本発明のいくつかの態様では、「置換若しくは非置換のアリールアルキル」は、ベンジルである。
【0021】
1の「置換若しくは非置換のアリールアルケニル」は、例えば、1〜5個の置換基を有する炭素数8〜10個のアリールアルケニル、又は非置換の炭素数8〜10個のアリールアルケニルである。置換基としては、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、水酸基、炭素数1〜6個のアルキル、炭素数1〜6個のアルコキシル、アミノ、及び炭素数1〜6個のジアルキルアミノが挙げられる。「置換若しくは非置換のアリールアルケニル」は、例えば、フェニルビニル、p−ヒドロキシフェニルビニル、又はp−ジメチルアミノフェニルビニルである。本発明のいくつかの態様では、「置換若しくは非置換のアリールアルケニル」は、非置換のアリールアルケニルであり、例えば、フェニルビニルである。
【0022】
1の「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、非置換の直鎖若しくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキル、又は例えば1〜10個の脂肪族環式基によって置換された直鎖若しくは分枝鎖の炭素数1〜4個のアルキルである。脂肪族環式基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、又はシクロプロピルが挙げられる。好ましくは、脂肪族環式基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、又はアダマンチルである。「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロブチルメチル、又はシクロプロピルメチルであり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、又はシクロヘキシルエチルである。本発明のいくつかの態様では、「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルキル」は、脂肪族環式基によって置換されていてもよい直鎖のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、アダマンチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、又はシクロヘキシルエチルである。
【0023】
1の「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル」は、非置換の直鎖若しくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルケニル、又は例えば1〜10個の脂肪族環式基によって置換された直鎖若しくは分枝鎖の炭素数2〜6個のアルケニルである。脂肪族環式基としては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、又はシクロプロピルが挙げられる。好ましくは、脂肪族環式基は、シクロヘキシル、シクロペンチル、又はアダマンチルである。「脂肪族環式基によって置換されていてもよいアルケニル」は、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、又は2−メチルプロペニルであり、好ましくは、2−メチルプロペニルである。
【0024】
1の「脂肪族環式基」は、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、アダマンチル、シクロブチル、又はシクロプロピルが挙げられる。好ましくは、脂肪族環式基は、シクロペンチル、又はシクロヘキシルである。
【0025】
1の「複素環基」は、環を構成する原子として炭素以外にN、O、及びSからなる群から選択される1〜3個の原子を含む例えば5〜7員環であって炭素を介して結合する基、又は2つ以上のそのような環が縮環したものであって炭素を介して結合する基、若しくはそのような環とベンゼン環が縮環したものであって炭素を介して結合する基である。「複素環基」は、例えば、チオフェン−2−イル、2-フラニル、又は4-ピリジルである。本発明のいくつかの態様では、「複素環基」は、硫黄を含む複素環基であり、例えば、チオフェン−2−イルである。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、R1は、フェニル、p−ヒドロキシフェニル、ベンジル、α−ヒドロキシベンジル、p−ヒドロキシベンジル、フェニルエチル、フェニルビニル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、メチル、エチル、プロピル、2−メチルプロピル、2−メチルプロペニル、アダマンチルメチルまたはチオフェン−2−イルである。
【0027】
本発明のさらに好ましい態様によれば、R1は、ベンジルである。一般式(1)で表わされる化合物のうちR1がベンジルであるものは、下記式で表わされる化合物(本明細書中で、「C6d−f−セレンテラジン」または「C6d−f−CTZ」という場合がある。)である。
【0028】
【化7】
【0029】
本発明のある態様のセレンテラジン類縁体は、公知のセレンテラジン類縁体と異なる発光特性を示す。
【0030】
2.本発明のセレンテラジン類縁体の製造方法
一般式(1)で表わされる化合物(「本発明のセレンテラジン類縁体」)は、次のようにして製造することができる。
【0031】
すなわち、下記一般式(2)
【化8】
で表わされる化合物を、
(式中、Rは前記の通りである)
下記一般式(3)
【化9】
で表わされる化合物と反応させることにより、一般式(1)で表わされる化合物を得ることができる。
【0032】
一般式(2)で表わされる化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、一般式(2)で表わされる化合物は、Kishi, Y. et al., Tetrahedron Lett., 13, 2747-2748 (1972)、又はAdamczyk, M. et al., Org. Prep. Proced. Int., 33, 477-485 (2001)に記載の方法又はそれに準ずる方法で製造することができる。より具体的には、次のようにして、一般式(2)で表わされる化合物を製造することができる。すなわち、まず、ルイス酸触媒を用いて置換フェニルグリオキサールアルドキシムとグリシノニトリル誘導体との環化反応を行い、ピラジンオキシドを形成した後、Raney Ni等を触媒として用いた接触水素還元により製造するか、又は2−アミノ−5−ブロモピラジン誘導体と置換フェニルホウ酸或は置換フェニルホウ酸ピナコールエステルとの鈴木-宮浦カップリング反応を行うことで、一般式(2)で表わされる化合物を製造できる。
【0033】
一般式(3)で表わされる化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、一般式(3)で表わされる化合物は、Adamczyk, M. et al., Synth. Commun., 32, 3199-3205 (2002)、又はBaganz, H. & May, H.−J. Chem. Ber., 99, 3766−3770 (1966) 及びBaganz, H. & May, H.−J. Angew. Chem., Int. Ed. Eng., 5, 420 (1966)に記載の方法又はそれに準ずる方法で製造することができる。より具体的には、次のようにして、一般式(3)で表わされる化合物を製造することができる。すなわち、置換ベンジルGrignard反応剤をジエトキシ酢酸エチルと低温(−78 ℃)で反応させるか、又はエタノール中でα−ジアゾ−α‘−置換フェニルケトンに次亜塩素酸tert−ブチルを作用させることで、一般式(3)で表わされる化合物を製造することができる。
【0034】
ここで、本発明の一般式(1)で表わされる化合物の製造方法において使用される溶媒は、特に限定されず、種々のものを使用できる。例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エーテル、メタノール、エタノール、又は水であり、これらは単独で又は混合して使用することができる。
また、本発明の一般式(1)で表わされる化合物の製造方法において、反応温度及び反応時間は、特に限定されないが、例えば、0℃〜200℃で1時間〜96時間、室温〜150℃で3時間〜72時間、又は60℃〜120℃で6時間〜24時間である。
【0035】
3.本発明の蛋白質
本発明の蛋白質は、天然オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質の変異蛋白質であり、配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する蛋白質である。
【0036】
「配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性」とは、例えば、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性(本明細書中で、単に「発光活性」という場合がある。)、すなわち、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)が酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成する反応を触媒するようになる活性を意味する。なお、励起状態で生成したオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。
【0037】
このような活性もしくは機能は、例えば、Inouye, S. & Shimomura, O. (1977) Biochem. Biophys. Res. Commun. 233,349−353に記載の方法によって測定することができる。具体的には、本発明の蛋白質をルシフェリンと混合することにより発光反応を開始させ、発光測定装置を用いて発光触媒活性を測定することができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えばLuminescencer−PSN AB2200(アトー社製)、またはCentro 960 luminometer (ベルトール社製)を使用することができる。
【0038】
本発明で用いられるルシフェリンとしては、本発明の蛋白質の基質となるルシフェリンであればよい。本発明で用いられるルシフェリンとしては、具体的にはイミダゾピラジノン環を主骨格とするセレンテラジン類が挙げられる。
【0039】
セレンテラジン類は、セレンテラジンまたはその類縁体(例えば、本発明のセレンテラジン類縁体)のことを意味する。セレンテラジン類は、公知の方法で合成してもよく、あるいは、市販のものを入手することもできる。本発明のセレンテラジン類縁体の製造方法は、前述の通りである。
【0040】
「ルシフェリンを基質とする発光触媒活性」は、好ましくは、セレンテラジン類を基質とする発光触媒活性である。「セレンテラジン類を基質とする発光触媒活性」は、好ましくは、本発明のセレンテラジン類縁体を基質とする発光触媒活性である。「本発明のセレンテラジン類縁体を基質とする発光触媒活性」は、さらに好ましくは、本発明のセレンテラジン類縁体を基質としたときにセレンテラジンと比較して5倍以上高い相対最大発光強度を示す発光触媒活性であり、特に好ましくは、本発明のセレンテラジン類縁体を基質としたときにセレンテラジンと比較して5倍以上高い相対最大発光強度を示し、かつ、連続的に発光する発光触媒活性である。相対最大発光強度における「5倍以上」は、例えば、5〜20倍、5〜15倍、5〜14倍、5〜13倍、5〜12倍、または5〜11倍である。「連続的に発光」における連続発光時間は、例えば、1分〜120分、1分〜60分、1分〜30分、1分〜15分、1分〜10分、1分〜5分または1分〜3分である。
【0041】
「配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する蛋白質」は、例えば、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質である。
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、および
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質。
【0042】
本願明細書において「1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1〜8個のアミノ酸配列中の位置において、1〜8個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0043】
「1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜8個」の範囲は、例えば、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997) ”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0044】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0045】
配列番号:1のアミノ酸配列において1〜8個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列において、配列番号:1のアミノ酸配列の6番目のGlu、13番目のArg、20番目のLeu、29番目のLeu、35番目のAsn、45番目のArg、46番目のIle、56番目のIle、70番目のAsp、74番目のGln、77番目のLys、92番目のVal、117番目のGlu、126番目のLys、140番目のIle、および168番目のArgの全てのアミノ酸が欠失または置換されていないのが好ましい。
【0046】
本願明細書において、「95%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「95%以上」の範囲は、例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0047】
また、本発明の蛋白質は、後述の本発明のポリヌクレオチドにコードされる蛋白質であってもよい。
【0048】
好ましくは、本発明の蛋白質は、下記(a)〜(c)からなる群から選択される蛋白質である。
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含有する蛋白質、
(b)配列番号:1のアミノ酸配列において1〜4個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質、および
(c)配列番号:1のアミノ酸配列に対して98%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質。
【0049】
さらに好ましくは、本発明の蛋白質は、配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリぺプチドを含有する蛋白質である。
【0050】
本発明の蛋白質は、さらに他のペプチド配列をN末端および/またはC末端、好ましくはN末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、および抗体認識可能なエピトープ配列からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。他のペプチド配列は、好ましくは、精製のためのペプチド配列および/または分泌シグナルペプチド配列である。本発明の別の好ましい態様では、他のペプチド配列は、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、および本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するための配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列である。
【0051】
本発明の蛋白質は、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列が含まれていてもよい。
【0052】
翻訳促進のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、例えば、TEE配列が挙げられる。
精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、例えば、ヒスチジン残基が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列、プロテインAのアミノ酸配列、およびアビジンタグ配列が挙げられる。
【0053】
分泌シグナルペプチドとは、当該分泌シグナルペプチドに結合された蛋白質を、細胞膜透過させる役割を担うペプチド領域を意味する。このような分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、当技術分野において周知であり、報告されている(例えばvon Heijine G (1988) Biochim. Biohys. Acra 947: 307−333、von Heijine G (1990) J. Membr. Biol. 115: 195−201参照)。分泌シグナルペプチドとしては、より具体的には、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)(Ghrayeb, J. et al. (1984) EMBO J. 3:2437−2442)、コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌シグナルペプチド、および後述の実施例で用いたガウシアルシフェラーゼの分泌シグナルペプチドが挙げられる。
【0054】
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列としては、例えば式(Z)nで表わされるポリペプチド(特にはZZドメイン)を挙げることができる。式(Z)nで表わされるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列としては、特開2008−99669号に記載したものなどが挙げられる。
【0055】
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。
【0056】
本発明のいくつかの態様の蛋白質は、配列番号:6または配列番号7のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含有する蛋白質である。
【0057】
本発明の蛋白質の取得方法については特に制限はない。本発明の蛋白質としては、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組換え技術により調製した組換え蛋白質であってもよい。本発明の蛋白質を化学合成する場合には、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明の蛋白質を遺伝子組換え技術により調製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により調製することができる。より具体的には、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明の蛋白質を調製することができる。
【0058】
4.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドとしては、具体的には、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチドが挙げられる。
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【0060】
ここで、「ルシフェリンを基質とする発光触媒活性」は、前述の通りである。
【0061】
「1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列」とは、同一配列中の任意かつ1〜複数個の塩基配列中の位置において、1〜複数個の塩基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0062】
「1〜複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、又は1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加した塩基の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記塩基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997) ”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0063】
ある塩基配列に対して、1もしくは複数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加したポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271−275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468−500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350−367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488−492 (1985)、およびKunkel, Methods Enzymol. 85, 2763−2766 (1988)参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456 (1984)参照)などを用いることにより得ることができる。
【0064】
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
【0065】
また欠失変異体の一種である蛋白質の部分断片をコードするポリヌクレオチドは、その蛋白質をコードするポリヌクレオチド中の調製したい部分断片をコードする領域の5’端の塩基配列と一致する配列を有するオリゴヌクレオチドおよび3’端の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、その蛋白質をコードするポリヌクレオチドを鋳型にしたPCRを行うことにより取得できる。
【0066】
「90%以上の同一性を有する塩基配列」における「90%以上」の範囲は、例えば、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0067】
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:2の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0068】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0069】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0070】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0071】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、又は99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0072】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリヌクレオチドである。
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜20個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して95%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:2の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【0073】
本発明のさらに好ましい態様のポリヌクレオチドは、以下の(a)〜(c)からなる群から選択されるポリヌクレオチドである。
(a)配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2の塩基配列において1〜10個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加した塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2の塩基配列に対して98%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【0074】
本発明の特に好ましい態様のポリヌクレオチドとして、配列番号:2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドが挙げられる。
【0075】
本発明のポリヌクレオチドは、他のペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、および抗体認識可能なエピトープ配列からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドは、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0077】
翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0078】
精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0079】
分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、当記述分野において知られている分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。分泌シグナルペプチドとしては、前記したものなどが挙げられる。
【0080】
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当記述分野において知られている可溶性タンパク質として発現するためのペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチドとしては、前記したものなどが挙げられる。
【0081】
制限酵素サイトのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。
【0082】
本発明のいくつかの態様のポリヌクレオチドは、配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドである。
【0083】
5.カルシウム結合型発光蛋白質の製造方法
本発明のカルシウム結合型発光蛋白質は、本発明のセレンテラジン類縁体と、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを接触させて、カルシウム結合型発光蛋白質を得ることにより、製造又は再生することができる。
【0084】
ここで、「接触」とは、本発明のセレンテラジン類縁体とカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、本発明のセレンテラジン類縁体を収容した容器にカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質を添加すること、カルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質を収容した容器に本発明のセレンテラジン類縁体を添加すること、又は本発明のセレンテラジン類縁体とカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質とを混合することが含まれる。本発明の1つの態様によれば、接触は、還元剤(例えば、メルカプトエタノール、又はジチオスレイトール)及び酸素の存在下、低温で行う。より具体的には、本発明の発光蛋白質は、例えば、Shimomura, O. et al. Biochem. J. 251, 405−410 (1988)、及び Shimomura, O. et al. Biochem. J. 261, 913−920(1989)に記載の方法によって製造又は再生することができる。本発明のカルシウム結合型発光蛋白質は、酸素存在下において、本発明のセレンテラジン類縁体と分子状酸素から生成するセレンテラジン類縁体のペルオキシドと、アポ蛋白質とが複合体を形成した状態で存在する。前記複合体にカルシウムイオンが結合すると、瞬間的な発光を示し、セレンテラジン類縁体の酸化物であるセレンテラミド類縁体と二酸化炭素を生成する。前記複合体を「本発明のカルシウム結合型発光蛋白質」と称することがある。
【0085】
本発明のカルシウム結合型発光蛋白質を製造するのに用いるアポ蛋白質は、天然から採取したものであっても、遺伝子工学的に製造したものであってよい。さらに、アポ蛋白質は、カルシウム結合型発光蛋白質を製造できるものであれば、そのアミノ酸配列を天然のものから遺伝子組換え技術によって変異させたものであってもよい。アポ蛋白質は、具体的には、アポイクオリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、アポオベリン、アポマイトロコミン、アポミネオプシン、又はアポベルボイン、それらの変異蛋白質等である。本発明のいくつかの態様では、アポ蛋白質は、アポイクオリン、アポオベリン、アポクライティン−I、アポクライティン−II、もしくはマイトロコミン、またはそれらの変異蛋白質等であり、好ましくは、アポイクオリンまたはその変異蛋白質である。これらのアポ蛋白質は、公知の方法又はそれに準ずる方法で製造することができる。或いは、JNC株式会社等から各種市販されているので、これらの市販のものを用いてもよい。
【0086】
6.本発明のセレンテラジン類縁体の利用
発光による検出マーカーの発光基質としての利用
本発明のセレンテラジン類縁体は、発光による検出マーカーの発光基質として利用することができる。本発明のセレンテラジン類縁体は、検出マーカーの発光基質として、イムノアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用することができる。
【0087】
例えば、ルシフェラーゼまたはカルシウム結合型発光蛋白質のアポ蛋白質(以下、「ルシフェラーゼ等」という場合がある)を、目的蛋白質との融合蛋白質として発現させ、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入し、当該細胞に本発明のセレンテラジン類縁体を接触させることによって、前記目的蛋白質の分布を測定するために利用することもできる。ここで、「接触」とは、細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを同一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、細胞の培養容器に本発明のセレンテラジン類縁体を添加すること、細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを混合すること、細胞を本発明のセレンテラジン類縁体の存在下で培養することが含まれる。このような目的タンパク質などの分布の測定は、発光イメージング等の検出法などを利用して行うこともできる。なお、ルシフェラーゼ等は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
【0088】
ルシフェラーゼは、天然から採取したものであっても、遺伝子工学的に製造したものであってよい。さらに、ルシフェラーゼは、そのアミノ酸配列を天然のものから遺伝子組換え技術によって変異させたものであってもよい。また、ルシフェラーゼは、天然のルシフェラーゼの発光を触媒するドメインまたはその変異蛋白質であってもよい。ルシフェラーゼは、例えば、オプロフォーラス(Oplophorus sp.)(例えばOplophorus gracilorostris)由来のルシフェラーゼ(オプロフォーラスルシフェラーゼ)、オプロフォーラスルシフェラーゼの発光を触媒するドメイン(19kDa蛋白質)、レニラ(Renilla sp.)(例えば、Renilla reniformis、若しくはRenilla muelleri )由来のルシフェラーゼ(レニラルシフェラーゼ)およびそれらの変異蛋白質である。これらのルシフェラーゼおよびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)は、例えば、Shimomura et al. (1988) Biochem.J. 251, 405−410、Shimomura et al. (1989) Biochem. J. 261, 913−920、またはShimomura et al. (1990) Biochem. J. 270,309−312に記載の方法又はそれに準ずる方法で製造することができる。或いは、JNC株式会社、和光純薬工業株式会社及びプロメガ株式会社等から各種市販されているので、これらの市販のものを用いてもよい。本発明の蛋白質の製造方法は、前述の通りである。
【0089】
アポ蛋白質は、前述の通りである。
用いるルシフェラーゼ等は、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特に好ましい。
ここで、オプロフォーラスルシフェラーゼのうち、Oplophorus gracilorostrisルシフェラーゼの19kDa蛋白質の塩基配列を配列番号:8に、アミノ酸配列を配列番号:9に示す。
【0090】
レポーター蛋白質の発光基質としての利用
本発明のセレンテラジン類縁体は、レポーター蛋白質の発光基質として、プロモーター制御に関与する配列の活性(転写活性)の測定に利用することもできる。ルシフェラーゼ等をコードするポリヌクレオチドを、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサー)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、本発明のセレンテラジン類縁体と宿主細胞を接触させ、ルシフェリン等に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。ここで、「接触」とは、宿主細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを同一の培養系・反応系に存在させることを意味し、例えば、宿主細胞の培養容器に本発明のセレンテラジン類縁体を添加すること、宿主細胞と本発明のセレンテラジン類縁体とを混合すること、宿主細胞を本発明のセレンテラジン類縁体の存在下で培養することなどが含まれる。
【0091】
ルシフェリン等は、「発光による検出マーカーの発光基質としての利用」の項で説明した通りである。
【0092】
用いるルシフェリンは、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特に好ましい。
本発明のポリヌクレオチドは、上述のようにして、レポーター遺伝子として好ましく利用することができる。
【0093】
アミューズメント用品の材料
本発明のセレンテラジン類縁体は、アミューズメント用品の材料の発光基材としてルシフェラーゼ等を用いたときの発光基質として好適に使用することができる。アミューズメント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具等があげられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる。
用いるルシフェラーゼ等は、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特に好ましい。
【0094】
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法
本発明のセレンテラジン類縁体は、ルシフェラーゼ等の発光基質として、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活性の測定等の分析方法に利用することができる。
【0095】
例えば、ルシフェラーゼ等および本発明のセレンテラジン類縁体をドナーとして使用し、蛍光物質(例えば、有機化合物、および蛍光蛋白質)をアクセプターとして使用して、両者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことによりドナーとアクセプターとの間の相互作用を検出することができる。
【0096】
本発明のある態様では、アクセプターとして使用する有機化合物は、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などである。本発明の別の態様では、アクセプターとして使用する蛍光蛋白質は、緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどである。
【0097】
本発明の好ましい態様において、解析する生理機能は、オーファン受容体(特にG蛋白質共役受容体)、アポトーシス、または遺伝子発現による転写調節などである。また、本発明の好ましい態様において、分析する酵素は、プロテアーゼ、エステラーゼまたはリン酸化酵素などである。
BRET法による生理機能の解析は、公知の方法で行うことができ、例えば、Biochem. J. 2005, 385, 625−637、またはExpert Opin. Ther Tarets, 2007 11: 541−556に記載の方法に準じて行うことができる。また、酵素活性の測定も、公知の方法で行うことができ、例えば、Nature Methods 2006, 3:165−174、またはBiotechnol. J. 2008, 3:311−324に記載の方法に準じて行うことができる。
用いるルシフェラーゼ等は、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特に好ましい。
【0098】
7.本発明のキット
本発明は、(i)本発明のセレンテラジン類縁体、ならびに(ii)ルシフェラーゼ等、前記ルシフェラーゼ等をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転換体から選択される少なくとも1つを含むキットも提供する。本発明の好ましい態様は、(i)本発明のセレンテラジン類縁体、ならびに(ii)ルシフェラーゼ、前記ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、および前記ポリヌクレオチドを含有する形質転換体から選択される少なくとも1つを含むキットも提供する。
【0099】
用いるルシフェラーゼは、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特に好ましい。
【0100】
本発明のキットは、通常用いられる材料および方法で製造することができる。本発明のキットは、例えば、サンプルチューブ、プレート、キット使用者に対する指示書、溶液、バッファー、試薬、標準化のために好適なサンプルまたは対照サンプルを含んでもよい。本発明のキットには、さらに、ハロゲン化物イオンを含む塩などを含んでいてもよい。
【0101】
本発明のキットは、上述したレポーター蛋白質もしくはレポーター遺伝子を用いた測定、発光による検出マーカー、BRET法による生理機能の解析または酵素活性の測定などに利用することができる。また、後述の発光反応方法に用いることもできる。
【0102】
8.発光反応方法
発光反応
本発明のセレンテラジン類縁体を基質とする発光反応は、本発明のセレンテラジン類縁体とルシフェラーゼとを接触させることにより行うことができる。ここで、「接触」とは、本発明のセレンテラジン類縁体とルシフェラーゼとを同一の反応系に存在させることを意味し、例えば、ルシフェラーゼを収容した容器に本発明のセレンテラジン類縁体を添加すること、本発明のセレンテラジン類縁体を収容した容器にルシフェラーゼを添加すること、本発明のセレンテラジン類縁体とルシフェラーゼとを混合することが含まれる。反応条件としては、オプロフォーラスルシフェラーゼを用いた発光反応に通常用いられる条件またはそれに準じた条件で行うことができる。
【0103】
具体的には、反応溶媒としては、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、水、などが用いられる。
反応温度は、通常約4℃〜約40℃、好ましくは約4℃〜約25℃である。
反応溶液のpHは、通常約5〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約7〜約8、特に好ましくは約7.5である。
用いるルシフェラーゼは、オプロフォーラスルシフェラーゼの19kDa蛋白質およびその変異蛋白質(例えば、本発明の蛋白質)であるのが好ましく、本発明の蛋白質であるのが特に好ましい。
本発明のセレンテラジン類縁体は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等の極性溶媒や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールの溶液として反応系に加えてもよい。
【0104】
発光活性の活性化
本発明の蛋白質の、ルシフェリンを基質とする発光活性は、ハロゲン化物イオン、非イオン性界面活性剤などにより活性化される。
ハロゲン化物イオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどがあげられ、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが好ましい。
【0105】
ハロゲン化物イオンの濃度は、通常約10μM〜約100mM、好ましくは約100μM〜約50mM、特に好ましくは約1mM〜約20mMである。
【0106】
反応系にハロゲン化物イオンを添加する方法としては、塩として添加する方法などがあげられる。用いられる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などがあげられる。より具体的には、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2などがあげられる。
【0107】
非イオン性界面活性剤の市販品(商品名)としては、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、TritonX−100(ポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル)、Briji−58 (ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)、Nonidet P−40 (エチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)n)などがあげられ、Tween20、TritonX−100などが好ましい。
非イオン性界面活性剤の濃度は、通常約0.0002%(w/v)〜約0.2%(w/v)、好ましくは約0.001%(w/v)〜約0.1%(w/v)、特に好ましくは約0.05%(w/v)〜約0.02%(w/v)である。
【0108】
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0109】
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0110】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。
【0111】
発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0112】
以下に実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【0113】
実施例1:C6d−f−セレンテラジンの合成
1)1,1−Diethoxy−3−(4−fluorophenyl)propan−2−oneの合成
【化10】
【0114】
アルゴン雰囲気下、ジエトキシ酢酸エチル(890 μL, 5.00 mmol)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(50 mL)に−78 ℃にて、(4−fluorobenzyl)magnesium chlorideのジエチルエーテル溶液(0.25 M, 20.0 mL, 5.0 mmol)をゆっくりと滴下した。−78 ℃にて2時間撹拌した後、徐々に室温まで昇温し、12時間撹拌した。これに20%塩化アンモニウム水溶液(10 mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(×3)。有機層を水(×1)と飽和食塩水(×1)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=19/1→4/1)にて精製し、1,1−diethoxy−3−(4−fluorophenyl)propan−2−oneを無色油状物質として得た(622 mg, 2.59 mmol, 51.7%)。
TLC Rf= 0.24(n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1);
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.25 (t, 6H, J = 7.0 Hz), 3.55 (dq, 2H, J = 7.5, 9.5 Hz), 3.68 (dq, 2H, J = 7.5, 9.5 Hz), 3.86 (s, 2H), 4.62 (s, 1H), 6.97−7.02 (m, 2H), 7.15−7.19 (m, 2H)。
【0115】
2)C6d−f−coelenterazine (C6d−f−CTZ) の合成
【化11】
【0116】
アルゴン雰囲気下、1,1−diethoxy−3−(4−fluorophenyl)propan−2−one(333 mg, 1.39 mmol)を1,4−ジオキサン(2.0 mL)及び水(0.4 mL)に溶解した。これに2−amino−3−benzyl−5−phenylpyrazine(261 mg, 1.00 mmol)を加え、0 ℃に冷却した後、さらに濃塩酸(0.20 mL)を加え、100 ℃で一晩(12時間)攪拌した。室温まで放冷後、減圧濃縮し、残渣をアルゴン気流下でシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1→1/1→酢酸エチル→酢酸エチル/メタノール=50/1→20/1)で精製し、C6d−f−CTZを主として含む粗生成物(264 mg, <0.645 mmol)を得た。得られた固体をさらに再沈殿(n−ヘキサン/メタノール)することで、C6d−f−CTZを薄茶色粉末として得た(49.2 mg, 120 μmol, 12.0%)。
TLC Rf= 0.35(酢酸エチル);
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ4.29 (s, 2H), 4.58 (s, 2H), 7.05−7.09 (m, 2H), 7.24−7.28 (m, 1H), 7.31−7.34 (m, 4H), 7.42 (d, 2H, J = 7.0 Hz), 7.49−7.56 (m, 3H), 7.93 (br d, 2H, J = 7.0 Hz), 8.54 (s, 1H)。
【0117】
実施例2:コドン最適化核酸の設計および化学合成
天然型オプロフォーラスルシフェラーゼの触媒19kDaドメイン(「KAZ」と略することもある)より変異導入して創出されたプロメガ社の変異オプロフォーラスルシフェラーゼの触媒19kDaドメイン(「nanoLuc」と略することもある)のアミノ酸配列(配列番号:1)をもとに、コドン最適化オプロフォーラスルシフェラーゼの触媒変異19kDaドメイン(「nanoKAZ」と略することもある)の遺伝子設計を行った。具体的には、nanoLucのアミノ酸配列(配列番号:1)を変えることなく、ヒトにおける高頻度使用のアミノ酸コドンのみを使用し、nanoKAZの塩基配列の設計を行った(配列番号:2)。最適化設計したコドン最適化nanoKAZドメイン遺伝子を、常法により化学合成法により合成した。
【0118】
実施例3:動物培養細胞でガウシアルシフェラーゼの分泌シグナル配列を使用してコドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質を分泌発現するベクターの構築
コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質発現ベクターの構築は以下の通りである。
先ず、動物培養細胞での新規発現ベクターpcDNA3−GLspを構築した(図1)。具体的には、pcDNA3−GLucベクター(プロルミ社製)よりガウシアルシフェラーゼの分泌シグナル配列をプライマーGLsp−1R/EcoRI (配列番号:3:5' ggc GAA TTC GGT GGG CTT GGC CTC GGC CAC 3'、アンダーラインEcoRI 配列)とT7プライマー(配列番号:4:5' TAATACG ACTCACTATAGGG 3')を用いPCR法により取得し、それをHindIII/EcoRIで消化後、得られた断片を、pcDNA3ベクター(インビトロジェン社製)の制限酵素部位であるHindIII/EcoRI部位に挿入することにより、新規発現ベクターpcDNA3−GLspを構築した。すなわち、新規発現ベクターは、CMVのプロモーターに制御され、その下流にコザック配列、ガウシアルシフェラーゼの分泌シグナル配列、マルチクローニングサイト配列を有する。
【0119】
次に、新規発現ベクターpcDNA3−GLspを用いたコドン最適化nanoKAZドメインタンパク質発現ベクターpcDNA3−GLsp-nanoKAZ(図2)の構築は以下の通りである。
【0120】
コドン最適化nanoKAZドメイン遺伝子配列フラグメントを常法により制限酵素EcoRI/XbaIにて消化した後、pcDNA3−GLspのEcoRI−XbaI 部位に連結することによって、図2に示す発現ベクターpcDNA3−GLsp−nanoKAZを構築した。なお、DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、インサート遺伝子配列の確認を行った。
【0121】
発現ベクターpcDNA3−GLsp-nanoKAZがコードするGLsp-nanoKAZの塩基配列を配列番号:5に示し、そのアミノ酸配列を配列番号:6に示す。また、その分泌後のアミノ酸配列を、配列番号:7に示す。
【0122】
実施例4:動物培養細胞へのベクターの導入および測定用酵素の調製法
(1)発現プラスミドの精製
実施例3にて得られたpcDNA3−GLsp−nanoKAZプラスミドを用いて以下の実験を行った。pcDNA3−GLsp−nanoKAZ プラスミドは大腸菌JM83より、プラスミド精製キット(QIAGEN社製)を用いて精製し、1μg/μLの濃度になるよう滅菌水に溶解した。
【0123】
(2)トランスフェクションおよび測定用酵素の調製法
チャイニーズハムスター卵巣由来の細胞株CHO−KI株を、10%(v/v)牛胎児血清(バイオウエスト社製)を含むHam’s F−12培地(和光純薬社製)にて培養し、10%(v/v)牛胎児血清(バイオウエスト社製)を含むDMEM(和光純薬社製)で培養した。それぞれの細胞を1 x 10細胞/ウエル/2 mL培地にて6 ウエルプレートに播種し(n = 2)、インキュベーター中37 ℃、5 % CO2にて培養した。24時間後、精製pcDNA3−GLsp−nanoKAZプラスミドをFuGene HD(プロメガ社製)トランスフェクションキットを用いて、CHO細胞にトランスフェクションし、次の実験に用いた。具体的には、100μL の培地に、pcDNA3−GLsp−nanoKAZ発現ベクター1μgと、FuGene HD 3μLを加え、室温で15分間放置した。100μLのDNA−FuGene 複合体溶液を、6ウエルの細胞に添加した。48時間培養後、培養液を回収して、測定用分泌nanoKAZ酵素溶液とした。
【0124】
実施例5:動物培養細胞発現コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質での発光活性測法
実施例4(2)で得られた測定用酵素溶液5μLを、1μg の各種セレンテラジン類縁体を含む100μLの50mM Tris−HCl (pH 7.6)−10 mM EDTA(和光純薬)に加え、発光反応を開始させた。発光活性は、発光測定装置(アトー社製:AB2200)で、60秒間で測定し、最大発光強度(Imax)と60秒間の積算値を相対発光強度(rlu)で表記した。
【0125】
実施例6:コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質の基質特異性および発光パターンの比較
基質特異性実験に使用したセレンテラジン類縁体は、実施例1記載のもの以外のセレンテラジン類縁体は、それぞれ論文記載の方法で合成した。具体的には、bis−セレンテラジン はNakamura et al. (1997) Tetrahedron Lett. 38:6405−6406, フリマジン(Furimazine:(論文記載化合物番号3939))およびC6d-セレンテラジン(論文記載化合物番号3840)は、Hall et al. (2012) ACS Chem. Biol. 16; 848−1857, C2−セレンテラジン類縁体は、Inouye et al (2010) Anal. Biochem. 407: 247−252に記載の方法で合成した。実施例4(2)記載の方法でnanoKAZを分泌させた培養液をセレンテラジンまたはその類縁体の酵素液として用いて、発光活性を測定した。その結果、nanoKAZによる基質特異性は表1に示す通りであった。セレンテラジン類縁体の中で、相対最大発光強度でセレンテラジンより5倍以上高い化合物は、h−、bis−、f−、C6d−f−セレンテラジンおよびフリマジンあり、1分間の相対積算発光量で5倍以上のものはh−、f−、C6d−f−セレンテラジンである。一方、それらの発光パターンを、図3に示す。図3に示されている通り、発光パターンが急激に減衰しないものは、bis−セレンテラジン、フリマジンおよびC6d−f−セレンテラジンである。その結果、発光強度および積算発光量でフリマジンより発光強度が著しく改善され、且つ発光が減衰せずに連続的発光する組合せが可能である発光基質はbis−セレンテラジンおよびC6d−f−セレンテラジンである。
【0126】
表1 コドン最適化nanoKAZドメイン蛋白質の基質特異性
【表1】
【0127】
実施例7:各種ルシフェラーゼの基質特異性
各種発光酵素類の調製法および発光活性測定法は、既報を方法に従って行なった。オプロフォーラスルシフェアーゼ触媒19KDaドメインの調製法は、Inouye S. & Sasaki S. (2007) Protein Express. Purif. 56, 261−268に記載の方法、ガウシアルシフェラーゼは、Inouye S & Sahara Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 368, 600−605に記載の方法、レニラルシフェラーゼおよびレニラルシフェラーゼ547は、Inouye S. et al. (2013) Protein Express. Purif. 88, 150−156に記載の方法、エクオリンは、Inouye S et al. (2010) Anal. Biochem. 407, 247−252に記載の方法で、それぞれ調製し使用した。測定結果を表2に示した。特に新規C6d−f−セレンテラジンは、オプロフォーラスルシフェラーゼ触媒19kDaドメインの良い基質となることが明らかとなった。
【0128】
表2 セレンテラジン系ルシフェラーゼ及び発光蛋白質に対する基質特異性。
【表2】
【0129】
実施例8:セレンテラジン類縁体の水溶液中での安定性評価
セレンテラジ類縁体の水溶液での安定性の評価は、10 μg のセレンテラジン類縁体を0.5 mLの30 mM Tris−HCl (pH7.6)緩衝液に溶解し、37 ℃で、22時間放置し、セレンテラジン類縁体の分解をHPLC分析により確認した。具体的なHPLC分析法は、Inouye S. et al. (2013) Protein Express. Purif. 88, 150−156記載の方法に準じた。
その結果を表3にまとめた。セレンテラジンおよびフリマジンは、非常に不安定で22時間後に未分解で残った量がそれぞれ2%及び3%であったのに対して、bis−セレンテラジンとC6d−f−セレンテラジンはそれぞれ38%と49%でった。すなわち、C6d−f−セレンテラジンが最も安定なセレンテラジン類縁体であり、天然型セレンテラジンに比べ、安定性が著しく改善された。
【0130】
表3 セレンテラジン類縁体の水溶液中での安定性の比較
【表3】
【配列表フリーテキスト】
【0131】
[配列番号:1]nanoLucおよびnanoKAZのアミノ酸配列である。
[配列番号:2]nanoKAZをコードするポリヌクレオチドの塩基配列である。
[配列番号:3]実施例3で用いたプライマーの塩基配列である。
[配列番号:4]実施例3で用いたプライマーの塩基配列である。
[配列番号:5]GLsp-nanoKAZをコードするポリヌクレオチドの塩基配列である。
[配列番号:6]GLsp-nanoKAZのアミノ酸配列である。
[配列番号:7]GLsp-nanoKAZの分泌後のアミノ酸配列である。
[配列番号:8]Oplophorus gracilorostrisルシフェラーゼの発光触媒機能を有する19 kDa蛋白質をコードする塩基配列である。
[配列番号:9]Oplophorus gracilorostrisルシフェラーゼの発光触媒機能を有する19 kDa蛋白質のアミノ酸配列である。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]