特許第6041104号(P6041104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041104脂環式骨格含有カルバゾール樹脂を含むレジスト下層膜形成組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041104
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】脂環式骨格含有カルバゾール樹脂を含むレジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20161128BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20161128BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/26 511
   C08G61/12
   H01L21/30 574
   H01L21/30 573
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-523046(P2013-523046)
(86)(22)【出願日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2012067201
(87)【国際公開番号】WO2013005797
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-150766(P2011-150766)
(32)【優先日】2011年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】新城 徹也
(72)【発明者】
【氏名】染谷 安信
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 涼
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−534710(JP,A)
【文献】 特開2008−096684(JP,A)
【文献】 特表2010−528334(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077640(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/147155(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0292995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバゾール化合物又は置換カルバゾール化合物とビシクロ環化合物との反応物からなる単位構造を含むポリマーを含むレジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
上記ビシクロ環化合物がジシクロペンタジエン、置換ジシクロペンタジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエン、又は置換テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエンである請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
上記ポリマーが下記式(1)で表される単位構造、下記式(2)で表される単位構造、下記式(3)で表される単位構造又はそれらの組み合わせを含むポリマーである請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式中、R乃至R14は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にハロゲン基、ニトロ基、アミノ基若しくはヒドロキシ基、又はそれらの基で置換されていても良い炭素原子数1乃至10のアルキル基若しくは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、Arは炭素原子数6乃至40の芳香環基であり、n、n、n、n、n、n10、n13、n14及びn15はそれぞれ0乃至3の整数であり、n、n、n、n、n11及びn12はそれぞれ0乃至4の整数である。)
【請求項4】
上記式(3)中、Arがフェニル基又はナフチル基である請求項3に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
更に架橋剤を含む請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
更に酸及び/又は酸発生剤を含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することを含む該半導体基板上のレジスト下層膜の製造方法
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成して下層膜を形成する工程を含む半導体の製造に用いられるレジストパター
ンの形成方法。
【請求項9】
半導体基板上に請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像により該レジスト膜にレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により該半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板に請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜上にハードマスクを形成する工程、更に該ハードマスク上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像により該レジスト膜にレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンにより該ハードマスクをエッチングする工程、該パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項11】
上記ハードマスクが無機物溶液の塗布又は無機物の蒸着により形成される、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板加工時に有効なリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、並びに該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成方法、及び半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの製造において、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウェハー等の被加工基板上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜としてシリコンウェハー等の被加工基板をエッチング処理する加工法である。ところが、近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザ(248nm)からArFエキシマレーザ(193nm)へと短波長化される傾向にある。これに伴い活性光線の基板からの乱反射や定在波の影響が大きな問題であった。そこでフォトレジストと被加工基板の間に反射防止膜(Bottom Anti−Reflective Coating、BARC)を設ける方法が広く検討されるようになってきた。
【0003】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じ、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性(エッチング速度の早い)レジスト下層膜とは異なり、レジストのドライエッチング速度に対して1に近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストのドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜又は半導体基板のドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜が要求されるようになってきている。
上記レジスト下層膜用のポリマーとして例えば以下のものが例示されている。
カルバゾールノボラック樹脂を用いたレジスト下層膜形成組成物が例示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
微細化の進行に伴い、レジストの下層に珪素含有レジスト中間層膜とレジスト下層膜とを形成させる3層プロセスが広く用いられている。パターン倒れ及びエッチング加工精度の観点から中間層膜の膜厚は50nm以下で使いたいという要求がある。珪素含有中間層膜の膜厚が50nm以下では珪素含有中間層膜の反射防止効果が減少するため、レジスト下層膜も適切なn値とk値を有することが要求されるようになってきている。具体的には、n値が高く、k値が低く透明でかつエッチング耐性が高い下層膜が求められている。
適切なn値とk値を有する上記レジスト下層膜用のポリマーとして例えば以下のものが例示されている。
ナフトールとジシクロペンタジエンとの反応物を含むポリマーを用いたレジスト下層膜形成組成物が例示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2010−147155
【特許文献2】特開2004−205685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスに用いるためのレジスト下層膜形成組成物を提供することである。また本発明の目的は、短波長の露光において最適なn値、k値を有し、レジスト層とのインターミキシングが起こらず、優れたレジストパターンが得られ、レジストのドライエッチング速度に対して1に近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストのドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜又は半導体基板のドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を提供することにある。さらに、本発明の目的は、レジスト下層膜形成組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することにある。そして、本発明の目的は、耐熱性も兼ね備えたレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は第1観点として、縮合ヘテロ環化合物とビシクロ環化合物との反応物からなる単位構造を含むポリマーを含むレジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、上記縮合ヘテロ環化合物がカルバゾール化合物、又は置換カルバゾール化合物である第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、上記ビシクロ環化合物がジシクロペンタジエン、置換ジシクロペンタジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエン、又は置換テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエンである第1観点又は第2観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、上記ポリマーが下記式(1)で表される単位構造、式(2)で表される単位構造、式(3)で表される単位構造又はそれらの組み合わせを含むポリマーである請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物
【化1】
(式中、R1乃至R14は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にハロゲン基、ニトロ基、アミノ基若しくはヒドロキシ基、又はそれらの基で置換されていても良い炭素原子数1乃至10のアルキル基若しくは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、Arは炭素原子数6乃至40の芳香環基であり、n1、n2、n5、n6、n9、n10、n13、n14及びn15はそれぞれ0乃至3の整数であり、n3、n4、n7、n8、n11及びn12はそれぞれ0乃至4の整数である。)、
第5観点として、上記式(3)中、Arがフェニル基又はナフチル基である第4観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、更に架橋剤を含む第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、更に酸及び/又は酸発生剤を含む第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物、
第8観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成することによって得られるレジスト下層膜、
第9観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成して下層膜を形成する工程を含む半導体の製造に用いられるレジストパターンの形成方法、
第10観点として、半導体基板上に第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像により該レジスト膜にレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により該半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、
第11観点として、半導体基板に第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物により下層膜を形成する工程、該下層膜上にハードマスクを形成する工程、更に該ハードマスク上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像により該レジスト膜にレジストパターンを形成する工程、該レジストパターンにより該ハードマスクをエッチングする工程、該パターン化されたハードマスクにより該下層膜をエッチングする工程、及び該パターン化された下層膜により該半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、及び
第12観点として、上記ハードマスクが無機物溶液の塗布又は無機物の蒸着により形成される第11観点に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト下層膜形成組成物により、レジスト下層膜の上層部とその上に被覆される層とのインターミキシングを起こすことなく、良好なレジストのパターン形状を形成することができる。
【0009】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には基板からの露光光の反射を効率的に抑制する性能を付与することも可能であり、露光光の反射防止膜としての効果を併せ持つこともできる。
本発明のレジスト下層膜形成組成物から得られるレジスト下層膜は、n値が高くk値が低く、珪素含有中間層と組み合わせて用いる3層プロセスにおいて基板からの波長193nmの光の反射を効果的に低減できる。
【0010】
本発明のレジスト下層膜形成組成物により、レジストのドライエッチング速度に対して1に近いドライエッチング速度の選択比、レジストのドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比又は半導体基板のドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つ、優れたレジスト下層膜を提供することができる。
【0011】
レジストパターンの微細化に伴いレジストパターンが現像後に倒れることを防止するためにレジストの薄膜化が行われている。そのような薄膜レジストでは、レジストパターンをエッチングプロセスでその下層膜に転写し、その下層膜をマスクとして基板加工を行うプロセスや、レジストパターンをエッチングプロセスでその下層膜に転写し、さらに下層膜に転写されたパターンを異なるガス組成を用いてその下層膜に転写するという行程を繰り返し、最終的に基板加工を行うプロセスがある。本発明のレジスト下層膜及びその形成組成物はこのプロセスに有効であり、本発明のレジスト下層膜を用いて基板を加工する時は、加工基板(例えば、基板上の熱酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、ポリシリコン膜等)に対して十分にエッチング耐性を有するものである。
【0012】
そして、本発明のレジスト下層膜は、平坦化膜、レジスト下層膜、レジスト層の汚染防止膜、ドライエッチ選択性を有する膜として用いることができる。これにより、半導体製造のリソグラフィープロセスにおけるレジストパターン形成を、容易に、精度良く行うことができるようになる。
【0013】
本発明によるレジスト下層膜形成組成物によるレジスト下層膜を基板上に形成し、その上にハードマスクを形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光と現像によりレジストパターンを形成し、レジストパターンをハードマスクに転写し、ハードマスクに転写されたレジストパターンをレジスト下層膜に転写し、そのレジスト下層膜で半導体基板の加工を行うプロセスがある。このプロセスでハードマスクの形成は有機ポリマーや無機ポリマーと溶剤を含む塗布型の組成物によって行われる場合と、無機物の真空蒸着によって行われる場合がある。無機物(例えば、窒化酸化ケイ素)の真空蒸着では蒸着物がレジスト下層膜表面に堆積し、その際にレジスト下層膜表面の温度が400℃前後に上昇する。本発明では用いられるポリマーが耐熱性の高いカルバゾールノボラック系の単位構造を含むポリマーであるため、本発明のレジスト下層膜は極めて耐熱性が高く、蒸着物の堆積によっても熱劣化を生じない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は縮合ヘテロ環化合物とビシクロ環化合物との反応物を含む単位構造を含むポリマーを含むリソグラフィー工程に用いるレジスト下層膜形成組成物である。
本発明において上記のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は上記ポリマーと溶剤とを含む。そして、この組成物は架橋剤と酸とを含むことができ、必要に応じて酸発生剤、界面活性剤等の添加剤を含むことができる。この組成物の固形分は0.1乃至70質量%、または0.1乃至60質量%である。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中に上記ポリマーを1乃至100質量%、または1乃至99.9質量%、または50乃至99.9質量%、または50乃至95質量%、または50乃至90質量%の割合で含有することができる。
本発明に用いられるポリマーは、重量平均分子量が600乃至1000000、又は600乃至200000である。
【0015】
上記ポリマーにおいて、縮合ヘテロ環化合物はカルバゾール、又は置換カルバゾールとすることができる。また、ビシクロ環化合物はジシクロペンタジエン、置換ジシクロペンタジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエン、又は置換テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエンとすることができる。
【0016】
上記ポリマーは下記式(1)で表される単位構造、式(2)で表される単位構造、式(3)で表される単位構造又はそれらの組み合わせとすることができる。
【0017】
式中、R1乃至R14は水素原子の置換基であり、それぞれ独立にハロゲン基、ニトロ基、アミノ基若しくはヒドロキシ基、又はそれらの基で置換されていても良い炭素原子数1乃至10のアルキル基若しくは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、Arは炭素原子数6乃至40の芳香環基であり、n1、n2、n5、n6、n9、n10、n13、n14及びn15はそれぞれ0乃至3の整数であり、n3、n4、n7、n8、n11及びn12はそれぞれ0乃至4の整数である。
【0018】
上記ハロゲン基としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
炭素原子数1乃至10のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−i−プロピル−シクロプロピル基、2−i−プロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0020】
上記炭素原子数6乃至40のアリール基としてはフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基及び9−フェナントリル基が挙げられる。
【0021】
上記R1、R2、R5、R6、R9、R10、R13及びR14がそれぞれ水素原子である場合、即ちn1、n2、n5、n6、n9、n10、n13及びn14がそれぞれ0となる。またR3、R4、R7、R8、R11及びR12がそれぞれ水素原子である場合、即ちn3、n4、n7、n8、n11及びn12がそれぞれ0となる。また、R3、R4のいずれか又は両方がヒドロキシ基である場合はn3及びn4はそれぞれ0又は1であり、R7、及びR8がいずれか又は両方がヒドロキシ基である場合はn7及びn8はそれぞれ0又は1である。
【0022】
本発明に用いられるカルバゾール類としては、例えばカルバゾール、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、3,6−ジアミノカルバゾール、3,6−ジブロモ−9−エチルカルバゾール、3,6−ジブロモ−9−フェニルカルバゾール、3,6−ジブロモカルバゾール、3,6−ジクロロカルバゾール、3−アミノ−9−エチルカルバゾール、3−ブロモ−9−エチルカルバゾール、4,4’ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル、4−グリシジルカルバゾール、4−ヒドロキシカルバゾール、9−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イルメチル)−9H−カルバゾール、9−アセチル−3,6−ジヨードカルバゾール、9−ベンゾイルカルバゾール、9−ベンゾイルカルバゾール−6−ジカルボキシアルデヒド、9−ベンジルカルバゾール−3−カルボキシアルデヒド、9−メチルカルバゾール、9−フェニルカルバゾール、9−ビニルカルバゾール、カルバゾールカリウム、カルバゾール−N−カルボニルクロリド、N−エチルカルバゾール−3−カルボキシアルデヒド、N−((9−エチルカルバゾール−3−イル)メチレン)−2−メチル−1−インドリニルアミン等が挙げられ、これらを単独で用いることも2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0023】
式(1)及び(2)で表される単位構造を有するポリマーは、酸触媒存在下、ジシクロペンタジエン類とカルバゾール類を付加反応させることにより得ることができる。反応に用いる酸触媒は、三フッ化ホウ素のエタノール錯体や塩化アルミニウムなどのルイス酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、メタンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、p−キシレンスルホン酸、メジチレンスルホン酸などのスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸などのパーフルオロスルホン酸のような超強酸、ナフィオンなどの末端スルホン酸基を持つパーフルオロアルキルポリマー、スルホン酸残基を持つポリスチレンなどのアニオン交換樹脂などが挙げられる。
特にメタンスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸を好ましく用いることができる。
また、米国キング社製の触媒、商品名K−PURE−TAG−2689、商品名K−PURE−TAG−2690、商品名K−PURE−CXC−1614、商品名K−PURE−CXC−1615を用いることもできる。
その使用量は、原料モノマーに対して0.01乃至5モル%の範囲であり、例えばメタンスルホン酸系触媒の場合、原料モノマーに対して0.01乃至10モル%、好ましくは0.05乃至5モル%の範囲であり、トリフルオロメタンスルホン酸系触媒の場合で0.0001乃至5モル%、好ましくは0.0005乃至5モル%の範囲である。
【0024】
本発明のポリマーの製造に用いられる溶剤は例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、トルエン、ブチルセロソルブ、1,4−ジオキサン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。反応温度は通常40℃乃至200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分乃至50時間程度である。
【0025】
以上のようにして得られる重合体の重量平均分子量Mwは、通常600乃至1000000、又は600乃至200000である。
【0026】
式(1)の単位構造、式(2)の単位構造、又はそれらの組み合わせを含むポリマーは例えば以下に例示することができる。
【化2】
【0027】
また、縮合へテロ環化合物と、ビシクロ環化合物と、ヒドロキシジシクロペンタジエンとを共重合させることができる。例えば、カルバゾールと、ジシクロペンタジエンと、ヒドロキシジシクロペンタジエンとを共重合させることができる。その場合には、カルバゾールとジシクロペンタジエンとの共重合体の末端にヒドロキシジシクロペンタジエンが付加する構造と考えられる。
【化3】
【0028】
さらに縮合へテロ環化合物と、ビシクロ環化合物と、ヒドロキシ基及びアルデヒド基を有する芳香族化合物とを共重合させることができる。例えば、カルバゾールと、ジシクロペンタジエンと、ヒドロキシ基及びアルデヒド基を有する芳香族化合物とを共重合させることができる。ヒドロキシ基及びアルデヒド基を有する芳香族化合物はポリマーに結合し、ポリマーの溶解性を高める効果を有する。これにより、カルバゾール及びジシクロペンタジエンに結合する置換基によっては、ポリマーの上記溶媒に対する十分な溶解性が得られないという問題を解消できる。カルバゾールと、ジシクロペンタジエンと、ヒドロキシ基及びアルデヒド基を有する芳香族化合物とは酸存在下での縮合反応で重合される。
【0029】
ヒドロキシ基及びアルデヒド基を有する芳香族化合物としては、サリチルアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデヒド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフチルアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−ナフチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフチルアルデヒド、4−ヒドロキシ−1−ナフチルアルデヒド、6−ヒドロキシ−2−ナフチルアルデヒド、2,6−ジヒドロキシ−1−ナフチルアルデヒドが挙げられる。
【0030】
上記ポリマーは他のポリマーを全ポリマー中に30質量%以内で混合して用いることができる。
それら他のポリマーとしてはポリアクリル酸エステル化合物、ポリメタクリル酸エステル化合物、ポリアクリルアミド化合物、ポリメタクリルアミド化合物、ポリビニル化合物、ポリスチレン化合物、ポリマレイミド化合物、ポリマレイン酸無水物、及びポリアクリロニトリル化合物が挙げられる。
【0031】
ポリアクリル酸エステル化合物の原料モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、2−メトキシブチル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0032】
ポリメタクリル酸エステル化合物の原料モノマーとしては、エチルメタクリレート、ノルマルプロピルメタクリレート、ノルマルペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ノルマルラウリルメタクリレート、ノルマルステアリルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、ノルマルブトキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、2−メトキシブチル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、及び2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】
アクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、及びN,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
ポリメタクリル酸アミド化合物の原料モノマーとしては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、及びN,N−ジメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
ポリビニル化合物の原料モノマーとしては、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及びプロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0036】
ポリスチレン化合物の原料モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、及びヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0037】
ポリマレイミド化合物の原料モノマーとしては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0038】
これらポリマーの製造は、有機溶剤に付加重合性モノマー及び必要に応じて添加される連鎖移動剤(モノマーの質量に対して10%以下)を溶解した後、重合開始剤を加えて重合反応を行い、その後、重合停止剤を添加して反応を停止することにより製造することができる。重合開始剤の添加量としてはモノマーの質量に対して1乃至10%であり、重合停止剤の添加量としてはモノマーの質量に対して0.01乃至0.2質量%である。使用される有機溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、及びジメチルホルムアミド等が、連鎖移動剤としてはドデカンチオール及びドデシルチオール等が、重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が、そして、重合停止剤としては4−メトキシフェノール等が挙げられる。反応温度としては30乃至100℃、反応時間としては1乃至48時間から適宜選択される。
【0039】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は架橋剤成分を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、テトラメトキシメチルグリコールウリル等のメトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0040】
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を好ましく用いることができる。
【0041】
この化合物は下記式(4)で表される部分構造を有する化合物や、下記式(5)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
式(4)中、R16及びR17はそれぞれ水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、又は炭素原子数6乃至20のアリール基であり、n16は1乃至4の整数であり、n17は1乃至(5−n16)の整数であり、(n16+n17)は2乃至6の整数を示す。
式(5)中、R18は水素原子又は炭素原子数1乃至10のアルキル基であり、R19は炭素原子数1乃至10のアルキル基であり、n18は1乃至4の整数であり、n19は0乃至(4−n18)であり、(n18+n19)は1乃至4の整数を示す。オリゴマー及びポリマーは繰り返し単位構造の数が2乃至100、又は2乃至50の範囲で用いることができる。
これらのアルキル基及びアリール基は、上記アルキル基及びアリール基を例示することができる。
【化4】
【0042】
式(4)で表される部分構造を有する化合物は以下に例示される。
【化5】
【化6】
【化7】
【0043】
上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(4−21)の化合物は旭有機材工業(株)、商品名TM−BIP−Aとして入手することができる。
【0044】
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、全固形分に対して0.001乃至80質量%、好ましくは0.01乃至50質量%、さらに好ましくは0.05乃至40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0045】
本発明では上記架橋反応を促進するための触媒としてとして、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物又は/及び2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、その他有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を配合する事が出来る。配合量は全固形分に対して、0.0001乃至20質量%、好ましくは0.0005乃至10質量%、好ましくは0.01乃至3質量%である。
【0046】
本発明のリソグラフィー用塗布型レジスト下層膜形成組成物は、リソグラフィー工程で上層に被覆されるフォトレジストとの酸性度を一致させる為に、光酸発生剤を添加する事が出来る。好ましい光酸発生剤としては、例えば、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類、フェニル−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類、ベンゾイントシレート、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸系光酸発生剤類等が挙げられる。上記光酸発生剤は全固形分に対して、0.2乃至10質量%、好ましくは0.4乃至5質量%である。
【0047】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物には、上記以外に必要に応じて更なる吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤、界面活性剤などを添加することができる。
【0048】
更なる吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.Disperse Yellow 1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.D isperse Orange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.Disperse Red 1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.Disperse Violet 43;C.I.Disperse Blue 96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.Solvent Orange2及び45;C.I.Solvent Red 1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.Pigment Green 10;C.I.Pigment Brown 2等を好適に用いることができる。上記吸光剤は通常、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0049】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのレジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0050】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストと本発明のレジスト下層膜との密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’ービス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2ーメルカプトベンズイミダゾール、2ーメルカプトベンゾチアゾール、2ーメルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1ージメチルウレア、1,3ージメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0051】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンSー382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0052】
本発明で、上記のポリマー及び架橋剤成分、架橋触媒等を溶解させる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2ーヒドロキシプロピオン酸エチル、2ーヒドロキシー2ーメチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2ーヒドロキシー3ーメチルブタン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸メチル、3ーメトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸エチル、3ーエトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上の組合せで使用される。
【0053】
さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。これらの溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等がレベリング性の向上に対して好ましい。
【0054】
本発明に用いられるレジストとはフォトレジストや電子線レジストである。
【0055】
本発明におけるリソグラフィー用レジスト下層膜の上部に塗布されるフォトレジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用でき、ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、骨格にSi原子を有するフォトレジスト等があり、例えば、ロームアンドハーツ社製、商品名APEX−Eが挙げられる。
【0056】
また本発明におけるリソグラフィー用レジスト下層膜の上部に塗布される電子線レジストとしては、例えば主鎖にSi−Si結合を含み末端に芳香族環を含んだ樹脂と電子線の照射により酸を発生する酸発生剤から成る組成物、又はヒドロキシ基がN−カルボキシアミンを含む有機基で置換されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)と電子線の照射により酸を発生する酸発生剤から成る組成物等が挙げられる。後者の電子線レジスト組成物では、電子線照射によって酸発生剤から生じた酸がポリマー側鎖のN−カルボキシアミノキシ基と反応し、ポリマー側鎖がヒドロキシ基に分解しアルカリ可溶性を示しアルカリ現像液に溶解し、レジストパターンを形成するものである。この電子線の照射により酸を発生する酸発生剤は1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、1,1−ビス[p−メトキシフェニル]−2,2,2−トリクロロエタン、1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2−ジクロロエタン、2−クロロ−6−(トリクロロメチル)ピリジン等のハロゲン化有機化合物、トリフェニルスルフォニウム塩、ジフェニルヨウドニウム塩等のオニウム塩、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシレート等のスルホン酸エステルが挙げられる。
【0057】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物を使用して形成したレジスト下層膜を有するレジストの現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。
【0058】
次に本発明のレジストパターン形成方法について説明すると、精密集積回路素子の製造に使用される基板(例えばシリコン/二酸化シリコン被覆、ガラス基板、ITO基板などの透明基板)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法によりレジスト下層膜形成組成物を塗布後、ベークして硬化させ塗布型レジスト下層膜を作成する。ここで、レジスト下層膜の膜厚としては0.01乃至3.0μmが好ましい。また塗布後ベーキングする条件としては80乃至350℃で0.5乃至120分間である。その後レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料を塗布型レジスト下層膜上に成膜した後、レジストを塗布し、所定のマスクを通して光又は電子線の照射を行い、現像、リンス、乾燥することにより良好なレジストパターンを得ることができる。必要に応じて光又は電子線の照射後加熱(PEB:Post Exposure Bake)を行うこともできる。そして、レジストが前記工程により現像除去された部分のレジスト下層膜をドライエッチングにより除去し、所望のパターンを基板上に形成することができる。
【0059】
上記フォトレジストでの露光光は、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV、波長13.5nm)等の化学線であり、例えば248nm(KrFレーザー光)、193nm(ArFレーザー光)、157nm(F2レーザー光)等の波長の光が用いられる。光照射には、光酸発生剤から酸を発生させることができる方法であれば、特に制限なく使用することができ、露光量1乃至2000mJ/cm2、または10乃至1500mJ/cm2、または50乃至1000mJ/cm2による。
【0060】
また電子線レジストの電子線照射は、例えば電子線照射装置を用い照射することができる。
【0061】
本発明では、半導体基板にレジスト下層膜形成組成物により該レジスト下層膜を形成する工程、その上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0062】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じるため、レジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性レジスト下層膜とは異なり、レジストのドライエッチング速度に対して1に近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜、レジストのドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜又は半導体基板のドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0063】
一方、微細なレジストパターンを得るために、レジスト下層膜ドライエッチング時にレジストパターンとレジスト下層膜をレジスト現像時のパターン幅より細くするプロセスも使用され始めている。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性反射防止膜とは異なり、レジストのドライエッチング速度に対して1に近いドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0064】
本発明では基板上に本発明のレジスト下層膜を成膜した後、レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料をレジスト下層膜上に成膜した後、その上にレジストを塗布することができる。これによりレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。
即ち、半導体基板にレジスト下層膜形成組成物によりレジスト下層膜を形成する工程、その上にケイ素成分等を含有する塗膜材料によるハードマスク又は蒸着によるハードマスク(例えば、窒化酸化ケイ素)を形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、光又は電子線の照射と現像により該レジスト膜にレジストパターンを形成する工程、レジストパターンによりハードマスクをハロゲン系ガスでエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該レジスト下層膜を酸素系ガス又は水素系ガスでエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜によりハロゲン系ガスで半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0065】
本発明のレジスト下層膜に反射防止膜としての効果を考慮した場合、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、光吸収部位がポリマー骨格に取りこまれているため、加熱乾燥時又は加熱硬化時にフォトレジスト中への拡散物を含まず、また、光吸収部位は十分に大きな吸光性能を有しているため高い反射光防止効果を有するレジスト下層膜を形成できる。
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、熱安定性が高く、焼成時の分解物による上層膜への汚染を防ぐことができるものであり、また、焼成工程の温度マージンに余裕を持たせることができるものである。
さらに、本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、プロセス条件によっては、光の反射を防止する機能と、更には基板とフォトレジストとの相互作用の防止或いはフォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する膜を形成するための組成物としての使用が可能である。
【実施例】
【0066】
(合成例1)高分子化合物[1]の合成
窒素下、フラスコにカルバゾール(13.0g、0.078モル、東京化成工業(株)製)、ジシクロペンタジエン(10.3g、0.078モル、東京化成工業(株)製)、トルエンを仕込み、トリフルオロメタンスルホン酸(0.12g、0.00078モル、東京化成工業(株)製)を加えて撹拌し、120℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。21時間後室温まで放冷後、クロロホルム(30g、関東化学(株)製)を加え希釈し、不溶物をろ過で取り除いた後にメタノール(1500g、関東化学(株)製)へ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、20時間乾燥し、目的とする高分子化合物[1]11.6gを得た。この高分子化合物は上記式(3−1)の単位構造を含むポリマーであった。
高分子化合物[1]のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2000、多分散度Mw/Mnは2.90であった。
【0067】
(合成例2)高分子化合物[2]の合成
窒素下、フラスコにカルバゾール(15.0g、0.090モル、東京化成工業(株)製)、ジシクロペンタジエン(11.3g、0.085モル、東京化成工業(株)製)、ヒドロキシジシクロペンタジエン(0.81g、0.005モル、東京化成工業(株)製)、ブチルセロソルブを仕込み、トリフルオロメタンスルホン酸(0.14g、0.0009モル、東京化成工業(株)製)を加えて撹拌し、140℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。9時間後室温まで放冷後、クロロホルム(30g、関東化学(株)製)を加え希釈し、不溶物をろ過で取り除いた後にメタノール(1500g、関東化学(株)製)へ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、20時間乾燥し、目的とする高分子化合物[2]18.0gを得た。この高分子化合物は上記式(3−3)の単位構造を含むポリマーであった。
高分子化合物[2]のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3200、多分散度Mw/Mnは2.80であった。
【0068】
(合成例3)高分子化合物[3]の合成
窒素下、フラスコにカルバゾール(4.0g、0.024モル、東京化成工業(株)製)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3,8−ジエン(TCDE)(3.8g、0.024モル)、ブチルセロソルブを仕込み、トリフルオロメタンスルホン酸(0.04g、0.0002モル、東京化成工業(株)製)を加えて撹拌し、140℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。10時間後室温まで放冷後、クロロホルム(30g、関東化学(株)製)を加え希釈し、不溶物をろ過で取り除いた後にメタノール(1500g、関東化学(株)製)へ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、20時間乾燥し、目的とする高分子化合物[3]2.6gを得た。この高分子化合物は上記式(3−2)の単位構造を含むポリマーであった。
高分子化合物[3]のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは720、多分散度Mw/Mnは1.24であった。
【0069】
(合成例4)高分子化合物[5]の合成
窒素下、フラスコにカルバゾール(10.0g、0.060モル、東京化成工業(株)製)、ジシクロペンタジエン(7.12g、0.054モル、東京化成工業(株)製)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(0.73g、0.006モル、東京化成工業(株)製)、ブチルセロソルブを仕込み、トリフルオロメタンスルホン酸(0.09g、0.0006モル、東京化成工業(株)製)を加えて撹拌し、150℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。21時間後室温まで放冷後、テトラヒドロフラン(6g、関東化学(株)製)を加え希釈し、不溶物をろ過で取り除いた後にメタノール(400g、関東化学(株)製)へ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、20時間乾燥し、目的とする高分子化合物[5]9.1gを得た。この高分子化合物は下記式(6−2)の単位構造を含むポリマーであった。
高分子化合物[5]のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2070、多分散度Mw/Mnは2.57であった。
【化8】
【0070】
(比較合成例1)高分子化合物[4]の合成
窒素下、100mL四口フラスコにカルバゾール(10g、0.060mol、東京化成工業(株)製)、ベンズアルデヒド(6.41g、0.060mol、純正化学(株)製)、パラトルエンスルホン酸一水和物(1.19g、0.060mol、関東化学(株)製)を加え、1,4−ジオキサン(15g、関東化学(株)製)を仕込み撹拌し、100℃まで昇温し溶解させ重合を開始した。2時間後60℃まで放冷後、クロロホルム(50g、関東化学(株)製)を加え希釈し、メタノール(250g、関東化学(株)製)へ再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、10時間さらに120℃、24時間乾燥し、目的とする高分子化合物[4]8.64gを得た。これは下記式(6−1)の単位構造を含むポリマーであった。
高分子化合物[4]のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4000、多分散度Mw/Mnは1.69であった。
【化9】
【0071】
(実施例1)
上記合成例1で得た高分子化合物[1]の1.0gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル0.2g、ピリジニウムパラトルエンスルホネート0.02g、メガファックR−30(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.6g、シクロヘキサノン16.3gを混合して溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0072】
(実施例2)
上記合成例2で得た高分子化合物[2]の1.0gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル0.2g、ピリジニウムパラトルエンスルホネート0.02g、メガファックR−30(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.6g、シクロヘキサノン16.3gを混合して溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0073】
(実施例3)
上記合成例3で得た高分子化合物[3]の1.0gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル0.2g、ピリジニウムパラトルエンスルホネート0.02g、メガファックR−30(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.6g、シクロヘキサノン16.3gを混合して溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
(実施例4)
上記合成例4で得た高分子化合物[5]の1.0gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル0.25g、ピリジニウムパラトルエンスルホネート0.02g、メガファックR−30(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.6g、シクロヘキサノン16.3gを混合して溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0074】
(比較例1)
上記比較合成例1で得た高分子化合物[4]の1.0gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル0.2g、ピリジニウムパラトルエンスルホネート0.02g、メガファックR−30(大日本インキ化学(株)製、商品名)0.003g、プロピレングリコールモノメチルエーテル2.3g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート4.6g、シクロヘキサノン16.3gを混合して溶液とした。その後、孔径0.10μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、更に、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過して、多層膜によるリソグラフィープロセスに用いるレジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0075】
〔フォトレジスト溶剤への溶出試験〕
実施例1乃至実施例4及び比較例1で調製した各レジスト下層膜形成組成物溶液を、スピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を、フォトレジストに使用する溶剤である、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに浸漬し、その溶剤に不溶であることを確認した。
【0076】
〔光学パラメーターの試験〕
実施例1乃至実施例4及び比較例1で調製した各レジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を分光エリプソメーター(J.A. Woollam社製、VUV−VASE VU−302)を用い、波長193nmでの屈折率(n値)及び光学吸光係数(k値、減衰係数とも称する)を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0077】
[表1]
―――――――――――――――――――――
193nm
n値 k値
―――――――――――――――――――――
実施例1 1.65 0.27
実施例2 1.64 0.26
実施例3 1.66 0.19
実施例4 1.61 0.28
比較例1 1.38 0.38
―――――――――――――――――――――
【0078】
表1に示す結果は、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物より得られたレジスト下層膜はn値が1.6から1.7の範囲、k値が0.1から0.3の範囲であり、比較例で示した従来のレジスト下層膜形成組成物によるレジスト下層膜よりもn値が高くk値が低く、珪素含有中間層と組み合わせて用いる3層プロセスにおいて基板からの波長193nmの光の反射を効果的に低減できることを示している。
【0079】
〔ドライエッチング速度の測定〕
ドライエッチング速度の測定には、下記のエッチング装置及びエッチングガスを用いた。
エッチング装置:RIE−10NR(サムコ株式会社製)
エッチングガス:CF4
実施例1乃至実施例4及び比較例1で調製した各レジスト下層膜形成組成物溶液をスピナーにより、シリコンウェハー上に塗布した。ホットプレート上で250℃の温度で1分間加熱し、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そのレジスト下層膜に対し、エッチングガスとしてCF4ガスを使用してドライエッチング速度を測定した。さらに、フェノールノボラック樹脂0.7gをプロピレングリコールモノメチルエーテル10gに溶解させた溶液を、スピナーにより、シリコンウェハー上に塗布し、240℃の温度で1分間加熱してフェノールノボラック樹脂膜を形成した。その樹脂膜に対し、エッチングガスとしてCF4ガスを使用してドライエッチング速度を測定し、実施例1乃至実施例3及び比較例1のレジスト下層膜形成組成物から形成された各レジスト下層膜のドライエッチング速度との比較を行った。その結果を下記表2に示す。表2のドライエッチング速度比(選択比)は、上記フェノールノボラック樹脂膜のドライエッチング速度に対する各レジスト下層膜のドライエッチング速度(レジスト下層膜)/(フェノールノボラック樹脂膜)である。
【0080】
[表2]
――――――――――――――――――
ドライエッチング速度比
――――――――――――――――――
実施例1 0.82
実施例2 0.84
実施例3 0.88
実施例4 0.85
比較例1 0.78
――――――――――――――――――
【0081】
これにより本発明に係るレジスト下層膜形成組成物より得られたレジスト下層膜は、従来の高エッチレート性反射防止膜とは異なり、フォトレジストのドライエッチング速度に対して1に近い又はフォトレジストのドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比、半導体基板のドライエッチング速度に対して小さいドライエッチング速度の選択比を持ち、さらに反射防止膜としての効果も併せ持つことが出来る優れた塗布型レジスト下層膜を提供することができるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
n値が高くk値が低く、珪素含有中間層と組み合わせて用いる3層プロセスにおいて基板からの波長193nmの光の反射を効果的に低減できるリソグラフィープロセスに用いられるレジスト下層膜として利用することができる。