【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため本発明に係る並列反応用懸濁液は、DNA(デオキシリボ核酸)及び特定のタグ配列を持つタンパク質を認識する物質を内部に固定したゲル粒子が液体中に分散している。
【0018】
前記DNAは核酸増幅反応プライマーとして機能するために、長さが15〜50塩基の範囲に含まれる1本鎖DNAとすることが好ましい。また、DNAがコードするタンパク質としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素や蛍光タンパク質が考えられる。
【0019】
また、前記タグ配列を持つタンパク質を認識する物質は、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、抗体、グルタチオン、マルトースの何れかである。
【0020】
前記ゲル粒子を構成する材料としては、PCRを阻害しないものとして、アガロース、特に低融点アガロースが好ましい(
図5)。前記1本鎖DNAやNTAをアガロースの網目構造部分に結合するリンカーとしてはポリエチレングリコールが考えられる。
【0021】
また、並列反応を行うには1つの反応容器(ゲル粒子)中に1分子のDNAが包含されることが最適である。このためには、DNA溶液を限界希釈するとともに、ゲル粒子の大きさを1〜500μmとすることが好ましい。
尚、実際には限界希釈しても1つのゲル粒子中に複数のDNA分子が包含されたり、1つのゲル粒子中に包含されるDNA分子がない場合も想定される。本発明における限界希釈の意味は、平均的に1つのゲル粒子に1つのDNAが包含される濃度である。
【0022】
また本発明に係る並列反応方法は、DNAと特定のタグ配列を持つタンパク質を認識する物質をアガロースゲル粒子中に固定化し、アガロースゲル粒子中にDNAが平均一分子含まれる濃度でアガロースゲル粒子を複数種のDNA(DNAライブラリー)が含まれる溶液中に懸濁させ、1つのゲル粒子中に1分子のDNAを固定し、この操作と同時もしくは次いで、核酸増幅反応およびタンパク質を合成するのに必要な物質を含む水溶液中にゲル粒子を懸濁させ、次いで、個々のゲル粒子中で個別の核酸増幅反応およびタンパク質合成反応を同時に並行して行うようにした。
【0023】
実際の並列反応方法においては、前記ゲル粒子中に固定するDNAを核酸増幅反応プライマーとして機能する長さが15〜50塩基の範囲に含まれる1本鎖DNAとし、核酸増幅反応によってゲル粒子中のDNAを増幅させ、この後にタンパク質を合成するのに必要な物質を導入する。
【0024】
核酸増幅反応(PCR)は熱変性して二本鎖DNAを一本鎖DNAにする際に高温(94℃)となり、タンパク質合成酵素が失活するため、核酸増幅反応(PCR)が終了した後にタンパク質を合成するのに必要なアミノ酸と酵素などを導入する。
【0025】
また、並列反応方法においては、反応中に反応物質がゲル粒子間を相互移動するのを抑制するために、核酸増幅反応およびタンパク質合成ともに水と混じり合わない液体にゲル粒子を懸濁させることが必要である。
ゲル粒子となる水溶液中に核酸増幅反応およびタンパク質を合成するのに必要な物質を導入し、次いで、水と混じり合わない液体にゲル粒子を懸濁させることで、複雑で高価なマイクロ流体デバイスを用いずとも、個々のゲル粒子中でコンパートメント化された核酸増幅反応およびタンパク合成反応を実施することが可能となる。
【0026】
また本発明に係るスクリーニング方法は、上記の並列反応に続いて、個々のゲル粒子内に固定されているタンパク質の特性を検査し、目的のタンパク質をコードするDNAを選別する。この選別は例えば、蛍光を発するゲル粒子を分取することで行う。分取の具体的な手段としては、フローサイトメトリーやマイクロマニュピュレータが挙げられる。
【0027】
本発明に係るスクリーニング方法は、核酸増幅反応プライマーとして機能することのできる15〜50塩基の1本鎖DNAと、特定のタグ配列を有するタンパク質を認識する物質としてニトリロ三酢酸(NTA)、抗体、グルタチオン、マルトースの何れかを固定したゲル粒子を用い、以下の工程1〜12からなる。
工程1
前記DNAプライマーと相補的な部位と、タンパク質をコードする遺伝子にランダムに変異が入った部位とを有する複数種のDNA(DNAライブラリー)が含まれる溶液を用意する工程。
工程2
工程1で得られた複数種のDNAが含まれる溶液を希釈し、この希釈した複数種のDNAが含まれる溶液と、核酸増幅反応に必要な物質を含む溶液と、ゲル粒子の懸濁液とを混合して、ゲル粒子内にDNAを平均1分子以下で導入・固定するとともにゲル粒子内に核酸増幅反応に必要な物質を導入する工程。
工程3
前記ゲル粒子を水と混じり合わない溶液に再び懸濁させる工程。
工程4
核酸増幅反応によって前記ゲル粒子中のDNAを増幅させる工程
工程5
ゲル粒子を水系の溶液に再び懸濁させる工程。
工程6
タンパク質を合成するのに必要な物質を含む溶液とゲル粒子の懸濁液とを混合する工程。
工程7
工程6でタンパク質を合成するのに必要な物質が導入されたゲル粒子を水と混じり合わない溶液に再び懸濁させる工程。
工程8
前記ゲル粒子内でタンパク質合成反応によってタンパク質を合成する工程。
工程9
内部でタンパク質が合成されたゲル粒子を水系の溶液に再び懸濁させる工程。
工程10
ゲル粒子とタンパク質の機能を評価する試薬とを混合する工程。
工程11
目的の機能を有するタンパク質を含むゲル粒子を分取する工程。
工程12
分取したゲル粒子中に含まれるDNA配列を解読して、目的の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列を得る工程。
【0028】
本発明に係る別のスクリーニング方法は、相補的な配列を有するDNAを補足できる10塩基以上の1本鎖DNAと、特定のタグ配列を有するタンパク質を認識する物質としてニトリロ三酢酸(NTA)、抗体、グルタチオン、マルトースの何れかを固定したゲル粒子を用いるタンパク質のスクリーニング方法であって、以下の工程1〜9からなる。
工程1
前記ゲル粒子に固定化されたDNAと相補的な部位と、タンパク質をコードする遺伝子にランダムに変位の入った部位とを有する複数種のDNA(DNAライブラリー)が含まれる溶液を用意する工程。
工程2
工程1で得られた複数種のDNAが含まれる溶液を希釈し、この希釈された溶液を用いてゲル粒子を作製することで、ゲル粒子内にDNAが平均1分子以下の濃度で固定されたゲル粒子を作製する工程。
工程3
タンパク質を合成するのに必要な物質を含む溶液と前記ゲル粒子の懸濁液を混合する工程。
工程4
前記ゲル粒子を水と混じり合わない溶液に再懸濁する工程。
工程5
タンパク質合成反応によって前記ゲル粒子中でタンパク質を合成する工程。
工程6
前記ゲル粒子を水系の溶液に再び懸濁する工程。
工程7
前記ゲル粒子とタンパク質の機能を評価する試薬と混合する工程。
工程8
目的の機能を有するタンパク質を含むゲル粒子を分取する工程
工程9
分取したゲル粒子中に含まれるDNA配列を解読することで、目的の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列を得る工程。
【0029】
本発明に係る別のスクリーニング方法は、相補的な配列を有するDNAを補足できる10塩基以上の1本鎖DNAと、特定のタグ配列を有するタンパク質を認識する物質としてニトリロ三酢酸(NTA)、抗体、グルタチオン、マルトースの何れかを固定したゲル粒子を用いるタンパク質のスクリーニング方法であって、以下の工程1〜9からなる。
工程1
前記ゲル粒子に固定化したDNAと相補的な部位と、タンパク質をコードする遺伝子にランダムに変位の入った部位とを有する複数種のDNA(DNAライブラリー)が含まれる溶液を用意する工程。
工程2
工程1で得られた複数種のDNAが含まれる溶液を希釈し、この希釈した複数種のDNAが含まれる溶液と、ゲル粒子の懸濁液とを混合して、ゲル粒子内にDNAを平均1分子以下で導入・固定する工程。
工程3
タンパク質を合成するのに必要な物質を含む溶液と前記ゲル粒子の懸濁液を混合する工程。
工程4
前記ゲル粒子を水と混じり合わない溶液に再び懸濁する工程。
工程5
タンパク質合成反応によって前記ゲル粒子中でタンパク質を合成する工程。
工程6
前記ゲル粒子を水系の溶液に再び懸濁する工程。
工程7
前記ゲル粒子とタンパク質の機能を評価する試薬とを混合する工程。
工程8
目的の機能を有するタンパク質を含むゲル粒子を分取する工程
工程9
分取したゲル粒子中に含まれるDNA配列を解読することで、目的の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列を得る工程。
【0030】
本発明に係る別のスクリーニング方法は、核酸増幅反応プライマーとして機能することのできる15〜50塩基の1本鎖DNAと、特定のタグ配列を有するタンパク質を認識する物質としてニトリロ三酢酸(NTA)、抗体、グルタチオン、マルトースの何れかを固定したゲル粒子を用いるタンパク質のスクリーニング方法であって、以下の工程1〜12からなる。
工程1
核酸増幅反応プライマーと相補的な部位と、タンパク質をコードする遺伝子にランダムに変位の入った部位とを有する複数種のDNA(DNAライブラリー)が含まれる溶液を用意する工程。
工程2
工程1で得られた複数種のDNAが含まれる溶液を希釈し、この希釈した複数種のDNAが含まれる溶液と核酸増幅反応に必要な物質を含む溶液とを混合し、この希釈・混合された複数種のDNAが含まれる溶液を用いてゲル粒子を作製することで、ゲル粒子内にDNAが平均1分子以下の濃度で固定されたゲル粒子を作製する工程。
工程3
前記ゲル粒子を水と混じり合わない溶液に再び懸濁する工程。
工程4
核酸増幅反応によって前記ゲル粒子中のDNAを増幅させる工程。
工程5
前記ゲル粒子を水系の溶液に再び懸濁する工程。
工程6
タンパク質を合成するのに必要な物質を含む溶液と前記ゲル粒子の懸濁液とを混合する工程。
工程7
前記ゲル粒子を水と混じり合わない溶液に再び懸濁する工程。
工程8
タンパク質合成反応によって前記ゲル粒子中でタンパク質を合成する工程。
工程9
前記ゲル粒子を水系の溶液に再び懸濁する工程。
工程10
前記ゲル粒子とタンパク質の機能を評価する試薬とを混合する工程。
工程11
目的の機能を有するタンパク質を含むゲル粒子を分取する工程
工程12
分取したゲル粒子中に含まれるDNA配列を解読することで、目的の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列を得る工程。