(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる顔料組成物を使用することで、輝度、着色力を低下させず、大幅なコントラスト向上が可能となるカラーフィルタを作成できることが判明した。
【0020】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、中心に亜鉛金属を配し、ハロゲン以外の置換基が置換してもよいフタロシアニン環に塩素または臭素またはフッ素またはヨウ素から選ばれるハロゲン原子が少なくとも1つ以上置換された化合物であり、各置換基の合計数は最大16個である。ハロゲンおよびハロゲン以外の置換基に置換されていない部分は、水素である。
【0021】
本発明においては、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とは、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.30μmのハロゲン化亜鉛フタロシアニンであり、カラーフィルタの用途としては、所望の光学特性である輝度、コントラスト比を達成すべく一般的な顔料の粒径である。
【0022】
なお、本発明における一次粒子の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子株式会社製)で視野内の粒子を撮影し、二次元画像上の、凝集体を構成するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料一次粒子の50個につき、その長い方の径(長径)を各々求め、それを平均した値である。この際、試料であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、これを溶媒に超音波分散させてから顕微鏡で撮影する。また、透過型電子顕微鏡の代わりに走査型電子顕微鏡を使用してもよい。
【0023】
本発明のカラーフィルタ用緑色顔料組成物は、ハロゲン化数を調整し、嵩高いアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を導入することで色相を調整したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体を使用しているため、従来のハロゲン化数が高い緑色顔料ほど黄味の色相ではなく、青味の色相に特異性のあるものである。本発明の顔料組成物をカラーフィルタに含有することで、従来の高ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料では、達成出来なかった色相を表現でき、輝度が高く、さらに、着色力が高いため、カラーフィルタとした時の膜厚の薄膜化が可能となった。一方、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物よりも青味のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物は、黄色顔料組成物との混合では緑色画素を形成できないため、カラーフィルタ用顔料組成物としては適していない。また、青味の色相であるピグメントグリーン7とピグメントイエロー185を含有する緑色感光性樹脂組成物を用いて、緑色画素を形成し、2.2μm以下の薄膜で高色再現を達成する提案がなされているが、ピグメントグリーン36やピグメントグリーン58と比較すると透過率が低く、得られるディスプレイの輝度が低下してしまうという問題があった。輝度に関しては、バックライトの光量アップで補うことも可能であるが、消費電力量の増大という新たな問題が生じるため改善が求められている。
【0024】
本発明で用いるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料から製造することが出来る。このハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料は、例えば、クロルスルホン酸法、ハロゲン化フタロニトリル法、溶融法等の様な公知の製造方法で製造できる。
【0025】
クロルスルホン酸法としては、亜鉛フタロシアニンを、クロロスルホン酸等の硫黄酸化物系の溶媒に溶解し、これに塩素ガス、臭素を仕込みハロゲン化する方法が挙げられる。この際の反応は、温度20〜120℃かつ3〜20時間の範囲で行われる。
【0026】
ハロゲン化フタロニトリル法としては、例えば、芳香環の水素原子の一部または全部が臭素の他、塩素やフッ素等のハロゲン原子で置換されたフタル酸やフタロジニトリルと、亜鉛の金属または金属塩を適宜出発原料として使用して、対応するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を合成する方法が挙げられる。この場合、必要に応じてモリブデン酸アンモニウム等の触媒を用いてもよい。この際の反応は、温度100〜300℃かつ7〜35時間の範囲で行われる。
【0027】
溶融法としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムの様なハロゲン化アルミニウム、四塩化チタンの様なハロゲン化チタン、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等の様なアルカリ金属ハロゲン化物またはアルカリ土類金属ハロゲン化物〔以下、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物という〕、塩化チオニル等、各種のハロゲン化の際に溶媒となる化合物の一種または二種以上の混合物からなる10〜170℃程度の溶融物中で、亜鉛フタロシアニンをハロゲン化剤にてハロゲン化する方法が挙げられる。
【0028】
好適なハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウムである。ハロゲン化アルミニウムを用いる上記方法における、ハロゲン化アルミニウムの添加量は、亜鉛フタロシアニンに対して、通常は、3倍モル以上であり、好ましくは10〜20倍モルである。
【0029】
ハロゲン化アルミニウムは単独で用いてもよいが、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物をハロゲン化アルミニウムに併用すると溶融温度をより下げることができ操作上有利になる。好適なアルカリ(土類)金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウムである。加えるアルカリ(土類)金属ハロゲン化物の量は溶融塩を生成する範囲内でハロゲン化アルミニウム10質量部に対してアルカリ(土類)金属ハロゲン化物が5〜15質量部が好ましい。
【0030】
また、ハロゲン化剤としては、塩素ガス、塩化スルフリル、臭素等がある。
【0031】
ハロゲン化の温度は10〜170℃が好ましいが、30〜150℃がより好ましい。更に、反応速度を速くするため、加圧することも可能である。反応時間は、5〜100時間で好ましくは、30〜45時間である。
【0032】
前記化合物の二種以上を併用する溶融法は、溶融塩中の塩化物と臭化物とヨウ素化物の比率を調節したり、塩素ガスや臭素やヨウ素の導入量や反応時間を変化させたりすることによって、生成するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料中における、特定ハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料の含有比率を任意にコントロールすることができるので好ましい。
【0033】
本発明における好適な原料となる金属フタロシアニンは、亜鉛フタロシアニンである。反応中の原料の分解が少なく原料からの収率がより優れ、強酸を用いず安価な装置にて反応を行えるので、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得る上では、溶融法が好適である。
【0034】
本発明では、原料の仕込方法、触媒種や使用量、反応温度や反応時間の最適化により、既存のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とは異なるハロゲン原子組成のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得ることが出来る。
【0035】
上記いずれの製造方法にせよ、反応終了後、得られた混合物を水又は塩酸等の酸性水溶液中に投入すると、生成したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が沈殿する。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料としては、これをそのまま用いても良いが、その後、濾過、水または硫酸水素ナトリウム水、炭酸水素ナトリウム水、水酸化ナトリウム水洗浄、必要に応じてアセトン、トルエン、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤洗浄を行い、乾燥等の後処理を行ってから用いるのが好ましい。
【0036】
次に、本発明の顔料誘導体は、一般式(1)で表される顔料誘導体
【0038】
(一般式(1)中、Z1〜Z16は、それぞれ独立して、臭素原子、塩素原子、水素原子又は炭素数1〜3個のアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有する官能基を表し、一分子中の平均臭素原子数は8〜12個、平均塩素原子数は2〜5個、炭素数1〜3個のアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有する官能基の平均置換基数は0.1〜3個であり、残りは水素原子である。)
である。
【0039】
上記一般式(1)表されるアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体は、特開平2−255863号に開示されているようにフタロシアニン化合物を硫酸に溶解後、フタルイミド、パラホルムアルデヒドを加えて80℃で反応させることで得られ、フタロシアニン骨格に、臭素原子、塩素原子、水素原子又はアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格有し、少なくともアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有する官能基の平均置換基数は0.1〜3個である。臭素原子、塩素原子は、特定の割合にて含有するものである。より具体的には、1分子中の臭素原子数が平均8〜12個、塩素原子数が平均2〜5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料である。高色再現を発現するためにより好ましくは、1分子中のハロゲン原子数が平均11〜13個であり、そのうち臭素原子数が平均8〜11個、塩素原子数が平均2〜3個である。アルキレン基としては、炭素数1〜3の連結基が好ましく、中でも効率的に顔料凝集を抑制できる点で炭素数1のメチレン基を連結基とする化合物がさらに好ましい。
【0040】
アルキレン基を有するフタルイミド基の置換基数は、1〜6個(ハロゲン数が最低で10個のため)が置換することが可能である。炭素原子数4個以上は、アルキレン骨格が長鎖となり、フタルイミド基の配置を調整できず、誘導体としての効果が得られなくなると考えられる。
【0041】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物のハロゲン原子数および平均組成は、蛍光X線分析から求めることができる。蛍光X線分析は分析装置にZSX100E(リガク株式会社製)を用いて検出された亜鉛、臭素及び塩素のKα線強度から、各元素の含有比率を求め、亜鉛を1とした時の臭素及び塩素のモル比を算出することで求めることができる。
【0042】
また、アルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体の平均置換基数の測定法を簡単に説明すると、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン誘導体をKBrと混合し、加圧して赤外線吸収スペクトル用試料を作製し、FT/IR−6100(日本分光株式会社製)により赤外線吸収スペクトルを測定し、フタルイミドアルキル基の特性吸収である、1770cm-1または1720cm-1の吸収のピーク高さと、フタロシアニンの特性吸収である1390cm-1の吸収のピーク高さの比率から平均置換基数を算出することによって行う。また、アルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン誘導体を直接質量分析にかけて、1置換体から4置換体を定量分析し、それを平均して平均置換基数を算出することもできる。
【0043】
上記、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、必要に応じてアトライター、ボールミル、振動ミル、振動ボールミル等の粉砕機内で乾式磨砕し、ついで、ソルベントソルトミリング法やソルベントボイリング法等で顔料化することによって、顔料化前よりは、分散性や着色力に優れ、かつ、明度の高い緑色を発色する顔料が得られる。
【0044】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体の割合は、特に限定しないが質量換算でハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料 100部あたりアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体が0.1〜10部含有することが、該顔料組成物をカラーフィルタとして使用した時に、輝度、着色力を保持したまま高いコントラストを得ることができるため好ましい。
【0045】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物の顔料化方法には特に制限はなく、例えば、顔料化前のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物を分散媒に分散させると同時に顔料化を行ってもよいが、多量の有機溶剤中でハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物を加熱攪拌するソルベント処理よりも、容易に結晶成長を抑制でき、かつ比表面積の大きい顔料粒子が得られる点で、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
【0046】
このソルベントソルトミリングとは、合成直後またはその後に磨砕を行った、顔料化を経ていないハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物と、無機塩と、有機溶剤とを混練磨砕することを意味する。この際の混練機としては、例えばニーダー、ミックスマーラー、トリミックス、二軸押出機等が使用できる。
【0047】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0048】
本発明では、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmのハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物をカラーフィルタ用途に用いるのが好ましい。本発明における前記した好ましいハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を得るに当たっては、ソルベントソルトミリングにおける粗顔料使用量に対する無機塩使用量を高くするのが好ましい。即ち当該無機塩の使用量は、粗顔料1質量部に対して5〜20質量部とするのが好ましく、7〜15質量部とするのがより好ましい。
【0049】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましく、このような有機溶媒としては水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0050】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物をソルベントソルトミリングにより製造する場合は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料およびフタロシアニンとアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体をそれぞれソルベントソルトミリングして、後に合わせても構わないし、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体とを同時に装置内で混合して、ソルベントソルトミリングすることもできる。カラーフィルタによる光学特性評価においては、どちらの方法でもカラーフィルタ作製後の熱履歴による光学特性の低下を抑制できる点で大差はない。アルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体を加えることによってカラーフィルタ用レジストインキの粘度特性の向上と分散安定性の向上が達成出来る。
【0051】
アルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体に更にフタロシアニン誘導体としては、公知慣用のものがいずれも使用出来るが、下記一般式(1)または(2)のフタロシアニン顔料誘導体が好ましい。尚、このフタロシアニン誘導体は、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料またはその原料たる亜鉛フタロシアニンに対応するフタロシアニン誘導体であるのが好ましいが、併用する場合にも少量なので、ハロゲン化銅フタロシアニン誘導体や、銅フタロシアニン誘導体を用いることも出来る。
【0054】
(式中、Pは中心金属を有さないまたは中心金属を有する無置換またはハロゲン化フタロシアニン環のn個の水素を除いた残基を表す。Yは1〜3級アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基またはそれと塩基或いは金属との塩を表す。Aは二価の連結基を、Zは1〜2級アミノ基の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、又は窒素を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基を表す。そしてnは1〜4を表す。)
【0055】
前記中心金属としてはZnで、前記1〜2級アミノ基としては、例えばモノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。また、前記カルボン酸基やスルホン酸基と塩を形成する塩基や金属としては、例えばアンモニアや、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンの様な有機塩基、カリウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウムの様な金属が挙げられ、Aの二価の連結基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレン基、−CO
2−、−SO
2−,−SO
2NH(CH
2)m−等の二価の連結基が挙げられる。そして、Zとしては、例えばフタルイミド基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0056】
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料調製時及び/又はソルベントソルトミリング時にハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料に含めることが出来るフタロシアニン誘導体は、通常、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料1質量部当たり0.01〜0.3質量部である。尚、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料調製時及び/又はソルベントソルトミリング時にフタロシアニン誘導体を用いる場合には、粗顔料とフタロシアニン誘導体との合計量を粗顔料の使用量と見なして、無機塩の使用量等は、前記した範囲から選択する。
【0057】
顔料の粒子制御において、ソルベントソルトミリング時の結晶成長を抑制し、カラーフィルタ用途に適した小粒径を達成するために、温度は30〜150℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。ソルベントソルトミリングの時間についても同様に、5時間から20時間が好ましく、8〜18時間がより好ましい。
【0058】
こうして、一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmのハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じてハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物の粉体を得ることが出来る。
【0059】
洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩を除去することが出来る。必要であれば、結晶状態を変化させない様に、酸洗浄、アルカリ洗浄、有機溶剤洗浄を行ってもよい。
【0060】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等がある。特にスプレードライ乾燥はペースト作成時に易分散であるため好ましい。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくしたりするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等となった際に顔料を解して粉末化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。こうして、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物を主成分として含む乾燥粉末が得られる。
【0061】
尚、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、従来のハロゲン化銅フタロシアニン顔料に比べて一次粒子の凝集力が弱く、より解れやすい性質を持つ。電子顕微鏡写真により、従来の顔料では観察できない、凝集体を構成する個々の顔料一次粒子を観察することができる。
【0062】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、公知慣用の用途にいずれも使用できるが、特に一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmであることから、顔料凝集も比較的弱く、着色すべき合成樹脂等への分散性がより良好となる。
【0063】
また、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、カラーフィルタ緑色画素部に使用する場合においては、カラーフィルタ用感光性組成物への顔料分散が容易であり、カラーフィルタ用感光性組成物を硬化する際に多用される365nmの輝線に対する光硬化感度が低下せず、現像時の膜へりやパターン流れも起こり難くなるので好ましい。近年要求されている輝度と色再現性とのいずれもが高いカラーフィルタ緑色画素部がより簡便に得られる。
【0064】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物の一次粒子は、更に縦横のアスペクト比が1〜3であると、各用途分野において粘度特性が向上し、流動性がより高くなる。アスペクト比を求めるには、まず、一次粒子の平均粒子径を求める場合と同様に、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき長い方の径(長径)と、短い方の径(短径)の平均値を求め、これらの値を用いて算出する。
【0065】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物を、少なくともカラーフィルタの緑色画素部に含有させることで、本発明のカラーフィルタを得ることが出来る。
【0066】
従来のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と同様に、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、カラーフィルタの緑色画素部を得る場合に、必要に応じて黄色顔料を調色のために併用することが出来る。
【0067】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、前記した様に、従来のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料と同様に、380〜780nmにおける分光透過スペクトルの透過率が最大となる波長(Tmax)は、500〜520nmであり、その透過曲線の半値幅が110nm以下と非常にシャープである。(この波長は、後述する様な感光性樹脂による影響を受けない。)。
【0068】
カラーフィルタ評価における分光透過スペクトルとは、日本工業規格JIS Z 8722(色の測定方法−反射及び透過物体色)の第一種分光測光器に準じて求められるもので、ガラス基板等の上に前記所定乾燥膜厚に製膜した顔料組成物を含む樹脂被膜について所定波長領域の光を走査照射して、各波長における各透過率値をプロットしたものである。カラーフィルタとしての透過率は、例えば樹脂のみで同一乾燥膜厚となした被膜について同様に求めた分光透過スペクトルで補正すること(ベースライン補正等)によって、より精度良く求めることが出来る。
【0069】
本発明の、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物を緑色画素部に含有するカラーフィルタは、白色光、F10等の光源を用いた場合、光源の緑の領域の光を良く透過させることができ、かつハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物の分光透過スペクトルがシャープなため、緑色の色純度、着色力を最大限に発現することができる。
【0070】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、それだけをそのままカラーフィルタの緑色画素部の製造に用いることが出来るが、必要ならば、経済性を考慮して、公知慣用の緑色ハロゲン化銅フタロシアニンまたはその他の緑色ハロゲン化異種金属フタロシアニン顔料の様な緑色ハロゲン化金属フタロシアニン顔料を併用して用いても良い。
【0071】
本発明におけるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物:公知慣用の緑色ハロゲン化金属フタロシアニン顔料(質量比)=100:0〜80:20、好ましくは100:0〜90:10として用いることが好ましい。
【0072】
また、緑色顔料の他に、特性を発現させるため調色用に黄色顔料を使用することがある。ここで併用できる黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー83、同110、同129、同138、同139、同150、同180、同185等の黄色有機顔料が挙げられる。本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物と黄色顔料との併用割合は、前記ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物100質量部当たり、黄色顔料が10〜200質量部である。
【0073】
また、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物を用いれば、黄色顔料を調色のために併用した場合でも、調色のために2種以上の異なる色の顔料を混色する従来の場合に比べて、濁りの少ない、色純度、着色力に優れ、かつ明るいカラーフィルタ緑色画素部とすることが出来る。
【0074】
例えば、従来のC.I.ピグメントグリーン7、同36の様な緑色顔料に、上記した黄色顔料を併用した混合顔料を用いた場合に比べて、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物に黄色顔料を併用した場合のほうが、色純度、着色力が高いため、明るさの低下がより小さくなり、緑色領域の光透過量もより大きくなる。
【0075】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、公知の方法でカラーフィルタの緑色画素部のパターンの形成に用いることが出来る。典型的には、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物と、感光性樹脂とを必須成分して含むカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を得ることが出来る。
【0076】
カラーフィルタの製造方法としては、例えば、このハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物を感光性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して緑色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0077】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で緑色画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。なお、赤色画素部のパターンおよび青色画素部のパターンも公知の顔料を使用して、同様の方法で形成できる。
【0078】
カラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を調製するには、例えば、本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0079】
ここでハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物と、必要に応じて黄色顔料を用いることが出来る。
【0080】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のディスパービック(DISPERBYK登録商標)130、同161、同162、同163、同170、同LPN−6919、同LPN−21116、エフカ社のエフカ46、エフカ47等が挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0081】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等がある。
【0082】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて0〜100質量部の分散剤及び/又は0〜20質量部のフタロシアニン誘導体とを、均一となる様に攪拌分散して分散液を得ることができる。次いでこの分散液に、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物1質量部当たり、3〜20質量部の感光性樹脂、感光性樹脂1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物を得ることができる。
【0083】
この際に使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
【0084】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等がある。
【0085】
こうして調製されたカラーフィルタ緑色画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルタとなすことができる。
【0086】
本発明のハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料組成物は、青味の緑色で着色力が高く、高色純度でコントラストの高い明るい緑色を発色する。従って、詳述したカラーフィルタ用以外にも、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子トナー、ジェットインキ、熱転写インキなどの着色に適する。
【実施例】
【0087】
次に本発明について、実施例を示して具体的に説明する。以下、断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0088】
(製造例1)
300mlフラスコに、塩化スルフリル(和光純薬工業試薬) 90g、塩化アルミニウム(関東化学試薬) 105g、塩化ナトリウム(東京化成工業試薬) 14g、DIC株式会社製 亜鉛フタロシアニン 27g、臭素(和光純薬工業試薬) 45gを仕込んだ。130℃まで昇温し、水に取り出した後、ろ過することによりハロゲン化亜鉛フタロシアニン(A)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(A)について蛍光X線分析により平均ハロゲン化率が臭素8.6個、塩素2.5個であることを確認した。
【0089】
(製造例2)
用いた臭素量を30gに変えた以外は製造例1と同様にして、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(B)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(B)について蛍光X線分析より平均ハロゲン化率が臭素6.9個、塩素3.1個であることを確認した。
【0090】
(製造例3)
用いた臭素量を60gに変えた以外は製造例1と同様にしてハロゲン化亜鉛フタロシアニン(C)を得た。ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(C)について蛍光X線分析より平均ハロゲン化率が臭素10.2個、塩素2.5個であることを確認した。
【0091】
(製造例4)
製造例1で作製したハロゲン化亜鉛フタロシアニン(A)3gを硫酸(和光純薬工業試薬)27gに溶解し、フタルイミド(関東化学試薬)5g、パラホルムアルデヒド(関東化学試薬)2gを加えて80℃で反応させた後、水に取り出し、ろ過、洗浄を経てフタルイミドメチル化ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(D)を得た。生成物の赤外線吸収スペクトルよりフタルイミドメチル基の平均置換基数は0.6個であることを確認した。
【0092】
(製造例5)
製造例2で作製したハロゲン化フタロシアニン(B)を用いたこと以外は製造例4と同様にしてフタルイミドメチル化ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(E)を得た。生成物の赤外線吸収スペクトルより、フタルイミドメチル基の平均置換基数は1.0個であることを確認した。
【0093】
(製造例6)
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(C)20g、フタルイミドメチル化ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(D)1g、粉砕した塩化ナトリウム140g、ジエチレングリコール32gを双腕型ニーダーに仕込み100℃で6時間混練した。混練後80℃の温水2kgに取り出し、1時間撹拌後、ろ過、湯洗、乾燥、粉砕することで緑色顔料組成物(F)を得た。
【0094】
(製造例7)
製造例6においてフタルイミドメチル化ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(D)をフタルイミドメチル化ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(E)に代えた以外は同様にして、緑色顔料組成物(G)を得た。
【0095】
(製造例8)
製造例6においてフタルイミドメチル化ハロゲン化亜鉛フタロシアニン(D)を用いないこと以外は同様にして緑色顔料組成物(H)を得た。
【0096】
(実施例1)
緑色顔料組成物(F)2.48gをビックケミー社製分散剤 BYK−LPN6919 1.24g、DIC(株)製 ユニディック ZL−295 1.86g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10.92gと共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機(株)製ペイントシェーカーで2時間分散して、緑色着色組成物(a)を得た。緑色着色組成物(a) 4.0g、ユニディック ZL−295 0.98g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで評価用緑色組成物(1)を得た。この評価用緑色組成物(1)をソーダガラスにスピンコートし、90℃で3分間乾燥し評価用ガラス基板を得た。得られた評価用ガラス基板を230℃で1時間加熱することで塗膜を硬化させた後、コントラストテスター(壷坂電気(株)製、CT−1)を用いてコントラスト比の測定を行った。なお、硬化後の塗膜の色度がC光源でy=0.430になるようにスピンコートの回転数を調整して、評価用ガラス基板を作製した。
【0097】
[比較例1]
実施例1において緑色顔料組成物(F)を製造例7で作製した緑色顔料組成物(G)に代えた以外は実施例1と同様にして評価用緑色組成物(2)とその評価用ガラス基板を作製した。
【0098】
[比較例2]
実施例1において緑色顔料組成物(F)を製造例8で作製した緑色顔料組成物(H)に代えた以外は実施例1と同様にして評価用緑色組成物(3)とその評価用ガラス基板を作製した。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例1、比較例1および2の結果を表1に示す。
表1から、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物はハロゲン化率が本願範囲からはずれる臭素原子数6.9個、塩素原子数3.1個からなる誘導体を使用した場合や誘導体を使用しない場合に比べて、コントラスト比が10%以上向上していることがわかる。
【0101】
(実施例2)
ピグメントイエロー129(BASF社製、イルガジンイエローL0800) 16.5gをDISPERBYK−161(ビックケミー社製) 3.85g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 11.00gと共に0.3〜0.4mmのジルコンビーズを用いて、東洋精機(株)製ペイントシェーカーで2時間分散して、着色組成物(b)を得た。着色組成物(b) 4.0g、DIC(株)製ユニディックZL−295 0.98g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 0.22gを加えて、ペイントシェーカーで混合することで調色用組成物(4)を得た。
【0102】
(実施例3)
調色用組成物(4)と実施例1で作製した評価用組成物(1)を混合、製膜、乾燥して得たガラス板を230℃で1時間加熱する事でC光源における色度(x、y)=(0.265,0.690)を示す塗膜を作製した。この塗膜についてコニカミノルタ社製CM−3500dで輝度を測定し、レーザーテック社製リアルカラー共焦点顕微鏡OPTELICS C130で膜厚を測定した。
【0103】
[比較例3]
実施例3において評価用組成物(1)を評価用組成物(3)に代えた以外は実施例3と同様にして輝度及び膜厚を測定した。
【0104】
【表2】
【0105】
実施例3および比較例3における各塗膜の輝度と膜厚の結果を表2に示す。
表2からハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体からなる緑色顔料組成物は、本願発明の誘導体を添加しない場合と比べて輝度の低下、膜厚の増大は無いことがわかる。
輝度、着色力を低下させず、大幅なコントラスト向上が可能となるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料とアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有する臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン誘導体からなる緑色顔料組成物、および該緑色顔料組成物からなるカラーフィルタを提供する。
質量換算でハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料100部あたりアルキレン基で結合されたフタルイミド骨格を有する官能基で置換したハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料誘導体を0.1〜10部含有することを特徴とするカラーフィルタ用緑色顔料組成物及び該カラーフィルタ用緑色顔料組成物を含有することを特徴とするカラーフィルタ。