(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を、培地の少なくとも一部を5日以上継続使用して培養すること及び/又は細胞1×10
4個あたり70μL以上の培地中で培養することによって、活性の高い三次元細胞培養体が得られるとの知見に基く。
【0010】
本開示によって、活性の高い三次元細胞培養体が得られるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のように推定される。通常、1〜2日ごとに培地交換を行い、細胞や三次元細胞培養体は製造されている。また、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を培養して三次元細胞培養体を作製する方法において、12時間の培養後に培地交換を行った場合、24時間の培養後に培地交換を行った場合と比較して得られる三次元細胞培養体の層数が多いという報告もある(例えば、Adv. Mater. 2011, 23, 3506-3510)。被覆細胞が培養されている培地中には、細胞自身が産出したサイトカイン等の液性因子が蓄積されている。培地交換を行うとこれらの液性因子が除去されてしまうが、培地交換をすることなく少なくとも5日間培地を継続使用しながら培養を行うことによって、培地中にこれらの液性因子が蓄積される。そして、培地中に蓄積された液性因子を細胞自身が受け取り培養されることによって、より活性の高い三次元細胞培養体が得られると考えられる。また、培地量を細胞1×10
4個あたり70μL以上とすることによって、培地中に蓄積した老廃物による三次元細胞培養体のダメージを低減でき、また、培地中に算出される液性因子の量が増加することから、三次元細胞培養体の活性が向上すると考えられる。但し、これらの推測は本発明を限定するものではない。
【0011】
本明細書において「活性の高い三次元細胞培養体」とは、一又は複数の実施形態において、三次元細胞培養体を構成する細胞の活性が高いこと、及び/又は三次元細胞培養体における三次元の形態が維持されやすいことを含む。また、三次元細胞培養体を構成する細胞の活性が高いとは、一又は複数の実施形態において、代謝に関与する遺伝子の発現量が多いこと、等を含む。三次元細胞培養体における三次元の形態が維持されやすいとは、一又は複数の実施形態において、得られる三次元細胞培養体の厚み及び又は層数の増加が向上することを含む。
【0012】
本明細書において「三次元細胞培養体」とは、細胞と細胞外マトリックスとの集合体によって構成されるものであって、細胞が細胞外マトリックスを介して少なくとも2層以上積層されたものをいう。また、三次元細胞培養体は、基板に接着することなく細胞同士が接着し、成育する細胞が存在する細胞の構造体を含みうる。三次元細胞培養体において含まれる細胞の種類は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0013】
本明細書において「被覆細胞」とは、細胞外マトリックス成分を含む被膜と細胞とを含み、その細胞表面が該被膜によって被覆されている細胞をいう。被覆される細胞としては、限定されない一又は複数の実施形態において、例えば、培養細胞が挙げられる。培養細胞は、ヒト細胞又はヒト以外の細胞であって、例えば、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等が挙げられる。また、細胞は、一又は複数の実施形態において、線維芽細胞、肝ガン細胞等のがん細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。細胞は、ヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外の由来の細胞であってもよい。細胞は、一種類でもよいし、二種類以上を用いてもよい。被覆細胞は、一又は複数の実施形態において、特開2012−115254号公報に開示された方法により作製できる。
【0014】
本明細書において「細胞外マトリックス成分」とは、生体内で細胞の外の空間を充填し、骨格的役割、足場を提供する役割、及び又は生体因子を保持する役割等の機能を果たす生体内物質をいう。また、細胞外マトリックス成分は、さらに、in vitro細胞培養において骨格的役割、足場を提供する役割及び又は生体因子を保持する役割等の機能を果たしうる物質を含んでいてもよい。
【0015】
本明細書において「細胞外マトリックス成分を含む被膜」としては、一又は複数の実施形態において、物質Aを含む膜と、前記物質Aと相互作用する物質Bを含む膜とを含むことが好ましい。物質Aと物質Bとの組み合わせとしては、一又は複数の実施形態において、RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「RGD配列を有する物質」ともいう)と前記RGD配列を有するタンパク質若しくは高分子と相互作用するタンパク質若しくは高分子(以下、「相互作用を有する物質」ともいう)との組み合わせ、又は、正の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「正の電荷を有する物質」ともいう)と負の電荷を有するタンパク質若しくは高分子(以下、「負の電荷を有する物質」ともいう)との組み合わせである。
【0016】
[三次元細胞培養体の第1の製造方法]
本開示は、一又は複数の態様において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を播種すること、前記播種した被覆細胞を培地中で培養すること、及び前記培地の少なくとも一部を5日以上継続使用することを含む、細胞層が少なくとも2層以上積層された三次元細胞培養体の製造方法(以下、「本開示の第1の製造方法」ともいう)に関する。本開示の第1の製造方法によれば、一又は複数の実施形態において、高い活性を示す三次元細胞培養体を提供できる。
【0017】
本開示の第1の製造方法において、培地の少なくとも一部を5日以上継続使用して被覆細胞の培養を行う。本開示において「培地の少なくとも一部を5日以上継続使用して被覆細胞培養を行う」とは、一又は複数の実施形態において、被覆細胞が培養されている培地の20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は略100%を少なくとも5日間使用したままでの状態で被覆細胞の培養を行うことをいう。また、被覆細胞が培養されている培地の20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は略100%を少なくとも5日間除去することなく被覆細胞の培養を行うことを含む。本開示の第1の製造方法は、一又は複数の実施形態において、被覆細胞の培養時に、新しい培地を添加することを含んでいてもよい。培地の少なくとも一部を継続使用する期間は、少なくとも5日間であり、一又は複数の実施形態において、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、15日以上、20日以上、又は25日以上である。継続使用する期間の上限は特に限定されるものではなく、培地の量、播種する細胞数、及び細胞の種類等に応じて適宜決定でき、一又は複数の実施形態において、90日以下、60日以下、又は40日以下である。本開示の第1の製造方法の一又は複数の実施形態において、少なくとも5日間培地交換を行うことなく被覆細胞の培養を行ってもよいし、また培地交換周期が5日以上であってもよい
。また、本開示の第1の製造方法の一又は複数の実施形態において、培養開始から最初の培地交換を少なくとも5日以降に行うこと、又は2回目の培地交換を少なくとも6日以降に行うことを含んでいてもよい。なお、本開示において「培地交換」とは、被覆細胞が培養されている培地の略全量を除去して新たな培地に交換することをいう。
【0018】
本開示の第1の製造方法
は、一又は複数の実施形態において、被覆細胞を播種後16〜36時間後に培地交換を行うことを含んでいてもよい。
【0019】
培地の量は特に制限されるものではないが、培養中に培地に含まれる老廃物の影響を低減する点から、細胞1×10
4個あたり70μL以上が好ましく、より好ましくは170μL以上、又は1mL以上である。また、培地の量は、一又は複数の実施形態において、細胞1×10
4個あたり100mL以下、又は10mL以下である。
【0020】
本開示の第1の製造方法は、一又は複数の実施形態において、培地の少なくとも一部を5日以上継続使用すること、及び細胞1×10
4個あたり70μL以上の培地中で被覆細胞を培養することを含む。また、本開示の第1の製造方法は、一又は複数の実施形態において、前記培地の少なくとも一部を継続使用する間、細胞1×10
4個あたり70μL以上の培地中で被覆細胞を培養することを含む。
【0021】
培地は、特に制限されず、細胞に応じて適宜決定でき、例えば、Eagle's MEM培地、Dulbecco's Modified Eagle培地(DMEM)、Modified Eagle培地(MEM)、Minimum Essential培地、RDMI、GlutaMax培地、又は無血清培地等が挙げられる。
【0022】
被覆細胞の播種は、一又は複数の実施形態において、被覆細胞が少なくとも2層以上積層されるように行えばよい。播種時の被覆細胞の密度は、例えば、目的とする三次元細胞培養体の厚み及び/又は積層される細胞の数等に応じて適宜決定でき、一又は複数の実施形態において、1×10
2個/cm
3〜1×10
9個/cm
3、1×10
4個/cm
3〜1×10
8個/cm
3、又は1×10
5個/cm
3〜1×10
7個/cm
3である。
【0023】
インキュベーション温度は、一又は複数の実施形態において、4〜60℃、20〜40℃、又は30〜37℃である。
【0024】
被覆細胞の培養は、取扱が容易となるという理由から、メンブレンフィルタ上で行うことが好ましく、より好ましくはメンブレンフィルタを備える培養プレート、さらに好ましくはハウジング部と基底部とを備え、基底部がメンブレンフィルタである培養プレートを用いて行う。ハウジング部は、透明であることが好ましい。該培養プレートは、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、トランスウェル(登録商標)、セルカルチャーインサート(商品名)等が挙げられる。
【0025】
メンブレンフィルタの孔径は、培養した細胞がメンブレンフィルタ上に保持可能な範囲であれば特に制限されず、一又は複数の実施形態において、0.1μm〜2μm、又は0.4μm〜1.0μmである。また、メンブレンの材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
【0026】
ウェル等の容器にインサートを配置して被覆細胞の培養を行う場合、インサートの底面積と、インサートを配置する容器の底面積との比(容器の底面積/インサートの底面積)は、一又は複数の実施形態において、7以上、30以上、100以上、又は160以上であり、また16000以下、又は1600以下である。
【0027】
[三次元細胞培養体の第2の製造方法]
本開示は、一又は複数の態様において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を播種すること、及び前記播種した被覆細胞を培地中で培養すること、を含み、前記被覆細胞の培養は、前記被覆細胞を、細胞1×10
4個あたり70μL以上の培地中で培養することを含む、細胞層が少なくとも2層以上積層された三次元細胞培養体の製造方法(以下、「本開示の第2の製造方法」ともいう)に関する。
【0028】
本開示の第2の製造方法において、培地の量は細胞1×10
4個あたり70μL以上であり、培養中
に培地に含まれる老廃物の影響を低減する点から、好ましくは170μL以上、又は1mL以上であり、また100mL以下、又は10mL以下である。
【0029】
本開示の第2の製造方法
は、一又は複数の実施形態において、培地交換を行うことを含んでいてもよい。培地交換を行う周期は特に制限されるものではなく、一又は複数の実施形態において、1日おき、2日おき、3日おき、又は4日おきに行ってもよい。また、一又は複数の実施形態において、より層数及び/又は厚みの大きい三次元細胞培養体が得られうる点から、培地の少なくとも一部を5日以上継続使用して被覆細胞を培養することを含んでいてもよい。継続使用する期間は、一又は複数の実施形態において、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、15日以上、20日以上、又は25日以上であり、また90日以下、60日以下、又は40日以下である。本開示の第2の製造方法の一又は複数の実施形態において、培地交換の周期が5日以上であってもよい。
【0030】
本開示の第2の製造方法において、一又は複数の実施形態において、培養開始から最初の培地交換を、被覆細胞を播種後16〜36時間後に行うことを含んでいてもよい。
【0031】
本開示の第2の製造方法において、培地の種類、及びインキュベーション温度等の培養条件は本開示の第1の製造方法と同様である。
【0032】
本開示の第1及び2の製造方法において、細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚みは、一又は複数の実施形態において、1nm〜1×10
3nm、又は2nm〜1×10
2nmが好ましく、被覆細胞がより密に積層された三次元細胞培養対が得られるという理由から、3nm〜1×10
2nmがより好ましい。細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚みは、例えば、被膜を構成する膜の数によって適宜制御することができる。細胞外マトリックス成分を含む被膜は、特に制限されず、1層であってもよいし、例えば、3、5、7、9、11、13、15層又はそれ以上の多層であってもよい。なお、被膜の厚みは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0033】
本開示の第1及び2の製造方法は、さらに、被覆細胞を調製する工程を含んでいてもよい。被覆細胞は、物質Aを含む溶液と、物質Bを含む溶液とを細胞に交互に接触させることにより調製することができる。物質Aと物質Bとの組み合わせとしては、上記の通り、RGD配列を有する物質
と相互作用を有する物質との組み合わせ、又は、正の電荷を有する物質と負の電荷を有する物質との組み合わせが挙げられる。
【0034】
(RGD配列を有する物質)
RGD配列を有する物質とは、細胞接着活性を担うアミノ酸配列である「Arg−Gly−Asp」(RGD)配列をするタンパク質又は高分子をいう。本明細書において「RGD配列を有する」とは、元来RGD配列を有するものでもよいし、RGD配列が化学的に結合されたものでもよい。RGD配列を有する物質は、生分解性であることが好ましい。
【0035】
RGD配列を有するタンパク質としては、例えば、従来公知の接着性タンパク質、又はRGD配列を有する水溶性タンパク質等が挙げられる。接着性タンパク質としては、例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、又はコラーゲン等が挙げられる。RGD配列を有する水溶性タンパク質としては、例えば、RGD配列を結合させたコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、グロブリン、プロテオグリカン、酵素、又は抗体等が挙げられる。
【0036】
RGD配列を有する高分子としては、例えば、天然由来高分子、又は合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、α−ポリリジン又はε−ポリリジン等のポリアミノ酸、キチン又はキトサン等の糖等が挙げられる。RGD配列を有する合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε−カプロラクタム、ポリアクリルアミド、又はポリ(メタクリル酸メチル−γ−ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。
【0037】
RGD配列を有する物質は、これらの中でも、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、ポリリジン、エラスチン、RGD配列を結合させたコラーゲン、RGD配列を結合させたゼラチン、キチン、又はキトサンが好ましく、より好ましくはフィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、ポリリジン、RGD配列を結合させたコラーゲン、又はRGD配列を結合させたゼラチンである。
【0038】
(相互作用する物質)
相互作用する物質とは、RGD配列を有する物質と相互作用するタンパク質若しくは高分子をいう。本明細書において「相互作用する」とは、例えば、静電的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、電荷移動相互作用、共有結合形成、タンパク質間の特異的相互作用、及び又はファンデルワールス力等により、化学的及び又は物理的にRGD配列を有する物質と相互作用する物質とが結合、接着、吸着又は電子の授受が可能な程度に近接することを意味する。相互作用する物質は、生分解性であることが好ましい。
【0039】
RGD配列を有する物質と相互作用するタンパク質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、プロテオグリカン、インテグリン、酵素、又は抗体等が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する高分子としては、例えば、天然由来高分子、又は合成高分子が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、エラスチン、ヘパリン、ヘパラン硫酸又はデキストラン硫酸等の糖、及びヒアルロン酸等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、例えば、α−ポリリジン又はε−ポリリジン等のポリリジン、ポリグルタミン酸、又はポリアスパラギン酸等が挙げられる。RGD配列を有する物質と相互作用する合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のRGD配列を有するポリマー又は共重合体が挙げられる。ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール−グラフト−ポリアクリル酸、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−ポリアクリル酸)、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリε−カプロラクタム、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸メチル−γ−ポリメタクリル酸オキシエチレン)等が挙げられる。
【0040】
相互作用する物質は、これらの中でも、ゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、グロブリン、アルブミン、ポリグルタミン酸、コラーゲン、又はエラスチンが好ましく、より好ましくはゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、又はコラーゲン、さらに好ましくはゼラチン、デキストラン硫酸、ヘパリン、又はヒアルロン酸である。
【0041】
RGD配列を有する物質と相互作用する物質との組み合わせは、特に制限されず、相互作用する異なる物質の組み合わせであればよく、いずれか一方がRGD配列を含む高分子又はタンパク質であり、他方がこれと相互作用する高分子またはタンパク質であればよい。RGD配列を有する物質と相互作用を有する物質との組み合わせとしては、例えば、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとε−ポリリジン、フィブロネクチンとヒアルロン酸、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとヘパリン、フィブロネクチンとコラーゲン、ラミニンとゼラチン、ラミニンとコラーゲン、ポリリジンとエラスチン、ビトロネクチンとコラーゲン、RGD結合コラーゲン又はRGD結合ゼラチンとコラーゲン又はゼラチン等が挙げられる。中でも、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとε−ポリリジン、フィブロネクチンとヒアルロン酸、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、フィブロネクチンとヘパリン、又はラミニンとゼラチンが好ましく、より好ましくはフィブロネクチンとゼラチンである。なお、RGD配列を有する物質及び相互作用を有する物質は、それぞれ一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
【0042】
(正の電荷を有する物質)
正の電荷を有する物質とは、正の電荷を有するタンパク質又は高分子をいう。正の電荷を有するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、例えば、塩基性コラーゲン、塩基性ゼラチン、リゾチーム、シトクロムc、ペルオキシダーゼ、又はミオグロビン等が挙げられる。正の電荷を有する高分子としては、例えば、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリアミノ酸、キチン又はキトサン等の糖等が挙げられる。ポリアミノ酸としては、ポリ(α−リジン)、ポリ(ε−リジン)等のポリリジン、ポリアルギニン、又はポリヒスチジン等が挙げられる。合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、又はこれらの共重合体、ポリエステル、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)、ポリアリルアミンハイドロクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、又はポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
【0043】
(負の電荷を有する物質)
負の電荷を有する物質とは、負の電荷を有するタンパク質又は高分子をいう。負の電荷を有するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が好ましい。水溶性タンパク質としては、例えば、酸性コラーゲン、酸性ゼラチン、アルブミン、グロブリン、カタラーゼ、β−ラクトグロブリン、チログロブリン、α−ラクトアルブミン、又は卵白アルブミン等が挙げられる。負の電荷を有する高分子としては、天然由来高分子及び合成高分子が挙げられる。天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、ポリ(βリジン)等のポリアミノ酸、又はデキストラン硫酸等が挙げられる。合成高分子としては、例えば、直鎖型、グラフト型、くし型、樹状型、又は星型等のポリマー又は共重合体が挙げられる。前記ポリマー又は共重合体としては、例えば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、及びこれらの共重合体、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、末端カルボキシ化ポリエチレングリコール、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアリルアミン塩、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、又はポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。
【0044】
正の電荷を有する物質と負の電荷を有する物質との組み合わせとしては、例えば、ε−ポリリジン塩とポリスルホン酸塩、ε−ポリリジンとポリスルホン酸塩、キトサンとデキストラン硫酸、ポリアリルアミンハイドロクロライドとポリスチレンスルホン酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリスチレンスルホン酸塩、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリアクリル酸塩等が挙げられ、好ましくはε−ポリリジン塩とポリスルホン酸塩、又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドとポリアクリル酸塩である。ポリスルホン酸塩としては、例えば、ポリスルホン酸ナトリウム(PSS)等が挙げられる。なお、正の電荷を有する物質及び負の電荷を有する物質は、それぞれ、一種類ずつでもよいし、相互作用を示す範囲で二種類以上をそれぞれ併用してもよい。
【0045】
以下に、細胞に、まずRGD配列を有する物質を含有する溶液Aと接触させた後、RGD配列を有する物質に相互作用を有する物質を含有する溶液Bと接触させ
る場合を例にとり、被覆細胞の調製方法を説明する。
【0046】
まず、細胞を溶液Aと接触させる。これにより、細胞表面にRGD配列を有する物質を含む膜が形成され、細胞表面がRGD配列を有する物質を含む膜によって被覆される。細胞と溶液Aとの接触は、例えば、溶液Aを細胞に塗布又は添加すること、溶液Aに細胞を浸漬させること、溶液Aを細胞に滴下又は噴霧すること等により行うことができる。中でも、操作が容易であるという理由から、溶液Aに細胞を浸漬させることにより、細胞と接触させることが好ましい。
【0047】
接触条件は、一又は複数の実施形態において、接触方法、RGD配列を有する物質及び又は細胞の種類、及び含有液の濃度等に応じて適宜決定できる。接触時間は、一又は複数の実施形態において、30秒〜24時間、1分〜60分、1分〜15分、1分〜10分、又は1分〜5分が好ましい。接触時の雰囲気温度及び又は
溶液Aの温度は、一又は複数の実施形態において、4〜60℃、20〜40℃、又は30〜37℃が好ましい。
【0048】
溶液Aは、RGD配列を有する物質を含んでいればよく、好ましくはRGD配列を有する物質と溶媒又は分散媒体(以下、「溶媒」ともいう)とを含む。溶液Aにおける、RGD配列を有する物質の含有量は、一又は複数の実施形態において、0.0001〜1質量%、0.01〜0.5質量%、又は0.02〜0.1質量%が好ましい。溶媒としては、一又は複数の実施形態において、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び緩衝液等の水性溶媒が挙げられる。緩衝液としては、例えば、Tris−HCl緩衝液等のTris緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、グリシルグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、Britton−Robinson緩衝液、又はGTA緩衝液等が挙げられる。溶媒のpHは、特に制限されず、一又は複数の実施形態において、3〜11、6〜8、又は7.2〜7.4が好ましい。
【0049】
溶液Aは、一又は複数の実施形態において、塩、細胞成長因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、生理活性ペプチド、又は医薬組成物等をさらに含有してもよい。医薬組成物としては、例えば、疾患の治療剤、予防剤、抑制剤、抗菌剤、又は抗炎症剤等が挙げられる。塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素ナトリウム、硫酸マグネシウム、コハク酸ナトリウム等が挙げられる。塩は、一種類でもよいし二種類以上含有していてもよい。溶液A及び溶液Bの双方が塩を含有していてもよいし、いずれか一方が塩を含有していてもよい。溶液A中の塩濃度は、特に制限されないが、例えば、1×10
-6M〜2Mであり、好ましくは1×10
-4M〜1M、より好ましくは1×10
-4M〜0.05Mである。
【0050】
ついで、RGD配列を有する物質を含む膜の形成に使用されなかった物質を除去する。除去は、例えば、遠心分離又は濾過等により行うことができる。遠心分離による除去は、例えば、溶液Aに細胞を分散させた状態で遠心分離し、ついで上澄みを除去することにより行うことができる。遠心分離条件は、細胞の種類、細胞の濃度、及び溶液Aに含まれる含有物の組成によって適宜決定できる。
【0051】
上記除去に加えて、洗浄操作を行うことが好ましい。洗浄は、例えば、遠心分離又は濾過等により行うことができる。遠心分離による洗浄は、例えば、上澄みを除去された細胞に溶媒を添加し、遠心分離及び上澄みの除去をすることにより行うことができる。洗浄に用いる溶媒は、溶液Aの溶媒と同じであることが好ましい。
【0052】
ついで、RGD配列を有する物質を含む膜で被覆された細胞を溶液Bと接触させる。これにより、RGD配列を有する物
質を含む膜表面に相互作用をする物質を含む膜が形成され、RGD配列を有する物
質を含む膜で被覆された細胞表面が相互作用をする物質を含む膜によって被覆される。溶液Bとの接触は、RGD配列を有する物質に代えて相互作用する物質を使用する以外は、溶液Aとの接触と同様に行うことができる。
【0053】
溶液A又は溶液Bと細胞との接触とを交互に繰り返し行うことにより、細胞表面全体に、
RGD配列を有する物質を含む膜と相互作用をする物質を含む膜とが交互に積層された細胞外マトリックス成分を含む被膜を形成することができる。溶液A又は溶液Bと細胞との接触を行う回数は、例えば、形成する細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚み等に応じて適宜決定できる。
【0054】
[三次元細胞培養体]
本開示は、少なくとも2層以上積層された細胞と、細胞外マトリックス成分を含む三次元細胞培養体であって、本開示の第1又は第2の製造方法により製造される三次元細胞培養体に関する。本開示の三次元細胞培養体は、一又は複数の実施形態において、高い活性を示すことができる。本開示の三次元細胞培養体における細胞、及び細胞外マトリックス成分は、上述のとおりである。
【0055】
[被覆細胞の培養方法]
本開示は、一又は複数の態様において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を播種すること、前記播種した被覆細胞を培地中で培養すること、及び前記培地の少なくとも一部を5日以上継続使用することを含む、被覆細胞の培養方法に関する。また、本開示は、一又は複数の態様において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を播種すること、及び前記播種した被覆細胞を培地中で培養することを含み、前記被覆細胞の培養は、前記被覆細胞を、細胞1×10
4個あたり70μL以上の培地中で培養することを含む、被覆細胞の培養方法に関する。本開示の被覆細胞の培養方法における培養条件等は上記の通りである。
【0056】
[三次元細胞培養体の培養方法]
本開示は、一又は複数の態様において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を播種すること、前記播種した被覆細胞を培地中で培養すること、及び前記培地の少なくとも一部を5日以上継続使用することを含む、細胞層が少なくとも2層以上積層された三次元細胞培養体の製造方法に関する。また、本開示は、一又は複数の態様において、細胞外マトリックス成分を含む被膜で細胞の表面が被覆された被覆細胞を播種すること、及び前記播種した被覆細胞を培地中で培養することを含み、前記被覆細胞の培養は、前記被覆細胞を、細胞1×10
4個あたり70μL以上の培地中で培養することを含む、細胞層が少なくとも2層以上積層された三次元細胞培養体の培養方法に関する。本開示の三次元細胞培養体の培養方法における培養条件等は上記の通りである。
【0057】
以下に、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。
【実施例】
【0058】
[被覆細胞の作製]
HepG2細胞をプラスチックシャーレ上からトリプシン処理によって回収した。回収した細胞を1×10
7cell/mlの濃度で0.2mg/mlのフィブロネクチンを含む50mM Tris-HCl(pH=7.4)溶液に分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行った(FN浸漬操作)。ついで、上澄みを除き、50 mM Tris-HCl(pH=7.4)溶液を加え、細胞を分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行った(洗浄操作)。上澄みを除き、0.2mg/mlのゼラチンを含む50mM Tris-HCl(pH=7.4)溶液に細胞を分散させ、転倒混和によって緩やかに撹拌しながら、1分間分散状態を保った後、2,500rpmの回転数で1分間の遠心分離を行い(G浸漬操作)、ついで洗浄操作を行った。そして、FN浸漬操作、洗浄操作、G浸漬操作、及び洗浄操作をこの順番で行った。FN浸漬操作及びG浸漬操作は洗浄操作とそれぞれセットで1ステップとし、最終的に、FN浸漬操作を5回、G浸漬操作を4回、計9ステップ行うことによってFN-Gコート細胞を準備した(細胞外マトリックス成分を含む被膜の厚み:8nm)。
【0059】
[培地の消耗の評価/遺伝子発現量の解析]
(実施例1)
24ウェル培養プレートに配置したトランスウェル(コーニング社製;ポアサイズ:0.4μm、表面積:0.33cm
2)のメンブレンフィルタ上に、7×10
5個のHepG2被覆細胞を播種し、10重量%ウシ胎仔血清を含むEagle's MEM培地2.5mLを添加して37℃で1日培養した。前記被覆細胞を播種したトランスウェルを6ウェル培養プレートに配置し、10重量%ウシ胎仔血清を含むEagle's MEM培地12mLを添加して培地交換を行うことなく37℃で8日間培養を行い、三次元細胞培養体を製造した(培養中の培地量:細胞1×10
4個あたり170μL)。
【0060】
(実施例2)
6ウェル培養プレートに配置後、2日おきに培地交換を行いながら培養を行った以外は実施例1と同様に三次元細胞培養体を製造した。なお、培地交換はウェルに含まれる培地のほぼ全量を除去し、新たな培地を添加することにより行った(培養中の培地量:細胞1×10
4個あたり170μL)。
【0061】
(比較例1)
トランスウェルを24ウェル培養プレート配置したまま播種1日後の培地交換、さらに2日おきに培地交換を行いながら培養を行った以外は実施例1と同様に三次元細胞培養体を製造した。なお、培地交換はウェルに含まれる培地のほぼ全量を除去し、新たな培地を添加することにより行った(培養中の培地量:細胞1×10
4個あたり36μL)。
【0062】
培地の消耗の評価
培地交換前にインサート内部と外部のそれぞれの溶液の吸光度(560nm)を測定した。その結果を
図1に示す。
図1A〜Cは、インサート内部と外部のそれぞれの溶液の吸光度を示すグラフであって、
図1Aが培養3日目の培地交換前の溶液の吸光度、
図1Bが培養7日目の培地交換前の溶液の吸光度、
図1Cが培養9日目の溶液の吸光度をそれぞれ示す。
図1に示すように、比較例1(24ウェル)は、培養3日目、7日目及び9日目インサート内側の溶液及び外側の溶液のいずれも、実施例1及び2と比較して吸光度が低く、培地が消耗していることが予測された。また、培養7日目及び9日目において、比較例1のインサート外側の溶液の吸光度が、実施例1及び2のインサート内側の溶液の吸光度よりも低かったことから、培地全体にわたって消耗しているものと考えられた。これに対し、実施例1及び2はインサート内側と外側とで吸光度の差が低く、特に実施例2ではほとんど差が見られなかった。
【0063】
遺伝子発現量の解析
9日間培養後のサンプルからRNAを抽出し、リアルタイムPCRによってCYP1A1、CYP1A2、ALB(アルブミン)及びCYP3A4の遺伝子発現量を測定した。その結果を、比較例1の遺伝子発現量を1とした場合の相対値として
図2に示す。
図2に示すように、実施例1及び2のサンプルは、比較例1のサンプルと比較してCYP活性及びアルブミン産生量が高かった。この結果により、実施例1及び2の方法により三次元細胞培養体を製造することによって、より活性の高い三次元細胞培養体が得られることが示唆された。
【0064】
[培地量と遺伝子発現量との関係]
実施例3として、6ウェルに代えて100mm dishを使用した以外は実施例1と同様の条件で被覆細胞の培養を行った(培養中の培地量:細胞1×10
4個あたり1mL)。また、実施例4として、実施例1と同様の条件で被覆細胞の培養を行った。実施例5として、6ウェルに代えて24ウェルを使用した以外は実施例1と同様の条件で被覆細胞の培養を行った(培養中の培地量:細胞1×10
4個あたり36μL)。実施例3〜5で得られた三次元細胞培養体につき遺伝子の発現量の評価を行った。その結果を、比較例1と同様の条件で行った場合(従来法)の遺伝子発現量を1とした場合の相対値として
図3に示す。
【0065】
図
3に示すように、ALBの発現量は培地量が多くなればなるほど高くなった。一方、CYP1A1の発現量は、培地量が実施例3と4とで同程度であった。これらの結果より、培地の量をより多くすることによって、より活性の高い三次元細胞培養体を製造できる可能性が示唆された。
【0066】
[細胞数と遺伝子発現量との関係]
実施例6として、実施例1と同様の条件で被覆細胞の培養を行った。参考例としては、インサートを使用することなく、7×10
5個の細胞をそのままウェルに播種した以外は実施例1と同様の条件で被覆細胞の培養を行った。実施例6で得られた三次元細胞培養体及び参考例の細胞につき遺伝子の発現量の評価を行った。その結果を、比較例1と同様の条件で行った場合(従来法)の9日間培養後のサンプルの遺伝子発現量を1とした場合の相対値として
図4に示す。
【0067】
図4に示すように、ALBの発現量は、被覆細胞が積層された状態で培養した実施例6と、細胞が独立した状態で培養した参考例1とでは大きな差は見られなかった。一方、CYP1A1の発現量は、培養1日目では実施例6と参考例1とで大きな差は見られなかったものの、培養3日目以降は、参考例1では発現量が減少したものの、実施例6では発現量が上昇し、培養9日目もその発現量は維持されていた。
【0068】
[三次元細胞培養体の評価]
実施例3〜5で得られた三次元細胞培養体の形態についての評価を行った。
図3に示すように、実施例3及び4で得られた三次元細胞培養体は、従来法の三次元細胞培養体よりも高い活性を示し、実施例5で得られた三次元細胞培養体は、従来法の三次元細胞培養体と略同程度の活性を示した。また、実施例3〜5で得られた三次元細胞培養体の顕微鏡写真の一例を
図5に示す。
図5に示すように、6ウェルで培養した実施例3及び100mm dishで培養した実施例4の三次元細胞培養体は、24ウェルで培養した実施例5と比較して厚み及び層数が大きかった。
【0069】
[培地の継続使用期間と遺伝子発現量との関係]
実施例7として、実施例3と同様の条件(培養中の培地量:細胞1×10
4個あたり1mL、2日目以降培地交換なし)で被覆細胞の培養を27日間行った。培養9日目、18日目及び27日目のサンプルについて、リアルタイムPCRによってCYP1A1、及びALBの遺伝子発現量を測定した。その結果を、従来法(培地量:細胞1×10
4個あたり36μL、2日目以降2日おきに培地交換)で9日間培養後のサンプルの遺伝子発現量を1とした場合の相対値として
図6に示す。
図6AがALBの発現量を示すグラフであり、
図6BがCYP1A1の発現量を示すグラフである。
図6に示すとおり、ALB及びCYP1A1のいずれも、27日の培養期間において高い発現量が維持された。これにより、27日間培地交換することなく培地を継続使用して被覆細胞を培養した場合であっても、三次元細胞培養体の活性が維持され、高い活性が維持された三次元細胞培養体が得られることが確認できた。