特許第6041292号(P6041292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041292
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20161128BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L29/78 658Z
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 652T
   H01L21/30 502M
   H01L21/30 522A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-104236(P2012-104236)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-232565(P2013-232565A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】辻 崇
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲司
【審査官】 小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−100928(JP,A)
【文献】 特開2007−281157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00−21/98
C23C 14/00−14/56
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素基板の<0001>c軸が当該炭化珪素基板の主面の法線方向から<11−20>方向にθだけ傾いている面を主面とし、アライメントマークが形成される領域の周囲を囲むように前記炭化珪素基板の主表面層を除去して凸状の前記アライメントマークを残す工程と、
前記炭化珪素基板の主表面に、前記アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させる工程と、
を含み、
前記アライメントマークの前記炭化珪素基板の主表面に平行な幅Xは、前記エピタキシャル層の膜厚Yとの関係においてY≧X・tanθを満たすことを特徴とする炭化珪素半導体素子の製造方法。
【請求項2】
炭化珪素基板の<0001>c軸が当該炭化珪素基板の主面の法線方向から<11−20>方向にθだけ傾いている面を主面とし、前記炭化珪素基板の主表面の、アライメントマークが形成される領域以外の領域を炭化タンタル膜で被覆する工程と、
前記炭化タンタル膜で被覆された側の前記炭化珪素基板の主表面に、前記アライメントマークとなる凸状の第1エピタキシャル層を成長させる工程と、
前記炭化タンタル膜を除去する工程と、
前記炭化珪素基板の主表面に、前記アライメントマークを覆うように第2エピタキシャル層を成長させる工程と、
を含み、
前記アライメントマークの前記炭化珪素基板の主表面に平行な幅Xは、前記第2エピタキシャル層の膜厚Yとの関係においてY≧X・tanθを満たすことを特徴とする炭化珪素半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記アライメントマークを、長手方向が<11−20>方向に対して45度傾いた2つの矩形が直交する十字状の平面形状となるように形成することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体材料として炭化珪素(SiC)を用い、特に、半導体基板のおもて面側から裏面側に電流を流す炭化珪素半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素半導体は、シリコン(Si)半導体と比較して大きなバンドギャップを持つため、高い絶縁破壊電界強度を有する。導通状態における抵抗であるオン抵抗は、その絶縁破壊電界強度の3乗に逆比例するため、例えば広く用いられている4H型と呼ばれる炭化珪素半導体(四層周期六方晶:4H−SiC)においては、そのオン抵抗をシリコン半導体の数100分の1に抑制することができる。
【0003】
このため、炭化珪素半導体は、放熱が容易となる大きな熱伝導度の特性ともあいまって、次世代の低損失な電力用半導体素子としての期待が持たれている。例えば、炭化珪素半導体を用いて、ショットキーバリアダイオードやMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)、PNダイオード、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)など様々な構造の炭化珪素半導体素子が開発されている。
【0004】
このような半導体素子の作製には、複数のフォトマスクが必要である。フォトマスクは、炭化珪素のドライエッチング工程、炭化珪素へのイオン注入工程、酸化膜のコンタクトホール形成工程、ソース電極やゲート電極、エミッタ電極などの各電極パターン形成工程に使用される。各工程においてフォトマスクと半導体基板と位置合わせを自動で行うために、まず、炭化珪素基板表面に位置認識用ターゲットとなるアライメントマークを形成する。従来のアライメントマーク形成工程について、図5,6を参照して説明する。
【0005】
図5は、従来のアライメントマーク形成途中の炭化珪素基板の状態を示す断面図である。図6は、従来のアライメントマーク形成後の炭化珪素基板の状態を示す断面図である。まず、図5に示すように、炭化珪素半導体素子の素子構造を作製する最初の工程として、炭化珪素基板101上に十分に膜厚が厚い酸化膜102を形成した後、酸化膜102の表面にフォトレジスト103を塗布する。次に、アライメントマークを設けたフォトマスクを通してフォトレジスト103に紫外光を照射(露光)する。
【0006】
次に、現像液に浸漬して露光部のフォトレジスト103を除去する。これにより、フォトマスクと同じパターンで未露光部のフォトレジスト103が残る。そして、残っているフォトレジスト103をベーキングして硬化させる。次に、残っているフォトレジスト103をマスクとして、三フッ化メタン(CHF3)などを主な原料ガスとするドライエッチングによって、フォトレジスト103の開口部に露出する酸化膜102を除去する。
【0007】
次に、図6に示すように、アッシングによってフォトレジスト103をすべて除去する。次に、酸化膜102をマスクとして、硫化フッ素(SF6)や四フッ化炭素(CF4)を主な原料ガスとするドライエッチングによって、酸化膜102の開口部に露出する炭化珪素基板101を1〜2μm程度の深さで除去する。これにより、炭化珪素基板101に凹状のアライメントマーク104が形成される。その後、バッファードフッ酸BHF:Buffered Hydrogen Fluoride)などによるウェットエッチングによって、酸化膜102を除去する。
【0008】
このように酸化膜102のみではなく炭化珪素基板101にもアライメントマーク104を形成する理由は、炭化珪素基板101に注入されたイオン注入種の活性化を目的として1500℃以上の温度で実施されるアニール工程では、酸化膜102を除去し、炭化珪素基板101のみの状態にする必要があるからである。炭化珪素基板101に酸化膜102が形成された状態でアニール工程を行う場合、アニール温度が1500℃と高温であるため、酸化膜102が蒸発してしまい、酸化膜102が蒸発する際に炭化珪素基板101がエッチングされるという問題がある。
【0009】
また、炭化珪素半導体素子の製造方法の一例として、炭化珪素基板にアライメントマークを形成した後に、炭化珪素基板のアライメントマークが形成された表面にエピタキシャル層を成長させる場合がある。例えばMOSFETのベース層は、一般的にイオン注入によって形成されるが、結晶の原子の配列等を保ったまま結晶を増大させるエピタキシャル成長によって形成されることが公知である。そして、エピタキシャル成長によってMOSFETのベース層を形成し、ベース層における結晶欠陥を抑制し反転層(チャネル)を流れるキャリアの移動度を向上させる方法が提案されている(下記、特許文献1参照。)。
【0010】
次に、炭化珪素基板101の主表面に成長させたエピタキシャル層について説明する。図7は、エピタキシャル成長させる炭化珪素基板の主表面の状態を模式的に示す説明図である。結晶欠陥の少ないエピタキシャル層を成長させるためには、炭化珪素基板101の<0001>c軸を主表面110の法線N方向から<11−20>方向にわずかに傾ける必要がある。図7には、主表面110の法線N方向から<11−20>方向にα度だけ傾いた状態を示す。このとき、炭化珪素基板101の主表面110には階段状の{0001}c面があらわれるため、炭化珪素基板101の主表面110には、原子間の結合力が弱い{0001}c面テラス部111と、原子間の結合力が強いステップ部112とが存在することになる。
【0011】
エピタキシャル層の成長メカニズムは、Si原子や炭素(C)原子の炭化珪素基板の主表面への吸着、吸着原子の表面マイグレーション(拡散)および結合、吸着原子の炭化珪素基板の主表面からの脱離(昇華)などの各反応の組み合わせからなる。これらの反応の発生確率は、基板温度や原料ガスの圧力などの成長条件に応じて変化し、成長速度やエピタキシャル層中の結晶欠陥密度を変化させる。結晶欠陥密度の低い高品質なエピタキシャル層を成長させるためには、テラス部111でのエピタキシャル成長を抑制し、ステップ部112でのエピタキシャル成長を促進するような成長条件とする必要があることが提案されている(下記、非特許文献1参照。)。
【0012】
テラス部111でのエピタキシャル成長は、テラス部111上に吸着された原子によって形成された核を中心に<0001>c軸方向(縦方向)のエピタキシャル成長となる。この場合、下地となる炭化珪素基板の主表面の4H構造の原子の縦方向での積層順番が反映されなくなる。一般的には、下地となる炭化珪素基板の主表面に、立方晶炭化珪素(3C−SiC)からなるエピタキシャル層が形成されてしまう。3C−SiCは、4H−SiCに比べて材料物性が十分高くないため、縦型パワーデバイス半導体素子に期待される素子性能を実現することができない。
【0013】
一方、ステップ部112でのエピタキシャル成長においては、{0001}c面の原子層1層毎にステップ部112を起点にして<11−20>方向(横方向)にエピタキシャル成長が進行する。このため、下地となる炭化珪素基板の主表面の4H構造をそのまま引き継ぐエピタキシャル層が形成される。また、ステップ部112でのエピタキシャル成長を促進させるためには、ステップ部112表面の吸着原子の表面マイグレーション長を増加させる必要がある。このため、エピタキシャル成長時の基板温度の増加やガス圧の低減が主に実施されている。以下、このようなエピタキシャル成長モードをステップフロー成長とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2004−036655号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ティー・キモト(T.Kimoto)、外3名、グロウス メカニズム オブ 6H−SiC イン ステップ−コントロールド エピタキシー(Growth mechanism of 6H−SiC in step−controlled epitaxy)、ジャーナル オブ アプライド フィジクス(Journal of Applied Physics)、1993年1月、第73巻、第2号、p.726−732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、炭化珪素基板の主表面にアライメントマークを形成した後にエピタキシャル層を成長させた場合、アライメントマークの輪郭がエピタキシャル層成長前後で変化してしまうという問題がある。その理由は、次のとおりである。図3は、従来のアライメントマークのエピタキシャル層形成後の状態を示す断面図である。図4は、従来のアライメントマークのエピタキシャル層形成後の平面形状を模式的に示す平面図である。以下、<11−20>方向のうち、結晶相が成長していく方向を下流側、結晶相が成長していく方向に対して反対側の方向を上流側とする。
【0017】
図3に示すように、炭化珪素基板101の主表面に、炭化珪素基板101のエッチング部であるアライメントマーク104の側壁および底面に沿ってエピタキシャル層121を形成する。このとき、アライメントマーク104の<11−20>方向の上流側の側壁を覆うエピタキシャル層121により新たに形成されたアライメントマーク104aの側壁の上方121aの位置はほとんど変化しない。一方、アライメントマーク104の<11−20>方向の下流側では、アライメントマーク104の側壁の上方121b付近におけるエピタキシャル成長が進まず、エピタキシャル層121の厚さが他の部分よりも薄くなる。これにより、新たに形成されるアライメントマーク104aの側壁の上方121cの位置が大きく下流方向にずれる。
【0018】
したがって、図4に示すように、長手方向が<11−20>方向に平行な矩形と、長手方向が<1−100>方向に平行な矩形とが直交した十字状の平面形状を有する従来のアライメントマークの輪郭は、エピタキシャル層121形成前(図4(a))とエピタキシャル層121形成後(図4(b))とで変化する。このようにアライメントマークの輪郭が変化した場合、露光装置の画像認識において、アライメントマーク104形成後でエピタキシャル層121形成前に行う工程でのアライメントマーク104の位置と、エピタキシャル層121成長後に行う工程でのアライメントマーク104aの位置とが異なってしまう。
【0019】
また、エピタキシャル層121成長後に新たに形成されるアライメントマーク104aの位置のずれ量(以下、単にアライメントマークのずれ量とする)は、エピタキシャル層121の膜厚に依存し、一定しないことが本発明者の鋭意研究により確認されている。アライメントマークのずれ量が一定しないため、アライメントマークのずれ量を考慮した素子設計とした場合、素子の微細化が難しくなりオン抵抗を低減することができないという問題がある。または、素子の微細化を図ったとしても素子が正常動作しないなどの問題がある。
【0020】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、素子の微細化を図ることができる炭化珪素半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法は、炭化珪素基板の<0001>c軸が当該炭化珪素基板の主面の法線方向から<11−20>方向にθだけ傾いている面を主面とし、アライメントマークが形成される領域の周囲を囲むように前記炭化珪素基板の主表面層を除去して凸状の前記アライメントマークを残す工程と、前記炭化珪素基板の主表面に、前記アライメントマークを覆うようにエピタキシャル層を成長させる工程と、を含み、前記アライメントマークの前記炭化珪素基板の主表面に平行な幅Xは、前記エピタキシャル層の膜厚Yとの関係においてY≧X・tanθを満たすことを特徴とする。
【0022】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法は、炭化珪素基板の<0001>c軸が当該炭化珪素基板の主面の法線方向から<11−20>方向にθだけ傾いている面を主面とし、前記炭化珪素基板の主表面の、アライメントマークが形成される領域以外の領域を炭化タンタル膜で被覆する工程と、前記炭化タンタル膜で被覆された側の前記炭化珪素基板の主表面に、前記アライメントマークとなる凸状の第1エピタキシャル層を成長させる工程と、前記炭化タンタル膜を除去する工程と、前記炭化珪素基板の主表面に、前記アライメントマークを覆うように第2エピタキシャル層を成長させる工程と、を含み、前記アライメントマークの前記炭化珪素基板の主表面に平行な幅Xは、前記第2エピタキシャル層の膜厚Yとの関係においてY≧X・tanθを満たすことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法は、上述した発明において、前記アライメントマークを、長手方向が<11−20>方向に対して45度傾いた2つの矩形が直交する十字状の平面形状となるように形成することを特徴とする。
【0025】
上述した発明によれば、アライメントマーク上面へのエピタキシャル層の形成前後で、アライメントマークの位置ずれおよびアライメントマークの輪郭変形は生じない。これにより、アライメントマークをフォトマスクの位置認識用ターゲットとして使用し、ステッパーに画像認識させるときに、ステッパーにアライメントマークの輪郭を正確に認識させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法によれば、素子の微細化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造途中の状態を示す説明図である。
図2】比較例のアライメントマークのエピタキシャル層形成後の状態を示す説明図である。
図3】従来のアライメントマークのエピタキシャル層形成後の状態を示す断面図である。
図4】従来のアライメントマークのエピタキシャル層形成後の平面形状を模式的に示す平面図である。
図5】従来のアライメントマーク形成途中の炭化珪素基板の状態を示す断面図である。
図6】従来のアライメントマーク形成後の炭化珪素基板の状態を示す断面図である。
図7】エピタキシャル成長させる炭化珪素基板の主表面の状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数を表している。
【0029】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造途中の状態を示す説明図である。図1(a)は、図1(b)の切断線A−A’における断面構造を示す断面図であり、アライメントマーク10のp-型エピタキシャル層2形成後の状態を示す要部断面図である。図1(b)は、アライメントマーク10の平面形状を示す平面図である。
【0030】
まず、例えば一方の主表面にn-型炭化珪素エピタキシャル層が積層された、炭化珪素の四層周期六方晶(4H−SiC)からなるn-型炭化珪素単結晶基板(以下、n-型炭化珪素基板とする)1を用意する。n-型炭化珪素基板1の主面は、<11−20>方向にオフ角θを有する(000−1)C面である。具体的には、n-型炭化珪素基板1の主面は、n-型炭化珪素基板1の<0001>c軸が法線方向Nから<11−20>方向に4度(θ=4度)傾いている面であってもよい。
【0031】
次に、n-型炭化珪素基板1の主表面に、1μmの厚さでマスク酸化膜を堆積する。次に、マスク酸化膜の表面にフォトレジストを塗布し、露光および現像によりフォトレジストをパターニングした後、残っているフォトレジストをベーキングして硬化させレジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをマスクとしてドライエッチングを行い、マスク酸化膜を選択的に除去する。そして、レジストパターンを灰化(アッシング)により除去する。
【0032】
次に、図1(a)に示すように、マスク酸化膜(不図示)をマスクとしてドライエッチングを行い、アライメントマーク10が形成される領域の周囲を囲むようにn-型炭化珪素基板1の主表面層を例えば約2μm深さで除去する。このとき、n-型炭化珪素基板1の主表面層の、アライメントマーク10を中心に例えば周囲100μm角の範囲のみを除去することにより、n-型炭化珪素基板1が除去された領域に囲まれた凸状のアライメントマーク10を残す。アライメントマーク10は、例えば、n-型炭化珪素基板1のスクライブラインに形成される。アライメントマーク10は、複数枚のフォトマスクの位置合わせに使用する位置認識用ターゲットである。
【0033】
アライメントマーク10の平面形状は、短手方向の幅w1が例えば5μmで、長手方向の幅w2が例えば50μmの2つの矩形が直交した十字状であるのが好ましい。アライメントマーク10の十字状の平面形状は、当該平面形状を構成する矩形の長手方向が<11−20>方向に対して例えば45度傾いているのがよい(図1(b))。これにより、本発明の効果が顕著にあらわれる。そして、例えばバッファードフッ酸を用いてマスク酸化膜を除去する。
【0034】
次に、例えば炭化珪素半導体素子の素子構造を形成するための複数の工程を行った後、n-型炭化珪素基板1の主表面に、アライメントマーク10を覆うように例えば0.5μmの厚さでp-型エピタキシャル層2を成長させる。このとき、アライメントマーク10の上面から原子層のステップ部を消失させ、アライメントマーク10上面全面を{0001}面テラス部(以下、単にテラス部とする)10aとする。ステップ部とは、アライメントマーク10の上面の、n-型炭化珪素基板1の主表面に平行な部分である。テラス部10aは、n-型炭化珪素基板1の主表面に対して斜度を有する部分である。
【0035】
アライメントマーク10上面から原子層のステップ部を消失させ、アライメントマーク10上面全面をテラス部10aとするためには、p-型エピタキシャル層2の膜厚を十分大きくするか、アライメントマーク10のn-型炭化珪素基板1の主表面に平行な幅を十分小さくする。具体的には、p-型エピタキシャル層2の膜厚をYとし、アライメントマーク10のn-型炭化珪素基板1の主表面に平行な幅をXとし、n-型炭化珪素基板1のオフ角をθとした場合、下記(1)式を満たすようにそれぞれの値を選択する。アライメントマーク10のn-型炭化珪素基板1の主表面に平行な幅Xとは、アライメントマーク10の十字状の平面形状を構成する2つの矩形が重なってなる正方形部分(領域)の対角線の長さである。
【0036】
Y≧X・tanθ ・・・(1)
【0037】
アライメントマーク10上面全面をテラス部10aとする理由は、次のとおりである。図2は、比較例のアライメントマークのエピタキシャル層形成後の状態を示す説明図である。図2(a)は、図2(b)の切断線B−B’における断面構造を示す断面図である。図2(b)は、アライメントマーク20の平面形状を示す平面図である。図2に示すように、上記(1)式を満たしていない場合、すなわちp-型エピタキシャル層22の膜厚yが小さ過ぎるか、アライメントマーク20のn-型炭化珪素基板1の主表面に平行な幅xが大きすぎる場合には、アライメントマーク20上面に{0001}面テラス部20aとステップ部20bとが混在する。このため、ステッパーによる画像認識において、テラス部20aとステップ部20bの境界をアライメントマーク20の輪郭と認識されてしまい、フォトマスクずれの原因となる。
【0038】
一方、上記(1)式を満たす場合、ステッパーはアライメントマーク10の凸部の十字状の輪郭をそのまま画像認識するため、フォトマスクずれはほとんど生じない。例えば、上述した実施の形態1にしたがい、n-型炭化珪素基板1のオフ角θを4度とし、p-型エピタキシャル層2の膜厚Yを0.5μmとしてアライメントマーク10を形成した場合、アライメントマーク10のn-型炭化珪素基板1の主表面に平行な幅Xの最大値Xmaxが7.15μm(=0.5/tan(4度))であるため、X≦7.15μmを満たす必要がある。実施の形態1にしたがい、アライメントマーク10を形成した実施例を作製した結果、アライメントマーク10のn-型炭化珪素基板1の主表面に平行な幅Xは7.07μmとなり上記(1)式を満たしており、ステッパーによってアライメントマーク10の輪郭が正確に認識された。
【0039】
以上説明したように、実施の形態1によれば、炭化珪素基板の<11−20>方向にオフ角θを有する(000−1)C面を主面とし、炭化珪素基板の主表面層のアライメントマークとなる部分の周囲を選択的に除去して凸状のアライメントマークを残し、上記(1)式を満たすようにアライメントマーク上面にエピタキシャル層を形成することにより、アライメントマーク上面へのエピタキシャル層の形成前後で、アライメントマークの位置ずれおよびアライメントマークの輪郭変形は生じない。これにより、アライメントマークをフォトマスクの位置認識用ターゲットとして使用し、ステッパーに画像認識させるときに、ステッパーにアライメントマークの輪郭を正確に認識させることができる。これにより、アライメントマークの位置ずれを考慮した広いセルピッチとする必要がなくなるため、セルピッチを狭くすることができる。したがって、炭化珪素半導体素子の微細化を図ることができる。
【0040】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法について説明する。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法と異なる点は、n-型炭化珪素基板の主表面に十字状の平面形状で凸状に成長させた炭化珪素エピタキシャル層をアライメントマークとする点である。具体的には、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法においては、次のようにアライメントマークを形成する。
【0041】
まず、実施の形態1と同様に、一方の主表面にn-型炭化珪素エピタキシャル層が積層されたn-型炭化珪素基板を用意する。次に、n-型炭化珪素基板のn-型炭化珪素エピタキシャル層側の主表面に、例えば炭化タンタル(TaC)膜を形成する。炭化タンタル膜は、直接スパッタによって形成されてもよいし、n-型炭化珪素基板の主表面にタンタルをスパッタした後、プロパン(C38)などの炭素(C)を含む原料ガス中でアニールすることにより形成されてもよい。
【0042】
次に、実施の形態1と同様に、フォトレジストの塗布、露光、現像およびベーキングによるレジストパターンを形成した後、レジストパターンをマスクとしてエッチングを行い、炭化タンタル膜を選択的に除去する。これにより、炭化タンタル膜の開口部に、アライメントマークの形成領域が露出される。そして、レジストパターンを灰化により除去する。次に、炭化タンタル膜の開口部に露出するn-型炭化珪素基板の主表面に、炭化珪素エピタキシャル層(第1エピタキシャル層)を成長させる。炭化タンタル膜の開口部に成長させた炭化珪素エピタキシャル層がアライメントマークである。アライメントマークの平面形状や寸法は、実施の形態1と同様である。
【0043】
炭化珪素エピタキシャル層は<11−20>方向に沿ったステップフロー成長の上流側から下流側に行くにしたがって膜厚が増加し、最も下流側にて膜厚が最大になる。炭化珪素エピタキシャル層を成長させるn-型炭化珪素基板主表面の周囲は炭化タンタル膜で囲まれているため、最も上流側での炭化珪素のステップフローは抑制され、{0001}面テラス部があらわれる。そして、炭化珪素エピタキシャル層の膜厚が大きくなるにしたがってテラス部の幅が上流側から下流側に向かって拡大していく。
【0044】
炭化珪素エピタキシャル層の膜厚が十分大きくない場合、アライメントマーク上面の上流側に{0001}面テラス部があらわれるが、アライメントマーク上面の下流側にはステップ部がまだ存在している。すなわち、炭化珪素エピタキシャル層は、炭化タンタル膜の表面には成長せず、炭化タンタル膜の開口部に露出するn-型炭化珪素基板の主表面にのみ、テラス部の幅を徐々に広げながら成長する。この炭化珪素エピタキシャル層の導電型や不純物濃度は、種々変更可能である。
【0045】
次に、例えばバッファードフッ酸を用いて炭化タンタル膜を除去し、実施の形態1と同様に、例えば炭化珪素半導体素子の素子構造を形成する複数の工程を行った後、例えば0.5μmの厚さでp-型エピタキシャル層(第2エピタキシャル層)を成長させる。このとき、実施の形態1と同様に、上記(1)式を満たすように、p-型エピタキシャル層の膜厚Y、アライメントマークのn-型炭化珪素基板の主表面に平行な幅X、およびn-型炭化珪素基板のオフ角θを選択する。これにより、実施の形態1と同様に、アライメントマーク上面全面にテラス部を形成することができる。
【0046】
以上説明したように、実施の形態2によれば、炭化珪素基板の<11−20>方向にオフ角θを有する(000−1)C面を主面とし、炭化珪素基板の主表面から突出する凸状のアライメントマークを形成し、上記(1)式を満たすようにアライメントマーク上面にエピタキシャル層を形成することにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法について説明する。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法と異なる点は、n-型炭化珪素基板の主表面から凹状に凹んだアライメントマークを形成し、アライメントマークを含む領域を炭化タンタル膜で被覆する点である。具体的には、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法においては、次のようにアライメントマークを形成する。
【0048】
実施の形態3においては、まず、実施の形態1と同様に、n-型炭化珪素基板の主表面に堆積したマスク酸化膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングする。このとき、実施の形態3においては、アライメントマークの形成領域が開口するマスク酸化膜を形成する。次に、マスク酸化膜をマスクとしてドライエッチングを行い、n-型炭化珪素基板を選択的に除去し、凹状のアライメントマークを形成する。
【0049】
次に、アライメントマークを含む領域を炭化タンタル膜で被覆する。アライメントマークを含む領域とは、アライメントマークを中心に例えば周囲100μm角の範囲の領域である。アライメントマークの側壁および底面を炭化タンタル膜で被覆してもよい。次に、n-型炭化珪素基板の主表面に、p-型エピタキシャル層を成長させる。p-型エピタキシャル層は、炭化タンタル膜で被覆されたアライメントマークを含む領域では成長しないため、p-型エピタキシャル層の表面層にはアライメントマークと同様の平面形状を有する溝が形成される。
【0050】
以上説明したように、実施の形態3によれば、炭化珪素基板の<11−20>方向にオフ角θを有する(000−1)C面を主面とし、炭化珪素基板の主表面層に凹状のアライメントマークを形成し、アライメントマークを含む領域を炭化タンタル膜で被覆することにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(実施例)
次に、本発明の実施の形態にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法によって製造された炭化珪素半導体素子のセルピッチについて検証した。まず、実施の形態1にしたがいアライメントマークを形成し、当該アライメントマークを複数枚のフォトマスクの位置合わせに使用する位置認識用ターゲットとしてMOSFETを作製した(以下、実施例1とする)。また、比較として、従来のアライメントマークを位置認識用ターゲットとしてMOSFETを作製した(以下、従来例とする)。
【0052】
その結果、従来例では15μmのセルピッチまでしか微細化することができなかった。それに対して、実施例1においては8μmまでセルピッチを微細化することができた。このように、従来例よりも微細化されたことによって、実施例のオン抵抗は、従来例のオン抵抗5.6mΩcm2から4.0mΩcm2へと大きく低減することができた。また、実施の形態2,3にしたがって形成したアライメントマークを位置認識用ターゲットとして作製されたMOSFETにおいても、実施例1と同様の効果を得ることができることが確認された。
【0053】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は、p型とn型とを入れ替えた場合や、炭化珪素基板と炭化珪素基板主表面に成長させるエピタキシャル層とを同導電型とした場合も同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法は、半導体材料として炭化珪素を用いた炭化珪素半導体素子に有用であり、特に、半導体基板のおもて面側から裏面側に電流を流す縦型パワーデバイス半導体素子に適している。
【符号の説明】
【0055】
1 n-型炭化珪素基板
2 p-型エピタキシャル層
10 アライメントマーク
10a {0001}面テラス部
X アライメントマークのn-型炭化珪素基板の主表面に平行な幅
Y p-型エピタキシャル層の膜厚
θ n-型炭化珪素基板1のオフ角
w1 アライメントマークの十字状の平面形状を構成する矩形の短手方向の幅
w2 アライメントマークの十字状の平面形状を構成する矩形の長手方向の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7