(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
油冷式スクリュー圧縮機と、該油冷式スクリュー圧縮機に歯面潤滑流体を供給するための歯面潤滑流体供給システムと、前記油冷式スクリュー圧縮機に、前記歯面潤滑流体とは別に軸受潤滑流体を供給するための軸受潤滑流体供給システムと、前記油冷式スクリュー圧縮機に、該油冷式スクリュー圧縮機によって圧縮される対象気体とは異なる分離ガスを供給する分離ガス供給システムと、を備え、
前記油冷式スクリュー圧縮機は、
スクリュー室、該スクリュー室の両側に位置するシール室、該シール室を介して前記スクリュー室に連通する軸受室、前記スクリュー室に前記歯面潤滑流体を供給するための歯面潤滑流体流路、及び、前記軸受室に前記軸受潤滑流体を供給するための軸受潤滑流体流路が内部に規定されたハウジングと、
前記スクリュー室に配置されて圧縮室を形成するスクリュー部、並びに、該スクリュー部の両端から同軸に延びて前記シール室及び前記軸受室に配置される軸部をそれぞれ有する、雄雌のスクリューロータと、
前記軸受室に配置され、対応する前記軸部を回転可能に支持する複数の軸受と、
前記シール室に配置され、対応する前記軸部の周囲をシールするシール装置と、を有し、
前記シール装置は、
前記シール室の前記スクリュー室側に配置される第1シールユニットと、
前記シール室の前記軸受室側に配置され、前記第1シールユニットとの間に分離ガス供給隙間を規定する第2シールユニットとを有し、
前記シール室は、前記圧縮室の吐出側に位置する吐出側シール室と、前記圧縮室の吸入側に位置する吸入側シール室とからなり、
前記ハウジングの内部には、
前記歯面潤滑流体流路及び前記軸受潤滑流体流路とは別に、前記分離ガス供給隙間に前記分離ガスを供給するための分離ガス供給路が規定されるとともに、前記吐出側シール室における前記第1シールユニットよりも前記スクリュー室側の領域と前記油冷式スクリュー圧縮機に吸入される前記対象気体の吸入圧力よりも高圧状態で且つ前記油冷式スクリュー圧縮機から吐出される前記対象気体の吐出圧力よりも低圧状態の前記圧縮室とを連通するように構成された均圧路が規定され、
前記均圧路に、前記スクリュー室から前記吐出側シール室へ向かう方向での流体の流れを制限する逆止弁が配置されている
ことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機システム。
前記制御システムは、前記油冷式スクリュー圧縮機から流出する前記軸受潤滑流体の戻り圧力が前記吸入圧力以上であって、前記分離ガスの供給圧力よりも低くなるように、前記軸受潤滑流体の供給圧力を制御するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の油冷式スクリュー圧縮機システム。
スクリュー室、該スクリュー室の両側に位置するシール室、該シール室を介して前記スクリュー室に連通する軸受室、前記スクリュー室に歯面潤滑流体を供給するための歯面潤滑流体流路、及び、前記歯面潤滑流体流路とは別に前記軸受室に軸受潤滑流体を供給するための軸受潤滑流体流路が内部に規定されたハウジングと、
前記スクリュー室に配置されるスクリュー部、該スクリュー部の両端から同軸に延び、前記シール室及び前記軸受室に配置される軸部をそれぞれ有する雄雌のスクリューロータと、
前記軸受室に配置され、対応する前記軸部を回転可能に支持する複数の軸受と、
前記シール室に配置され、対応する前記軸部の周囲をシールするシール装置とを備え、
前記シール装置は、
前記シール室の前記スクリュー室側に配置される第1シールユニットと、
前記シール室の前記軸受室側に配置され、前記第1シールユニットとの間に分離ガス供給隙間を規定する第2シールユニットとを有し、
前記シール室は、前記圧縮室の吐出側に位置する吐出側シール室と、前記圧縮室の吸入側に位置する吸入側シール室とからなり、
前記ハウジングの内部には、
前記歯面潤滑流体流路及び前記軸受潤滑流体流路とは別に、前記分離ガス供給隙間に前記分離ガスを供給するための分離ガス供給路が規定されるとともに、前記吐出側シール室における前記第1シールユニットよりも前記スクリュー室側の領域と前記油冷式スクリュー圧縮機に吸入される前記対象気体の吸入圧力よりも高圧状態で前記油冷式スクリュー圧縮機から吐出される前記対象気体の吐出圧力よりも低圧状態の前記圧縮室とを連通するように構成された均圧路が規定され、
前記均圧路に、前記スクリュー室から前記吐出側シール室へ向かう方向での流体の流れを制限する逆止弁が配置されていることを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【背景技術】
【0002】
油冷式スクリュー圧縮機は、潤滑、冷却及び軸封のために、圧縮機本体に油を供給するように構成されたもので、工業製品の製造工場、化学プラントあるいは石油精製プラント等に設置され、種々のガスの圧縮に使用されている。
例えば特許文献1が開示する油冷式スクリュー圧縮機はハウジングを有し、ハウジングの内部には、スクリュー室と、スクリュー室の両側に位置するシール室と、シール室を通じてスクリュー室に連なる軸受室とが区画されている。
【0003】
ハウジング内には雄雌一対のスクリューロータが互いに平行に配置された状態で収容されている。各スクリューロータは、スクリュー部と、スクリュー部の両端から同軸に延びる軸部とからなる。一対のスクリュー部は、互いに噛み合うようにスクリュー室内に配置され、対象気体を圧縮するための圧縮室を形成する。
【0004】
ハウジングには、外部からガスを吸い込む吸入ポートと、吸入ポートと圧縮室とを連通する吸入路が形成されている。また、ハウジングには、圧縮されたガスを外部に吐出するための吐出ポートと、吐出ポートと圧縮室とを連通する吐出路が形成されている。
吸入路は、圧縮室の一端側(吸入側)にて圧縮室と連通するように設けられ、吐出路は、圧縮室の他端側(吐出側)にて圧縮室と連通するように設けられる。
【0005】
スクリューロータの軸部は、シール室及び軸受室に配置され、軸受室に配置されたラジアル軸受、例えばすべり軸受によって、回転可能に支持される。雄のスクリューロータの軸部には、外部に設置された動力源、モータの出力軸が連結され、動力源から回転力が入力されることにより、雄のスクリューロータが回転する。
【0006】
雄のスクリューロータの回転に伴い、雌のスクリューロータも同期して回転し、雄雌のスクリューロータが回転する。雄雌のスクリューロータの回転に伴い、吸入路から圧縮室へのガスの吸い込み工程、圧縮室の容積減少によるガスの圧縮工程、及び、圧縮室から吐出路へのガスの吐出工程からなる一連の工程が繰り返し実行される。
【0007】
油冷式スクリュー圧縮機の軸受には軸受潤滑流体が供給される。そのために、ハウジングには、軸受潤滑流体の供給ポート、排出ポート、並びに、供給ポート及び排出ポートと軸受室とを連通する軸受潤滑流体用の流路が形成されている。
【0008】
また、スクリュー部には歯面潤滑流体が供給される。そのために、ハウジングには、歯面潤滑流体の供給ポート、及び、該供給ポートとスクリュー室とを連通する歯面潤滑流体用の流路が形成されている。
【0009】
そして、特許文献1の第1乃至第3実施形態では、給油式のスクリュー圧縮機に対して軸受潤滑流体を供給する系統と歯面潤滑流体を供給する系統とが分かれている。スクリュー圧縮機のシール室には、軸部を囲むように軸封部材としてのメカニカルシールが配置され、メカニカルシールには、軸受潤滑流体が供給されている。メカニカルシールは、軸受潤滑流体の助けをかりて、軸受室とスクリュー室との間をシールしている。
【0010】
かくして、特許文献1の第1乃至3実施形態では、軸受潤滑流体と歯面潤滑流体とが軸封部材によって隔離されている。特許文献1には、この構成によれば、対象気体が腐食性ガスであっても、軸受潤滑流体と対象気体の接触を殆どなくして、対象気体による軸受潤滑流体の劣化を防ぎ、軸受の寿命短縮を防止することができると記載されている。特に、軸受潤滑流体をシール流体として利用することで、軸受室への対象気体の流入を確実に防止できると記載されている。
【0011】
また、特許文献1の第4実施形態では、複数のカーボンリングシールからなる軸封部材によって、給油式スクリュー圧縮機のスクリュー室と軸受室との間が複数の狭い隙間を介して接続され、軸封部材の途中の送流室に、スクリュー圧縮機から吐出された対象気体の一部が供給される。特許文献1には、この構成によれば、軸封部材を介して軸受室に流入する対象気体は極少量であるので、軸受潤滑流体を劣化させたり、軸受を直接腐食させることはないと記載されている。
【0012】
一方、特許文献2は、第3実施形態として、スクリュー部に歯面潤滑流体が供給されない無給油式スクリュー圧縮機を開示している。この無給油式スクリュー圧縮機のシール室には、複数のカーボンリングシール及びラビリンスシールからなる軸封部材が配置され、軸封部材の途中に設けられた送流室に、吐出圧力のプロセスガスに代えて、不活性ガスが供給されている。そして、吐出側のシール室は、吸入口戻しラインを通じて吸入ポートと連通している。一方、吸入ポートは、供給プロセスガス連通ラインを介して、軸受潤滑流体を貯留する給油タンクの上部と連通している。
特許文献2には、この構成によれば、腐食成分を含む対象気体を圧縮する場合でも、軸受に対象気体が接触することを防止でき、潤滑油の劣化をさせにくくすることができると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1の第1乃至第3実施形態の給油式スクリュー圧縮機では、スクリュー室に供給される対象気体がメカニカルシールと接触しており、対象気体が軸受潤滑流体に混入する可能性がある。このため、対象気体が腐食性成分を含んでいる場合、腐食性成分が軸受潤滑流体に混入して軸受に到達し、軸受が腐食してしまうおそれがある。
【0015】
特許文献1の第4実施形態のスクリュー圧縮機では、複数のカーボンリングシールからなる吐出側の軸封部材に高圧の対象気体が供給され、供給された対象気体が吐出側の軸受室に流入し、軸受に到達する。このため、対象気体が腐食性成分を含んでいる場合、吐出側の軸受が腐食してしまうおそれがある。また、複数のカーボンリングシールからなる吸入側の軸封部材には、オリフィスで減圧された対象気体が供給されてはいるが、やはり供給された対象気体が吸入側の軸受室に流入し、吸入側の軸受に到達する。このため、対象気体が腐食性成分を含んでいる場合、吸入側の軸受が腐食してしまうおそれがある。
【0016】
特許文献2の第3実施形態の無給油式スクリュー圧縮機では、無給油式スクリュー圧縮機から吐出された高圧の対象気体に代えて、不活性ガスが軸封部材の途中の送流室に供給されており、送流室に供給される不活性ガスの圧力が高い。一方、吸入ポートは、供給プロセスガス連通ラインを通じて給油タンクの上部と連通しており、給油タンクから軸受に供給される油の圧力は、吸入圧力に給油ポンプによる昇圧分を加えたものとなっている。
【0017】
このため、特許文献2の第3実施形態の無給油式スクリュー圧縮機では、軸封部材に供給される不活性ガスと軸受に供給される軸受潤滑流体との間で圧力差が大きい。この結果、不活性ガスの軸封部材からの漏れ量が多く、不活性ガスの使用量が多量になり、スクリュー圧縮機の運転コストが上昇するという問題がある。
【0018】
また、この構成では、高圧の不活性ガスが、吸入口戻しラインを通じて吸入ポートに流入する。高圧の不活性ガスが吸入ポートからスクリュー圧縮機に吸入されることで、スクリュー圧縮機の消費動力が多くなり、運転コストが上昇するという問題もある。
【0019】
更に、特許文献1の第4実施形態のスクリュー圧縮機では、軸受部材としてのカーボンリングがロータ軸との間に微小な隙間を形成するので、スクリュー圧縮機の停止後に、対象気体が軸受部材に供給されなくなると、隙間を通じて軸受室からスクリュー室に軸受潤滑流体が流入してしまう。
軸受潤滑流体のスクリュー室への流入は、軸受潤滑流体と歯面潤滑流体を分けている場合、軸受潤滑流体の供給系統での軸受潤滑流体の保有量の減少を招く。このため、軸受潤滑流体の補充が必要になり、スクリュー圧縮機の運転コストが上昇してしまう。また、軸受潤滑流体のスクリュー室への流入は、歯面潤滑流体の供給系統での流体の保有量の増加を招く。このため、歯面潤滑流体の供給系統での流体の保有量の調整も必要になり、やはりスクリュー圧縮機の運転コストが上昇してしまう。
【0020】
一方、特許文献2の無給油式スクリュー圧縮機では、油冷式スクリュー圧縮機と異なり、雄雌のスクリューロータの回転を、スクリュー部の噛み合いによってではなく、雄雌のスクリューロータの軸部に連結された一対の同期歯車を介して同期させている。かかる無給油式スクリュー圧縮機では、スクリュー部の噛み合い部に隙間を持たせて非接触となっているため、油冷式スクリュー圧縮機に比して圧縮効率が悪く、さらに動力源として高回転の高速モータが要求される。
【0021】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、対象気体が腐食性成分を含んでいても、軸受の劣化を確実に防止しながら低コストにて油冷式スクリュー圧縮機を運転可能な油冷式スクリュー圧縮機システム、及び、該システムに用いられる油冷式スクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した目的を達成するために、本発明の少なくとも一実施形態によれば、油冷式スクリュー圧縮機と、該油冷式スクリュー圧縮機に歯面潤滑流体を供給するための歯面潤滑流体供給システムと、前記油冷式スクリュー圧縮機に、前記歯面潤滑流体とは別に軸受潤滑流体を供給するための軸受潤滑流体供給システムと、前記油冷式スクリュー圧縮機に、該油冷式スクリュー圧縮機によって圧縮される対象気体とは異なる分離ガスを供給する分離ガス供給システムと、を備え、前記油冷式スクリュー圧縮機は、スクリュー室、該スクリュー室の両側に位置するシール室、該シール室を介して前記スクリュー室に連通する軸受室、前記スクリュー室に前記歯面潤滑流体を供給するための歯面潤滑流体流路、及び、前記軸受室に前記軸受潤滑流体を供給するための軸受潤滑流体流路が内部に規定されたハウジングと、前記スクリュー室に配置されて圧縮室を形成するスクリュー部、並びに、該スクリュー部の両端から同軸に延びて前記シール室及び前記軸受室に配置される軸部をそれぞれ有する、雄雌のスクリューロータと、前記軸受室に配置され、対応する前記軸部を回転可能に支持する複数の軸受と、前記シール室に配置され、対応する前記軸部の周囲をシールするシール装置と、を有し、前記シール装置は、前記シール室の前記スクリュー室側に配置される第1シールユニットと、前記シール室の前記軸受室側に配置され、前記第1シールユニットとの間に分離ガス供給隙間を規定する第2シールユニットとを有し、前記シール室は、前記圧縮室の吐出側に位置する吐出側シール室と、前記圧縮室の吸入側に位置する吸入側シール室とからなり、前記ハウジングの内部には、前記歯面潤滑流体流路及び前記軸受潤滑流体流路とは別に、前記分離ガス供給隙間に前記分離ガスを供給するための分離ガス供給路が規定されるとともに、前記吐出側シール室における前記第1シールユニットよりも前記スクリュー室側の領域と前記油冷式スクリュー圧縮機に吸入される前記対象気体の吸入圧力よりも高圧状態で且つ前記油冷式スクリュー圧縮機から吐出される前記対象気体の吐出圧力よりも低圧状態の前記圧縮室とを連通するように構成された均圧路が規定され、前記均圧路に、前記スクリュー室から前記吐出側シール室へ向かう方向での流体の流れを制限する逆止弁が配置されていることを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機システムが提供される。
【0023】
本発明の少なくとも一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムによれば、シール装置の第1シールユニットと第2シールユニットとの間に分離ガス供給隙間が規定され、油冷式スクリュー圧縮機の運転時、分離ガス供給隙間に分離ガスが供給される。供給された分離ガスが、第1シールユニットを通じてスクリュー室に向けて漏れ出すことにより、油冷式スクリュー圧縮機の運転時、第1シールユニットによって対象気体が軸受室に流入することが防止され、対象気体が軸受潤滑流体と接触することも防止される。このため、対象気体が腐食性成分を含んでいても、軸受の劣化が確実に防止される。
【0024】
一方、この構成では、圧縮室から高圧の対象気体が吐出側シール室に流入したとしても、流入した対象気体が均圧路を通じて圧縮室に戻される。このため、吐出側シール室において、第1シールユニットよりも油冷式スクリュー室側の領域での対象気体の圧力が低減され、対象気体が第1シールユニットを通過して漏れることが確実に防止される。
【0025】
また、この構成では、均圧路を通じて対象気体を圧縮室に戻すことにより、吐出側シール室に供給する分離ガスの供給圧力を、油冷式スクリュー圧縮機から吐出される対象気体の吐出圧力よりも高くせずとも、第1シールユニットによって、スクリュー室から軸受室に向かう方向での対象気体及び歯面潤滑流体の通過が確実に防止される。このため、分離ガスの供給圧力を吐出圧力よりも低く設定することができ、分離ガスの消費量が抑制される。
【0026】
更に、この構成では、吐出側シール室に流入した対象気体は、均圧路を通じて、吸入圧力よりも高圧状態の圧縮室に戻されるので、油冷式スクリュー圧縮機の効率の低下が抑制される。これにより、スクリュー圧縮機が低コストにて運転される。
【0027】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記ハウジングは、前記スクリュー室を規定するスクリューケーシングと、前記スクリューケーシングに分離可能に連結され、前記シール室及び前記均圧路を規定するシールケーシングと、前記シールケーシングを介して前記スクリューケーシングに分離可能に連結され、前記軸受室を規定する軸受ケーシングとからなる。
【0028】
この構成では、スクリューケーシングに対し、シールケーシングが分離可能に連結され、更に、シールケーシングを介して分離可能に軸受ケーシングが連結されている。このように、分離可能な複数のケーシングによってハウジングを構成した結果、腐食性成分を含まない対象気体を圧縮するのに用いられる油冷式スクリュー圧縮機との間で、スクリューケーシング及び軸受ケーシングの共通化を図ることができる。このため、油冷式スクリュー圧縮機の部品の汎用性が高く、油冷式スクリュー圧縮機システムの価格を低減することができる。
【0029】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記第1シールユニットは、第1ラビリンスシールを有し、前記第2シールユニットは、前記分離ガス供給隙間から前記軸受室に向かって順に、第2ラビリンスシール、第1リップシール、及び、第2リップシールを有し、前記第1リップシールは、前記スクリュー室から前記軸受室に向かう方向での流体の流れを阻止するように配置され、前記第2リップシールは、前記軸受室から前記スクリュー室に向かう方向での流体の流れを阻止するように配置されている。
【0030】
この構成では、第1リップシールによって、スクリュー室から軸受室に向かう方向での流体の流れが制限されるので、油冷式スクリュー圧縮機の停止中に分離ガスが供給されていなくても、対象気体が軸受室に流入することが防止され、もって軸受の腐食が防止される。
更に、第2リップシールによって、軸受室からスクリュー室に向かう方向での流体の流れが制限されるので、油冷式スクリュー圧縮機の停止中に分離ガスが供給されていなくても、軸受潤滑流体がスクリュー室に流入することが防止され、もって、軸受潤滑流体の減少が防止される。このため、油冷式スクリュー圧縮機を低コストにて運転することができる。
【0031】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記油冷式スクリュー圧縮機に供給される前記分離ガスの供給圧力を制御する制御システムを更に備え、前記制御システムは、前記油冷式スクリュー圧縮機に供給される前記分離ガスの供給圧力が前記吸入圧力よりも高く、且つ、前記吐出圧力よりも低くなるように、前記分離ガスの供給圧力を制御するように構成されている。
【0032】
この構成では、分離ガスの供給圧力が吸入圧力よりも高く、吐出圧力よりも低くなるように制御されるので、分離ガスの消費量が少なくなり、油冷式スクリュー圧縮機を低コストにて運転することができる。
【0033】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記制御システムは、前記油冷式スクリュー圧縮機から流出する前記軸受潤滑流体の戻り圧力が前記吸入圧力以上であって、前記分離ガスの供給圧力よりも低くなるように、前記軸受潤滑流体の供給圧力を制御するように構成されている。
【0034】
この構成では、前記軸受潤滑流体の戻り圧力が、吸入圧力以上であって前記分離ガスの供給圧力よりも低くなるように制御されるので、分離ガス供給隙間と軸受室との間の圧力差が小さく維持され、分離ガスの消費量が抑制されながら、軸受室からスクリュー室に向かう流体の流れが規制される。このため、油冷式スクリュー圧縮機を低コストにて運転可能である。
【0035】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記軸受潤滑流体供給システムは、前記吸入圧力よりも高い貯留圧力にて前記軸受潤滑流体を貯留する貯留タンクを有し、前記貯留タンク内の圧力を前記貯留圧力まで高めるための加圧ガスとして、前記分離ガスと同種のガスが用いられる。
【0036】
この構成では、分離ガスと同種のガスを加圧ガスとして用いて、貯留タンク内の圧力を高めることによって、簡単な構成にて、軸受潤滑流体の供給圧力を吸入圧力以上にすることができる。
【0037】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記制御システムは、前記吸入圧力を検出する吸入圧力センサと、前記分離ガスの供給圧力を調整可能な制御弁と、前記吸入圧力センサによる検出結果に応じて、前記制御弁を操作する制御装置とを有する。
この構成では、簡単な構成にて、分離ガスの供給圧力を的確に制御することができる。
【0038】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムでは、前記油冷式スクリュー圧縮機は容量制御装置を更に備え、前記歯面潤滑流体供給システムは、前記容量制御装置に対し、前記歯面潤滑流体の一部を作動流体として供給するように構成されている。
【0039】
この構成では、容量制御装置の作動流体として歯面潤滑流体が使用されるので、容量制御装置において、対象気体が軸受潤滑流体に混入することが防止される。このため、軸受の腐食が確実に防止される。
【0040】
また、上述した目的を達成するために、本発明の少なくとも一実施形態によれば、スクリュー室、該スクリュー室の両側に位置するシール室、該シール室を介して前記スクリュー室に連通する軸受室、前記スクリュー室に歯面潤滑流体を供給するための歯面潤滑流体流路、及び、前記歯面潤滑流体流路とは別に前記軸受室に軸受潤滑流体を供給するための軸受潤滑流体流路が内部に規定されたハウジングと、前記スクリュー室に配置されるスクリュー部、該スクリュー部の両端から同軸に延び、前記シール室及び前記軸受室に配置される軸部をそれぞれ有する雄雌のスクリューロータと、前記軸受室に配置され、対応する前記軸部を回転可能に支持する複数の軸受と、前記シール室に配置され、対応する前記軸部の周囲をシールするシール装置とを備え、前記シール装置は、前記シール室の前記スクリュー室側に配置される第1シールユニットと、前記シール室の前記軸受室側に配置され、前記第1シールユニットとの間に分離ガス供給隙間を規定する第2シールユニットとを有し、前記シール室は、前記圧縮室の吐出側に位置する吐出側シール室と、前記圧縮室の吸入側に位置する吸入側シール室とからなり、前記ハウジングの内部には、前記歯面潤滑流体流路及び前記軸受潤滑流体流路とは別に、前記分離ガス供給隙間に前記分離ガスを供給するための分離ガス供給路が規定されるとともに、前記吐出側シール室における前記第1シールユニットよりも前記スクリュー室側の領域と前記油冷式スクリュー圧縮機に吸入される前記対象気体の吸入圧力よりも高圧状態で前記油冷式スクリュー圧縮機から吐出される前記対象気体の吐出圧力よりも低圧状態の前記圧縮室とを連通するように構成された均圧路が規定され、前記均圧路に、前記スクリュー室から前記吐出側シール室へ向かう方向での流体の流れを制限する逆止弁が配置されていることを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機が提供される。
【0041】
本発明の少なくとも一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機によれば、シール装置の第1シールユニットと第2シールユニットとの間に分離ガス供給隙間が規定され、油冷式スクリュー圧縮機の運転時、分離ガス供給隙間に分離ガスが供給される。供給された分離ガスが、第1シールユニットを通じてスクリュー室に向けて漏れ出すことにより、油冷式スクリュー圧縮機の運転時、第1シールユニットによって対象気体が軸受室に流入することが防止され、対象気体が軸受潤滑流体と接触することも防止される。
【0042】
そして、この構成では、圧縮室から高圧の対象気体が吐出側シール室に流入したとしても、流入した対象気体が均圧路を通じて圧縮室に戻される。このため、吐出側シール室において、第1シールユニットよりもスクリュー室側の領域での対象気体の圧力が低減され、対象気体が第1シールユニットを通過して漏れることが確実に防止される。
【0043】
また、この構成では、均圧路を通じて対象気体を圧縮室に戻すことにより、吐出側シール室に供給する分離ガスの供給圧力を、油冷式スクリュー圧縮機から吐出される対象気体の吐出圧力よりも高くせずとも、第1シールユニットによって、スクリュー室から軸受室に向かう方向での対象気体及び歯面潤滑流体の通過が確実に防止される。このため、分離ガスの供給圧力を吐出圧力よりも低く設定することができ、分離ガスの消費量が抑制される。
【0044】
更に、この構成では、吐出側シール室に流入した対象気体は、均圧路を通じて、吸入圧力よりも高圧状態の圧縮室に戻されるので、油冷式スクリュー圧縮機の効率の低下が抑制される。これにより、油冷式スクリュー圧縮機が低コストにて運転される。
【0045】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機では、前記ハウジングは、前記スクリュー室を規定するスクリューケーシングと、前記スクリューケーシングに分離可能に連結され、前記シール室及び前記均圧路を規定するシールケーシングと、前記シールケーシングを介して前記スクリューケーシングに分離可能に連結され、前記軸受室を規定する軸受ケーシングとからなる。
【0046】
この構成では、スクリューケーシングに対し、シールケーシングが分離可能に連結され、更に、シールケーシングを介して分離可能に軸受ケーシングが連結されており、従来の油冷式スクリュー圧縮機と同じスクリューケーシング及び軸受ケーシングを使用することができる。このため、油冷式スクリュー圧縮機の部品の汎用性が高く、油冷式スクリュー圧縮機の価格を低減することができる。
【0047】
一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機では、前記第1シールユニットは、第1ラビリンスシールを有し、前記第2シールユニットは、前記分離ガス供給隙間から前記軸受室に向かって順に、第2ラビリンスシール、第1リップシール、及び、第2リップシールを有し、前記第1リップシールは、前記スクリュー室から前記軸受室に向かう方向での流体の流れを阻止するように配置され、前記第2リップシールは、前記軸受室から前記スクリュー室に向かう方向での流体の流れを阻止するように配置されている。
【0048】
この構成では、第1リップシールによって、スクリュー室から軸受室に向かう方向での流体の流れが制限されるので、油冷式スクリュー圧縮機の停止中に分離ガスが供給されていなくても、対象気体が軸受室に流入することが防止され、もって軸受の腐食が防止される。
【0049】
更に、第2リップシールによって、軸受室からスクリュー室に向かう方向での流体の流れが制限されるので、油冷式スクリュー圧縮機の停止中に分離ガスが供給されていなくても、軸受潤滑流体がスクリュー室に流入することが防止され、もって、軸受潤滑流体の減少が防止される。このため、油冷式スクリュー圧縮機を低コストにて運転することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、対象気体が腐食性成分を含んでいても、軸受の劣化を確実に防止しながら低コストにて油冷式スクリュー圧縮機を運転可能な油冷式スクリュー圧縮機システム、及び、該システムに用いられる油冷式スクリュー圧縮機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0053】
図1は、一実施形態の油冷式スクリュー圧縮機システムの概略的な構成を示す図である。
油冷式スクリュー圧縮機システムは、油冷式スクリュー圧縮機(以下、スクリュー圧縮機ともいう)10と、歯面潤滑流体供給システム12と、軸受潤滑流体供給システム14と、分離ガス供給システム16と、制御システム18とを備えている。
【0054】
図1は、水平面に沿うスクリュー圧縮機10の概略的な断面を示しており、
図2は、鉛直面に沿うスクリュー圧縮機10の概略的な断面を示している。
図1及び
図2を参照すると、スクリュー圧縮機10は、ハウジング20を有し、ハウジング20の内部には、スクリュー室20a、スクリュー室20aの一端に連なる吸入側シール室20b、吸入側シール室20bを介してスクリュー室20aに連通する吸入側軸受室20c、スクリュー室20aの他端に連なる吐出側シール室20d、及び、吐出側シール室20dを介してスクリュー室20aに連通する吐出側軸受室20eが区画されている。
【0055】
また、ハウジング20は、外部に向かってそれぞれ開口した吸入ポート20f及び吐出ポート20gを有し、スクリュー圧縮機10の動作時、吸入ポート20fを通じて圧縮対象の低圧(吸入圧力)の気体(以下、対象気体という)を吸い込み、吐出ポート20gを通じて圧縮された高圧(吐出圧力)の対象気体を吐出する。
【0056】
更に、ハウジング20の内部には、吸入ポート20fとスクリュー室20aの一端(吸入端)とを連通する吸入路20hが区画され、且つ、スクリュー室20aの他端(吐出端)側とを連通する吐出路20iが区画されている。
【0057】
なお、本実施形態では、ハウジング20は、スクリュー室20aを規定するスクリューケーシング22a、吸入側シール室20bを規定する吸入側シールケーシング22b、吸入側軸受室20cを規定する吸入側軸受ケーシング22c、吐出側シール室20dを規定する吐出側シールケーシング22d、及び、吐出側軸受室20eを規定する吐出側軸受ケーシング22eからなり、吐出側軸受ケーシング22e、吐出側シールケーシング22d、スクリューケーシング22a、吸入側シールケーシング22b、及び、吸入側軸受ケーシング22cは、この順序にて、ボルトによって相互に分離可能に直列に連結されている。
【0058】
ハウジング20内には、一対の雄スクリューロータ24及び雌スクリューロータ26が回転可能に収容されている。雄スクリューロータ24及び雌スクリューロータ26は、各々の回転軸が相互に平行な状態で配置されている。
【0059】
より詳しくは、雄スクリューロータ24及び雌スクリューロータ26は、それぞれスクリュー部24a,26a、スクリュー部24a,26aの一端(吸入側端)から同軸且つ一体に延びる吸入側軸部24b,26b、及び、スクリュー部24a,26aの他端(吐出側端)から同軸且つ一体に延びる吐出側軸部24c,26cを有する。
【0060】
雄スクリューロータ24のスクリュー部24aは外周に複数の螺旋状の突条を有し、雌スクリューロータ26のスクリュー部26aは外周に複数の螺旋状の溝を有する。スクリュー部24a,26aは、互いに噛み合った状態で、互いに平行にスクリュー室20a内に配置される。
【0061】
雄スクリューロータ24の吐出側軸部24cは、ハウジング20の端壁を気密を存して貫通し、外部に突出している。吐出側軸部24cには、動力源として、例えば油圧モータや電動モータが連結され、動力源から吐出側軸部24cに回転力が入力される。吐出側軸部24cに回転力が入力されると、雄スクリューロータ24が回転し、スクリュー部24a,26aの噛み合いによって、雌スクリューロータ26が同期して回転する。
【0062】
スクリュー部24a,26aの複数の突条及び溝は、スクリュー室20a内に複数の圧縮室を規定している。吸入側シールケーシング22b及び吸入側軸受ケーシング22cの内部には、吸入ポート20fと圧縮室を繋ぐための吸入路20hが形成されている。吸入路20hは、
図3(a)に示したように、スクリューケーシング22aと対向する吸入側シールケーシング22bの端面に開口した吸入口を有する。また、
図3(b)に示したように、吸入側シールケーシング22bと対向する吸入側軸受ケーシング22cの端面には、吸入路20hに対応して、吸入口と同形の開口が形成されている。
【0063】
一方、吐出側シールケーシング22d及び吐出側軸受ケーシング22cの内部には、吐出ポート20gと圧縮室を繋ぐための吐出路20iが形成されている。吐出路20iは、
図3(c)に示したように、スクリューケーシング22aと対向する吐出側シールケーシング22bの端面に開口した吐出口を有する。
【0064】
また、
図3(d)に示したように、吐出側シールケーシング22dと対向する吐出側軸受ケーシング22eの端面には、吐出路20iに対応して、吐出口と部分的に同形の開口が形成されている。具体的には、吐出側シールケーシング22dに開口する吐出口は、軸方向にて圧縮室と連通する軸方向連通部を上部に有するが、吐出側軸受ケーシング22eの端面の開口は、軸方向連通部を有していない。
【0065】
圧縮室は、スクリュー部24a,26aの同期回転にともない、間欠的に吸入路20hの吸入口と連通する一方、吸入口とは異なるタイミングにて、吐出路20iの吐出口と連通する。
そして、圧縮室の容積は、吸入口との連通が遮断された直後から、スクリュー部24a,26aの同期回転にともない徐々に減少し、これにより対象気体が圧縮室内で圧縮される。圧縮室が吐出口に連通すると、圧縮された対象気体が吐出口を通じて圧縮室から吐出路20iに吐出される。
【0066】
再び
図1及び
図2を参照すると、スクリュー部24a,26aには、歯面潤滑流体として、例えば油が供給される。そのために、ハウジング20の内部には、スクリュー室20aと外部とを連通する歯面潤滑流体流路30が形成されている。
【0067】
一方、雄スクリューロータ24及び雌スクリューロータ26を回転可能に支持するために、ラジアル軸受として、すべり軸受32が吸入側軸受室20c及び吐出側軸受室20eにそれぞれ配置されている。
また、スラスト軸受として、例えばアンギュラ玉軸受34が、吐出側軸受室20eに配置されている。アンギュラ玉軸受34は、雄スクリューロータ24の吐出側軸部24c及び雌スクリューロータ26の吐出側軸部26cに嵌合され、圧縮室での対象気体の圧縮によって生ずるスラスト荷重(圧縮反力)を受け止める。
【0068】
すべり軸受32及びアンギュラ玉軸受34には、軸受潤滑流体が供給される。そのために、ハウジング20には、吸入側軸受室20c及び吐出側軸受室20eと外部とを連通する軸受潤滑流体流路36が形成されている。
なお軸受潤滑流体流路36には、吸入側吐出室20c及び吐出側軸受室20eに軸受潤滑流体を供給するための往路部分と、吸入側吐出室20c及び吐出側軸受室20eから軸受潤滑流体を流出させるための復路部分とがある。
【0069】
一方、スラスト軸受に作用するスラスト荷重を低減するために、雄スクリューロータ24の吸入側軸部24bには、ピストン(バランスピストン)38が取付けられている。吸入側軸受室20cの一部は、シリンダ(バランスシリンダ)として区画され、バランスシリンダは、雄スクリューロータ24の軸線方向に摺動可能にバランスピストン38を収容している。バランスシリンダ内の圧力を調節することによって、スラスト荷重を低減可能である。
【0070】
そのために、ハウジング20には、バランスシリンダと外部を連通する圧力流体供給路40が形成されている。バランスシリンダ内の圧力は、圧力流体供給路40を通じて供給される圧力流体の圧力によって調節可能である。
本実施形態では、吸入側軸受ケーシング22cの開口端を閉塞するカバー部材に、圧力流体供給路40が設けられている。
【0071】
また、本実施形態では、スクリュー圧縮機10は、容量制御装置42を備えている。容量制御装置42は、容量制御ピストン44を有し、容量制御ピストン44は、ハウジング20内に区画されたシリンダ(容量制御シリンダ)内に収容されている。容量制御シリンダは、スクリュー室20aに沿って延び、吐出路20iに連通している。容量制御シリンダの吐出路20i側の端部は、圧縮室と径方向に連通する径方向連通部を構成している。従って、圧縮室で圧縮された対象気体は、吐出口の径方向連通部及び容量制御シリンダの径方向連通部を通じて、吐出路20iに流入可能である。
【0072】
容量制御ピストン44は、雄スクリューロータ24及び雌スクリューロータ26の軸線方向に摺動可能に配置されている。容量制御ピストン44は、駆動装置としての、例えば油圧シリンダ46に連結され、油圧シリンダ46によって、容量制御シリンダ内を往復動させられる。この容量制御装置42によれば、油圧シリンダ46を制御して容量制御ピストン44の位置を調整することにより、圧縮室の軸方向長さ、換言すれば、圧縮室での圧縮開始時期が調整され、スクリュー圧縮機10の容量が調整される。
【0073】
〔シール装置〕
吸入側シール室20b及び吐出側シール室20dには、雄スクリューロータ24及び雌スクリューロータ26の吸入側軸部24b,26b及び吐出側軸部24c,26cの周囲をシールするシール装置50がそれぞれ設けられている。
図4は、吐出側シール室20dに配置された吐出側軸部24c,26cのためのシール装置50の構成を概略的に示している。
【0074】
シール装置50は、第1シールユニットと、第2シールユニットとを備える。
第1シールユニットは、スクリュー室20a側に配置され、第2シールユニットは、吐出軸受室20e側に配置されている。
具体的には、第1シールユニットは、非接触型シール部材として、第1ラビリンスシール52を有する。第2シールユニットは、非接触型シール部材として第2ラビリンスシール54を有し、且つ、接触型シール部材としてリップシール56を有する。第1ラビリンスシール52、第2ラビリンスシール54及びリップシール56は、この順序で、スクリュー室20a側から順に配置されている。
【0075】
本実施形態では、第1ラビリンスシール52及び第2ラビリンスシール54は、吐出側軸部24c,26cに固定される回転部材52a,54aと、吐出側シール室20dの内周面に固定される固定部材52b,54bとからなる。
回転部材52a,54aは、吐出側軸部24c,26cに嵌合するスリーブ部と、スリーブ部からそれぞれ径方向外側に向かって突出し、互いにスリーブ部の軸線方向に離間した複数の環状の突起とを有する。
【0076】
また、固定部材52b,54bは、吐出側シール室20dの内周面に嵌合するスリーブ部と、スリーブ部からそれぞれ径方向内側に向かって突出し、互いにスリーブ部の軸線方向に離間した複数の環状の突起とを有する。回転部材52a,54a及び固定部材52b,54bは、微小な隙間を存して突起が噛み合うように配置される。
【0077】
第1シールユニットと第2シールユニットとの間には、分離ガス供給隙間58が設けられている。具体的には、第1ラビリンスシール52と第2ラビリンスシール54は、吐出側軸部24c,26cの軸線方向に相互に離間して配置され、これらの間に分離ガス供給隙間58が設けられている。そして、ハウジング20の内部には、分離ガス供給隙間58に分離ガスを供給するための分離ガス供給路59が形成されている。
【0078】
リップシール56は、吐出側シール室20dの内周面に嵌合するスリーブ部56a、並びに、スリーブ部56aから径方向内側に向かって突出する第1ラップ部56b及び第2ラップ部56cからなる。
【0079】
より詳しくは、第1ラップ部56bは弾性材料からなり、ラッパ形状を有する。第1ラップ部56bの外周部はスリーブ部56aによって保持され、第1ラップ部56bの内周部が吐出側軸部24c,26cの外周面に弾性的に摺接する。
第1ラップ部56bは、吐出側軸部24c,26cに近付くほどスクリュー室20aに近付くように湾曲した断面形状を有する。従って、第1ラップ部56bは、スクリュー室20aから吐出側軸受室20eに向かう方向での流体の流れを規制するように配置されている。
【0080】
一方、第2ラップ部56cも弾性材料からなり、ラッパ形状を有する。第2ラップ部56cの外周部はスリーブ部56aによって保持され、第2ラップ部56
cの内周部が吐出側軸部24c,26cの外周面に弾性的に摺接する。
第1ラップ部56bよりも吐出軸受室20e側に配置された第2ラップ部56cは、吐出側軸部24c,26cに近付くほど吐出側軸受室20eに近付くように湾曲した断面形状を有する。従って、第2ラップ部56cは、吐出側軸受室20eからスクリュー室20aに向かう流体の流れを規制するように配置されている。
【0081】
なお、本実施形態では、第1ラビリンスシール52の固定部材52bと第2ラビリンスシール54の固定部材54bが別々の部材によって構成されていたが、一つの部材によって構成されていてもよい。
同様に、回転部材52aと回転部材54aが一つの部材によって構成されていてもよい。
更に、回転部材52a,54aは、吐出側軸部24c,26cの外周面に一体に形成されていてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、1つのリップシール56が、相互に反対向きに配置された第1ラップ部56b及び第2ラップ部56cを有し、それぞれがラップシールを構成していたが、それぞれ1つのラップ部を有する2つのリップシールを相互に反対向きに配置してもよい。
【0083】
ハウジング20には、吐出側シール室20dとスクリュー室20aを連通する均圧路60が形成されている。均圧路60の一端は、第1ラビリンスシール52よりもスクリュー室20a側の吐出側シール室20dの領域に開口し、他端は、スクリュー室20aの端壁に開口している。
図3(c)も併せて参照すると、均圧路60の他端の開口位置は、吸入路20hとの連通が遮断された直後の圧縮室(
図4中ハッチングを付した領域)と均圧路60が連通するように設定されている。
なお、本実施形態では、
図1も併せて参照すると、均圧路60は、雌スクリューロータ26の吐出側軸部26cが挿通された吐出側シール室20dとスクリュー室20aとの間にのみ設けられ、2つの吐出側シール室20dの間は連通路61を介して連通している。
【0084】
そして、均圧路60には逆止弁62が配置され、逆止弁62は、吐出側シール室20dからスクリュー室20aに向かう方向での流体の流れを許容し、逆方向での流体の流れを規制するように構成されている。
本実施形態では、逆止弁62は、常時開のタイプであり、均圧路60と連通する圧縮室の圧力が吐出側シール室20dの圧力よりも高くなったときだけ閉じる。
【0085】
図5は、吸入側シール室20bに配置されたシール装置50を概略的に示している。
吸入側シール室20bに配置されたシール装置50の構成は、吐出側シール室20dに配置されたシール装置50の構成と略同一であるので、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
ただし、吸入側シール室20bとスクリュー室20aとの間には、均圧路及び逆止弁は設けられていない。
【0086】
〔歯面潤滑流体供給システム〕
再び
図1を参照すると、歯面潤滑流体供給システム12は、気液分離装置64を有する。気液分離装置64の入口は、例えば導管を通じて、スクリュー圧縮機10の吐出ポート20gに接続されている。気液分離装置64は分離タンク66を有し、分離タンク66の上部には、対象気体と歯面潤滑流体とを分離するフィルタ68が配置されている。分離タンク66の下部には、分離された歯面潤滑流体を一時的に貯留する貯留部70が設けられ、気液分離装置64の入口は、貯留部70とフィルタ68の間にて分離タンク66の内部に連通している。
【0087】
フィルタ68よりも上方の分離タンク66の頂部に、対象気体のガス出口が設けられ、ガス出口から分離された高圧の対象気体が外部へと供給される。
一方、分離タンク66の底部に、歯面潤滑流体のための液出口が設けられ、液出口は、例えば導管を通じて、スクリュー圧縮機10の歯面潤滑流体流路30に接続されている。スクリュー圧縮機10の運転中、分離タンク66内の圧力は、圧縮された対象気体の圧力、即ち吐出圧力に等しくなり、歯面潤滑流体は、吐出圧力にてスクリュー圧縮機10に供給される。
【0088】
なお、本実施形態では、容量制御装置42の駆動装置の作動流体として、歯面潤滑流体が用いられる。そのために、分離タンク66の下部は、導管を通じて切替弁72の入口に接続され、切替弁72の出口は、導管を通じて吸入ポート20fに接続されている。また、切替弁72は、2つの切替ポートを有し、2つの切替ポートは、油圧シリンダ46の2つのポートにそれぞれ接続されている。切替弁72の弁体の位置は、外部から制御可能であり、弁体の位置を制御することによって、スクリュー圧縮機10の容量を制御可能である。
【0089】
〔軸受潤滑流体供給システム〕
軸受潤滑流体供給システム14は、大気圧よりも高圧にて軸受潤滑流体を貯留可能な貯留タンク74を有する。貯留タンク74の出口は、例えば導管を通じて、軸受潤滑流体流路36の往路部分に接続されている。なお、導管の途中には、貯留タンク74からスクリュー圧縮機10に向かう方向での軸受潤滑流体の流れを生成するためのポンプ76、及び、軸受潤滑流体を冷却するための熱交換器78が介装されている。
【0090】
本実施形態では、導管は、熱交換器78よりも下流にて分岐され、スクリュー圧縮機10の圧力流体供給路40にも接続されている。つまり、分岐された一方の導管(第1導管)が軸受潤滑流体流路36の往路部分に接続され、他方の導管(第2導管)が圧力流体供給路40にも接続されている。そして、軸受潤滑流体の圧力を調節可能な制御弁80が、第1導管の途中に介装されている。
【0091】
一方、貯留タンク74の入口は、例えば導管を通じて、軸受潤滑流体流路36の復路部分と連通している。従って、スクリュー圧縮機10から流出した軸受潤滑流体は、貯留タンク74に流入し、それから再びスクリュー圧縮機10に供給される。
【0092】
なお、本実施形態では、軸受潤滑流体流路36の復路部分の出口は、吸入側シールケーシング22b及び吐出側シールケーシング22dに1つずつ設けられている。そして、吸入側軸受室20c及び吐出側軸受室20eと軸受潤滑流体流路36の復路部分の出口との間を連通するために、軸受潤滑流体流路36の復路部分は、吸入側シールケーシング22b、吸入側軸受ケーシング22c、吐出側シールケーシング22d及び吐出側軸受ケーシング22eの内部に形成されている。
【0093】
一方、本実施形態では、軸受潤滑流体流路36の往路部分の入口は、吐出側軸受ケーシング22eに1つ設けられている。そして、吸入側軸受室20c及び吐出側軸受室20eと軸受潤滑流体流路36の往路部分の入口との間を連通するために、軸受潤滑流体流路36の往路部分は、スクリューケーシング22a、吸入側シールケーシング22b、吸入側軸受ケーシング22c、吐出側シールケーシング22d及び吐出側軸受ケーシング22eの内部に形成されている。
【0094】
〔分離ガス供給システム〕
分離ガス供給システム16は、スクリュー圧縮機10の運転中、スクリュー圧縮機10に分離ガスを供給するように構成されている。分離ガスとしては、例えば、窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0095】
分離ガス供給システム16は、分離ガス供給源82として、例えば、圧縮機や高圧ボンベを有し、スクリュー圧縮機10に高圧の分離ガスを供給可能である。分離ガス供給源82は、例えば導管を通じて、スクリュー圧縮機10の分離ガス供給路59に接続されている。導管の途中には、例えば、制御弁84が介装され、制御弁84の開度を調整することによって、分離ガス供給路59への分離ガスの供給圧力を調整することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、1つのシール装置50に対して1つの分離ガス供給路59が設けられ、各分離ガス供給路59に、制御弁84を介して分離ガスが供給される。
【0097】
また、本実施形態では、分離ガス供給源82は、例えば導管を通じて、貯留タンク74に接続されている。導管の途中には、制御弁86が介装され、制御弁86の開度を調整することによって、貯留タンク74への分離ガスの供給圧力を調整することができる。つまり、分離ガスが、貯留タンク74の圧力を上昇させるための加圧ガスとしても用いられている。
【0098】
そして、貯留タンク74への分離ガスの供給圧力を調整することによって、貯留タンク74内の圧力を調整することができ、ひいては、スクリュー圧縮機10に供給する軸受潤滑流体の圧力を調整することができる。
【0099】
〔制御システム〕
制御システム18は、制御装置88と複数のセンサとからなる。制御装置88は、例えば、中央演算処理装置、メモリ、外部記憶装置、及び、入出力装置等からなるコンピュータによって構成される。
【0100】
制御システム18は、制御装置88に制御のための情報を提供するセンサとして、例えば、吸入ポート20fへと吸入される対象気体の吸入圧力を検知するための吸入圧力センサ90aと、吐出ポート20gから吐出された対象気体の吐出圧力を検知するための吐出圧力センサ90bと、圧力流体供給路40に供給される軸受潤滑流体の圧力を検知するための1次圧力センサ90cと、軸受潤滑流体流路36の往路部分に供給される軸受潤滑流体の圧力を検知するための2次圧力センサ90dと、軸受潤滑流体流路36の復路部分から流出する軸受潤滑流体の圧力(戻り圧力)を検知するための戻り圧力センサ90eを有する。
【0101】
制御装置88は、外部からの命令、及び、センサによって検知された情報に基づいて、スクリュー圧縮機10システム全体の動作を統合制御する。
例えば、制御装置88は、動力源を制御してスクリュー圧縮機10への動力の供給量を調整し、図示しないポンプ等を制御して熱交換器への冷媒の供給量を調整し、ポンプ76を制御して軸受潤滑流体の供給量を調整し、更に、切替弁72を制御してスクリュー圧縮機10の容量を調整する
【0102】
また、制御装置88は、制御弁84の開度を調整して、分離ガス供給路59への分離ガスの供給圧力を調整し、制御弁86の開度を調整して、貯留タンク74内の圧力を調整し、もって、圧力流体供給路40への軸受潤滑流体の供給圧力を調整する。更に、制御装置88は、制御弁80の開度を調整し、軸受潤滑流体流路36の往路部分への軸受潤滑流体の供給圧力を調整する。
【0103】
ここで本実施形態では、分離ガス供給路59に供給される分離ガスの供給圧力(分離ガス供給圧力)が、吸入圧力センサ90aによって検知される吸入圧力よりも高くなるように、制御装置88は、制御弁84の開度を調整する。
【0104】
具体的には、制御装置88は、例えば、吸入圧力が0.1MPa〜0.6MPaの範囲内にあるときに、分離ガス供給圧力が、吸入圧力よりも0.04MPa〜0.11MPa程度高くなるように制御を行う。
なお、この範囲内であれば、分離ガス供給圧力は吐出圧力よりも低く抑えられる。
【0105】
また、本実施形態では、戻り圧力センサ90eによって検知される、スクリュー圧縮機10から流出する軸受潤滑流体の戻り圧力が、吸入圧力センサ90aによって検知される吸入圧力以上であって、分離ガス供給圧力よりも低くなるように、制御装置88は、制御弁86、及び、制御弁80の開度調整を行う。
本実施形態では、第2リップ部56cの吸入側軸受室20c側や吐出側軸受室20e側に作用する圧力が、吸入側シール室20bや吐出側シール室20dにおける第1ラビリンスシール52よりもスクリュー室20a側の領域の圧力と略等しくなるように、制御装置88は戻り圧力を制御する。例えば、制御装置88は、吸入圧力が0.1MPa〜0.6MPaの範囲内にあるときに、軸受潤滑流体の戻り圧力が、0.01MPa〜0.7MPa程度になるように制御を行う。
【0106】
上述した一実施形態のスクリュー圧縮機システムでは、シール装置50の第1シールユニットと第2シールユニットとの間に分離ガス供給隙間58が規定され、スクリュー圧縮機10の運転時、分離ガス供給隙間58に分離ガスが供給される。供給された分離ガスが、第1シールユニットを通じてスクリュー室20aに向けて漏れ出すことにより、スクリュー圧縮機10の運転時、第1シールユニットによって対象気体が吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eに流入することが防止され、対象気体が軸受潤滑流体と接触することも防止される。このため、対象気体が腐食性成分を含んでいても、軸受の劣化が確実に防止される。
【0107】
一方、この構成では、圧縮室から高圧の対象気体が吐出側シール室20dに流入したとしても、流入した対象気体が均圧路60を通じて圧縮室に戻される。このため、吐出側シール室20dにおいて、第1シールユニットよりもスクリュー室20a側の領域での対象気体の圧力が低減され、対象気体が第1シールユニットを通過して漏れることが確実に防止される。
【0108】
また、この構成では、均圧路60を通じて対象気体を圧縮室に戻すことにより、吐出側シール室20dに供給する分離ガスの供給圧力を、スクリュー圧縮機10から吐出される対象気体の吐出圧力よりも高くせずとも、第1シールユニットによって、スクリュー室20aから吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eに向かう方向での対象気体及び歯面潤滑流体の通過が確実に防止される。このため、分離ガスの供給圧力を吐出圧力よりも低く設定することができ、分離ガスの消費量が抑制される。
【0109】
更に、この構成では、吐出側シール室20dに流入した対象気体は、均圧路60を通じて、吸入圧力よりも高圧状態の圧縮室に戻されるので、スクリュー圧縮機10の効率の低下が抑制される。これにより、スクリュー圧縮機10が低コストにて運転される。
【0110】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムに用いられたスクリュー圧縮機10では、スクリューケーシング22aに対し、吸入側シールケーシング22b及び吐出側シールケーシング22dが分離可能に連結され、吸入側シールケーシング22b及び吐出側シールケーシング22dを介して分離可能に吸入側軸受ケーシング22c及び吐出側軸受ケーシング22eが連結されている。
【0111】
このように、分割可能な複数のケーシングによってハウジング20を構成した結果、スクリュー圧縮機10と、腐食性成分を含まない対象気体を圧縮するのに用いられる油冷式スクリュー圧縮機との間で、スクリューケーシング22a、並びに、吸入側及び吐出側軸受ケーシング22c,22dの共通化を図ることができる。このため、スクリュー圧縮機10の部品の汎用性が高く、スクリュー圧縮機システムの価格を低減することができる。
【0112】
ここで、
図6は、腐食性成分を含まない対象気体を圧縮するのに用いられる油冷式スクリュー圧縮機100を用いた油冷式スクリュー圧縮機システムの概略的な構成を示している。この油冷式スクリュー圧縮機システムでは、一つの潤滑流体供給システム102によって、歯面潤滑流体及び軸受潤滑流体がスクリュー圧縮機100に供給される。なお、
図1の油冷式スクリュー圧縮機システムと同一又は類似の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
図7は、
図1中のVII−VII線に沿うスクリュー圧縮機100の概略的な断面を示しており、
図6及び
図7を参照すると、スクリュー圧縮機100は、スクリュー圧縮機10と略同じ吸入側軸受ケーシング22c及び吐出側軸受ケーシング22eを有している。
一方、スクリュー圧縮機100は、吸入側及び吐出側シールケーシング22b,22dを有していない点において、スクリュー圧縮機10と異なっている。また、これに伴い、スクリュー圧縮機10とスクリュー圧縮機100とでは、雄雌のスクリューロータ24,26の吸入側軸部24b,26b及び吐出側軸部24c,26cの長さが異なっている。
【0114】
そして、
図8(a),(b)は、スクリュー圧縮機100に用いられた吸入側軸受ケーシング22c及び吐出側軸受ケーシング22eの端面を概略的に示している。
図8(b)に示したように、吐出側軸受ケーシング22eには、吐出路20iの吐出口が開口しており、吐出口は、軸方向連通部を含んでいる。
【0115】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムに用いられたスクリュー圧縮機10では、リップシール56の第1リップ部56b(第1リップシール)によって、スクリュー室20aから吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eに向かう方向での流体の流れが制限されるので、スクリュー圧縮機10の停止中に分離ガスが供給されていなくても、対象気体が吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eに流入することが防止され、もって、すべり軸受32やアンギュラ玉軸受34の腐食が防止される。
【0116】
更に、リップシール56の第2リップ部56c(第2リップシール)によって、吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eからスクリュー室20aに向かう方向での流体の流れが制限されるので、スクリュー圧縮機10の停止中に分離ガスが供給されていなくても、軸受潤滑流体がスクリュー室20aに流入することが防止され、もって、軸受潤滑流体の減少が防止される。このため、スクリュー圧縮機10を低コストにて運転することができる。
【0117】
また更に、逆止弁62として常時開タイプのものを用いることによって、吐出側シール室20dの異常な圧力上昇を確実に防止することができる。
【0118】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムでは、分離ガスの供給圧力が吸入圧力よりも高く、吐出圧力よりも低くなるように制御されるので、分離ガスの消費量が少なくなり、スクリュー圧縮機10を低コストにて運転することができる。
【0119】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムでは、軸受潤滑流体の戻り圧力が、吸入圧力以上であって分離ガスの供給圧力よりも低くなるように制御されるので、分離ガス供給隙間58と吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eとの間の圧力差が小さく維持され、分離ガスの消費量が抑制されながら、吸入側軸受室20cや吐出側軸受室20eからスクリュー室20aに向かう流体の流れが規制される。このため、スクリュー圧縮機10を低コストにて運転可能である。
【0120】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムによれば、分離ガスと同種のガスを加圧ガスとして用いて、貯留タンク74内の圧力を高めることによって、簡単な構成にて、軸受潤滑流体の供給圧力を吸入圧力以上にすることができる。
【0121】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムによれば、制御システム18の制御装置88が吸入圧力センサ90aの検知結果に基づいて制御弁84を制御することで、簡単な構成にて、分離ガスの供給圧力を的確に制御することができる。
【0122】
一実施形態のスクリュー圧縮機システムによれば、容量制御装置42の作動流体として歯面潤滑流体が使用されるので、容量制御装置42において、対象気体が軸受潤滑流体に混入することが防止される。このため、すべり軸受32やアンギュラ玉軸受34の腐食が確実に防止される。
【0123】
最後に本発明は上述した一実施形態に限定されることはなく、上述した一実施形態に変更を加えた形態も含む。
例えば、
図9に示したように、油圧シリンダ46の作動流体として、軸受潤滑流体を用いてもよい。この場合、切替弁72の入口は、導管を介して熱交換器78に接続され、切替弁72の出口は、導管を介して貯留タンク74に接続される。
【0124】
あるいは
図10に示したように、歯面潤滑流体及び軸受潤滑流体とは異なる油を作動流体として油圧シリンダ46に供給するための作動流体供給系統104を更に設けてもよい。作動流体供給系統104は、ポンプ106とタンク108を有し、ポンプ106の入口はタンク108の出口に接続され、ポンプ106の出口は切替弁72の入口に接続される。そして、タンク108の入口は切替弁72の出口に接続される。