(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のガスバリア材製造用組成物の実施の形態について詳説する。
【0019】
<ガスバリア材製造用組成物>
本発明のガスバリア材製造用組成物は、例えば、それを基材フィルム上に塗工して乾燥してなるガスバリア材(ガスバリア性フィルム)等、各種ガスバリア材を製造するために使用される組成物であり、以下に詳説するPVAを含有する。
【0020】
<PVA>
上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を含む。すなわち、上記PVAは、上記式(1)で表される基を有する単量体単位とビニルアルコール単位(−CH
2−CHOH−)とを含む共重合体であり、さらに他の単量体単位を含んでいてもよい。
【0021】
式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0022】
R
2は、アルコキシル基、アシロキシル基又はOMで表される基である。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアンモニウム基(
+NH
4)である。上記アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。上記アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられる。上記アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。R
2で表されるこれらの基の中でも、アルコキシル基又はOMで表される基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシル基、及びMが水素原子若しくはアルカリ金属であるOMで表される基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基及びMがナトリウム若しくはカリウムであるOMで表される基がさらに好ましい。
【0023】
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。R
3及びR
4としては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0024】
R
1〜R
4で表されるアルキル基、アルコキシル基及びアシロキシル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含む置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含む置換基としては、アルコキシル基、アシロキシル基等が挙げられる。また、窒素原子を含む置換基としては、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0025】
なお、R
1〜R
4がそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R
1〜R
4は、独立して上記定義を満たす。
【0026】
mは、0〜2の整数であるが、0が好ましい。mが0である、すなわち、上記単量体単位が、3つのR
2基を有することで、変性による効果をより高めることができる。
【0027】
nは、3以上の整数である。nの上限としては、特に制限されないが、20が好ましく、15がより好ましく、12がさらに好ましい。nの下限としては、4が好ましく、6がより好ましく、8がさらに好ましい。上記PVAは、上記式(1)中のnが3以上、すなわちシリル基が炭素数3以上のアルキレン基を介して主鎖と連結した構造を有していることで、シリル基の変性量を高めても、水溶性、粘度安定性及び塗工性の低下が抑えられる。このような効果が発現する理由は十分解明されてはいないが、例えば、疎水性を示す炭素数3以上のアルキレン基が、水溶液中において、Si−R
2の加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるためであると推測される。
【0028】
上記単量体単位の具体的構造は、上記式(1)で表される基を有する限り特に限定されないが、上記式(2)で表されることが好ましい。
【0029】
式(2)中、R
1〜R
4、m及びnの定義は、式(1)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
【0030】
Xは、直接結合、2価の炭化水素基又は酸素原子若しくは窒素原子を含む2価の有機基である。上記単量体単位が上記式(2)で表される構造を有することで、水溶性、粘度安定性及び塗工性、並びに得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性をより高めることができる。
【0031】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。上記炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基等が挙げられる。上記酸素原子を含む2価の有機基としては、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等が挙げられる。上記窒素原子を含む2価の有機基としては、イミノ基、アミド基、及びこれらの基と2価の炭化水素基とが連結した基等が挙げられる。
【0032】
上記Xで表される基の中でも、酸素原子又は窒素原子を含む2価の有機基が好ましく、アミド基を含む基がより好ましく、−CO−NR
6−*(R
6は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。*は、上記式(1)で表される基との結合箇所を示す。)で表される基であることがさらに好ましい。このように上記単量体単位がシリル基と離れた位置に極性構造、好ましくはアミド構造を有することで、シリル基に由来する性能を維持しつつ、水溶性、粘度安定性及び塗工性等をより高めることができる。なお、上記R
6としては、上記機能をより高めたり、当該PVAの製造を容易に行うことができる点から、水素原子が好ましく、上記R
6が水素原子であり、nが3〜12の整数であることがより好ましい。
【0033】
R
5は、水素原子又はメチル基である。
【0034】
上記単量体単位としては、下記式(4)で表されるものがさらに好ましい。
【0036】
式(4)中、R
1、R
2、R
5、X及びmの定義は、式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
【0037】
上記式(4)中、R
3’及びR
4’は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。このアルキル基としては、上述した炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。R
3’及びR
4’としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。R
3’及びR
4’で表されるアルキル基が有する水素原子は、酸素原子又は窒素原子を含む置換基で置換されていてもよい。酸素原子を含む置換基としては、アルコキシル基、アシロキシル基等が挙げられる。また、窒素原子を含む置換基としては、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。なお、R
3’及びR
4’がそれぞれ複数存在する場合、複数存在する各R
3’及びR
4’は、独立して上記定義を満たす。
【0038】
上記式(4)中、n’は、1以上の整数である。n’の上限としては、特に制限されないが、18が好ましく、13がより好ましく、10がさらに好ましい。n’の下限としては、2が好ましく、4がより好ましく、6がさらに好ましい。
【0039】
上記単量体単位が、上記式(4)で表される場合、当該ガスバリア材製造用組成物の諸機能をより効果的に発現させることができる。この理由も定かではないが、水溶液中においてSi−R
2の加水分解速度を低下させ、反応を阻害させるという上述した機能がより効果的に発揮されるためと推測される。
【0040】
上記PVAは、下記式(I)を満たす。
370≦P×S≦6,000 ・・・(I)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
【0041】
上記粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、上記PVAをけん化度が99.5モル%未満の場合は、けん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×1000/8.29)
(1/0.62)
【0042】
上記単量体単位の含有率(S:モル%)は、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求められる。ここで、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRを測定するに際しては、このビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を十分に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl
3溶媒に溶解して分析に供する。
【0043】
粘度平均重合度(P)と上記単量体単位の含有率(S)との積(P×S)は、分子100個あたりの上記単量体単位の数(平均値)に相当する。この積(P×S)が上記下限未満の場合は、得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等のシリル基に由来する諸特性を十分に発揮することができない。逆に、この積(P×S)が上記上限を超えると、水溶性、粘度安定性及び塗工性等が低下する。積(P×S)は、下記式(I’)を満たすことが好ましく、下記式(I’’)を満たすことがより好ましい。
400≦P×S≦3,000 ・・・(I')
500≦P×S≦2,000 ・・・(I’’)
【0044】
上記PVAは、下記式(II)及び(III)をさらに満たすことが好ましい。
200≦P≦4,000 ・・・(II)
0.1≦S≦10 ・・・(III)
P:粘度平均重合度
S:上記単量体単位の含有率(モル%)
【0045】
このように粘度平均重合度(P)及び上記単量体単位の含有率(S)を上記範囲とすることで、水溶性、粘度安定性及び塗工性、並びに得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等をより高めることができる。
【0046】
さらには、上記粘度平均重合度(P)において、下記式(II’)を満たすことがより好ましく、下記式(II’’)を満たすことがさらに好ましい。
500≦P≦3,000 ・・・(II’)
1,000≦P≦2,400 ・・・(II’’)
【0047】
粘度平均重合度(P)が上記下限未満の場合は、得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等が低下する場合がある。逆に、粘度平均重合度(P)が上記上限を超える場合は、水溶性、粘度安定性及び塗工性等が低下する場合がある。
【0048】
また、上記単量体単位の含有率(S)においては、下記式(III’)を満たすことがより好ましく、下記式(III’’)を満たすことがさらに好ましい。
0.25≦S≦6 ・・・(III’)
0.5≦S≦5 ・・・(III’')
【0049】
上記単量体単位の含有率(S)が上記下限未満の場合は、得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等が低下する場合がある。逆に、上記単量体単位の含有率(S)が上記上限を超える場合は、水溶性、粘度安定性及び塗工性等が低下する場合がある。
【0050】
上記PVAのけん化度としては、特に制限はないが、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、97モル%以上が特に好ましい。上記PVAのけん化度が上記下限未満の場合は、得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等が低下する場合がある。なお、上記PVAのけん化度の上限としては、特に制限はないが、生産性等を考慮すると、例えば99.9モル%である。ここでPVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法に準じて測定した値をいう。
【0051】
<PVAの製造方法>
上記PVAの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体と、上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させ、得られる共重合体(ビニルエステル系重合体)をけん化することにより得ることができる。
【0052】
上記ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
【0053】
また、上記式(1)で表される基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、得られるPVAの粘度平均重合度(P)を調節すること等を目的として、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエタンチオール、n−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプタン類;テトラクロロメタン、ブロモトリクロロメタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
【0054】
上記式(1)で表される基を有する単量体としては、例えば下記式(5)で表される化合物が挙げられる。下記式(5)で表される化合物を使用することにより、最終的に、上記式(2)で表される単量体単位を含むPVAが容易に得られる。
【0056】
式(5)中、R
1〜R
5、X、m及びnの定義は、式(2)と同様である。また、これらの好ましい基又は数値範囲も同様である。
【0057】
上記式(5)で表される化合物としては、例えば3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミドブチルトリメトキシシラン、6−(メタ)アクリルアミドヘキシルトリメトキシシラン、8−(メタ)アクリルアミドオクチルトリメトキシシラン、12−(メタ)アクリルアミドドデシルトリメトキシシラン、18−(メタ)アクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−4−メチルペンチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン、5−(メタ)アクリルアミド−5−メチルヘキシルトリメトキシシラン、4−ペンテニルトリメトキシシラン、5−へキセニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
上記ビニルエステル系単量体と上記式(1)で表される基を有する単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。特に、重合温度が30℃より低い場合には、乳化重合法が好ましく、重合温度が30℃以上の場合には、無溶媒で行う塊状重合法又はアルコール等の溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。
【0059】
乳化重合法の場合、溶媒としては水が挙げられ、メタノール、エタノール等の低級アルコールを併用してもよい。また、乳化剤としては、公知の乳化剤を使用することができる。共重合の際の開始剤としては、鉄イオン−酸化剤−還元剤を併用したレドックス系開始剤が重合をコントロールする上で好適に用いられる。塊状重合法や溶液重合法の場合、共重合反応を行うにあたって、反応の方式は回分式及び連続式のいずれの方式にても実施可能である。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールが挙げられる。この場合の共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物系開始剤等の公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5〜50℃の範囲が適当である。
【0060】
この共重合反応の際には、本発明の趣旨が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸又はその誘導体;アクリル酸又はその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸又はその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等のカチオン基を有する単量体等が挙げられる。これらの単量体の使用量としては、その使用される目的や用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で20モル%以下であり、10モル%以下であることが好ましい。
【0061】
上記共重合により得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法に従って溶媒中でけん化され、PVAへと導かれる。
【0062】
けん化反応の触媒としては、通常、アルカリ性物質が用いられる。上記アルカリ性物質としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。上記アルカリ性物質の使用量としては、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル系単量体単位を基準にしたモル比で、0.004〜0.5の範囲内が好ましく、0.005〜0.05の範囲内がより好ましい。また、この触媒は、けん化反応の初期に一括して添加してもよいし、けん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加してもよい。
【0063】
けん化反応に用いることができる溶媒としては、例えばメタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの中でも、メタノールが好ましい。また、メタノールの使用にあたり、メタノール中の含水率が好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、特に好ましくは0.005〜0.8質量%に調整されているのがよい。
【0064】
けん化反応は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは20〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間としては、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応は、バッチ法及び連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和してもよい。上記中和剤としては、例えば酢酸、乳酸等の有機酸、酢酸メチル等のエステル化合物等が挙げられる。
【0065】
けん化反応により得られたPVAは、必要に応じて、洗浄することができる。この洗浄の際に用いられる洗浄液としては、メタノール等の低級アルコール、酢酸メチル等の低級脂肪酸エステル、及びそれらの混合物等が挙げられる。これらの洗浄液には、少量の水やアルカリ又は酸等が添加されていてもよい。
【0066】
当該ガスバリア材製造用組成物における上記PVAの含有率としては、特に限定されないが、1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上30質量%以下がより好ましく、4質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。当該ガスバリア材製造用組成物によれば、PVAを比較的高濃度(例えば4質量%以上)とすることができるため、例えば当該ガスバリア材製造用組成物を基材フィルム上に塗工して乾燥する際の乾燥時間を短縮することができる。
【0067】
<その他の成分等>
当該ガスバリア材製造用組成物の好ましい態様としては、上記PVAの水溶液が挙げられるが、他の溶媒を用いてなる上記PVAの溶液であってもよい。他の溶媒としては、例えば各種アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。また、当該ガスバリア材製造用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば架橋剤、消泡剤、分散剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、pH調製剤等の各種の添加剤が挙げられ、特に架橋剤を含む場合には得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等をより高めることができる。
【0068】
上記架橋剤としては、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物;炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム化合物;乳酸チタン等のチタン化合物;ポリアミドアミンエピクロルヒドリン等のエポキシ化合物;コロイダルシリカ、テトラメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、これらのうちのいずれか1つ又は複数が加水分解縮合物されてなるオリゴマー等のケイ素含有化合物;ポリオキサゾリン;尿素樹脂;メラミン樹脂;多価金属塩等が挙げられる。これらの中でも、得られるガスバリア材の耐水性及びガスバリア性等をより高めることができることから、ジルコニウム化合物、チタン化合物及びケイ素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記ガスバリア材製造用組成物が架橋剤を含む場合、その含有量は、PVA100質量部に対して0.01質量部以上900質量部以下が好ましい。
【0069】
当該ガスバリア材製造用組成物のpHとしては、特に限定されないが、4以上8以下とすることが好ましい。当該ガスバリア材製造用組成物は、用いる上記PVAが水への溶解性に優れるため、水に対して水酸化ナトリウム等のアルカリや酸を特に添加しなくとも均一な水溶液を得ることができ、取扱性に優れる。また、当該ガスバリア材製造用組成物によれば、中性領域においても、十分な粘度安定性を発揮することができる。
【0070】
本発明のガスバリア材製造用組成物は、上記したように各種ガスバリア材を製造するために使用される組成物である。当該ガスバリア材製造用組成物を用いて製造されるガスバリア材の構成は特に限定されないが、例えば、当該ガスバリア材製造用組成物を基材フィルム上に塗工(流延含む)して乾燥するなどして製造することのできる、基材フィルムの表面に当該ガスバリア材製造用組成物を用いて形成された皮膜(ガスバリア層)が積層されたガスバリア材等が挙げられる。これ以外にも、例えばボトル等の容器の表面に当該ガスバリア材製造用組成物を用いて形成される皮膜(ガスバリア層)が積層されたガスバリア材や、当該ガスバリア材製造用組成物を支持体上に塗工(流延含む)して乾燥後、支持体から剥がしてなる単層のガスバリア材等を挙げることもできる。
【0071】
<ガスバリア材>
本発明のガスバリア材は上記ガスバリア材製造用組成物を用いて製造されるものである。このようなガスバリア材の好ましい具体例としては、例えば、
基材フィルムと
この基材フィルムの表面に積層され、上記ガスバリア材製造用組成物を用いて形成されるガスバリア層と
を備えるもの等が挙げられる。本発明のガスバリア材は、耐水性及びガスバリア性に優れるため、例えば食品、飲料、医薬品、化粧品、電子部材等の物品を包装するための包装材料等に好適に用いることができる。
【0072】
上記基材フィルムを構成する素材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン、MXDナイロン、芳香族ポリアミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、セルロース、酢酸セルロース等が挙げられる。これらのうち、ガスバリア性の観点から、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。基材フィルムは延伸されていても延伸されていなくてもどちらでもよいが、延伸されているものが好ましい。
【0073】
上記基材フィルムの厚み(延伸する場合は最終的な厚み)としては、特に限定されるものではなく用途に応じて適宜選択されるが、フィルムの強度等の観点から5〜100μmが好ましい。
【0074】
上記ガスバリア層は、例えば上記ガスバリア材製造用組成物を上記基材フィルム上に塗工(流延含む)して乾燥することにより、当該基材フィルムの表面に積層された状態で形成することができる。当該ガスバリア材製造用組成物の塗工温度としては、20〜80℃が好ましい。また、塗工方法としては、グラビアロールコーティング法、リバースグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法等が挙げられる。
【0075】
上記ガスバリア層の形成方法に関しては、基材フィルムの延伸や熱処理をした後に上記ガスバリア材製造用組成物を塗工して乾燥する方法、上記ガスバリア材製造用組成物を塗工して乾燥した後に延伸や熱処理をする方法、これらを組み合わせた方法等が挙げられ、作業性を考慮すると、基材フィルムを延伸した後、上記ガスバリア材製造用組成物を塗工して乾燥し、その後さらに二段目の延伸を行い、その二段目の延伸中又は延伸後に後述の熱処理をする方法が好ましい。
【0076】
上記ガスバリア層(皮膜)と基材フィルムの層との間には、接着性を向上させる目的で、接着成分層があってもよい。接着成分は当該ガスバリア材製造用組成物を塗工する前に、基材フィルムの表面に塗布することもできるし、当該ガスバリア材製造用組成物に予め配合して使用することもできる。
【0077】
基材フィルム上にガスバリア層を形成した後、このガスバリア層上にさらにヒートシール樹脂層を形成してもよい。ヒートシール樹脂層は、例えば押し出しラミネート法、ドライラミネート法等により形成することができる。ヒートシール樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0078】
基材フィルム上に形成されたガスバリア層には、架橋反応をより確実にしてガスバリア性を高めるために、さらに熱処理を加えることが好ましい。熱処理温度としては100〜180℃が好ましい。
【0079】
本発明のガスバリア材はガスバリア性に優れ、特に高湿度下においても高いガスバリア性を示す。本発明のガスバリア材におけるガスバリア性の程度に特に制限はないが、ガスバリア層の厚み2μmあたりに換算した酸素透過量(温度20℃、相対湿度85%)として、30mL/m
2・day・atm未満であることが好ましく、10mL/m
2・day・atm未満であることがより好ましく、1mL/m
2・day・atm未満であることがさらに好ましい。ここで、ガスバリア層の厚み2μmあたりに換算した酸素透過量は、上記条件で実際に測定された酸素透過量(単位はmL/m
2・day・atm)に対して、ガスバリア層の厚み(単位はμm)を2(μm)で除すことで得られる係数を乗じることにより算出することができる。
【0080】
<包装体>
本発明の包装体は物品を上記ガスバリア材で包装してなる。当該ガスバリア材は、耐水性及びガスバリア性に優れるため、当該ガスバリア材で各種物品を包装して包装体とすることで、これらの物品の品質を長時間維持することが可能となる。包装される物品に特に制限はないが、例えば食品、飲料、医薬品、化粧品、電子部材等が挙げられる。包装形態に特に制限はないが、高いガスバリア性をより効果的に活用することができることから密封包装が好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、部及び%はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
【0082】
なお、実施例及び比較例で用いたシリル基を有する単量体(モノマーA)は、以下のとおりである。
MAmPTMS :3−メタクリルアミドプロピルトリメトキシシラン
MAmPTES :3−メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン
MAmBTMS :4−メタクリルアミドブチルトリメトキシシラン
MAmOTMS :8−メタクリルアミドオクチルトリメトキシシラン
MAmDDTMS:12−メタクリルアミドドデシルトリメトキシシラン
MAmODTMS:18−メタクリルアミドオクタデシルトリメトキシシラン
AMBTMS :3−アクリルアミド−3−メチルブチルトリメトキシシラン
4−PTMS :4−ペンテニルトリメトキシシラン
VMS :ビニルトリメトキシシラン
MAmMTMS :メタクリルアミドメチルトリメトキシシラン
AMPTMS :2−アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン
【0083】
下記の各合成例又は比較合成例に従って各PVAを製造し、そのけん化度、上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)(一部の例では、シリル基を有する単量体単位の含有率)、粘度平均重合度(P)を求めた。そして、以下の各実施例又は比較例に従ってガスバリア材製造用組成物及びガスバリア材を製造し、これらの性能を評価した。なお、PVAの分析は、特に断らない限りJIS−K6726に記載の方法に従って行った。
【0084】
[合成例1]
PVA1の製造
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び開始剤の添加口を備えた6Lセパラブルフラスコに、酢酸ビニル1,500g、メタノール500g、上記式(1)で表される基を有する単量体(モノマーA)としてのMAmPTMS1.87gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてMAmPTMSをメタノールに溶解して濃度8%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.8gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとモノマーA(MAmPTMS)の比率)が一定となるようにしながら、60℃で2.7時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液(逐次添加液)の総量は99gであった。また、重合停止時の固形分濃度は29.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、上記式(1)で表される基を有するポリ酢酸ビニル(PVAc)を40%含有するメタノール溶液を得た。さらに、これにPVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.04、PVAcの固形分濃度が30質量%となるように、メタノール及び水酸化ナトリウムを10質量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。アルカリ溶液を添加後、約5分でゲル状物が生成した。このゲル状物を粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノールを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置し、上記式(1)で表される基を有するPVA1を得た。PVA1の粘度平均重合度(P)は1,700、けん化度は98.6モル%であった。
【0085】
得られたPVA1の上記式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(シリル基を有する単量体単位の含有率)は、このPVAの前駆体であるPVAcのプロトンNMRから求めた。具体的には、得られたPVAcの再沈精製をn−ヘキサン/アセトンで3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPVAcを作製した。このPVAcをCDCl
3に溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定した。酢酸ビニル単位の主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とモノマーA単位のメトキシ基のメチルに由来するピークβ(3.4〜3.8ppm)とから、下記式を用いて式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S)を算出した。PVA1において、含有率(S)は0.5モル%であった。得られたPVAについて分析した結果を表1に示す。
式(1)で表される基を有する単量体単位の含有率(S:モル%)
={(βのピーク面積/9)/(αのピーク面積+(βのピーク面積/9))}×100
【0086】
[合成例2〜21及び比較合成例1〜15]
PVA2〜PVA36の製造
メタノール及び開始剤の仕込み量、モノマーAの種類や添加量等の重合条件、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にしてPVA2〜PVA36を得た。得られた各PVAについて分析した結果を表1に示す。なお、表1中、比較合成例1〜15の含有率(S)は、式(1)で表される基を有する単量体単位以外の、シリル基を有する単量体単位の含有率も含む。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例1]
PVA1を用い、PVA1の8%水溶液を調製し、これをガスバリア材製造用組成物とした。このガスバリア材製造用組成物の粘度安定性及び塗工性と、当該ガスバリア材製造用組成物を用いて形成された皮膜の耐水性を下記の方法に従って評価した。また当該ガスバリア材製造用組成物を用いて下記の方法でガスバリア材を製造してそのガスバリア性(酸素透過抑制性)を評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、※1は、PVAが水に対して完全に溶解しないため、評価できなかったことを示す。
【0089】
[ガスバリア材製造用組成物の粘度安定性]
上記ガスバリア材製造用組成物を20℃恒温槽中に放置し、このガスバリア材製造用組成物の温度が20℃になった直後の粘度と7日後の粘度を測定した。ガスバリア材製造用組成物の温度が20℃になった直後の粘度で7日後の粘度を除した値(7日後の粘度/直後の粘度)を求め、これを粘度比(倍)とし、以下の基準に従って判定した。結果を表2に示す。
【0090】
A:2.5倍未満
B:2.5倍以上3.0倍未満
C:3.0倍以上5.0倍未満
D:5.0倍以上であるが、ガスバリア材製造用組成物はゲル化していない
E:ガスバリア材製造用組成物は流動性を失いゲル化している
【0091】
[ガスバリア材製造用組成物の塗工性]
上記ガスバリア材製造用組成物をレオメーター(ARES−G2、TAインスツルメンツ製)を用いてシェアレート0.01(1/s)から200(1/s)までのフローカーブを20℃で測定した。1.0(1/s)でのガスバリア材製造用組成物の粘度で200(1/s)でのガスバリア材製造用組成物の粘度を除した値を求め、これを粘度比(倍)とし、以下の基準に従って判定した。結果を表2に示す。
A:0.6倍未満
B:0.6倍以上0.8倍未満
C:0.8倍以上0.9倍未満
D:0.9倍以上
E:粘度が高くハンドリングが困難
【0092】
[皮膜の耐水性]
上記ガスバリア材製造用組成物を20℃で流延して乾燥し、厚み40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、試験片を作製した。この試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の質量を測定した。水膨潤時の質量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の質量を測定した。ここで水膨潤時の質量を乾燥時の質量で除した値を求めてこれを膨潤度(倍)とし、以下の基準に従って判定した。結果を表2に示す。
S:3.0倍未満
A:3.0倍以上5.0倍未満
B:5.0倍以上8.0倍未満
C:8.0倍以上10.0倍未満
D:10.0倍以上
E:浸漬した試験片を回収することができない
【0093】
[ガスバリア材のガスバリア性(酸素透過抑制性)]
上記ガスバリア材製造用組成物を厚み20μmのOPP基材フィルム上に流延して乾燥することにより、厚み10μmの皮膜を形成した。これを120℃で10分間熱処理することにより、当該OPP基材フィルムの表面にガスバリア材製造用組成物を用いて形成された皮膜(ガスバリア層)が積層されたガスバリア材を得た。このガスバリア材を温度20℃、相対湿度85%の状態で5日間調湿した後、この温度および相対湿度の条件下で酸素透過量(OTR)(単位:mL/m
2・day・atm)を測定した。ここで酸素透過量とは、ガスバリア層の厚みを2μmに換算したときの値であり、これを用いて以下に示す基準にてガスバリア性の判定を行った。
A:0.01以上1.0未満(mL/m
2・day・atm)
B:1.0以上10.0未満(mL/m
2・day・atm)
C:10.0以上30.0未満(mL/m
2・day・atm)
D:30.0以上50.0未満(mL/m
2・day・atm)
E:50.0以上(mL/m
2・day・atm)
【0094】
[実施例2〜21及び比較例1〜15]
実施例1において用いたPVA1に代えて、表2に示したPVAを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア材製造用組成物及びガスバリア材を製造し、評価した。その結果を表2に併せて示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示されるように、実施例1〜21で調製したガスバリア材製造用組成物は、アルカリや酸を特に添加しなくとも均一な水溶液を得ることができ取扱性に優れ、また十分な粘度安定性及び塗工性を有し、しかも得られる皮膜は耐水性に優れ、またガスバリア性に優れるガスバリア材が得られることが分かる。ここで、粘度安定性はD以上であれば実用上十分な粘度安定性を有していると評価し、塗工性はB以上、皮膜の耐水性及びガスバリア材のガスバリア性はそれぞれC以上であれば優れていると評価する。さらに、PVAの粘度平均重合度(P)、けん化度、単量体単位の構造、含有率(S)、粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)を特定した、実施例1、9、15〜18、21のガスバリア材製造用組成物は、粘度安定性及び塗工性、、得られる皮膜の耐水性、並びに得られるガスバリア材のガスバリア性に特に優れている(粘度安定性がC以上の評価であり、かつ、他の3項目がB以上で当該3項目中2項目以上がA以上の評価である)。なお、実施例2〜8、10〜14、19及び20のガスバリア材製造用組成物は、粘度安定性及び塗工性、得られる皮膜の耐水性、並びに得られるガスバリア材のガスバリア性のうちのいずれか1つ又は複数が若干低下することが分かる。これは粘度平均重合度(P)が小さく、又は大きくなること;けん化度の低下:単量体単位の構造が異なること;粘度平均重合度(P)と含有率(S)の積(P×S)が小さく、又は大きくなること等に起因していると考えられる。
【0097】
一方、PVAが規定の要件を満たさない場合(比較例1〜15)、ガスバリア材製造用組成物は実用上十分な粘度安定性や塗工性を有さなかったり、得られた皮膜の耐水性が低下したり、得られたガスバリア材のガスバリア性が低下したりすることが分かる。