特許第6041684号(P6041684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041684
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】食品のフライ処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20161206BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20161206BHJP
   A47J 37/12 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A23L5/10 D
   A23L7/109 J
   A47J37/12 361
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-11153(P2013-11153)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-140333(P2014-140333A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
(72)【発明者】
【氏名】全 南政
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
【審査官】 名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249111(JP,A)
【文献】 特開2004−166797(JP,A)
【文献】 実開平01−135048(JP,U)
【文献】 特開昭51−130546(JP,A)
【文献】 米国特許第4269113(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/
A23L 29/
A23L 23/
A23L 35/
A23L 7/
A47J 37/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品をコンベアで搬送して連続的にフライ処理する方法であって、
1)フライをする食品をリテーナ本体に収納する工程、
2)フライをする食品を収納した後、リテーナ本体の開口部に対してリテーナ蓋体を被せる工程、
3)前記蓋体を被せた後のリテーナ全体をフライ槽に浸漬してフライ処理を開始する
工程、
4)フライ処理が完了する前であってリテーナ本体内の収納食品の外形の成形後に、フライ油中で前記蓋体をリテーナ本体より分離させつつ、フライ中の食品がフライ油中でリテーナ本体より遊離しないようフライ中の食品の所定部分を支持する工程、
5)前記蓋体の分離の後にさらにフライ処理を行い、フライ処理を完了する工程、
6)前記リテーナ本体をフライ油から取り出す工程、
の各工程を含む食品のフライ処理方法。
【請求項2】
前記食品がα化後の麺線群である請求項1に記載のフライ処理方法。
【請求項3】
1)フライ槽と、
2)当該フライ槽に注入されたフライ油と、
3)前記フライ油内に進入し、フライ油内を搬送した後にフライ油から退出するように設置された、複数のリテーナ本体を有するリテーナ本体コンベアと、
4)前記リテーナ本体がフライ油に進入する際に、リテーナ本体の開口部を覆い、前記フライ油内において所定時間リテーナ本体に追従した後、フライ処理が完了する前であってリテーナ本体内の収納食品の外形の成形後に、リテーナ本体から分離するリテーナ蓋体を有するリテーナ蓋体コンベアと、
5)前記リテーナ蓋体がリテーナ本体から分離した後、フライ中の食品がフライ油中でリテーナ本体より遊離しないようその所定部分を支持する機構と、
6)前記各コンベアの搬送チェーンが巻き掛けられるスプロケットと、
7)前記スプロケットのいずれかを駆動する駆動手段とを、
備えた食品のフライ処理装置。
【請求項4】
前記食品がα化後の麺線群である請求項3に記載のフライ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品のフライ処理方法及び処理装置に関するものである。特にフライ前において柔軟性を有しており、蓋を被せてフライする必要のある食品のフライ処理方法及び処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場等で食品をコンベア等を用いて連続してフライ処理して製造する方法は、フライ麺塊、コロッケ、とんかつ、天ぷら等の種々の食品に対して利用されている。
通常、フライ処理においてフライ前の食品は分離しやすかったり、柔軟性を有するこことが多い。例えば、これらの食品の中で、即席麺に使用されるフライ麺塊は、小麦粉等の原料をミキサーにより混ねつ機により原料を入れてあらかじめ調製した練水を加えて、複合・圧延、切出し、蒸煮又は茹で(α化)、着味、カット、型詰、フライの各工程を経て製造される。
【0003】
ここでフライの工程は、α化された麺線を120℃〜170℃程度のフライ油中を1〜3分間程度通過させることによる油熱乾燥する工程である。フライ前のα化された麺線群は複数の麺線が入り組んでいるため分離しやく、また柔軟性を有している。
そこで、フライ処理においては、搬送チェーンに装着されたリテーナ本体にフライ対象となる食品(麺線群)を収納してフライ処理する際に、リテーナ本体に収納された食品(麺線群)がフライ油中でリテーナ本体からはみ出さず、また、浮き上がって遊離しないようにリテーナ上部を蓋体が覆うようにしてフライ処理をしていた。
【0004】
具体的には、リテーナ本体に収納された食品(麺線群)を所定の形状に成形するためにフライ油への進入の前にリテーナ蓋体を被せてフライ油中に浸漬を開始し、浸漬させた状態でフライ油中を搬送させることで所定のフライ時間のフライ処理を行う。次に、フライ処理の完了後にフライ油からリテーナ本体を退出させることになるが、その際に蓋体をリテーナ本体より分離させ、その後にリテーナ本体よりフライ後の食品(フライ麺塊)を回収する。一般的にはこのような手法が行われていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249111
【0006】
食品のフライ処理工程は、短時間に麺線から水分を飛ばして乾燥する重要な工程である。そして、当該フライ処理をより迅速にすることができれば、生産効率をアップさせることができコスト削減等に大きく寄与することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、食品をコンベアで搬送して連続的にフライ処理する方法において、フライ処理時間を短縮できる新たな方法を開発することを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの鋭意研究の結果、食品をコンベアで搬送して連続的にフライ処理する方法において、リテーナ本体にフライする対象となる食品を収納し、上部に蓋をしてフライ処理を開始した後に、所定時間のフライ処理が完了する前において蓋部を分離させる方法に着目した。
そして、フライ油に浸漬した状態のままで前記蓋をリテーナ本体より分離させつつ、フライ対象物がリテーナ本体部より遊離しないように簡易的に棒状物等でその遊離を抑制した状態で保持し、フライ処理を完了するという方法を採用することにより、フライ処理の全体の時間を短縮することができることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0009】
すなわち、本願第一の発明は、
食品をコンベアで搬送して連続的にフライ処理する方法であって、
1)フライをする食品をリテーナ本体に収納する工程、
2)フライをする食品を収納した後、リテーナ本体の開口部に対してリテーナ蓋体を被せる工程、
3)前記蓋体を被せた後のリテーナ全体をフライ槽に浸漬してフライ処理を開始する
工程、
4)フライ処理が完了する前であってリテーナ本体内の収納食品の外形の成形後に、フライ油中で前記蓋体をリテーナ本体より分離させつつ、フライ中の食品がフライ油中でリテーナ本体より遊離しないようフライ中の食品の所定部分を支持する工程、
5)前記蓋体の分離の後にさらにフライ処理を行い、フライ処理を完了する工程、
6)前記リテーナ本体をフライ油から取り出す工程、
の各工程を含む食品のフライ処理方法、
である。
【0010】
さらに、フライの対象とする食品は、即席麺のフライ麺塊の製造に用いられるα化後の麺線が好適である。
すなわち、本願第二の発明は、
前記食品がα化後の麺線群である請求項1に記載のフライ処理方法、である。
次に、本出願人は、上記フライ処理方法を実現できるフライ処理装置も意図している。
すなわち、本願第三の発明は、
1)フライ槽と、
2)当該フライ槽に注入されたフライ油と、
3)前記フライ油内に進入し、フライ油内を搬送した後にフライ油から退出するように設置された、複数のリテーナ本体を有するリテーナ本体コンベアと、
4)前記リテーナ本体がフライ油に進入する際に、リテーナ本体の開口部を覆い、前記フライ油内において所定時間リテーナ本体に追従した後、フライ処理が完了する前であってリテーナ本体内の収納食品の外形の成形後に、リテーナ本体から分離するリテーナ蓋体を有するリテーナ蓋体コンベアと、
5)前記リテーナ蓋体がリテーナ本体から分離した後、フライ中の食品がフライ油中でリテーナ本体より遊離しないようその所定部分を支持する機構と、
6)前記各コンベアの搬送チェーンが巻き掛けられるスプロケットと、
7)前記スプロケットのいずれかを駆動する駆動手段とを、
備えた食品のフライ処理装置、
である。
【0011】
さらに、フライの対象とする食品は、即席麺のフライ麺塊の製造に用いられるα化後の麺線が好適である。
すなわち、本願第四の発明は、
前記食品がα化後の麺線群である請求項3に記載のフライ処理装置、である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一の実施形態で用いるフライ処理装置の側面断面の模式図である。
図2】リテーナ本体の斜視図である。
図3】リテーナ蓋体の斜視図である。
図4】(a)本発明の第一の実施形態で用いるリテーナ蓋体の斜視図である。 (b)リテーナ蓋体の上部に設置された支持棒の突出を示す参考図である。
図5】本発明の第一の実施形態で用いるフライ処理装置の側面断面の模式図である。
図6】コンベアチェーンに接続されたリテーナ蓋体と誘導レールを示す斜視図である。
図7】本発明の第一の実施態様においてリテーナ蓋部より支持棒が突出する状態を示した側面断面の模式図である。
図8】本発明の第二の実施形態で用いるフライ処理装置の側面断面の模式図である。
図9】本発明の第二の実施態様においてリテーナ蓋部より支持棒が突出する状態を示した側面断面の模式図である。
【符号の説明】
【0013】
1 フライ槽
2 フライ油
3 リテーナ本体コンベア
31 リテーナ本体
32 搬送チェーン(リテーナ本体コンベア用)
33 スプロケット(リテーナ本体コンベア用)
34 スプロケット(リテーナ本体コンベア用)
4 リテーナ蓋体コンベア
41 リテーナ蓋体
411 支持棒(リテーナ蓋体)
412 筒状体(リテーナ蓋体)
42 搬送チェーン(リテーナ蓋体コンベア用)
43 スプロケット(リテーナ蓋体コンベア用)
44 スプロケット(リテーナ蓋体コンベア用)
5 食品
6 レール
7 固定カム
8 線状の支持棒
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しつつ説明する。但し、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。図1は本願発明のフライ処理方法を実現する第一の実施態様を示したものである。
【0015】
図1に示す本発明のフライ処理装置は、フライ槽1と、当該フライ槽に注入されたフライ油2と、当該フライ槽1のフライ油2中を搬送するリテーナ本体31が装着された無端状の搬送コンベア3(リテーナ本体コンベア)を有している。また、当該フライリテーナ本体31にフライ処理される食品5が収納された後、上部に蓋をするために、フライ油中に進入する前に上部から被される蓋体41が装着された無端状の搬送コンベア4(リテーナ蓋体コンベア)が設けられている。さらに、当該リテーナ蓋体がフライ途中でリテーナ本体より分離されるようにリテーナ蓋体の搬送チェーンを上部に誘導するようにレール6が設けられている。また、リテーナ蓋体が上部に誘導されても、フライ途中の食品のリテーナ本体からの分離を防止できるようリテーナ蓋部から支持棒が突出するように固定カム7が設けられている。さらに、それぞれのコンベアが搬送できるように搬送チェーン(32,42)が巻きつけられたスプロケット(33,34,43,44)と、当該スプロケットに駆動を伝達する駆動モーターが設けられている(図示せず)。
【0016】
─フライ槽─
図1は、本発明の第一の実施形態で用いるフライ処理装置の側面断面の模式図である。本第一実施形態のフライ処理装置においてフライ槽1は、断面が皿型の形状を有している。但し、本形状に限定されず、例えば底が深いタイプ等であってもよいことはもちろんである。本フライ槽1にはフライ油が注入されている。尚、当該フライ油はヒーター等で加熱されるが、当該加熱機構が適宜設けられる。さらに、フライ槽の下部よりフライ油を回収して循環させる機構や当該循環の際に熱交換器等によってフライ油を加熱する機構等を設けてもよいことは勿論である。
【0017】
─リテーナ本体コンベア─
図1に示すように本発明のリテーナ本体コンベア3は食品5を収納可能な複数のリテーナ本体31が無端の搬送チェーン32に配設されて構成されている。搬送チェーン32は、第一スプロケット33と第二スプロケット34との間に巻きかけられており、駆動モーターによって駆動される(図示しない)。
また、搬送チェーンの上側走行路を搬送往路、下側走行路を搬送復路として、時計回りに循環走行する。
【0018】
尚、これらの搬送チェーン(32,42)、スプロケット(33,34,43,44)は、リテーナ本体コンベア3の幅方向に隔てて一対を成して設けられており、複数のリテーナ本体31が一対の搬送チェーン32の間に架け渡されている。また、各リテーナ本体31には図2に示すように通液性の複数のカップ状容器311が配置されている。
本実施態様においては、搬送往路において食品5を収納したリテーナ本体31が斜め下方向に運ばれ、リテーナ蓋体41がその開口部を覆った後、フライ槽1に進入し、フライ槽1内のフライ油2中を通過するように走行する。その後、フライ槽1を通過後に反転して復路を走行する。搬送チェーン31は、フライ槽1を囲むように配置されているため、フライ槽1下方部を搬送復路として走行する。
【0019】
また、リテーナ本体31がフライ油2に浸漬した状態で搬送される所定距離が設定されており、当該所定距離を搬送される間にリテーナ本体31内部に収納されたフライ対象となる食品5のフライ処理が行われる。また、リテーナ本体31の搬送速度によってフライ時間が決定される。そして、当該所定距離の搬送後、リテーナ本体31はフライ油2から退出するように設置されている。
【0020】
─リテーナ蓋体コンベア─
図1に示すように、本発明のリテーナ蓋体コンベア4はフライする食品5の収納後において前記リテーナ本体31の開口部を覆うためのものである。
本リテーナ蓋体コンベア3には、前記リテーナ本体31上に載置可能な複数のリテーナ蓋体41が無端の搬送チェーン42に配設されて構成されている。搬送チェーン42は、第三スプロケット43と第四スプロケット44との間に巻きかけられており、リテーナ本体コンベア3と同調するよう、リテーナ本体コンベア3の駆動モーターによって駆動される(図示しない)。また、搬送チェーン42の下側走行路を搬送往路、上側走行路を搬送復路として、反時計回りに循環走行する。
【0021】
各蓋体については、従来、図3(a)や(b)に示すように、通液性を確保するために、複数の孔が設けられていたタイプが用いられていた。
一方、本実施態様においては、後述するようにリテーナ蓋体41がフライの途中でリテーナ本体部31から分離するため、その後、フライ中のリテーナの収納食品5を支持する棒状部材(支持棒)412が突出するように構成されている。すなわち、図4(a)、(b)に示すようにリテーナ蓋体41の各蓋部の上部に筒状体411が溶接されており、当該筒状体411を通じて、支持棒412が挿通し、支持棒412の先端部がリテーナ蓋体41からその下方まで突出可能となるように構成されている。
尚、当該支持棒412と前記筒状体411の間には支持棒412を上部方向に付勢するためのバネ413が介在している。
【0022】
─リテーナ本体内の収納食品の外形の成形後におけるリテーナ蓋体の分離─
本実施態様においてリテーナ蓋体コンベア4は、上述のリテーナ本体コンベア3がフライする対象となる食品5を収納した後、リテーナ本体コンベア31がフライ油2中に進入する前にリテーナ本体31の上部を覆い、リテーナ本体31が蓋をされた状態でフライされるために用いられる。ここで、上述のリテーナ本体はフライ油中で搬送される所定時間(所定距離)の全体にわたってリテーナ蓋体41が載置された状態を保持するのではなく、フライ処理工程の途中でリテーナ蓋体41がリテーナ本体31から分離する構成を採用する。
【0023】
図5に示すように本実施態様においては、リテーナ本体31が下方に搬送され、フライ油2中に進入し、フライ油2中を移送することができるようにフライ槽1の底部付近を水平に移送する態様を採用している。
従来までのフライ処理であれば、フライ槽1からリテーナ本体31が退出するまでリテーナ本体31にリテーナ蓋体41が覆ったままであるが、本発明においては、フライ途中においてリテーナ蓋体41をリテーナ本体31から分離させる。
すなわち、所定時間を経過した後、収納食品の外形の成形後においてリテーナ本体31の上部からリテーナ蓋体41を分離し、この状態でフライが継続される状態となる。リテーナ本体31からリテーナ蓋体41が分離するまでの時間はフライする食品によって異なる。
【0024】
すなわち、収納された食品5のフライが開始されてからその表面がフライされて固まり、棒等によってフライ途中の収納食品5を簡易に押さえても、当該収納食品5のリテーナ本体からの遊離を防止し、収納食品の外形を保てるような状態(収納食品の外形が成形された状態)となるまでの時間とするのがよい。例えば、即席麺に利用されるフライ麺塊であると、α化された麺線群をリテーナ本体31に入れてから、リテーナ蓋体41により蓋をしてフライを開始する。例えば一例として、概ね145℃〜155℃程度のフライ油で、1分〜1分10秒程度フライした後であれば、リテーナ本体31内の収納した麺線群の外形が成形されているため、リテーナ蓋体41を分離させても麺塊としての一体性を保つことができる。尚、上述のフライ麺塊のフライ時間は、麺線の太さやフライする温度等により異なることは勿論である。
【0025】
リテーナ蓋体41を分離させる機構としては、本実施態様においては、図6に示すようにリテーナ蓋体41が接続されているコンベアチェーン42を誘導するレール6を設けることでリテーナ蓋体41のリテーナ本体31からの分離を実現している。尚、リテーナ蓋体41を分離させる機構としては、上述のレールによる方法以外にも、公知の種々の方式を用いることができる。
【0026】
但し、リテーナ蓋体41が分離すると、リテーナ本体31に収納されているフライ途中の食品5もフライ油中で浮力によりリテーナ本体31から遊離する場合がある。このため、上述のように蓋体41が分離してもフライ途中の収納食品5がリテーナ本体31から遊離しないように、フライ途中の食品5の所定部分を支持することができるように構成されている。本実施態様においては、前述の支持棒412がリテーナ蓋体41から突出して、フライ中の収納食品5の所定部分を支持するように構成されている。ここで、当該支持棒412の突出する機構を以下に詳しく説明する。
【0027】
図4(a)(b)に示すようにリテーナ蓋体41の分離に伴い当該支持棒412の突出がされるように、リテーナ蓋体41の各蓋部の上部に筒状体411が溶接され当該筒状体411を通じて支持棒412が挿通されている。当該支持棒412の上部にはコロが設けられており、下方においてはその先端部が蓋体41の下面から突出することが可能となるように構成されている。そして、図7に示すようにリテーナ蓋コンベアの搬送に伴い支持棒412の上部のコロをリテーナ蓋体41の上部に配置された固定カム7に従動させることにより、支持棒412を蓋体41から突出させるようにしている。
このように支持棒412が、リテーナ本体内のフライ中の収納食品5を支持することによって、当該収納食品がリテーナ本体より遊離するのを防止することができる。また、通常、収納食品の表面の一点を支持していればよいが、複数点で支持してもよいことはもちろんである。また、線状に支持してもよい。
【0028】
尚、フライ中の収納食品5の遊離を防ぐことができるのであれば、当該食品5の表面において支持棒412が支持する領域が小さい方が好ましい。
また、支持棒412は必ずしもフライ中の収納食品5の表面に直接的に接触して押圧している必要はなく、所定の間隔を有していてもよい。すなわち、支持棒とフライ中の収納食品との間に間隔があったとしても、フライ中の食品5がフライ油中で遊離しようとすると、支持棒412が遊離を阻止することができるよう実質的にリテーナ本体からの遊離を防止するように設けられていればよい。
【0029】
─食品のフライされる工程─
以下に、実際にフライ対象となる食品が本第一の実施態様のフライ処理装置によりフライされる工程について説明する。
本発明でフライの対象となる食品5は特に限定されるものではない。すなわち、リテーナ本体31を用いたフライ処理時にリテーナ本体31に収納された食品5がリテーナ本体31から遊離することと防止するため、蓋部を必要とするような食品であって、かつ、当該食品5がフライ処理の途中で全体として一体性を保つことができるようになる食品が対象となる。
【0030】
すなわち、上述のように複数の麺線が存在する即席麺のフライ麺塊が挙げられる。本発明においては上述のように、途中からリテーナ蓋を分離した状態でフライを続けるため、フライ開始から蓋体41の分離の時点でリテーナに収納されたフライ途中の食品5について、その表面の柔軟性が失われており、かつ、概ね一体となっていることが必要となる。
即席麺のフライ麺塊の場合には、フライ前においては柔軟性のある蒸煮等のα化処理された麺線が入り組んだ状態でリテーナ本体内に収納されている。このまま最初から、蓋をせずにフライをしてしまうと、当該麺線群の表面の所定部分を支持していたとしても、フライ油中で麺線群がリテーナ本体31より遊離して浮遊しようとするため、フライ中に麺線が突出したり形状が乱れたりしてフライ処理が困難となる。
【0031】
このため、フライの開始時、即ち、フライ対象となる麺線群がフライ油2に進入する際には蓋を被せておくことが必要になる。そして、フライを開始してから、一定時間フライを行うとフライ対象となる食品5の表面の柔軟性は失われるため、フライ食品5の外形がほぼ固定され成形される。
所定時間のフライによってフライ対象の食品5の外形が成形されてからであれば、蓋体41をリテーナ本体31より分離させても、当該食品5の一部を支持するようにしておくだけで、フライ処理を継続することができる。
【0032】
蓋の無い状態であると、フライ処理の効率は向上し、フライ処理が完了するまでのトータルのフライ時間を短縮することができることになる。
本発明のフライ対象となる食品は、即席麺のフライ麺塊の他、天ぷら、かき揚げ等の様々な食品に適用することができる。また、バッター等を用いなくともフライによって一体性を確保できる場合には、フライ前において分離している状態の食品をそのまま素揚げする場合も適用可能である。
【0033】
─その他の実施態様─
上記の第一の実施態様では、リテーナ蓋体41から支持棒412が突出するように設けられたタイプを示しているが、前記リテーナ蓋体41がリテーナ本体31から分離した後、フライ中の食品5がフライ油2中でリテーナ本体31より遊離しないようその所定部分を支持する機構については、図8に示すような第二の実施態様であってもよい。
本第二の実施態様では、リテーナ蓋体41について所定時間のフライの後、直ちにその蓋体5の全体を分離させる態様を示している。すなわち、短いサイクルでリテーナ蓋体コンベア4をスプロケット(43,44)を介して循環させている。そして、図9に示すようにリテーナ蓋体41の分離後のフライ中の収納食品5のリテーナ本体31からの遊離を抑えるために、リテーナ本体31の進行方向の所定間隔に渡って、線状の支持棒8をリテーナ本体部の上部に位置するように2本配置している。本線状の支持棒8の存在によって、フライ中の収納食品がリテーナ本体から遊離するのを防ぐことができる。
【0034】
尚、線状の支持棒8はリテーナ本体部がフライ油から退出する付近まで伸びており、リテーナ本体部がフライ油から退出するまで収納食品5のリテーナ本体31からの遊離を防止している。また、本第二の実施態様では、リテーナ蓋コンベア4の循環のサイクルを短くすることで蓋体41の枚数を減らすことができると共に、リテーナ蓋コンベア4の循環サイクルが短いため、リテーナ蓋コンベア4の循環に必要な消費エネルギーを低減させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9