特許第6041709号(P6041709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041709
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】金属層をエッチングする方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20161206BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20161206BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20161206BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20161206BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01L21/302 104C
   H01L21/88 M
   H01L21/88 D
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-43100(P2013-43100)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-170894(P2014-170894A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】西村 栄一
(72)【発明者】
【氏名】山下 扶美子
(72)【発明者】
【氏名】笹 小弓
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−350939(JP,A)
【文献】 特開2001−003186(JP,A)
【文献】 特開平04−240729(JP,A)
【文献】 特開平10−261715(JP,A)
【文献】 特開平08−293484(JP,A)
【文献】 特開平04−247619(JP,A)
【文献】 W. H. Lee et al. ,"Taper Etching of Copper Using an Inductively Coupled O2 Plasma and Hexafluoroacetylacetone",Journal of the Korean Physical Society,KR,Korean Physical Society,2002年,Vol. 40 No. 1,p.152-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28−21/288
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/3205−21/3213
H01L 21/329
H01L 21/44−21/445
H01L 21/461
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 23/532
H01L 29/40−29/49
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層をエッチングする方法であって、
炭素を含む保護膜を被処理体のマスクの表面に形成しつつ、イオンスパッタエッチングにより前記被処理体の金属層をエッチングする工程と、
前記金属層をエッチングする工程の後に、前記被処理体を酸素プラズマに晒す工程と、
前記被処理体を酸素プラズマに晒す工程の後に、前記被処理体をヘキサフルオロアセチルアセトンに晒す工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記金属層は、銅から構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被処理体の金属層をエッチングする工程では、
水素ガスを含有する第1のガスのプラズマを用いたイオンスパッタエッチングにより前記金属層をエッチングする工程と、
前記保護膜を前記被処理体の前記マスクの前記表面に形成するよう、水素ガス、及び前記被処理体に対する堆積性を有するガスを含有する第2のガスのプラズマを用いて前記被処理体を処理する工程と、
が交互に繰り返される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
堆積性を有する前記ガスはメタンガスである、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、金属層をエッチングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、相互接続ラインやコンタクトといった配線を形成するプロセスが行われる。このプロセスとしては、従来からダマシンプロセスと呼ばれるプロセスが用いられている。ダマシンプロセスでは、エッチングによって層間絶縁膜に溝や穴といった形状を形成し、形成した溝や穴に金属材料を埋め込む処理が行われる。しかしながら、近年の配線の微細化に伴い、ダマシンプロセスでは、微細な穴や溝に対する金属材料の埋込みが困難になってきているといった種々の問題が発生している。
【0003】
上述したダマシンプロセスの問題に対処するため、銅層を成膜した後に、当該銅層をエッチングすることで、微細な銅配線を形成するプロセスが提案されている。このようなプロセスについては、下記の非特許文献1に記載されている。非特許文献1に記載されたプロセスでは、水素ガスとアルゴンガスを含有する処理ガスのプラズマに銅層が曝されることにより、銅層がエッチングされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Fangyu Wu他、”Low−Temperature Etching of Cu by Hydorgen−Based Plasmas”、 ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES, 2010, Vol. 2、No.8、p.2175−2179.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載されたプロセスでは、水素ガスとアルゴンガスを含有する処理ガスのプラズマによるエッチングでは、銅配線の側面の垂直性を確保できないという問題がある。この問題は、銅層のエッチング時にマスクの角部が削れることに起因している。この問題を解決する手法としては、マスクに炭素を含む保護膜を形成しつつ、銅層をエッチングする方法が考えられる。
【0006】
上述したように、保護膜は、炭素を含むものであり、その除去には、酸素プラズマを用いた処理が一般的に想定される。しかしながら、本願発明者は、酸素プラズマを用いた処理では、保護膜の除去が不十分となることを見出している。
【0007】
そのため、金属層のエッチング時に形成される保護膜を除去することが可能な方法が必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面においては、金属層をエッチングする方法が提供される。この方法は、(a)炭素を含む保護膜を被処理体のマスクの表面に形成しつつ、イオンスパッタエッチングにより被処理体の金属層をエッチングする工程(工程(a))と、(b)金属層をエッチングする工程の後に、被処理体を酸素プラズマに晒す工程(工程(b))と、(c)被処理体を酸素プラズマに晒す工程の後に、被処理体をヘキサフルオロアセチルアセトンに晒す工程(工程(c))と、を含む。一形態においては、金属層は、銅から構成され得る。ここで、ヘキサフルオロアセチルアセトンとは、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン(以下、「hfacH」と称する)である。
【0009】
工程(a)において形成される保護膜は、炭素に加えて、金属層のエッチングによって発生する金属を含む。この保護膜を工程(b)において酸素プラズマに晒すことにより、保護膜中の炭素は除去されるが、依然として保護膜中に含まれる金属が、酸化された状態で残ることとなる。一側面に係る方法では、hfacHから生成されるヘキサフルオロアセチルアセトナート配位子(以下、「hfac」と称する)が上記金属と反応して錯体が生成され、当該錯体として除去される。したがって、本方法によれば、金属層のエッチング時に形成される保護膜を除去することが可能となる。なお、hfacとは、hfacHから水素(H)が離脱して当該hfacHが一価の陰イオンとなったものである。
【0010】
一形態においては、工程(a)において、水素ガスを含有する第1のガスのプラズマを用いたイオンスパッタエッチングにより金属層をエッチングする工程(工程(a1))と、水素ガス、及び被処理体に対する堆積性を有するガスを含有する第2のガスのプラズマを用いて被処理体を処理する工程(工程(a2))とが交互に繰り返される。一形態においては、堆積性を有するガスはメタンガスであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、金属層のエッチング時に形成される保護膜を除去することが可能とする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る金属層をエッチングする方法M1を示す流れ図である。
図2】一実施形態に係る処理システムを概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図4】バルブ群、流量制御器群、及びガスソース群の一例を詳細に示す図である。
図5】一実施形態に係る処理装置を示す図である。
図6】方法M1の各工程を説明するための図である。
図7】方法M1の各工程を説明するための図である。
図8】方法M1の各工程を説明するための図である。
図9】工程S5におけるCuOの除去を示す図である。
図10】工程S5におけるCuOの除去を示す図である。
図11】実験例の条件を示す表1である。
図12】実験例及び比較実験例の処理後のウエハWの断面の状態を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0014】
図1は、一実施形態に係る金属層をエッチングする方法を示す流れ図である。図1に示す方法M1では、炭素を含む保護膜を被処理体のマスクの表面に形成しつつ、イオンスパッタエッチングにより被処理体の金属層をエッチングする工程S3と、工程S3の後に、被処理体を酸素プラズマに晒す工程S4(アッシング工程)と、工程S4の後に、被処理体をヘキサフルオロアセチルアセトンに晒す工程S5とを含む。ここで、ヘキサフルオロアセチルアセトンとは、以下では「hfacH」と称する1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンである。なお、以下の説明においては、被処理体をウエハWと称し、金属層が銅層であるものとする。また、金属層は、銅層、即ち、銅(Cu)から構成された層に限定されるものではなく、他の金属から構成された層であってもよい。
【0015】
以下、図1に示す方法M1の実施に用いることができる処理システムについて説明する。図2は、一実施形態に係る処理システムを概略的に示す図である。図2に示す処理システム100は、載置台122a〜122d、収容容器124a〜124d、ローダモジュールLM、ロードロックチャンバLL1、LL2、プロセスモジュールPM1、PM2、PM3、及び、トランスファーチャンバ121を備えている。
【0016】
載置台122a〜122dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。これら載置台122a〜122dの上には、収容容器124a〜124dがそれぞれ載置されている。収容容器124a〜124d内には、ウエハWが収容されている。
【0017】
ローダモジュールLM内には、搬送ロボットRb1が設けられている。搬送ロボットRb1は、収容容器124a〜124dの何れかに収容されているウエハWを取り出して、当該ウエハWを、ロードロックチャンバLL1又はLL2に搬送する。
【0018】
ロードロックチャンバLL1及びLL2は、ローダモジュールLMの別の一縁に沿って設けられており、予備減圧室を構成している。ロードロックチャンバLL1及びLL2は、トランスファーチャンバ121にゲートバルブを介してそれぞれ接続されている。
【0019】
トランスファーチャンバ121は、減圧可能なチャンバであり、当該チャンバ内には別の搬送ロボットRb2が設けられている。トランスファーチャンバ121には、プロセスモジュールPM1〜PM2が対応のゲートバルブを介してそれぞれ接続されている。搬送ロボットRb2は、ロードロックチャンバLL1又はLL2からウエハWを取り出して、プロセスモジュールPM1、及びPM2に順に搬送する。処理システム100のプロセスモジュールPM1は、プラズマ処理装置であり、以下に説明する工程S1b、S1c、S2、S3、及びS4を、このプラズマ処理装置において実施することができる。また、処理システム100のプロセスモジュールPM2は、以下に説明する工程S5を実施することができる処理装置である。
【0020】
図3は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図3には、プラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。図3に示すプラズマ処理装置10は、処理システム100のプロセスモジュールPM1として用いられ得る。
【0021】
プラズマ処理装置10は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置であり、略円筒状の処理容器12を備えている。処理容器12は、例えば、その表面は陽極酸化処理されたアルミニウムから構成されている。この処理容器12は保安接地されている。
【0022】
処理容器12の底部上には、絶縁材料から構成された円筒上の支持部14が配置されている。この支持部14は、その内壁面において、下部電極16を支持している。下部電極16は、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状を有している。
【0023】
下部電極16には、整合器MU1を介して第1の高周波電源HFSが接続されている。第1の高周波電源HFSは、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。整合器MU1は、第1の高周波電源HFSの出力インピーダンスと負荷側(下部電極16側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0024】
また、下部電極16には、整合器MU2を介して第2の高周波電源LFSが接続されている。第2の高周波電源LFSは、ウエハWにイオンを引き込むための高周波電力(高周波バイアス電力)を発生して、当該高周波バイアス電力を下部電極16に供給する。高周波バイアス電力の周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であり、一例においては3MHzである。整合器MU2は、第2の高周波電源LFSの出力インピーダンスと負荷側(下部電極16側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0025】
下部電極16上には、静電チャック18が設けられている。静電チャック18は、下部電極16と共にウエハWを支持するための載置台を構成している。静電チャック18は、導電膜である電極20を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有している。電極20には、直流電源22が電気的に接続されている。この静電チャック18は、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着保持することができる。
【0026】
下部電極16の上面であって、静電チャック18の周囲には、フォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、被エッチング層の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、シリコン、又は石英から構成され得る。
【0027】
下部電極16の内部には、冷媒室24が設けられている。冷媒室24には、外部に設けられたチラーユニットから配管26a,26bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給される。このように循環される冷媒の温度を制御することにより、静電チャック18上に載置されたウエハWの温度が制御される。
【0028】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0029】
また、処理容器12内には、上部電極30が設けられている。この上部電極30は、下部電極16の上方において、当該下部電極16と対向配置されており、下部電極16と上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。これら上部電極30と下部電極16との間には、ウエハWにプラズマエッチングを行うための処理空間Sが画成されている。
【0030】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34及び電極支持体36を含み得る。電極板34は、処理空間Sに面しており、複数のガス吐出孔34aを画成している。この電極板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から構成され得る。
【0031】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36にはガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0032】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介してガスソース群40が接続されている。図4は、バルブ群、流量制御器群、及びガスソース群の一例を詳細に示す図である。図4に示すように、ガスソース群40は、複数のガスソース401〜406を含んでいる。ガスソース401〜406はそれぞれ、Hガス、Arガス、CHガス、Oガス、CFガス、SiClガスのソースである。流量制御器群44は、複数の流量制御器441〜446を含んでいる。流量制御器441〜446はそれぞれ、ガスソース401〜406に接続されている。これら流量制御器441〜446の各々は、マスフローコントローラであり得る。バルブ群42は、複数のバルブ421〜426を含んでいる。バルブ421〜426はそれぞれ、流量制御器441〜446に接続されている。
【0033】
プラズマ処理装置10では、ガスソース401〜406のうち選択されたガスソースからのガスが、対応の流量制御器及びバルブを介して、流量制御された状態で、ガス供給管38に供給される。ガス供給管38に供給されたガスは、ガス拡散室36aに至り、ガス通流孔36b及びガス吐出孔34aを介して処理空間Sに吐出される。
【0034】
また、図3に示すように、プラズマ処理装置10は、接地導体12aを更に備え得る。接地導体12aは、略円筒状の接地導体であり、処理容器12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
【0035】
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。また、デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0036】
処理容器12の底部側においては、支持部14と処理容器12の内壁との間に排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方において処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0037】
また、処理容器12の内壁には、導電性部材(GNDブロック)56が設けられている。導電性部材56は、高さ方向においてウエハWと略同じ高さに位置するように、処理容器12の内壁に取り付けられている。この導電性部材56は、グランドにDC的に接続されており、異常放電防止効果を発揮する。
【0038】
また、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。この制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。この制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示すことができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置10の各構成部に処理を実行させるためのプログラム、即ち、処理レシピが格納される。
【0039】
このプラズマ処理装置10では、ウエハWを処理するために、ガスソース401〜406のうち選択された一以上のガスソースから処理容器12内にガスが供給される。そして、下部電極16にプラズマ生成用の高周波電力が与えられることにより、下部電極16と上部電極30との間に高周波電界が発生する。この高周波電界により、処理空間S内に供給されたガスのプラズマが生成される。そして、このように発生するガスのプラズマにより、ウエハWの被エッチング層に対するエッチングといった処理が行われる。また、下部電極16に高周波バイアス電力が与えられることによりイオンがウエハWに引き込まれる。これにより、ウエハWの被エッチング層のエッチングが促進される。
【0040】
図5は、一実施形態に係る処理装置を示す図である。図5に示す処理装置60は、処理システム100のプロセスモジュールPM2として用いることができる。処理装置60は、金属製(例えばアルミニウム製)の筒状(例えば円筒状)に形成された処理容器62を備えている。この処理容器62上端開口は、蓋体66によって閉じられている。処理容器62は、その内部に空間を画成している。また、処理容器62の側壁部にはウエハ搬出入口78が形成されており、当該ウエハ搬出入口78にはゲートバルブ80が設けられている。この処理装置60では、ウエハ搬出入口78を介して、ウエハWの搬送が行われる。
【0041】
処理容器62の底部には、ウエハWを載置するための載置台64が設けられている。載置台64は、アルミニウム等から構成され得るものであり、略柱状(例えば円柱状)に構成される。なお、図示はしないが、載置台64にはウエハWをクーロン力により吸着保持する静電チャック、ヒータや冷媒流路などの温度調整機構等、必要に応じて様々な機能を設けることができる。
【0042】
処理装置60は、更に、ソース68、及び、ガスソース70を備えている。ソース68は、hfacHのソースであり、マスフローコントローラといった流量制御器68a及びバルブ68bを介して、処理容器62の内部空間に連通されている。また、ガスソース70は、Nガスのソースであり、マスフローコントローラといった流量制御器70a及びバルブ70bを介して、処理容器62の内部空間に連通されている。ソース68及びガスソース70から供給されるhfacH及びNガスは、処理容器62に設けられたガス吐出孔72から、処理容器62内に供給される。なお、処理装置60は、Nガスに代えて又はこれに加えてOガスを処理容器62内に供給してもよく、また、キャリアガスとしてArガスを処理容器62内に供給してもよい。
【0043】
処理容器62の底部には、当該処理容器62内の雰囲気を排出する排気部76が排気管74を介して接続されている。排気部76は例えば真空ポンプを有し、処理容器62内を所定の圧力まで減圧し得るようになっている。
【0044】
処理装置60には、制御部C60が接続されていてもよい。制御部C60は、例えば、処理装置60の載置台64の温度制御機構、流量制御器、バルブ、及び、排気部等に制御信号を送出して、これら処理装置60の構成要素を制御するようになっている。
【0045】
この処理装置60では、処理容器62内に収容され載置台64上に載置されたウエハWに対してhfacHを供給することができ、これにより、ウエハWの処理を行うことができる。
【0046】
再び図1を参照する。以下、上述した処理システム100を用いて実施し得る方法M1について、図1に加えて図6図7及び図8を参照して、より詳細に説明する。なお、図6図8においては、方法M1の各工程中又は各工程後のウエハWの一部分の断面が示されている。
【0047】
図1に示すように、方法M1では、マスクMK2を作成する工程S1が行われる。このマスクMK2は、ウエハWの銅層をエッチングするためのマスクMK1を作成する処理に用いられる。
【0048】
工程S1は、工程S1a、工程S1b、及び工程S1cを含んでいる。工程S1aでは、レジストマスクの作成が行われる。ここで、図6の(a)に示すように、ウエハWは、第1絶縁膜IF1、第2絶縁膜IF2、銅層MTL、マスク層ML1、底層BL、及び、中間層IMLを有している。第1絶縁膜IF1は、層間絶縁膜であり、例えば、SiC、SiON、SiCNといった絶縁材料から構成され得る。第2絶縁膜IF2は、第1絶縁膜IF1上に設けられおり、例えば、SiCから構成される。第2絶縁膜IF2の上には、銅層MTLが設けられている。銅層MTL上には、マスク層ML1が設けられている。マスク層ML1は、銅層MTLのエッチング用のマスクMK1となる層であり、例えば、窒化シリコン又は酸化シリコンから構成される。マスク層ML1上には、底層BLが設けられている。底層BLは、後にマスク層ML1のエッチング用のマスクMK2となる層であり、例えば、アモルファスカーボンといった有機膜から構成される。底層BL上には、中間層IMLが設けられている。中間層IMLは、SOG(Spin On Glass)又は反射防止膜であり得る。中間層IML上には、工程S1aにおいて作成されるレジストマスクRMが設けられる。レジストマスクRMは、ArFレジストといったレジスト材料に対するフォトリソグラフィ技術により作成される。
【0049】
次いで、方法M1では、図6の(a)に示すウエハWがプラズマ処理装置10(プロセスモジュールPM1)の静電チャック18上に載置され、図1に示すように工程S1bが行われる。この工程S1bでは、中間層IMLのエッチングが行われる。中間層IMLのエッチングでは、フルオロカーボン系ガス、例えば、ガスソース405から供給されるCFガスのプラズマが生成され、当該プラズマにウエハWが晒される。この工程S1bにより、図6の(b)に示すように、レジストマスクRMのパターンが中間層IMLに転写される。
【0050】
次いで、方法M1では、図1に示すように工程S1cが行われる。この工程S1cでは、底層BLのエッチングが行われる。底層BLのエッチングでは、ガスソース404から供給されるOガスのプラズマが生成され、当該プラズマに図6の(b)に示すウエハWが晒される。なお、工程S1cでは、ガスソース406からSiClガスが処理容器12内に供給されてもよい。この工程S1cにより、図6の(c)に示すように、中間層IMLのパターンが、底層BLに転写され、これによって、底層BLから形成されたマスクMK2が作成される。なお、この工程では、酸素ガスのプラズマが用いられているので、レジストマスクRMは消失する。
【0051】
次いで、方法M1では、図1に示すように、マスクMK1を作成する工程S2が行われる。工程S2は、工程S2a及び工程S2bを含んでいる。工程S2aでは、マスク層ML1のエッチングが行われる。マスク層ML1のエッチングでは、フルオロカーボン系ガス、例えば、ガスソース405から供給されるCFガスのプラズマが生成され、当該プラズマに図6の(c)に示すウエハWが晒される。なお、工程S2aでは、ガスソース402からArガスが処理容器12内に供給されてもよい。この工程S2aにより、図6の(d)に示すように、マスクMK2のパターンが、マスク層ML1に転写され、これによって、マスク層ML1から形成されたマスクMK1が作成される。
【0052】
次いで、方法M1では、図1に示すように、工程S2bが行われる。工程S2bでは、アッシング処理が行われ、マスクMK2が除去される。アッシング処理では、ガスソース404から供給されるOガスのプラズマが生成され、当該プラズマに図6の(d)に示すウエハWが曝される。この工程S2bにより、ウエハWは、図6の(e)に示す状態となる。
【0053】
次いで、方法M1では、図1に示すように、工程S3が実施される。工程S3は、工程S3a、S3b、S3c及びS3dを含んでいる。工程S3aでは、ガスソース401から供給される水素ガス(Hガス)が第1のガスに含められて処理容器12内に供給される。そして、第1のガスのプラズマが生成される。なお、第1のガスには、ガスソース402のArガスが含められてもよい。この工程S3aでは、図7の(a)に示すように、水素イオンにより銅層MTLがエッチングされる。また、第1のガスにArガスが含められている場合には、Arイオンによっても銅層MTLがエッチングされる。特に、下部電極16に高周波バイアス電力が与えられると、水素イオン及びArイオンが銅層MTLに引き込まれて当該銅層MTLの表面に衝突する。このような所謂スパッタ効果により、銅層MTLのエッチングが促進される。なお、図7及び図8において、円で囲まれた「H」が水素イオンを示しており、円で囲まれた「Ar」がArイオンを示している。
【0054】
続く工程S3bでは、ガスソース401及びガスソース403からそれぞれ供給される水素ガス(Hガス)、及び堆積性ガス、例えばCHガスを含有する第2のガスが、処理容器12内に供給される。そして、第2のガスのプラズマが生成される。この工程S3bでは、図7の(b)に示すように、ウエハWの表面上にCHガス、即ちメタンに由来する保護膜PFが堆積する。この膜PFは、炭素を含有する膜であり、例えば、ポリエチレンを含む。また、この膜PFは、銅層MTLのエッチングに由来する銅(Cu)も含むものとなる。
【0055】
そして、方法M1では、更に工程S3aが行われることにより、図7の(c)に示すように、銅層MTLが更にエッチングされ、その後に更に工程S3bが行われる。方法M1では、図1に示すように、所定サイクル数の工程S3a及び工程S3bの繰り返しが行われたか否かが、判定される(図1の参照符号S3c)。工程S3a及び工程S3bの繰り返しの回数が所定サイクル数に満たないときには、工程S3a及び工程S3bが更に行われる。一方、工程S3a及び工程S3bの繰り返しの回数が所定サイクル数行われている場合には、工程S3dが行われる。工程S3dの処理は、工程S3aと同様である。この工程S3aにより、図8の(a)に示すように、銅層MTLが更にエッチングされる。
【0056】
ここまでに説明した工程によれば、膜PFがマスクMK1の表面に堆積することにより、工程S3のエッチング中にマスクMK1を保護する。したがって、マスクMK1の削れ、特に、角部が過剰に削れることを抑制することができる。その結果、エッチング後の銅層の側面の垂直性が向上される。また、膜PFによって銅層MTLの下地が保護されるので、工程S3による絶縁膜IF2の損傷が抑制される。さらに、第2のガスにはCHガスに加えてHガスが含まれているので、CHガスの流量とHガスの流量を相対的に調整することにより、過剰な膜PFの堆積を抑制することも可能である。
【0057】
次いで、方法M1では、工程S4において、膜PFを除去するためのアッシング処理が行われる。アッシング処理では、ガスソース404から供給されるOガスのプラズマが生成され、当該プラズマにウエハWが曝される。この工程S4により、ウエハWは、図8の(b)に示す状態になる。即ち、工程S4では、膜PF中の炭素が酸素プラズマによるアッシング処理によって除去され、且つ、膜PF中の銅が酸素と結合することにより、酸化銅を含む膜RDが形成される。より具体的には、下記の反応により、CuO及びCuOを含む膜RDが形成される。
4Cu+O→2Cu
2Cu+O→2CuO
【0058】
以上説明した工程がプラズマ処理装置10(プロセスモジュールPM1)で実施された後、方法M1では、ウエハWが処理装置60(プロセスモジュールPM2)に搬送される。そして、方法M1では、工程S5において、ウエハWがhfacHに晒される。工程S5では、例えば、10〜200T(1333〜26660Pa)の圧力、及び、150℃〜300℃の温度の環境下において、ウエハWがhfacHに晒される。この工程S5では、膜RD中の酸化銅に含まれるCuをhfacによって錯化し、生成された錯体を除去することによって、膜RDを除去する。なお、「hfac」とは、hfacHから水素(H)が離脱して当該hfacHが一価の陰イオンとなることにより生成されるヘキサフルオロアセチルアセトナート配位子である。
【0059】
ここで、図9及び図10を参照する。図9は工程S5におけるCuOの除去を示す図であり、図10は、工程S5におけるCuOの除去を示す図である。工程S5においては、図9の(a)及び図10の(a)に示すようにhfacH(図中、参照符号200で示す)が膜RDに対して供給される。そして、図9の(b)に示すように、2分子のhfacHそれぞれからHが離脱することにより生成される二つのイオン、即ち、二つのhfacと膜RDを構成するCuO中のCuとに由来する錯体300が生成され、また、離脱した二つのHとCuO中のOが結合することによりHOが生成される。これら錯体300及びHOが排気される結果、膜RDが除去される。なお、CuOとhfacHとの反応は、下記の反応式によって表わされる。
CuO+2(hfacH)→Cu(hfac)+H
【0060】
また、図10の(b)に示すように、hfacHからHが離脱することにより生成されるイオン、即ち、hfacと膜RDを構成するCuO中のCuとが結合し(図中、参照符号210で示す)、CuO中の他方のCuにはOHが結合された状態となる(図中、参照符号220で示す)。そして、図10の(b)に示すように、別のhfacHからHが離脱することにより生成されるイオン、即ち、hfacと参照符号210で示す化合物と反応することによって、図10の(c)に示すように、錯体300が形成される。また、別のhfacHから離脱したHと参照符号220で示す化合物中のOHとが結合してHOが形成される。これら錯体300及びHOが排気される結果、膜RDが除去される。なお、CuOとhfacHとの反応は、下記の反応式によって表わされる。
CuO+2(hfacH)→Cu+Cu(hfac)+H
【0061】
以上説明した方法M1によれば、エッチングされた銅層の側面の垂直性を確保することが可能であり、更に、膜PF中の炭素、及び、当該保護膜PFのアッシング後に形成される膜RDを除去することが可能である。
【0062】
以下、上述した方法M1の評価のために行った実験例について説明する。
【0063】
実験例においては、処理システム100を用いて方法M1を実施した。この実験例では、ウエハWとして、図6の(a)に示すウエハWを用いた。このウエハWでは、第2絶縁膜IF2は5nm厚のSiC層であり、銅層MTLは35nmの厚みを有し、マスク層ML1は10nm厚のSiN層であり、底層BLは80nmのアモルファスカーボン膜であり、中間層IMLは13.5nm厚のARC膜であり、レジストマスクRMはArFレジストから作成されたレジストマスクであった。
【0064】
図11に実験例の条件を示す表1を示す。実験例では、表1に示す条件で方法M1の全工程を実施した。一方、比較実験例では、工程S4までの処理を行い、工程S5は実施しなかった。なお、表1において、「HF」は、高周波電源HFSが発生する周波数60MHzの高周波電力のパワーであり、「LF」は、高周波電源LFSが発生する周波数40kHzの高周波バイアス電力のパワーである。
【0065】
図11に、実験例及び比較実験例の処理後のウエハWの断面を示す。図12の(a)及び(b)には比較実験例の処理後のウエハWのSEM画像及びその線図が示されており、図12の(c)及び(d)には、実験例の処理後のウエハWのSEM画像及びその線図が示されている。図12の(a)及び(b)を参照すれば明らかなように、工程S4、即ち、アッシングのみでは、マスクMK1及び銅層MTLの周囲に膜RDが残っていること、即ち、酸化銅が残存することが分かる。一方、図12の(c)及び(d)を参照すれば明らかなように、実験例の結果、工程S4後に工程S5を実施することによって、マスクMK1及び銅層MTLの周囲の膜RD、即ち、酸化銅が除去されることが確認された。
【符号の説明】
【0066】
100…処理システム、PM1…プロセスモジュール、PM2…プロセスモジュール、10…プラズマ処理装置(プロセスモジュールPM1)、12…処理容器、16…下部電極、18…静電チャック、30…上部電極、40…ガスソース群、50…排気装置、HFS…高周波電源、LFS…高周波電源、60…処理装置(プロセスモジュールPM2)、62…処理容器、64…載置台、68…ソース(hfacHのソース)、70…ガスソース、W…ウエハ、MK1…マスク、MTL…銅層(金属層)、PF…保護膜、RD…膜(酸化銅)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12