特許第6041883号(P6041883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041883感光性樹脂組成物、硬化物及びその製造方法、樹脂パターン製造方法、硬化膜、液晶表示装置、有機EL表示装置、並びに、タッチパネル表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041883
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物及びその製造方法、樹脂パターン製造方法、硬化膜、液晶表示装置、有機EL表示装置、並びに、タッチパネル表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20161206BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20161206BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161206BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20161206BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/039 601
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   H05B33/02
【請求項の数】17
【全頁数】93
(21)【出願番号】特願2014-533072(P2014-533072)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2013073116
(87)【国際公開番号】WO2014034768
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-192614(P2012-192614)
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-130196(P2013-130196)
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101719
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 成一
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−510046(JP,A)
【文献】 特開2005−292613(JP,A)
【文献】 特開2013−080192(JP,A)
【文献】 特開2013−083844(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/088396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体、
(成分B)2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物、
(成分C)光酸発生剤、
(成分D)金属酸化物粒子、及び、
(成分E)溶剤、を含有し、
成分Bが、1,3位に窒素原子を少なくとも有する複素環構造を有する化合物であることを特徴とする
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体、
(成分B)2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物、
(成分C)光酸発生剤、
(成分D)金属酸化物粒子、及び、
(成分E)溶剤、を含有し、
成分Bが、メルカプト基又はチオキソ基を有することを特徴とする
感光性樹脂組成物。
【請求項3】
成分Bが、1,3位に窒素原子を少なくとも有する5員又は6員複素環構造を有する化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
成分Bの複素環の環員が、炭素原子及び窒素原子よりなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
成分Bが、下記式(1)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、R1とR2とが結合して二価の有機基であってもよく、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、L1は5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、R3又はR4とL1とが結合して環を形成していてもよく、また、点線の結合は、点線で記載した含窒素二重結合が存在する場合は、R2及びR4が存在しないことを表し、点線で記載した含窒素二重結合が存在しない場合は、R2及びR4が存在することを表す。)
【請求項6】
成分Bが、下記式(1−1)又は式(1−2)で表される化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

(式(1−1)及び式(1−2)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、R6とL2とが結合して環を形成していてもよく、R7又はR8とL3とが結合して環を形成していてもよい。)
【請求項7】
成分Bの分子量が、1,000以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
成分Dの含有量が、組成物の全固形分に対し、30質量%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
(成分F)架橋剤を更に含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(成分G)酸化防止剤を更に含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
少なくとも工程(a)〜(c)をこの順に含む硬化物の製造方法。
(a)請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(b)塗布された樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程
(c)溶剤が除去された樹脂組成物を熱処理する熱処理工程
【請求項12】
少なくとも工程(1)〜(5)をこの順に含む樹脂パターン製造方法。
(1)請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(2)塗布された樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程
(3)溶剤が除去された樹脂組成物を活性光線によりパターン状に露光する露光工程
(4)露光された樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程
(5)現像された樹脂組成物を熱処理する熱処理工程
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項14】
層間絶縁膜である、請求項13に記載の硬化膜。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の硬化膜を有する液晶表示装置。
【請求項16】
請求項13又は14に記載の硬化膜を有する有機EL表示装置。
【請求項17】
請求項13又は14に記載の硬化膜を有するタッチパネル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物(以下、単に、「本発明の組成物」ということがある。)に関する。また、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物及びその製造方法、上記感光性樹脂組成物を用いた樹脂パターン製造方法、上記感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、並びに、上記硬化膜を用いた各種画像表示装置に関する。
更に詳しくは、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル表示装置、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の平坦化膜、保護膜や層間絶縁膜の形成に好適な、感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子や液晶表示装置の発達により、有機素材(樹脂)によりマイクロレンズ、光導波路、反射防止膜などの光学部材を作製することが広く行われるようになっている。
これら光学部材は、高屈折率にするために、酸化ジルコニウムなどの粒子を添加することが検討されている。
また、従来の組成物としては、特許文献1及び2に記載の組成物が知られている。
特許文献1には、少なくとも1つの硫黄原子を含有する複素環化合物と、金属微粒子とを含む金属微粒子含有組成物が開示されている。
特許文献2には、〔A〕分子中に2個以上のエポキシ基を含有する重合体、〔B〕カチオン重合性化合物(但し、該〔A〕成分を除く。)、並びに〔C〕チアゾール類、チアゾリン類、スルフェンアミド類、ジチオカルバメート類およびチラウム類の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1844号公報
【特許文献2】特開2005−17321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ヘイズが小さく、高屈折率である硬化物が得られ、解像性に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<12>〜<15>、<17>、<18>又は<19>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<11>及び<16>と共に以下に記載する。
<1>(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体、(成分B)2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物、(成分C)光酸発生剤、(成分D)金属酸化物粒子、及び、(成分E)溶剤、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
<2>成分Bが、1,3位に窒素原子を少なくとも有する複素環構造を有する化合物である、上記<1>に記載の感光性樹脂組成物、
<3>成分Bが、1,3位に窒素原子を少なくとも有する5員又は6員複素環構造を有する化合物である、上記<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物、
<4>成分Bの複素環の環員が、炭素原子及び窒素原子よりなる、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
<5>成分Bが、下記式(1)で表される化合物である、上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
【0006】
【化1】
(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、R1とR2とが結合して二価の有機基であってもよく、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、L1は5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、R3又はR4とL1とが結合して環を形成していてもよく、また、点線の結合は、点線で記載した含窒素二重結合が存在する場合は、R2及びR4が存在しないことを表し、点線で記載した含窒素二重結合が存在しない場合は、R2及びR4が存在することを表す。)
【0007】
<6>成分Bが、メルカプト基又はチオキソ基を有する、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
<7>成分Bが、下記式(1−1)又は式(1−2)で表される化合物である、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
【0008】
【化2】
(式(1−1)及び式(1−2)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、R6とL2とが結合して環を形成していてもよく、R7又はR8とL3とが結合して環を形成していてもよい。)
【0009】
<8>成分Bの分子量が、1,000以下である、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
<9>成分Dの含有量が、組成物の全固形分に対し、30質量%以上である、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
<10>(成分F)架橋剤を更に含む、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
<11>(成分G)酸化防止剤を更に含む、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物、
<12>少なくとも工程(a)〜(c)をこの順に含む硬化物の製造方法、
(a)上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(b)塗布された樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程
(c)溶剤が除去された樹脂組成物を熱処理する熱処理工程
<13>少なくとも工程(1)〜(5)をこの順に含む樹脂パターン製造方法、
(1)上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(2)塗布された樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程
(3)溶剤が除去された樹脂組成物を活性光線によりパターン状に露光する露光工程
(4)露光された樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程
(5)現像された樹脂組成物を熱処理する熱処理工程
<14>上記<12>に記載の硬化物の製造方法、又は、上記<13>に記載の樹脂パターン製造方法により得られた硬化物、
<15>上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、
<16>層間絶縁膜である、上記<15>に記載の硬化膜、
<17>上記<15>又は<16>に記載の硬化膜を有する液晶表示装置、
<18>上記<15>又は<16>に記載の硬化膜を有する有機EL表示装置、
<19>上記<15>又は<16>に記載の硬化膜を有するタッチパネル表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヘイズが小さく、高屈折率である硬化物が得られ、解像性に優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液晶表示装置の一例の構成概念図を示す。液晶表示装置におけるアクティブマトリックス基板の模式的断面図を示し、層間絶縁膜である硬化膜17を有している。
図2】有機EL表示装置の一例の構成概念図を示す。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
図3】静電容量型入力装置の構成を示す断面図である。
図4】前面板の一例を示す説明図である。
図5】第一の透明電極パターン及び第二の透明電極パターンの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
また、本発明において、「(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体」等を、単に「成分A」等ともいい、「(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位」等を、単に「構成単位(a1)」等ともいう。
更に、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい。
【0013】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体、(成分B)2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物、(成分C)光酸発生剤、(成分D)金属酸化物粒子、及び、(成分E)溶剤、を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型レジスト組成物として好適に用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物は、熱で硬化する性質を有する樹脂組成物であることが好ましい。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物であることが好ましく、化学増幅型のポジ型感光性樹脂組成物(化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物)であることがより好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、活性光線に感応する光酸発生剤として1,2−キノンジアジド化合物を含まない方が好ましい。1,2−キノンジアジド化合物は、逐次型光化学反応によりカルボキシル基を生成するが、その量子収率は必ず1以下である。
これに対して、本発明で使用する(成分C)光酸発生剤は、活性光線に感応して生成される酸が、成分A中の保護された酸基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。
【0015】
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、マイクロレンズ、光導波路、反射防止膜、LED用封止材及びLED用チップコート材等の光学部材用樹脂組成物、又は、タッチパネルに使用される配線電極の視認性低減用樹脂組成物であることが好ましい。なお、タッチパネルに使用される配線電極の視認性低減用樹脂組成物とは、タッチパネルに使用される配線電極の視認性を低減する、すなわち、配線電極を見えにくくする部材用組成物であり、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)電極間の層間絶縁膜などが挙げられ、本発明の感光性樹脂組成物は、当該用途に好適に使用することができる。
【0016】
タッチパネル分野では、ブリッジ型のITO配線における絶縁層(フォトインシュレーター、PI)見えや酸化インジウムスズ(ITO)に起因する配線見えが問題であった。
これらは、ITOと絶縁層との屈折率の差、又は、ITOとその周囲のガラス基板やオーバーコート層などとの屈折率の差により、光の反射率に差が生じ、透明なITO及び/又は絶縁層が視認できてしまう現象である。例えば、ITOの屈折率は約1.9程度と大きく、ガラス基板の屈折率は1.5程度であるため、屈折率の差が生じ、視認できてしまうと推定される。
高屈折率の材料として金属酸化物粒子を用いることが知られているが、屈折率を上げるために金属酸化物粒子を絶縁膜などの組成物に充填、特には、40質量%以上の高充填にして塗布すると、金属酸化物粒子が多く、粒子の凝集を分散剤だけでは防ぐことができない、いわゆる塗布時の金属酸化物粒子の凝集が生じることを本発明者等は見出した。これは、分散剤を増量することで多少の良化はするが、上記絶縁層の膜厚におけるヘイズの値として、1%以下のヘイズを目的にする用途には達成できていない。
本発明者等は詳細な検討の結果、成分A〜成分Eを含有する感光性樹脂組成物とすることにより、(成分D)金属酸化物粒子の分散性を改良し、透明性に優れ(ヘイズが小さく)、高屈折率であり、解像性に優れた感光性樹脂組成物が得られることを見いだした。
以下、本発明の組成物について詳細に説明する。
【0017】
(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分A)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体を含有する。
なお、本発明において、「酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位」を「(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位」ともいう。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、下記(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす重合体を含む重合体成分を含有することが好ましい。
(1)(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位及び(a2)架橋性基を有する構成単位を有する重合体(成分Aに該当)
(2)(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体(成分Aに該当)、及び、(成分A’)(a2)架橋性基を有する構成単位を有する重合体
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化後における透明性(ヘイズ)及び未露光部の残膜率の観点からは、上記(1)を満たす成分を含むことが好ましい。
一方、分子設計の自由度の観点からは、本発明の感光性樹脂組成物は、上記(2)を満たす成分を含むことが好ましい。
なお、上記(1)を満たす成分を含有する場合であっても、更に、(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有するアクリル樹脂及び/又は(a2)架橋性基を有する構成単位を有するアクリル樹脂を含有していてもよい。
また、上記(2)を満たす成分を含有する場合であっても、(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位及び(a2)架橋性基を有する構成単位を有するポリマーに該当するものを少なくとも含有する場合は、上記(1)を満たす成分を含有する場合に該当するものとする。
【0019】
成分Aは、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位を含む重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンに由来する構成単位や、ビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
なお、「(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位」を「アクリル系構成単位」ともいう。また、「(メタ)アクリル酸」は、「メタクリル酸及び/又はアクリル酸」を意味するものとする。
【0020】
<構成単位(a1)>
成分Aは、(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を少なくとも有する重合体である。成分Aが構成単位(a1)を有することにより、極めて高感度な感光性樹脂組成物とすることができる。
本発明における「酸基が酸分解性基で保護された基」は、酸基及び酸分解性基として公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な酸基としては、カルボキシル基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。また、酸分解性基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、後述する式(a1−10)等で表される基のエステル構造、テトラヒドロピラニルエステル基、又は、テトラヒドロフラニルエステル基等のアセタール系官能基)や酸により比較的分解し難い基(例えば、tert−ブチルエステル基等の第三級アルキル基、tert−ブチルカーボネート基等の第三級アルキルカーボネート基)を用いることができる。
【0021】
(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位は、カルボキシル基が酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(「酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位」ともいう。)、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(「酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位」ともいう。)であることが好ましい。
以下、酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)と、酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)について、順にそれぞれ説明する。
【0022】
<<(a1−1)酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位>>
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)は、カルボキシル基を有する構成単位のカルボキシル基が、以下で詳細に説明する酸分解性基によって保護された保護カルボキシル基を有する構成単位である。
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)に用いることができる上記カルボキシル基を有する構成単位としては、特に制限はなく公知の構成単位を用いることができる。例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位(a1−1−1)や、エチレン性不飽和基と酸無水物由来の構造とを共に有する構成単位(a1−1−2)が挙げられる。
以下、上記カルボキシル基を有する構成単位として用いられる(a1−1−1)分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位と、(a1−1−2)エチレン性不飽和基と酸無水物由来の構造とを共に有する構成単位について、それぞれ順に説明する。
【0023】
<<<(a1−1−1)分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位>>>
上記分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位(a1−1−1)として本発明で用いられる不飽和カルボン酸としては以下に挙げるようなものが用いられる。すなわち、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロロアクリル酸、けい皮酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。また、カルボキシル基を有する構成単位を得るために用いられる不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物であってもよい。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。また、不飽和多価カルボン酸は、多価カルボン酸のモノ(2−メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)などが挙げられる。更に、不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。また、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等も用いることができる。
中でも、現像性の観点から、上記分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位(a1−1−1)を形成するためには、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、又は、不飽和多価カルボン酸の無水物等を用いることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、を用いることがより好ましい。
上記分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸等に由来する構成単位(a1−1−1)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0024】
<<<(a1−1−2)エチレン性不飽和基と酸無水物由来の構造とを共に有する構成単位>>>
エチレン性不飽和基と酸無水物由来の構造とを共に有する構成単位(a1−1−2)は、エチレン性不飽和基を有する構成単位中に存在する水酸基と酸無水物とを反応させて得られたモノマーに由来する単位であることが好ましい。
上記酸無水物としては、公知のものが使用でき、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物などの酸無水物が挙げられる。これらの中では、現像性の観点から、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、又は、無水コハク酸が好ましい。
上記酸無水物の水酸基に対する反応率は、現像性の観点から、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%である。
【0025】
−構成単位(a1−1)に用いることができる酸分解性基−
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)に用いることができる上記酸分解性基としては上述の酸分解性基を用いることができる。
これらの酸分解性基の中でもカルボキシル基がアセタールの形で保護された保護カルボキシル基であることが、感光性樹脂組成物の基本物性、特に感度やパターン形状、コンタクトホールの形成性、感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。更に酸分解性基の中でもカルボキシル基が下記式(a1−10)で表されるアセタールの形で保護された保護カルボキシル基であることが、感度の観点からより好ましい。なお、カルボキシル基が下記式(a1−10)で表されるアセタールの形で保護された保護カルボキシル基である場合、保護カルボキシル基の全体としては、−(C=O)−O−CR101102(OR103)の構造となっている。
【0026】
【化3】
(式(a1−10)中、R101及びR102はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、ただし、R101とR102とが共に水素原子の場合を除く。R103は、アルキル基を表す。R101又はR102と、R103とが連結して環状エーテルを形成してもよい。)
【0027】
上記式(a1−10)中、R101〜R103はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、上記アルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。ここで、R101及びR102の双方が水素原子を表すことはなく、R101及びR102の少なくとも一方はアルキル基を表す。
【0028】
上記式(a1−10)において、R101、R102及びR103がアルキル基を表す場合、上記アルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
上記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることが更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基(2,3−ジメチル−2−ブチル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。
【0029】
上記環状アルキル基としては、炭素数3〜12であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数4〜6であることが更に好ましい。上記環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等を挙げることができる。
【0030】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基が例示できる。置換基としてハロゲン原子を有する場合、R101、R102、R103はハロアルキル基となり、置換基としてアリール基を有する場合、R101、R102、R103はアラルキル基となる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示され、これらの中でも、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
また、上記アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜12のアリール基がより好ましい。具体的には、フェニル基、α−メチルフェニル基、ナフチル基等が例示でき、アリール基で置換されたアルキル基全体、すなわち、アラルキル基としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が例示できる。
上記アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が更に好ましい。
また、上記アルキル基がシクロアルキル基である場合、上記シクロアルキル基は置換基として炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有していてもよく、アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である場合には、置換基として炭素数3〜12のシクロアルキル基を有していてもよい。
これらの置換基は、上記置換基で更に置換されていてもよい。
【0031】
上記式(a1−10)において、R101、R102及びR103がアリール基を表す場合、上記アリール基は炭素数6〜12であることが好ましく、炭素数6〜10であることがより好ましい。上記アリール基は置換基を有していてもよく、上記置換基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましく例示できる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−ナフチル基等が例示できる。
【0032】
また、R101、R102及びR103は互いに結合して、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成することができる。R101とR102、R101とR103又はR102とR103が結合した場合の環構造としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、テトラヒドロフラニル基、アダマンチル基及びテトラヒドロピラニル基等を挙げることができる。
【0033】
なお、上記式(a1−10)において、R101及びR102のいずれか一方が、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0034】
上記式(a1−10)で表される保護カルボキシル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、特開2011−221494号公報の段落0037〜0040に記載の合成方法などで合成することができる。
【0035】
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)の第一の好ましい態様は、下記式で表される構成単位である。
【0036】
【化4】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R3は、アルキル基又はアリール基を表し、R1又はR2と、R3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R4は、水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。)
【0037】
1及びR2がアルキル基の場合、炭素数は1〜10のアルキル基が好ましい。R1及びR2がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
3は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、1〜6のアルキル基がより好ましい。
Xは、単結合又はアリーレン基を表し、単結合が好ましい。
【0038】
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)の第二の好ましい態様は、下記式の構造単位である。
【0039】
【化5】
(式中、R121は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、L1はカルボニル基又はフェニレン基を表し、R122〜R128はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0040】
121は水素原子又はメチル基が好ましい。
1はカルボニル基が好ましい。
122〜R128は、水素原子が好ましい。
【0041】
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0042】
【化6】
【0043】
<<(a1−2)酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位>>
上記酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)は、フェノール性水酸基を有する構成単位が、以下で詳細に説明する酸分解性基によって保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位である。
【0044】
<<<(a1−2−1)フェノール性水酸基を有する構成単位>>>
上記フェノール性水酸基を有する構成単位としては、ヒドロキシスチレン系構成単位やノボラック系の樹脂における構成単位が挙げられるが、これらの中では、ヒドロキシスチレン又はα−メチルヒドロキシスチレンに由来する構成単位が、感度の観点から好ましい。また、フェノール性水酸基を有する構成単位として、下記式(a1−20)で表される構成単位も、感度の観点から好ましい。
【0045】
【化7】
(式(a1−20)中、R220は水素原子又はメチル基を表し、R221は単結合又は二価の連結基を表し、R222はハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、R222が2以上存在する場合、これらのR222は相互に異なっていてもよいし同じでもよい。)
【0046】
上記式(a1−20)中、R220は水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
また、R221は単結合又は二価の連結基を表す。単結合である場合には、感度を向上させることができ、更に硬化膜の透明性を向上させることができるので好ましい。R221の二価の連結基としてはアルキレン基が例示でき、R221がアルキレン基である具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。中でも、R221が単結合、メチレン基、又は、エチレン基であることが好ましい。また、上記二価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。また、aは1〜5の整数を表すが、本発明の効果の観点や、製造が容易であるという点から、aは1又は2であることが好ましく、aが1であることがより好ましい。
また、ベンゼン環における水酸基の結合位置は、R221と結合している炭素原子を基準(1位)としたとき、4位に結合していることが好ましい。
222はそれぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも製造が容易であるという点から、塩素原子、臭素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、bは0又は1〜4の整数を表す。
【0047】
−構成単位(a1−2)に用いることができる酸分解性基−
上記酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)に用いることができる上記酸分解性基としては、上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)に用いることができる上記酸分解性基と同様に、公知のものを使用でき、特に限定されない。酸分解性基の中でもアセタールで保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位であることが、感光性樹脂組成物の基本物性、特に感度やパターン形状、感光性樹脂組成物の保存安定性、コンタクトホールの形成性の観点から好ましい。更に、酸分解性基の中でもフェノール性水酸基が上記式(a1−10)で表されるアセタールの形で保護された保護フェノール性水酸基であることが、感度の観点からより好ましい。なお、フェノール性水酸基が上記式(a1−10)で表されるアセタールの形で保護された保護フェノール性水酸基である場合、保護フェノール性水酸基の全体としては、−Ar−O−CR101102(OR103)の構造となっている。なお、Arはアリーレン基を表す。
【0048】
フェノール性水酸基のアセタールエステル構造の好ましい例は、R101=R102=R103=メチル基の組み合わせやR101=R102=メチル基でR103=ベンジル基の組み合わせが例示できる。
【0049】
また、フェノール性水酸基がアセタールの形で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、特開2011−215590号公報の段落0042に記載のものなどが挙げられる。
これらの中で、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートのテトラヒドロピラニル保護体が透明性の観点から好ましい。
【0050】
フェノール性水酸基のアセタール保護基の具体例としては、1−アルコキシアルキル基が挙げられ、例えば、1−エトキシエチル基、1−メトキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−(2−クロロエトキシ)エチル基、1−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−(2−シクロヘキシルエトキシ)エチル基、1−ベンジルオキシエチル基などを挙げることができ、これらは1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させることにより合成することができる。上記の合成はフェノール性水酸基を有するモノマーをその他のモノマーとあらかじめ共重合させておき、その後に酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させてもよい。
【0052】
上記酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0053】
【化8】
【0054】
−構成単位(a1)の好ましい態様−
上記構成単位(a1)を有する重合体が、実質的に、構成単位(a2)を有しない場合、構成単位(a1)は、上記構成単位(a1)を有する重合体中、20〜100モル%が好ましく、30〜90モル%がより好ましい。
上記構成単位(a1)を有する重合体が、下記構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a1)の含有量は、上記構成単位(a1)と構成単位(a2)とを有する重合体中、感度の観点から3〜70モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましい。また、特に上記構成単位(a1)が、カルボキシル基がアセタールの形で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位である場合、20〜50モル%が好ましい。
なお、本発明において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、当該「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本発明において当該「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0055】
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)は、上記酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)に比べると、現像が速いという特徴がある。よって、速く現像したい場合には酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)が好ましい。逆に現像を遅くしたい場合には酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)を用いることが好ましい。
上記酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)は、上記酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)に比べると、現像が速いという特徴がある。よって、速く現像したい場合には酸分解性基で保護された保護カルボキシル基を有する構成単位(a1−1)が好ましい。逆に現像を遅くしたい場合には酸分解性基で保護された保護フェノール性水酸基を有する構成単位(a1−2)を用いることが好ましい。
【0056】
<(a2)架橋性基を有する構成単位>
成分Aは、架橋性基を有する構成単位(a2)を更に有することが好ましい。また、成分Aが架橋性基を有する構成単位(a2)を有していない場合、本発明の感光性樹脂組成物は、(成分A’)架橋性基を有する構成単位(a2)を有する重合体を含有することが好ましい。
上記架橋性基は、加熱処理で硬化反応を起こす基であれば特に限定はされない。好ましい架橋性基を有する構成単位の態様としては、エポキシ基、オキセタニル基、−NH−CH2−O−R(Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)で表される基及びエチレン性不飽和基よりなる群から選ばれた少なくとも1つを含む構成単位が挙げられ、エポキシ基、オキセタニル基、及び、−NH−CH2−O−R(Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)で表される基よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。その中でも、本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分Aが、エポキシ基及びオキセタニル基のうち少なくとも1つを含む構成単位を含むことがより好ましい。より詳細には、以下のものが挙げられる。
【0057】
<<(a2−1)エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位>>
成分Aは、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(構成単位(a2−1))を有する重合体を含有することが好ましい。上記3員環の環状エーテル基はエポキシ基とも呼ばれ、4員環の環状エーテル基はオキセタニル基とも呼ばれる。
上記エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2−1)は、1つの構成単位中にエポキシ基又はオキセタニル基を少なくとも1つ有していればよく、1つ以上のエポキシ基及び1つ以上オキセタニル基、2つ以上のエポキシ基、又は、2つ以上のオキセタニル基を有していてもよく、特に限定されないが、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を合計1〜3つ有することが好ましく、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を合計1又は2つ有することがより好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基を1つ有することが更に好ましい。
【0058】
エポキシ基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、α−エチルアクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、特許第4168443号公報の段落0031〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物などが挙げられる。
オキセタニル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
上記エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2−1)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、メタクリル酸エステル構造を含有するモノマー、アクリル酸エステル構造を含有するモノマーであることが好ましい。
【0059】
これらの中でも好ましいものは、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、及び、メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルである。これらの構成単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a2−1)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0061】
【化9】
【0062】
<<(a2−2)エチレン性不飽和基を有する構成単位>>
上記架橋性基を有する構成単位(a2)の1つとして、エチレン性不飽和基を有する構成単位(a2−2)が挙げられる(以下、「構成単位(a2−2)」ともいう。)。上記エチレン性不飽和基を有する構成単位(a2−2)としては、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位が好ましく、末端にエチレン性不飽和基を有し、炭素数3〜16の側鎖を有する構成単位がより好ましく、下記式(a2−2−1)で表される側鎖を有する構成単位が更に好ましい。
【0063】
【化10】
(式(a2−2−1)中、R301は炭素数1〜13の二価の連結基を表し、R302は水素原子又はメチル基を表し、波線部分は架橋性基を有する構成単位(a2)の主鎖に連結する部位を表す。)
【0064】
301は、炭素数1〜13の二価の連結基であって、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリーレン基又はこれらを組み合わせた基を含み、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合等の結合を含んでいてもよい。また、二価の連結基は、任意の位置にヒドロキシ基、カルボキシル基等の置換基を有していてもよい。R301の具体例としては、下記の二価の連結基が挙げられる。
【0065】
【化11】
【0066】
上記式(a2−2−1)で表される側鎖の中でも、上記R301で表される二価の連結基を含めて脂肪族の側鎖が好ましい。
【0067】
その他、(a2−2)エチレン性不飽和基を有する構成単位については、特開2011−215580号公報の段落0072〜0090の記載を参酌できる。
【0068】
<<(a2−3)−NH−CH2−O−R(Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)で表される基を有する構成単位>>
本発明で用いる共重合体は、−NH−CH2−O−R(Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)で表される基を有する構成単位(a2−3)も好ましい。構成単位(a2−3)を有することで、緩やかな加熱処理で硬化反応を起こすことができ、諸特性に優れた硬化膜を得ることができる。ここで、Rは炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜9のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。また、アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基のいずれであってもよいが、直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましい。構成単位(a2)は、下記式(a2−30)で表される基を有する構成単位であることがより好ましい。
【0069】
【化12】
(式(a2−30)中、R31は水素原子又はメチル基を表し、R32は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0070】
32は、炭素数1〜9のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましい。また、アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基のいずれであってもよいが、好ましくは、直鎖又は分岐のアルキル基である。
32の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロヘキシル基、及び、n−ヘキシル基を挙げることができる。中でも、i−ブチル基、n−ブチル基、メチル基が好ましい。
【0071】
−構成単位(a2)の好ましい態様−
上記構成単位(a2)を有する重合体が、実質的に、構成単位(a1)を有しない場合、構成単位(a2)の含有量は、上記構成単位(a2)を有する重合体中、5〜90モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましい。
上記構成単位(a2)を有する重合体が、上記構成単位(a1)を有する場合、構成単位(a2)の含有量は、上記構成単位(a1)と構成単位(a2)を有する重合体中、薬品耐性の観点から3〜70モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましい。
本発明では、更に、いずれの態様にかかわらず、成分Aの全構成単位中、構成単位(a2)を3〜70モル%含有することが好ましく、10〜60モル%含有することがより好ましい。
上記の数値の範囲内であると、感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の透明性及び薬品耐性が良好となる。
【0072】
<(a3)その他の構成単位>
本発明において、成分Aは、上記構成単位(a1)及び/又は(a2)に加えて、これら以外の他の構成単位(a3)を有していてもよい。構成単位(a3)は、上記(1)又は(2)を満たす重合体成分が含んでいてもよい。また、成分Aを含む重合体成分は、上記(1)又は(2)を満たす重合体成分とは別に、実質的に構成単位(a1)及び構成単位(a2)を含まずに他の構成単位(a3)を有する重合体成分を有していてもよい。上記(1)又は(2)を満たす重合体成分とは別に、実質的に構成単位(a1)及び構成単位(a2)を有さずに他の構成単位(a3)を有する重合体成分を含む場合、上記重合体成分の配合量は、全重合体成分中、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。また、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0073】
その他の構成単位(a3)となるモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物類、マレイミド化合物類、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、その他の不飽和化合物を挙げることができる。また、後述するとおり、酸基を有する構成単位を有していてもよい。その他の構成単位(a3)となるモノマーは、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
以下に、本発明における成分Aを含む重合体成分の好ましい実施形態を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
−第1の実施形態−
(1)を満たす重合体成分が、更に、1種又は2種以上のその他の構成単位(a3)を有する態様。
−第2の実施形態−
(2)を満たす重合体成分の(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体が、更に、1種又は2種以上のその他の構成単位(a3)を有する態様。
−第3の実施形態−
(2)を満たす重合体成分の(a2)架橋性基を有する構成単位を有する重合体が、更に、1種又は2種以上のその他の構成単位(a3)を有する態様。
【0075】
−第4の実施形態−
上記第1〜第3の実施形態のいずれかにおいて、その他の構成単位(a3)として、少なくとも酸基を含む構成単位をいずれかの重合体に有する態様。
−第5の実施形態−
上記(1)又は(2)を満たす重合体成分とは別に、更に、実質的に構成単位(a1)及び構成単位(a2)を有さずに他の構成単位(a3)を有する重合体成分を有する態様。
−第6の実施形態−
上記第1〜第5の実施形態の2以上の組み合わせからなる態様。
【0076】
構成単位(a3)は、具体的には、スチレン、tert−ブトキシスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、エチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートなどによる構成単位を挙げることができる。この他、特開2004−264623号公報の段落0021〜0024に記載の化合物を挙げることができる。
【0077】
また、その他の構成単位(a3)としては、スチレン類、又は、脂肪族環式骨格を有するモノマー由来の構成単位が、電気特性の観点で好ましい。具体的にはスチレン、tert−ブトキシスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
更にまた、その他の構成単位(a3)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位が、密着性の観点で好ましい。具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。重合体を構成する構成単位中、上記の構成単位(a3)の含有率は、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下が更に好ましい。下限値としては、0モル%でもよいが、例えば、1モル%以上とすることが好ましく、5モル%以上とすることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の諸特性が良好となる。
【0079】
成分Aに含まれる重合体は、その他の構成単位(a3)として、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。重合体が酸基を有することにより、アルカリ性の現像液に溶けやすくなり、本発明の効果がより効果的に発揮される。本発明における酸基とは、pKaが10.5より小さいプロトン解離性基を意味する。酸基は、通常、酸基を形成しうるモノマーを用いて、酸基を含む構成単位として、重合体に組み込まれる。このような酸基を含む構成単位を重合体中に含めることにより、アルカリ性の現像液に対して溶けやすくなる傾向にある。
本発明で用いられる酸基としては、カルボン酸基由来のもの、スルホンアミド基に由来のもの、ホスホン酸基に由来のもの、スルホン酸基に由来のもの、フェノール性水酸基に由来するもの、スルホンアミド基、スルホニルイミド基等が例示され、カルボン酸基由来のもの及び/又はフェノール性水酸基に由来のものが好ましい。
本発明で用いられる酸基を含む構成単位は、スチレンに由来する構成単位や、ビニル化合物に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位であることがより好ましい。
本発明では、特に、カルボキシル基を有する構成単位、又は、フェノール性水酸基を有する構成単位を含有することが、感度の観点で好ましい。
【0080】
酸基を含む構成単位は、全重合体成分の構成単位の1〜80モル%が好ましく、1〜50モル%がより好ましく、5〜40モル%が更に好ましく、5〜30モル%が特に好ましく、5〜20モル%が最も好ましい。
【0081】
本発明では、上記(1)又は(2)を満たす重合体成分とは別に、実質的に構成単位(a1)及び構成単位(a2)を含まずに他の構成単位(a3)を有する重合体を含んでいてもよい。
このような重合体としては、側鎖にカルボキシル基を有する樹脂が好ましい。例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられ、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0082】
例えば、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
その他にも、特開平7−207211号公報、特開平8−259876号公報、特開平10−300922号公報、特開平11−140144号公報、特開平11−174224号公報、特開2000−56118号公報、特開2003−233179号公報、特開2009−52020号公報等に記載の公知の高分子化合物を使用することができる。
これらの重合体は、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0083】
これらの重合体として、市販されている、SMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、SMA 3840F(以上、サートマー社製)、ARUFON UC−3000、ARUFON UC−3510、ARUFON UC−3900、ARUFON UC−3910、ARUFON UC−3920、ARUFON UC−3080(以上、東亞合成(株)製)、JONCRYL 690、JONCRYL 678、JONCRYL 67、JONCRYL 586(以上、BASF社製)等を用いることもできる。
【0084】
−成分Aにおける重合体の分子量−
成分Aにおける重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜50,000の範囲である。上記の数値の範囲内であると、諸特性が良好である。数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwとの比(分散度、Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.5〜3.5がより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量や数平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィ法(GPC)により測定することが好ましい。本発明におけるゲル浸透クロマトグラフィ法による測定は、HLC-8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super HZ M-H、TSK gel Super HZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いることが好ましい。
【0085】
−成分Aにおける重合体の製造方法−
また、成分Aにおける重合体の合成法についても、様々な方法が知られているが、一例を挙げると、少なくとも上記構成単位(a1)及び上記構成単位(a3)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体混合物を有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。また、いわゆる高分子反応で合成することもできる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物中における成分Aの含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、10〜99.9質量%であることが好ましく、25〜98質量%であることがより好ましく、35〜95質量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となり、また、より高屈折率の硬化物が得られる。なお、感光性樹脂組成物の固形分量とは、溶剤などの揮発性成分を除いた量を表す。
また、本発明の感光性樹脂組成物中における成分Aを含む重合体成分の総含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、20〜99.9質量%であることが好ましく、50〜98質量%であることがより好ましく、70〜95質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となり、また、より高屈折率の硬化物が得られる。
【0087】
(成分B)2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分B)2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物を含有する。成分Bが金属酸化物粒子の表面に吸着することで、金属酸化物粒子同士の静電反発や立体的な反発を引き起こし、特に組成物を塗布・乾燥した際の金属酸化物の凝集を防ぐため、ヘイズが小さくなると推定される。
成分Bとしては、2つ以上の窒素原子を有する以外は特に制限はないが、複素環の環員として2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物であることが好ましく、1,3位に窒素原子を少なくとも有する複素環構造を有する化合物であることがより好ましく、1,3位に窒素原子を少なくとも有する5員又は6員複素環構造を有する化合物であることが更に好ましい。上記態様であると、金属酸化物粒子の分散性により優れ、ヘイズがより小さい硬化物が得られる。
なお、「1,3位に窒素原子を少なくとも有する複素環構造」とは、複素環中に炭素原子の両側に窒素原子が結合した構造であればよく、正式な命名法における複素環上の1位及び3位でなくともよい。
成分Bにおける複素環の環員は、炭素原子及び窒素原子から少なくとも構成されていることが好ましく、更に酸素原子や硫黄原子を環員として含んでいてもよいが、炭素原子及び窒素原子よりなることが特に好ましい。
成分Bが有する窒素原子の数は、2つ以上であり、2〜6つであることが好ましく、2〜4つであることがより好ましい。また、成分Bは、複素環の環員として、窒素原子を2〜4つ有していることが好ましく、2つ又は3つ有していることがより好ましく、2つ有していることが更に好ましい。
成分Bにおける複素環は、飽和複素環であっても、不飽和複素環であってもよく、芳香族複素環であってもよい。
また、成分Bにおける複素環は、更に他の環と縮合していてもよい。また、上記他の環としては、複素環だけでなく、脂肪族環であっても、芳香環であってもよい。
【0088】
成分Bが有する複素環構造の具体例としては、イミダゾール構造、ベンゾイミダゾール構造、1,2,4−トリアゾール構造、4,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアゾール構造、テトラゾール構造、2−イミダゾリン構造、4−イミダゾリン構造(2,3−ジヒドロイミダゾール構造)、イミダゾリジン構造、ピリミジン構造、キノキサリン構造、プリン構造、プテリジン構造、及び、ペリジミン構造よりなる群から選ばれた環構造が好ましく挙げられ、イミダゾール構造、ベンゾイミダゾール構造、1,2,4−トリアゾール構造、4,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアゾール構造、テトラゾール構造、2−イミダゾリン構造、4−イミダゾリン構造、イミダゾリジン構造、及び、ピリミジン構造よりなる群から選ばれた環構造がより好ましく挙げられ、ベンゾイミダゾール構造又はイミダゾリジン構造が特に好ましく挙げられる。上記態様であると、金属酸化物粒子の分散性により優れ、ヘイズがより小さい硬化物が得られる。
【0089】
成分Bは、メルカプト基(−SH)又はチオキソ基(=S)を有することが好ましい。上記態様であると、金属酸化物粒子の分散性により優れ、ヘイズがより小さい硬化物が得られる。
また、成分Bとしては、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0090】
【化13】
(式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、R1とR2とが結合して二価の有機基であってもよく、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、L1は5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、R3又はR4とL1とが結合して環を形成していてもよく、また、点線の結合は、点線で記載した含窒素二重結合が存在する場合は、R2及びR4が存在しないことを表し、点線で記載した含窒素二重結合が存在しない場合は、R2及びR4が存在することを表す。)
【0091】
1〜R4における一価の有機基としては、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、ヘテロ環ジチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、チオウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が例として挙げられる。また、上記基は、更に置換基により置換されていてもよい。
【0092】
1及びR2における一価の有機基としては、これらの中でも、メルカプト基が特に好ましい。
また、R1及びR2における一価の有機基の炭素数は、0〜20であることが好ましく、0〜8であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
また、R1とR2とが結合して形成する二価の有機基としては、オキソ基、チオキソ基、アルキリデン基等が例として挙げられる。これらの中でも、チオキソ基が特に好ましい。
1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメルカプト基であることが特に好ましく、また、R1とR2とが結合して二価の有機基を形成する場合は、チオキソ基であることが特に好ましい。
【0093】
3及びR4における一価の有機基としては、アルキル基又はアリール基が好ましく、モルフォリノメチル基又はフェニル基がより好ましい。また、上記アルキル基又はアリール基は、置換基により置換されていてもよい。
3及びR4における一価の有機基の炭素数は、0〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、4〜8であることが更に好ましい。
3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子、メチル基、モルフォリノメチル基又はフェニル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はフェニル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
【0094】
1は5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、式(1)中の炭素原子と2つの窒素原子とともに複素環を形成する。
二価の連結基としては、式(1)中の炭素原子と2つの窒素原子とともに5員複素環又は6員複素環を形成する基であれば、特に制限はないが、その環員が、炭素原子及び/又は窒素原子から形成される基であることが好ましく、前述した複素環構造の具体例を形成する基であることがより好ましい。中でも、ベンゾイミダゾール構造を形成する基、すなわち、1,2−フェニレン基、イミダゾリジン構造を形成する基、すなわち、1,2−エチレン基、1,1−ジメチル−1,2−エチレン基、又は、エテン−1,2−ジイル基であることが更に好ましく、1,2−エチレン基、1,1−ジメチル−1,2−エチレン基、又は、エテン−1,2−ジイル基であることが特に好ましい。
【0095】
更に、成分Bとしては、下記式(1−1)又は式(1−2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0096】
【化14】
(式(1−1)及び式(1−2)中、R6〜R8はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に、5員環又は6員環を形成する二価の連結基を表し、R6とL2とが結合して環を形成していてもよく、R7又はR8とL3とが結合して環を形成していてもよい。)
【0097】
式(1−1)又は式(1−2)におけるR6〜R8は、上記式(1)におけるR3及びR4と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式(1−1)又は式(1−2)におけるL2及びL3は、上記式(1)におけるL1と同義であり、好ましい態様も同様である。
成分Bの好ましい具体例(AF−1〜AF−14)を以下に示す。ただし、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0098】
【化15】
【0099】
これらの中でも、AF−3〜AF−14が好ましく、AF−3、AF−5、AF−6、AF−9、AF−12、AF−13又はAF−14がより好ましく、AF−5、AF−9、AF−12、AF−13又はAF−14が特に好ましい。
【0100】
成分Bの分子量は、好ましくは68〜2,000、より好ましくは68〜1,000、更に好ましくは100〜800の範囲である。上記の数値の範囲内であると、諸特性が良好である。
【0101】
また、成分Bは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
本発明の樹脂組成物における成分Bの含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、金属酸化物粒子の分散性により優れ、ヘイズがより小さい硬化物が得られる。
【0102】
(成分C)光酸発生剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分C)光酸発生剤を含有する。本発明で使用される光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300〜450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造に制限されるものではない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。本発明で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤が最も好ましい。また、pKaは−15以上であることが好ましい。
【0103】
光酸発生剤の例として、トリクロロメチル−s−トリアジン類、スルホニウム塩やヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、絶縁性及び感度の観点から、オキシムスルホネート化合物を用いることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。トリクロロメチル−s−トリアジン類、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、第四級アンモニウム塩類、及び、ジアゾメタン誘導体の具体例としては、特開2011−221494号公報の段落0083〜0088に記載の化合物が例示できる。
【0104】
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート構造を有する化合物としては、下記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を含有する化合物が好ましく例示できる。
【0105】
【化16】
(式(B1)中、R21は、アルキル基又はアリール基を表し、波線部分は他の基との結合箇所を表す。)
【0106】
いずれの基も置換されてもよく、R21におけるアルキル基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。許容される置換基は以下に説明する。
21のアルキル基としては、炭素数1〜10の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。R21のアルキル基は、炭素数6〜11のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は、シクロアルキル基(7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)で置換されてもよい。
21のアリール基としては、炭素数6〜11のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R21のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されてもよい。
【0107】
上記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を含有する上記化合物は、下記式(B2)で表されるオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0108】
【化17】
(式(B2)中、R42は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、m4は、0〜3の整数を表し、m4が2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
【0109】
Xとしてのアルキル基は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。
Xとしてのアルコキシ基は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルコキシ基が好ましい。
Xとしてのハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
m4は、0又は1が好ましい。上記式(B2)中、m4が1であり、Xがメチル基であり、Xの置換位置がオルト位であり、R42が炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニルメチル基、又は、p−トルイル基である化合物が特に好ましい。
【0110】
上記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を含有する化合物は、下記式(B3)で表されるオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0111】
【化18】
(式(B3)中、R43は式(B2)におけるR42と同義であり、X1は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表し、n4は0〜5の整数を表す。)
【0112】
上記式(B3)におけるR43としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、p−トリル基、4−クロロフェニル基又はペンタフルオロフェニル基が好ましく、n−オクチル基が特に好ましい。
1としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
n4としては、0〜2の整数が好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0113】
上記式(B3)で表される化合物の具体例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−〔(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリルを挙げることができる。
【0114】
好ましいオキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記化合物(i)〜(viii)等が挙げられ、1種単独で使用、又は、2種類以上を併用することができる。化合物(i)〜(viii)は、市販品として、入手することができる。また、他の種類の(B)光酸発生剤と組み合わせて使用することもできる。
【0115】
【化19】
【0116】
上記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を含有する化合物としては、下記式(OS−1)で表される化合物であることも好ましい。
【0117】
【化20】
【0118】
上記式(OS−1)中、R101は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、シアノ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R102は、アルキル基、又は、アリール基を表す。
101は−O−、−S−、−NH−、−NR105−、−CH2−、−CR106H−、又は、−CR105107−を表し、R105〜R107はアルキル基、又は、アリール基を表す。
121〜R124はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基、スルホ基、シアノ基、又は、アリール基を表す。R121〜R124のうち2つは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
121〜R124としてはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、アルキル基が好ましく、また、R121〜R124のうち少なくとも2つが互いに結合してアリール基を形成する態様もまた、好ましく挙げられる。中でも、R121〜R124がいずれも水素原子である態様が感度の観点から好ましい。
既述の官能基は、いずれも、更に置換基を有していてもよい。
【0119】
上記式(OS−1)で表される化合物は、下記式(OS−2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0120】
【化21】
【0121】
上記式(OS−2)中、R101、R102、R121〜R124は、それぞれ式(OS−1)におけるものと同義であり、好ましい例もまた同様である。
これらの中でも、上記式(OS−1)及び上記式(OS−2)におけるR101がシアノ基、又は、アリール基である態様がより好ましく、上記式(OS−2)で表され、R101がシアノ基、フェニル基又はナフチル基である態様が最も好ましい。
【0122】
また、本発明におけるオキシムスルホネート化合物において、オキシムやベンゾチアゾール環の立体構造(E,Z等)についてはそれぞれ、どちらか一方であっても、混合物であってもよい。
【0123】
本発明に好適に用いうる上記式(OS−1)で表される化合物の具体例としては、特開2011−221494号公報の段落0128〜0132に記載の化合物(例示化合物b−1〜b−34)が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0124】
本発明では、上記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を含有する化合物としては、下記式(OS−3)、下記式(OS−4)又は下記式(OS−5)で表されるオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0125】
【化22】
(式(OS−3)〜式(OS−5)中、R22、R25及びR28はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R23、R26及びR29はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、R24、R27及びR30はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、X1〜X3はそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、n1〜n3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、m1〜m3はそれぞれ独立に、0〜6の整数を表す。)
【0126】
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R22、R25及びR28におけるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R22、R25及びR28におけるアルキル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
また、上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R22、R25及びR28におけるアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
また、上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R22、R25及びR28におけるヘテロアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数4〜30のヘテロアリール基が好ましい。
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R22、R25及びR28におけるヘテロアリール基は、少なくとも1つの環が複素芳香環であればよく、例えば、複素芳香環とベンゼン環とが縮環していてもよい。
【0127】
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R23、R26及びR29は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、化合物中に2以上存在するR23、R26及びR29のうち、1つ又は2つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることが好ましく、1つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることがより好ましく、1つがアルキル基であり、かつ残りが水素原子であることが特に好ましい。
【0128】
23、R26及びR29におけるアルキル基としては、置換基を有してもよい総炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、置換基を有してもよい総炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
【0129】
23、R26及びR29におけるアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
【0130】
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、X1〜X3はそれぞれ独立に、O又はSを表し、Oであることが好ましい。
上記式(OS−3)〜(OS−5)において、X1〜X3を環員として含む環は、5員環又は6員環である。
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、n1〜n3はそれぞれ独立に、1又は2を表し、X1〜X3がOである場合、n1〜n3はそれぞれ独立に、1であることが好ましく、また、X1〜X3がSである場合、n1〜n3はそれぞれ独立に、2であることが好ましい。
【0131】
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R24、R27及びR30はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表す。その中でも、R24、R27及びR30はそれぞれ独立に、アルキル基又はアルキルオキシ基であることが好ましい。
24、R27及びR30におけるアルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基及びアルコキシスルホニル基は、置換基を有していてもよい。
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R24、R27及びR30におけるアルキル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
上記式(OS−3)〜(OS−5)中、R24、R27及びR30におけるアルキルオキシ基としては、置換基を有してもよい総炭素数1〜30のアルキルオキシ基であることが好ましい。
【0132】
また、上記式(OS−3)〜(OS−5)中、m1〜m3はそれぞれ独立に、0〜6の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
また、上記式(OS−3)〜(OS−5)のそれぞれの置換基について、特開2011−221494号公報の段落0092〜0109に記載の(OS−3)〜(OS−5)の置換基の好ましい範囲も同様に好ましい。
【0133】
また、上記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を含有する化合物は、下記式(OS−6)〜(OS−11)のいずれかで表されるオキシムスルホネート化合物であることが特に好ましい。
【0134】
【化23】
(式(OS−6)〜(OS−11)中、R301〜R306はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R307は、水素原子又は臭素原子を表し、R308〜R310、R313、R316及びR318はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、R311及びR314はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、R312、R315、R317及びR319はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
【0135】
上記式(OS−6)〜(OS−11)における好ましい範囲は、特開2011−221494号公報の段落0110〜0112に記載される(OS−6)〜(OS−11)の好ましい範囲と同様である。
【0136】
上記式(OS−3)〜上記式(OS−5)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、特開2011−221494号公報の段落0114〜0120に記載の化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0137】
本発明の感光性樹脂組成物において、(成分C)光酸発生剤は、感光性樹脂組成物中の成分Aを含む重合体成分100質量部に対して、0.1〜10質量部使用することが好ましく、0.5〜10質量部使用することがより好ましい。
また、成分Cは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0138】
(成分D)金属酸化物粒子
本発明の樹脂組成物は、屈折率や光透過性を調節することを目的として、金属酸化物粒子を含有する。金属酸化物粒子は、透明性が高く、光透過性を有するため、高屈折率で、透明性に優れたポジ型感光性樹脂組成物が得られる。
成分Dは、当該粒子を除いた材料からなる樹脂組成物の屈折率より屈折率が高いものであることが好ましく、具体的には、400〜750nmの波長を有する光における屈折率が1.50以上の粒子がより好ましく、屈折率が1.70以上の粒子が更に好ましく、1.90以上の粒子が特に好ましい。また、屈折率が2.80以下の粒子が好ましい。
ここで、400〜750nmの波長を有する光における屈折率が1.50以上であるとは、上記範囲の波長を有する光における平均屈折率が1.50以上であることを意味し、上記範囲の波長を有する全ての光における屈折率が1.50以上であることを要しない。また、平均屈折率は、上記範囲の波長を有する各光に対する屈折率の測定値の総和を、測定点の数で割った値である。
【0139】
なお、本発明における金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれるものとする。
光透過性で屈折率の高い金属酸化物粒子としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物粒子が好ましく、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、インジウム/スズ酸化物、アンチモン/スズ酸化物がより好ましく、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化ジルコニウムが更に好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウムが特に好ましく、二酸化チタンが最も好ましい。二酸化チタンとしては、特に屈折率の高いルチル型が好ましい。これら金属酸化物粒子は、分散安定性付与のために表面を有機材料で処理することもできる。
【0140】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、1〜200nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、1〜80nmであることが更に好ましく、1〜50nmであることが特に好ましい。上記範囲であると、粒子の分散性に優れ、また、高屈折率であり、かつ透明性により優れる硬化物が得られる。
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、分散した金属酸化物粒子を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた写真から求めることができる。具体的には金属酸化物粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径を金属酸化物粒子の平均一次粒子径とする。なお、本発明における平均一次粒子径は、300個の金属酸化物粒子について求めた円相当径の算術平均値とする。
また、本発明においては、平均一次粒子径の指標として数平均粒子径を用いることもできる。本発明における金属酸化物粒子の数平均粒子径は、金属酸化物粒子を含む混合液又は分散液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで80倍に希釈し、得られた希釈液について動的光散乱法を用いて測定することにより得られた値のことを言う。この測定は、日機装(株)製マイクロトラックUPA−EX150を用いて行って得られた数平均粒子径であることが好ましい。
【0141】
金属酸化物粒子の屈折率としては、特に制限はないが、高屈折率を得る観点から、1.70〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.70であることが更に好ましい。
また、金属酸化物粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
金属酸化物粒子の形状には、特に制限はない。例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状又は不定形状であることができる。
【0142】
金属酸化物粒子は、有機化合物により表面処理されたものであってもよい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。中でも、ステアリン酸が好ましい。
表面処理は、1種単独の表面処理剤でも、2種類以上の表面処理剤を組み合わせて実施してもよい。
また、金属酸化物粒子の表面が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニアなどの酸化物により覆われていることもまた好ましい。これにより、より耐候性が向上する。
【0143】
本発明における金属酸化物粒子としては、市販されているものを好ましく用いることができる。具体的には、例えば、酸化チタン粒子として石原産業(株)製TTOシリーズ(TTO−51(A)、TTO−51(C)など)、TTO−S、Vシリーズ(TTO−S−1、TTO−S−2、TTO−V−3など)、テイカ(株)製MTシリーズ(MT−01、MT−05など)、酸化スズ−酸化チタン複合粒子としてオプトレイクTR−502、オプトレイクTR−504、酸化ケイ素−酸化チタン複合粒子としてオプトレイクTR−503、オプトレイクTR−513、オプトレイクTR−520、オプトレイクTR−521、オプトレイクTR−527、酸化ジルコニウム粒子((株)高純度化学研究所製)、酸化スズ−酸化ジルコニウム複合粒子(日揮触媒化成工業(株)製)、酸化ニオブ粒子としてバイラールNb−X10(多木化学(株)製)などが挙げられる。
【0144】
また、成分Dは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
本発明の樹脂組成物における金属酸化物粒子の含有量は、樹脂組成物により得られる光学部材に要求される屈折率や、光透過性等を考慮して、適宜決定すればよいが、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0145】
本発明において、粒子は、適当な分散剤及び溶媒中でボールミル、ロッドミル等の混合装置を用いて混合・分散することにより調製された分散液として使用に供することもできる。分散剤については、後述する。
上記分散液の調製に使用される溶媒としては、例えば、後述する(成分E)溶剤のほか、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、ネオペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類等を挙げることができる。
これらの溶媒は、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0146】
(成分E)溶剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分E)溶剤を含有する。本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の必須成分と、更に後述の任意の成分を(成分E)溶剤に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に使用される溶剤としては、公知の溶剤を用いることができ、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、ラクトン類等が例示できる。また、本発明の感光性樹脂組成物に使用される溶剤の具体例としては特開2011−221494号公報の段落0174〜0178に記載の溶剤も挙げられる。
【0147】
また、これらの溶剤に更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
これら溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明に用いることができる溶剤は、1種単独、又は、2種を併用することが好ましい。
【0148】
また、成分Eとしては、沸点130℃以上160℃未満の溶剤、沸点160℃以上の溶剤、又は、これらの混合物であることが好ましい。
沸点130℃以上160℃未満の溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル(沸点155℃)、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル(沸点131℃)が例示できる。
沸点160℃以上の溶剤としては、3−エトキシプロピオン酸エチル(沸点170℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、3−メトキシブチルエーテルアセテート(沸点171℃)、ジエチレングリコールジエチエルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点220℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)が例示できる。
これらの中でも、溶剤としては、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0149】
本発明の感光性樹脂組成物における(成分E)溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の成分Aを含む重合体成分100質量部当たり、50〜95質量部であることが好ましく、60〜90質量部であることが更に好ましい。
【0150】
(成分F)架橋剤
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じ、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を添加することにより、本発明の感光性樹脂組成物により得られる硬化膜をより強固な膜とすることができる。
架橋剤としては、熱によって架橋反応が起こるものであれば制限はない(ただし、成分Aを除く。)。例えば、以下に述べる分子内に2個以上のエポキシ基若しくはオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有架橋剤、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、又は、ブロックイソシアネート化合物等を添加することができる。
本発明の感光性樹脂組成物中における架橋剤の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01〜50質量部であることが好ましく、0.1〜30質量部であることがより好ましく、0.5〜20質量部であることが更に好ましい。この範囲で添加することにより、機械的強度及び耐溶剤性に優れた硬化膜が得られる。架橋剤は複数を併用することもでき、その場合は架橋剤を全て合算して含有量を計算する。
【0151】
<分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物>
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0152】
これらは市販品として入手できる。例えば、JER157S70、JER157S65(三菱化学(株)製)など、特開2011−221494号公報の段落0189に記載の市販品などが挙げられる。
その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、デナコールEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313、EX−314、EX−321、EX−211、EX−212、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−911、EX−941、EX−920、EX−931、EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L、DLC−201、DLC−203、DLC−204、DLC−205、DLC−206、DLC−301、DLC−402(以上、ナガセケムテックス(株)製)、YH−300、YH−301、YH−302、YH−315、YH−324、YH−325(以上、新日鐵化学(株)製)などが挙げられる。
これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0153】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましく挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましく挙げられる。
【0154】
分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT−121、OXT−221、OX−SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
また、オキセタニル基を含む化合物は、単独で又はエポキシ基を含む化合物と混合して使用することが好ましい。
【0155】
また、その他の架橋剤としては特開2012−8223号公報の段落0107〜0108に記載のアルコキシメチル基含有架橋剤、及び、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物なども好ましく用いることができる。アルコキシメチル基含有架橋剤としては、アルコキシメチル化グリコールウリルが好ましい。
【0156】
<ブロックイソシアネート化合物>
本発明の感光性樹脂組成物では、架橋剤として、ブロックイソシアネート化合物も好ましく採用できる。ブロックイソシアネート化合物は、ブロックイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限はないが、硬化性の観点から、1分子内に2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。
なお、本発明におけるブロックイソシアネート基とは、熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であり、例えば、ブロック剤とイソシアネート基とを反応させイソシアネート基を保護した基が好ましく例示できる。また、上記ブロックイソシアネート基は、90℃〜250℃の熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であることが好ましい。
また、ブロックイソシアネート化合物としては、その骨格は特に限定されるものではなく、1分子中にイソシアネート基を2個有するものであればどのようなものでもよく、脂肪族、脂環族又は芳香族のポリイソシアネートであってよいが、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化1,3−キシリレンジイソシアネート、水素化1,4−キシリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物及びこれらの化合物から派生するプレポリマー型の骨格の化合物を好適に用いることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が特に好ましい。
【0157】
本発明の感光性樹脂組成物におけるブロックイソシアネート化合物の母構造としては、ビウレット型、イソシアヌレート型、アダクト型、2官能プレポリマー型等を挙げることができる。
上記ブロックイソシアネート化合物のブロック構造を形成するブロック剤としては、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物、メルカプタン化合物、イミダゾール系化合物、イミド系化合物等を挙げることができる。これらの中でも、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物から選ばれるブロック剤が特に好ましい。
【0158】
上記オキシム化合物としては、アルドキシム、及び、ケトオキシムが挙げられ、具体的には、アセトキシム、ホルムアルドキシム、シクロヘキサンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、アセトキシム等が例示できる。
上記ラクタム化合物としては、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等が例示できる。
上記フェノール化合物としては、フェノール、ナフトール、クレゾール、キシレノール、ハロゲン置換フェノール等が例示できる。
上記アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が例示できる。
上記アミン化合物としては、1級アミン及び2級アミンが挙げられ、芳香族アミン、脂肪族アミン、脂環族アミンいずれでもよく、アニリン、ジフェニルアミン、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が例示できる。
上記活性メチレン化合物としては、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル等が例示できる。
上記ピラゾール化合物としては、ピラゾール、メチルピラゾール、ジメチルピラゾール等が例示できる、
上記メルカプタン化合物としては、アルキルメルカプタン、アリールメルカプタン等が例示できる。
【0159】
本発明の感光性樹脂組成物に使用できるブロックイソシアネート化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、コロネートAPステーブルM、コロネート2503、2515、2507、2513、2555、ミリオネートMS−50(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートB−830、B−815N、B−820NSU、B−842N、B−846N、B−870N、B−874N、B−882N(以上、三井化学(株)製)、デュラネート17B−60PX、17B−60P、TPA−B80X、TPA−B80E、MF−B60X、MF−B60B、MF−K60X、MF−K60B、E402−B80B、SBN−70D、SBB−70P、K6000(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、デスモジュールBL1100、BL1265 MPA/X、BL3575/1、BL3272MPA、BL3370MPA、BL3475BA/SN、BL5375MPA、VPLS2078/2、BL4265SN、PL340、PL350、スミジュールBL3175(以上、住化バイエルウレタン(株)製)等を好ましく使用することができる。
【0160】
(成分G)酸化防止剤
本発明の感光性樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、又は、分解による膜厚減少を低減でき、また、耐熱透明性に優れるという利点がある。
このような酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、アミド類、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体等を挙げることができる。これらの中では、硬化膜の着色、膜厚減少の観点から特にフェノール系酸化防止剤、アミド系酸化防止剤、ヒドラジド系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブAO−15、アデカスタブAO−18、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−23、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−37、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−51、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−412S、アデカスタブAO−503、アデカスタブA−611、アデカスタブA−612、アデカスタブA−613、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−36Z、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP、アデカスタブCDA−1、アデカスタブCDA−6、アデカスタブZS−27、アデカスタブZS−90、アデカスタブZS−91(以上、(株)ADEKA製)、イルガノックス245FF、イルガノックス1010FF、イルガノックス1010、イルガノックスMD1024、イルガノックス1035FF、イルガノックス1035、イルガノックス1098、イルガノックス1330、イルガノックス1520L、イルガノックス3114、イルガノックス1726、イルガフォス168、イルガモッド295(BASF社製)、チヌビン405(BASF社製)などが挙げられる。中でも、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、イルガノックス1726、イルガノックス1035、イルガノックス1098、チヌビン405を好適に使用することができる。
【0161】
酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。この範囲にすることで、形成された膜の十分な透明性が得られ、かつ、パターン形成時の感度も良好となる。
また、酸化防止剤以外の添加剤として、“高分子添加剤の新展開((株)日刊工業新聞社)”に記載の各種紫外線吸収剤や、金属不活性化剤等を本発明の感光性樹脂組成物に添加してもよい。
【0162】
(成分H)分散剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分H)分散剤を含有することが好ましい。分散剤を含有することにより、成分Cの組成物中での分散性をより向上させることができる。
なお、成分Bが分散剤として機能しているかどうかは定かではないが、本発明における(成分H)分散剤は、成分B以外の化合物である。
(成分H)分散剤としては、例えば、公知の顔料分散剤を適宜選択して用いることができるが、後述する(成分S)式(S)で表され、少なくとも1種の酸基を有する分散剤が特に好ましい。
(成分H)分散剤としては、高分子分散剤を好ましく用いることができる。なお、高分子分散剤とは、分子量(重量平均分子量)が1,000以上の分散剤である。
【0163】
(成分H)分散剤としては、多くの種類の化合物を使用可能であり、具体的には、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株)製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(いずれもサンノプコ(株)製)等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000、41000などの各種ソルスパース分散剤(Lubrizol社製);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77,P84,F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(ADEKA(株)製)及びイソネットS−20(三洋化成工業(株)製)、DISPERBYK3000 101,103,106,108,109,111,112,116,130,140,142,162,163,164,166,167,170,171,174,176,180,182,2000,2001,2050,2150(ビックケミー社製)が挙げられる。その他、アクリル系共重合体など、分子末端又は側鎖に極性基を有するオリゴマー又はポリマーが挙げられる。
【0164】
本発明の樹脂組成物は、(成分H)分散剤として、(成分S)下記式(S)で表され、少なくとも1種の酸基を有する分散剤を含有することが好ましい。本発明の樹脂組成物は、成分Sを含有することにより、金属酸化物粒子の分散時において粗大粒子が少なく、分散液と重合体成分とを混合したときの凝集もないので、高屈折率で、透明性に優れた硬化物を形成することができる。
【0165】
【化24】
(式(S)中、R3は(m+n)価の連結基を表し、R4及びR5はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表し、A2は有機色素構造、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択された部分構造を少なくとも1種含む1価の有機基を表し、n個のA2、R4は、同一であっても、異なっていてもよく、mは0〜8を表し、nは2〜9を表し、m+nは3〜10であり、P2は高分子骨格を表し、m個のP2、R5は、同一であっても、異なっていてもよい。)
【0166】
成分Sは、少なくとも1種の酸基を有する分散剤である。酸基を有することにより、金属酸化物粒子に対し吸着基として作用すると推定され、金属酸化物粒子の分散性に優れる。
酸基としては、カルボン酸基(カルボキシル基)、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられ、金属酸化物粒子への吸着力と分散性との観点から、カルボン酸基、スルホン酸基及びリン酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、カルボン酸基が特に好ましい。上記分散剤における酸基は、これらを1種単独で、又は、2種以上を組み合わせて有していてもよい。
成分Sにおける酸基は、式(S)のいずれの構造が有していてもよい。具体的には例えば、酸基は、上記式(S)におけるA2に含まれてもよく、また、P2で示される高分子骨格中に含まれてもよく、A2及びP2の両方に含まれてもよいが、効果の観点からは、A2に含まれることが好ましい。
【0167】
上記式(S)において、A2は、有機色素構造、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、及び、水酸基よりなる群から選択された部分構造を少なくとも1種含む1価の有機基を表す。また、式(S)中にn個存在するA2はそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
【0168】
つまり、上記A2は、有機色素構造、複素環構造のような金属酸化物粒子に対する吸着能を有する構造や、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、及び、水酸基のように、金属酸化物粒子に対する吸着能を有する官能基を少なくとも1種含む1価の有機基を表す。
なお、以下、この金属酸化物粒子に対する吸着能を有する部分構造(上記構造及び官能基)を、適宜、「吸着部位」と総称して、説明する。
【0169】
上記吸着部位は、1つのA2の中に、少なくとも1種含まれていればよく、2種以上を含んでいてもよい。
また、本発明において、「吸着部位を少なくとも1種含む1価の有機基」は、前述の吸着部位と、1個から200個までの炭素原子、0個から20個までの窒素原子、0個から100個までの酸素原子、1個から400個までの水素原子、及び、0個から40個までの硫黄原子から成り立つ連結基と、が結合してなる1価の有機基である。なお、吸着部位自体が1価の有機基を構成しうる場合には、吸着部位そのものがA2で表される一価の有機基であってもよい。
まず、上記A2を構成する吸着部位について以下に説明する。
【0170】
上記「有機色素構造」としては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造が好ましい例として挙げられ、フタロシアニン系、アゾレーキ系、アントラキノン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系の色素構造がより好ましく、フタロシアニン系、アントラキノン系、ジケトピロロピロール系の色素構造が特に好ましい。
【0171】
また、上記「複素環構造」としては、複素環を少なくとも1以上有する基であればよい。上記「複素環構造」におけるヘテロ原子としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、又はS(硫黄原子)の少なくとも1つを含むことが好ましく、窒素原子を少なくとも1つ含むことがより好ましい。上記「複素環構造」における複素環としては、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、及び、アクリドンよりなる群から選ばれた複素環が好ましい例として挙げられ、ピロリン、ピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、カルバゾール、アクリジン、及び、アクリドンよりなる群から選ばれた複素環がより好ましい。
【0172】
なお、上記「有機色素構造」又は「複素環構造」は、更に置換基を有していてもよく、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から20までのアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート基等の炭酸エステル基、等が挙げられる。ここで、これらの置換基は、下記の構造単位又は上記構造単位が組み合わさって構成される連結基を介して有機色素構造又は複素環構造と結合していてもよい。
【0173】
【化25】
【0174】
上記「酸基」としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基、ホウ酸基が好ましい例として挙げられ、カルボン酸基、スルホン酸基、モノ硫酸エステル基、リン酸基、モノリン酸エステル基がより好ましく、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基が更に好ましく、カルボン酸基が特に好ましい。
【0175】
また、上記「塩基性窒素原子を有する基」としては、例えば、アミノ基(−NH2)、置換イミノ基(−NHR8、−NR910、ここで、R8、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。)、下記式(a1)で表されるグアニジル基、下記式(a2)で表されるアミジニル基などが好ましい例として挙げられる。
【0176】
【化26】
【0177】
式(a1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。
式(a2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。
【0178】
これらの中でも、アミノ基(−NH2)、置換イミノ基(−NHR8、−NR910、ここで、R8、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1から10までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)、上記式(a1)で表されるグアニジル基(式(a1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数1から10までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)、上記式(a2)で表されるアミジニル基(式(a2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に、炭素数1から10までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)などがより好ましい。
特に、アミノ基(−NH2)、置換イミノ基(−NHR8、−NR910、ここで、R8、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数1から5までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)、上記式(a1)で表されるグアニジル基(式(a1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、炭素数1から5までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)、上記式(a2)で表されるアミジニル基(式(a2)中、R13及びR14は各々独立に、炭素数1から5までのアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表す。)などが好ましく用いられる。
【0179】
上記「ウレア基」としては、例えば、−NR15CONR1617(ここで、R15、R16及びR17はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、又は、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。)が好ましい例として挙げられ、−NR15CONHR17(ここで、R15及びR17はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、又は、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。)がより好ましく、−NHCONHR17(ここで、R17は水素原子、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、又は、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。)が特に好ましい。
【0180】
上記「ウレタン基」としては、例えば、−NHCOOR18、−NR19COOR20、−OCONHR21、−OCONR2223(ここで、R18、R19、R20、R21、R22及びR23はそれぞれ独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、又は、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。)などが好ましい例として挙げられ、−NHCOOR18、−OCONHR21(ここで、R18及びR21はそれぞれ独立に、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、又は、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から20までのアルキル基、炭素数6から20までのアリール基、又は、炭素数7から20までのアラルキル基が好ましい。)などがより好ましく、−NHCOOR18、−OCONHR21(ここで、R18及びR21はそれぞれ独立に、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6以上のアリール基、又は、炭素数7以上のアラルキル基を表し、炭素数1から10までのアルキル基、炭素数6から12までのアリール基、又は、炭素数7から10までのアラルキル基が好ましい。)などが特に好ましい。
【0181】
上記「配位性酸素原子を有する基」としては、例えば、アセチルアセトナト基、クラウンエーテル構造を有する基などが挙げられる。
【0182】
上記「炭素数4以上の炭化水素基」としては、炭素数4以上のアルキル基、炭素数6以上のアリール基、炭素数7以上のアラルキル基などが好ましい例として挙げられ、炭素数4〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基などがより好ましく、炭素数4〜15のアルキル基(例えば、オクチル基、ドデシル基など)、炭素数6〜15のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、炭素数7〜15のアラルキル基(例えば、ベンジル基など)などが特に好ましい。
【0183】
上記「アルコキシシリル基」としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などが挙げられる。
【0184】
上記吸着部位と結合する連結基としては、単結合、又は、1個から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、及び、0個から20個までの硫黄原子から成り立つ連結基が好ましく、この連結基は、無置換であってもよいし、置換基を更に有していてもよい。この連結基の具体的な例として、下記の構造単位又は上記構造単位が組み合わさって構成される基を挙げることができる。
【0185】
【化27】
【0186】
上記連結基が置換基を有する場合、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6までのアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート基等の炭酸エステル基等が挙げられる。
【0187】
上記の中では、上記A2として、有機色素構造、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、及び、炭素数4以上の炭化水素基よりなる群から選択された部分構造を少なくとも1種含む1価の有機基であることが好ましく、酸基を少なくとも1種含む1価の有機基であることが特に好ましい。
【0188】
上記A2としては、下記式(4)で表される1価の有機基であることがより好ましい。
【0189】
【化28】
【0190】
上記式(4)中、B1は上記吸着部位(すなわち、有機色素構造、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、及び、水酸基よりなる群から選択された部分構造)を表し、R24は単結合又は(a+1)価の連結基を表す。aは、1〜10の整数を表し、式(4)中にa個存在するB1はそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
【0191】
上記B1で表される吸着部位としては、上記式(S)のA2を構成する吸着部位と同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
中でも、有機色素構造、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、及び、炭素数4以上の炭化水素基よりなる群から選択された部分構造が好ましく、酸基が特に好ましい。
【0192】
24は、単結合又は(a+1)価の連結基を表し、aは1〜10の整数を表し、1〜7の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが特に好ましい。
(a+1)価の連結基としては、1個から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、及び、0個から20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。
【0193】
上記(a+1)価の連結基は、具体的な例として、下記の構造単位又は上記構造単位が組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)を挙げることができる。
【0194】
【化29】
【0195】
24としては、単結合、又は、1個から50個までの炭素原子、0個から8個までの窒素原子、0個から25個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び、0個から10個までの硫黄原子から成り立つ(a+1)価の連結基が好ましく、単結合、又は、1個から30個までの炭素原子、0個から6個までの窒素原子、0個から15個までの酸素原子、1個から50個までの水素原子、及び0個から7個までの硫黄原子から成り立つ(a+1)価の連結基がより好ましく、単結合、又は、1個から10個までの炭素原子、0個から5個までの窒素原子、0個から10個までの酸素原子、1個から30個までの水素原子、及び、0個から5個までの硫黄原子から成り立つ(a+1)価の連結基が特に好ましい。
【0196】
上記のうち、(a+1)価の連結基が置換基を有する場合、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6までのアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート基等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0197】
上記式(S)において、R4及びR5はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基を表す。n個存在するR4はそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、m個存在するR5はそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
4及びR5における二価の連結基としては、1個から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、及び、0個から20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換であっても、置換基を更に有していてもよい。
【0198】
上記二価の連結基は、具体的な例として、下記の構造単位又は上記構造単位が組み合わさって構成される基を挙げることができる。
【0199】
【化30】
【0200】
4及びR5としてはそれぞれ独立に、単結合、又は、1個から50個までの炭素原子、0個から8個までの窒素原子、0個から25個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び、0個から10個までの硫黄原子から成り立つ二価の連結基が好ましく、単結合、又は、1個から30個までの炭素原子、0個から6個までの窒素原子、0個から15個までの酸素原子、1個から50個までの水素原子、及び0個から7個までの硫黄原子から成り立つ二価の連結基がより好ましく、単結合、又は、1個から10個までの炭素原子、0個から5個までの窒素原子、0個から10個までの酸素原子、1個から30個までの水素原子、及び、0個から5個までの硫黄原子から成り立つ二価の連結基が特に好ましい。
【0201】
上記のうち、二価の連結基が置換基を有する場合、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6までのアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート基等の炭酸エステル基、等が挙げられる。
【0202】
上記式(S)において、R3は、(m+n)価の連結基を表す。m+nは3〜10を満たす。
上記R3で表される(m+n)価の連結基としては、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び、0個から20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換であっても、置換基を更に有していてもよい。
【0203】
上記(m+n)価の連結基は、具体的な例として、下記の構造単位又は上記構造単位が組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)を挙げることができる。
【0204】
【化31】
【0205】
(m+n)価の連結基としては、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から40個までの酸素原子、1個から120個までの水素原子、及び、0個から10個までの硫黄原子から成り立つ基が好ましく、1個から50個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から30個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び、0個から7個までの硫黄原子から成り立つ基がより好ましく、1個から40個までの炭素原子、0個から8個までの窒素原子、0個から20個までの酸素原子、1個から80個までの水素原子、及び、0個から5個までの硫黄原子から成り立つ基が特に好ましい。
【0206】
上記のうち、(m+n)価の連結基が置換基を有する場合、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6までのアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート基等の炭酸エステル基等が挙げられる。
【0207】
上記R3で表される(m+n)価の連結基の具体的な例〔具体例(1)〜(17)〕を以下に示す。ただし、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0208】
【化32】
【0209】
【化33】
【0210】
上記の具体例の中でも、原料の入手性、合成の容易さ、各種溶媒への溶解性の観点から、最も好ましい(m+n)価の連結基は下記の基である。
【0211】
【化34】
【0212】
上記式(S)中、mは0〜8を表す。mとしては、0.5〜5が好ましく、0.5〜4がより好ましく、0.5〜3が特に好ましい。
また、上記式(S)中、nは2〜9を表す。nとしては、2〜8が好ましく、2〜7がより好ましく、3〜6が特に好ましい。
【0213】
また、式(S)中のP2は、高分子骨格を表し、公知のポリマーなどから目的等に応じて選択することができる。式(S)中にm個存在するP2はそれぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。また、P2は、一価の高分子骨格であることが好ましい。
高分子骨格を構成するポリマー鎖としては、ビニルモノマーの単独重合体若しくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アミド系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及び、これらの変性物又は共重合体〔例えば、ポリエーテル/ポリウレタン共重合体、ポリエーテル/ビニルモノマーの重合体の共重合体など(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、ランダム共重合体であることがより好ましい。)を含む。〕よりなる群から選択された少なくとも1種が好ましく、ビニルモノマーの重合体若しくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び、これらの変性物又は共重合体よりなる群から選択された少なくとも1種がより好ましく、ビニルモノマーの重合体又は共重合体が更に好ましく、アクリル樹脂((メタ)アクリルモノマーの重合体又は共重合体)が特に好ましい。
更には、上記ポリマーは、有機溶媒に可溶であることが好ましい。また、成分Sは、有機溶媒に可溶であることが好ましい。有機溶媒との親和性が低いと、例えば、分散媒との親和性が弱まり、分散安定化に十分な、金属酸化物粒子表面において成分Sにより形成される吸着層を確保できなくなることがある。
【0214】
本発明においては、上記P2における高分子骨格は、1種以上の酸基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
上記高分子骨格を構成する酸基を有するポリマーとしては、例えば、酸基を有する、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
【0215】
高分子骨格中に酸基を導入する手段には特に制限はなく、酸基を有するビニルモノマーにより導入する手段、架橋性側鎖を利用して酸基を付加させることにより導入する手段などをとることができるが、後述するように、高分子骨格が酸基を有するビニルモノマー由来の構成単位を含んで構成されることにより酸基が導入される態様が、酸基の導入量の制御が容易である点、合成コストの点から好ましい。
ここで、「酸基」とは、上記A2の説明において「酸基」として挙げたものを同様に挙げることができ、好ましくは、カルボキシル基である。
【0216】
上記ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリル、酸基を有するビニルモノマーなどが好ましい。
以下、これらのビニルモノマーの好ましい例について説明する。
【0217】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸γ−ブチロラクトン−2−イルなどが挙げられる。
【0218】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、及び、クロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及び、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及び、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及び、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0219】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0220】
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−ブトキシカルボニル基(t−Boc)など)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及び、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0221】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル及びフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
ビニルケトン類の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド類の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0222】
(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールなど)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
【0223】
上記の化合物以外にも、例えば、ウレタン基、ウレア基、スルホンアミド基、フェノール基、イミド基などの官能基を有するビニルモノマーも用いることができる。このようなウレタン基又はウレア基を有する単量体としては、例えば、イソシアナート基と水酸基又はアミノ基との付加反応を利用して、適宜合成することが可能である。具体的には、イソシアナート基含有モノマーと水酸基を1個含有する化合物、若しくは、1級若しくは2級アミノ基を1個含有する化合物との付加反応、又は、水酸基含有モノマー、若しくは、1級若しくは2級アミノ基含有モノマーとモノイソシアネートとの付加反応等により適宜合成することができる。
【0224】
次に、高分子骨格P2に酸基を導入するために用いられる酸基を有するビニルモノマーについて説明する。
上記酸基を有するビニルモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーやスルホン酸基を有するビニルモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なお、これらの中では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0225】
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
【0226】
更に、酸基を有するビニルモノマーとして、フェノール性ヒドロキシ基を含有するビニルモノマーやスルホンアミド基を含有するビニルモノマーなども利用することができる。
高分子骨格P2が酸基を含むビニルモノマー由来のモノマー単位を含む場合、酸基を有するビニルモノマー由来のモノマー単位の高分子骨格中の含有量は、質量換算で、高分子骨格の全体に対し、3質量%〜40質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0227】
上記式(S)で表され、少なくとも1種の酸基を有する分散剤のうち、以下に示すR3、R4、R5、P2、m及びnを全て満たすものが最も好ましい。
3:上記具体例(1)、(2)、(10)、(11)、(16)又は(17)
4:単結合、又は、下記の構造単位若しくは上記構造単位が組み合わさって構成される「1個から10個までの炭素原子、0個から5個までの窒素原子、0個から10個までの酸素原子、1個から30個までの水素原子、及び、0個から5個までの硫黄原子」から成り立つ二価の連結基(置換基を有していてもよく、上記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1から20までのアルキル基、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から16までのアリール基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホンアミド基、N−スルホニルアミド基、アセトキシ基等の炭素数1から6までのアシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6までのアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数2から7までのアルコキシカルボニル基、シアノ基、t−ブチルカーボネート基等の炭酸エステル基等が挙げられる。)
【0228】
【化35】
【0229】
5:単結合、エチレン基、プロピレン基、下記基(a)又は下記基(b)
なお、下記基中、R12は水素原子又はメチル基を表し、Lは1又は2を表す。
【0230】
【化36】
【0231】
2:カルボキシル基を有するビニルモノマーと他のビニルモノマーとの共重合体;酸基を有しないビニルモノマーの重合体又は共重合体;エステル系ポリマー、エーテル系ポリマー、及び、ウレタン系ポリマー、並びに、これらの変性物よりなる群から選択され、少なくとも1種の酸基を含んでいてもよいポリマー
m:0.5〜3
n:3〜6
【0232】
成分Sにおける酸基の含有量は、成分Sが有する酸価により適宜決定される。成分Sの酸価としては、20〜300mgKOH/gであることが好ましく、50〜250mgKOH/gがより好ましく、50〜210mgKOH/gが特に好ましい。酸価が20mgKOH/g以上であると、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性が十分得られ、酸価が300mgKOH/g以下であると、金属酸化物粒子の分散性、及び、分散安定性に優れる。
【0233】
成分Sの分子量としては、重量平均分子量で、2,000〜200,000が好ましく、2,000〜15,000がより好ましく、2,500〜10,000が特に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、ポリマーの末端に導入された複数の上記吸着部位の効果が十分に発揮され、固体表面への吸着性を発揮する。本発明の樹脂組成物が含有する成分Sは、1種類のみでもよいし、2種類以上であってもよい。2種類以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0234】
以下に、成分Sの例示化合物を挙げるが、本発明はこれに限定されず、式(S)に包含されるかぎりにおいて、任意の構造をとることができる。また、下記例示化合物において、P1及びP2はそれぞれ、任意の値をとることができる。また、下記例示化合物において、カルボン酸エステルを有するモノマー単位とカルボキシル基を有するモノマー単位とからなる高分子骨格(P2)と結合する硫黄原子は、いずれのモノマー単位と結合していてもよく、高分子骨格の硫黄原子と結合しない他末端は、下記の化学式に表記していないが、高分子骨格の末端に通常許容される原子又は基であればよい。
【0235】
【化37】
【0236】
【化38】
【0237】
【化39】
【0238】
【化40】
【0239】
【化41】
【0240】
【化42】
【0241】
【化43】
【0242】
上記成分Sの例示化合物中、高分子骨格におけるカルボン酸エステルを有するモノマー単位とカルボキシル基を有するモノマー単位との含有比(P1:P2)は、質量換算で、100:0〜80:20の範囲であることが好ましい。
成分Sは、例えば、特開2008−96678号公報や特開2007−277514号公報に記載の方法を参照して合成することができる。
【0243】
分散剤は、1種単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における分散剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、5〜70質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0244】
<その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記成分に加えて、必要に応じて、(成分I)増感剤、(成分J)密着改良剤、(成分K)塩基性化合物、(成分L)界面活性剤を好ましく加えることができる。更に本発明の感光性樹脂組成物には、上記紫外線吸収剤、金属不活性化剤や、酸増殖剤、現像促進剤、可塑剤、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤、増粘剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0245】
(成分I)増感剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分C)光酸発生剤との組み合わせにおいて、その分解を促進させるために、増感剤を含有することが好ましい。増感剤は、活性光線又は放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nmの波長域のいずれかに吸収波長を有する化合物を挙げることができる。
【0246】
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン,3,7−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロピルオキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、キサントン類(例えば、キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、ローダシアニン類、オキソノール類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アクリドン類(例えば、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、スチリル類、ベーススチリル類(例えば、2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}ベンゾオキサゾール)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−9−メチル−1H,5H,11H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−ノン)。
これら増感剤の中でも、多核芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類が好ましく、多核芳香族類がより好ましい。
【0247】
本発明の感光性樹脂組成物中における増感剤の添加量は、感光性樹脂組成物の光酸発生剤100質量部に対し、0〜1,000質量部であることが好ましく、10〜500質量部であることがより好ましく、50〜200質量部であることが更に好ましい。
また、増感剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0248】
(成分J)密着改良剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分J)密着改良剤を含有してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる(成分J)密着改良剤は、基材となる無機物、例えば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、金、銅、アルミニウム等の金属と絶縁膜との密着性を向上させる化合物である。具体的には、シランカップリング剤、チオール系化合物等が挙げられる。本発明で使用される密着改良剤としてのシランカップリング剤は、界面の改質を目的とするものであり、特に限定することなく、公知のものを使用することができる。
【0249】
好ましいシランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。
これらのうち、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましい。
また、下記の化合物も好ましく採用できる。なお、Phはフェニル基を表す。
【0250】
【化44】
【0251】
これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは基板との密着性の向上に有効であるとともに、基板とのテーパー角の調整にも有効である。
本発明の感光性樹脂組成物における(成分J)密着改良剤の含有量は、成分A100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0252】
(成分K)塩基性化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分K)塩基性化合物を含有してもよい。(成分K)塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられるものの中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、特開2011−221494号公報の段落0204〜0207に記載の化合物が挙げられる。
【0253】
具体的には、脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、N−シクロヘキシル−N’−[2−(4−モルホリニル)エチル]チオ尿素、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.3.0]−7−ウンデセンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
【0254】
本発明に用いることができる塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における塩基性化合物の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、0.001〜3質量部であることが好ましく、0.005〜1質量部であることがより好ましい。
【0255】
(成分L)界面活性剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分L)界面活性剤を含有してもよい。
(成分L)界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又は両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤は、ノニオン界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤の例として具体的には、特開昭62−36663号、特開昭61−226746号、特開昭61−226745号、特開昭62−170950号、特開昭63−34540号、特開平7−230165号、特開平8−62834号、特開平9−54432号、特開平9−5988号、特開2001−330953号等の各公報記載の界面活性剤を挙げることができ、市販の界面活性剤を用いることもできる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)、SH−8400(東レ・ダウコーニング(株)製)等の各シリーズを挙げることができる。
また、界面活性剤として、下記式(L−1)で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0256】
【化45】
(式(L−1)中、R401及びR403はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R402は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R404は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す質量百分率であり、pは10質量%以上80質量%以下の数値を表し、qは20質量%以上90質量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、sは1以上10以下の整数を表す。)
【0257】
上記Lは、下記式(L−2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(L−2)におけるR405は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
【0258】
【化46】
【0259】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
【0260】
これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物における界面活性剤の添加量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、0.001〜10質量部であることがより好ましく、0.01〜3質量部であることが更に好ましい。
【0261】
(成分M)酸増殖剤
本発明の感光性樹脂組成物は、感度向上を目的に、酸増殖剤を用いることができる。
本発明に用いることができる酸増殖剤は、酸触媒反応によって更に酸を発生して反応系内の酸濃度を上昇させることができる化合物であり、酸が存在しない状態では安定に存在する化合物である。このような化合物は、1回の反応で1つ以上の酸が増えるため、反応の進行に伴って加速的に反応が進むが、発生した酸自体が自己分解を誘起するため、ここで発生する酸の強度は、酸解離定数、pKaとして3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。また、−15以上であることが好ましく、−10以上であることがより好ましい。
酸増殖剤の具体例としては、特開平10−1508号公報の段落0203〜0223、特開平10−282642号公報の段落0016〜0055、及び、特表平9−512498号公報第39頁12行目〜第47頁2行目に記載の化合物を挙げることができる。
本発明で用いることができる酸増殖剤としては、酸発生剤から発生した酸によって分解し、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フェニルホスホン酸などのpKaが3以下の酸を発生させる化合物を挙げることができる。
具体的には、以下の化合物等を挙げることができる。
【0262】
【化47】
【0263】
酸増殖剤の感光性樹脂組成物への含有量は、光酸発生剤100質量部に対して、10〜1,000質量部とするのが、露光部と未露光部との溶解コントラストの観点から好ましく、20〜500質量部とするのが更に好ましい。
【0264】
(成分N)現像促進剤
本発明の感光性樹脂組成物は、現像促進剤を含有することができる。
現像促進剤としては、現像促進効果のある任意の化合物を使用できるが、カルボキシル基、フェノール性水酸基、及び、アルキレンオキシ基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の構造を有する化合物であることが好ましく、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する化合物がより好ましく、フェノール性水酸基を有する化合物が最も好ましい。
現像促進剤としては、特開2012−042837号公報の段落0171〜0172の記載を参酌でき、かかる内容は本願明細書に組み込まれる。
【0265】
現像促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物における現像促進剤の添加量は、感度と残膜率の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部であることが最も好ましい。
【0266】
(成分O)可塑剤
本発明の樹脂組成物は、(成分O)可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジメチルグリセリンフタレート、酒石酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリアセチルグリセリンなどが挙げられる。
本発明の樹脂組成物における可塑剤の含有量は、成分Aの含有量100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
【0267】
また、その他の添加剤としては特開2012−8223号公報の段落0120〜0121に記載の熱ラジカル発生剤、国際公開第2011/136074号に記載の窒素含有化合物及び熱酸発生剤も用いることができる。
【0268】
(硬化膜の製造方法(樹脂パターン製造方法))
次に、本発明の硬化膜(樹脂パターン)の製造方法を説明する。
本発明の硬化膜の製造方法は、以下の(1)〜(5)の工程を含むことが好ましい。
(1)本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程;
(2)塗布された樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程;
(3)溶剤が除去された樹脂組成物を活性光線によりパターン状に露光する露光工程;
(4)露光された樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程;
(5)現像された樹脂組成物を熱処理する熱処理工程。
以下に各工程を順に説明する。
【0269】
(1)の塗布工程では、本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して溶剤を含む湿潤膜とすることが好ましい。感光性樹樹脂組成物を基板へ塗布する前にアルカリ洗浄やプラズマ洗浄といった基板の洗浄を行うことが好ましく、更に基板洗浄後にヘキサメチルジシラザンで基板表面を処理することがより好ましい。この処理を行うことにより、感光性樹脂組成物の基板への密着性が向上する。ヘキサメチルジシラザンで基板表面を処理する方法としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチルジシラザン蒸気中に基板を晒しておく方法等が挙げられる。
上記の基板としては、無機基板、樹脂、樹脂複合材料、ITO、Cu基板、ポリエチレンテレフタレート、セルローストリアセテート(TAC)などのプラスチック基板が挙げられる。
無機基板としては、例えばガラス、石英、シリコーン、シリコンナイトライド、及び、それらのような基板上にモリブデン、チタン、アルミ、銅などを蒸着した複合基板が挙げられる。
樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、液晶ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、シアネート樹脂、架橋フマル酸ジエステル樹脂、環状ポリオレフィン、芳香族エーテル樹脂、マレイミド−オレフィン樹脂、セルロース、エピスルフィド樹脂等の合成樹脂からなる基板が挙げられる
これらの基板は、上記の形態のまま用いられる場合は少なく、最終製品の形態によって、例えばTFT素子のような多層積層構造が形成されている場合が通常である。
基板への塗布方法は特に限定されず、例えば、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、流延塗布法、スリットアンドスピン法等の方法を用いることができる。更に、特開2009−145395号公報に記載されているような、所謂プリウェット法を適用することも可能である。
塗布膜厚は特に限定されるものではなく、用途に応じた膜厚で塗布することができるが、0.5〜10μmの範囲で使用されることが好ましい。
【0270】
(2)の溶剤除去工程では、適用された上記の膜から、減圧(バキューム)及び/又は加熱により、溶剤を除去して基板上に乾燥塗膜を形成させる。溶剤除去工程の加熱条件は、好ましくは70〜130℃で30〜300秒間程度である。温度と時間が上記範囲である場合、パターンの密着性が良好で、かつ残渣も低減できる。
【0271】
(3)の露光工程では、塗膜を設けた基板に所定のパターンを有するマスクを介して、活性光線を照射する。この工程では、光酸発生剤が分解し酸が発生する。発生した酸の触媒作用により、塗膜成分中に含まれる酸分解性基が加水分解されて、酸基、例えば、カルボキシル基又はフェノール性水酸基が生成する。
活性光線による露光光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、LED光源、エキシマレーザー発生装置などを用いることができ、g線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター、バンドパスフィルターのような分光フィルターを通して照射光を調整することもできる。
露光装置としては、ミラープロジェクションアライナー、ステッパー、スキャナー、プロキシミティ、コンタクト、マイクロレンズアレイ、レーザー露光など各種方式の露光機を用いることができる。
酸触媒の生成した領域において、上記の加水分解反応を加速させるために、露光後加熱処理:Post Exposure Bake(以下、「PEB」ともいう。)を行うことができる。PEBにより、酸分解性基からのカルボキシル基又はフェノール性水酸基の生成を促進させることができる。PEBを行う場合の温度は、30℃以上130℃以下であることが好ましく、40℃以上110℃以下がより好ましく、50℃以上100℃以下が特に好ましい。
ただし、本発明における酸分解性基は、酸分解の活性化エネルギーが低く、露光による酸発生剤由来の酸により容易に分解し、酸基、例えば、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を生じるため、必ずしもPEBを行うことなく、現像によりポジ画像を形成することもできる。
【0272】
(4)の現像工程では、遊離したカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する共重合体を、アルカリ性現像液を用いて現像する。アルカリ性現像液に溶解しやすい酸基、例えば、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する樹脂組成物を含む露光部領域を除去することにより、ポジ画像が形成する。
現像工程で使用する現像液には、塩基性化合物が含まれることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩類;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類:コリン等の(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウムヒドロキシド類;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩類;エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の脂環式アミン類を使用することができる。
これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が好ましい。
また、上記塩基性化合物の水溶液にメタノールやエタノールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる
好ましい現像液として、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドの0.4質量%水溶液、0.5質量%水溶液、0.7質量%水溶液、又は、2.38質量%水溶液を挙げることができる。
現像液のpHは、9.0〜14が好ましく、10.0〜14.0がより好ましい。現像液の濃度は0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましい。現像時間は、好ましくは30〜500秒間であり、より好ましくは30〜180秒間である。現像の手法は液盛り法、ディップ法、シャワー法等のいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を行い、所望のパターンを形成させることができる。流水洗浄の時間は、好ましくは30〜300秒間であり、より好ましくは30〜90秒間である。
現像の後に、リンス工程を行うこともできる。リンス工程では、現像後の基板を純水などで洗うことで、付着している現像液除去、現像残渣除去を行う。リンス方法は公知の方法を用いることができる。例えばシャワーリンスやディップリンスなどを挙げることができる。
【0273】
(5)の熱処理工程(ポストベーク)では、得られたポジ画像を加熱することにより、酸分解性基を熱分解し酸基、例えば、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を生成させ、架橋性基、架橋剤等と架橋させることにより、硬化膜を形成することができる。この加熱は、ホットプレートやオーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば180℃〜250℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜90分間、オーブンならば30〜120分間、加熱処理をすることが好ましい架橋反応を進行させることにより、耐熱性、硬度等に優れた保護膜や層間絶縁膜を形成することができる。また、加熱処理を行う際は窒素雰囲気下で行うことにより透明性を向上させることもできる。プラスチック基板を用いたときは、80℃〜140℃で5分〜120分間、加熱処理をすることが好ましい。
熱処理工程(ポストベーク)の前に、比較的低温でベークを行った後に熱処理工程を行うこともできる(ミドルベーク工程の追加)。ミドルベークを行う場合は、90〜150℃で1〜60分加熱した後に、200℃以上の高温でポストベークすることが好ましい。また、ミドルベーク、ポストベークを3段階以上の多段階に分けて加熱することもできる。このようなミドルベーク、ポストベークの工夫により、パターンのテーパー角を調整することができる。これらの加熱は、ホットプレート、オーブン、赤外線ヒーターなど、公知の加熱方法を使用することができる。
なお、ポストベークに先立ち、パターンを形成した基板に活性光線により全面再露光(ポスト露光)した後、ポストベークすることにより未露光部分に存在する光酸発生剤から酸を発生させ、架橋工程を促進する触媒として機能させることができ、膜の硬化反応を促進することができる。ポスト露光工程を含む場合の好ましい露光量としては、100〜3,000mJ/cm2が好ましく、100〜500mJ/cm2が特に好ましい。
【0274】
更に、本発明の感光性樹脂組成物より得られた硬化膜は、ドライエッチングレジストとして使用することもできる。熱処理工程により熱硬化して得られた硬化膜をドライエッチングレジストとして使用する場合、エッチング処理としてはアッシング、プラズマエッチング、オゾンエッチングなどのドライエッチング処理を行うことができる。
【0275】
(硬化膜)
本発明の硬化膜は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜である。
本発明の硬化膜は、層間絶縁膜として好適に用いることができる。また、本発明の硬化膜は、本発明の硬化膜の形成方法により得られた硬化膜であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物により、絶縁性に優れ、高温でベークされた場合においても高い透明性を有する層間絶縁膜が得られる。本発明の感光性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁膜は、高い透明性を有し、硬化膜物性に優れるため、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
【0276】
(硬化物及びその製造方法)
本発明の硬化物は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化物であり、上記のように、その形状は、膜でなくともよく、任意の形状であればよい。
本発明の硬化物の製造方法は、特に制限はないが、少なくとも以下の工程(a)〜(c)をこの順に含むことが好ましい。
(a)本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程;
(b)塗布された樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程;
(c)溶剤が除去された樹脂組成物を熱処理する熱処理工程。
【0277】
工程(a)及び工程(b)はそれぞれ、上記塗布工程及び上記溶剤除去工程と同義であり、好ましい態様も同様である。
工程(c)は、熱処理する対象が工程(b)で得られた溶剤が除去された樹脂組成物であること以外は、上記熱処理工程と同様の工程であり、上記熱処理工程における加熱温度、加熱時間、加熱手段等の好ましい態様も同様に好ましい。
【0278】
本発明の硬化物又は硬化膜は、マイクロレンズ、光導波路、反射防止膜、LED用封止材及びLED用チップコート材等の光学部材、又は、タッチパネルに使用される配線電極の視認性低減用硬化物として好適に用いることができる。
また、本発明の硬化物又は硬化膜は、例えば、後述するような、液晶表示装置又は有機EL装置等における平坦化膜や層間絶縁膜、カラーフィルターの保護膜、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの構造部材等に好適に用いることができる。
【0279】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、本発明の硬化膜を具備することを特徴とする。
本発明の液晶表示装置としては、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される平坦化膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとる公知の液晶表示装置を挙げることができる。
例えば、本発明の液晶表示装置が具備するTFT(Thin-Film Transistor)の具体例としては、アモルファスシリコン−TFT、低温ポリシリコン−TFT、酸化物半導体TFT等が挙げられる。本発明の硬化膜は電気特性に優れるため、これらのTFTに組み合わせて好ましく用いることができる。
また、本発明の液晶表示装置が取りうる液晶駆動方式としてはTN(Twisted Nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In-Place-Switching)方式、FFS(Frings Field Switching)方式、OCB(Optical Compensated Bend)方式などが挙げられる。
パネル構成においては、COA(Color Filter on Allay)方式の液晶表示装置でも本発明の硬化膜を用いることができ、例えば、特開2005−284291号公報に記載の有機絶縁膜(115)や、特開2005−346054号公報に記載の有機絶縁膜(212)として用いることができる。
また、本発明の液晶表示装置が取りうる液晶配向膜の具体的な配向方式としてはラビング配向法、光配向方などが挙げられる。また、特開2003−149647号公報や特開2011−257734号公報に記載のPSA(Polymer Sustained Alignment)技術によってポリマー配向支持されていてもよい。
また、本発明の感光性樹脂組成物及び本発明の硬化膜は、上記用途に限定されず種々の用途に使用することができる。例えば、平坦化膜や層間絶縁膜以外にも、カラーフィルターの保護膜や、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーや固体撮像素子においてカラーフィルター上に設けられるマイクロレンズ等に好適に用いることができる。
【0280】
図1は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置10の一例を示す概念的断面図である。このカラー液晶表示装置10は、背面にバックライトユニット12を有する液晶パネルであって、液晶パネルは、偏光フィルムが貼り付けられた2枚のガラス基板14,15の間に配置されたすべての画素に対応するTFT16の素子が配置されている。ガラス基板上に形成された各素子には、硬化膜17中に形成されたコンタクトホール18を通して、画素電極を形成するITO透明電極19が配線されている。ITO透明電極19の上には、液晶20の層とブラックマトリックスを配置したRGBカラーフィルター22が設けられている。
バックライトの光源としては、特に限定されず公知の光源を用いることができる。例えば白色LED、青色・赤色・緑色などの多色LED、蛍光灯(冷陰極管)、有機ELなどを挙げることができる。
また、液晶表示装置は、3D(立体視)型のものとしたり、タッチパネル型のものとしたりすることも可能である。更にフレキシブル型にすることも可能であり、特開2011−145686号公報に記載の第2相間絶縁膜(48)や、特開2009−258758号公報に記載の相間絶縁膜(520)として用いることができる。
【0281】
(有機EL表示装置)
本発明の有機EL表示装置は、本発明の硬化膜を具備することを特徴とする。
本発明の有機EL表示装置としては、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される平坦化膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとる公知の各種有機EL表示装置や液晶表示装置を挙げることができる。
例えば、本発明の有機EL表示装置が具備するTFT(Thin-Film Transistor)の具体例としては、アモルファスシリコン−TFT、低温ポリシリコン−TFT、酸化物半導体TFT等が挙げられる。本発明の硬化膜は電気特性に優れるため、これらのTFTに組み合わせて好ましく用いることができる。
図2は、有機EL表示装置の一例の構成概念図である。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34から成る絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)が絶縁膜3上に形成されている。配線2は、TFT1間、又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
更に、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上に平坦化層4が形成されている。
平坦化膜4上には、ボトムエミッション型の有機EL素子が形成されている。すなわち、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5が、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成されている。また、第一電極5は、有機EL素子の陽極に相当する。
第一電極5の周縁を覆う形状の絶縁膜8が形成されており、この絶縁膜8を設けることによって、第一電極5とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
更に、図2には図示していないが、所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設け、次いで、基板上方の全面にAlから成る第二電極を形成し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止し、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続されてなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。
【0282】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化性及び硬化膜特性に優れるため、MEMSデバイスの構造部材として、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたレジストパターンを隔壁としたり、機械駆動部品の一部として組み込んで使用される。このようなMEMS用デバイスとしては、例えば、SAW(surface acoustic wave)フィルター、BAW(bulk acoustic wave)フィルター、ジャイロセンサー、ディスプレイ用マイクロシャッター、イメージセンサー、電子ペーパー、インクジェットヘッド、バイオチップ、封止剤等の部品が挙げられる。より具体的な例は、特表2007−522531号公報、特開2008−250200号公報、特開2009−263544号公報等に例示されている。
【0283】
本発明の感光性樹脂組成物は、平坦性や透明性に優れるため、例えば、特開2011−107476号公報の図2に記載のバンク層(16)及び平坦化膜(57)、特開2010−9793号公報の図4(a)に記載の隔壁(12)及び平坦化膜(102)、特開2010−27591号公報の図10に記載のバンク層(221)及び第3層間絶縁膜(216b)、特開2009−128577号公報の図4(a)に記載の第2層間絶縁膜(125)及び第3層間絶縁膜(126)、特開2010−182638号公報の図3に記載の平坦化膜(12)及び画素分離絶縁膜(14)などの形成に用いることもできる。
【0284】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、透明性や屈折率に優れるため、マイクロレンズやプリズム用の部材、光取り出し用の部材として好適に使用される。例えば、ディスプレイ用のフラットパネルの、バックライトユニット中で用いられる、プリズム用の部材やプリズムと導光板との接合用の部材として用いることができる。また、例えば、有機ELディスプレイの光取り出し効率の改善用の部材としても用いることができる。
【0285】
(タッチパネル表示装置)
本発明のタッチパネル表示装置は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物を有する。また、本発明のタッチパネルは、本発明の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物を有する。
本発明の静電容量型入力装置は、本発明の本発明の感光性樹脂組成物を硬化した硬化物を有することを特徴とする。
本発明の静電容量型入力装置は、前面板と、上記前面板の非接触側に、少なくとも下記(1)〜(5)の要素を有し、上記(4)が本発明の熱処理物であることが好ましい。
(1)マスク層
(2)複数のパッド部分が接続部分を介して第一の方向に延在して形成された複数の第一の透明電極パターン
(3)上記第一の透明電極パターンと電気的に絶縁され、上記第一の方向に交差する方向に延在して形成された複数のパッド部分からなる複数の第二の透明電極パターン
(4)上記第一の透明電極パターンと上記第二の透明電極パターンとを電気的に絶縁する絶縁層
(5)上記第一の透明電極パターン及び上記第二の透明電極パターンの少なくとも一方に電気的に接続され、上記第一の透明電極パターン及び上記第二の透明電極パターンとは別の導電性要素
本発明の静電容量型入力装置は、更に上記(1)〜(5)の要素の全て又は一部を覆うように透明保護層を設置することが好ましく、上記透明保護層が本発明の硬化膜であることがより好ましい。
【0286】
まず、静電容量型入力装置の構成について説明する。図3は、静電容量型入力装置の構成を示す断面図である。図3において静電容量型入力装置30は、前面板31と、マスク層32と、第一の透明電極パターン33と、第二の透明電極パターン34と、絶縁層35と、導電性要素36と、透明保護層37と、から構成されている。
【0287】
前面板31は、ガラス基板等の透光性基板で構成されており、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、図3において、前面板31の各要素が設けられている側を非接触面と称する。本発明の静電容量型入力装置30においては、前面板31の接触面(非接触面の反対の面)に指などを接触などさせて入力が行われる。以下、前面板を、「基材」と称する場合がある。
【0288】
また、前面板31の非接触面上にはマスク層32が設けられている。マスク層32は、タッチパネル前面板の非接触側に形成された表示領域周囲の額縁状のパターンであり、引回し配線等が見えないようにするために形成される。
本発明の静電容量型入力装置には、図4に示すように、前面板31の一部の領域(図4においては入力面以外の領域)を覆うようにマスク層32が設けられている。更に、前面板31には、図4に示すように一部に開口部38を設けることができる。開口部38には、押圧によるメカニカルなスイッチを設置することができる。
【0289】
図5に示すように、前面板31の接触面には、複数のパッド部分が接続部分を介して第一の方向に延在して形成された複数の第一の透明電極パターン33と、第一の透明電極パターン33と電気的に絶縁され、第一の方向に交差する方向に延在して形成された複数のパッド部分からなる複数の第二の透明電極パターン34と、第一の透明電極パターン33と第二の透明電極パターン34を電気的に絶縁する絶縁層35とが形成されている。上記第一の透明電極パターン33と、第二の透明電極パターン34と、後述する導電性要素36とは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透光性の導電性金属酸化膜で作製することができる。このような金属膜としては、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO2等の金属酸化膜などが挙げられる。この際、各要素の、膜厚は10〜200nmとすることができる。また、焼成により、アモルファスのITO膜を多結晶のITO膜とするため、電気的抵抗を低減することもできる。また、上記第一の透明電極パターン33と、第二の透明電極パターン34と、後述する導電性要素36とは、上記導電性繊維を用いた感光性樹脂組成物を有する感光性転写材料を用いて製造することもできる。その他、ITO等によって第一の導電性パターン等を形成する場合には、特許第4506785号公報の段落0014〜0016等を参考にすることができる。
【0290】
また、第一の透明電極パターン33及び第二の透明電極パターン34の少なくとも一方は、前面板31の非接触面及びマスク層32の前面板31とは逆側の面の両方の領域にまたがって設置することができる。図3においては、第二の透明電極パターンが、前面板31の非接触面及びマスク層32の前面板31とは逆側の面の両方の領域にまたがって設置されている図が示されている。
【0291】
図5を用いて第一の透明電極パターン33及び第二の透明電極パターン34について説明する。図5は、本発明における第一の透明電極パターン及び第二の透明電極パターンの一例を示す説明図である。図5に示すように、第一の透明電極パターン33は、パッド部分33aが接続部分33bを介して第一の方向に延在して形成されている。また、第二の透明電極パターン34は、第一の透明電極パターン33と絶縁層35によって電気的に絶縁されており、第一の方向に交差する方向(図5における第二の方向)に延在して形成された複数のパッド部分によって構成されている。ここで、第一の透明電極パターン33を形成する場合、上記パッド部分33aと接続部分33bとを一体として作製してもよいし、接続部分33bのみを作製して、パッド部分33aと第二の透明電極パターン34とを一体として作製(パターニング)してもよい。パッド部分33aと第二の透明電極パターン34とを一体として作製(パターニング)する場合、図5に示すように接続部分33bの一部とパッド部分33aの一部とが連結され、かつ、絶縁層35によって第一の透明電極パターン33と第二の透明電極パターン34とが電気的に絶縁されるように各層が形成される。
【0292】
図3において、マスク層32の前面板31とは逆側の面側には導電性要素36が設置されている。導電性要素36は、第一の透明電極パターン33及び第二の透明電極パターン34の少なくとも一方に電気的に接続され、かつ、第一の透明電極パターン33及び第二の透明電極パターン34とは別の要素である。図3においては、導電性要素36が第二の透明電極パターン34に接続されている図が示されている。
【0293】
また、図3においては、各構成要素の全てを覆うように透明保護層37が設置されている。透明保護層37は、各構成要素の一部のみを覆うように構成されていてもよい。絶縁層35と透明保護層37とは、同一材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0294】
<静電容量型入力装置、及び、静電容量型入力装置を具備したタッチパネル表示装置>
本発明の製造方法によって得られる静電容量型入力装置、及び、当該静電容量型入力装置を構成要素として備えたタッチパネル表示装置は、「最新タッチパネル技術」(2009年7月6日発行(株)テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
【0295】
<タッチパネル及びその製造方法>
本発明のタッチパネルは、絶縁層の全部又は一部が本発明の樹脂組成物の熱処理物(硬化物)からなるタッチパネルである。また、本発明のタッチパネルは、透明基板、ITO電極及び絶縁層を少なくとも有することが好ましい。
本発明のタッチパネル表示装置は、本発明のタッチパネルを有するタッチパネル表示装置であることが好ましい。
また、本発明のタッチパネルの製造方法は、透明基板、ITO電極及び絶縁層を有するタッチパネルの製造方法であって、ITO電極に接するように、本発明のインクジェット塗布用感光性樹脂組成物をインクジェット塗布方式により塗布する工程、上記樹脂組成物上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、活性エネルギー線照射を行い露光する工程、露光後の樹脂組成物を現像する工程、及び、現像後の樹脂組成物を加熱して、絶縁層を製造する工程、を含むことが好ましい。
【0296】
本発明のタッチパネルにおける透明基板としては、ガラス基板、石英基板、透明樹脂基板等が好ましく挙げられる。
上記ITO電極に接するように、本発明のインクジェット塗布用感光性樹脂組成物をインクジェット塗布方式により塗布する工程におけるインクジェット塗布は、上述した塗布工程と同様に行うことができ、好ましい態様も同様である。また、上記工程においては、塗布された本発明の感光性樹脂組成物の少なくとも一部が、ITO電極に接していればよい。
上記樹脂組成物上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、活性エネルギー線照射を行い露光する工程、露光後の樹脂組成物を現像する工程は、上述した露光工程と同様に行うことができ、好ましい態様も同様である。
上記現像後の樹脂組成物を加熱して、絶縁層を製造する工程は、上述した熱処理工程と同様に行うことができ、好ましい態様も同様である。
また、本発明のタッチパネルにおけるITO電極パターンの一例としては、上述した図5に示すパターンが好ましく挙げられる。
【実施例】
【0297】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0298】
以下の実施例において、以下の符号はそれぞれ以下の化合物を表す。
MATHF:メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(合成品)
MAEVE:メタクリル酸1−エトキシエチル(和光純薬工業(株)製)
MACHOE:1−(シクロヘキシルオキシ)エチルメタクリレート(合成品)
MATHP:メタクリル酸テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル(新中村化学工業(株)製)
GMA:グリシジルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)
OXE−30:メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(大阪有機化学工業(株)製)
NBMA:n−ブトキシメチルアクリルアミド(三菱レイヨン(株)製)
MAA:メタクリル酸(和光純薬工業(株)製)
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(和光純薬工業(株)製)
MMA:メタクリル酸メチル(和光純薬工業(株)製)
St:スチレン(和光純薬工業(株)製)
DCPM:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業(株)製)
V−601:ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業(株)製)
V−65:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製)
MEDG:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(東邦化学工業(株)製、ハイソルブEDM)
PGMEA:メトキシプロピルアセテート(昭和電工(株)製)
【0299】
<MATHFの合成>
メタクリル酸(86g、1mol)を15℃に冷却しておき、カンファースルホン酸(4.6g,0.02mol)添加した。その溶液に、2−ジヒドロフラン(71g、1mol、1.0当量)を滴下した。1時間撹拌した後に、飽和炭酸水素ナトリウム(500mL)を加え、酢酸エチル(500mL)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、不溶物をろ過後40℃以下で減圧濃縮し、残渣の黄色油状物を減圧蒸留して沸点(bp.)54〜56℃/3.5mmHg留分のメタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(MATHF)125gを無色油状物として得た(収率80%)。
【0300】
なお、MACHOEは、2−ジヒドロフランを対応する化合物に変更した以外、上記MATHFと同様の方法で合成した。
【0301】
<酸価の測定方法>
重合体の酸価は、水酸化カリウムを用いた滴定により測定した。
【0302】
<分散液D1の調製>
下記組成の分散液を調合し、これをジルコニアビーズ(0.3mmφ)17,000部と混合し、ペイントシェーカーを用いて12時間分散を行った。ジルコニアビ−ズ(0.3mmφ)をろ別し、分散液D1を得た。
・二酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:TTO−51(C)、平均一次粒径:10〜30nm):1,875部
・分散剤(DISPERBYK−111:ビックケミー・ジャパン(株)製の30%PGMEA溶液):2,200部
・溶剤 PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3,425部
【0303】
<分散液D2〜D10の調製>
TTO−51(C)及びDISPERBYK−111を、表1に記載のものにそれぞれ変更した以外は、分散液D1の調製と同様にして、分散液D2〜D10をそれぞれ得た。
【0304】
【表1】
【0305】
なお、表1に記載の分散液に使用した前述した以外の略号は、以下に示す通りである。なお、化合物1及び2の「m」、「n」は平均置換数を、化合物1の「P1:P2」の値は共重合比(質量比)を、化合物2の「P1」の値はモノマー単位の繰り返し数を、それぞれ表している。
また、化合物1及び2は、いずれも特開2007−277514号公報に記載された方法を参照し、合成した。
−酸化チタン(TiO2)粒子(2種類)−
TTO−51(C):二酸化チタン、石原産業(株)製、平均一次粒径:10〜30nm
TTO−51(A):二酸化チタン、石原産業(株)製、平均一次粒径:10〜30nm
【0306】
−分散剤(5種類)−
DISPERBYK−111:分散剤、ビックケミー・ジャパン(株)製
DISPERBYK−2001:分散剤、ビックケミー・ジャパン(株)製
ソルスパース41000:分散剤、Lubrizol社製
化合物1(下記化合物、Mw=13,800、30%PGMEA溶液)
【0307】
【化48】
【0308】
化合物2:下記化合物、Mw=3,200、30%PGMEA溶液
【0309】
【化49】
【0310】
−重合体(3種類)−
<重合体P1の合成>
メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(0.40モル当量)、
メタクリル酸(0.10モル当量)、
メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(0.50モル当量)を合計で100部、及び、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(120部)の混合溶液を窒素気流下、70℃に加熱した。この混合溶液を撹拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート))、和光純薬工業(株)製、12.0部)及びPGMEA(80部)の混合溶液を3.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、70℃で2時間反応させることにより重合体P1のPGMEA溶液を得た。更にPGMEAを添加して固形分濃度40質量%に調整した。
得られた重合体P1のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、15,000であった。酸価は、45mgKOH/gであった。
【0311】
<重合体P2の合成>
モノマー組成を以下に変更した以外は、重合体P1と同様の方法により、重合体P2のPGMEA溶液を得た。更にPGMEAを添加して固形分濃度40質量%に調整した。
メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(0.65モル当量)、
メタクリル酸(0.15モル当量)、
メチルメタクリレート(0.20モル当量)
得られた重合体P2のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、15,000であった。酸価は、60mgKOH/gであった。
【0312】
<重合体P3の合成>
モノマー組成を以下に変更した以外は、重合体P1と同様の方法により、重合体P3のPGMEA溶液を得た。更にPGMEAを添加して固形分濃度40質量%に調整した。
グリシジルメタクリレート(0.70モル当量)、
メタクリル酸(0.10モル当量)、
スチレン(0.15モル当量)
ジシクロペンタニルメタクリレート(0.05モル当量)
得られた重合体P3のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、12,000であった。酸価は、45mgKOH/gであった。
【0313】
<重合体P4の合成>
3つ口フラスコにMEDG(89g)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。その溶液にMAA(全単量体成分中の9.5mol%となる量)、MATHF(全単量体成分中の43mol%となる量)、GMA(全単量体成分中の47.5mol%に相当)、V−65(全単量体成分の合計100mol%に対して4mol%に相当)を溶解させ、2時間かけて滴下した。滴下終了後2時間撹拌し、反応を終了させた。それにより重合体P4を得た。なお、MEDGとその他の成分の合計量の比を70:30とした。即ち、固形分濃度30%の重合体溶液を調製した。
【0314】
<重合体P5〜P11の合成>
使用するモノマーの種類、重合開始剤等を下記表2に示す通りに変更し、他の重合体を合成した。
【0315】
【表2】
【0316】
上記表2中の特に単位を付していない数値は、mol%を単位とする。また、重合開始剤の数値は、単量体成分を100mol%とした場合の、mol%である。
固形分濃度は、以下の式により算出できる。
固形分濃度:モノマー重量/(モノマー重量+溶剤重量)×100(単位:質量%)
また、開始剤として、V−601を用いた場合は反応温度を90℃とし、V−65を用いた場合は反応温度を70℃とした。
【0317】
(実施例1)
<感光性樹脂組成物の調製>
下記組成にて、配合し混合して均一な溶液とした後、0.2μmのポアサイズを有するポリエチレン製フィルターを用いてろ過して、実施例1の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用い、後述する各種評価を行った。評価結果を後述の表3に示す。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:191.1部
・塩基性化合物K−1(東洋化成工業(株)製、CMTU)の0.2%PGMEA溶液:25.7部
・重合体P1の30%PGMEA溶液:263.3部
・光酸発生剤B−1(下記化合物):5.1部
・架橋剤F−1(JER157S65、(株)三菱ケミカルホールディングス製、エポキシ当量:200〜220g/eq):17.9部
・シラン化合物J−1(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−403、信越化学工業(株)製):4.5部
・イルガノックス1726(酸化防止剤、BASF社製):3.0部
・パーフルオロアルキル基含有ノニオン界面活性剤(F−554、DIC(株)製)の2.0%PGMEA溶液:11.0部
・分散液D1:478.4部
・2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物AF−5:上記成分の総量1,000部に対し、5.8部
【0318】
【化50】
【0319】
【化51】
【0320】
<B−1の合成>
以下の方法にしたがって、上記B−1を合成した。
2−ナフトール(10g)、クロロベンゼン(30mL)の懸濁溶液に塩化アルミニウム(10.6g)、2−クロロプロピオニルクロリド(10.1g)を添加し、混合液を40℃に加熱して2時間反応させた。氷冷下、反応液に4NHCl水溶液(60mL)を滴下し、酢酸エチル(50mL)を添加して分液した。有機層に炭酸カリウム(19.2g)を加え、40℃で1時間反応させた後、2NHCl水溶液(60mL)を添加して分液し、有機層を濃縮後、結晶をジイソプロピルエーテル(10mL)でリスラリーし、ろ過、乾燥してケトン化合物(6.5g)を得た。
得られたケトン化合物(3.0g)、メタノール(30mL)の懸濁溶液に酢酸(7.3g)、50質量%ヒドロキシルアミン水溶液(8.0g)を添加し、加熱還流した。放冷後、水(50mL)を加え、析出した結晶をろ過、冷メタノール洗浄後、乾燥してオキシム化合物(2.4g)を得た。
得られたオキシム化合物(1.8g)をアセトン(20mL)に溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(1.5g)、p−トルエンスルホニルクロリド(2.4g)を添加し、室温(25℃)に昇温して1時間反応させた。反応液に水(50mL)を添加し、析出した結晶をろ過後、メタノール(20mL)でリスラリーし、ろ過、乾燥してB−1を2.3g得た。
なお、B−1の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)は、δ=8.3(d,1H),8.0(d,2H),7.9(d,1H),7.8(d,1H),7.6(dd,1H),7.4(dd,1H)7.3(d,2H),7.1(d.1H),5.6(q,1H),2.4(s,3H),1.7(d,3H)であった。
【0321】
−成分B(2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物)−
【0322】
【化52】
【0323】
−比較化合物H−1〜H−3−
【0324】
【化53】
【0325】
(評価方法)
<未露光部の残膜率評価>
100mm×100mmのガラス基板(商品名:XG、コーニング社製)上に、得られた感光性樹脂組成物を膜厚1.0μmとなるようにスピンコーターにて塗布し、80℃のホットプレート上で120秒乾燥(プリベーク)した。
次いで、0.5質量%のKOH水溶液により23℃で30秒間浸液盛り法にて現像し、更に超純水で10秒間リンスした。その後、更に膜厚を測定することにより、元の膜厚(1.0μm)を100%とした場合に対する現像後の残膜率を求めた。なお、評価基準は、以下に示す通りである。1又は2が実用範囲である。
1:現像後の残膜率が90%以上である。
2:現像後の残膜率が80%以上90%未満である。
3:現像後の残膜率が80%未満である。
【0326】
<解像性評価>
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いて、3分処理した100mm×100mmのガラス基板(商品名:XG、コーニング社製)上に、得られた感光性樹脂組成物を膜厚2.0μmとなるようにスピンコーターにて塗布し、90℃のホットプレート上で120秒乾燥(プリベーク)した。
次に、ghi線高圧水銀灯露光機を用いて、照度20mW/cm2、200mJ/cm2にて、ラインアンドスペース1:1の1%〜60%グラデーション付きマスクを介して露光した。
次に、0.5%のKOH水溶液により23℃で30秒間浸液盛り法にて現像し、更に超純水で10秒間リンスした。続いて220℃45分加熱してパターンを得た。このパターンを光学顕微鏡で観察した。
この操作をマスクのラインアンドスペースの幅50μmから開始し、10μmまでは、5μmずつ、10μm以下は、幅を1μmずつ狭めていき、最適露光量部分のきれいにパターン作製できた最小幅を解像度とした。1〜3が実用範囲である。
1:解像度が5μm以下であった。
2:解像度が5μmを超え10μm以下であった。
3:解像度が10μmを超え50μm以下であった。
4:マスクのラインアンドスペースの幅50μmでパターンを形成できなかった。
【0327】
<透過率の評価>
100mm×100mmのガラス基板(商品名:XG、コーニング社製)上に、得られた感光性樹脂組成物を膜厚1.0μmとなるようにスピンコーターにて塗布し、80℃のホットプレート上で120秒乾燥(プリベーク)した。更に、塗布膜を220℃のオーブンで245分加熱処理(ポストベーク)を施し、ポストベーク後の分光を大塚電子(株)製MCPD−3000にて計測し、400nmの透過率を以下の評価基準により評価した。
1:400nmの透過率が85%以上であった。
2:400nmの透過率が80%以上85%未満であった。
3:400nmの透過率が80%未満であった。
【0328】
<ITO視認性の評価>
100mm×100mmのガラス基板(商品名:XG、コーニング社製)上に、あらかじめITOのパターンを形成しておき、得られた感光性樹脂組成物を膜厚1.0μmとなるようにスピンコーターにて塗布し、80℃のホットプレート上で120秒乾燥(プリベーク)した。
次に、基板全面にghi線高圧水銀灯露光機を用いて、照度20mW/cm2、200mJ/cm2にて、露光した。
続いて220℃45分加熱してITOパターン上に感光性組樹脂組成物の乾燥膜を設けた。得られた基板を明室内において肉眼で、傾斜をかけながら観察し、ITOパターン上に感光性樹脂組成物を設けなかった時と比較して、視認性の評価を行った。なお、評価基準は、ITOのパターンが見えにくいほど良い。1又は2が実用範囲である。
1:ITOのパターンがほぼ見えない。
2:ITOのパターンが薄ら見える。
3:ITOのパターンがはっきり見える。
【0329】
<ヘイズ(透明性)の評価>
100mm×100mmのガラス基板(商品名:XG、コーニング社製)上に、得られた感光性樹脂組成物を乾燥膜厚が2.0μmとなるようにスピンコーターにて塗布し、80℃のホットプレート上で120秒乾燥(プリベーク)した。更に、塗布膜を220℃のオーブンで45分加熱処理(ポストベーク)を施し、ポストベーク後のヘイズを日本電色工業(株)製NDH−5000にて膜面を上にして、プラスチック製品試験方法(JIS K7136・JIS K7361・ASTM D1003)に準拠し、曇り度(ヘイズ値)を測定した。
なお、ヘイズ値とは、全光線透過光に対する拡散透過光の割合(%)で表される値を指す。ヘイズ値が小さいほど、透明性が高いことを表す。
1:ヘイズ値が0.5%未満であった。
2:ヘイズ値が0.5%以上0.7%未満であった。
3:ヘイズ値が0.7%以上1.0%未満であった。
4:ヘイズ値が1.0%以上2.0%未満であった。
5:ヘイズ値が2.0%以上であった。
【0330】
<屈折率の評価>
得られた感光性樹脂組成物を、スピナーを用いてシリコンウエハ基板上に塗布し、80℃で120秒乾燥することによって厚さ0.5μmの膜を形成した。この基板を、超高圧水銀灯を用いて200mJ/cm2(i線で測定)で露光し、その後オーブンにて220℃で45分加熱した。
エリプソメーターVUV−VASE(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)製)を用いて、589nmでの硬化膜の屈折率を測定した。
【0331】
(実施例2〜23及び比較例1〜4)
実施例2〜23及び比較例1〜4においては、分散液、成分A及び/又は成分Bをそれぞれ表3に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、各評価を行った。評価結果を表3に合わせて示す。
【0332】
<分散液D11の調製>
下記組成の分散液を調合し、これをジルコニアビーズ(0.3mmφ)17,000部と混合し、ペイントシェーカーを用いて12時間分散を行った。ジルコニアビ−ズ(0.3mmφ)をろ別し、分散液D11を得た。
・二酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:TTO−51(C)、平均一次粒径:10〜30nm):1,875部
・分散剤(DISPERBYK−111:分散剤、ビックケミー・ジャパン(株)製の30%PGMEA溶液):2,200部
・2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物AF−5:187.5部
・溶剤 PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):3237.5部
【0333】
(実施例24)
<感光性樹脂組成物の調製>
下記組成にて、配合し混合して均一な溶液とした後、0.2μmのポアサイズを有するポリエチレン製フィルターを用いてろ過して、実施例24の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用い、後述する各種評価を行った。評価結果を後述の表3に示す。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:191.1部
・塩基性化合物K−1(東洋化成工業(株)製、CMTU)の0.2%PGMEA溶液:25.7部
・重合体P1の30%PGMEA溶液:263.3部
・光酸発生剤B−1(上記化合物):5.1部
・架橋剤F−1(JER157S65、(株)三菱ケミカルホールディングス製、エポキシ当量:200〜220g/eq):17.9部
・シラン化合物J−1(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−403、信越化学工業(株)製):4.5部
・イルガノックス1726(酸化防止剤、BASF社製):3.0部
・パーフルオロアルキル基含有ノニオン界面活性剤(F−554、DIC(株)製)の2.0%PGMEA溶液:11.0部
・分散液D11:478.4部
【0334】
<分散液D12の調製>
下記組成の分散液を調合し、これをジルコニアビーズ(0.3mmφ)17,000部と混合し、ペイントシェーカーを用いて12時間分散を行った。ジルコニアビ−ズ(0.3mmφ)をろ別し、分散液D12を得た。
・二酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:TTO−51(C)、平均一次粒径:10〜30nm):1,875部
・分散剤(DISPERBYK−111:分散剤、ビックケミー・ジャパン(株)製の30%PGMEA溶液):2,829部
・溶剤 PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):2,796部
【0335】
(実施例25)
<感光性樹脂組成物の調製>
下記組成にて、配合し混合して均一な溶液とした後、0.2μmのポアサイズを有するポリエチレン製フィルターを用いてろ過して、実施例25の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用い、後述する各種評価を行った。評価結果を後述の表3に示す。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:191.1部
・塩基性化合物K−1(東洋化成工業(株)製、CMTU)の0.2%PGMEA溶液:25.7部
・重合体P1の30%PGMEA溶液:263.3部
・光酸発生剤B−1(上記化合物):5.1部
・架橋剤F−1(JER157S65、(株)三菱ケミカルホールディングス製、エポキシ当量:200〜220g/eq):17.9部
・シラン化合物J−1(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、KBM−403、信越化学工業(株)製):4.5部
・イルガノックス1726(酸化防止剤、BASF社製):3.0部
・パーフルオロアルキル基含有ノニオン界面活性剤(F−554、DIC(株)製)の2.0%PGMEA溶液:11.0部
・分散液D12:478.4部
・2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物AF−5:上記成分の総量1,000部に対し、5.8部
【0336】
(実施例26)
実施例26においては、AF−5をAF−11に変更した以外は、実施例1と同様に感光性樹脂組成物を調製し、実施例25の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用い、後述する各種評価を行った。評価結果を後述の表3に示す。
【0337】
【表3】
【0338】
<分散液D13〜D14の調製>
TTO−51(C)及びDISPERBYK−111を、下記表4に記載のものにそれぞれ変更した以外は、分散液D1の調製と同様にして、分散液D13及びD14をそれぞれ得た。
化合物3の式中の「n1」、「n2」、「m」は平均置換数を、「k」の値はモノマー単位の繰り返し数を、それぞれ表している。
なお、化合物3は、特開2007−277514号公報に記載された方法を参照し、合成した。
【0339】
【表4】
【0340】
化合物3:下記化合物、Mw=4,300、30%PGMEA溶液
【0341】
【化54】
【0342】
(実施例27)
<感光性樹脂組成物の調製>
下記組成にて、配合し混合して均一な溶液とした後、0.2μmのポアサイズを有するポリエチレン製フィルターを用いてろ過して、実施例27の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用い、後述する各種評価を行った。評価結果を後述の表7に示す。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:307.5部
・塩基性化合物K−2(下記化合物):0.02部
・重合体P7:100.0部
・光酸発生剤B−1:1.9部
・架橋剤F−1:6.9部
・シラン化合物J−1:1.7部
・パーフルオロアルキル基含有ノニオン界面活性剤(F−554、DIC(株)製)の2.0%PGMEA溶液:0.08部
・分散液D10:181.7部
・2つ以上の窒素原子を有する複素環化合物AF−12:0.2部
・イルガノックス1726(酸化防止剤、BASF社製):1.14部
【0343】
(実施例28〜68)
下記表5及び表6に示す重合体、光酸発生剤、増感剤、その他成分に変更した以外は、実施例27と同様に感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、表5及び表6における各成分量の添加量は成分Aを含む重合体成分100.0部に対する質量部を表す。また、表5及び表6における成分Aの各重合体の添加量は、成分Aを含む重合体成分100部中における質量%を表す。得られた感光性樹脂組成物を用い、後述する各種評価を行った。評価結果を後述の表7に示す。
【0344】
【表5】
【0345】
【表6】
【0346】
【表7】
【0347】
上記表7に示す結果から明らかなとおり、本発明の感光性樹脂組成物は、ヘイズが低く、加熱後も高い透過率を維持していた。これに対し、比較例の感光性樹脂組成物では、加熱後の透過率も低く、ヘイズが劣ることが分かった。
【0348】
上述した以外の実施例27〜68に用いた各化合物を示す略号の詳細は、以下の通りである。
<重合体>
P4〜P11:上記合成例に従って合成した重合体
P12:Joncryl67(アルカリ可溶性のアクリル系樹脂、重量平均分子量12,500、酸価213mgKOH/g、BASF社製)
【0349】
<光酸発生剤>
【0350】
B−2:下記に示す構造の化合物(特表2002−528451号公報の段落0108に記載の方法に従って合成した。)
【0351】
【化55】
【0352】
B−3:PAG−103(商品名、下記に示す構造、BASF社製)
【0353】
【化56】
【0354】
B−4:GSID−26−1、トリアリールスルホニウム塩(BASF社製)
【0355】
【化57】
【0356】
<架橋剤(熱架橋剤)>
F−1:JER157S65(ノボラック型エポキシ樹脂、(株)三菱ケミカルホールディングス製)
F−2:JER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(株)三菱ケミカルホールディングス製)
F−3:JER1007(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(株)三菱ケミカルホールディングス製)
<増感剤>
I−1:DBA(9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成工業(株)製)
<シラン化合物>
J−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)
J−2:デシルトリメトキシシラン(KBM−3103(信越化学工業(株)製))
<塩基性化合物>
K−1:CMTU
K−2:1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(東京化成工業(株)製)
【0357】
(実施例69)
特許第3321003号公報の図1に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、層間絶縁膜として硬化膜17を以下のようにして形成し、実施例69の液晶表示装置を得た。すなわち、実施例13の感光性樹脂組成物を基板上にスピン塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃/120秒)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を45mJ/cm2(照度20mW/cm2)照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、230℃/30分間の加熱処理を行い、層間絶縁膜として硬化膜17を形成した。
【0358】
得られた液晶表示装置に対して、駆動電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることが分かった。
【0359】
(実施例70)
薄膜トランジスター(TFT)を用いた有機EL表示装置を以下の方法で作製した(図2参照)。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34から成る絶縁膜3を形成した。次に、この絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)を絶縁膜3上に形成した。この配線2は、TFT1間、又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
【0360】
更に、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上へ平坦化膜4を形成した。絶縁膜3上への平坦化膜4の形成は、実施例13の感光性樹脂組成物を基板上にスピン塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃/120秒)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を45mJ/cm2(照度20mW/cm2)照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、230℃/30分間の加熱処理を行った。
感光性樹脂組成物を塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、焼成の後に得られた硬化膜には、しわやクラックの発生は認められなかった。更に、配線2の平均段差は500nm、作製した平坦化膜4の膜厚は2,000nmであった。
【0361】
次に、得られた平坦化膜4上に、ボトムエミッション型の有機EL素子を形成した。まず、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5を、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャントを用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(リムーバ100、AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いて上記レジストパターンを50℃で剥離した。こうして得られた第一電極5は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0362】
次に、第一電極5の周縁を覆う形状の絶縁膜8を形成した。絶縁膜8には、実施例13の感光性樹脂組成物を用い、上記と同様の方法で絶縁膜8を形成した。この絶縁膜8を設けることによって、第一電極5とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
【0363】
更に、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAlから成る第二電極を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止した。
【0364】
以上のようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続してなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることが分かった。
【0365】
(実施例71)
以下に述べる方法により本発明の高屈折率の感光性樹脂組成物を用いてタッチパネル表示装置を作製した。
【0366】
<第一の透明電極パターンの形成>
[透明電極層の形成]
あらかじめマスク層が形成された強化処理ガラス(300mm×400mm×0.7mm)の前面板を、真空チャンバー内に導入し、SnO2含有率が10質量%のITOターゲット(インジウム:錫=95:5(モル比))を用いて、DCマグネトロンスパッタリング(条件:基材の温度250℃、アルゴン圧0.13Pa、酸素圧0.01Pa)により、厚さ40nmのITO薄膜を形成し、透明電極層を形成した前面板を得た。ITO薄膜の表面抵抗は80Ω/□であった。
【0367】
次いで、市販のエッチングレジストをITO上に塗布・乾燥し、エッチングレジスト層を形成した。露光マスク(透明電極パターンを有す石英露光マスク)面と上記エッチングレジスト層との間の距離を100μmに設定し、露光量50mJ/cm2(i線)でパターン露光したのち、専用の現像液で現像を行い、更に130℃30分間のポストベーク処理を行って、透明電極層とエッチング用光硬化性樹脂層パターンとを形成した前面板を得た。
【0368】
透明電極層とエッチング用光硬化性樹脂層パターンとを形成した前面板を、ITOエッチャント(塩酸、塩化カリウム水溶液。液温30℃)を入れたエッチング槽に浸漬し、100秒処理し、エッチングレジスト層で覆われていない露出した領域の透明電極層を溶解除去し、エッチングレジスト層パターンのついた透明電極層パターン付の前面板を得た。
次に、エッチングレジスト層パターンのついた透明電極層パターン付の前面板を、専用のレジスト剥離液に浸漬し、エッチング用光硬化性樹脂層を除去し、マスク層と第一の透明電極パターンとを形成した前面板を得た。
【0369】
[絶縁層の形成]
マスク層と第一の透明電極パターンとを形成した前面板の上に、実施例41の感光性樹脂組成物を塗布・乾燥(膜厚1μm、90℃120秒)し、感光性樹脂組成物層を得た。露光マスク(絶縁層用パターンを有す石英露光マスク)面と上記感光性樹脂組成物層との間の距離を30μmに設定し、露光量50mJ/cm2(i線)でパターン露光した。
次に、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により23℃で15秒間浸液盛り法にて現像し、更に超純水で10秒間リンスした。続いて220℃45分のポストベーク処理を行って、マスク層、第一の透明電極パターン、絶縁層パターンを形成した前面板を得た。
【0370】
<第二の透明電極パターンの形成>
[透明電極層の形成]
上記第一の透明電極パターンの形成と同様にして、絶縁層パターンまで形成した前面板をDCマグネトロンスパッタリング処理し(条件:基材の温度50℃、アルゴン圧0.13Pa、酸素圧0.01Pa)、厚さ80nmのITO薄膜を形成し、透明電極層を形成した前面板を得た。ITO薄膜の表面抵抗は110Ω/□であった。
第一の透明電極パターンの形成と同様にして、市販のエッチングレジストを用いて、第一の透明電極パターン、実施例41の感光性樹脂組成物を用いて形成した絶縁層パターン、透明電極層、エッチングレジストパターンを形成した前面板を得た(ポストベーク処理;130℃30分間)。
更に、第一の透明電極パターンの形成と同様にして、エッチングし、エッチングレジスト層を除去することにより、マスク層、第一の透明電極パターン、実施例41の感光性樹脂組成物用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターンを形成した前面板を得た。
【0371】
<第一及び第二の透明電極パターンとは別の導電性要素の形成>
上記第一、及び、第二の透明電極パターンの形成と同様にして、第一の透明電極パターン、実施例41の感光性樹脂組成物を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターンを形成した前面板をDCマグネトロンスパッタリング処理し、厚さ200nmのアルミニウム(Al)薄膜を形成した前面板を得た。
上記第一、及び、第二の透明電極パターンの形成と同様にして、市販のエッチングレジストを用いて、第一の透明電極パターン、実施例41の感光性樹脂組成物を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターン、エッチングレジストパターンを形成した前面板を得た。(ポストベーク処理;130℃30分間)。
更に、第一の透明電極パターンの形成と同様にして、エッチング(30℃50秒間)し、エッチングレジスト層を除去(45℃200秒間)することにより、マスク層、第一の透明電極パターン、実施例41の感光性樹脂組成物を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターン、第一及び第二の透明電極パターンとは別の導電性要素を形成した前面板を得た。
【0372】
<透明保護層の形成>
絶縁層の形成と同様にして、上記第一及び第二の透明電極パターンとは別の導電性要素まで形成した前面板に、実施例41の感光性樹脂組成物を塗布・乾燥(膜厚1μm、90℃120秒)し、感光性樹脂組成物膜を得た。更に、露光マスクを介さずに露光量50mJ/cm2(i線)で前面露光し、現像、ポスト露光(1,000mJ/cm2)、ポストベーク処理を行って、マスク層、第一の透明電極パターン、実施例41の感光性樹脂組成物を用いて形成した絶縁層パターン、第二の透明電極パターン、第一及び第二の透明電極パターンとは別の導電性要素の全てを覆うように実施例41の感光性樹脂組成物を用いて形成した絶縁層(透明保護層)を積層した前面板を得た。
【0373】
<画像表示装置(タッチパネル)の作製>
特開2009−47936号公報に記載の方法で製造した液晶表示素子に、先に製造した前面板を貼り合わせ、公知の方法で静電容量型入力装置を構成要素として備えた画像表示装置を作製した。
【0374】
<前面板、及び、画像表示装置の評価>
第一の透明電極パターン、第二の透明電極パターン、及び、これらとは別の導電性要素の、各々の導電性には問題がなく、一方で、第一の透明電極パターンと第二の透明電極パターンの間では絶縁性を有してあり、タッチパネルとして良好な表示特性が得られた。更に、第一及び第二の透明電極パターンは視認されにくく、表示特性に優れた画像表示装置が得られた。
【符号の説明】
【0375】
1:TFT(薄膜トランジスター)、2:配線、3:絶縁膜、4:平坦化膜、5:第一電極、6:ガラス基板、7:コンタクトホール、8:絶縁膜、10:液晶表示装置、12:バックライトユニット、14,15:ガラス基板、16:TFT、17:硬化膜、18:コンタクトホール、19:ITO透明電極、20:液晶、22:カラーフィルター、30:静電容量型入力装置、31:前面板、32:マスク層、33:第一の透明電極パターン、33a:パッド部分、33b:接続部分、34:第二の透明電極パターン、35:絶縁層、36:導電性要素、37:透明保護層、38:開口部
図1
図2
図3
図4
図5