(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに平行な複数の流路を形成する隔壁と、前記隔壁の表面の少なくとも一部及び/又は前記隔壁の細孔内部の少なくとも一部に担持された触媒と、を備えるハニカムフィルタであって、
前記ハニカムフィルタが、第1の端面と、当該第1の端面の反対側に位置する第2の端面と、を有し、
前記複数の流路が、前記第2の端面側の端部が封口された複数の第1の流路と、前記第1の端面側の端部が封口された複数の第2の流路と、を有し、
前記隔壁中のAl、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrの元素組成比を下記組成式(I);
Al2(1−x)MgxTi(1+y)O5+aAl2O3
+bSiO2
+cNa2O+dK2O+eCaO+fSrO ・・・(I)
で表したときに、xは0<x<1を満足し、yは0.5x<y<3xを満足し、aは0.1x≦a<2xを満足し、bは0.05≦b≦0.4を満足し、c及びdは0<(c+d)を満足し、c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<5を満足する、ハニカムフィルタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、触媒を担持させたハニカムフィルタは、前述のようにカーボン粒子等を燃焼により除去させる場合、高温に曝され、触媒の劣化が生じやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、高温に曝された場合の触媒の劣化を抑制できるハニカムフィルタ及びその製造方法、並びに、チタン酸アルミニウム系セラミックス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、互いに平行な複数の流路を形成する隔壁と、上記隔壁の表面の少なくとも一部及び/又は上記隔壁の細孔内部の少なくとも一部に担持された触媒と、を備えるハニカムフィルタであって、上記ハニカムフィルタが、第1の端面と、当該第1の端面の反対側に位置する第2の端面と、を有し、上記複数の流路が、上記第2の端面側の端部が封口された複数の第1の流路と、上記第1の端面側の端部が封口された複数の第2の流路と、を有し、上記隔壁中のAl、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrの元素組成比を下記組成式(I);
Al
2(1−x)Mg
xTi
(1+y)O
5+aAl
2O
3
+bSiO
2
+cNa
2O+dK
2O+eCaO+fSrO ・・・(I)
で表したときに、xは0<x<1を満足し、yは0.5x<y<3xを満足し、aは0.1x≦a<2xを満足し、bは0.05≦b≦0.4を満足し、c及びdは0<(c+d)を満足し、c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足する、ハニカムフィルタを提供する。
【0010】
上記ハニカムフィルタは、隔壁が上記特定の組成を有することにより、隔壁に担持された触媒が高温に曝された場合でも、触媒の劣化を抑制することができる。
【0011】
また、上記ハニカムフィルタにおいて、上記隔壁の粉末X線回折スペクトルに、結晶性のシリカ含有相を示すピークが現れないことが好ましい。隔壁が結晶性のシリカ含有相を含まないことで、高温で分解しにくく安定になりやすい。
【0012】
上記ハニカムフィルタにおいて、上記触媒はゼオライトを含むことが好ましい。触媒がゼオライトを含むことにより、ハニカムフィルタをSCRの機能も備えたハニカムフィルタとして用いた場合のNO
X分解能を向上させることができ、また、触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いた場合のハイドロカーボン吸着性能を向上させることができる。
【0013】
本発明はまた、互いに平行な複数の流路を形成する隔壁と、上記隔壁の表面の少なくとも一部及び/又は上記隔壁の細孔内部の少なくとも一部に担持された触媒と、を備え、第1の端面と、当該第1の端面の反対側に位置する第2の端面と、を有し、上記複数の流路が、上記第2の端面側の端部が封口された複数の第1の流路と、上記第1の端面側の端部が封口された複数の第2の流路と、を有し、上記隔壁中のAl、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrの元素組成比を下記組成式(I);
Al
2(1−x)Mg
xTi
(1+y)O
5+aAl
2O
3
+bSiO
2
+cNa
2O+dK
2O+eCaO+fSrO ・・・(I)
で表したときに、xは0<x<1を満足し、yは0.5x<y<3xを満足し、aは0.1x≦a<2xを満足し、bは0.05≦b≦0.4を満足し、c及びdは0<(c+d)を満足し、c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足する、ハニカムフィルタの製造方法であって、アルミニウム源、マグネシウム源、チタン源、ケイ素源、造孔剤、バインダ及び溶媒を含み、上記アルミニウム源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下であり、上記マグネシウム源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下であり、上記チタン源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下であり、且つ、上記ケイ素源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下である原料混合物を成形及び焼成してハニカム焼成体を得る工程と、上記ハニカム焼成体の上記隔壁表面の少なくとも一部及び/又は前記隔壁の細孔内部の少なくとも一部に上記触媒を担持して上記ハニカムフィルタを得る工程と、を含むハニカムフィルタの製造方法を提供する。
【0014】
上記製造方法によれば、上述した構成を有するハニカムフィルタを効率的に製造することができる。
【0015】
上記ハニカムフィルタの製造方法において、上記ケイ素源がSiO
2を95質量%以上含むことが好ましい。これにより、不純物の影響が小さくなり、隔壁の組成の制御が容易となる。
【0016】
上記ハニカムフィルタの製造方法において、上記ケイ素源が非晶質相を90質量%以上含むことが好ましい。これにより、ハニカムフィルタ製造時のケイ素源の反応性が向上し、均一なケイ素含有相を有するハニカムフィルタの製造が容易となる。
【0017】
上記ハニカムフィルタの製造方法は、上記触媒を担持させる前に、上記ハニカム焼成体を洗浄する工程を含むことが好ましい。これにより、隔壁表面のケイ素含有相を除去することが可能となり、触媒の劣化を更に抑制することが可能となる。
【0018】
上記ハニカムフィルタの製造方法において、上記ハニカム焼成体の洗浄は、pH9以上のアルカリ溶液により行うことが好ましい。これにより、隔壁表面のケイ素含有相の除去が容易となる。
【0019】
上記ハニカムフィルタの製造方法において、上記触媒はゼオライトを含むことが好ましい。触媒がゼオライトを含むことにより、ハニカムフィルタをSCRの機能も備えたハニカムフィルタとして用いた場合のNO
X分解能を向上させることができ、また、触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いた場合のハイドロカーボン吸着性能を向上させることができる。
【0020】
本発明はまた、Al、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrの元素組成比を下記組成式(I);
Al
2(1−x)Mg
xTi
(1+y)O
5+aAl
2O
3
+bSiO
2
+cNa
2O+dK
2O+eCaO+fSrO ・・・(I)
で表したときに、xは0<x<1を満足し、yは0.5x<y<3xを満足し、aは0.1x≦a<2xを満足し、bは0.05≦b≦0.4を満足し、c及びdは0<(c+d)を満足し、c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足する、チタン酸アルミニウム系セラミックスを提供する。
【0021】
上記チタン酸アルミニウム系セラミックスは、当該セラミックスに担持した触媒が高温に曝された場合でも、触媒の劣化を抑制することができるため、触媒担体として有用である。
【0022】
上記チタン酸アルミニウム系セラミックスは、粉末X線回折スペクトルに、結晶性のシリカ含有相を示すピークが現れないものであることが好ましい。チタン酸アルミニウム系セラミックスが結晶性のシリカ含有相を含まないことで、高温で分解しにくく安定になりやすい。
【0023】
本発明は更に、アルミニウム源、マグネシウム源、チタン源及びケイ素源を含み、上記アルミニウム源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下であり、上記マグネシウム源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下であり、上記チタン源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下であり、且つ、上記ケイ素源中のNa
2O及びK
2Oの総量が0.001質量%以上0.25質量%以下である原料混合物を焼成することで、Al、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrの元素組成比を下記組成式(I);
Al
2(1−x)Mg
xTi
(1+y)O
5+aAl
2O
3
+bSiO
2
+cNa
2O+dK
2O+eCaO+fSrO ・・・(I)
で表したときに、xは0<x<1を満足し、yは0.5x<y<3xを満足し、aは0.1x≦a<2xを満足し、bは0.05≦b≦0.4を満足し、c及びdは0<(c+d)を満足し、c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足するチタン酸アルミニウム系セラミックスを得る工程を含む、チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法を提供する。
【0024】
上記製造方法によれば、上述した構成を有するチタン酸アルミニウム系セラミックスを効率的に製造することができる。
【0025】
上記チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法において、上記ケイ素源がSiO
2を95質量%以上含むことが好ましい。これにより、不純物の影響が小さくなり、チタン酸アルミニウム系セラミックスの組成の制御が容易となる。
【0026】
上記チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法において、上記ケイ素源が非晶質相を90質量%以上含むことが好ましい。これにより、チタン酸アルミニウム系セラミックス製造時のケイ素源の反応性が向上し、均一なケイ素含有相を有するチタン酸アルミニウム系セラミックスの製造が容易となる。
【0027】
上記チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法は、上記原料混合物を焼成した後に、焼成物を洗浄する工程を含むことが好ましい。これにより、チタン酸アルミニウム系セラミックス表面のケイ素含有相を除去することが可能となる。また、かかるチタン酸アルミニウム系セラミックスに触媒を担持させた場合に、触媒の劣化を更に抑制することが可能となる。
【0028】
上記チタン酸アルミニウム系セラミックスの製造方法において、上記焼成物の洗浄は、pH9以上のアルカリ溶液により行うことが好ましい。これにより、チタン酸アルミニウム系セラミックス表面のケイ素含有相の除去が容易となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高温に曝された場合の触媒の劣化を抑制できるハニカムフィルタ及びその製造方法、並びに、チタン酸アルミニウム系セラミックス及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
<ハニカムフィルタ>
図1は、第1実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図であり、
図1(a)はハニカムフィルタの斜視図及び端面の拡大図であり、
図1(b)は、
図1(a)における領域R1の拡大図である。
図2(a)は、
図1に示したハニカムフィルタにおける
図1(b)の反対側の端面の拡大図であり、
図2(b)は、隔壁断面の拡大図である。
図3は、
図1(a)のIII−III矢視図である。ハニカムフィルタ100は、一方の端面(第1の端面)100aと、端面100aの反対側に位置する他方の端面(第2の端面)100bと、を有している。
【0033】
ハニカムフィルタ100は、互いに平行に伸びる複数の流路110を有する円柱体である。複数の流路110は、ハニカムフィルタ100の中心軸に平行に伸びる隔壁120により仕切られている。複数の流路110は、複数の流路(第1の流路)110aと、流路110aに隣接する複数の流路(第2の流路)110bとを有している。流路110a及び流路110bは、端面100a,100bに対して垂直に、端面100aから端面100bまで伸びている。
【0034】
流路110のうちの一部を構成する流路110aの一端は、端面100aにおいて開口しており、流路110aの他端は、端面100bにおいて封口部130により封口されている。複数の流路110のうちの残部を構成する流路110bの一端は、端面100aにおいて封口部130により封口されており、流路110bの他端は、端面100bにおいて開口している。ハニカムフィルタ100において、例えば、流路110aにおける端面100a側の端部はガス流入口として開口しており、流路110bにおける端面100b側の端部はガス流出口として開口している。
【0035】
流路110a及び流路110bにおける当該流路の軸方向に垂直な断面は、六角形状である。流路110bの断面は、例えば、当該断面を形成する辺140の長さが互いに略等しい正六角形状であるが、扁平六角形状であってもよい。流路110aの断面は、例えば扁平六角形状であるが、正六角形状であってもよい。流路110aの断面において互いに対向する辺の長さは、互いに略等しい。流路110aの断面は、当該断面を形成する辺150として、互いに長さの略等しい二つ(一対)の長辺150aと、互いに長さの略等しい四つ(二対)の短辺150bと、を有している。短辺150bは、長辺150aの両側にそれぞれ配置されている。長辺150a同士は、互いに平行に対向しており、短辺150b同士は、互いに平行に対向している。
【0036】
隔壁120は、流路110a及び流路110bを仕切る部分として隔壁120aを有している。すなわち、流路110a及び流路110bは、隔壁120aを介して互いに隣接している。隣接する流路110b同士の間に一つの流路110aが配置されることにより、流路110bは、流路110bの配列方向(辺140に略直交する方向)において流路110aと交互に配置されている。
【0037】
流路110bの辺140のそれぞれは、複数の流路110aのいずれか一つの流路の長辺150aと平行に対向している。すなわち、流路110bを形成する壁面のそれぞれは、流路110a及び流路110bの間に位置する隔壁120aにおいて、流路110aを形成する一壁面と平行に対向している。また、流路110は、1つの流路110bと、当該流路110bを囲む6つの流路110aとを含む構成単位を有しており、当該構成単位において、流路110bの辺140の全てが流路110aの長辺150aと対向している。ハニカムフィルタ100では、流路110bの辺140の少なくとも一つの長さが、対向する長辺150aの長さと略等しくてもよく、辺140のそれぞれの長さが、対向する長辺150aの長さと略等しくてもよい。
【0038】
隔壁120は、互いに隣接する流路110a同士を仕切る部分として隔壁120bを有している。すなわち、流路110bを囲む流路110a同士は、隔壁120bを介して互いに隣接している。
【0039】
流路110aの短辺150bのそれぞれは、隣接する流路110aの短辺150bと平行に対向している。すなわち、流路110aを形成する壁面は、隣接する流路110a同士の間に位置する隔壁120bにおいて互いに平行に対向している。ハニカムフィルタ100では、隣接する流路110a同士の間において、流路110aの短辺150bの少なくとも一つの長さが、対向する短辺150bの長さと略等しくてもよく、短辺150bのそれぞれの長さが、対向する短辺150bの長さと略等しくてもよい。
【0040】
流路110a内の隔壁120a,120b表面、流路110b内の隔壁120a,120b表面、及び、隔壁120a,120bの細孔内部(連通孔内部)には、触媒が担持されており、担持された触媒により触媒層160が形成されている。なお、触媒層160は、隔壁120a,120bの表面の少なくとも一部及び/又は隔壁120a,120bの細孔内部の少なくとも一部に形成されていればよい。より具体的には、触媒層160は、上述した流路110a内の隔壁120a,120b表面、流路110b内の隔壁120a,120b表面、及び、隔壁120a,120bの細孔内部のうちの少なくとも1箇所に形成されていればよい。ハニカムフィルタ100を、SCRの機能も備えたハニカムフィルタとして用いる場合には、触媒層160は、隔壁120a,120bの細孔内部に、或いは、当該細孔内部及びガス流出口側の隔壁120a,120b表面に形成されていることが好ましい。また、ハニカムフィルタ100を、触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いる場合には、触媒層160は、ガス流入口側の隔壁120a,120b表面に形成されていることが好ましい。
【0041】
図4は、第2実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図であり、
図4(a)はハニカムフィルタの斜視図及び端面の拡大図であり、
図4(b)は、
図4(a)における領域R2の拡大図である。
図5(a)は、
図4に示したハニカムフィルタにおける
図4(b)の反対側の端面の拡大図であり、
図5(b)は、隔壁断面の拡大図である。
図6は、
図4(a)のVI−VI矢視図である。ハニカムフィルタ200は、一方の端面(第1の端面)200aと、端面200aの反対側に位置する他方の端面(第2の端面)200bと、を有している。
【0042】
ハニカムフィルタ200は、互いに平行に伸びる複数の流路210を有する円柱体である。複数の流路210は、ハニカムフィルタ200の中心軸に平行に伸びる隔壁220により仕切られている。複数の流路210は、複数の流路(第1の流路)210aと、流路210aに隣接する複数の流路(第2の流路)210bとを有している。流路210a及び流路210bは、端面200a,200bに対して垂直に、端面200aから端面200bまで伸びている。
【0043】
流路210のうちの一部を形成する流路210aの一端は、端面200aにおいて開口しており、流路210aの他端は、端面200bにおいて封口部230により封口されている。複数の流路210のうちの残部を形成する流路210bの一端は、端面200aにおいて封口部230により封口されており、流路210bの他端は、端面200bにおいて開口している。ハニカムフィルタ200において、例えば、流路210aにおける端面200a側の端部はガス流入口として開口しており、流路210bにおける端面200b側の端部はガス流出口として開口している。
【0044】
流路210a及び流路210bにおける当該流路の軸方向に垂直な断面は、六角形状である。流路210bの断面は、例えば、当該断面を形成する辺240の長さが互いに略等しい正六角形状であるが、扁平六角形状であってもよい。流路210aの断面は、例えば扁平六角形状であるが、正六角形状であってもよい。流路210aの断面において互いに対向する辺の長さは、互いに異なっている。流路210aの断面は、当該断面を形成する辺250として、互いに長さの略等しい三つの長辺250aと、互いに長さの略等しい三つの短辺250bと、を有している。長辺250a及び短辺250bは、互いに平行に対向しており、短辺250bは、長辺250aの両側にそれぞれ配置されている。
【0045】
隔壁220は、流路210a及び流路210bを仕切る部分として隔壁220aを有している。すなわち、流路210a及び流路210bは、隔壁220aを介して互いに隣接している。隣接する流路210b同士の間には、当該流路210bの配列方向に略直交する方向に隣接する二つの流路210aが配置されており、当該隣接する二つの流路210aは、隣接する流路210bの断面の中心同士を結ぶ線を挟んで対称に配置されている。
【0046】
流路210bの辺240のそれぞれは、複数の流路210aのいずれか一つの流路の長辺250aと平行に対向している。すなわち、流路210bを形成する壁面のそれぞれは、流路210a及び流路210bの間に位置する隔壁220aにおいて、流路210aを形成する一壁面と平行に対向している。また、流路210は、1つの流路210bと、当該流路210bを囲む6つの流路210aとを含む構成単位を有しており、当該構成単位において、流路210bの辺240の全てが流路210aの長辺250aと対向している。流路210bの断面の各頂点は、隣接する流路210bの頂点と流路210bの配列方向に対向している。ハニカムフィルタ200では、流路210bの辺240の少なくとも一つの長さが、対向する長辺250aの長さと略等しくてもよく、辺240のそれぞれの長さが、対向する長辺250aの長さと略等しくてもよい。
【0047】
隔壁220は、互いに隣接する流路210a同士を仕切る部分として隔壁220bを有している。すなわち、流路210bを囲む流路210a同士は、隔壁220bを介して互いに隣接している。
【0048】
流路210aの短辺250bのそれぞれは、隣接する流路210aの短辺250bと平行に対向している。すなわち、流路210aを形成する壁面は、隣接する流路210a同士の間に位置する隔壁220bにおいて互いに平行に対向している。また、1つの流路210aは、3つの流路210bに囲まれている。ハニカムフィルタ200では、隣接する流路210a同士の間において、流路210aの短辺250bの少なくとも一つの長さが、対向する短辺250bの長さと略等しくてもよく、短辺250bのそれぞれの長さが、対向する短辺250bの長さと略等しくてもよい。
【0049】
流路210a内の隔壁220a,220b表面、流路210b内の隔壁220a,220b表面、及び、隔壁220a,220bの細孔内部(連通孔内部)には、触媒が担持されており、担持された触媒により触媒層260が形成されている。なお、触媒層260は、隔壁220a,220bの表面の少なくとも一部及び/又は隔壁220a,220bの細孔内部の少なくとも一部に形成されていればよい。より具体的には、触媒層260は、上述した流路210a内の隔壁220a,220b表面、流路210b内の隔壁220a,220b表面、及び、隔壁220a,220bの細孔内部のうちの少なくとも1箇所に形成されていればよい。ハニカムフィルタ200を、SCRの機能も備えたハニカムフィルタとして用いる場合には、触媒層260は、隔壁220a,220bの細孔内部に、或いは、当該細孔内部及びガス流出口側の隔壁220a,220b表面に形成されていることが好ましい。また、ハニカムフィルタ200を、触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いる場合には、触媒層260は、ガス流入口側の隔壁220a,220b表面に形成されていることが好ましい。
【0050】
流路の軸方向におけるハニカムフィルタ100,200の長さは、例えば50〜300mmである。ハニカムフィルタ100,200の外径は、例えば50〜250mmである。ハニカムフィルタ100において、辺140の長さは、例えば0.4〜2.0mmである。長辺150aの長さは、例えば0.4〜2.0mmであり、短辺150bの長さは、例えば0.3〜2.0mmである。ハニカムフィルタ200において、辺240の長さは、例えば0.4〜2.0mmである。長辺250aの長さは、例えば0.4〜2.0mmであり、短辺250bの長さは、例えば0.3〜2.0mmである。隔壁120,220の厚み(セル壁厚)は、例えば0.1〜0.8mmである。ハニカムフィルタ100,200におけるセル密度(例えば、ハニカムフィルタ100において、端面100aにおける流路110a及び流路110bの密度の合計)は、50〜600cpsi(cells per square inch)が好ましく、100〜500cpsiがより好ましい。
【0051】
ハニカムフィルタ100,200の単位体積当たりの触媒層160,260の担持量は、SCRの機能も備えたハニカムフィルタとして用いる場合には、ディーゼルパティキュレートフィルタとしての機能を損なうことなく十分なNO
X分解能を得る観点から、20〜300mg/cm
3であることが好ましく、50〜200mg/cm
3であることがより好ましい。また、触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いる場合には、5〜100mg/cm
3であることが好ましく、10〜60mg/cm
3であることがより好ましい。
【0052】
ハニカムフィルタ100において、端面100aにおける複数の流路110aの開口面積の合計は、端面100bにおける流路110bの開口面積の合計よりも大きいことが好ましい。ハニカムフィルタ200において、端面200aにおける複数の流路210aの開口面積の合計は、端面200bにおける流路210bの開口面積の合計よりも大きいことが好ましい。
【0053】
端面100a,200aにおける流路110a,210aの水力直径は、ハニカムフィルタの機械的強度を維持する観点から、1.4mm以下であることが好ましい。流路110a,210aの水力直径は、流路内における端面側の領域に被捕集物が堆積することを更に抑制する観点から、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。
【0054】
端面100b,200bにおける流路110b,210bの水力直径は、端面100a,200aにおける流路110a,210aの水力直径よりも大きいことが好ましい。端面100b,200bにおける流路110b,210bの水力直径は、ハニカムフィルタの機械的強度を維持する観点から、1.7mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましい。流路110b,210bの水力直径は、排気ガス通気の圧力損失を低減する観点から、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。
【0055】
なお、ハニカムフィルタの形状は、上記のハニカムフィルタ100,200のように、第1の流路(流路110a,210a)の軸方向に垂直な第1の流路の断面が、第1の辺(長辺150a,250a)と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺(短辺150b,250b)とを有しており、第2の流路(流路110b,210b)の軸方向に垂直な第2の流路の断面を形成する辺(辺140,240)のそれぞれが、第1の流路の第1の辺と対向しており、第1の流路の第2の辺のそれぞれが、隣接する第1の流路の第2の辺と対向している形態であってもよいが、必ずしも上述した形状に限定されるものではない。
【0056】
また、ハニカムフィルタにおける流路の軸方向に垂直な当該流路の断面は、六角形状であることに限定されず、三角形状、矩形状、八角形状、円形状、楕円形状等であってもよい。また、流路には、径の異なるものが混在していてもよく、断面形状の異なるものが混在していてもよい。また、流路の配置は特に限定されるものではなく、流路の中心軸の配置は、流路の断面形状に応じて、正三角形の頂点に配置される正三角形配置、四角形の頂点に配置される千鳥配置等であってもよい。さらに、ハニカムフィルタは円柱体であることに限られず、楕円柱、三角柱、四角柱、六角柱、八角柱等であってもよい。
【0057】
上記ハニカムフィルタ100,200において隔壁は、多孔質であり、例えば多孔質セラミックス焼結体を含んでいる。隔壁は、流体が透過できるような構造を有している。具体的には、流体が通過し得る多数の連通孔(流通経路)が隔壁内に形成されている。
【0058】
隔壁の気孔率は、ハニカムフィルタの捕集効率を向上させ、且つ、より低い圧力損失を実現させる観点から、20体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましい。隔壁の気孔率は、70体積%以下が好ましく、60体積%以下がより好ましい。隔壁の平均気孔径は、ハニカムフィルタの捕集効率を向上させ、且つ、より低い圧力損失を実現させる観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。隔壁の平均気孔径は、35μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。隔壁の気孔率及び平均気孔径は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、造孔剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0059】
隔壁は、チタン酸アルミニウムマグネシウムと、アルミナと、Si元素と、Na元素及びK元素のいずれか一方又は両方の元素と、を含み、隔壁中のAl、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrの元素組成比を下記組成式(I);
Al
2(1−x)Mg
xTi
(1+y)O
5+aAl
2O
3
+bSiO
2
+cNa
2O+dK
2O+eCaO+fSrO ・・・(I)
で表したときに、xは0<x<1を満足し、yは0.5x<y<3xを満足し、aは0.1x≦a<2xを満足し、bは0.05≦b≦0.4を満足し、c及びdは0<(c+d)を満足し、c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足する。
【0060】
隔壁がNa元素及びK元素のいずれか一方又は両方の元素を含むことにより、ケイ素含有相が安定し、結果としてハニカムフィルタが高温で分解しにくく、安定となる傾向がある。なお、隔壁中、Al、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca及びSrは、必ずしも組成式(I)に示した化合物の状態で存在していなくてもよい。例えばNa、K、Ca及びSrは、それぞれ単一の酸化物ではなく、例えばケイ素含有相の一部として存在することができる。また、Mg、Alもチタン酸アルミニウムマグネシウム及びアルミナとしてだけではなく、例えばケイ素含有相の一部として存在することができる。
【0061】
上記xは0<x<1を満足し、0.03≦x≦0.5を満足することが好ましく、0.05≦x≦0.2を満足することがより好ましい。上記yは0.5x<y<3xを満足し、0.5x<y<2xを満足することが好ましく、0.7x<y<2xを満足することがより好ましい。
【0062】
上記aは0.1x≦a<2xを満足する。aが0.1x以上であることにより、ハニカムフィルタの機械的強度を向上させる効果が得られ、2x未満であることにより、ハニカムフィルタの熱膨張係数を低減することができる。上記効果をより十分に得る観点から、aは0.5x≦a≦2xを満足することが好ましく、0.5x≦a≦1.5xを満足することがより好ましい。
【0063】
上記bは0.05≦b≦0.4を満足する。bが0.05以上であることにより、ハニカムフィルタは優れた機械的強度を得ることができ、0.4以下であることにより、ハニカムフィルタの熱膨張係数を低減することができる。上記効果をより十分に得る観点から、bは0.05≦b≦0.2を満足することが好ましく、0.05≦b≦0.15を満足することがより好ましく、0.05≦b≦0.1を満足することが特に好ましい。
【0064】
上記c、d、e及びfは0.5<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足する。{(c+d+e+f)/b}×100の値が0.5より大きいことにより、ハニカムフィルタの高温での安定性を向上させる効果が得られ、10未満であることにより、触媒の劣化を低減させる効果が得られる。上記効果をより十分に得る観点から、c、d、e及びfは、1<{(c+d+e+f)/b}×100<10を満足することが好ましく、1<{(c+d+e+f)/b}×100<5を満足することがより好ましい。
【0065】
隔壁は、本発明の効果を阻害しない範囲で、Al、Mg、Ti、Si、Na、K、Ca、Sr及びO以外の元素を更に含んでいてもよい。更に含んでいてもよい元素としては、例えば、Li、B、F、P
、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Sn、La、Ta、Be、Pb、Bi等が挙げられる。これらの不純物は、その合計量が酸化物換算(F、Pは純物質換算)で3質量%以下であることが好ましい。
【0066】
隔壁は、ガラス相を含んでいることが好ましい。ガラス相は、SiO
2(二酸化ケイ素)が主要成分である非晶質相を指す。特に、隔壁は、その粉末X線回折スペクトルに結晶性SiO
2(結晶性のシリカ含有相)を示すピークが現れないこと、すなわち、SiO
2は全てガラス相として隔壁中に存在していること、が好ましい。隔壁中のガラス相の含有量は、高温での安定性を向上させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、ハニカムフィルタの熱膨張係数を低減させる観点から5質量%未満であることが好ましい。また、隔壁は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相、アルミナ相、ガラス相以外の結晶相を含んでいてもよい。このような結晶相としては、セラミックス焼成体の作製に用いる原料由来の相等を挙げることができる。原料由来の相は、例えば、ハニカムフィルタの製造に際してチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相を形成することなく残存したチタン源粉末、マグネシウム源粉末等に由来する相であり、チタニア、マグネシア等の相が挙げられる。隔壁を形成する結晶相は、X線回折スペクトルにより確認することができる。
【0067】
触媒層の構成材料としては、多孔質のゼオライト、リン酸塩系多孔質材料、貴金属を担持したアルミナ、チタニウムを含む酸化物、ジルコニウムを含む酸化物、セリウムを含む酸化物、並びに、ジルコニウム及びセリウムを含む酸化物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。SCR触媒として用いる場合のゼオライトには、更に、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ニオブ、ロジウム、パラジウム、銀及び白金からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素が担持されていてもよい。ゼオライトは、上記金属元素のイオンとイオン交換された金属イオン交換ゼオライトであることにより、NO
X還元性が向上する。金属イオン交換ゼオライトは、ゼオライトが含んでいるナトリウムイオン等の陽イオンが他の金属イオンに置き換わったものである。NO
X還元性の向上効果が大きいことから、上記金属元素は、銅、鉄、バナジウム、コバルト、ニッケル及び銀からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、銅であることが特に好ましい。ゼオライト及びゼオライト類似物質の構造としては、国際ゼオライト学会が定めるところのMFI、BEA、MOR、FER、CHA、ERI、AEI、LTA、FAU、MWW型を例示することができる。これらの中でも、SCRとして用いる場合は、MFI、CHA、AEI型を含むものが好ましく、MFIとしてZSM−5が挙げられ、AEIとしてSSZ−39、AlPO−18、SAPO−18が挙げられ、CHAとしてSSZ−13、AlPO−34、SAPO−34が挙げられる。また、ハイドロカーボンの吸着用として用いる場合は、HC吸着量の観点からMFI、BEA、MOR、FER、FAU型が好ましく、これらの代表例として、ZSM−5、βゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、USYゼオライトが挙げられる。
【0068】
触媒層がゼオライトを含む場合、ゼオライトのシリカ(SiO
2)とアルミナ(Al
2O
3)とのモル比(シリカ/アルミナ)は、優れたNO
X還元能を得る観点から、5〜10000であることが好ましく、10〜5000であることがより好ましい。
【0069】
ハニカムフィルタ100,200は、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれるすす等の被捕集物を捕集するとともに、排ガス中のNO
Xを浄化する、排ガス浄化フィルタとして適する。例えば、ハニカムフィルタ100では、
図3に示すように、端面100aから流路110aに供給されたガスGが、触媒層160及び隔壁120内の連通孔を通過して隣の流路110bに到達し、端面100bから排出される。このとき、ガスG中のNO
Xが触媒層160により還元されてN
2及びH
2Oに分解されるとともに、被捕集物が隔壁120の表面及び連通孔内に捕集されてガスGから除去されることにより、ハニカムフィルタ100は排ガス浄化フィルタとして機能する。ハニカムフィルタ200についても、同様に排ガス浄化フィルタとして機能する。
【0070】
図7は、排ガス浄化システムの一実施形態を示す概略図である。本実施形態の排ガス浄化システムは、上述したハニカムフィルタ100を備える。排ガス浄化システムは、ハニカムフィルタ100に代えて、ハニカムフィルタ200を備えてもよい。
【0071】
図7に示した排ガス浄化システムにおいて、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関500から排出されたガスGは、先ず酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)510に供給される。酸化触媒510には、例えば、白金、パラジウム等の貴金属触媒が用いられる。これら貴金属触媒は、例えばハニカム構造体に担持させて用いられる。酸化触媒510により、ガスGに含まれる炭化水素(ハイドロカーボン)、一酸化炭素等の大半が酸化除去される。
【0072】
次いで、ガスGは、ハニカムフィルタ100に供給され、すす等の被捕集物の除去と、NO
Xの浄化とが行われる。NO
Xを浄化するための還元剤であるアンモニアは、尿素水供給装置520から尿素水UをガスG中に噴射することで生成される。これにより、上記式(1)〜(4)に示したように、ガスG中のNO
XはN
2とH
2Oに分解される。
【0073】
排ガス浄化システムは、ハニカムフィルタ100の後段に、さらに酸化触媒(DOC)を備えていてもよい。ハニカムフィルタ100の後段に設けられる酸化触媒は、残存するアンモニアの除去に有効である。
【0074】
図7の排ガス浄化システムは、ハニカムフィルタが尿素SCRの機能とディーゼルパティキュレートフィルタの機能とを備える場合の実施形態を示したものであるが、本発明のハニカムフィルタは上記実施形態に限定されない。例えば、本発明のハニカムフィルタは、SCRの機能を有さず、酸化触媒で酸化除去しきれなかったハイドロカーボンを吸着及び燃焼させる機能とディーゼルパティキュレートフィルタの機能とを備える触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタであってもよい。また、捕集したカーボン粒子等の燃焼を促進させる目的で、貴金属触媒が担持された触媒化ディーゼルパティキュレートフィルタであってもよい。
【0075】
<ハニカムフィルタの製造方法>
次に、ハニカムフィルタの製造方法の一実施形態について説明する。ハニカムフィルタの製造方法は、例えば、無機化合物粉末及び添加剤を含む原料混合物を調製する原料調製工程と、原料混合物を成形して、流路を有する成形体を得る成形工程と、成形体を焼成する焼成工程と、を備え、成形工程と焼成工程の間、又は、焼成工程の後に、各流路の一端を封口する封口工程と、焼成工程及び封口工程後に、触媒層を形成する工程と、を更に備える。また、ハニカムフィルタの製造方法は、焼成工程の後、且つ、触媒層を形成する工程の前に、ハニカム焼成体を洗浄する工程を含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0076】
[原料調製工程]
原料調製工程では、無機化合物粉末と添加剤とを混合した後に混練して原料混合物を調製する。無機化合物粉末は、例えば、アルミニウム源粉末、チタン源粉末(チタニウム源粉末)、マグネシウム源粉末、及び、ケイ素源粉末を含む。アルミニウム源粉末としては、例えば、α−アルミナ粉末等が挙げられる。チタン源粉末としては、例えば、アナターゼ型のチタニア粉末、ルチル型のチタニア粉末等が挙げられる。マグネシウム源粉末としては、例えば、マグネシア粉末、マグネシアスピネル粉末等が挙げられる。ケイ素源粉末としては、例えば、酸化ケイ素粉末、ガラスフリット等が挙げられる。カルシウム源粉末としては、例えば、カルシア粉末、炭酸カルシウム粉末、灰長石等が挙げられる。ストロンチウム源粉末としては、例えば、酸化ストロンチウム粉末、炭酸ストロンチウム粉末等が挙げられる。イットリウム源粉末としては、例えば、酸化イットリウム粉末等が挙げられる。バリウム源粉末としては、例えば、酸化バリウム粉末、炭酸バリウム粉末、長石等が挙げられる。ビスマス源粉末としては、例えば、酸化ビスマス粉末等が挙げられる。各原料粉末は、1種又は2種以上のいずれでもよい。各原料粉末は、その原料由来又は製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0077】
アルミニウム源粉末中のNa
2O及びK
2Oの総量は、アルミニウム源粉末全量を基準として0.001質量%以上0.25質量%以下であり、マグネシウム源粉末中のNa
2O及びK
2Oの総量は、マグネシウム源粉末全量を基準として0.001質量%以上0.25質量%以下であり、チタン源粉末中のNa
2O及びK
2Oの総量は、チタン源粉末全量を基準として0.001質量%以上0.25質量%以下であり、且つ、ケイ素源粉末中のNa
2O及びK
2Oの総量は、ケイ素源粉末全量を基準として0.001質量%以上0.25質量%以下であることが必要である。また、各原料粉末中のNa
2O及びK
2Oの総量の上限値はそれぞれ、0.20質量%であることが好ましく、0.15質量%であることがより好ましい。各原料粉末中のNa
2O及びK
2Oの総量の下限値はそれぞれ、0.01質量%であることが好ましい。
【0078】
ケイ素源粉末は、SiO
2を95質量%以上含むものであることが好ましく、SiO
2を97質量%以上含むものであることがより好ましい。上記条件を満たすケイ素源粉末を用いることにより、不純物の影響が小さくなり、隔壁の組成の制御が容易となる。また、ケイ素源粉末は、非晶質相を90質量%以上含むものであることが好ましく、非晶質相を95質量%以上含むものであることがより好ましい。上記条件を満たすケイ素源粉末を用いることにより、ハニカムフィルタ製造時のケイ素源の反応性が向上し、均一なケイ素含有相を有するハニカムフィルタの製造が容易となる。
【0079】
各原料粉末について、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(中心粒径、D50)は下記の範囲が好ましい。アルミニウム源粉末のD50は、例えば20〜60μmである。チタン源粉末のD50は、例えば0.1〜25μmである。マグネシウム源粉末のD50は、例えば0.5〜30μmである。ケイ素源粉末のD50は、例えば0.5〜30μmである。
【0080】
原料混合物には、チタン酸アルミニウム及び/又はチタン酸アルミニウムマグネシウムが含まれていてもよい。例えば、原料混合物の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、チタン酸アルミニウムマグネシウムは、アルミニウム源、チタン源及びマグネシウム源を兼ね備えた原料混合物に相当する。
【0081】
添加剤としては、例えば、造孔剤(孔形成剤)、バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0082】
造孔剤としては、焼成工程において成形体を脱脂又は焼成する温度以下で消失する素材によって形成されたものを使用することができる。脱脂又は焼成において、造孔剤を含有する成形体が加熱されると、造孔剤は燃焼等によって消滅する。これにより、造孔剤が存在していた箇所に空間ができると共に、この空間同士の間に位置する無機化合物粉末が焼成の際に収縮することにより、流体を流すことができる連通孔を隔壁内に形成することができる。
【0083】
造孔剤は、例えば、トウモロコシ澱粉、大麦澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、豆澱粉、米澱粉、エンドウ澱粉、サンゴヤシ澱粉、カンナ澱粉、ポテト澱粉(馬鈴薯デンプン)である。造孔剤において、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)は、例えば10〜70μmである。原料混合物が造孔剤を含有する場合、造孔剤の含有量は、例えば、無機化合物粉末100質量部に対して10〜50質量部である。
【0084】
バインダは、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックスである。原料混合物におけるバインダの含有量は、例えば、無機化合物粉末100質量部に対して20質量部以下である。
【0085】
潤滑剤及び可塑剤は、例えば、グリセリン等のアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル)である。原料混合物における潤滑剤及び可塑剤の含有量は、例えば、無機化合物粉末100質量部に対して10質量部以下である。
【0086】
分散剤は、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムである。原料混合物における分散剤の含有量は、例えば、無機化合物粉末100質量部に対して20質量部以下である。
【0087】
溶媒は、例えば水であり、不純物が少ない点で、イオン交換水が好ましい。原料混合物が溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、例えば、無機化合物粉末100質量部に対して10〜100質量部である。
【0088】
[成形工程]
成形工程では、ハニカム構造を有するグリーンハニカム成形体を得る。成形工程では、例えば、一軸押出機により原料混合物を混練しながらダイから押出す、いわゆる押出成形法を採用することができる。
【0089】
[焼成工程]
焼成工程では、成形工程において得られたハニカム構造のグリーンハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得る。焼成工程では、成形体の焼成前に、成形体中(原料混合物中)に含まれるバインダ等を除去するための仮焼(脱脂)が行われてもよい。成形体の焼成において、焼成温度は、通常1300℃以上であり、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常1650℃以下であり、好ましくは1550℃以下である。昇温速度は特に限定されるものではないが、通常1〜500℃/時間である。焼成時間は、無機化合物粉末がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに充分な時間であればよく、原料の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気等により異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0090】
[封口工程]
封口工程は、成形工程と焼成工程の間、又は、焼成工程の後に行われる。成形工程と焼成工程の間に封口工程を行う場合、成形工程において得られた未焼成のグリーンハニカム成形体の各流路の一方の端部を封口材で封口した後、焼成工程においてグリーンハニカム成形体と共に封口材を焼成することにより、流路の一方の端部を封口する封口部を備えるハニカム構造体が得られる。焼成工程の後に封口工程を行う場合、焼成工程において得られたハニカム焼成体の各流路の一方の端部を封口材で封口した後、ハニカム焼成体と共に封口材を焼成することにより、流路の一方の端部を封口する封口部を備えるハニカム構造体が得られる。封口材としては、上記グリーンハニカム成形体を得るための原料混合物と同様の混合物を用いることができる。
【0091】
[洗浄工程]
洗浄工程は、焼成工程の後、且つ、触媒層を形成する工程の前に、ハニカム焼成体を洗浄する工程である。焼成工程の後に封口工程を行う場合には、洗浄工程は封口工程の後に行うことが好ましい。ハニカム焼成体の洗浄は、アルカリ溶液、酸溶液、スチーム等を用いて行うことができるが、アルカリ溶液を用いて洗浄することが好ましく、pH9以上のアルカリ溶液を用いて行うことがより好ましい。アルカリ溶液としては、例えば、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。上記洗浄工程を行うことにより、隔壁表面に存在するNa元素及びK元素を除去することができ、隔壁表面におけるNa元素及びK元素の存在量を低減することができる。これにより、触媒の劣化をより低減させる効果が得られる。
【0092】
[触媒層形成工程]
触媒層形成工程は、焼成工程及び封口工程の後に行われる。触媒層形成工程では、まず、触媒を水と混ぜ合わせてスラリーを作製し、次に、作製したスラリーをハニカム構造体に塗布する。スラリーには、触媒及び水に加えて、シリカゾル及び/又はアルミナゾルを添加してもよい。スラリーの塗布方法の一例を以下に示す。
【0093】
作製したスラリーを、ハニカム構造体のガス流入口側が開口している流路(第1の流路)の内部、及び、ガス流出口側が開口している流路(第2の流路)の内部に吸引させて、隔壁表面に塗布する。塗布後、400〜600℃で0.1〜5時間程度乾燥させ、水分を取り除く。このようにして、所望の触媒を含む触媒層を作製する。触媒層は、隔壁の細孔内部(連通孔内部)にも入り込み、流路内の隔壁表面のみならず、隔壁の細孔内部の表面にも形成されている。以上のようにして、第1及び第2の流路内の隔壁表面及び隔壁細孔内に触媒層を備えたハニカムフィルタを得ることができる。
【0094】
<チタン酸アルミニウム系セラミックス及びその製造方法>
チタン酸アルミニウム系セラミックスは、上述したハニカムフィルタの隔壁を形成する主成分となるものであり、組成式(I)を満たすものである。また、チタン酸アルミニウム系セラミックスは、ハニカムフィルタの製造方法において説明した方法と同様の方法により製造することができる。なお、チタン酸アルミニウム系セラミックスは、ハニカムフィルタの隔壁以外の材料として用いることも可能であり、その形状は使用目的に応じた形状にすることができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
(実施例1)
チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al
2O
3粉末(a)、TiO
2粉末、MgO粉末)、SiO
2粉末(a)、造孔剤、有機バインダ、可塑剤、潤滑剤及び水(溶媒)を混合して原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記の値に調整した。また、Al
2O
3粉末(a)、TiO
2粉末、MgO粉末、及び、SiO
2粉末(a)のNa
2O含有量及びK
2O含有量を下記表1に示す。
【0097】
[原料混合物の成分]
Al
2O
3粉末(a)(ナバルテック社製、商品名:NO105RS):38.7質量部
TiO
2粉末(クロノス社製、商品名:SR−240):36.2質量部
MgO粉末(宇部興産社製、商品名:UC95S):2.0質量部
SiO
2粉末(a)(富士シリシア社製、商品名:サイリシア350):3.0質量部
造孔剤(馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉):20.0質量部
有機バインダ(a)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学社製、商品名:65SH−30000):6.3質量部
可塑剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル):4.5質量部
潤滑剤(グリセリン):0.4質量部
水:31質量部
【0098】
【表1】
【0099】
上記の原料混合物を混練した後、押出成形して、長手方向に多数の貫通孔(断面形状:正方形)を有する円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、箱型電気炉により大気中、昇温速度80℃/時間で1500℃まで昇温し、同温度で5時間保持することにより焼成して、ハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体について、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法及び炎光分析法により元素分析を行い、元素組成比を組成式(I)で表したときのx、y、a、b、c、d、e及びfの値を求めた。その結果を表3に示す。
【0100】
得られたハニカム焼成体に、触媒としてCu−ZSM−5(銅イオン交換ゼオライト、SiO
2/Al
2O
3比=18、CuO:3質量%)のスラリーをディップ法によりコートし、触媒コートハニカム焼成体を得た。Cu−ZSM−5のスラリーは、ZSM−5型ゼオライト30質量部と水70質量部とを湿式混合し、ゼオライトに対して、銅イオンをCuO換算で3質量%(固形分割合)となるようにイオン交換して調製したものである。触媒コートハニカム焼成体において、ハニカム焼成体100質量部に対する触媒の担持量は7.1質量部であった。
【0101】
(比較例1)
チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al
2O
3粉末(b)、TiO
2粉末、MgO粉末)、SiO
2粉末(b)、造孔剤、有機バインダ、可塑剤、潤滑剤及び水(溶媒)を混合して原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記の値に調整した。また、Al
2O
3粉末(b)、TiO
2粉末、MgO粉末、及び、SiO
2粉末(b)のNa
2O含有量及びK
2O含有量を下記表2に示す。
【0102】
[原料混合物の成分]
Al
2O
3粉末(b)(住友化学社製、商品名:A−21):39.5質量部
TiO
2粉末(クロノス社製、商品名:SR−240):36.2質量部
MgO粉末(宇部興産社製、商品名:UC95S):1.9質量部
SiO
2粉末(b)(日本フリット社製、商品名:CK0160M1):2.3質量部
造孔剤(馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉):20.0質量部
有機バインダ(a)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学社製、商品名:65SH−30000):6.3質量部
可塑剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル):4.5質量部
潤滑剤(グリセリン):0.4質量部
水:31質量部
【0103】
【表2】
【0104】
上記の原料混合物を混練した後、押出成形して、長手方向に多数の貫通孔(断面形状:正方形)を有する円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、箱型電気炉により大気中、昇温速度80℃/時間で1500℃まで昇温し、同温度で5時間保持することにより焼成して、ハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体について、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法及び炎光分析法により元素分析を行い、元素組成比を組成式(I)で表したときのx、y、a、b、c、d、e及びfの値を求めた。その結果を表3に示す。
【0105】
得られたハニカム焼成体に、触媒として実施例1で用いたものと同じCu−ZSM−5のスラリーをディップ法によりコートし、触媒コートハニカム焼成体を得た。触媒コートハニカム焼成体において、ハニカム焼成体100質量部に対する触媒の担持量は9.2質量部であった。
【0106】
(実施例2)
チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al
2O
3粉末(a)、TiO
2粉末、MgO粉末)、SiO
2粉末(a)、造孔剤、有機バインダ、可塑剤、潤滑剤及び水(溶媒)を混合して原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記の値に調整した。また、Al
2O
3粉末(a)、TiO
2粉末、MgO粉末、及び、SiO
2粉末(a)としては、上記表1に示す材料を用いた。
【0107】
[原料混合物の成分]
Al
2O
3粉末(a)(ナバルテック社製、商品名:NO105RS):38.7質量部
TiO
2粉末(クロノス社製、商品名:SR−240):36.5質量部
MgO粉末(宇部興産社製、商品名:UC95S):1.9質量部
SiO
2粉末(a)(富士シリシア社製、商品名:サイリシア350):2.8質量部
造孔剤(馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉):20.0質量部
有機バインダ(a)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学社製、商品名:65SH−30000):6.3質量部
可塑剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル):4.5質量部
潤滑剤(グリセリン):0.4質量部
水:31質量部
【0108】
上記の原料混合物を混練した後、押出成形して、長手方向に多数の貫通孔(断面形状:正方形)を有する円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、箱型電気炉により大気中、昇温速度80℃/時間で1500℃まで昇温し、同温度で5時間保持することにより焼成して、ハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体について、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法及び炎光分析法により元素分析を行い、元素組成比を組成式(I)で表したときのx、y、a、b、c、d、e及びfの値を求めた。その結果を表3に示す。
【0109】
得られたハニカム焼成体に、触媒としてβゼオライトのスラリーをディップ法によりコートし、触媒コートハニカム焼成体を得た。βゼオライトのスラリーは、βゼオライト20質量部と水80質量部とを湿式混合して調製したものである。触媒コートハニカム焼成体において、ハニカム焼成体100質量部に対する触媒の担持量は7.8質量部であった。
【0110】
(比較例2)
比較例1と同様にして、ハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体に、触媒として実施例2で用いたものと同じβゼオライトのスラリーをディップ法によりコートし、触媒コートハニカム焼成体を得た。触媒コートハニカム焼成体において、ハニカム焼成体100質量部に対する触媒の担持量は5.0質量部であった。
【0111】
【表3】
【0112】
<粉末X線回折スペクトル>
各実施例及び各比較例で得られたハニカム焼成体を粉砕し、粉末X線回折スペクトルを得たところ、いずれのハニカム焼成体でも、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶相を示す回折ピークが現れたが、結晶性SiO
2(結晶性のシリカ含有相)を示すピークは現れなかった。
【0113】
<触媒の評価>
比較のために、触媒のみのサンプルを参考例1として用意した。また、各実施例及び各比較例で得られた触媒コートハニカム焼成体を粉砕して評価用のサンプルとした。各実施例、各比較例及び参考例のサンプルを、H
2O濃度及びO
2濃度がいずれも10体積%、N
2濃度が80体積%である環境下で、下記表4及び表5に示す熱処理条件(900℃で5時間、又は、750℃で16時間)で熱処理を行った。熱処理前後の各サンプルについて、実施例1及び比較例1のサンプルについてはBET比表面積の測定を行い、実施例2、比較例2及び参考例1のサンプルについてはNH
3−TPD測定を行った。BET比表面積の測定結果を表4に、NH
3−TPDの測定結果を表5にそれぞれ示す。なお、NH
3−TPDは、各サンプルにNH
3を吸着させた後、温度を上昇させることによって生じる脱離ガスを測定する方法である。NH
3−TPDの具体的な測定条件は以下の通りである。
【0114】
[前処理]
サンプル約0.05gを測定用セルに入れ、He気流中(50ml/min)で室温から500℃に昇温(10℃/min)し、500℃で60分間、保持した。その後、He気流中(50ml/min)のまま、100℃まで降温した。
[NH
3吸着]
100℃で0.5%NH
3/Heガス(100ml/min)を30分間、吸着させた。
[NH
3脱気]
100℃で30分間、He気流中(50ml/min)にて排気した。
[昇温脱離測定]
He気流中(50ml/min)で100℃から800℃まで昇温(10℃/min)し、脱離するNH
3量を四重極MSで検出した(m/z=16)。
[酸量の解析]
各測定で得られたNH
3脱離ピークの面積値(カウント数)を算出した。このとき、200〜500℃でのNH
3脱離量の積算を酸量とした。毎回、測定の最後に定量用測定を行い、既知濃度のガス(0.5%NH
3/Heガス)を30分流通(50ml/min)させた。既知のガス濃度(0.5%NH
3/Heガス)、流通時間(30分間)、流量(50ml/min)から、この時の一定時間の面積値(カウント数)から、1カウントあたりのガスのmol数を算出した。その値をファクター(mol/カウント)とし、NH
3脱離ピークのカウント数にかけて、サンプリング重量で割ることにより、1gあたりのNH
3脱離量(μmol/g)を算出した。
【0115】
表5に示したNH
3−TPDの測定結果は、参考例1の熱処理前のサンプルについて測定したNH
3脱離量(μmol/g)を100%とし、これに対する相対値として求めたものである。この値が高いほど、サンプル表面の酸量が高く、ハイドロカーボンなどの吸着性能に優れ、触媒性能に優れていることとなる。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
表4及び表5に示した結果から明らかなように、実施例1及び2の触媒コートハニカム焼成体では、比較例1及び2の触媒コートハニカム焼成体と比較して、高温に曝された場合の触媒の劣化を抑制できることが確認された。上記効果は、触媒コートハニカム焼成体に封口を施してハニカムフィルタとした場合でも同様に奏することができる。
【0119】
(実施例3)
チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al
2O
3粉末(a)、TiO
2粉末、MgO粉末)、SiO
2粉末(c)、造孔剤、有機バインダ(a)、可塑剤、潤滑剤及び水(溶媒)を混合して原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記表6に示す(単位:質量部)。表6に示した各成分の詳細は、以下に示す通りである。また、用いたAl
2O
3粉末、TiO
2粉末、MgO粉末、及び、SiO
2粉末、有機バインダのNa
2O含有量及びK
2O含有量を下記表7に示す。
【0120】
[原料混合物の成分]
Al
2O
3粉末(a)(ナバルテック社製、商品名:NO105RS)
Al
2O
3粉末(b)(住友化学社製、商品名:A−21)
TiO
2粉末(クロノス社製、商品名:SR−240)
MgO粉末(宇部興産社製、商品名:UC95S)
SiO
2粉末(b)(日本フリット社製、商品名:CK0160M1)
SiO
2粉末(c)(龍森社製、商品名:Y−40)
造孔剤(馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉)
有機バインダ(a)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学社製、商品名:65SH−30000)
有機バインダ(b)(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、三星精密化学社製、商品名:PMB−30U)
可塑剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル)
潤滑剤(グリセリン)
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
上記の原料混合物を混練した後、押出成形して、長手方向に多数の貫通孔(断面形状:正方形)を有する円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、箱型電気炉により大気中、昇温速度80℃/時間で1500℃まで昇温し、同温度で5時間保持することにより焼成して、ハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体について、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法及び炎光分析法により元素分析を行い、元素組成比を組成式(I)で表したときのx、y、a、b、c、d、e及びfの値を求めた。その結果を表8に示す。
【0124】
【表8】
【0125】
得られたハニカム焼成体に、触媒として実施例1で用いたものと同じCu−ZSM−5のスラリーをディップ法によりコートし、触媒コートハニカム焼成体を得た。触媒コートハニカム焼成体において、ハニカム焼成体100質量部に対する触媒の担持量は表9に示す通りであった。
【0126】
【表9】
【0127】
(実施例
6、参考例4〜5及び比較例3)
各実施例
、各参考例及び
各比較例において、表6に示す通りの原料種及び混合比で、実施例3と同じ要領でハニカム焼成体を作製した。得られたハニカム焼成体について、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法及び炎光分析法により元素分析を行い、元素組成比を組成式(I)で表したときのx、y、a、b、c、d、e及びfの値を求めた。その結果を表8に示す。
【0128】
得られたハニカム焼成体に、触媒として実施例1で用いたものと同じCu−ZSM−5のスラリーをディップ法によりコートし、触媒コートハニカム焼成体を得た。触媒コートハニカム焼成体において、ハニカム焼成体100質量部に対する触媒の担持量は表9に示す通りであった。
【0129】
<触媒の前処理>
各実施例
、各参考例及び各比較例で得られた触媒コートハニカム焼成体を粉砕し、500μm〜1000μmに篩別して評価用のサンプルとした。得られた各サンプルをH
2O濃度及びO
2濃度がいずれも10体積%、N
2濃度が80体積%、ガス流量550ml/minである環境下において550℃で5時間保持して熱処理した。
【0130】
<触媒の評価>
上記熱処理前後の各サンプルについて、NO除去性能を測定した。具体的な測定条件は以下の通りである。
【0131】
[NO除去性能の測定]
NOガスの濃度は、NO計としてアナテック・ヤナコ製ECL−88AO−Liteを用いて測定した。
【0132】
[反応ガス]
H
2O濃度及びO
2濃度がいずれも8体積%、NO濃度及びNH
3濃度がいずれも900体積ppm、N
2濃度が83.8体積%である混合ガス(反応ガス)を調製した。この反応ガスを513ml/minのガス流量で上記NO計に供給してNO濃度の測定を行い、反応開始直前のNO濃度を示す、前ガスNO濃度として記録した。
【0133】
[反応温度]
300℃の反応温度でそれぞれ測定を行った。
【0134】
[NO除去性能の解析]
上記の前処理で得られた熱処理前後の評価用サンプルについて、それぞれ以下の方法でNO除去性能を評価した。まず、評価用サンプルをCu−ZSM−5の量が41mgとなるように石英製反応管に充填し、上記反応ガスを513ml/minのガス流量で反応管に供給しながら、反応管内を上記反応温度まで5℃/minで昇温した。反応温度到達時から10分後、20分後、30分後に、評価用サンプルを通過した後の反応ガスのNO濃度を上記NO計により測定し、3点の平均値を反応時のNOガス濃度とした。NOの除去性能は下記の式で算出した。
{1−(反応時のNOガス濃度/前ガスNO濃度)}×100(%)
【0135】
表10にNO除去性能の測定結果を示す。この値が高いほどNO除去性能に優れ、触媒性能に優れていることとなる。また、熱処理前のNO除去性能に対する熱処理後のNO除去性能の低下が少ないほど、触媒コートハニカム焼成体が高温に曝された場合の触媒の劣化を抑制できていることとなる。この効果は、触媒コートハニカム焼成体に封口を施してハニカムフィルタとした場合でも同様に奏することができる。
【0136】
【表10】