特許第6042452号(P6042452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042452有機ジホスファイト化合物を精製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042452
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】有機ジホスファイト化合物を精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20161206BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C07F9/6574 Z
   B01J31/02 102Z
【請求項の数】30
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-549474(P2014-549474)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-510497(P2015-510497A)
(43)【公表日】2015年4月9日
(86)【国際出願番号】EP2012077018
(87)【国際公開番号】WO2013098368
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年7月30日
(31)【優先権主張番号】11196183.5
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ベーレンス
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ガンツ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ニクラウス ヴィントリン
(72)【発明者】
【氏名】ワリド アル−アクダール
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−116535(JP,A)
【文献】 特開平06−184036(JP,A)
【文献】 特表平09−505586(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101684130(CN,A)
【文献】 国際公開第2005/063776(WO,A1)
【文献】 Organometallics,1996年,15(2),p.835-847
【文献】 Tetrahedron: Asymmetry,2000年,11,p.845-849
【文献】 社団法人 日本化学会,第6版 化学便覧 応用化学編I,丸善株式会社,2003年,第178頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00
B01J 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
〔式中、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルキル、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、塩素、ホルミル、アシルまたは(C1〜C6アルコキシ)カルボニルを表わし、
その際に2個の隣接した基であるR1〜R4は、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって、さらなるベンゼン環を有する縮合された環系を表わしてもよく、
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、互いに独立して、水素、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルキル、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、塩素、ホルミル、アシルまたは(C1〜C6アルコキシ)カルボニルを表わし、
その際に2個の隣接した基であるR5〜R12は、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって、さらなるベンゼン環を有する縮合された環系を表わしてもよい〕の有機ジホスファイトを精製する方法であって、
アルキルベンゼンである第1の溶剤(L1)中に少なくとも部分的に溶解されている、一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトを、直鎖状C1〜C4アルカノールである第2の溶剤(L2)との混合によって沈殿させる、前記方法。
【請求項2】
沈殿した有機ジホスファイトを液相から分離し、および分離した有機ジホスファイトを、液状洗浄媒体での洗浄に掛ける、請求項1記載の方法。
【請求項3】
a)一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトおよび第1の溶剤(L1)を含有する溶液を準備し、
b1)前記有機ジホスファイトを第1の溶剤(L1)の一部分の留去によって部分的に晶出させ、および結晶化を完結させるために、第2の溶剤(L2)を添加し、および
c)晶出された有機ジホスファイトを液相から分離する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
a)一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトおよび第1の溶剤(L1)を含有する溶液を準備し、
b2)工程a)において準備された溶液を第2の溶剤(L2)に添加し、その際に前記有機ジホスファイトは、少なくとも一部分が沈殿し、および
c)沈殿した有機ジホスファイトを液相から分離する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
第1の溶剤(L1)は、(C1〜C4アルキル)ベンゼンである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1の溶剤(L1)は、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレンおよびこれらの混合物から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1の溶剤(L1)として、トルエンを使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第2の溶剤(L2)は、メタノール、エタノールおよびこれらの混合物から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第2の溶剤(L2)として、メタノールを使用する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(I)の化合物において、基
【化2】
は、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラエチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−n−プロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジクロロ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジエチル−5,5’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジ−n−プロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−n−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−イソブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−s−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−アミル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラキス−(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ビス−(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−2−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−3−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−2−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−3−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−4−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−2−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−4−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラキス−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジエトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−プロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−イソプロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−s−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−イソブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−t−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルおよび1,1’−ビナフタリニル−2,2’−ジイルから選択されている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一般式(I)の化合物において、基
【化3】
は、3,3’,5,5’−テトラ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルを表わす、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
一般式(I)の化合物において、基
【化4】
は、互いに独立して、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジクロロ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジエチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−プロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−s−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−アミル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−2−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−2−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−4−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−2−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−4−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジエトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−プロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソプロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−s−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−t−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルおよび1,1’−ビナフタリニル−2,2’−ジイルから選択されている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
一般式(I)の化合物において、基
【化5】
は、双方とも1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルを表わす、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
一般式(I)の化合物は、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンである、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程a)において準備された粗製溶液は、有機ジホスファイトの製造からの反応排出物である、請求項2から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
有機ジホスファイト(I)
【化6】
〔式中、R1、R2、R3およびR4は、請求項1、9または10に規定されており、およびR5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、請求項1、11または12に規定されている〕を製造するために、
i)一般式(Ai)
【化7】
のジオールをPCl3と反応させて化合物(A1)
【化8】
を得て、
ii)少なくとも1つの化合物(A1)を一般式(Aii)
【化9】
のジオールと反応させて有機ジホスファイト(I)を得る、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記有機ジホスファイトを前記に規定された第1の溶剤(L1)の存在下で製造する、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
工程i)またはii)の少なくとも一方を、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、NH3、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、第三級アミンおよび塩基性イオン交換樹脂から選択されている塩基の存在下で行う、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
工程i)またはii)の少なくとも一方を、それぞれの反応工程において形成されるハロゲン化水素酸との塩を形成する塩基から選択されている塩基の存在下で行い、この塩は、それぞれの反応工程の反応生成物が液状塩の分離中にあまり分解されない温度で液状であり、および前記塩は、それぞれの反応工程の反応媒体と不混和性の2つの液相を形成する、請求項16または17記載の方法。
【請求項20】
前記塩基は、1−メチルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−メチルピリジンおよび2−エチルピリジンである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
工程b2)において、工程a)で準備された溶液は、第2の溶剤への添加の際に、50〜180℃の範囲内の温度を有する、請求項4から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
工程b2)において、第2の溶剤は、添加の際に0〜50℃の範囲内の温度を有する、請求項4から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
工程b2)において、工程a)で準備された溶液と第2の溶剤との添加時の温度差は、少なくとも20℃である、請求項4から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
工程b2)において、第2の溶剤(L2)を、予め装入し、および有機ジホスファイトの工程a)で準備された溶液を、供給流として、予め装入された溶剤(L2)の上の空間内に供給する、請求項4から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
洗浄媒体として、沈殿に使用される第2の溶剤(L2)を使用する、請求項2から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
有機ジホスファイトを、最初にメタノールでの1回または数回の洗浄に掛け、および最終的に、アセトンでの洗浄に掛ける、請求項2から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
洗浄媒体に塩基を添加するかまたは複数の洗浄工程の場合には洗浄媒体の少なくとも1つに塩基を添加する、請求項2から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
塩基は、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属アルコラートから選択されている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
塩基としてナトリウムメタノラートを使用する、請求項27または28記載の方法。
【請求項30】
精製された有機ジホスファイト(I)は、少なくとも95%の純度を有する、請求項1から29までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有機ジホスファイト化合物を精製する方法に関する。
【0002】
技術水準
有機ジホスファイト化合物は、例えば均一系触媒反応におけるキレート配位子として極めて広く普及しているが、難燃剤、UV安定剤等としても広く普及している。有機ジホスファイト化合物との特定のロジウム錯体は、オレフィンをヒドロホルミル化するための触媒として有効であることが実証された。それというのも、前記ロジウム錯体は、一面で高い触媒活性を有し、他面、主に、数多くの用途に有利である直鎖状アルデヒドをもたらすからである。さらに、有機ジホスファイト化合物は、ヒドロシアノ化、水素化、カルボニル化、ヒドロアシル化、ヒドロアミド化、ヒドロエステル化、ヒドロシリル化、ヒドロホウ素化、アルコール分解、異性体化、アリル位アルキル化またはヒドロアルキル化に対する遷移金属錯体触媒のための配位子として適している。
【0003】
この種のジホスファイト化合物、その製造およびヒドロホルミル化における配位子としての当該化合物の使用は、例えば、欧州特許出願公開第0214622号明細書A2、米国特許第4668651号明細書、米国特許第4748261号明細書、米国特許第4769498号明細書、米国特許第4885401号明細書、米国特許第5235113号明細書、米国特許第5391801号明細書、米国特許第5663403号明細書、米国特許第5728861号明細書および米国特許第6172267号明細書中に記載されている。米国特許第6127567号明細書には、ヒドロシアノ化における使用も記載されている。
【0004】
一般式(A)の有機ジホスファイトは、通常、次の工程:
a)式(A1)の化合物(=第1の芳香族ジオール)を三塩化リンと反応させて、燐モノクロリジト(A2)を得る工程
【化1】
b)燐モノクロリジト(A2)を式(A3)の化合物(=第2の芳香族ジオール)と反応させて、キレートジホスファイト(A)を得る工程
【化2】
を含む方法によって製造される。
【0005】
第1の芳香族ジオール(A1)に由来した、有機ジホスファイトの基は、以下、「側翼」とも呼称される。
【0006】
燐原子の少なくとも1個がヘテロ環式化合物の一部分ではないジホスファイトは、工程a)において、PCl3を1モル当量の第1の芳香族ジオール(A1)の代わりに2モル当量の相応するモノアルコールと反応させることにより、製造される。2個の燐原子が互いに別の基によって橋架けされているジホスファイトを製造するために、主鎖ジオール(A3)の代わりに、他の選択可能な方法により、別のジオールが使用されてよい。
【0007】
縮合反応の際に遊離するハロゲン化水素を除去する方法は、少なくとも化学量論的量の塩基を使用することであり、その際には何倍もの窒素塩基が使用される。しかし、生じる塩酸の分離は、しばしば費用が掛かり、ひんぱんに塩が満足にはリサイクルされ得ず、かつ廃棄されなければならず、このことは、さらなる費用を伴う。
【0008】
WO 2003/062171およびWO 2003/062251には、酸との塩を形成する補助塩基を用いて反応混合物から酸を分離する方法が記載されており、この塩は、価値のある生成物が液状塩の分離中にあまり分解されない温度で液状であり、および前記補助塩基の塩は、価値のある生成物または適当な溶剤中の価値のある生成物の溶液と不混和性の2つの液相を形成する。換言すれば、補助塩基の酸塩は、本来の反応性溶剤と本質的に不混和であるイオン性液体と同様の挙動をとる。このタイプの好ましい補助塩基は、1−メチルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−メチルピリジンおよび2−エチルピリジンである。WO 2003/062171およびWO 2003/062251中に記載された方法は、とりわけ、先に記載された、燐モノクロリジトの合成ならびに当該燐モノクロリジトと芳香族ジオールとの反応によりジホスファイト化合物を得るのと同様のホスホリル化反応に適している。
【0009】
たいてい、有機ジホスファイト化合物は、その使用前に触媒反応の方法において支障となる汚染物質を除去するために、合成に引き続いて精製に掛けなければならない。潜在的な汚染物質は、使用される合成法とは無関係に、例えば前記物質種に対して典型的な分解生成物またはその他の後続生成物であることができるか、または合成の経過中に形成される。
【0010】
遷移金属、例えばロジウムと錯体を形成しうる汚染物質、例えばアセトニトリルは、問題であり、それゆえに、当該汚染物質は、触媒としてのジホスファイト化合物の使用に対して潜在的な影響をもつ。それに関して、例えば第二級有機ホスファイトも挙げられ、これに対しては、以下に、さらにより正確に詳説される。高価な装置の使用を必要とする汚染物質、例えば腐蝕作用を有するハロゲン化物、特に塩化物も問題である。その上、塩化物イオンは、ロジウム錯体触媒に対する公知の触媒毒でもある。
【0011】
有機ジホスファイト化合物の汚染物質の不利な影響は、当該有機ジホスファイト化合物が配位子として使用される方法それ自体に関連しうる。すなわち、触媒毒として作用し、および/または触媒の分解をまねく汚染物質は、触媒の寿命に対して不利な作用を及ぼし、このことは、この期間に亘って運転の故障をまねきうる。このことは、殊に、汚染物質が富有化しうる連続的方法における有機ジホスファイト化合物の使用に当てはまる。前記汚染物質の不利な影響は、それぞれの方法において製造された価値のある生成物が生成物の性質、例えば貯蔵挙動、取扱い可能性、臭い、色、耐久性等に不利な作用を及ぼすことにより、当該生成物にも関連しうる。
【0012】
したがって、汚染物質をできるだけ完全に除去することは、有機ジホスファイト化合物が成果を収めて大工業的方法において使用されうることの決定的な前提である。
【0013】
有機ジホスファイト化合物の合成からの典型的な汚染物質は、反応の際に遊離するハロゲン化水素(たいてい、HCl)の捕集に使用される塩基(たいてい、有機窒素含有化合物、例えばアミン)、この塩基の酸塩であり、ならびに任意にハロゲン化水素の残基でもある。前記合成からの典型的な汚染物質は、燐三ハロゲン化物と芳香族アルコールとの反応を促進する触媒でもある。WO 2003/062171およびWO 2003/062251の記載と同様に、塩基として、その酸塩がイオン性液体と同様の挙動をとり、相応する有機溶剤中、例えばトルエン中の有機ジホスファイト化合物の溶液と本質的に不混和性であり、ひいては簡単に相分離によって分離可能である化合物が使用される場合も、それにも拘わらず、たいてい粗製の配位子溶液を精製することが強制的に必要とされる。
【0014】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10360771号明細書A1には、燐ハロゲン化物と少なくとも1個のOH基を有する有機化合物との反応を塩基性イオン交換樹脂の存在下で実施することが教示されている。
【0015】
WO 2009/120210および優先権主張日が同日の米国特許第2009/0247790号明細書には、キレートジホスファイト化合物の製造の際に側翼の導入のために中間生成物として使用されうる燐モノクロリジトの製造法が記載されている。その後に、PCl3と芳香族ジオールとの反応は、芳香族ジオール1モルに対して、窒素塩基5モル%未満を含有する溶液中で行われ、その際に形成されたHClは、反応溶液から排出され、およびこの反応は、本質的に等温条件下で行われる。
【0016】
しかし、このことは、排ガス流として排出された塩化水素ガスが離れたスクラバー中で単離されかつ廃棄されなければならないという欠点を伴う。
【0017】
その上、前記排ガス流と一緒に、たいてい溶剤も排出される。しかし、排ガス中に連行された、溶剤の割合は、放出を避けるために、当該割合の除去を必要とし、この除去は、例えば燃焼によって行うことができかつさらなる費用を意味する。
【0018】
WO 2010/042313には、PCl3と側翼を形成する第1の芳香族ジオールとの反応を、既に、2個の燐原子を架橋する第2の芳香族ジオールの存在下で行う、有機ジホスファイトの製造法が記載されており、その際に反応成分は、有機溶剤中のスラリーとして互いに接触され、およびこのスラリーは、第1のジオール1モルに対して窒素塩基を5モル%未満含有し、および有機溶剤は、HClに対して少ない溶解能だけを示す。このやり方は、HClと塩基との捕集による縮合反応の際に形成される酸塩の減少をまねく。
【0019】
他方で、排ガス流として排出される塩化水素ガスは、スクラバー中で単離されかつ廃棄されなければならない。
【0020】
WO 2010/052090およびWO 2010/052091には、キレートジホスファイト化合物の製造の際に側翼を導入するために中間生成物として使用されうる6−クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンの製造法が記載されている。この方法の場合、不活性溶剤中に懸濁されている2,2’−ジヒドロキシビフェニルは、反応器中で、不活性ガスの下で攪拌しながら過剰の三塩化燐に添加され、生じるガスは、反応混合物から導出される。したがって、この反応の際の塩基の添加は、省略されうる。排ガス流として排出される塩化水素ガスは、捕集されなければならず、そのために、前記刊行物の教示によれば、離れたスクラバーが使用される。しかし、排ガス中に連行された、溶剤の割合は、放出を避けるために、当該割合の除去を必要とし、この除去は、例えば燃焼によって行うことができかつさらなる費用を意味する。
【0021】
粗製有機ジホスファイトの溶液中に含有されていてよい、さらなる汚染物質は、当該有機ジホスファイトのモノ酸化物(B1)、ジ酸化物(B2)または主鎖の不完全な反応によって生じるヘミ配位子(B3)でもある。
【0022】
【化3】
【0023】
A.Christiansenらは、Chem.Eur.J.2011,17,2120中に分解生成物としてのヘテロ原子置換された第二級ホスフィンオキシドの形成およびロジウム触媒反応によるヒドロホルミル化の際のプリ配位子を記載している。相応する、第三級ホスファイトの加水分解の際に生じる第二級有機ホスファイト(C1)は、粗製キレートジホスファイト溶液の厄介な汚染物質であり、それというのも、この汚染物質は、酸として作用しかつ時間の経過とともに酸に対して不安定なキレートジホスファイトを分解するからである。その上、化合物(C1)は、遷移金属、例えばロジウムの錯化によって触媒毒として作用し、かつ反応器中でのより長い期間に亘る蓄積の際に均一な反応溶液からの遷移金属の析出およびロジウムの損失をまねく。さらに、遷移金属は、もはや触媒反応に使用不可能であるので、運転の故障を結果としてまねく。特に、ヒドロホルミル化の場合、化合物(C1)は、形成されたアルデヒドと縮合してα−ヒドロキシホスホネートになりうる。化合物(C1)ならびに(C2)は、当該化合物の酸度によってキレートホスファイト配位子の加水分解による分解をまねく。その上、前記プロセスは、自動触媒反応的に進行し、それというのも、キレートホスファイト配位子の加水分解の際にさらなる(C1)が後形成されるからである。
【0024】
【化4】
【0025】
欧州特許出願公開第0285136号明細書A2には、C1と同様に、第二級有機ホスファイト、特に4配位燐原子を有する第二級有機ホスファイトを分離することによって、第三級有機ホスファイトを精製する方法が記載されている。この刊行物には、第二級有機ホスファイトと第三級有機ホスファイトとが簡単な再結晶化によってたいてい分離され得ないことが指摘されている。それというのも、前記化合物は、しばしばい共結晶化されるからである。したがって、欧州特許出願公開第0285136号明細書A2には、有機溶剤中の第二級有機ホスファイトおよび第三級有機ホスファイトの溶液に水およびルイス塩基が添加され、選択的に第二級有機ホスファイトが第一級有機ホスファイトの塩に変換され、次にこの塩が第三級有機ホスファイトと分離されうることが教示されている。適したルイス塩基は、NaOHおよび第三級アミン、例えばトリエチルアミンである。
【0026】
中国特許出願公開第101684130号明細書Aには、
a.)側翼を形成する燐モノクロリジトをジクロロメタン中に溶解し、
b.)2個の燐原子を架橋する芳香族ジオールをトリエチルアミンまたはトリエチルアミン−ジクロロメタン混合物中に溶解し、
c.)a.)とb.)とからの溶液を混合し、かつ−40℃〜20℃で反応させ、
d.)得られた溶液を20〜30℃で10〜20時間、攪拌し、および
e.)工程d.)からの溶液に完全脱塩水を添加し、攪拌し、前記相を分離させ、その際に下方の有機相は、ホスファイト生成物を含む、キレートホスファイトの製造法が記載されている。
【0027】
こうして得られたキレートホスファイトは、とりわけ、0.01質量%(100ppm)未満の塩化物イオン含量によって特徴付けられる。
【0028】
米国特許第2003/0100787号明細書には、立体障害トリアリールモノホスファイトの製造法が記載されているが、これに反して、ジホスファイトを製造するための、考えられうる使用は、記載されていない。前記の製造例によれば、前記モノホスファイトの合成は、置換フェノールとPCl3との反応によって、溶剤としてのピリジンおよび塩化メチレンの存在下に行われる。この反応後、塩化メチレンは、留去され、およびモノホスファイトは、イソプロパノールの添加によって結晶化される。
【0029】
Organometallics 1996,15(2),835−847には、1−オクテンおよびスチレンを、嵩張ったキレートホスファイト配位子を用いて、ロジウム触媒反応によりヒドロホルミル化する研究が記載されている。配位子(9)の(6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン)を製造する場合、溶剤および過剰のピリジンの抽出後に得られた配位子を、最初にアセトニトリルの添加によって結晶させ、次にこの配位子をトルエン/アセトニトリル混合物から再結晶させることが記載されている。
【0030】
米国特許第5312996号明細書、第18欄、第60行以降には、トルエン中およびピリジンの存在下での1,1’−ビフェニル−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジ−t−ブトキシ−2,2’−ジオールとビフェノールクロリジトとの反応による配位子の合成が記載されている。形成された塩化ピリジニウムは、得られた反応生成物とろ別される。生じる溶液は、ロータリーエバポレーターで、当該溶液がシロップ状の稠度を有しかつさらに得られたジホスファイトがアセトニトリルの添加によって沈殿するまで蒸発濃縮される。得られた固体は、ろ別され、アセトニトリルで洗浄され、かつ乾燥される。
【0031】
本発明は、有機ジホスファイト化合物を精製する、簡単で効果的な方法を提供するという課題に基づくものである。その際に、得られたジホスファイト化合物は、連続的に実施される大工業的方法において配位子としての使用を可能にする純度を有するべきである。均一系触媒反応に対する触媒のための配位子としての有機ジホスファイト化合物の使用に不利な作用を及ぼす、前記製造法からの化合物、例えばアセトニトリルでの汚染は、回避されるべきである。特に、第二級有機ホスファイトの含量は、できるだけ僅かであるべきでもある。好ましくは、得られた有機ジホスファイト化合物は、良好な使用技術的性質を有する固体の形で得られるべきである。それに関して、例えば、結晶が良好にろ過によって分離可能であり、および/またはごく僅かな包接された溶剤(吸蔵された溶剤)およびその中に含まれる汚染物質を有する結晶が挙げられる。
【0032】
ところで、意外なことに、少なくとも部分的に有機溶剤中に溶解されている、粗製の有機ジホスファイトは、沈殿剤(すなわち、溶剤、この溶剤中で当該有機ジホスファイトは難溶性である)を用いる沈殿によって、先に挙げた汚染物質から効果的に精製されうることが見い出された。
【0033】
発明の要約
本発明の第1の対象は、一般式(I)
【化5】
〔式中、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、塩素、臭素、ヒドロキシ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルを表わし、
その際に2個の隣接した基であるR1〜R4は、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって、さらなるベンゼン環を有する縮合された環系を表わしてもよく、
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、互いに独立して、水素、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、塩素、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルを表わし、
その際に2個の隣接した基であるR5〜R12は、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって、さらなるベンゼン環を有する縮合された環系を表わしてもよく、
その際に、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシは、それぞれ、非置換であってよいかまたはC3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、フッ素、塩素、シアノ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルから選択されている、1個以上の同じかまたは異なる基Raによって置換されていてよく、
その際に、C3〜C12シクロアルキルおよびC3〜C12ヘテロシクロアルキルは、それぞれ、非置換であってよいかまたはC1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルから選択されている、1個以上の同じかまたは異なる基Rbによって置換されていてよく、
その際に、C6〜C20アリールは、それぞれ、非置換であってよいかまたはC1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルから選択されている、1個以上の同じかまたは異なる基Rcによって置換されていてよい〕の有機ジホスファイトを精製する方法であって、
アルキルベンゼン、アリールアルキルエーテル、クロロベンゼンおよびこれらの混合物から選択されている、第1の溶剤(L1)中に少なくとも部分的に溶解されている、一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトを、直鎖状C1〜C4アルカノール、エチレングルコールジ(C1〜C4アルキル)エーテルおよびこれらの混合物から選択されている、第2の溶剤(L2)との混合によって沈殿させる、前記方法である。
【0034】
一般式(I)
【化6】
〔式中、
1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルキル、非置換または直鎖状または非分枝鎖状C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、塩素、ホルミル、アシルまたは(C1〜C6アルコキシ)カルボニルを表わし、
その際に2個の隣接した基であるR1〜R4は、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって、さらなるベンゼン環を有する縮合された環系を表わしてもよく、
5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、互いに独立して、水素、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルキル、非置換の直鎖状または分枝鎖状C1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、塩素、ホルミル、アシルまたは(C1〜C6アルコキシ)カルボニルを表わし、
その際に2個の隣接した基であるR5〜R12は、これらが結合しているベンゼン核の炭素原子と一緒になって、さらなるベンゼン環を有する縮合された環系を表わしてもよい〕の有機ジホスファイトを精製する方法であって、
アルキルベンゼン、アリールアルキルエーテル、クロロベンゼンおよびこれらの混合物から選択されている、第1の溶剤(L1)中に少なくとも部分的に溶解されている、一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトを、直鎖状C1〜C4アルカノール、エチレングルコールジ(C1〜C4アルキル)エーテルおよびこれらの混合物から選択されている、第2の溶剤(L2)との混合によって沈殿させる、前記方法は、好ましい。
【0035】
前記方法の第1の変法において、粗製の有機ジホスファイトは、有利に晶出によって沈殿される。
【0036】
第1の変法は、
a)一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトおよび第1の溶剤(L1)を含有する溶液を準備し、
b1)前記有機ジホスファイトを第1の溶剤(L1)の一部分の留去によって部分的に晶出させ、および結晶化を完結させるために、第2の溶剤(L2)を添加し、および
c)晶出された有機ジホスファイトを液相から分離する方法である。
【0037】
好ましくは、工程b1)において、前記有機ジホスファイトは、第1の溶剤(L1)の一部分の留去によって熱時に部分的に晶出される。
【0038】
第2の変法は、
a)一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトおよび第1の溶剤(L1)を含有する溶液を準備し、
b2)工程a)において準備された溶液を第2の溶剤(L2)に添加し、その際に前記有機ジホスファイトは、少なくとも一部分が沈殿し、および
c)沈殿した有機ジホスファイトを液相から分離する方法である。
【0039】
好ましい態様において、工程b2)で、工程a)において準備された溶液は、熱時に第2の溶剤(L2)に添加される。
【0040】
好ましい態様において、工程c)において得られた有機ジホスファイトは、後処理のために、液状熱媒体での洗浄に掛けられる(工程d))。
【0041】
本発明のさらなる対象は、ヒドロホルミル化、ヒドロシアノ化または水素化のための、前記と同様の、以下に規定された、精製法によって得られた、少なくとも1つの有機ジホスファイトを配位子として含有する、遷移金属触媒の使用である。
【0042】
発明の説明
本発明による方法は、次の利点を有する:
− 本方法は、簡単かつ効果的であること。
− 得られた有機ジホスファイトは、連続的に実施される大工業的方法における配位子としての使用が支障のある影響なしに可能である程度に純粋であること。
− 本発明による精製法は、特に、第二級有機ホスファイトの含量の明らかな減少を可能にすること。
− 得られたジホスファイト化合物は、一般式(I)の有機ジホスファイトの骨格を形成する、一般式(Aii)
【化7】
のジオールの検出可能な量を有しないこと。このジオール(Aii)は、当該ジオールの比較的高い酸度およびそれと結びついた、有機ジホスファイトの破壊の危険に基づいて望ましくない。
− 得られたジホスファイト化合物は、ごく僅かな含量のハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを有すること。
− 得られたジホスファイト化合物は、特に、検出可能な量の第二級ホスファイトC1または第三級モノホスファイトD1および/またはD2
【化8】
〔式中、R’は、アルコキシ、有利にC1〜C4アルコキシ、殊にメトキシを表わす〕を有しないこと。このことは、意外なことに、第2の溶剤(L2)として、C1〜C4アルカノール、殊にメタノールが使用される場合でもある。
【0043】
本発明による方法の第2の変法(工程a)、b2)およびc))は、特に好ましい。この第2の変法は、さらに次の利点を有する:
− 有機ジホスファイトは、微細の、極めて良好にろ過可能な結晶の形で生じること。
− 有機ジホスファイトは、ごく微量の母液、すなわち溶剤L1、L2およびそれらの中に溶解された汚染物質を包接すること。誤解を避けるためにのみ、包接された溶剤は、溶剤が結晶格子内に取り入れられかつ相応する非溶媒和物とは異なる結晶を形成する溶媒和物ではないことが指摘される。
− 再結晶化によるさらなる精製は、不要であること。
− 本発明による方法により得られた生成物は、自由流動性の粉末であり、この粉末は、貯蔵の場合にも焼付き傾向がなくかつ当該粉末の自由流動性の性質をより長い時間に亘って保持する。
【0044】
粗製のジホスファイトとは、本発明の範囲内で、精製前の一般式(I)の有機ジホスファイトの組成物であると解釈され、例えば、この組成物は、一般に当該組成物の合成の際に生じかつ1つ以上の汚染物質、例えば副生成物、出発物質、触媒および/または別の合成助剤を含有する。
【0045】
当該汚染物質は、有機ジホスファイト(I)を均一系触媒反応における配位子として使用する際に触媒の活性、選択性および/または安定性に不利な作用を及ぼし、および/または別の使用技術的問題、例えば腐食の問題、または例えば、変色の形での、触媒反応による反応の生成物の汚染をまねく。
【0046】
本発明の範囲内で、第1の溶剤(L1)中に溶解されている、一般式(I)の有機ジホスファイトに第2の溶剤(L2)を混合することは、添加が一定の順序に制限されるものではない。原則的に、(L1)中の有機ジホスファイト(I)の溶液は、(L2)に添加されうるか、または(L2)は、(L1)中の有機ジホスファイト(I)の溶液に添加されうるか、またはこれら双方の液状媒体は、別の適当な方法で1つにまとめられうる。
【0047】
しかし、本発明による方法の先に記載された第2の変法によれば、一般式(I)の粗製の有機ジホスファイトおよび第1の溶剤(L1)を含有する溶液は、第2の溶剤(L2)に添加される。
【0048】
第1の溶剤(L1)中に溶解された粗製の有機ジホスファイトを第2の溶剤(L2)に添加することによって、有機ジホスファイトで富有化された固体相と粗製の有機ジホスファイトの汚染物質で富有化された、少なくとも1つの液相とが得られる。固体−液体の相分離後に、粗製のジホスファイトに比べて僅かな汚染物質を含有する、精製されたジホスファイトが得られる。
【0049】
前記汚染物質は、例えば次のとおりであることができる:
− 塩基性化合物、特にハロゲン化水素を捕集するための、有機ジホスファイトの製造法において使用される塩基(たいてい、有機窒素含有化合物、例えばアミン)、
− 塩基性化合物の酸塩、
− ハロゲン化水素および/またはその塩、
− 有機ジホスファイトのモノ酸化物、
− 有機ジホスファイトのジ酸化物、
− 第二級有機ホスファイト、これは、例えば、側翼の嵌め込みに使用される燐クロリジトを生じる、
− 先に挙げた汚染物質とは異なる、有機ジホスファイトの製造法からの出発物質および中間生成物、
− 先に挙げた汚染物質とは異なる成分、例えば有機ジホスファイトを製造する際に使用される触媒、添加剤および/またはこれらから形成される副生成物等、
− 先に挙げた汚染物質の少なくとも2つの混合物。
【0050】
本発明による方法により得られた、精製された有機ジホスファイトは、特に少なくとも95%、特に有利に少なくとも98%、殊に少なくとも99.5%の純度を有する。
【0051】
その際に、純度は、「化学的純度」において解釈され、かつ精製の際に得られた、全ての固体の物質混合物に対する、本発明による方法により得られた有機ジホスファイトの物質量の割合ならびに本発明による方法により得られた、有機ジホスファイトの溶媒和物の物質量の割合を示す。すなわち、溶剤を結晶格子中に組み入れて含む、本発明による方法により得られた、固体の有機ジホスファイト(いわゆる、溶媒和物の結晶)は、純粋な化合物に分類される。
【0052】
本発明による方法により得られた有機ジホスファイトは、第二級有機ホスファイトを一般に、本発明による方法により得られた、純粋な有機ジホスファイト、その溶媒和物を含めての全質量に対して、最大1質量%、特に有利に最大0.5質量%、殊に最大0.2質量%の量で含有する。
【0053】
本発明による方法により得られた有機ジホスファイトは、窒素含有化合物を一般に、純粋な有機ジホスファイト、その溶媒和物を含めての全質量に対して、最大20ppm、特に有利に最大10ppmの量で含有する。
【0054】
本発明による方法により得られた有機ジホスファイトは、ハロゲン化物(特に、塩化物)を一般に、本発明による方法により得られた、純粋な有機ジホスファイト、その溶媒和物を含めての全質量に対して、最大20ppm、特に有利に最大10ppmの量で含有する。
【0055】
本発明による方法により得られた有機ジホスファイトは、31P−NMRにおいて検出可能な量のホスファイトD1および/またはD2
【化9】
〔式中、R’は、アルコキシ、有利にC1〜C4アルコキシ、殊にメトキシを表わす〕を含有しない。
【0056】
たいてい、本発明による方法により精製された有機ジホスファイトは、さらなる後処理または精製なしに、例えば再結晶化によって、均一系触媒反応における配位子として使用されることができる。
【0057】
好ましくは、第1の溶剤(L1)は、少なくとも100℃、特に有利に少なくとも110℃の1013ミリバールでの沸点を有する。
【0058】
第1の溶剤(L1)として、特に、(C1〜C4アルキル)ベンゼン、(C1〜C4アルキル)フェニルエーテル、クロロベンゼンおよびこれらの混合物から選択されている溶剤または溶剤混合物が使用される。
【0059】
溶剤(L1)として適した(C1〜C4アルキル)ベンゼンは、例えばトルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレン、クメン(イソプロピルベンゼン)およびこれらの混合物である。
【0060】
溶剤として適した(C1〜C4アルキル)フェニルエーテルは、例えばアニソール、(メチル−フェニルエーテル)、エトキシベンゼン(フェネトール)、プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼンおよびこれらの混合物である。
【0061】
特に有利には、第1の溶剤(L1)は、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレン、クメン、アニソール、クロロベンゼンおよびこれらの混合物から選択されている。
【0062】
殊に、第1の溶剤(L1)として、トルエンが使用される。
【0063】
第2の溶剤(L2)として、本発明によれば、直鎖状C1〜C4アルカノール、エチレングリコールジ(C1〜C4アルキル)エーテルおよびこれらの混合物から選択されている溶剤または溶剤混合物が使用される。
【0064】
特に有利には、第2の溶剤(L2)は、メタノール、エタノール、エチレングリコールジメチルエーテルおよびこれらの混合物から選択されている。
【0065】
意外なことに、直鎖状C1〜C4アルカノールを第2の溶剤(L2)として使用する場合にも、有機ジホスファイト(I)の言うに値するアルコール分解は観察されない。
【0066】
殊に、第2の溶剤(L2)として、メタノールが使用される。
【0067】
第1の溶剤(L1)と第2の溶剤(L2)とは、とりわけ全体的に互いに混和性である。全体的に互いに混和性ではない、第1の溶剤(L1)と第2の溶剤(L2)とを使用する場合には、これらの使用は、特に、ミシビリティギャップにない量比で行われる。
【0068】
十分な量の第2の溶剤(L2)を使用することによって、少なくとも部分的に溶剤中に溶解された有機ジホスファイトを本質的に全体的に沈殿させることに成功する。その際に、先に挙げた溶剤(L1)および(L2)を用いると、主要量の汚染物質を溶解された形で含有する液状母液が得られる。
【0069】
第1の溶剤(L1)中の粗製の有機ジホスファイト(I)の溶液を第2の溶剤(L2)へ添加することは、唯一の添加工程で行うことができるかまたは少量ずつ行うことができる。所望の場合には、前記添加は、分別結晶の範囲内で行うことができ、この場合、その際に生じる画分は、それぞれ第2の添加の前に(L2)から単離されうる。第1の溶剤(L1)対第2の溶剤(L2)の質量による量比は、有効には、精製すべき有機ジホスファイト(I)が第2の溶剤(L2)の全ての添加の後にできるだけ全体的に沈殿して存在する程度に選択される。
【0070】
L1対L2の質量による量比は、特に、1:99〜95:5、特に有利に2:98〜90:10、殊に5:95〜80:20の範囲内にある。
【0071】
特に好ましい実施態様において、溶剤(L1)としてトルエンが使用されかつ溶剤(L2)としてメタノールが使用される。さらに、L1対L2の質量による量比は、特に1:99〜75:25、特に有利に1:99〜50:50の範囲内にある。トルエン(L1)対メタノール(L2)の特に好ましい質量による量比は、35:65〜45:55の範囲内にある。
【0072】
好ましくは、沈殿した有機ジホスファイトは、液相から分離され、および分離された有機ジホスファイトは、液状洗浄媒体での洗浄に掛けられる。この有機ジホスファイトは、1回または数回、次々に洗浄媒体での処理に掛けることができる。適当な洗浄媒体は、有機ジホスファイト(I)が溶解しないかまたは微少量でのみ溶解しかつ当該有機ジホスファイトの汚染物質を良好に溶解する洗浄媒体である。好ましい洗浄媒体は、先に記載された第2の溶剤(L2)である。好ましくは、洗浄媒体として、沈殿にも使用される第2の溶剤(L2)が使用される。特に好ましい洗浄媒体は、メタノールである。特に好ましい態様において、有機ジホスファイトは、最初にメタノールでの1回または数回の洗浄に掛けられ、および最終的に、メタノールを排除するために、アセトンでの洗浄に掛けられる。
【0073】
意外なことに、洗浄媒体に塩基を添加することは、本発明による方法により精製された有機ジホスファイトの安定性に有利に作用を及ぼすことが見い出された。複数の洗浄工程の場合には、塩基は、洗浄工程の1つまたは複数において添加されうる。このことは、複数の洗浄工程の際に、例えば最後の洗浄工程において使用される洗浄媒体にも当てはまる。特に有利には、塩基は、メタノールでの全ての洗浄工程で添加される。したがって、好ましい実施態様において、液相から分離される有機ジホスファイトは、最初に塩基性メタノールでの1回または数回の洗浄に掛けられ、およびメタノールの排除のためかつ塩基残分の排除のために、アセトンでの最終的な洗浄に掛けられる。
【0074】
好ましくは、塩基は、洗浄媒体中に溶解されている。適当な塩基は、例えばアルカリ金属水酸化物、例えばNaOHおよびKOHならびにアルカリ金属アルコラート、例えばナトリウムメタノラート、カリウムメタノラート、ナトリウム−t−ブチラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−アミラートおよびカリウム−t−アミラート等である。
【0075】
有利には、塩基として、アルカリ金属アルコラート、殊にナトリウムメタノラートが使用される。
【0076】
特に好ましい実施態様において、洗浄媒体として、塩基としてのナトリウムメタノラートが添加されたメタノールが使用される。
【0077】
好ましくは、洗浄媒体に塩基が洗浄媒体の全質量に対して0.01〜10質量%、特に有利に0.05〜5質量%の量で添加される。
【0078】
洗浄媒体への添加剤としての塩基を使用することによって、有機ジホスファイトのもはや制御不可能な分解に対する潜在性は、加熱の際に、例えば150℃を上回る温度での乾燥の際に著しく減少される。
【0079】
洗浄媒体での洗浄の構成に関連して、工程d)での次の記載は、参照による開示目的のために、本明細書に援用される。
【0080】
好ましくは、精製に使用される有機ジホスファイトは、例えば欧州特許出願公開第0214622号明細書A2、米国特許第4668651号明細書、米国特許第4769498号明細書、米国特許第5663403号明細書、米国特許第5728861号明細書および米国特許第6172267号明細書中の記載と同様に、ジホスファイト化合物から選択されており、当該文献の開示内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0081】
本発明による方法は、燐原子の1個、または2個の燐原子がヘテロ環式化合物の一部分ではない有機ジホスファイトを精製するために適している。この種の有機ジホスファイトは、例えばPCl3を2モル当量または4モル当量の相応するモノアルコール(1モル当量または2モル当量の側翼を形成するジオールの代わりに)と反応させかつ引き続き架橋基を燐原子の間で形成するジオールと反応させることによって得ることができる。この種のジホスファイト化合物およびその製造は、例えば米国特許第4748261号明細書、米国特許第4885401号明細書、米国特許第5235113号明細書および米国特許第5391801号明細書中に記載されており、当該文献の開示内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0082】
特に好ましい実施態様において、米国特許第4668651号明細書中に挙げられた化合物、殊に第9欄、第25行〜第16欄、第53行および実施例1〜11中に記載された化合物ならびに配位子A〜Qが当てはまる。
【0083】
特に好ましい実施態様において、米国特許第4748261号明細書中に挙げられた化合物、殊に第14欄、第26行〜第62欄、第48行および実施例1〜14中に記載された化合物ならびに配位子1〜8が当てはまる。
【0084】
特に好ましい実施態様において、米国特許第4769498号明細書中に挙げられた化合物、殊に第9欄、第27行〜第18欄、第14行および実施例1〜14中に記載された化合物ならびに配位子A〜Qが当てはまる。
【0085】
特に好ましい実施態様において、米国特許第4885401号明細書中に挙げられた化合物、殊に第12欄、第43行〜第30欄および実施例1〜14中に記載された化合物ならびに配位子1〜8が当てはまる。
【0086】
特に好ましい実施態様において、米国特許第5235113号明細書中に挙げられた化合物、殊に第7欄〜第40欄、第11行および実施例1〜22中に記載された化合物が当てはまる。
【0087】
特に好ましい実施態様において、米国特許第5391801号明細書中に挙げられた化合物、殊に第7欄〜第40欄、第38行および実施例1〜22中に記載された化合物が当てはまる。
【0088】
特に好ましい実施態様において、米国特許第5663403号明細書中に挙げられた化合物、殊に第5欄、第23行〜第26欄、第33行および実施例1〜13中に記載された化合物が当てはまる。
【0089】
特に好ましい実施態様において、米国特許第5728861号明細書中に挙げられた化合物、殊に第5欄、第23行〜第26欄、第23行および実施例1〜13中に記載された化合物が当てはまる。
【0090】
特に好ましい実施態様において、米国特許第6172267号明細書中に挙げられた化合物、殊に第11欄〜第40欄、第48行および実施例1および2中に記載された化合物ならびに配位子1〜11が当てはまる。
【0091】
本発明によれば、有機ジホスファイトは、一般式(I)
【化10】
〔式中、R1〜R12は、先に記載された意味および後に記載された意味を有する〕の化合物から選択されている。
【0092】
本発明の範囲内で、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、有利にフッ素、塩素または臭素を表わす。
【0093】
以下、「C1〜C12アルキル」の表現は、直鎖状C1〜C12アルキル基および分枝鎖状C1〜C12アルキル基を含む。この場合には、特に、非置換の直鎖状C1〜C8アルキル基または分枝鎖状C1〜C8アルキル基、殊に有利にC1〜C6アルキル基にかかわる。C1〜C12アルキル基の例は、殊にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル(1,1−ジメチルエチル)、n−ペンチル、2−ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、2−エチルペンチル、1−プロピルブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0094】
「C1〜C12アルキル」の表現に関する上記の説明は、C1〜C12アルコキシ中のアルキル基にも当てはまる。とりわけ、この場合は、非置換の直鎖状C1〜C6アルコキシ基または分枝鎖状C1〜C6アルコキシ基にかかわることである。
【0095】
置換C1〜C12アルキル基および置換C1〜C12アルコキシ基は、これらの鎖長に依存して1個以上(例えば、1、2、3、4または5個)の置換基Raを有することができる。前記置換基Raは、特に互いに独立して、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルから選択されている。
【0096】
「アルキレン」の表現は、本発明の範囲内で、特に1〜6個の炭素原子を有する直鎖状アルカンジイル基または分枝鎖状アルカンジイル基を表わす。それに関して、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2−CH2−)、n−プロピレン(−CH2−CH2−CH2−)、イソプロピレン(−CH2−CH(CH3)−)等が挙げられる。
【0097】
「C3〜C12シクロアルキル」の表現は、本発明の範囲内で、3〜12個、殊に5〜12個の炭素原子を有する、単環式炭化水素基、二環式炭化水素基または三環式炭化水素基を含む。それに関して、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、シクロペンタデシル、ノルボルニルまたはアダマンチルが挙げられる。
【0098】
「C3〜C12ヘテロシクロアルキル」の表現は、本発明の範囲内で、3〜12個、殊に5〜12個の炭素原子を有する、非芳香族基、飽和脂環式基または部分的に不飽和の脂環式基を含む。C3〜C12ヘテロシクロアルキル基は、特に4〜8個、特に有利に5または6個の環原子を有する。ヘテロシクロアルキル基において、シクロアルキル基とは異なり、環炭素原子の1、2、3または4個は、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基によって置換されている。ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基は、特に、−O−、−S−、−C(=O)−、または−S(=O)2−から選択されている。C3〜C12ヘテロシクロアルキル基の例は、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルおよびジオキサニルである。
【0099】
置換C3〜C12シクロアルキル基および置換C3〜C12ヘテロシクロアルキル基は、これらの環の大きさに依存して、1個以上(例えば、1、2、3、4または5個)の置換Rbを有することができる。前記置換基Rbは、特に互いに独立して、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルから選択されている。置換C3〜C12シクロアルキル基は、特に1個以上、例えば1、2、3、4または5個のC1〜C6アルキル基を有する。置換C3〜C12ヘテロシクロアルキル基は、特に1個以上、例えば1、2,3、4または5個のC1〜C6アルキル基を有する。
【0100】
置換C3〜C12シクロアルキル基の例は、例えば2−メチルシクロペンチルおよび3−メチルシクロペンチル、2−エチルシクロペンチルおよび3−エチルシクロペンチル、2−メチルシクロヘキシル、3−メチルシクロヘキシルおよび4−メチルシクロヘキシル、2−エチルシクロヘキシル、3−エチルシクロヘキシルおよび4−エチルシクロヘキシル、2−プロピルシクロヘキシル、3−プロピルシクロヘキシルおよび4−プロピルシクロヘキシル、2−イソプロピルシクロヘキシル、3−イソプロピルシクロヘキシルおよび4−イソプロピルシクロヘキシル、2−ブチルシクロヘキシル、3−ブチルシクロヘキシルおよび4−ブチルシクロヘキシル、2−s−ブチルシクロヘキシル、3−s−ブチルシクロヘキシルおよび4−s−ブチルシクロヘキシル、2−t−ブチルシクロヘキシル、3−t−ブチルシクロヘキシルおよび4−t−ブチルシクロヘキシル、2−メチルシクロヘプチル、3−メチルシクロヘプチルおよび4−メチルシクロヘプチル、2−エチルシクロヘプチル、3−エチルシクロヘプチルおよび4−エチルシクロヘプチル、2−プロピルシクロヘプチル、3−プロピルシクロヘプチルおよび4−プロピルシクロヘプチル、2−イソプロピルシクロヘプチル、3−イソプロピルシクロヘプチルおよび4−イソプロピルシクロヘプチル、2−ブチルシクロヘプチル、3−ブチルシクロヘプチルおよび4−ブチルシクロヘプチル、2−s−ブチルシクロヘプチル、3−s−ブチルシクロヘプチルおよび4−s−ブチルシクロヘプチル、2−t−ブチルシクロヘプチル、3−t−ブチルシクロヘプチルおよび4−t−ブチルシクロヘプチル、2−メチルシクロオクチル、3−メチルシクロオクチル、4−メチルシクロオクチルおよび5−メチルシクロオクチル、2−エチルシクロオクチル、3−エチルシクロオクチル、4−エチルシクロオクチルおよび5−エチルシクロオクチル、2−プロピルシクロオクチル、3−プロピルシクロオクチル、4−プロピルシクロオクチルおよび5−プロピルシクロオクチルである。
【0101】
「C6〜C20アリール」の表現は、本発明の範囲内で、単環式芳香族炭化水素基または多環式芳香族炭化水素基を含む。これらの芳香族炭化水素基は、6〜20個の環原子、特に有利に6〜14個の環原子、殊に6〜10個の環原子を有する。アリールは、特にC6〜C10アリールを表わす。アリールは、特に有利にフェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル、コロネニル、ペリレニル等を表わす。殊に、アリールは、フェニルまたはナフチルを表わす。
【0102】
置換C6〜C20アリール基は、当該アリール基の環の大きさに依存して、1個以上(例えば、1、2,3、4または5個)の置換基Rcを有することができる。置換基Rcは、特に互いに独立して、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C12ヘテロシクロアルキル、C6〜C20アリール、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ホルミル、アシルまたはアルコキシカルボニルである。
【0103】
置換C6〜C20アリールは、特に置換C6〜C10アリール、殊に置換フェニルまたは置換ナフチルである。置換C6〜C20アリール基は、特に、C1〜C6アルキル基、C1〜C6アルコキシ、塩素または臭素から選択された、1個以上、例えば1、2、3、4または5個の置換基を有する。
【0104】
本発明の範囲内で、「アシル」は、一般に2〜11個、有利に2〜8個の炭素原子を有するアルカノイル基またはアロイル基を表わす。それに関して、例えばアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、2−エチルヘキサノイル、2−プロピルヘプタノイル、ピバロイル、ベンゾイルまたはナフトイルが挙げられる。
【0105】
カルボキシレートは、本発明の範囲内で、特に、カルボン酸官能基の誘導体、殊にカルボン酸エステル官能基またはカルボン酸アミド官能基を表わす。それに関して、例えばC1〜C4アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノールおよびt−ブタノールとの前記エステルが挙げられる。それに関して、さらに、第一級アミドおよびそのN−アルキル誘導体およびN,N−ジアルキル誘導体が挙げられる。
【0106】
縮合された環系は、縮合環化によって結合された(融合された)芳香族化合物、ヒドロ芳香族化合物および環式化合物であることができる。縮合された環系は、2個、3個または3個を上回る環からなる。結合の仕方に応じて、縮合された環系の場合には、オルト位での縮合環化、すなわちそれぞれの環がそれぞれの隣接した環でそのつど1つの縁部または共通して2個の原子を有することと、1個の炭素原子が2個を上回る環に所属する、ペリ位での縮合環化との間で区別される。好ましくは、縮合された環系とは、オルト位で縮合された環系である。
【0107】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R1およびR3は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、およびR2およびR4は、水素を表わす。とりわけ、基R1およびR3は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシから選択されており、およびR2およびR4は、水素を表わす。
【0108】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R1、R3およびR4は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、および基R2は、水素を表わす。とりわけ、R1、R3およびR4は、互いに独立して、メチル、エチルおよびメトキシから選択されており、および基R2は、水素を表わす。
【0109】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R4は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、および基R1、R2およびR3は、水素を表わす。とりわけ、基R4は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシから選択されており、および基R1、R2およびR3は、水素を表わす。
【0110】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R1は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、および基、R2、R3およびR4は、水素を表わす。とりわけ、基R1は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシから選択されており、および基、R2、R3およびR4は、水素を表わす。
【0111】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R3およびR4は、一緒になって縮合されたベンゼン環を表わし、およびR1およびR2、は、水素を表わす。すなわち、式
【化11】
の基は、
【化12】
を表わす。
【0112】
一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、2個の基
【化13】
は、同じ意味を有していてもよいし、異なる意味を有していてもよい。好ましい実施態様において、2個の基は、同じ意味を有する。
【0113】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R5およびR12は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、およびR6、R7、R8、R9、R10およびR11は、水素を表わす。とりわけ、R5およびR12は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシを表わし、およびR6、R7、R8、R9、R10およびR11は、水素を表わす。
【0114】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R5、R7、R10およびR12は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、およびR6、R8、R9およびR11は、水素を表わす。とりわけ、R5、R7、R10およびR12は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシから選択されており、およびR6、R8、R9およびR11は、水素を表わす。
【0115】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R5、R7、R8、R9、R10およびR12は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、およびR6およびR11は、水素を表わす。とりわけ、R5、R7、R8、R9、R10およびR12は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシから選択されており、およびR6およびR11は、水素を表わす。
【0116】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R8およびR9は、互いに独立して、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシを表わし、およびR5、R6、R7、R10、R11およびR12は、水素を表わす。とりわけ、R8およびR9は、互いに独立して、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびメトキシから選択されており、およびR5、R6、R7、R10、R11およびR12は、水素を表わす。
【0117】
好ましくは、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、水素を表わす。
【0118】
好ましくは、一般式(I)の化合物において、基
【化14】
は、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラエチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−n−プロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジクロロ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジエチル−5,5’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジメチル−5,5’−ジ−n−プロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−n−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−イソブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−s−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−アミル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラキス−(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ビス−(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−2−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−3−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−2−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−3−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、
3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−4−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−2−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−4−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’,5,5’−テトラキス−(1,1,3,3−テトラ−メチルブチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジエトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−プロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−イソプロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−n−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−s−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−イソブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、3,3’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジ−t−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルおよび1,1’−ビナフタリニル−2,2’−ジイルから選択されている。
【0119】
特に有利には、基
【化15】
は、3,3’,5,5’−テトラ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルを表わす。すなわち、特に有利には、一般式(I)の有機ジホスファイトにおいて、基R1およびR3は、全てt−ブチルを表わし、およびR2およびR4は、水素を表わす。
【0120】
好ましくは、一般式(I)の化合物において、基
【化16】
は、互いに独立して、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジクロロ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジブロモ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジエチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−プロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−s−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−アミル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(1,1−ジメチルプロピル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、**、5,5’−ジ−n−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−2−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−ヘキシル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−2−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−4−ヘプチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−2−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−3−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−4−オクチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジエトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−プロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソプロポキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−n−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−s−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−イソブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル、5,5’−ジ−t−ブトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルおよび1,1’−ビナフタリニル−2,2’−ジイルから選択されている。
【0121】
特に有利には、基
【化17】
は、双方とも1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイルを表わす。
【0122】
特に有利には、本発明による方法は、次の有機ジホスファイト:
【化18】
【0123】
【化19】
【0124】
【化20】
を精製するために適している。
【0125】
殊に、式(I)の有機ジホスファイトは、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンである。
【0126】
工程a)
本発明による方法の好ましい実施態様において、粗製の有機ジホスファイトの工程a)において準備された溶液は、有機ジホスファイトの製造からの反応排出物である。
【0127】
好ましくは、粗製の有機ジホスファイトの工程a)において準備された溶液は、欧州特許出願公開第0214622号明細書A2、米国特許第4668651号明細書、米国特許第4748261号明細書、米国特許第4769498号明細書、米国特許第4885401号明細書、米国特許第5235113号明細書、米国特許第5391801号明細書、米国特許第5663403号明細書、米国特許第5728861号明細書、米国特許第6172267号明細書、WO 2003/062171およびWO 2003/062251中の記載と同様の製造法からの反応排出物である。
【0128】
好ましい実施態様において、粗製の有機ジホスファイトの工程a)において準備された溶液は、WO 2003/062171およびWO 2003/062251中の記載と同様の製造法からの反応排出物である。
【0129】
好ましくは、粗製の有機ジホスファイトの工程a)において準備された溶液は、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレンまたはp−キシレン、クメン、アニソールおよびこれらの混合物から選択されている溶剤を有する。殊に、トルエンを含有するかまたはトルエンから成る溶剤が使用される。勿論、工程a)において粗製の有機ジホスファイトの溶液を準備するために、有機ジホスファイトの製造からの反応排出物を溶剤交換に掛けることも可能である。しかし、当該の手段は、好ましくない。
【0130】
本発明によれば、精製に使用されるジホスファイトは、原理的に一連の公知の燐ハロゲン化物−アルコール縮合反応によって製造することができる。
【0131】
1つの特別な態様は、有機ジホスファイト(I)
【化21】
〔式中、R1、R2、R3およびR4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、前記の規定と同様にである〕を製造するために、
i)一般式(Ai)
【化22】
のジオールをPCl3と反応させて、化合物(A1)
【化23】
を得て、
ii)少なくとも1つの化合物(A1)を一般式(Aii)
【化24】
のジオールと反応させて、有機ジホスファイト(I)を得る方法である。
【0132】
基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12の適当で好ましい実施態様に関連して、これらの基の前記の記載は、本明細書に引用される。
【0133】
有機ジホスファイトを製造するための溶剤として、特に、先に記載された第1の溶剤(L1)に対応する溶剤または溶剤混合物が使用される。
【0134】
好ましくは、工程i)またはii)の少なくとも1つは、塩基の存在下で行われる。
【0135】
適当な塩基は、一般に、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩、第三級アミン、塩基性イオン交換樹脂等である。それに関して、例えばNaOH、KOH、Ca(OH)2、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。第三級アミンおよび特にトリエチルアミンが好ましい。
【0136】
工程i)またはii)の少なくとも1つが、そのつどの反応工程において形成されたハロゲン水素酸との塩を形成する塩基から選択されている塩基の存在下で行われる方法は、特に好ましく、この塩は、そのつどの反応工程の反応生成物が液状塩の分離中にあまり分解されない温度で液状であり、および前記塩は、そのつどの反応工程の反応媒体と不混和性の2つの液相を形成する。
【0137】
このタイプの適当な塩基は、WO 2003/062171およびWO 2003/062251中に記載されており、当該文献の開示内容は、参照のために本明細書に援用される。このタイプの適当な塩基は、1−メチルイミダゾール、1−n−ブチルイミダゾール、2−メチルピリジンおよび2−エチルピリジンである。
【0138】
好ましくは、最後に記載された変法により、縮合反応の際にハロゲン化水素酸および塩基から形成される酸塩の主要量は、簡単な相分離によって除去されうる。それにも拘わらず、前記反応排出物の引き続く精製は、有利に、得られた有機ジホスファイト(I)に作用を及ぼす。すなわち、冒頭に記載された汚染物質の割合をさらになお著しく減少させることに成功する。
【0139】
好ましい実施態様において、工程i)における反応は、触媒量の窒素塩基の酸塩の存在下で行われる。好ましくは、前記酸塩は、そのつど非置換または置換のイミダゾール、ピリジン、1H−ピラゾール、1−ピラゾリン、3−ピラゾリン、イミダゾリン、チアゾール、オキサゾール、1,2,4−トリアゾールおよび1,2,3−トリアゾールから選択されている窒素塩基に由来する。
【0140】
特に好ましくは、前記酸塩は、塩化水素、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2,4,6−トリメチル安息香酸およびトリフルオロメタンスルホン酸から選択されている酸に由来する。殊に、N−メチルイミダゾリウム塩酸塩が使用される。
【0141】
工程b1)(=変法1)
本発明によれば、この変法により、有機ジホスファイトは、第1の溶剤(L1)を部分的に除去することによって、部分的に沈殿され、この沈殿を完結させるために、第2の溶剤(L2)が添加される。
【0142】
第1の溶剤(L1)の部分的な除去は、当業者に公知の常法により行うことができる。それに関して、減圧下および/または高められた温度の下での蒸発が挙げられる。
【0143】
好ましくは、溶剤(L1)は、元の使用される量に対して、少なくとも10質量%、有利に少なくとも20質量%、殊に少なくとも30質量%が除去される。第1の溶剤(L1)としてトルエンが使用される限り、このトルエンは、特に、元の使用される量に対して、少なくとも50質量%、特に少なくとも60質量%が除去される。
【0144】
好ましくは、溶剤(L1)は、元の使用される量に対して、最大95質量%、特に有利に最大90質量%が除去される。
【0145】
溶剤(L1)を除去する際に、有機ジホスファイトは、部分的に沈殿する。
【0146】
好ましい態様において、第2の溶剤(L2)の添加前に、第1の溶剤(L1)および部分的に沈殿した有機ジホスファイトを含有する組成物は、冷却され、および温度は、第2の溶剤(L2)の添加中に低く維持される。好ましくは、第2の溶剤(L2)の添加中の温度は、最大20℃、特に有利に最大15℃である。
【0147】
工程b2)(=変法2)
とりわけ、工程a)において準備された溶液は、工程b2)における第2の溶剤への添加の際に、50〜180℃、有利に60〜150℃、殊に70〜130℃の範囲内の温度を有する。
【0148】
とりわけ、工程b2)において、第2の溶剤は、添加の際に0〜50℃、有利に15〜45℃、殊に15〜30℃の範囲内の温度を有する。
【0149】
とりわけ、工程b2)において、工程a)で準備された溶液と第2の溶剤との添加時の温度差は、少なくとも20℃、有利に少なくとも30℃、殊に少なくとも40℃である。
【0150】
好ましい実施態様において、工程b2)において、第2の溶剤(L2)は、予め装入され、および有機ジホスファイトの工程a)で準備された溶液は、供給流として、予め装入された溶剤(L2)の上の空間内に供給される。
【0151】
そのために、流出口が予め装入された溶剤(L2)の上方で開口する通常の添加装置が使用されうる。この添加は、個々の液滴の形で行うことができるかまたは噴流の形で行うことができる。流入量は、通常の計量供給装置、例えば弁、計量供給ポンプ等によって調整されうる。前記の有機ジホスファイトの熱い溶液を予め装入された溶剤(L2)に添加する場合には、前記添加装置は、熱絶縁されていてよい。
【0152】
好ましくは、前記有機ジホスファイトの溶液を溶剤(L2)中に添加することは、この添加が自由に、すなわち壁との接触なしに、および攪拌機羽根との接触なしに行われる程度に実施され、その結果、凝集の形成は、回避される。
【0153】
工程c)
本発明によれば、2つの前記した変法後の工程c)において、沈殿した有機ジホスファイトは、液相から分離される。
【0154】
この分離は、例えばろ過または遠心分離によって行うことができる。好ましくは、分離は、ろ過によって行われる。通常のろ過方法は、例えば脱水ろ過法および深ろ過法(例えば、A.Rushton(編):Mathematical Models and Design Methods in Solid−Liquid Sepatation,NATO ASI Series E No.88,Martinus Nijhoff,Dordrecht 1985,第90頁以降中のA.Rushton,A.S.Ward,R.G.Holdich:Solid−Liquid Filtration and Separation Technology,VCH Verlagsgesellschaft,Weinheim 1006,第177頁以降,K.J.Ives中に記載された)および交差流ろ過法(例えば、J.Altmann,S.Ripperger,J.Membrane Sci.124(1997),第119−128頁中に記載された)である。ろ過は、促進のために、固体側で高められた圧力下で行うことができるか、または流出側で減圧下で行うことができる。通常の遠心分離法は、例えばD.B.Purchas,Solid−Liquid Separation,Upland Press,Croydon 1977,第493−559頁中のG.Hultsch,H.Wilkesmann,“Filtering Centrifuges”およびH.Trawinski,“Die aequivalente Klaerflaeche von Zentrifugen”,Chem.Ztg.83(1959),606−612中に記載されている。様々な構造形式、例えばチューブ型遠心分離機およびバスケット型遠心分離機ならびに押出型遠心分離機、反転フィルター遠心分離機およびディスク型分離機が使用されてよい。
【0155】
工程c)において分離された液相は、所望の場合には、後処理に掛けることができる。本発明による方法の好ましい実施態様において、前記液相は、本質的に第1の溶剤(L1)および第2の溶剤(L2)を含有する留分(C1)と本質的に汚染物質を含有する留分(C2)への分離に掛けられる。それに関して、例えば、第1の溶剤(L1)および第2の溶剤(L2)は、蒸発によって、少なくとも一部分が液相から分離されうる。適当な分離装置は、そのために通常の蒸留塔および蒸発器、例えば流下膜型蒸発器、強制循環型のフラッシュエバポレーター、短路蒸発器または薄膜蒸発器である。たいていの汚染物質の揮発性は低いので、ふつうは、近くに並んで存在する沸点を有する混合物を分離する際に使用される、費用の掛かる装置、例えば費用の掛かる塔用取付け物、高い数の理論段を有する塔等は、省略することができる。第1の溶剤(L1)および第2の溶剤(L2)を含有する留分(C1)は、本質的に第1の溶剤(L1)を含有する留分(C1 L1)と本質的に第2の溶剤(L2)を含有する留分(C1 L2)へのさらなる分離に掛けることができる。蒸留による後処理に適した装置は、バブルキャップトレイ、棚板、シーブトレイ、規則充填物、不規則充填物、バルブ、側方取り出し口等を装備していてよい蒸留塔、例えば棚段塔、蒸発器、例えば薄膜蒸発器、流下膜型蒸発器、強制循環型蒸発器、サムベイ(Sambay)蒸発器等およびこれらの組合せを含む。
【0156】
前記留分(C1 L1)および/または(C1 L2)は、再度、第1の溶剤(L1)として、および/または第2の溶剤(L2)として、本発明による方法に従って有機ジホスファイトの精製に使用されることができる。その際に、第2の溶剤(L2)が第1の溶剤(L1)の僅かな割合(例えば、約5質量%まで)を含有することは、通例、重要ではない。
【0157】
本質的に汚染物質を含有する留分(C2)は、前記方法から排出される。
【0158】
この留分は、例えば熱的利用に供給されうる。
【0159】
本発明による方法の工程c)において得られた有機ジホスファイトは、既に均一系触媒反応における配位子としての使用に対して十分な純度を有する。しかし、殊に連続的な触媒的方法における使用に対して、工程c)において分離された有機ジホスファイトを工程d)におけるさらなる洗浄に掛けることは、好ましい。
【0160】
工程d)
本発明による方法の特別な実施態様において、工程c)において得られた有機ジホスファイトは、液状洗浄媒体での洗浄によるさらなる後処理に掛けられる。
【0161】
液状洗浄媒体での処理は、変法1(工程a)、b1)およびc))により得られた結晶性有機ジホスファイトに対して、ならびに変法2(工程a)、b2)およびc))により得られた結晶性有機ジホスファイトに対して好ましいことが証明された。変法2(工程a)、b2)およびc))により得られた有機ジホスファイトには、液状媒体での1回以上の処理に加えてのさらなる精製は、不要である。
【0162】
変法1(工程a)、b1)およびc))により得られた有機ジホスファイトがなお微少量の包接された溶剤および/または微少量の汚染物質を含有する場合には、当該有機ジホスファイトは、工程d)において、再結晶を含む、さらなる後処理に掛けられてよい。変法1)の場合には、再結晶と液状媒体での処理とからなる組合せが好ましい。
【0163】
適した洗浄媒体は、前記されている。特に好ましい洗浄媒体は、メタノールである。
【0164】
好ましくは、洗浄媒体での有機ジホスファイトの処理は、環境温度で行われる。とりわけ、洗浄媒体での有機ジホスファイトの処理は、少なくとも15℃の温度で、特に有利に15〜20℃の温度で行われる。好ましくは、洗浄媒体での有機ジホスファイトの処理は、最大30℃の温度で行われる。
【0165】
含まれている汚染物質を除去するために、工程c)において得られた有機ジホスファイトは、1回または数回、連続して洗浄剤での処理に掛けることができる。それに関して、有機ジホスファイトは、適当な装置中で洗浄媒体と緊密に接触され、洗浄媒体は、引き続き有機ジホスファイトから分離される。適当な装置は、例えば、必要とされる限り、加熱装置および洗浄媒体を凝縮および返送する装置を備えていてよい攪拌容器である。別の適当な装置は、フィルターケークが洗浄媒体で洗浄される吸引漏斗である。有機ジホスファイトと洗浄媒体との分離は、例えばろ過または遠心分離によって行われる。ろ過は、促進のために、固体側で高められた圧力下で行うことができるか、または流出側で減圧下で行うことができる。
【0166】
前述したように、洗浄媒体には、有利に塩基が添加される。複数の洗浄工程の場合、塩基は、洗浄工程の1つの工程で、または複数の工程で添加されてよい。このことは、複数の洗浄工程の場合に、例えば最後に洗浄工程で使用された洗浄媒体に対して当てはまる。有機ジホスファイトが、最初にメタノールでの1回または数回の洗浄に掛けられ、および最終的に、アセトンでの洗浄に掛けられる場合には、塩基は、有利にメタノールでの洗浄工程の少なくとも1つに添加される。特に有利には、塩基は、メタノールでの全ての洗浄工程に添加される。好ましい実施態様において、工程c)で得られた有機ジホスファイトは、最初に塩基性メタノールでの1回または数回の洗浄に掛けられ、およびメタノールの排除および塩基残分の排除のために、アセトンでの最終的な洗浄に掛けられる。
【0167】
適当な塩基は、洗浄媒体のための添加剤として、冒頭に挙げられている。好ましくは、塩基として、アルカリ金属アルコラート、殊にナトリウムメタノラートが使用される。
【0168】
特別な実施態様において、洗浄媒体として、ナトリウムメタノラートが添加されたメタノールが使用される。
【0169】
好ましくは、洗浄媒体には、塩基が、第2の溶剤(L2)の全質量に対して、0.01〜10質量%、特に有利に0.05〜1質量%、殊に0.05〜0.5質量%の量で添加される。
【0170】
汚染物質が負荷された洗浄媒体は、例えば蒸留により後処理されかつ再度洗浄媒体として使用されうる。分離された汚染物質は、排出される。
【0171】
一般式(I)の本発明による精製法により得られた化合物は、有利に、連続的方法における触媒のための配位子として適している。ここで、前記汚染物質のレベリングと結びついた欠点、例えば触媒寿命の短縮は、著しく減少させることができる。一般式(I)の本発明による精製法により得られた化合物は、さらに良好な流動能によって優れている。その上、前記化合物は、焼付きの僅かな傾向を示しかつより長い時間に亘って貯蔵されてもよい。好ましくは、使用前の機械的微粉砕は、多くの場合に不要である。
【0172】
一般式(I)の本発明による精製法により得られた化合物は、好ましくは、ヒドロホルミル化、または水素化に対する遷移金属触媒のための配位子として適している。
【0173】
一般に、反応媒体中の金属濃度は、約1〜10000ppmの範囲内にある。配位子対遷移金属のモル量比は、一般に約0.5:1〜1000:1、特に1:1〜500:1の範囲内にある。
【0174】
当業者によれば、遷移金属は、触媒反応すべき反応に依存して選択される。好ましくは、遷移金属は、元素の周期律表の第8族、第9族または第10族の金属である。特に有利には、遷移金属は、第9族または第10族の金属(すなわち、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Pt)から選択されている。
【0175】
前記方法の1つにおいて使用される触媒は、式(I)の前記化合物に加えて、なお、特にカルボキシレート、アセチルアセトネート、アリールスルホネート、アルキルスルホネート、水素化物、CO、オレフィン、ジエン、シクロオレフィン、ニトリル、芳香族化合物およびヘテロ芳香族化合物、エーテル、ならびに単座燐アミジト配位子、二座燐アミジト配位子および多座燐アミジト配位子、および単座ホスファイト配位子、二座ホスファイト配位子および多座ホスファイト配位子から選択されている、少なくとも1つのさらなる配位子であることができる。特に、さらなる配位子は、水素化物、COおよびオレフィン、すなわちヒドロホルミル化条件下でジホスファイト(I)および中心原子と一緒になって触媒の活性形を形成する能力を有する成分から選択されている。
【0176】
好ましい実施態様によれば、本発明により使用される触媒は、インサイチュー(in−situ)で前記反応に使用される反応器中で製造される。しかし、所望の場合には、触媒は、別々に製造されてもよく、および常法により単離されうる。本発明による触媒のインサイチュー(in−situ)での製造のために、例えば、少なくとも1つの本発明による精製された配位子、遷移金属の化合物または錯体、任意に少なくとも1つのさらなる他の配位子および任意に活性剤は、不活性の溶剤中で触媒反応すべき反応の条件下で反応しうる。
【0177】
触媒前駆体として、殊に一般的に、遷移金属、遷移金属化合物および遷移金属錯体が適している。
【0178】
適当なロジウム化合物またはロジウム錯体は、例えばロジウム(II)塩およびロジウム(III)塩、例えばロジウム(II)カルボキシラートまたはロジウム(III)カルボキシラート、ロジウム(II)アセタートおよびロジウム(III)アセタート等である。さらに、ロジウム錯体、例えばロジウムビスカルボニルアセチルアセトナト、アセチルアセトナトビスエチレンロジウム(I)、アセチルアセトナトシクロオクタジエニルロジウム(I)、アセチルアセトナトノルボルナジエニルロジウム(I)、アセチルアセトナトカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(I)等が適している。
【0179】
ヒドロホルミル化触媒の製造に適したコバルト化合物は、例えば硫酸コバルト(II)、炭酸コバルト(II)、これらのアミン錯体または水和物錯体、コバルトカルボキシラート、例えば酢酸コバルト、エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルトおよびカプロン酸コバルトである。また、コバルトのカルボニル錯体、例えばジコバルトオクタカルボニル、テトラコバルトドデカカルボニルおよびヘキサコバルトヘキサデカカルボニルは、適している。
【0180】
挙げられた遷移金属化合物および遷移金属錯体、およびさらなる適当な遷移金属化合物および遷移金属錯体は、原理的に公知であり、かつ刊行物中に十分に記載されているか、またはこれらは、当業者によって、既に公知の化合物と同様に製造されうる。
【0181】
本発明による触媒は、特に、ヒドロホルミル化のための使用に適している。ヒドロホルミル化のための触媒の場合、一般に、ヒドロホルミル化条件下でそのつど使用される触媒または触媒前駆体から触媒活性種が形成される。これに関して、元素の周期律表の第9族の元素、殊にロジウムまたはコバルトが使用される。
【0182】
前記触媒のヒドロホルミル化および/または後処理の場合には、触媒活性を高め、および/または前記触媒の分解を回避させる手段を得ることができる。当該法は、例えば欧州特許第0590613号明細書、欧州特許第0865418号明細書、欧州特許出願公開第0874796号明細書、欧州特許第0874797号明細書、欧州特許第0876321号明細書、欧州特許第0876322号明細書、欧州特許第0904259号明細書、欧州特許第1019352号明細書および欧州特許第1019353号明細書中に記載されている。ここで、当該文献の教示は、参照のために本明細書に援用される。
【0183】
ヒドロホルミル化は、そのつどの反応条件下で不活性の適当な溶剤中で実施されうる。適当な溶剤は、例えばヒドロホルミル化の際に形成されたアルデヒドおよびより高沸点の反応成分、例えばアルドール縮合の生成物である。さらに、芳香族化合物、例えばトルエンおよびキシレン、炭化水素または炭化水素混合物、脂肪族カルボン酸とアルカノール、例えばTexanol(登録商標)とのエステル、および芳香族カルボン酸のエステル、例えばC8〜C13ジアルキルフタレートが適している。
【0184】
ヒドロホルミル化触媒の製造および使用に関連して、次の文献の教示は、参照のために本明細書に援用される:欧州特許出願公開第0214622号明細書A2、米国特許第4668651号明細書、米国特許第4748261号明細書、米国特許第4769498号明細書、米国特許第4885401号明細書、米国特許第5235113号明細書、米国特許第5391801号明細書、米国特許第5663403号明細書、米国特許第5728861号明細書、米国特許第6172267号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10360771号明細書A1、WO 2003/062171およびWO 2003/062251。
【0185】
本発明によるヒドロホルミル化法に適したオレフィン原料は、原理的に、1個以上のエチレン性不飽和二重結合を含有する全ての化合物である。これに関して、末位の二重結合および内部の位置の二重結合を有するオレフィン、直鎖状オレフィンおよび分枝鎖状オレフィン、環式オレフィンならびにヒドロホルミル化条件下で本質的に不活性の置換基を有するオレフィンが挙げられる。2〜12個、特に有利に3〜8個の炭素原子を有するオレフィンを含有するオレフィン原料が好ましい。
【0186】
適当なα−オレフィンは、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等である。好ましい分枝鎖状の内部オレフィンは、C4〜C20オレフィン、例えば2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、内部ヘプテン混合物、分枝鎖状の内部オクテン混合物、分枝鎖状の内部ノネン混合物、分枝鎖状の内部デセン混合物、分枝鎖状の内部ウンデセン混合物、分枝鎖状の内部ドデセン混合物等である。さらに、適当なオレフィンは、C5〜C8シクロアルケン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンおよびこれらの誘導体、例えばこれらとの1〜5個のアルキル置換基を有するC1〜C20アルキル誘導体である。さらに、適当なオレフィンは、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、4−イソブチルスチレン等である。さらに、適当なオレフィンは、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸および/またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のエステル、半エステルおよびアミド、例えば3−ペンテン酸メチルエステル、4−ペンテン酸メチルエステル、オレイン酸メチルエステル、アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル、不飽和ニトリル、例えば3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、アクリルニトリル、ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等、塩化ビニル、塩化アリル、C3〜C20アルケノール、C3〜C20アルケンジオールおよびC3〜C20アルカジエノール、例えばアリルアルコール、ヘクス−1−エン−4−オール、オクト−1−エン−4−オール、2,7−オクタジエノール−1である。さらに、適当な基質は、分離されたかまたは共役された二重結合を有するジエンまたはポリエンである。これに関して、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,10−ウンデカジエン、1,11−ドデカジエン、1,12−トリデカジエン、1,13−テトラデカジエン、ビニルシクロヘキサン、ジシクロペンタジエン、1,5,9−シクロオクタジエンならびにブタジエンホモポリマーおよびブタジエンコポリマーが挙げられる。
【0187】
特別な態様において、ヒドロホルミル化法で技術的に使用すべきオレフィン含有炭化水素混合物が使用される。
【0188】
好ましい工業用オレフィン混合物は、C4カットである。C4カットは、例えばガス油の流動接触分解または蒸気分解によって得られるかまたはナフサの蒸気分解によって得られる。C4カットの組成に応じて、1,3−ブタジエンの分離後に得られる、いわゆるラフィネートIとイソブテンの分離後に得られるラフィネートIIとの全てのC4カット(粗製C4カット)は区別される。
【0189】
ラフィネートIIは、ヒドロホルミル化のためのオレフィン含有炭化水素混合物として特に好適である。
【0190】
さらなる好ましい工業用オレフィンは、C3カットである。出発物質として適当なプロピレン流は、プロペンとともにプロパンも含有することができる。プロパン含量は、例えばプロパン0.5〜40質量%、特に2〜30質量%である。
【0191】
前記方法の反応条件は、当業者に原理的に公知である。したがって、当業者であれば、適当な反応器および反応条件を関連文献からそれぞれの方法について確認することができかつ日常的に適合させることができる。適当な反応温度は、一般に−100℃〜500℃の範囲内、特に−80℃〜250℃の範囲内にある。適当な反応圧力は、一般に0.0001〜600バール、有利に0.5〜300バールの範囲内にある。本方法は、一般に連続的、半連続的または非連続的に行うことができる。連続的方法が好ましい。連続的な反応に適した反応器は、当業者に公知でありかつ例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第1巻、第3版、1951、第743頁以降に記載されている。適当な耐圧性反応器は、同様に公知でありかつ例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie、第1巻、第3版、1951、第769頁以降に記載されている。
【0192】
一般式(I)の本発明による精製法により得られた化合物は、好ましくはヒドロシアノ化に対する触媒のための配位子として適している。
【0193】
また、ヒドロシアノ化に使用される触媒は、第VIII副族の金属、殊にニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、有利にニッケル、パラジウムおよび白金、殊に有利にニッケルの錯体を含む。前記金属錯体は、前記の記載と同様に製造することができる。同様のことは、本発明によるヒドロシアノ化触媒のインサイチュー(in−situ)での製造にも当てはまる。ヒドロシアノ化法は、J.March,Advanced Organic Chemistry,第4版,第811−812頁中に記載されており、当該文献の開示内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0194】
ヒドロシアノ化触媒の製造および使用に関連して、米国特許第6127567号明細書の開示内容は、参照のために本明細書に援用される。
【0195】
本発明による方法により精製された有機ジホスファイトは、さらに有利に、水素化触媒の配位子として適している。好ましくは、水素化に使用される本発明による触媒は、元素の周期律表の第9族または第10族の少なくとも1つの金属、すなわちRh、Ir、Ni、Co、PdおよびPtから選択されている金属を含む。
【0196】
使用すべき触媒量は、とりわけ、そのつどの触媒活性金属およびその使用形に依存しかつ個々の具体的な事例においては当業者によって決定されうる。すなわち、例えばNi含有水素化触媒またはCo含有水素化触媒は、水素化すべき化合物の質量に対して、特に0.1〜70質量%、特に有利に0.5〜20質量%、殊に1〜10質量%の量で使用される。その際に、記載された触媒量は、活性金属量に対する、すなわち触媒の触媒的に有効な成分に対するものである。例えば、ロジウム、ルテニウム、白金またはパラジウムを含む貴金属触媒を使用する場合には、ほぼ10分の1の少量で使用される。
【0197】
水素化は、特に0〜250℃の範囲内、特に有利に20〜200℃の範囲内、殊に50〜150℃の範囲内の温度で行われる。
【0198】
水素化反応の反応圧力は、特に1〜300バールの範囲内、特に有利に50〜250バールの範囲内、殊に150〜230バールの範囲内にある。
【0199】
反応圧力ならびに反応温度は、とりわけ使用される水素化触媒の活性および量に依存しかつ個々の具体的な事例においては当業者によって決定されうる。
【0200】
水素化は、適当な溶剤中または物質中で希釈せずに行うことができる。適当な溶剤は、反応条件下で不活性である、すなわち出発物質または生成物と反応しないし、なおそれ自体変化もしないし、かつ問題なしに得られたイソアルカンから分離されうる溶剤である。適当な溶剤には、例えば開鎖エーテルおよび環式エーテル、例えばジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンおよびアルコール、殊にC1〜C3アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノールが所属する。前記溶剤の混合物も適している。
【0201】
水素化に必要な水素は、純粋な形でも水素含有ガス混合物の形でも使用されうる。しかし、後者は、有害量の触媒毒、例えば硫黄含有化合物またはCOを含んでいてはならない。適当な水素含有ガス混合物の例は、リフォーミング法からの当該水素含有ガス混合物である。しかし、とりわけ水素は、純粋な形で使用される。
【0202】
水素化は、連続的ならびに非連続的に構成されうる。
【0203】
水素化は、たいてい、水素化すべき化合物を、任意に溶剤中に予め装入する程度に実施される。この反応溶液は、引き続き、特に水素化触媒と混合され、その後に水素の導入が行われる。使用される水素化触媒に依存して、水素化は、高められた温度および/または高められた圧力で行われる。圧力下での反応の実施には、公知技術水準から公知の通常の圧力容器、例えばオートクレーブ、攪拌型オートクレーブおよび圧力反応容器が使用されうる。水素の過圧の際に作業を行わない場合には、常圧に適している、公知技術水準の通常の反応装置が当てはまる。このための例は、とりわけ、沸騰冷却器、適当な混合装置、導入装置、任意に熱交換要素および不活性化装置を装備している攪拌容器である。連続的な反応の実施の場合、水素化は、常圧下で、このために通常の反応容器、管状反応器、固体層反応器および類似物中で実施されうる。
【図面の簡単な説明】
【0204】
図1】実施例4で得られた、メタノールで湿潤された、Iのフィルターケークを可能なかぎり乾燥するまで吸い取って示差走査熱量測定(DSC、differential scanning calorimetry)した結果を示すグラフ。
図2】実施例5で得られた、フィルターケークからなる湿潤された結晶物から、DSCに対して、試料(250g)を確認した結果を示すグラフ。
【0205】
本発明を以下の制限のない実施例につき詳説する。
【実施例】
【0206】
実施例1
触媒としてのメチルイミダゾリウム塩酸塩を用いる6−クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンの合成
2000mlの二重ジャケット型反応器中に窒素の下で2,2’−ジヒドロキシビフェニル(931.1g、5.0mol)および1−メチルイミダゾリウム塩酸塩(0.9g、7.6mmol)を予め装入し、かつ2,2’−ジヒドロキシビフェニルの溶融後に142℃の内部温度に加熱した。次に、攪拌しながら三塩化リン(861.2g、6.26mol)の流入を開始し、その際に三塩化リンが熱い反応器壁に到達しないことに注意を払った。計量供給速度を、接続されたHCl洗浄塔が形成されたHClを全部吸収しうる程度に調整した。三塩化リンの添加には、全体的に3時間を要した。三塩化リンの添加に引き続いて、140℃で3時間さらに攪拌し、その際に薄液状の黄色の反応混合物を得た。引続き、過剰の三塩化リンを除去するために、40分以内に前記反応器を16ミリバールの最終真空になるように排気した。三塩化リンの最終残分を攪拌しながら真空中で140℃/16ミリバールで除去し、前記混合物を引き続き65℃に冷却した。窒素での通気後、トルエン(139.2g)を添加し、こうして得られた、生成物の90質量%の溶液(1390g)をネジ蓋付き瓶中に放出し、かつアルゴンの下で閉鎖した。31P−NMR後に、生成物は、98.7%の純度を有していた。
【0207】
実施例2:
触媒としてのN−メチルピロリドンを用いる6−クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンの合成
傾斜羽根型攪拌機、凝縮器、洗浄塔の上方の排ガス排出口および真空を発生させる装置を備えた、600リットルの容器に、窒素の下で2,2’−ジヒドロキシビフェニル(88.0kg、473mol)およびN−メチルピロリドン(0.337kg、3.4mol)を供給した。内部温度を140℃に加熱することによって、前記混合物を溶融し、次に攪拌しながら三塩化リン(88.5kg、644mol)を、全部で7時間の経過中に140℃で供給した。弱い吸熱反応が強いHCl発生下および弱い還流下に進行した。三塩化リンを全部添加した後に、140℃で9時間さらに攪拌し、次にこのバッチを50℃の容器内部温度に冷却した。過剰の三塩化リンを除去するために、引き続きこの容器を50℃で20ミリバールの最終圧力まで(凝縮器温度5℃)徐々に排気した。その際に、過剰の三塩化リンを留去した。三塩化リンの分離を完結させるために、引き続き内部温度を140℃まで加熱し、かつこの温度で20ミリバールで3時間さらに攪拌した。その後に、得られた生成物を90℃に冷却し、かつ実施例3における合成に直接使用した。
【0208】
実施例3:
6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン
6−クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(118.4kg)の実施例2により得られた融液に、85℃で60分間内に攪拌しながら、1−メチルイミダゾール(40.8kg)とトルエン(313.5kg)とからなる混合物中の3,3’,5,5’−テトラ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール(92.7kg)の溶液を供給した。この添加の終結時に2つの相が存在し、これらの相を80℃でなお1時間さらに攪拌した。次に、内部温度を90℃に加熱し、相分離のために攪拌機のスイッチを切り、前記相を90℃で20分以内に分離させた。下方の相として、1−メチルイミダゾリウム塩酸塩(59kg)が得られ、これを直ちに晶出した。前記容器中に残留する上方の相の31P−NMRは、トルエン中の6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンの溶液が存在することを証明した。前記変法1による精製のために、得られた容器内容物を還流時(113℃)に加熱し、かつ還流下に3時間攪拌した。引続き、トルエンを常圧で留去した(全部で218kg、蒸留の終結時の容器内部温度は、124℃であった)。次に、前記容器内容物を15℃/時の冷却速度で70℃に冷却し(攪拌機の回転数:50rpm)、次にさらに10℃/時で20℃に冷却した。引続き、5時間以内でメタノール(204kg)を20℃で供給し、このバッチを20℃でさらに30分間、後攪拌した(攪拌機の回転数:80rpm)。次に、容器内容物(白色の懸濁液)の同量部を2個の特殊鋼製吸引漏斗上に排出した。さらに、それぞれの吸引漏斗のために、次のように方法を実施した:窒素で押圧して分離することによって、母液(トルエン/メタノール混合物)をろ別した。ろ過は、極めて迅速に進行した。それぞれの吸引漏斗を後洗浄するために、新しいメタノール(それぞれ135kg)を前記容器中に注入し、これを18℃および188rpmの攪拌機回転数で10分間、攪拌した。次に、このメタノールをそのつど攪拌なしに前記吸引漏斗上に添加し、かつ再度、窒素で押圧して分離することによってろ過した。引続き、それぞれの吸引漏斗上でフィルターケークをなお4回メタノール(それぞれ95kg)で洗浄し、引き続き一晩中、ろ液がもはや得られなくなるまで、2バールの窒素で吹き付け乾燥した。引続き、それぞれの吸引漏斗中で生成物を最大50℃で61時間の経過中に、50℃に予熱された窒素流でさらにメタノール含量が0.05%未満になるように乾燥した。生成物(全部で134.2kg、2,2’−ジヒドロキシビフェニルに対して、収率67.7%)を白色の固体として得た。
【0209】
塩化物含量(イオンクロマトグラフィーにより測定した):13mg/kg、窒素含量(ASTM D 5762−02により測定した):37mg/kg。
【0210】
実施例4:
6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン
2lの二重ジャケット型フラスコ中に不活性の雰囲気下で6−クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(トルエン中の90%の溶液として445.6g、1.60mol)を供給し、この溶液を85℃に加熱した。さらに、電磁攪拌機を備えた、2 lのエルレンマイヤーフラスコに1−メチルイミダゾール(141.0g、1.60mol)およびトルエン(791.5g)を供給し、およびこの攪拌した混合物に3,3’,5,5’−テトラ−(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール(320.5g、0.78mol)を添加し、それに対してほとんど無色の溶液が形成された。この溶液を、滴下漏斗を介して80分以内で不活性の雰囲気下で前記の二重ジャケットフラスコ中に滴加した。形成された褐色の反応混合物を引き続きなお50分間、80℃で維持し、次に90℃に加熱した。10分間に亘ってさらに攪拌した後、攪拌機を停止させた。2つの相が形成され、これらは、70分間、分離したままにしておいた。次に、下方の相の(1−メチルイミダゾリウム塩酸塩)を底弁を通じて粘稠な液体として排出し(182.7g)、その後に迅速に晶出させた(融点約80℃)。次に、上方の相を還流させ(115℃)、かつさらに3時間に亘って攪拌した。
【0211】
その間に、攪拌機を備えた、4 lの二重ジャケット反応器を2 lの二重ジャケット反応器の下方に配置し、この2 lの反応器の底排出弁から、熱絶縁されたテフロンチューブを研磨された面を通じて4 lの反応器中に案内した。不活性の雰囲気下で前記の4 lの反応器にメタノール(2000ml)を供給し、これを20℃に冷却した。引続き、攪拌機回転数を355rpmに調節し、トルエン中の配位子の溶液を、前記の2 lの反応器から70分以内に、空いている場合に、前記テフロンチューブから流出する噴流が攪拌機の壁に接触しないし、攪拌機の軸または羽根にも接触しない程度にメタノール中に流入させることができた。生成物は、直ちに白色の固体として沈殿した。前記配位子の溶液の添加の終結後に、得られた懸濁液をなお1時間さらに攪拌した。引続き、生成物をろ別し、4 lの反応器をメタノール(1000ml)でさらに洗浄した。フィルターケークをこのメタノールと一緒に攪拌し、吸い取り、なお3回メタノール(それぞれ1000ml)でさらに洗浄し、かつ次に乾燥するまで吸い取った。こうして得られた生成物を一晩中、70℃および10ミリバールで乾燥した後、無色の流動性粉末605.3g(90.1%、6−クロロジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンに対して)を得た。
【0212】
塩化物(イオンクロマトグラフィー):1mg/kg未満、窒素(ASTM D 5762−02により測定した):2mg/kg。
【0213】
ろ過の直後に得られた生成物は、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンのトルエンのモノソルベートであった。乾燥条件の厳しさに依存して、トルエンモノソルベートは、Iの非溶媒和物に変換されうる。このトルエンモノソルベートおよび乾燥条件に依存する様々な組成物中のIの前記の2つの形の混合物は、より長い貯蔵後でも焼付け傾向がない流動性粉末である。
【0214】
図1は、実施例4で得られた、メタノールで湿潤された、Iのフィルターケークを可能なかぎり乾燥するまで吸い取って示差走査熱量測定(DSC、differential scanning calorimetry)した結果を示す。DSC測定をMettler Toledo DSC 822eモジュールで実施した(試料量:10mg、アルミニウムからなる開いたるつぼ、加熱速度 10K/分)。
【0215】
メタノール中の6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンの観察された驚くべき安定性にも拘わらず、純粋な生成物のメタノールで湿潤されたフィルターケークは、乾燥の際に高すぎない温度負荷に掛けられうることが判明した。それというのも、157℃の開始温度の際に、約260J/gの熱が放出される、自動触媒反応による分解が起こるからである。総じて、吸熱分解により、400℃を上回る最終温度が達成される。
【0216】
実施例5:
沈殿および洗浄の際にナトリウムメチラートをメタノールに添加し、ならびにフィルターケークをアセトンで最終的に洗浄することによる、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンの安定化
トルエン中の配位子の溶液を実施例4の記載と正確に同じ方法で製造した。Iの沈殿のための装置は、実施例4の記載と同じである。沈殿を実施するために、4 lの反応器中にメタノール(2000ml)を予め装入し、これになおナトリウムメチラート(メタノール中の30質量%の溶液8.0g)を添加した。引続き、攪拌機回転数を355rpmに調節し、トルエン中の配位子の溶液を、前記の2 lの反応器から80分以内に、空いている場合に、前記テフロンチューブから流出する噴流が攪拌機の壁に接触しないし、攪拌機の軸または羽根にも接触しない程度にメタノール中に流入させることができた。この生成物は、直ちに白色の固体として沈殿した。前記配位子の溶液の添加の終結後に、得られた懸濁液をなお110分間さらに攪拌した。引続き、生成物をろ別し、4 lの反応器をメタノール(450g)とナトリウムメチラート(メタノール中の30%の溶液2.0g)とからなる混合物でさらに洗浄した。フィルターケークをこのメタノールと一緒に攪拌し、吸い取り、なお3回メタノールとナトリウムメチラート(それぞれメタノール450gおよびメタノール中の30%のナトリウムメチラート溶液2.0g)でさらに洗浄し、かつ次に乾燥するまで吸い取った。フィルターケークからなる湿潤された結晶物から、DSCおよび加圧蓄熱測定(Druckwaermestaumessung)に対して試料(250g)を確認した。図2は、DSCを示す。
【0217】
引続き、フィルターケークを、アセトン(500ml)での置換洗浄により洗浄し、かつ良好に吸い取った。こうして得られた生成物を2日間に亘って70℃および10ミリバールで乾燥した後に、無色の流動性粉末605.3gを得た。
【0218】
精製および次の洗浄工程の際に使用されるメタノールにナトリウムメチラートを添加しかつ次に最後にNaOMe含有メタノールをフィルターケークから置換するアセトン洗浄が実施される場合には、示差走査熱量測定において、実際に依然としてなお、125℃の開始温度から軽い分解が現れるが、しかし、もはや自動触媒的に進行しない。この方法によって、そのNa含量が極めて小さく(30ppm未満)かつ熱分解の危険が実際に完全になくなっている生成物が得られる。約54J/gのなお観察される熱発生は、約25℃の加熱を発生させるが、この加熱は、前記物質を危険な温度範囲にさらに加熱するには不十分である。
【0219】
実施例6:
本発明により精製されかつ常法により再結晶された6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピンの貯蔵試験
本発明による生成物として、実施例4からの生成物が使用される。
【0220】
実施例4からの本発明により精製された生成物を、次のパラメーターを有する、困難にされた貯蔵条件下での貯蔵試験に掛ける:
− 高い相対空気湿度:95%
− 高い温度:40℃
− 水蒸気透過性包装材料:PEインライナー(材料の厚さ125μm)、寸法:350×350×500mm、容積約60リットルを有するPP織布からなるMini−Bigbag。
− 高い負荷容量(3個積み上げたMini−Bigbagと同様):6.0kPa。
【0221】
試験を2週間および4週間に亘って実施する。
【0222】
それに関して、前記生成物を前記のMini−Bigbag中に梱包し、かつ記載された条件下で相応する荷重を有する耐候試験機中で重りによって負荷を掛ける。規定の時間後に、前記のMini−Bigbagを取出し、かつ切って開けた。表面上で、貫入力を算出するために、貫入試験機(PCE Inst.Deutschland GmbH)を用いて貫入試験を実施する。
【0223】
a)2週間の貯蔵時間:
− 表面上で軽い塊の形成、
− コア内での個々の団塊、生成物の残分は、極めて良好に自由流動性である。
− 団塊は、既に極めてわずかな機械的費用で崩壊する。
− 貫入試験機による試験の結果:(それぞれ5回の測定で異なる貫入深さを有する2個の試験体からの平均値)6mm:0.01N、12mm:0.3N。
b)4週間の貯蔵時間:
− 生成物は、ルーズでありかつ自由流動性である。
− 焼付けなし、
− 団塊なしないし極めて低い強度を有する僅かな団塊、
− 袋の縁部で、とりわけ角部での弱い固化。
− 貫入試験機による試験の結果:(それぞれ5回の測定で2個の試験体からの平均値)6mm:0.0N、12mm:0.1N。
【0224】
実施例4による、メタノールから沈殿した、本発明による生成物は、4週間後でも流動性であり、かつ焼付けがない。最も高い貫入力は、2週間後に、0.3Nの値で測定された。
図1
図2