特許第6042544号(P6042544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042544光配向性共重合体、これを用いた光学異方性フィルムおよびその製造方法
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  • 特許6042544-光配向性共重合体、これを用いた光学異方性フィルムおよびその製造方法 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042544
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光配向性共重合体、これを用いた光学異方性フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/30 20060101AFI20161206BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C08F220/30
   G02F1/1337 520
【請求項の数】21
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-528405(P2015-528405)
(86)(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公表番号】特表2015-527459(P2015-527459A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】KR2013007675
(87)【国際公開番号】WO2014035116
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年2月23日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0093688
(32)【優先日】2012年8月27日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0101441
(32)【優先日】2013年8月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ダイ−スン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン−ウー・ヨ
(72)【発明者】
【氏名】スン−ホ・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン−ビン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ミ−ラ・ホン
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−506420(JP,A)
【文献】 特開2008−276149(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014915(WO,A1)
【文献】 米国特許第06201087(US,B1)
【文献】 特開2005−263789(JP,A)
【文献】 特開2009−223001(JP,A)
【文献】 特開平04−012322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 12/00−34/04
G02F 1/1337
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1の光配向性繰り返し単位と、
下記の化学式2の繰り返し単位と、を含む光配向性共重合体:
【化1】
前記化学式1中、
Aは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり、
L’は、単一結合、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−、−S−、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンおよび置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレンからなる群より選択された二価連結基の一つ以上が組み合わされたスペーサ基であり、
Wは、下記化学式1aの光反応性作用基であり、
【化2】
前記化学式1a中、
Eは、単純結合;−O−;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン;または置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレンオキシドであり、
Xは、酸素または硫黄であり、
YおよびZは、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキルであり、
10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数4〜8のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;14族、15族または16族のヘテロ元素を含む炭素数6〜40のヘテロアリール;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアルコキシアリール;シアノ;ニトリル;ニトロ;およびヒドロキシからなる群より選択され、
【化3】
前記化学式2中、
Aは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり、
BおよびB’は、それぞれ独立して、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−または−S−を表し、
Lは、単一結合、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンであり、
S1は、−C(=O)O−を表し、
R1は、非置換の炭素数1〜20のアルキルである。
【請求項2】
前記L’のスペーサ基は、単一結合またはカルボニル、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、および置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレンが−O−を媒介として順次連結された構造を有する、請求項に記載の光配向性共重合体。
【請求項3】
前記化学式2中、Bは、−C(=O)O−であり、Lは、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンであり、B’は、−O−である、請求項1に記載の光配向性共重合体。
【請求項4】
前記L’のスペーサ基に含まれている炭素数6〜40のアリーレンは、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル、ハロゲン、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ、炭素数1〜6のアルキルエステル、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルエステル、炭素数1〜6のアルキレートおよび炭素数1〜6のハロゲン化アルキレートからなる群より選択された一つ以上の作用基で置換されたものである、請求項に記載の光配向性共重合体。
【請求項5】
前記光配向性繰り返し単位:化学式2の繰り返し単位=10:90〜99:1のモル比に含む、請求項1に記載の光配向性共重合体。
【請求項6】
20,000〜1,000,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の光配向性共重合体。
【請求項7】
請求項1に記載の光配向性共重合体を含む光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項8】
反応性メソゲンをさらに含む、請求項に記載の光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項9】
反応性メソゲンは、下記の化学式3または4の化合物を含む、請求項に記載の光学異方性フィルム形成用組成物:
【化4】
前記化学式3および4中、
、Lは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキルエステル、置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキルエーテル、および置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキルケトンからなる群より選択され、
、Bは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリーレン、または置換もしくは非置換の炭素数4〜8のシクロアルキレンであり、
R1、R2は、それぞれ独立して、(メト)アクリル基またはエポキシ基であり、
は、フッ素置換もしくは非置換の炭素数1〜7のアルキル、フッ素置換もしくは非置換の炭素数1〜7のアルコキシ、フッ素置換もしくは非置換の炭素数2〜7のアルケニル、フッ素置換もしくは非置換の炭素数2〜7のアルケニルオキシ、およびフッ素置換もしくは非置換の炭素数1〜7のアルコキシアルキルからなる群より選択され、
、Z、Z、Zは、それぞれ独立して、単純結合、−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OC(O)O−である。
【請求項10】
光硬化可能なバインダーをさらに含む、請求項に記載の光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項11】
光硬化可能なバインダーは、ペンタエリトリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acrylolyloxyethyl)isocynurate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)およびジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)からなる群より選択された1種以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物を含む、請求項10に記載の光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項12】
UV硬化を開始する光開始剤をさらに含む、請求項に記載の光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項13】
組成物の総固形分重量に対して、光配向性共重合体の1〜50重量%、反応性メソゲンの10〜90重量%、光硬化可能なバインダーの1〜50重量%、および光開始剤0.1〜5重量%を含む、請求項に記載の光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項14】
有機溶媒をさらに含む、請求項に記載の光学異方性フィルム形成用組成物。
【請求項15】
請求項14のいずれか一項に記載の組成物にUV偏光を照射して光配向性共重合体に結合された光反応性作用基の少なくとも一部を光配向させる段階;および
少なくとも一部の光反応性作用基が光配向された組成物を熱処理して光学異方性を増加させる段階を含む光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項16】
熱処理段階後、前記光学異方性が増加した組成物に含まれている反応性メソゲンまたは光硬化可能なバインダーを光硬化する段階をさらに含む、請求項15に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項17】
反応性メソゲンは、前記光配向性共重合体の光配向された光反応性作用基により液晶配向される、請求項16に記載の光学異方性フィルムの製造方法。
【請求項18】
基材上に形成された請求項14のいずれか一項に記載の組成物の硬化物を含む光学異方性フィルム。
【請求項19】
前記硬化物の単一層を含む、請求項18に記載の光学異方性フィルム。
【請求項20】
前記硬化物は、少なくとも一部の光反応性作用基が光配向された光配向性共重合体と、前記光配向された光反応性作用基により液晶配向された反応性メソゲンの硬化物と、(メタ)アクリレート系架橋重合体を含むバインダー樹脂とを含む、請求項18に記載の光学異方性フィルム。
【請求項21】
液晶配向フィルム、光学フィルター、位相差フィルム、偏光子または偏光発光体の機能を有する、請求項18に記載の光学異方性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向性共重合体、これを用いた光学異方性フィルムおよびその製造方法に関する。より具体的に、本発明は、より優れた光学的異方性を示す光学異方性フィルムの形成を可能にする光配向性共重合体、これを含む光学異方性フィルム形成用組成物、これを用いた光学異方性フィルムおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、液晶ディスプレイの大型化に伴ってモバイルフォンやノートパソコンなどの個人用から漸次に壁掛けTVなどの家庭用へ用途が拡張することによって、液晶ディスプレイに対しては高画質、高品位化および広視野角が要求されている。特に薄膜トランジスターにより駆動される薄膜トランジスター液晶ディスプレイ(TFT−LCD)は、個々の画素を独立的に駆動させるため、液晶の応答速度が非常に優れて高画質の動画を具現することができ、漸次に応用範囲が拡張している。
【0003】
このようなTFT−LCDで液晶が光スイッチとして用いられるためには、ディスプレイセルの最内側の薄膜トランジスタが形成された層の上に液晶が一定の方向に初期配向されなければならず、そのために配向膜が用いられている。特に、最近は、UVのような光により液晶配向層を配向させる光配向方法の適用が幅広く検討されている。
【0004】
通常、このような光配向のためには、液晶層下部に光配向性重合体を含む配向層を形成し、このような配向層に線偏光されたUVを照射して光反応を起こす。その結果、光配向性重合体の主鎖が一定の方向に配列するようになる光配向が起こり、このように光配向された配向層の影響で上部層に含まれている液晶が配向される。
【0005】
しかし、以前に知られた液晶配向層の場合、光学的異方性や液晶配向性などが充分でない場合が多かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、より優れた光学異方性を示す光学異方性フィルムの形成を可能にする光配向性共重合体を提供することにその目的がある。
また、本発明は、前記光配向性共重合体を含むことによって、別途の液晶層を形成する必要なしに、優れた光学的異方性を示すフィルムなどの提供を可能にする光学異方性フィルム形成用組成物を提供することにその目的がある。
【0007】
本発明はまた、前記組成物を用いて形成される光学異方性フィルムおよび製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シンナメート系作用基、カルコン系作用基、アゾ系作用基またはクマリン系作用基の光反応性作用基を有する光配向性繰り返し単位と、下記の化学式2の繰り返し単位と、を含む光配向性共重合体を提供する:
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式2中、
Aは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり、
BおよびB’は、それぞれ独立して、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−または−S−を表し、
Lは、単一結合、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンであり、
S1は、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−または−S−を表し、
R1は、水素、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、または置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリールである。
【0011】
本発明はまた、前記光配向性共重合体を含む光学異方性フィルム形成用組成物を提供する。このような組成物は、反応性メソゲンをさらに含むことができ、光硬化可能なバインダーおよび光開始剤をさらに含むこともできる。
【0012】
また、本発明は、前記光学異方性フィルム形成用組成物にUV偏光を照射して光配向性共重合体に結合された光反応性作用基の少なくとも一部を光配向させる段階;および少なくとも一部の光反応性作用基が光配向された組成物を熱処理して光学異方性を増加させる段階を含む光学異方性フィルムの製造方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記光学異方性フィルム形成用組成物の硬化物を含む光学異方性フィルムを提供する。
【0014】
このような光学異方性フィルムは、液晶表示素子のような各種光学素子などに適用可能な液晶配向フィルム、光学フィルター、位相差フィルム、偏光子または偏光発光体としての機能を有することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化学式2の繰り返し単位などにより光学的異方性が増強してより優れた光学的異方性を示す光学異方性フィルムの提供を可能にする新規な光配向性共重合体が提供され得る。
【0016】
また、このような光配向性共重合体と共に、選択的に反応性メソゲンを用いる場合、液晶層などを別途形成する必要なしに、単純化した工程で優れた液晶配向性および光学的異方性を示す光学異方性フィルムなどを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、製造例4で得られた光配向性繰り返し単位を得るためのモノマー化合物のNMRデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施形態に係る光配向性共重合体、これを用いた光学異方性フィルムおよびその製造方法などについて説明する。
【0019】
本明細書で使用される種々の用語は特別に別の意味が説明されない限り、次のような意味と定義され得る。
【0020】
ある物質、重合体または作用基などが「光配向性」または「光反応性」を示すことができるということは、直線偏光、例えば、線偏光されたUVを照射する場合、当該物質、重合体または作用基(光反応性作用基)などが偏光方向に応じた所定方向に展開または配列可能であり、液晶化合物の整列または配向を誘発し得ることを意味する。
【0021】
「反応性メソゲン(reactive mesogen、RM)」とは、分子中に重合、架橋または硬化可能な不飽和基を含んでUV照射など光照射により重合、架橋または硬化可能であり、一つ以上のメソゲン基を含み、液晶相挙動を示す物質を称すことができる。前記メソゲン基は以前から知られた液晶化合物に含まれる任意のメソゲン系作用基になることができ、その範囲および種類は当業者に広く知られている。
【0022】
「(光)硬化物」または「(光)硬化」されたということは、化学構造中に硬化または架橋可能な不飽和基を有する構成成分が全部硬化、架橋または重合された場合だけでなく、その一部が硬化、架橋または重合された場合まで包括することができる。
【0023】
光学異方性フィルム形成用組成物またはその硬化物が「単一層」で形成されたということは、前記組成物と同種の構成成分を含む他の層が基材上に存在しないことを称すことができる。例えば、光配向性(共)重合体および反応性メソゲンなどの液晶化合物を含む組成物またはその硬化物が「単一層」で形成されたいうことは、同種の光配向性物質または液晶性物質(反応性メソゲンまたはその他液晶性物質)を含む他の層が基材上に存在せず、当該単一層内にだけ当該光配向性(共)重合体および反応性メソゲンなどの液晶化合物が含まれることを意味し得る。ただし、基材上に異種の構成成分を含む他の層が存在し得るのはもちろんである。
【0024】
一方、発明の一実施形態によれば、シンナメート系作用基、カルコン系作用基、アゾ系作用基またはクマリン系作用基の光反応性作用基を有する光配向性繰り返し単位と、
下記の化学式2の繰り返し単位と、を含む光配向性共重合体が提供される:
【0025】
【化2】
【0026】
前記化学式2中、
Aは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり、
BおよびB’は、それぞれ独立して、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−または−S−を表し、
Lは、単一結合、または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンであり、
S1は、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−または−S−を表し、
R1は、水素、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、または置換もしくは非置換の炭素数6〜15のアリールである。
【0027】
前記一実施形態の光配向性共重合体は、シンナメート系作用基など所定の光反応性作用基が末端に結合された光配向性繰り返し単位と、フェニレン基を含む液晶性作用基が末端に結合された化学式2の繰り返し単位とを共に含む構造を有するものである。
【0028】
このような光配向性共重合体は、前記光配向性繰り返し単位が優れた光反応性を示すものと知られたシンナメート系作用基など所定の光反応性作用基を含むことによって、線偏光されたUVに対して優れた光反応性および光配向性を示すことができる。
【0029】
これに加えて、前記光配向性共重合体において、化学式2の繰り返し単位に含まれている液晶性作用基は、熱を加えれば前記光反応または光配向された光反応性作用基と相互作用して光学的異方性を大きく増加させることができると確認された。その結果、前記光配向性共重合体を用いた液晶の配向がより円滑に起こるようにできる。
【0030】
したがって、一実施形態の光配向性共重合体を用い、線偏光されたUV照射後に熱処理する方法により光学異方性フィルムを形成する場合、光配向性および光学的異方性が以前に知られたものより大きく向上した光学異方性フィルムの形成が可能になる。また、このような光学異方性フィルムを用いてより向上した液晶配向性が示されるようにできる。
【0031】
付加して、以下でより詳細に説明するが、一実施形態の光配向性共重合体と、反応性メソゲンを混合して組成物を形成し、これを用いて光学異方性フィルムを形成する場合、前記光配向性共重合体の光配向および光学的異方性の増加が起こりながら、このように光配向された共重合体の影響で反応性メソゲンが液晶配向され得ることが確認された。したがって、一実施形態の光配向性共重合体と共に反応性メソゲンを含む組成物などを用いる場合、別途の配向層および液晶層の2層を形成することなく、光配向を用いた液晶配向を行うことができる。
【0032】
したがって、一実施形態の共重合体を用いれば、より優れた光学的異方性を示す光学異方性フィルムの形成が可能になり、ひいては、別途の液晶層などを形成する必要なしに単純化した工程で優れた液晶配向性および光学的異方性を示すフィルムなどを提供できるようになる。
【0033】
一方、前記一実施形態の光配向性共重合体において、前記光反応性作用基は、下記の化学式1aのシンナメート系作用基、下記の化学式1bのクマリン系作用基、下記の化学式1cのアゾ系作用基および下記の化学式1dのカルコン系作用基からなる群より選択される1種以上の作用基になることができる:
【0034】
【化3】
【0035】
前記化学式1a〜1d中、
n1は、0〜4の整数であり、n2は、0〜5の整数であり、
Bは、単純結合;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン;カルボニル;カルボキシ;エステル;置換もしくは非置換の炭素数1〜10のアルコキシレン;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン;および置換もしくは非置換の炭素数6〜40のヘテロアリーレンからなる群より選択され、
Eは、単純結合;−O−;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン;または置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレンオキシドであり、
Xは、酸素または硫黄であり、
YおよびZは、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキルであり、
Pは、単純結合;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン;カルボニル;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルケニレン;置換もしくは非置換の炭素数3〜12のシクロアルキレン;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン;置換もしくは非置換の炭素数7〜15のアラルキレン;置換もしくは非置換の炭素数2〜20のアルキニレン;および置換もしくは非置換の炭素数4〜8のシクロアルキレンからなる群より選択され、
10、R11、R12、R13およびR14は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数4〜8のシクロアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;14族、15族または16族のヘテロ元素を含む炭素数6〜40のヘテロアリール;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアルコキシアリール;シアノ;ニトリル;ニトロ;およびヒドロキシからなる群より選択され、
15は、1個または2個の置換基であって、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;シアノ;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル;置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ;置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリール;14族、15族または16族のヘテロ元素を含む炭素数6〜40のヘテロアリール;および置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアルコキシアリールからなる群より選択される。
【0036】
前記光反応性作用基が前記化学式1a〜1dより選択される特定の構造を有することによって、前記光配向性繰り返し単位およびこれを含む光配向性共重合体の光反応性や光配向性がより向上することができる。
【0037】
より具体的に、上述した化学式1a〜1dより選択される特定の光反応性作用基を有する光配向性繰り返し単位は、下記の化学式1の繰り返し単位を含むことができる:
【0038】
【化4】
【0039】
前記化学式1中、
Aは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルであり、
L’は、単一結合、カルボニル、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−、−S−、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンおよび置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレンからなる群より選択された二価連結基の一つ以上が組み合わされたスペーサ基であり、
Wは、前記化学式1a〜1dからなる群より選択された光反応性作用基である。
【0040】
前記化学式1の光配向性繰り返し単位では、既述したシンナメート系作用基など所定の光反応性作用基が所定のスペーサ基を媒介として末端に結合された構造を有する。これによって、このような光配向性繰り返し単位は、例えば、化学式2の繰り返し単位のような互いに隣接した異なる繰り返し単位や異なる作用基などの妨害を受けずに前記光反応性作用基がより円滑に光反応を起こすことができる。その結果、これを含む一実施形態の光配向性共重合体は、優れた光反応性、光反応速度および光配向性を示すことができ、これを用いてより向上した光学的異方性を示す光学異方性フィルムの形成が可能になる。
【0041】
一方、前記化学式1の繰り返し単位において、前記L’のスペーサ基は、単一結合またはカルボニル、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、および置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレンが−O−を媒介として順次連結された構造を有することができる。より具体的に、前記L’のスペーサ基は、「(単一結合またはカルボニル)−O−(置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン)−O−(置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン)−」の連結構造を有することができる。
【0042】
このようなスペーサ基の連結構造によって、前記スペーサ基の末端に結合された光反応性作用基がより円滑に光反応を起こすことができ、前記光配向性共重合体がより向上した光反応性、光反応速度および光配向性を示すことができる。
【0043】
また、前記化学式1のスペーサ基に含まれている「置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリーレン」は、非置換された炭素数6〜40のアリーレン、例えば、フェニレンになることもできるが、このようなアリーレンに一つ以上の他の作用基が置換されることもできる。この時、置換可能な作用基の例としては、炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のハロゲン(例えば、フッ素)化アルキル、ハロゲン(例えば、フッ素)、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数1〜6のハロゲン(例えば、フッ素)化アルコキシ、炭素数1〜6のアルキルエステル、炭素数1〜6のハロゲン(例えば、フッ素)化アルキルエステル、炭素数1〜6のアルキレートまたは炭素数1〜6のハロゲン(例えば、フッ素)化アルキレートなどが挙げられ、これらの中で選択された2種以上が共に置換されることもできることはもちろんである。
【0044】
特に、フッ素などのハロゲンを含む作用基が置換されることによって、前記一実施形態の光配向性共重合体がより優れた光反応性および光配向性を示すことができる。
【0045】
また、一実施形態の光配向性共重合体の化学式1の光配向性繰り返し単位において、前記14族、15族または16族のヘテロ元素が含まれている炭素数6〜40のヘテロアリール、または炭素数6〜40のアリールは、下記の作用基からなる群より選択された1種以上になることができるが、これに限定されない:
【0046】
【化5】
【0047】
前記化学式中、R’10、R’11、R’12、R’13、R’14、R’15、R’16、R’17、およびR’18のうちの少なくとも一つは、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシであるか、または置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシであり、残りは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルコキシ、置換もしくは非置換の炭素数6〜30のアリールオキシ、または置換もしくは非置換の炭素数6〜40のアリールである。
【0048】
一方、上述した一実施形態の光配向性共重合体において、前記化学式2の繰り返し単位のスペーサ基は、Bは、−C(=O)O−であり、Lは、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレンであり、B’は、−O−である構造を有することができる。より具体的に、前記−B−L−B’−のスペーサ基は、−C(=O)O−、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン、そして−O−が順次連結された構造を有することができる。具体的な一例において、前記スペーサ基は、「−C(=O)O−(置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキレン)−O−」の連結構造を有することができる。
【0049】
このようなスペーサ基の連結構造によって、前記スペーサ基の末端に結合された液晶性作用基が光反応性作用基の光反応を阻害しないながらも、熱を加えれば前記光反応または光配向された光反応性作用基とより円滑に相互作用して光学的異方性をより大きく増加させることができる。
【0050】
そして、前記化学式2の繰り返し単位において、前記フェニレンに結合されたS1は、−C(=O)O−であり、R1は、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキルになることがより適切である。このような作用基が液晶性作用基の末端に結合されることによって、前記液晶性作用基が熱を加えれば前記光反応または光配向された光反応性作用基とより円滑に相互作用して光学的異方性をより大きく増加させることができる。
上述した光配向性共重合体は、光配向性繰り返し単位および化学式2の繰り返し単位をそれぞれ1種ずつだけ含むこともできるが、これらの繰り返し単位をそれぞれ2種以上含むこともでき、上述した各繰り返し単位以外に光配向性高分子に含むことが可能であると知られた他の繰り返し単位をさらに含むこともできる。
【0051】
ただし、前記光配向性共重合体がより優れた光学的異方性を示すフィルムなどを提供することができるように、前記光配向性共重合体は、光配向性繰り返し単位および化学式2の繰り返し単位を合わせて全体共重合体の約50モル%以上、あるいは約70モル%以上、あるいは約80モル%以上、あるいは約90モル%以上含むことができる。また、前記光配向性共重合体は、前記光配向性繰り返し単位および化学式2の繰り返し単位を前記光配向性繰り返し単位:化学式2の繰り返し単位=約10:90〜99:1のモル比、あるいは約30:70〜90:10のモル比、あるいは約50:50〜80:20のモル比で含むことができる。これによって、前記光配向性共重合体がより優れた光反応性および光配向性を示しながらも、化学式2の繰り返し単位の作用により前記共重合体およびこれを含むフィルムなどの光学的異方性がより効果的に増強され得る。
【0052】
また、前記光配向性共重合体の優れた光反応性、光配向性および基材に対する塗布性などを考慮して、前記光配向性共重合体は、約20,000〜1,000,000、あるいは約50,000〜700,000、あるいは約100,000〜500,000の重量平均分子量を有することができる。
【0053】
一方、上述した光配向性共重合体の構造および後述する反応性メソゲンの構造などを説明する本明細書全体において、各置換基は次のとおり定義され得る:
【0054】
まず、「アルキル」は、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子の線状または分岐状の飽和一価炭化水素部位を意味する。アルキル基は、非置換されたものだけでなく、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ヨードメチル、ブロモメチルなどが挙げられる。
【0055】
「アルケニル」は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子の線状または分岐状の一価炭化水素部位を意味する。アルケニル基は、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子を通じて、または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルケニル基は、非置換されたものだけでなく、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アルケニル基の例として、エテニル、1−プロフェニル、2−プロフェニル、2−ブテニル、3−ブテニル、ペンテニル、5−ヘキセニル、ドデセニルなどが挙げられる。
【0056】
「シクロアルキル」は、3〜12個の環炭素の飽和または不飽和の非芳香族一価モノシクリック、バイシクリックまたはトリシクリック炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、アダマンチル、ノルボルニル(つまり、バイシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エニル)などが挙げられる。
【0057】
「アリール」は、6〜40個、好ましくは6〜12個の環原子を有する一価モノシクリック、バイシクリックまたはトリシクリック芳香族炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アリール基の例として、フェニル、ナフタレニルおよびフルオレニルなどが挙げられる。
【0058】
「アルコキシアリール」は、前記定義されたアリール基の水素原子1個以上がアルコキシ基で置換されているものを意味する。アルコキシアリール基の例として、メトキシフェニル、エトキシフェニル、プロポキシフェニル、ブトキシフェニル、ペントキシフェニル、ヘキトキシフェニル、ヘプトキシ、オキトキシ、ナノキシ、メトキシビフェニル、メトキシナフタレニル、メトキシフルオレニルあるいはメトキシアントラセニルなどが挙げられる。
【0059】
「アラルキル」は、前記定義されたアルキル基の水素原子1個以上がアリール基で置換されているものを意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、ベンジル、ベンズヒドリルおよびトリチルなどが挙げられる。
【0060】
「アルキニル」は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の線状または分岐状の一価炭化水素部位を意味する。アルキニル基は、炭素−炭素三重結合を含む炭素原子を通じて、または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルキニル基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、エチニルおよびプロピニルなどが挙げられる。
【0061】
「アルキレン」は、1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個の炭素原子の線状または分岐状の飽和された二価炭化水素部位を意味する。アルキレン基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。アルキレン基の例として、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレンなどが挙げられる。
【0062】
「アルケニレン」は、1以上の炭素−炭素二重結合を含む2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の炭素原子の線状または分岐状の二価炭化水素部位を意味する。アルケニレン基は、炭素−炭素二重結合を含む炭素原子を通じて、および/または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルケニレン基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。
【0063】
「シクロアルキレン」は、3〜12個の環炭素の飽和または不飽和の非芳香族二価モノシクリック、バイシクリックまたはトリシクリック炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレンなどが挙げられる。
【0064】
「アリーレン」は、6〜20個、好ましくは6〜12個の環原子を有する二価モノシクリック、バイシクリックまたはトリシクリック芳香族炭化水素部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。芳香族部分は炭素原子だけを含む。アリーレン基の例としてはフェニレンなどが挙げられる。
【0065】
「アラルキレン」は、前記定義されたアルキル基の水素原子1個以上がアリール基で置換されている二価部位を意味し、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、ベンジレンなどが挙げられる。
【0066】
「アルキニレン」は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜6個の線状または分岐状の二価炭化水素部位を意味する。アルキニレン基は、炭素−炭素三重結合を含む炭素原子を通じて、または飽和された炭素原子を通じて結合され得る。アルキニレン基は、後述する一定の置換基によりさらに置換されたものも包括して称すことができる。例えば、エチニレンまたはプロピニレンなどが挙げられる。
【0067】
以上で説明した置換基が「置換もしくは非置換」されたということは、これらの各置換基自体だけでなく、一定の置換基によりさらに置換されたものも包括されることを意味する。本明細書で、他の特別な説明がない限り、各置換基にさらに置換可能な置換基の例としては、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アリール、ハロアリール、アラルキル、ハロアラルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、カルボニルオキシ、ハロカルボニルオキシ、アリールオキシ、ハロアリールオキシ、シリルまたはシロキシなどが挙げられる。
【0068】
上述した光配向性共重合体は、光配向性繰り返し単位、例えば、化学式1の繰り返し単位と、化学式2の繰り返し単位にそれぞれ対応するアクリレート系モノマーまたはビニルアルコール系モノマーなどを通常の条件により自由ラジカル重合することによって、各モノマーのビニル基を連結して製造することができる。このような自由ラジカル重合反応の条件および方法は当業者によく知られているため、これに関する追加的な説明は省略する。
【0069】
一方、発明の他の実施形態によれば、上述した一実施形態の光配向性共重合体を含む光学異方性フィルム形成用組成物が提供される。このような他の実施形態の組成物は、上述した一実施形態の共重合体の作用によって、より向上した光配向性および光学的異方性を示す光学異方性フィルムの提供を可能にする。
【0070】
また、前記他の実施形態の組成物は、前記光配向性共重合体以外にも、反応性メソゲンをさらに含むことができる。このような反応性メソゲンは、液晶相挙動を示すメソゲン基と、少なくとも一側末端に光重合、光架橋または光硬化が可能な不飽和作用基、例えば、ビニル基、(メト)アクリル基またはエポキシ基などを有する化合物と定義され、このような定義を満たす任意の化合物を反応性メソゲンとして他の実施形態の組成物に含めることができる。
【0071】
他の実施形態の組成物を用いて光学異方性フィルムを形成する過程において、このような組成物に線偏光されたUVが照射されると、上述した光配向性共重合体の光反応性作用基が光反応および光配向を起こすことができ、以降、熱処理が行われると化学式2の繰り返し単位の影響により光学的異方性が大きく増強し得ることは既述したとおりである。ところで、他の実施形態の組成物に反応性メソゲンが含まれる場合、前記光配向性共重合体が光配向されたり、熱処理により光学的異方性が増強する過程で、前記光配向性共重合体の影響を受けて反応性メソゲンが漸進的に液晶配向され得る。
【0072】
その結果、別途の液晶層を形成することなく、前記光配向性共重合体を用いて液晶を配向させるための別途の工程などを行うことなく、光配向を用いた液晶配向を行うことができる。したがって、より単純化した工程で優れた液晶配向性および光学的異方性を示す光学異方性フィルムなどの提供が可能になる。
【0073】
付加して、このような反応性メソゲンの液晶配向は、後述するバインダーから形成されたバインダー樹脂の架橋構造により安定化することができる。これによって、他の実施形態の組成物から、優れた液晶配向性および配向安定性を示す光学異方性フィルムなどの提供も可能になる。
【0074】
上述した反応性メソゲンとしては、上述した光配向性共重合体との優れた相互作用およびより向上した液晶配向性などを考慮して、下記の化学式3または4の化合物やこれらの混合物を用いることができる。その他にも、これらの化学式3または4の化合物に由来するメソゲン基を含む多様な反応性メソゲンを用いたり、その他以前から知られた多様な反応性メソゲンを用いることもできる。また、前記反応性メソゲンは、ネマチック相、コレステリック相または強誘電性相などの多様な液晶相挙動を示すことができる:
【0075】
【化6】
【0076】
前記化学式3および4中、L、Lは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル、置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキルエステル、置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキルエーテル、および置換もしくは非置換の炭素数1〜8のアルキルケトンからなる群より選択され、B、Bは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリーレン、または置換もしくは非置換の炭素数4〜8のシクロアルキレンであり、R1、R2は、それぞれ独立して、(メト)アクリル基またはエポキシ基であり、Xは、フッ素置換もしくは非置換の炭素数1〜7のアルキル、フッ素置換もしくは非置換の炭素数1〜7のアルコキシ、フッ素置換もしくは非置換の炭素数2〜7のアルケニル、フッ素置換もしくは非置換の炭素数2〜7のアルケニルオキシ、およびフッ素置換もしくは非置換の炭素数1〜7のアルコキシアルキルからなる群より選択され、Z、Z、Z、Zは、それぞれ独立して、単純結合、O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OC(O)O−である。
【0077】
一方、他の実施形態の光学異方性フィルム形成用組成物は、上述した光配向性共重合体および反応性メソゲンと共に光硬化可能なバインダーを含むことができる。このようなバインダーは、光硬化により網状架橋構造を有するバインダー樹脂を形成して、光配向性共重合体および/または反応性メソゲンの配向性を安定化することができる。
【0078】
前記バインダーとしては、UVなどの光照射により硬化可能な任意の重合性化合物、オリゴマーまたは重合体を特別な制限なく用いることができる。ただし、適切な重合、硬化または架橋構造の側面で、(メタ)アクリレート系化合物、例えば、二官能以上のアクリレート基を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物を用いることができる。
【0079】
このようなバインダーの具体的な例としては、ペンタエリトリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(tris(2−acrylolyloxyethyl)isocynurate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(dipentaerythritol hexaacrylate)などが挙げられ、これらの中で選択された2種以上を共に用いることもできる。
【0080】
上述した他の実施形態の組成物は、上述した各構成成分以外にも光開始剤をさらに含むことができる。このような光開始剤は、バインダーの光硬化を開始および促進すると知られた任意の開始剤になることができ、例えば、商品名Irgacure907または819などと知られた開始剤を用いることができる。
【0081】
また、前記他の実施形態の光学異方性フィルム形成用組成物は、上述した各成分を溶解するために、有機溶媒をさらに含むことができる。このような有機溶媒の例としては、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、アニソール(anisole)、クロロベンゼン(chlorobenzene)、ジクロロメタン(dichloromethane)、酢酸エチル(ethyl acetate)、ジクロロエタン(dichloroethane)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)、シクロペンタノン(cyclopentanone)またはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(propylene glycol methyl ether acetate)などが挙げられ、これらの中で選択された2種以上の混合溶媒を用いることもできる。その他にも、各成分の種類に応じてこれらを効果的に溶解して基材上に塗布可能な任意の溶媒を用いることができる。
【0082】
上述した他の実施形態の組成物は、総固形分重量を基準に、光配向性共重合体の約1〜50重量%、反応性メソゲンの約10〜90重量%、光硬化可能なバインダーの約1〜50重量%、および光開始剤約0.1〜5重量%を含むことができる。この時、固形分の重量とは、前記他の実施形態の組成物の構成成分の中で、有機溶媒を除いた残りの成分の重量合計を意味し得る。
【0083】
また、前記他の実施形態の組成物内の固形分含量は、約10〜80重量%になることができる。したがって、前記組成物が好ましい塗布特性を示すことができる。より具体的に、前記組成物からフィルム形態でキャスティングしようとする場合、前記固形分含量は約15〜80重量%になることができ、薄膜で形成しようとする場合、前記固形分含量は約10〜40重量%になることができる。
【0084】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、上述した他の実施形態の組成物を用いた光学異方性フィルムの製造方法が提供される。このような方法は上述した他の実施形態の光学異方性フィルム形成用組成物にUV偏光、例えば、線偏光されたUVを照射して光配向性共重合体に結合された光反応性作用基(例えば、化学式1などの光配向性繰り返し単位の結合された光反応性作用基など)の少なくとも一部を光配向させる段階;および少なくとも一部の光反応性作用基が光配向された組成物を熱処理して光学異方性を増加させる段階を含むことができる。
【0085】
このような製造方法において、UV偏光の照射下に光配向段階を行うようになると、前記光配向性共重合体の光反応性作用基の少なくとも一部が異性化(isomerization)または二量化(dimerization)のような光反応を起こして一定の方向に配列されながら光配向が行われ得る。以降、前記熱処理段階を行うようになると、上述した化学式2の繰り返し単位の影響により光学的異方性が大きく増強し、その結果、以前に知られたものより非常に優れた光配向性および光学的異方性を示す光学異方性フィルムが製造され得る。
【0086】
付加して、前記光配向性共重合体と共に反応性メソゲンを含む組成物を用いて光学異方性フィルムを得る場合、前記少なくとも一部の光反応性作用基が光配向され、光学異方性が増強した共重合体の影響により反応性メソゲンが前記共重合体の配向を採択して液晶配向され得る。このような反応性メソゲンの液晶配向は、前記光配向段階および熱処理による光学的異方性の増強段階にかけて漸進的に行われ得る。これによって、液晶層を別途に形成せずに、単一層の形成だけでも、非常に容易且つ単純化した工程を通じて、優れた光学異方性および液晶配向性を示す光学異方性フィルムの提供が可能になる。
【0087】
一方、前記光配向段階では、前記光学異方性フィルム形成用組成物に波長範囲が約150〜450nm領域のUV偏光を照射することができる。ただし、光配向性共重合体の具体的な構造や光反応性作用基の種類などに応じて、UV偏光の波長範囲を調節することができる。そして、UVの照射強さは、光配向性共重合体やこれに結合された光反応性作用基の具体的な種類などに応じて変わり得るが、約50mJ/cm〜10J/cmのエネルギー、好ましくは約500mJ/cm〜5J/cmのエネルギーになることができる。
【0088】
前記UVは、(1) 石英ガラス、ソダライムガラス、ソダライムフリーガラスなどの透明基材表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基材を用いた偏光装置、(2) 微細にアルミニウムまたは金属ワイヤーが蒸着された偏光板、または(3) 石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射させる方法で偏光処理され、このように偏光処理されたUVが組成物に照射され得る。UV偏光は基材面に垂直に照射されることもできるが、特定の入射角で傾斜照射されることもできる。
【0089】
また、前記UV照射時の基材温度は常温に近辺の温度になることができるが、場合によっては約100℃以下の温度範囲内で加熱された状態でUVが調査されることもできる。
【0090】
一方、前記光配向段階後に進行される熱処理を通じた光学異方性の増加段階は、例えば、約100〜300℃で、約1〜30分間行うことができる。このような熱処理工程を通じて、光配向された共重合体の光学異方性を効果的に増加させ、より優れた光学的異方性を示すフィルムなどの提供が可能になる。
【0091】
一方、前記光配向段階のUV偏光照射下、前記光学異方性フィルム形成用組成物に含まれているバインダーおよび/または反応性メソゲンの光硬化が共に行われることもできる。この場合、単一の光配向段階および熱処理段階の進行で、硬化した形態の光学異方性フィルムが製造され得る。ただし、より効果的な光硬化のために、前記熱処理段階後、前記組成物にUVを照射して光硬化可能なバインダーおよび/または反応性メソゲンを光硬化させる段階をさらに行うこともできる。
【0092】
このような光硬化が行われると、網状架橋構造を有するバインダー樹脂、例えば、多官能(メタ)アクリレート系化合物が光硬化(架橋)された形態である(メタ)アクリレート系架橋重合体が形成され、反応性メソゲンの硬化可能な不飽和基の少なくとも一部が光硬化された硬化物が形成され得る。これによって、前記バインダー樹脂の架橋構造などにより、光配向性共重合体および/または反応性メソゲンの配向性が安定化することができる。
【0093】
一方、上述した製造方法において、前記光学異方性フィルム形成用組成物は、基材上に塗布され、乾燥された後、前記UV偏光による光配向が行われ得る。この時、前記塗布方法は、光配向性共重合体、反応性メソゲンまたは基材の種類に応じて適切に決定され得る。例えば、前記塗布方法は、ロールコーティング法、スピンコーティング法、印刷法、インクジェット噴射法またはスリットノズル法などになることができる。
【0094】
追加的に、基材に対する接着性をより向上させるために、官能性シラン含有化合物、官能性フルオロ含有化合物または官能性チタン含有化合物を予め基材に塗布することもできる。
【0095】
そして、有機溶媒の除去のための乾燥段階では、塗膜を加熱したり、真空蒸発法などにより乾燥を行って溶媒を除去することができる。このような乾燥段階は約50〜250℃で約1〜20分間行うことができる。
【0096】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、基材上に形成された上述した光学異方性フィルム形成用組成物の硬化物を含む光学異方性フィルムが提供される。このような光学異方性フィルムは、同種の光配向性共重合体および/または反応性メソゲンなどの液晶性物質を含む別途の層、例えば、別途の液晶層などを含まずに、前記硬化物の単一層だけを含むことができる。
【0097】
このような光学異方性フィルムは、例えば、発明の他の実施形態の製造方法により得られるものであって、上述した光配向性共重合体と、選択的に、反応性メソゲン、光硬化可能なバインダーおよび光開始剤などを含む組成物を塗布し、光配向段階、熱処理段階および選択的に光硬化段階を行って得られる。これによって、上述した単一層形態の光学異方性フィルムが提供され得るが、このようなフィルムは非常に単純化した工程を通じて得られながらも、優れた光学異方性などを示すことができる。
【0098】
このような光学異方性フィルムにおいて、前記硬化物は、少なくとも一部の光反応性作用基が光配向された光配向性重合体を含むことができ、選択的に前記光配向された光反応性作用基により液晶配向された反応性メソゲンの硬化物および/または(メタ)アクリレート系架橋重合体を含むバインダー樹脂をさらに含むことができる。
【0099】
この時、前記反応性メソゲンが液晶配向された程度は、直交交差した偏光の間の輝度で確認することができる。例えば、直交された偏光板の間に45°に前記光学異方性フィルムを置いた時、光漏れが小さく、輝度が約20cd/cm以下、あるいは約10cd/cm以下に得られる場合、液晶配向の程度が良好であると見ることができる。
【0100】
上述した光学異方性フィルムは、液晶表示素子のような光学照射などに適用可能な液晶配向フィルム、光学フィルター、位相差フィルム、偏光子または偏光発光体などの機能を有することができる。
【0101】
以下、本発明の理解のために好適な実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供させるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるのではない。
【0102】
[製造例1]:methyl 4−((6−(acryloyloxy)hexyl)oxy)benzoateの製造(化学式2の繰り返し単位を得るためのアクリレート系モノマー化合物の製造)
【0103】
【化7】
【0104】
Methyl 4−hydroxybenzoate 6.08g(40mmol)を2−butanone 50mlに溶かした後、KCO 8.29g(60mmol)を添加した後、6−chloro−1−hexanol 5.44g(40mmol)を徐々に滴下(dropwise)した。強く攪拌しながら温度を85℃に上げて18時間還流(reflux)して反応を行った。
【0105】
反応終了後、ジクロロメタン(dichloromethane)と水(water)で抽出し、有機層を分離してMgSOで水層を取った後、ロータリーエバポレーター(rotary evaporator)で溶媒を除去し、シリカカラム(silica column)で精製して収率76%でmethyl 4−((6−hydroxyhexyl)oxy)benzoateを得た。methyl 4−((6−hydroxyhexyl)oxy)benzoate(1eq)をジメチルアセトアミド(dimethyl acetamide)に溶かした後、0℃で塩化アクリロイル(acryloyl chloride)(2.5eq)を徐々に滴下しながら添加した後、温度を室温に上げて2時間攪拌した。反応終了後、NaCl水溶液とジエチルエテール(diethyl ether)で抽出(extraction)した後、シリコンカラムで精製して73%の収率にmethyl 4−((6−(acryloyloxy)hexyl)oxy)benzoateを得た。このような表題化合物のNMRデータは次のとおりである。
NMR(CDCl(500MHz),ppm):1.43−1.77(8H,m)3.89(3H,s)3.92(2H,m)4.06(2H,m)5.83(1H,dd)6.12(1H,dd)6.41(1H,dd)7.07(2H,d)7.94(2H,d)
【0106】
[製造例2]:propyl 4−((6−(acryloyloxy)hexyl)oxy)benzoateの製造(化学式2の繰り返し単位を得るためのアクリレート系モノマー化合物の製造)
【0107】
【化8】
【0108】
製造例1でMethyl 4−hydroxybenzoateの代わりにpropyl 4−hydroxybenzoateを用いたことを除いては、同様な方法および条件で反応を行って、表題のpropyl 4−((6−(acryloyloxy)hexyl)oxy)benzoateを製造した。このような表題化合物のNMRデータは次のとおりである。
NMR(CDCl(500MHz),ppm):1.43−1.89(10H,m)3.90(3H,s)3.97(2H,m)4.08(2H,m)5.87(1H,dd)6.17(1H,dd)6.46(1H,dd)7.10(2H,d)7.88(2H,d)
【0109】
[製造例3]:methyl 4−((6−(acryloyloxy)propyl)oxy)benzoateの製造(化学式2の繰り返し単位を得るためのアクリレート系モノマー化合物の製造)
【0110】
【化9】
【0111】
製造例1で6−chloro−1−hexanolの代わりに6−chloro−1−propanolを用いたことを除いては、同様な方法および条件で反応を行って、表題のpropyl 4−((6−(acryloyloxy)hexyl)oxy)benzoateを製造した。このような表題化合物のNMRデータは次のとおりである。
NMR(CDCl(500MHz),ppm):1.54(2H,m)3.89(3H,s)3.92(2H,m)4.06(2H,m)5.81(1H,dd)6.14(1H,dd)6.41(1H,dd)7.07(2H,d)7.95(2H,d)
【0112】
[製造例4]:4−3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylateの製造(光配向性繰り返し単位を得るためのモノマー化合物の製造)
【0113】
【化10】
【0114】
まず、ヒドロキノン(Hydroquinone)と4−メチルけい皮酸(4−methyl cinnamic acid)のカップリング(coupling)反応を通じて得た4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Aを出発物質として用いた。PPTSを触媒として用い、2H−pyranと3−chloropropanolを塩化メチレン(methylene chloride)溶媒下で反応を進行させてTHPで保護された2−(3−chloropropoxy)tetrahydro−2H−pyran(4B化合物)を得ることができた。このように得られた2−(3−chloropropoxy)tetrahydro−2H−pyran(4B)と出発物質である4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate(4A)を、KOHを塩基として用いてメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)溶媒下で抽出しながら反応を行った。約24時間後、反応がそれ以上進行させないことを確認し、仕上げ(work−up)を行った。酢酸エチルと水を入れて抽出後、上層部の酢酸エチル層を別に受けた後、塩水(Brine)でもう一度洗浄した。MgSOで残っている水を除去しフィルターした後、減圧下に溶媒を除去した。溶媒除去後、EA:Hex=1:4の混合溶液を展開溶媒として用いてカラムクロマトグラフィーを行った後、所望の中間体である4−(3−((tetrahydro−2H−pyran−2−yl)oxy)propoxy)phenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Cを55%の収率にきれいに得ることができた。
その後、PPTSを用いてTHF:ethanol=1:5の混合溶媒下、2時間抽出した後、酢酸エチル:Hexanes=1:4の混合溶液を展開溶媒として用い、カラムクロマトグラフィーを行った後、THPが離れた中間体4−(3−hydroxypropoxy)phenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Dを100%の収率にきれいに得ることができた。化合物4D(1eq)をジメチルアセトアミドに溶かした後、0℃で塩化アクリロイル(2.5eq)を徐々に滴下しながら添加した後、温度を室温に上げて2時間攪拌した。反応終了後、NaCl水溶液とジエチルエテールで抽出した後、シリコンカラムで精製して79%の収率に表題の4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Eを得た。このような表題化合物のNMRデータは図1に示されたとおりである。
【0115】
[製造例5]:4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl (E)−3−(4−ethoxyphenyl)acrylateの製造(光配向性繰り返し単位を得るためのモノマー化合物の製造)
【0116】
【化11】
【0117】
製造例4で4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Aの代わりに、4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−ethoxyphenyl)acrylate化合物を用いたことを除いては、同様な方法および条件で反応を行って、4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl (E)−3−4−ethoxyphenyl)acrylateを製造した。
【0118】
[製造例6]:4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl(E)−3−(4−chlorophenyl)acrylateの製造(光配向性繰り返し単位を得るためのモノマー化合物の製造)
【0119】
【化12】
【0120】
製造例4で4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Aの代わりに、4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−chlorophenyl)acrylate化合物を用いたことを除いては、同様な方法および条件で反応を行って、4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl (E)−3−(4−chlorophenyl)acrylateを製造した。
【0121】
[製造例7]:4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl(E)−3−(4−cyanophenyl)acrylateの製造(光配向性繰り返し単位を得るためのモノマー化合物の製造)
【0122】
【化13】
【0123】
製造例4で4−hydroxyphenyl (E)−3−(4−methoxyphenyl)acrylate化合物4Aの代わりに、4−hydroxyphenyl(E)−3−(4−cyanophenyl)acrylate化合物を用いたことを除いては、同様な方法および条件で反応を行って、4−(3−(acryloyloxy)propoxy)phenyl (E)−3−(4−cyanophenyl)acrylateを製造した。
【0124】
[実施例1]:光配向性共重合体の製造
製造例1の化合物:製造例4の化合物=5:5の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を78%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は35,000であり、PDI値は3.78であった。
【0125】
[実施例2]:光配向性共重合体の製造
製造例1の化合物:製造例5の化合物=5:5の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を75%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は42,000であり、PDI値は3.89であった。
【0126】
[実施例3]:光配向性共重合体の製造
製造例1の化合物:製造例6の化合物=5:5の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を83%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は54,500であり、PDI値は4.31であった。
【0127】
[実施例4]:光配向性共重合体の製造
製造例1の化合物:製造例7の化合物=5:5の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を83%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は46,100であり、PDI値は4.12であった。
【0128】
[実施例5]:光配向性共重合体の製造
製造例2の化合物:製造例4の化合物=5:5の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を81%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は57,600であり、PDI値は3.47であった。
【0129】
[実施例6]:光配向性共重合体の製造
製造例2の化合物:製造例5の化合物=3:7の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を80%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は61,800であり、PDI値は3.78であった。
【0130】
[実施例7]:光配向性共重合体の製造
製造例3の化合物:製造例4の化合物=3:7の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:500の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を86%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は31,900であり、PDI値は3.47であった。
【0131】
[実施例8]:光配向性共重合体の製造
製造例3の化合物:製造例5の化合物=3:7の重量比率で用いて酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を86%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は41,300であり、PDI値は3.86であった。
【0132】
[比較例1]:光配向性重合体の製造
製造例4の化合物だけをモノマーとして用い、酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:500の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を79%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は45,600であり、PDI値は4.06であった。
【0133】
[比較例2]:光配向性重合体の製造
製造例5の化合物だけをモノマーとして用い、酢酸エチルに溶かした後、ラジカル開始剤(AIBN)をモノマーに対して1:250の重量比率で添加して60℃で18時間反応を行った。最終の高分子化合物を83%の収率で製造した。質量平均分子量(Mw)は45,600であり、PDI値は4.41であった。
【0134】
[試験例]:配向膜および液晶フィルムなどの製造および特性評価
ガラス基板上に実施例および比較例の光配向性(共)重合体(溶液に対して2〜3wt%)を溶かしたトルエン溶液を落とし、バーコーティング(bar coating)を行った。80℃で2分間1次乾燥した後、280〜315nmの波長と、一定の偏光方向を有するUV偏光を照射して光配向を行った。以降、150〜200℃で10〜30分間2次乾燥した後、光学異方性を測定した。追加的に、前記製造された光配向膜の上に20〜25wt%の反応性液晶(反応性メソゲン)を落とし、バーコーティングを行った。60℃で2分間乾燥した後、非偏光UVを照射して最終の液晶フィルムを製造した。
【0135】
一方、前記で言及した光配向後、異方性を測定するために次のような実験を行った。
まず、それぞれ製作された光配向膜の吸光度をUV吸光度(UV absorbance)を通じて測定した。この時、基準波長は300nmを用い、 UV−visスペクトロメータ(UV−vis spectrometer)を用いてそれぞれの吸光度を測定した。このような吸光度の測定結果から、照射したUV偏光方向と垂直な方向の吸光度A1と一致する方向の吸光度A2を導き出し、下記式1から異方性値(dicroic ratio=DR)を求めて下記表1に共に示した。
[式1]
異方性(DR)=(A1−A2)/(A1+A2)
上記式中、A1は、照射したUV偏光方向と垂直な方向の吸光度を表し、A2は、照射したUV偏光方向と一致する方向の吸光度を表す。
【0136】
そして、前記条件で光配向した後に反応性液晶を塗布して、全体配向膜の面積に対する未配向部分(肉眼判別)の面積比率を算出し、これに基づいて5点を基準に配向性を評価して下記表1に共に示した。
【0137】
【表1】
【0138】
前記表1を参照すれば、、0.16以上の異方性(DR)を満たすEntry2〜18は、実施例の光配向性共重合体を用いた実験結果であり、2次乾燥後に異方性が増加することが確認された。これと比較して、2次乾燥を実施しないEntry1では異方性の増加が相対的に小さく示されることが確認された。これは化学式2の繰り返し単位が熱処理過程で光配向性繰り返し単位の光反応性作用基と相互作用して光学異方性を大きく増加させるためであると見られる。
【0139】
一方、前記実施例と比較して、比較例1および2の光配向性重合体を用いた場合、光学異方性の値が0.9以下の値を示して相対的に小さかった。
【0140】
また、前記表1によれば、実施例の光配向性共重合体を用いた場合、比較例に比べて優れた液晶配向性を示すことが確認された。
図1