(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程cで得られた第2の錯化反応液、又は前記工程dで得られた第2のニッケル微粒子のスラリーに、分子内にリン原子を含有する有機化合物を添加する工程を備えている請求項5又は6に記載のニッケル微粒子含有組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[ニッケル微粒子含有組成物]
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るニッケル微粒子含有組成物の構成を示す模式図である。本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100は、平均粒子径が60〜150nmの範囲内であり、かつ、粒子径の変動係数が0.2以下である第1のニッケル微粒子10(A成分)と、平均粒子径が10〜60nmの範囲内であり、粒子径の変動係数が0.2以下であり、かつ、5%熱収縮率温度が、第1のニッケル微粒子10の5%熱収縮率温度より50℃以上高い第2のニッケル微粒子20(B成分)と、を備えている。
【0025】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第1のニッケル微粒子10の一次粒子の平均粒子径は60〜150nmの範囲内であり、70〜120nmの範囲内が好ましい。また、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第2のニッケル微粒子20の一次粒子の平均粒子径は10〜60nmの範囲内であり、20〜50nmの範囲内が好ましい。なお、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20の平均粒子径は、いずれもSEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの面積を求めることによって算出した。
【0026】
第1のニッケル微粒子10の一次粒子の平均粒子径が60nmを下回ると、誘電体層とのデラミネーションが激しくなることから、例えばMLCCの内部電極材料としての実用性を欠く。また、第1のニッケル微粒子10の一次粒子の平均粒子径が60nmを下回ると、脱バインダー時の加熱でニッケル微粒子含有組成物100同士が凝集又溶融しやすくなり、さらに酸素を取り込みやすくなるため、ニッケル微粒子含有組成物100の体積膨張や収縮変化が大きくなる。さらに、第1のニッケル微粒子10の一次粒子の平均粒子径が60nmを下回ると、第1のニッケル微粒子10どうしの隙間が小さくなって第2のニッケル微粒子20が隙間に入り込むことが困難になり、充填密度が低下する。そのため、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、熱収縮が大きくなる場合がある。
【0027】
一方、MLCCの内部電極材料として、従来は、平均粒子径が200nm以上のニッケル微粒子が使用されていたが、内部電極層の薄膜化に伴い150nm以下の平均粒子径のニッケル微粒子が求められている。第1のニッケル微粒子10の一次粒子の平均粒子径が150nmを上回ると、最小径の粒子及び最大径の粒子の分布幅が大きくなり、薄膜化したMLCCの内部電極材料に利用した場合に、巨大粒子の存在によりショート不良を起こしやすい。
【0028】
第1のニッケル微粒子10の平均粒子径が60nm程度である場合、理論的に第1のニッケル微粒子10どうしの隙間に入り込める第2のニッケル微粒子20の平均粒子径は、10nm未満となる。ところが、第2のニッケル微粒子20の一次粒子の平均粒子径が10nmを下回ると、比表面積が増大し、焼結開始温度が低温化したり、表面自由エネルギーの増大により分散が困難になって第2のニッケル微粒子20どうしの凝集粒子が増加したりする。また、平均粒子径が10nm未満のニッケル微粒子は、表面の酸化物量が金属ニッケル量に対して大きくなり、還元時の収縮が大きくなってしまうほか、有機物の付着量も大きくなり、その消滅によるガス発生や熱収縮も大きくなるため、好ましくない。
【0029】
一方、第2のニッケル微粒子20の一次粒子の平均粒子径が60nmを上回ると、第1のニッケル微粒子10どうしの隙間に入り込むことが困難になり、充填密度が低下するため、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、熱収縮が大きくなる場合がある。
【0030】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100は、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20との平均粒子径の比(第1のニッケル微粒子/第2のニッケル微粒子)が2以上10以下の範囲内であり、3以上8以下がより好ましい。第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20との平均粒子径の比が2未満であると、第1のニッケル微粒子10どうしの隙間に第2のニッケル微粒子20が入り込むことが困難になり、充填密度が低下するため、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、熱収縮が大きくなる場合がある。一方、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20との平均粒子径の比が10を超えると、第2のニッケル微粒子20が小さくなり過ぎて、比表面積が増大し、焼結開始温度が低温化したり、表面自由エネルギーの増大により分散が困難になって第2のニッケル微粒子20どうしの凝集粒子が増加したりする。
【0031】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第1のニッケル微粒子10の含有量は65〜95質量%の範囲内であり、好ましくは70〜90質量%の範囲内である。また、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第2のニッケル微粒子20の含有量は5〜35質量%の範囲内であり、好ましくは10〜30質量%の範囲内である。第1のニッケル微粒子10の含有量が65質量%未満である場合、又は第2のニッケル微粒子20の含有量が35質量%を超える場合には、平均粒子径の小さな第2のニッケル微粒子20の比率が多くなり過ぎ、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、熱収縮が大きくなる場合がある。一方、第1のニッケル微粒子10の含有量が95質量%を超える場合、又は第2のニッケル微粒子20の含有量が5質量%を下回る場合には、第1のニッケル微粒子10どうしの隙間を第2のニッケル微粒子20で埋めることが困難になり、充填密度が低下するため、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、熱収縮が大きくなる場合がある。
【0032】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、いずれも、粒子径の変動係数(CV)が0.2以下である。CV値を0.2以下とすることで、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20の粒度分布がシャープとなるため、平均粒子径が異なるこれらの粒子を組み合わせる効果が高まる。従って、ニッケル微粒子含有組成物100を用いて、例えばMLCCの内部電極を形成する場合に、高い充填密度が得られ、熱収縮を抑制する効果が増大する。
【0033】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、例えば球状、疑似球状等の形状の微粒子であり、主成分としてニッケル元素を含有する。第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、それぞれ、ニッケル以外の元素を含有することができる。ニッケル以外の金属としては、例えば、チタン、コバルト、銅、クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、スズ、タングステン、モリブデン、バナジウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、シリコン、アルミニウム、リン等の卑金属、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、ネオジウム、ニオブ、ホロニウム、ディスプロヂウム、イットリウム等の貴金属、希土類金属を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上含有していてもよく、また水素、炭素、窒素、硫黄、ボロン等の金属元素以外の元素を含有していてもよいし、これらの合金であってもよい。
【0034】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、それぞれ、金属成分を90質量%以上含有することが好ましい。金属成分の含有量が90質量%未満であると、電気抵抗が大きくなり、例えばMLCCの内部電極材料用途として好ましくない。なお、各種元素の含有量は、元素分析により確認することができる(以下、同様である)。
【0035】
また、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、それぞれ、全金属成分に対し、ニッケル元素を95質量%以上含有することが好ましく、95〜97質量%の範囲内とすることがより好ましい。第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20の全金属成分に対するニッケル元素の含有量が95質量%未満であると、電気抵抗が大きくなり、電極特性に悪影響を及ぼす傾向となる。
【0036】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第2のニッケル微粒子20の5%熱収縮率温度は、第1のニッケル微粒子10の5%熱収縮率温度よりも50℃以上、好ましくは100℃以上高いことがよい。第1のニッケル微粒子10と比べて相対的に粒子径が小さな第2のニッケル微粒子20として、熱収縮温度が高いものを用いることによって、ニッケル微粒子含有組成物100を用いて例えばMLCCの内部電極を形成する場合に、効果的に熱収縮を抑制できる。
【0037】
第2のニッケル微粒子20の5%熱収縮率温度を高めるために、第2のニッケル微粒子20の表面が、硫黄含有化合物又は硫黄元素によって被覆されていることが好ましい。硫黄含有化合物又は硫黄元素による被覆は、後述するように、第2のニッケル微粒子20に硫黄粉末又は硫黄含有化合物を添加することによって可能となる。従って、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第2のニッケル微粒子20は、硫黄元素を含有していてもよい。第2のニッケル微粒子20の硫黄元素の量は、第2のニッケル微粒子20に対し、好ましくは0.15〜1.5質量%の範囲内であり、より好ましくは0.2〜1.0質量%の範囲内である。第2のニッケル微粒子20の表面に存在する硫黄元素は、焼結時の熱収縮を効果的に抑制する作用を有する。硫黄元素の含有量が、0.15質量%未満であると、第2のニッケル微粒子20の熱収縮を抑制する効果が不十分になる傾向があり、1.5質量%を超えると、還元雰囲気下での硫化水素ガスの発生に伴う粒子の膨れの原因となる。
【0038】
また、第2のニッケル微粒子20の熱収縮を効果的に抑制するために、第2のニッケル微粒子20は、リン元素を含んでもよく、あるいは、少量の炭化ニッケルを含有させてもよい。
【0039】
第2のニッケル微粒子20がリン元素を含有する場合、第一の態様として、リン元素が、第2のニッケル微粒子20の内部、その表層部、もしくは、その表面のいずれか1以上の部位に存在していてもよい。第一の態様において、第2のニッケル微粒子20のリン元素の量は、第2のニッケル微粒子20に対し、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲内であり、より好ましくは0.2〜0.5質量%の範囲内である。第一の態様において、特に第2のニッケル微粒子20の表面に存在するリン元素は、焼結時の熱収縮を効果的に抑制する作用を有する。第一の態様において、リン元素の含有量が、0.1質量%未満であると、第2のニッケル微粒子20の熱収縮を抑制する効果が不十分になる傾向があり、0.5質量%を超えると、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、隣接する誘電体層の誘電率の低下の原因となる。また、第二の態様として、リン元素が第2のニッケル微粒子20の表面にのみ存在していてもよい。第二の態様において、第2のニッケル微粒子20のリン元素の量は、第2のニッケル微粒子20に対し、好ましくは0.01〜0.2質量%の範囲内がよい。第二の態様においても、第2のニッケル微粒子20の表面に存在するリン元素は、焼結時の熱収縮を効果的に抑制する作用を有する。
【0040】
また、第2のニッケル微粒子20に炭化ニッケル[Ni
3C;X線回折によりHCP(六方最密充填結晶)構造を有するもの]を含有する場合の炭素元素の量は、炭化ニッケルとして存在する炭素元素と表面付着有機物として存在する炭素元素との合計量として、第2のニッケル微粒子20に対し、好ましくは1〜7質量%の範囲内であり、より好ましくは2〜6質量%の範囲内である。第2のニッケル微粒子20に炭化ニッケルとして存在する炭素元素は、焼結時の熱収縮を効果的に抑制する作用を有する。炭化ニッケルを含有する場合の炭素元素の含有量が、1質量%未満であると、第2のニッケル微粒子20の熱収縮を抑制する効果が不十分になる傾向があり、7質量%を超えると、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、高温焼成時におけるガス発生に伴うデラミネーションの原因となる。
【0041】
なお、第1のニッケル微粒子10についても、第2のニッケル微粒子20と同様に、硫黄含有化合物又は硫黄元素によって被覆されていてもよく、あるいは、リン元素や炭化ニッケルを含有してもよい。
【0042】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100において、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、それぞれ、酸素元素を含有していてもよい。第1のニッケル微粒子10における酸素元素の含有量は、例えば0.2〜2.5質量%の範囲内であり、好ましくは0.5〜2.0質量%の範囲内がよい。酸素元素の含有量が、0.2質量%未満であると、第1のニッケル微粒子10の表面活性を抑制する効果が不十分になる傾向があり、2.5質量%を超えると、還元工程における熱収縮が大きくなり、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、膜切れやデラミネーション、あるいは電気抵抗が大きくなり、電極特性に悪影響を及ぼす傾向となる。
【0043】
また、第2のニッケル微粒子20における酸素元素の含有量は、例えば2.0〜6.0質量%の範囲内であり、好ましくは2.5〜5.0質量%の範囲内がよい。酸素元素の含有量が、2.0質量%未満であると、第2のニッケル微粒子20の表面活性を抑制する効果が不十分になる傾向があり、6.0質量%を超えると、還元工程における熱収縮が大きくなり、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、膜切れやデラミネーション、あるいは電気抵抗が大きくなり、電極特性に悪影響を及ぼす傾向となる。
【0044】
本実施の形態において、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20はそれぞれ、後述するように、ニッケル塩及び有機アミンを含む混合物から、湿式還元法によりニッケルイオンを還元し、金属ニッケルを析出させて得られるものであることが好ましい。特に、ニッケル塩及び有機アミンを含む錯化反応液をマイクロ波照射加熱によって湿式還元する方法では、錯化反応液の均一加熱が可能であり、かつエネルギーを媒体に直接与えることができるため、急速加熱を行なうことができる。これにより、錯化反応液全体を所望の温度に均一に加熱することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元、核生成、核成長各々の過程を溶液全体において同時に生じさせ、CV値が小さい単分散なニッケル微粒子(第1のニッケル微粒子10又は第2のニッケル微粒子20)を短時間で容易に製造することができる。
【0045】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100は、任意の溶媒に分散させたスラリーの状態でもよいし、溶媒を除去して乾燥させた粉末状の形態をなしていてもよい。スラリーとする場合の溶媒としては、第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20を分散できるものであれば特に制限はないが、例えばエチレングリコール等のグリコール類、アルコール類、有機アミン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられる。
【0046】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100は、上記溶媒以外の任意成分を含有していてもよい。そのような任意成分としては、例えば熱収縮温度を上げるために、誘電体組成と類似の共材、シリカ、マグネシア、カルシア、チタニア、希土類金属酸化物などの誘電体層に添加される金属酸化物等を挙げることができる。
【0047】
共材としては、例えばMLCCの誘電体層の材料に用いるBaTiO
3、SrTiO
3、CaTiO
3などを挙げることができる。共材を添加することによって、高密度化が可能になり、ニッケル微粒子含有組成物100を例えばMLCCの内部電極材料として使用する場合に収縮率を抑えることが可能となる。共材は、第2のニッケル微粒子20とほぼ同じ大きさ、例えば、平均粒子径が10〜60nmの範囲内のものを使用することが好ましい。共材の添加量は、ニッケル微粒子含有組成物100全体に対して5〜20質量%程度とすることが好ましい。共材の添加量が5質量%を下回ると、添加の効果が得られず、20質量%を上回ると、例えばニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合に、共材が誘電体層へ拡散することで誘電体層の膜厚が増大し、電気容量が低下するのみならず、電気抵抗が上昇し、導電性が低下する場合がある。
【0048】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100を粉末状の形態とする場合、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20が凝集して2次粒子を形成していてもよい。この場合、個々の2次粒子における第1のニッケル微粒子10の含有比率が65〜95質量%の範囲内であり、かつ第2のニッケル微粒子20の含有比率が5〜35質量%の範囲内であることが好ましい。すなわち、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100は、粉末状の形態である場合に、凝集粒子である2次粒子を有していてもよいが、個々の2次粒子内において、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20との比率は、組成物全体の第1のニッケル微粒子10と前記第2のニッケル微粒子20の比率にほぼ等しいことが好ましい。このように、個々の2次粒子の組成と、組成物全体の組成が略等しいということは、組成物全体が均質な状態にあることを意味する。組成物が全体として均質であれば、個々の凝集粒子においても、第1のニッケル微粒子10どうしの隙間に第2のニッケル微粒子20が効率よく入り込んだ状態が維持されるため、粒子密度を高めることが可能になり、ニッケル微粒子含有組成物100を用いて例えばMLCCの内部電極を形成する場合の熱収縮を効果的に抑制できる。それに対し、例えば2次粒子毎に第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20との比率が大きく変動する場合には、組成物内部で第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20の分布が偏在していることを意味する。このような場合は、粒子密度を高めることが困難になり、ニッケル微粒子含有組成物100を用いてMLCCの内部電極を形成する場合の熱収縮を抑制する効果が十分に得られなくなる。別の観点から、ニッケル微粒子含有組成物100中で第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20のそれぞれが偏在していない均質な状態であれば、ペースト化工程における均質化も比較的容易となり、工業的にも有利である。
【0049】
[ニッケル微粒子含有組成物の製造方法]
次に、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100の製造方法について説明する。ニッケル微粒子含有組成物100を構成する第1のニッケル微粒子10及び第2のニッケル微粒子20は、それぞれ、例えば気相法や液相法などの方法により得られるが、その製造方法については特に限定されない。気相法は液相法に比べて製造コストが高価になりがちであるので、液相法を適用することが有利である。液相法のなかでも、粒子径分布が狭いニッケル微粒子を短時間で容易に製造できる方法として、湿式還元工程を有する方法が好ましい。
【0050】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100の好ましい製造方法は、例えば、下記の工程a〜eを含むことができる。
a)ニッケル塩及び有機アミンを含む混合物を加熱し、ニッケル錯体を生成させて第1の錯化反応液を得る工程、
b)前記第1の錯化反応液を加熱して、前記錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、SEM観察による平均粒子径が60〜150nmの範囲内で、かつ粒子径の変動係数が0.2以下である第1のニッケル微粒子10を生成させて、第1のニッケル微粒子10のスラリーを得る工程、
c)ニッケル塩及び有機アミンを含む混合物を加熱し、ニッケル錯体を生成させて第2の錯化反応液を得る工程、
d)前記第2の錯化反応液を加熱して、前記錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、SEM観察による平均粒子径が10〜60nmの範囲内で、かつ粒子径の変動係数が0.2以下である第2のニッケル微粒子20を生成させて、第2のニッケル微粒子20のスラリーを得る工程、
並びに、
e)第1のニッケル微粒子10の含有量が65〜95質量%の範囲内であり、第2のニッケル微粒子20の含有量が5〜35質量%の範囲内であり、かつ、前記第1のニッケル微粒子10と前記第2のニッケル微粒子20との平均粒子径の比(第1のニッケル微粒子/第2のニッケル微粒子)が2以上10以下の範囲内となるように、前記第1のニッケル微粒子10のスラリーと前記第2のニッケル微粒子20のスラリーを混合してニッケル微粒子含有組成物100を得る工程。
【0051】
以下、工程a、bと、工程c、dは、それぞれ第1のニッケル微粒子10、第2のニッケル微粒子20のスラリーを作製する工程であり、平均粒子径が異なる以外は共通するため、併せて説明する。なお、以下の説明では、第1のニッケル微粒子10、第2のニッケル微粒子20を総称して、単に「ニッケル微粒子」と記すことがある。
【0052】
工程a、工程c(錯化反応液生成工程):
工程a及び工程cは、ニッケル塩及び有機アミンを含む混合物を加熱してニッケル錯体を生成させた錯化反応液(第1の錯化反応液又は第2の錯化反応液)を得る工程である。これらの工程a及び工程cで用いるニッケル塩(ニッケル前駆体)としては、例えば塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、カルボン酸ニッケル、Ni(acac)
2(β−ジケトナト錯体)、ステアリン酸ニッケル等を挙げることができる。例えば、塩化ニッケル六水和物(NiCl
2・6H
2O)は、錯体であるtrans―[NiCl
2(H
2O)
4]と、それに弱く結合した2個の水分子からなり、6個の水分子のうち4個のみが直接ニッケルと結合した構造を有している。このような構造のニッケル六水和物の水分子は容易にアミンなどによって置換され得るため、アミンと混合することで容易にアミン錯体を形成することができる。ニッケル前駆体の一部もしくは全部として塩化ニッケル(II)を用いることで、結晶性が高い金属ニッケルを生成することができる。
【0053】
また、ニッケル塩として、還元過程での解離温度(分解温度)が比較的低いカルボン酸ニッケルを用いることも好ましい。カルボン酸ニッケルとしては、例えば炭素数が1〜12のカルボン酸ニッケルを用いることができる。カルボン酸ニッケルは、カルボキシ基が1つのモノカルボン酸であってもよく、カルボキシ基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。好ましいカルボン酸ニッケルとして、例えばギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等を用いることができる。
【0054】
ニッケル塩は、任意の有機溶媒に溶解させた状態で使用することが好ましい。有機溶媒は、ニッケル塩を溶解できるものであれば、特に限定されず、例えばエチレングリコール、アルコール類、有機アミン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられるが、金属塩に対して還元作用があるエチレングリコール、アルコール類、有機アミン類等の有機溶媒が好ましい。
【0055】
有機アミンとしては、1級の有機アミン(以下、「1級アミン」と略称する。)が好ましい。この1級アミンは、ニッケル塩との混合物を溶解することにより、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮しやすく、還元温度が高温であるニッケル塩に対しても有利に使用できる。1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。
【0056】
常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級の有機アミンであっても、加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
【0057】
1級アミンは、芳香族1級アミンであってもよいが、反応液におけるニッケル錯体形成の容易性の観点からは脂肪族1級アミンが好適である。脂肪族1級アミンは、例えばその炭素鎖の長さを調整することによって、生成するニッケル微粒子の粒径を制御することができる。ニッケル微粒子の粒径を制御する観点から、脂肪族1級アミンは、その炭素数が6〜20程度のものから選択して用いることが好適である。炭素数が多いほど得られるニッケル微粒子の粒径が小さくなる。このようなアミンとして、例えばオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等を挙げることができる。
【0058】
1級アミンは、還元反応後に、生成したニッケル微粒子の固体成分と溶剤または未反応の1級アミン等を分離する洗浄工程における処理操作の容易性の観点から、室温で液体のものが好ましい。更に、1級アミンは、ニッケル錯体を還元してニッケル微粒子を得るときの反応制御の容易性の観点から、還元温度より沸点が高いものが好ましい。1級アミンの量は、ニッケル塩1molに対して2mol以上用いることが好ましく、2.2mol以上用いることがより好ましい。1級アミンの量が2mol未満では、得られるニッケル微粒子の粒子径の制御が困難となり、粒子径がばらつきやすくなる。また、1級アミンの量の上限は特にはないが、例えば生産性の観点からは20mol以下とすることが好ましい。
【0059】
均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがよい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
錯形成反応は室温に於いても進行することができるが、十分且つ、より効率の良い錯形成反応を行うために、例えば100℃〜165℃の範囲内に加熱して反応を行うことが好ましい。この加熱は、後に続くニッケル錯体(又はニッケルイオン)の加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、上記上限を適宜設定することができる。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。
【0061】
工程b、工程d(還元工程):
工程b又は工程dは、それぞれ、工程a又は工程cで得た錯化反応液(第1の錯化反応液又は第2の錯化反応液)を加熱して、錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、第1のニッケル微粒子10又は第2のニッケル微粒子20を生成させるとともに、第1のニッケル微粒子10のスラリー又は第2のニッケル微粒子20のスラリーを得る工程である。
工程b又は工程dでは、それぞれ、工程a又は工程cで、ニッケル塩と有機溶媒との錯形成反応によって得られた錯化反応液を加熱する。これによって、錯化反応液中のニッケルイオンを還元して金属ニッケルを主成分とする第1のニッケル微粒子10又は第2のニッケル微粒子20を生成させるとともに、第1のニッケル微粒子10のスラリー又は第2のニッケル微粒子20のスラリーを得ることができる。工程b及び工程dにおける加熱の方法は、特に制限はなく、例えばヒーターによる加熱でもよく、マイクロ波照射による加熱でもよいが、マイクロ波照射によることが好ましい。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。加熱温度は、得られるニッケル微粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは170℃以上、より好ましくは180℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を効率的に行う観点からは例えば280℃以下とすることが好適である。
【0062】
マイクロ波照射による錯化反応液の加熱は、該反応液内の均一加熱を可能とし、かつエネルギーを媒体に直接与えることができるため、急速加熱を行なうことができる。これにより、反応液全体を所望の温度に均一にすることができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元、核生成、核成長各々の過程を溶液全体において同時に生じさせ、結果として粒子径分布の狭い単分散な第1のニッケル微粒子10又は第2のニッケル微粒子20を短時間で容易に製造することができる。従って、マイクロ波照射による加熱は、特に、10〜150nmの範囲内の所望の平均粒子径で、第1のニッケル微粒子10又は第2のニッケル微粒子20を製造するのに好適である。ニッケル微粒子の平均粒子径は、主として、工程b又は工程dにおける加熱時のマイクロ波照射条件、錯化反応液のニッケル濃度、貴金属塩などの核剤添加などによって調節できる。具体的には、第1のニッケル微粒子10は、SEM観察による平均粒子径が60〜150nmの範囲内で、かつ粒子径の変動係数が0.2以下となるようにマイクロ波照射時間を設定し、第2のニッケル微粒子20は、SEM観察による平均粒子径が10〜60nmの範囲内で、かつ粒子径の変動係数が0.2以下となるようにマイクロ波照射条件、錯化反応液組成等を設定すればよい。
【0063】
均一な粒子径を有する第1のニッケル微粒子10又は第2のニッケル微粒子20を生成させるには、錯化反応液生成工程の加熱温度を調整し、還元工程における加熱温度よりも確実に低くしておくことが重要である。錯化反応液生成工程の加熱温度を還元工程における加熱温度よりも確実に低くすることで、粒径・形状の整った粒子が生成し易くなる。例えば、錯化反応液生成工程で加熱温度が高すぎるとニッケル錯体の生成とニッケル(0価)への還元反応が同時に進行し、異種の金属種が発生することで、還元工程で粒子形状の整った粒子の生成が困難となるおそれがある。また、還元工程の加熱温度が低すぎるとニッケル(0価)への還元反応速度が遅くなり、核の発生が少なくなるため粒子が大きくなるだけでなく、ニッケル微粒子の収率の点からも好ましくはない。
【0064】
還元工程においては、必要に応じ、前述した有機溶媒を加えてもよい。なお、前記したように、錯形成反応に使用する1級アミンを有機溶媒としてそのまま用いることが好ましい。
【0065】
工程e(混合工程):
工程eは、工程bで得られた第1のニッケル微粒子10のスラリーと、工程dで得られた第2のニッケル微粒子20のスラリーとを混合する。混合比率は、ニッケル微粒子含有組成物100中の第1のニッケル微粒子10の含有量が65〜95質量%の範囲内、好ましくは70〜90質量%の範囲内であり、第2のニッケル微粒子20の含有量が5〜35質量%の範囲内、好ましくは10〜30質量%の範囲内となるようにする。また、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20との平均粒子径の比(第1の粒子/第2の粒子)が2以上10以下の範囲内、好ましくは3以上8以下の範囲内となるように混合する。
【0066】
混合工程では、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20とを均一な混合、分散状態とするために、例えば撹拌、衝撃混合、せん断混合等の操作を行うことが好ましい。
【0067】
上記にようにしてスラリー状態のニッケル微粒子含有組成物100を製造することができるが、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100の製造方法は、上記工程a〜工程e以外に、任意の工程を含むことが可能であり、例えば、以下の工程f、工程g、又は、工程hなどを含むことができる。
【0068】
工程f(乾燥工程):
本工程では、工程eで得られたスラリー状態のニッケル微粒子含有組成物100を、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することで、乾燥状態のニッケル微粒子含有組成物100が得られる。本工程で得られる乾燥後のニッケル微粒子含有組成物100は粉末状をなしていてもよい。この場合、第1のニッケル微粒子10と第2のニッケル微粒子20が凝集して2次粒子を形成していてもよいが、上記のとおり、個々の2次粒子における第1のニッケル微粒子10の含有比率が65〜95質量%であり、かつ第2のニッケル微粒子20の含有比率が5〜35質量%の範囲内であることが好ましい。
【0069】
工程g(硫黄成分添加工程):
本工程では、前記工程dで得られた第2のニッケル微粒子20のスラリーに、硫黄粉末又は硫黄含有化合物を更に添加することによって、第2のニッケル微粒子20の表面に、硫黄含有化合物又は硫黄元素を被覆する。この場合、硫黄含有化合物としてニッケル原子と化学結合を可能とする硫黄原子を含む官能基を有する硫黄含有有機化合物を用いることが好ましい。硫黄粉末又は硫黄含有化合物の添加は、工程dの還元反応に続く、第2のニッケル微粒子20のスラリーの状態で添加することが好ましい。
【0070】
硫黄含有有機化合物は、硫黄原子を分子内に含有する有機化合物であるが、このような有機化合物として、例えばチオール系化合物、スルフィド系化合物、チオフェン系化合物、スルホキシド系化合物、スルホン系化合物、チオケトン系化合物、スルフラン系化合物などが挙げられる。このなかでもチオール系化合物(メルカプト基を含有)、スルフィド系化合物(スルフィド基、又はジスルフィド基を含有)は、硫黄原子の活性が高いために、反応性に優れており、第2のニッケル微粒子20の表面をNi−Sの化学結合で被覆することができ、例えばニッケル微粒子含有組成物100の急激な加熱によっても、第2のニッケル微粒子20の表面酸化を抑えることができるので好ましい。また、第2のニッケル微粒子20の分散性を向上させるために、脂肪族系の硫黄含有有機化合物が好ましい。
【0071】
メルカプト基を含有する硫黄含有有機化合物としては、第2のニッケル微粒子20の分散性の向上のために、炭化水素基を有する脂肪族チオール化合物が好ましく、より好ましくは炭素数1〜18の範囲内にある脂肪族チオール化合物がよい。
【0072】
スルフィド基を含有する硫黄含有有機化合物としては、第2のニッケル微粒子20の分散性の向上のために、炭化水素基を有する脂肪族メチルスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜18の範囲内にある脂肪族メチルスルフィド化合物がよい。このような脂肪族メチルスルフィド化合物は、R
1−S−CH
3で表される。ここで、R
1は炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基である。
【0073】
ジスルフィド基を含有する硫黄含有有機化合物としては、第2のニッケル微粒子20の分散性の向上のために、炭化水素基を有する脂肪族ジスルフィド化合物が好ましく、より好ましくは炭素数2〜40の範囲内にある脂肪族ジスルフィド化合物がよい。このような脂肪族ジスルフィド化合物は、R
1−S−S―R
1’で表される。ここで、R
1、R
1’は独立に炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基から選ばれる1価の置換基である。
【0074】
脂肪族系の硫黄含有有機化合物の好ましい具体例としては、例えばメチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ブチルチオール、ヘプチルチオール、ヘキシルチオール、オクチルチオール、ノニルチオール、デシルチオール(デカンチオール)、ウンデシルチオール、ドデシルチオール(ドデカンチオール)、テトラデシルチオール(テトラデカンチオール)、ヘキサデカンチオール、オクタデシルチオール、tert−ドデシルメルカプタン、シクロヘキシルチオール、ベンジルチオール、エチルフェニルチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジチオラン、2−メルカプトメチル−1,4−ジチアン、1−メルカプト−2,3−エピチオプロパン、1−メルカプトメチルチオ−2,3−エピチオプロパン、1−メルカプトエチルチオ−2,3−エピチオプロパン、3−メルカプトチエタン、2−メルカプトチエタン、3−メルカプトメチルチオチエタン、2−メルカプトメチルチオチエタン、3−メルカプトエチルチオチエタン、2−メルカプトエチルチオチエタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等の1価の脂肪族チオール化合物、1,1−メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,1,1−テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等の脂肪族ポリチオール化合物、ドデシルメチルスルフィド、n−デシルスルフィドなどの脂肪族スルフィド、デカンジスルフィドなどの脂肪族ジスルフィドが挙げられる。なお、これらは特に限定されるものではなく、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
硫黄含有有機化合物の添加量は、第2のニッケル微粒子20の表面積を考慮して決定されるものであり、第2のニッケル微粒子20に対し、硫黄元素として、例えば0.15〜1.5質量%の範囲内、好ましくは0.2〜1.0質量%の範囲内となるようにすればよい。
【0076】
工程h(リン成分添加工程):
本工程では、前記工程cで得られた第2の錯化反応液、又は前記工程dで得られた第2のニッケル微粒子20のスラリーに、分子内にリン原子を含有する有機化合物(リン含有有機化合物)を更に添加する。このようなリン含有有機化合物として、例えばトリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン、リン酸モノエステル、又はリン酸ジエステルなどが挙げられる。
【0077】
前記工程cで得られた第2の錯化反応液にリン含有有機化合物(好ましくは有機ホスフィン)を添加する場合は、リン含有有機化合物の添加量は、第2のニッケル微粒子20に対し、リン元素として、例えば0.1〜0.5質量%の範囲内、好ましくは0.2〜0.5質量%の範囲内となるようにすればよい。また、前記工程dで得られた第2のニッケル微粒子20のスラリーにリン含有有機化合物を添加する場合は、リン含有有機化合物の添加量は、第2のニッケル微粒子20の表面積を考慮して決定されるものであり、第2のニッケル微粒子20に対し、リン元素として、例えば0.01〜0.2質量%の範囲内となるようにすればよい。
【0078】
本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100は、平均粒子径が異なり、粒度分布の小さな2種類のニッケル微粒子を混合しているため、粒子径分布のピークを少なくとも2つ持っており、配合量の多い大きな粒子(第1のニッケル微粒子10)どうしの隙間を、配合量の少ない小さな粒子(第2のニッケル微粒子20)によって埋めることができる。そのため、ニッケル微粒子含有組成物100の充填密度は、単一ピークの粒子径分布を持つ同体積のニッケル微粒子に比べて高くなる。従って、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100を用いることによって、例えば積層セラミックコンデンサの製造過程で、焼結時のデラミネーションやクラック等の欠陥の発生を防ぐことができる。このようなニッケル微粒子含有組成物100は、積層セラミックコンデンサの内部電極の材料などの用途に好適に用いることができる。
【0079】
また、通常、ニッケル微粒子は、平均粒子径が小さくなると焼結温度が低下するだけでなく、粒子の比表面積が大きくなることから、粒子表面の酸素量(及び有機物などの不純物)が多くなり、熱収縮量も大きくなる。それに対し、本実施の形態においては、小さい方の粒子(第2のニッケル微粒子20)として、5%焼結温度が大きな粒子(第1のニッケル微粒子10)よりも50℃以上、好ましくは100℃以上高く、焼結しにくいものを用いることで、混合粒子の熱収縮率を小さくし、収縮温度を高温化することが可能になる。
【0080】
さらに、本実施の形態のニッケル微粒子含有組成物100においては、共材として、収縮性の低いBaTiO
3を5〜20質量%程度添加することで全体の収縮率を抑えることが可能となる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0082】
[平均粒子径の測定]
SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として一次粒子の平均粒子径を算出した。また、CV値(変動係数)は、(標準偏差)÷(平均粒子径)によって算出した。なお、CV値が小さいほど、粒子径がより均一であることを示す。
【0083】
[熱機械分析(TMA)、熱重量分析(TGA)、5%熱収縮温度]
試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析(TMA)および熱重量分析(TGA)を行った。また、熱機械分析装置(TMA)により測定される5%熱収縮の温度を5%熱収縮温度とした。また、この測定を行うための成型時の密度を測定した。
【0084】
(合成例1)
<錯化反応液の調製>
254.2gの酢酸ニッケル四水和物(1.02mol)に745.8gのオレイルアミン(2.79mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱することによって錯化反応液A(ニッケルイオンの濃度;6wt%)を得た。
【0085】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Aに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子Aのスラリーを得た。
【0086】
ニッケル微粒子Aの元素分析の結果は、C;0.5、O;1.1、S;<0.1(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Aの結晶構造は、X線回折から、FCC(面心立方格子)構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Aの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0087】
(合成例2)
<錯化反応液の調製>
169.5gの酢酸ニッケル四水和物(0.68mol)に830.5gのオレイルアミン(3.11mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱することによって錯化反応液B(ニッケルイオンの濃度;4wt%)を得た。
【0088】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Bに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子Bのスラリーを得た。
【0089】
ニッケル微粒子Bの元素分析の結果は、C;0.7、O;1.4、S;<0.1(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Bの結晶構造は、X線回折から、FCC構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Bの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0090】
(合成例3)
<錯化反応液の調製>
127.1gの酢酸ニッケル四水和物(0.51mol)に872.9gのオレイルアミン(3.27mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱することによって錯化反応液C(ニッケルイオンの濃度;3wt%)を得た。
【0091】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Cに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子Cのスラリーを得た。
【0092】
ニッケル微粒子Cの元素分析の結果は、C;0.9、O;1.6、S;<0.1(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Cの結晶構造は、X線回折から、FCC構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Cの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0093】
(合成例4)
<錯化反応液の調製>
169.5gの酢酸ニッケル四水和物(0.68mol)に830.5gのオレイルアミン(3.11mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱したのち、0.58gの硝酸銀(0.0034mol)を加えることによって錯化反応液D(ニッケルイオンの濃度;4wt%)を得た。
【0094】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Dに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子Dのスラリーを得た。
【0095】
ニッケル微粒子Dの元素分析の結果は、C;1.9、O;3.2、S;<0.1(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Dの結晶構造は、X線回折から、FCC構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Dの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0096】
(合成例5)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に690.0gのオレイルアミン(2.58mol)を加え、窒素フロー下で150℃、180分間加熱したのち、1.5gのトリオクチルホスフィン(4.0mmol)を溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを加えることによって錯化反応液E(ニッケルイオンの濃度;1.9wt%)を得た。
【0097】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Eに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子E’のスラリーを得た。
【0098】
得られたニッケル微粒子E’のスラリーに、0.7gのドデカンチオールを溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを添加して、再度、マイクロ波を照射して245℃で10分間加熱して、ニッケル微粒子Eのスラリーを得た。
【0099】
ニッケル微粒子Eの元素分析の結果は、C;1.0、O;2.3、S;0.55、P;0.45(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Eの結晶構造は、X線回折から、FCC構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Eの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0100】
(合成例6)
<錯化反応液の調製>
169.5gの酢酸ニッケル四水和物(0.68mol)に830.5gのオレイルアミン(3.11mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱したのち、1.0gのトリオクチルホスフィン(4.0mmol)を溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを添加し、更に0.58gの硝酸銀(0.0034mol)を加えることによって錯化反応液F(ニッケルイオンの濃度;4wt%)を得た。
【0101】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Fに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子F’のスラリーを得た。
【0102】
得られたニッケル微粒子F’のスラリーに、2.2gのドデカンチオールを溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを添加して、再度、マイクロ波を照射して245℃で10分間加熱して、ニッケル微粒子Fのスラリーを得た。
【0103】
ニッケル微粒子Fの元素分析の結果は、C;2.5、O;3.9、S;0.70、P;0.29(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Fの結晶構造は、X線回折から、FCC構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Fの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0104】
(合成例7)
<錯化反応液の調製>
60.0gの酢酸ニッケル四水和物(0.24mol)に1356.1gのオレイルアミン(5.08mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱して錯化反応液G(ニッケルイオンの濃度;1wt%)を得た。
【0105】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Gに、マイクロ波を照射して260℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子G’のスラリーを得た。
【0106】
得られたニッケル微粒子G’のスラリーに、0.7gのドデカンチオールを溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを添加して、再度、マイクロ波を照射して245℃で10分間加熱して、ニッケル微粒子Gのスラリーを得た。
【0107】
ニッケル微粒子Gの元素分析の結果は、C;3.0、O;3.9、S;0.50(いずれも、単位は質量%)であった。また、X線回折から、ニッケル微粒子Gには、結晶形態がFCC構造のニッケル以外に炭素を含有したHCP構造の炭化ニッケルが混在していることが判った。また、ニッケル微粒子Gの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0108】
(合成例8)
<錯化反応液の調製>
169.5gの酢酸ニッケル四水和物(0.68mol)に830.5gのオレイルアミン(3.11mol)を加え、窒素フロー下で140℃、240分間加熱したのち、0.58gの硝酸銀(0.0034mol)を加えることによって錯化反応液H(ニッケルイオンの濃度;4wt%)を得た。
【0109】
<スラリーの形成>
得られた錯化反応液Hに、マイクロ波を照射して245℃まで加熱し、その温度を10分間保持することによって、ニッケル微粒子H’のスラリーを得た。
【0110】
得られたニッケル微粒子H’のスラリーに、2.2gのドデカンチオールを溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを添加して、再度、マイクロ波を照射して245℃で10分間加熱して、ニッケル微粒子H”のスラリーを得た。
【0111】
得られたニッケル微粒子H”のスラリーを徐冷して、スラリー温度が150℃になった時点で、0.5gのリン酸ジエステル(クローダジャパン社製、商品名;N10A、重量平均分子量;約600)を溶解したオレイルアミン溶液の10.0gを10分間かけて添加後、1時間撹拌し、室温まで徐冷してニッケル微粒子Hのスラリーを得た。
【0112】
ニッケル微粒子Hの元素分析の結果は、C;2.5、O;3.1、S;0.65、P;0.07(いずれも、単位は質量%)であった。得られたニッケル微粒子Hの結晶構造は、X線回折から、FCC構造のみであることが判った。また、ニッケル微粒子Hの平均粒子径、CV値、5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表1に示した。
【0113】
[比較例1]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例3で得られたニッケル微粒子Cのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Cとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0114】
[比較例2]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例4で得られたニッケル微粒子Dのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Dとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0115】
[比較例3]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0116】
[比較例4]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0117】
[比較例5]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例4で得られたニッケル微粒子Dのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Dとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0118】
[比較例6]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例4で得られたニッケル微粒子Dのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Dとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0119】
[比較例7]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0120】
[実施例1]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0121】
[実施例2]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0122】
[実施例3]
合成例1で得られたニッケル微粒子Aのスラリーと合成例6で得られたニッケル微粒子Fのスラリーを、ニッケル微粒子Aとニッケル微粒子Fとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0123】
[実施例4]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0124】
[実施例5]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例5で得られたニッケル微粒子Eのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Eとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0125】
[実施例6]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例6で得られたニッケル微粒子Fのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Fとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0126】
[実施例7]
合成例3で得られたニッケル微粒子Cのスラリーと合成例6で得られたニッケル微粒子Fのスラリーを、ニッケル微粒子Cとニッケル微粒子Fとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0127】
[実施例8]
合成例2で得られたニッケル微粒子Bのスラリーと合成例7で得られたニッケル微粒子Gのスラリーを、ニッケル微粒子Bとニッケル微粒子Fとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0128】
[実施例9]
合成例3で得られたニッケル微粒子Cのスラリーと合成例8で得られたニッケル微粒子Hのスラリーを、ニッケル微粒子Cとニッケル微粒子Hとが表2に記載した比率となるように混合することによって、ニッケル微粒子含有組成物を調製した。得られたニッケル微粒子含有組成物の5%熱収縮温度、600℃収縮率、収縮率測定時の成型密度を表2に示した。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
表2より、実施例1〜9のニッケル微粒子含有組成物は、いずれも比較例に比べ、成形密度が高くなっており、5%収縮温度が高く、かつ600℃の収縮率が抑制されていた。それに対し、第2のニッケル微粒子の平均粒子径が大きすぎる比較例1、第2のニッケル微粒子の5%熱収縮温度が低すぎる比較例2、5、6、第1のニッケル微粒子に対する第2のニッケル微粒子の配合比率が少なすぎる比較例3,7、同配合比率が多すぎる比較例4では、いずれも、成形密度が低くなっており、5%収縮温度が低いか、あるいは600℃の収縮率が大きくなっていた。
【0132】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。