(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラ、特に一眼レフカメラの交換レンズとして用いられる撮像レンズにおいては、レンズ系と撮像素子との間に各種光学素子を挿入するため、あるいはレフレックスファインダー用の光路長を確保するために、長いバックフォーカスが必要な場合があり、このような場合、レトロフォーカスタイプのパワー配置が適している。
【0006】
特許文献1〜4に記載の撮像レンズは、上述したレンズ構成を有し、レトロフォーカスタイプ、あるいはこれに準ずるようなパワー配置を有するレンズ構成となっている。しかし、このようなタイプの撮像レンズにおいては、長いバックフォーカスおよび光学性能の双方を確保しようとすると、光学全長が必然的に長くなってしまい、近年望まれている撮像装置の小型化に対応できない。
【0007】
また、上述したAPSフォーマット等の大型の撮像素子を用いた撮像装置においては、レフレックスファインダーを持たないレンズ交換式のカメラ、あるいはレンズ一体型のコンパクトカメラ等、その構成によっては、一眼レフカメラ用の交換レンズほどの長いバックフォーカスを必要としない場合がある。
【0008】
特許文献1〜4に記載の撮像レンズを上述したAPSフォーマット等の大型の撮像素子を用いた撮像装置に適用することは可能であるが、その場合は、小型で携帯性に優れた撮像装置に応じて、撮像レンズも小型化することが望まれる
。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、大型の撮像素子に対応可能な良好な光学性能を確保しつつ、小
型に作製可能な撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、絞りと、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、第1レンズ群は、物体側から順に、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、第2レンズ群は、
物体側から順に、物体側に凹面を向けた負レンズと、像側に凸面を向けた正レンズと、非球面レンズとからなる3枚のレンズから構成され、第2レンズ群の最も物体側の面は凹面であり、第2レンズ群の最も像側の面は凸面であり、第3レンズ群は、物体側から順に、物体側に凹面を向けた1枚の負レンズと、1枚以上の正レンズとから構成されるものである。
本発明の第2の撮像レンズは、
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、絞りと、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、第1レンズ群は、物体側から順に、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、第2レンズ群は、3枚以下のレンズから構成され、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、少なくとも1面の非球面を有し、第2レンズ群の最も物体側の面は凹面であり、第2レンズ群の最も像側の面は凸面であり、第3レンズ群は、物体側から順に、物体側に凹面を向けた1枚の負レンズと、1枚以上の正レンズとから構成され、下記条件式(1)を満足するものである。
2.1<TL/Y<3.0 … (1)
ただし、
TL:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
Y:最大像高
本発明の第3の撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、絞りと、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とから構成され、第1レンズ群は、物体側から順に、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、第2レンズ群は、3枚以下のレンズから構成され、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、少なくとも1面の非球面を有し、第2レンズ群の最も物体側の面は凹面であり、第2レンズ群の最も像側の面は凸面であり、第3レンズ群は、物体側から順に、物体側に凹面を向けた1枚の負レンズと、1枚以上の正レンズとから構成され、無限遠物体から至近距離物体へのフォーカス調整は、第1レンズ群および第2レンズ群のみを一体的に物体側に移動させて行うように構成されているものである。
なお、以下では、本発明の第1、第2
、第3の撮像レンズを総称して本発明の撮像レンズという。
【0012】
本発明の
第2の撮像レンズにおいては
、下記条件式(1−1)を満足すること
が好ましい
。
2.2<TL/Y<2.9 … (1−1)
ただし、
TL:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
Y:最大像高
【0013】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(2)を満足することが好ましく、下記条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
0.50<Σd/TL<0.85 … (2)
0.55<Σd/TL<0.80 … (2−1)
ただし、
Σd:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
TL:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
【0014】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(3)を満足することが好ましく、下記条件式(3−1)を満足することがより好ましい。
0.35<Y/f<0.85 … (3)
0.40<Y/f<0.82 … (3−1)
ただし、
Y:最大像高
f:全系の焦点距離
【0015】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
0.70<ST/TL<0.95 … (4)
0.75<ST/TL<0.92 … (4−1)
ただし、
ST:絞りから像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
TL:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
【0016】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5−1)を満足することがより好ましい。
0.7<f/f1<1.6 … (5)
0.8<f/f1<1.5 … (5−1)
ただし、
f:全系の焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
【0017】
本発明の撮像レンズにおいては、第1レンズ群は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズと、正レンズとからなる2枚のレンズから構成されることが好ましく、このようにした場合は、第1レンズ群を構成する2枚のレンズは互いに接合されていることが好ましい。
【0018】
本発明の撮像レンズにおいては、第2レンズ群の物体側から1、2番目のレンズはそれぞれ負レンズ、正レンズであり、これら2枚のレンズは互いに接合されていることが好ましい。
【0019】
本発明の撮像レンズにおいては、第1レンズ群に含まれる1枚の正レンズが下記条件式(6)、(7)を満足することが好ましく、下記条件式(6−1)、(7−1)を満足することがより好ましい。
Nd1p>1.70 … (6)
30<νd1p<58 … (7)
Nd1p>1.73 … (6−1)
33<νd1p<55 … (7−1)
ただし、
Nd1p:第1レンズ群に含まれる1枚の正レンズのd線に対する屈折率
νd1p:第1レンズ群に含まれる1枚の正レンズのd線に対するアッベ数
【0020】
本発明の撮像レンズにおいては、第3レンズ群は、負レンズと、正レンズとからなる2枚のレンズから構成されることが好ましい。
【0022】
本発明の撮像レンズにおいては、下記条件式(8)を満足することが好ましく、下記条件式(8−1)を満足することがより好ましい。
0.9<f12/f<1.5 … (8)
0.95<f12/f<1.4 … (8−1)
ただし、
f12:第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離
f:全系の焦点距離
【0023】
本発明の撮像装置は、本発明の撮像レンズを備えたことを特徴とするものである。
【0024】
なお、上記の「〜から構成され」は、実質的なことを意味するものであり、本発明の撮像レンズは、挙げた構成要素以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、絞りやカバーガラスやフィルタ等のレンズ以外の光学要素、レンズフランジ、レンズバレル、手ぶれ補正機構等の機構部分、等を含んでもよい。
【0025】
なお、上記の本発明の撮像レンズにおける屈折力の符号、レンズの面形状は、非球面が含まれているものについては近軸領域で考えることとする。
【0026】
なお、上記の「最大像高」は、例えば、撮像レンズの仕様や、撮像レンズが搭載される撮像装置の仕様により求めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば
、各レンズ群の構成を好適に設定しているため、大型の撮像素子に対応可能な良好な光学性能を確保しつつ、小
型に作製可能な撮像レンズ、およびこの撮像レンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜
図5は、本発明の実施形態にかかる撮像レンズの構成を示す断面図であり、それぞれ後述の実施例1〜5に対応している。
図1〜
図5においては、左側が物体側、右側が像側であり、無限遠の距離にある物体からの軸上光束2、最大像高の光束3も合わせて示している。
図1〜
図5に示す例の基本構成や図示方法は同じため、以下では主に
図1に示す構成例を代表的に参照しながら説明する。
【0030】
本発明の実施形態にかかる撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りStと、
負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とから構成される。なお、
図1〜
図5に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。
【0031】
この撮像レンズが撮像装置に搭載される際には、撮像素子を保護するためのカバーガラスや、撮像装置の仕様に応じたローパスフィルタや赤外線カットフィルタ等の各種フィルタを適宜備えるように撮像装置を構成することが考えられるため、
図1ではこれらを想定した平行平板状の光学部材PPを最も像側のレンズ面と像面Simとの間に配置した例を示している。しかし、本発明においては光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0032】
なお、
図1にはレンズ系と結像面Simとの間に光学部材PPを配置した例を示したが、光学部材PPの位置は
図1に示すものに限定されず、例えば、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタを各レンズの間に配置してもよい。あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0033】
また、
図1では、撮像レンズが撮像装置に適用される場合を考慮して、撮像レンズの像面Simに配置された撮像素子5も図示している。
図1では、撮像素子5を簡略的に示しているが、実際には撮像素子5の撮像面が像面Simの位置に一致するように配置される。撮像素子5は、撮像レンズにより形成される光学像を撮像して電気信号に変換するものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。
【0034】
本実施形態の撮像レンズは、レトロフォーカスタイプのレンズ系に比べ、光学全長を抑えることができ、小型化に有利となる
。
【0035】
本実施形態の撮像レンズにおいては、第1レンズ群G1は、物体側から順に、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、第2レンズ群G2は、3枚以下のレンズから構成され、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、少なくとも1面の非球面を有し、第2レンズ群G2の最も物体側の面は凹面であり、第2レンズ群G2の最も像側の面は凸面であり、第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凹面を向けた1枚の負レンズと、1枚以上の正レンズとから構成される。
【0036】
第1レンズ群G1が、物体側から順に、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを有することで、球面収差、像面湾曲および歪曲収差等の補正に有利となる。第2レンズ群G2が3枚以下のレンズから構成されることで、小型化に有利となる。開口絞りStの像側直後に配置され、3つのレンズ群のうち中央のレンズ群である第2レンズ群G2が、1枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含むことで、軸上色収差の補正に有利となる。第2レンズ群G2が少なくとも1面の非球面を有することで、軸外の収差である像面湾曲や歪曲収差を良好に補正することが容易になる。第3レンズ群G3が、物体側から順に、1枚の負レンズと、1枚以上の正レンズから構成されることで、像面湾曲を良好に補正することが容易になる。
【0037】
第2レンズ群G2の最も物体側の面を凹面、第2レンズ群G2の最も像側の面を凸面、3レンズ群G3の最も物体側の面を凹面とすることで、各面において画角の大きな軸外光線が大きく屈折することを回避でき、収差発生量を抑制することができる。この効果は各面単独でも得られるものであるが、3つの面を上記のように構成することで、収差発生量をより効果的に抑制することができる。
【0038】
上記構成を有する本実施形態の撮像レンズによれば、小
型に作製可能であり、球面収差、像面湾曲および歪曲収差を含めた諸収差を補正して、大型の撮像素子に対応可能な良好な光学性能を確保することができる。
【0039】
各レンズ群は、さらに以下に述べる構成を採用することが好ましい。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズであるレンズL11と、正レンズであるレンズL12の2枚のレンズから構成されることが好ましい。このようにした場合は、第1レンズ群G1で発生する球面収差、像面湾曲および歪曲収差等をバランスよく補正することができる。また、2枚という最低限のレンズで構成することにより、レンズ系の小型化および低コスト化に有利なものとなる。
【0040】
第1レンズ群G1を上記2枚のレンズからなるように構成した場合、これら2枚のレンズは互いに接合されていることが好ましい。第1レンズ群G1に接合レンズを用いることにより、良好な像面湾曲の補正を実現できる。
【0041】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凹面を向けた負レンズであるレンズL21と、像側に凸面を向けた正レンズであるレンズL22と、非球面レンズであるレンズL23の3枚のレンズから構成されることが好ましい。このようにした場合は、第2レンズ群G2で発生する球面収差、像面湾曲および歪曲収差等をバランスよく補正することができる。また、非球面レンズを開口絞りStから離れた位置に置くことで、軸外の収差である像面湾曲の補正や、歪曲収差の補正を良好にすることができる。さらにまた、3枚という少ないレンズで構成することにより、レンズ系の小型化および低コスト化に有利なものとなる。
【0042】
また、第2レンズ群の物体側から1、2番目のレンズをそれぞれ負レンズ、正レンズとした場合は、これら2枚のレンズは互いに接合されていることが好ましい。第2レンズ群G2に負レンズおよび正レンズが接合された接合レンズを用いることにより、良好な色消しを実現できる。
【0043】
例えば、第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凹レンズおよび両凸レンズが接合された接合レンズと、非球面を有し近軸領域で物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとから構成することができる。
【0044】
第3レンズ群G3は、負レンズであるL31と、正レンズであるレンズL32の2枚のレンズから構成されることが好ましい。第3レンズ群G3を、物体側から順に、負レンズと、正レンズとの2枚のレンズからなるように構成することにより、軸外の収差の像面湾曲を良好に補正することができる。また、2枚という少ないレンズで構成することにより、レンズ系の小型化および低コスト化に有利なものとなる。
【0045】
また、本実施形態の撮像レンズは、無限遠物体から至近距離物体へのフォーカス調整は、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2のみを一体的に物体側に移動させるフロントフォーカス方式で行うように構成されていることが好ましい。開口絞りStが物体側よりに位置しているため、第1レンズ群G1および第2レンズ群G2はそれらのレンズ径が小さく比較的軽量である。上記フロントフォーカス方式を採用することで、全系を移動させる方式や、レンズ径が大きく重量の大きい像側のレンズ群を移動させるリアフォーカス方式に比べて、駆動機構の負担を小さくでき、装置の小型化に有利となる。
【0046】
また、本実施形態の撮像レンズは、以下の条件式(
0)〜(8)のいずれか1つまたは任意の組合せを満足することが好ましい。
−317.79≦f2≦−57.76 … (0)
2.1<TL/Y<3.0 … (1)
0.50<Σd/TL<0.85 … (2)
0.35<Y/f<0.85 … (3)
0.70<ST/TL<0.95 … (4)
0.7<f/f1<1.6 … (5)
Nd1p>1.70 … (6)
30<νd1p<58 … (7)
0.9<f12/f<1.5 … (8)
ただし、
f2:第2レンズ群の焦点距離
TL:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
Y:最大像高
Σd:第1レンズ群の最も物体側のレンズ面から第3レンズ群の最も像側のレンズ面までの光軸上の距離
f:全系の焦点距離
ST:開口絞りから像面までの光軸上の距離(バックフォーカス分は空気換算長)
f1:第1レンズ群の焦点距離
Nd1p:第1レンズ群に含まれる1枚の正レンズのd線に対する屈折率
νd1p:第1レンズ群に含まれる1枚の正レンズのd線に対するアッベ数
f12:第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離
【0047】
条件式(1)は、光学全長であるTLと最大像高Yとの比の好ましい範囲を規定したものである。条件式(1)の上限以上とならないように構成することで、レンズ系全体が大きくなるのを回避して小型に形成でき、携帯性に優れた撮像装置に好適なものとすることができる。逆に、条件式(1)の下限以下とならないように構成することで、レンズ系全体での球面収差および像面湾曲の補正が容易となる。
【0048】
条件式(1)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(1−1)を満足することがより好ましい。
2.2<TL/Y<2.9 … (1−1)
【0049】
条件式(2)は、光学全長であるTLに対するレンズ部分の占める割合の好ましい範囲を規定したものである。特定の光学全長に抑えつつ、条件式(2)の上限以上とならないように構成することで、必要なバックフォーカスを確保することができる。また、必要なバックフォーカスを確保した上で、条件式(2)の上限以上とならないように構成することで、レンズ系が大型化するのを防止できる。逆に、特定の光学全長に抑えつつ、条件式(2)の下限以下とならないように構成することで、レンズ部分の占める割合が小さくならないように確保でき、条件式(2)の下限以下となった場合よりも多くのレンズを配置することが可能となり、レンズ系全体での球面収差および像面湾曲の補正が容易となる。
【0050】
条件式(2)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(2−1)を満足することがより好ましい。
0.55<Σd/TL<0.80 … (2−1)
【0051】
条件式(3)は、最大像高Yと全系の焦点距離fとの比の好ましい範囲を規定したものである。条件式(3)の上限以上とならないように構成することで、全系の焦点距離が短くなって像面湾曲の補正や倍率色収差の補正が困難となることを回避できる。条件式(3)の下限以下とならないように構成することで、全系の焦点距離が長くなるのを抑制でき、小型化に有利となり、薄型化された撮像装置に好適なものとすることができる。
【0052】
条件式(3)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(3−1)を満足することがより好ましい。
0.40<Y/f<0.82 … (3−1)
【0053】
条件式(4)は、光学全長TLと、開口絞りStの位置から像面Simまでの距離STとの比の好ましい範囲を規定したものである。条件式(4)の上限以上とならないように構成することで、開口絞りStよりも物体側に配置されたレンズのスペースを確保でき、適切なレンズ枚数で、レンズの曲率を無理に小さくすることなく構成できるため、諸収差を良好に補正することが可能となる。逆に、条件式(4)の下限以下とならないように構成することで、開口絞りStの位置が撮像素子5に近づきすぎて撮像素子5へ入射する軸外光線の入射角が大きくなりすぎるのを防止することができる。
【0054】
条件式(4)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
0.75<ST/TL<0.92 … (4−1)
【0055】
条件式(5)は、全系の焦点距離fと第1レンズ群G1の焦点距離
f1との比の好ましい範囲を規定したものである。条件式(5)の上限以上とならないように構成することで、第1レンズ群G1で発生する球面収差および歪曲収差の補正が容易となる。逆に、条件式(5)の下限以下とならないように構成することで、第1レンズ群G1の焦点距離が長くなって光学全長が大きくなるのを回避でき、小型に構成できる
。
【0056】
条件式(5)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(5−1)を満足することがより好ましい。
0.8<f/f1<1.5 … (5−1)
【0057】
条件式(6)は、第1レンズ群G1に配置された1枚の正レンズの屈折率の好ましい範囲を規定したものである。条件式(6)の下限以下とならないように材料を選択することで、ペッツバール和のコントロールが容易となり、像面湾曲の補正が容易となる。仮に、条件式(6)の下限以下となると、ペッツバール和のコントロールが困難となり、像面湾曲の補正が困難となり、これを回避しようとすると、光学全長を長くする必要が生じるが、条件式(6)の下限以下とならないように構成することで、そのような事態を回避できる。
【0058】
条件式(6)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(6−1)を満足することがより好ましい。
Nd1p>1.73 … (6−1)
【0059】
条件式(7)は、第1レンズ群G1に配置された1枚の正レンズのアッベ数の好ましい範囲を規定したものである。条件式(7)の範囲内となるように材料を選択することで、色収差、特に軸上色収差の補正が容易となる。
【0060】
条件式(7)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(7−1)を満足することがより好ましい。
33<νd1p<55 … (7−1)
【0061】
第1レンズ群G1に含まれるレンズのうち、1枚の正レンズが条件式(6)、(7)を同時に満足することで、像面湾曲および色収差、特に軸上色収差の補正が容易となる。条件式(6)、(7)を満足する第1レンズ群G1の1枚の正レンズは、条件式(6−1)、(7−1)の少なくとも一方を満足することがより好ましい。
【0062】
条件式(8)は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の合成焦点距離f12と、全系の焦点距離fとの比の好ましい範囲を規定したものである。条件式(8)の上限以上とならないように構成することで、光学全長が長くなるのを抑制でき、小型化に有利となる。条件式(8)の下限以下とならないように構成することで、像面湾曲の補正が容易となる。
【0063】
なお、フォーカス調整を第1レンズ群G1および第2レンズ群G2のみを一体的に移動させるフロントフォーカス方式で行う場合は、条件式(8)はフォーカス群の焦点距離と全系の焦点距離fとの比の好ましい範囲を規定したものとなる。このようなフロントフォーカス方式を採用する場合は、条件式(8)の上限以上とならないように構成することで、フォーカス調整時のレンズ群の移動量を抑えることができ、レンズ系の小型化に有利となり、条件式(8)の下限以下とならないように構成することで、フォーカス調整時の収差変動を抑えることができる。
【0064】
条件式(8)に関する上記効果をより顕著なものとするために、下記条件式(8−1)を満足することがより好ましい。
0.95<f12/f<1.4 … (8−1)
【0065】
上述した好ましい構成は、任意の組合せが可能であり、撮像レンズに要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。好ましい構成を適宜採用することで、より良好な光学性能やより高い仕様に対応可能な光学系を実現することができる。
【0066】
次に、本発明の撮像レンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1の撮像レンズのレンズ断面図は
図1に示したものである。
図1の図示方法、
図1に示す構成例におけるレンズ群および各レンズの詳細な説明は上述した通りであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0067】
表1、表2にそれぞれ実施例1の撮像レンズの基本レンズデータ、非球面係数を示す。表1の枠上に記載されているfは全系の焦点距離、BFはバックフォーカス(空気換算長)、2ωは全画角、Fno.はFナンバーであり、いずれもd線に関するものである。
【0068】
表1において、Siの欄には最も物体側の構成要素の物体側の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するように構成要素に面番号を付したときのi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示す。Riの欄にはi番目の面の曲率半径を示し、Diの欄はi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。Ndjの欄には最も物体側の構成要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の構成要素のd線(波長587.56nm)に対する屈折率を示し、νdjの欄にはj番目の構成要素のd線に対するアッベ数を示している。
【0069】
なお、表1には開口絞りStと光学部材PPも含めて示しており、開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。なお、曲率半径の符号は、物体側に凸を向けた形状の場合を正とし、像側に凸を向けた形状の場合を負としている。
【0070】
表1の面番号に*印が付いた面は非球面であり、表1の非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を示している。表2にこれら非球面の非球面係数を示す。表2のSiの欄は非球面の面番号を示している。表2の非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は「×10
−n」を意味する。非球面係数は、下式で表される非球面式における各係数K、Am(m=3、4、5、…20)の値である。
【0071】
Zd=C・h
2/{1+(1−K・C
2・h
2)
1/2}+ΣAm・h
m
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率
K、Am:非球面係数(m=3、4、5、…20)
【0072】
以下に示す各表では、角度の単位には度を用い、長さの単位にはmmを用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることも可能である。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0075】
図6(A)〜
図6(D)にそれぞれ、実施例1の撮像レンズの無限遠物体に合焦した状態における球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差(倍率の色収差)の各収差図を示す。球面収差の図のFno.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。各収差図には、d線(587.56nm)を基準波長とした収差を示すが、球面収差図には、C線(波長656.27nm)、g線(波長435.84nm)についての収差も示し、倍率色収差図ではC線、g線についての収差を示している。非点収差図ではサジタル方向については実線で、タンジェンシャル方向については点線で示している。
【0076】
上記の実施例1のデータに関する図示方法、各表中の記号、意味、記載方法は、特に断りがない限り以下の実施例のものについても同様である。
【0077】
[実施例2]
実施例2の撮像レンズのレンズ断面図は
図2に示したものである。表3、表4にそれぞれ実施例2の撮像レンズの基本レンズデータ、非球面係数を示す。
図7(A)〜
図7(D)に実施例2の撮像レンズの各収差図を示す。
【0080】
[実施例3]
実施例3の撮像レンズのレンズ断面図は
図3に示したものである。表5、表6にそれぞれ実施例3の撮像レンズの基本レンズデータ、非球面係数を示す。
図8(A)〜
図8(D)に実施例3の撮像レンズの各収差図を示す。
【0083】
[実施例4]
実施例4の撮像レンズのレンズ断面図は
図4に示したものである。表7、表8に実施例4の撮像レンズの基本レンズデータ、非球面係数を示す。
図9(A)〜
図9(D)に実施例4の撮像レンズの各収差図を示す。
【0086】
[実施例5]
実施例5の撮像レンズのレンズ断面図は
図5に示したものである。表9、表
10に実施例5撮像レンズの基本レンズデータ、非球面係数を示す。図
10(A)〜図
10(D)に実施例5撮像レンズの各収差図を示す。
【0089】
表11に上記実施例1〜5の撮像レンズの条件式(
0)〜(8)の対応値と、条件式に関連する値を示す。表11に示す値はd線に関するものである。
【0091】
以上のデータからわかるように、実施例1〜5の撮像レンズは、全系が7枚のレンズからなり小型かつ安価に構成され、Fナンバーが2.88であり、諸収差が良好に補正されて大型の撮像素子に対応可能な高い光学性能を有する。
【0092】
次に、本発明の実施形態にかかる撮像装置について説明する。
図11に、本発明の一実施形態にかかるカメラの斜視形状を示す。ここに示すカメラ10は、コンパクトデジタルカメラであり、カメラボディ11の正面および内部には本発明の実施形態にかかる撮像レンズ12が設けられ、カメラボディ11の正面には被写体に閃光を発光するための閃光発光装置13が設けられ、カメラボディ11の上面にはシャッターボタン15と、電源ボタン16とが設けられ、カメラボディ11の内部には撮像素子17が設けられている。撮像素子17は、小型の広角レンズ12により形成される光学像を撮像して電気信号に変換するものであり、例えば、CCDやCMOS等により構成される。
【0093】
上述したように、本発明の実施形態にかかる撮像レンズ12は十分な小型化が実現されているため、カメラ10は、沈胴式を採用しなくても携帯時と撮影時の両方においてコンパクトなカメラとすることができる。あるいは、沈胴式を採用した場合には、従来の沈胴式のカメラよりもさらに小型で携帯性の高いカメラとすることができる。また、本発明の実施形態にかかる撮像レンズ12が適用されたこのカメラ10は、高画質で撮影可能なものとなる。
【0094】
次に、本発明の撮像装置の別の実施形態について、
図12A、
図12Bを参照して説明する。
図12A、
図12Bに斜視形状を示すカメラ30は、交換レンズ20が取り外し自在に装着される、レフレックスファインダーを持たない一眼形式のデジタルスチルカメラであり、
図12Aはこのカメラ30を前側から見た外観を示し、
図12Bはこのカメラ30を背面側から見た外観を示している。
【0095】
このカメラ30はカメラボディ31を備え、その上面にはシャッターボタン32と電源ボタン33とが設けられている。またカメラボディ31の背面には、操作部34および35と表示部36とが設けられている。表示部36は、撮像された画像や、撮像される前の画角内にある画像を表示するためのものである。
【0096】
カメラボディ31の前面中央部には、撮影対象からの光が入射する撮影開口が設けられ、その撮影開口に対応する位置にマウント37が設けられ、このマウント37を介して交換レンズ20がカメラボディ31に装着されるようになっている。交換レンズ20は、本発明の実施形態にかかる撮像レンズ1を鏡筒内に収納したものである。
【0097】
そしてカメラボディ31内には、交換レンズ20によって形成された被写体像を受け、それに応じた撮像信号を出力するCCD等の撮像素子(図示せず)、その撮像素子から出力された撮像信号を処理して画像を生成する信号処理回路、およびその生成された画像を記録するための記録媒体等が設けられている。このカメラ30では、シャッターボタン32を押すことにより1フレーム分の静止画の撮影がなされ、この撮影で得られた画像データが上記記録媒体に記録される。
【0098】
このようなカメラ30に用いられる交換レンズ20に、本発明の実施形態にかかる撮像レンズを適用することにより、このカメラ30はレンズ装着状態において十分小型で、また高画質で撮影可能なものとなる。
【0099】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0100】
また、撮像装置の実施形態では、コンパクトデジタルカメラとレフレックスファインダーを持たない一眼形式のデジタルカメラに適用した例について図を示して説明したが、本発明はこの用途に限定されるものではなく、例えば、一眼レフ形式のカメラや、フィルムカメラ、ビデオカメラ等に適用することも可能である。