特許第6042772号(P6042772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042772
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】金属部材に対する水素侵入特性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/67 20060101AFI20161206BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01N21/67 C
   G01N27/62 V
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-105847(P2013-105847)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-228294(P2014-228294A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】東 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤本 憲宏
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−333614(JP,A)
【文献】 特開平04−076452(JP,A)
【文献】 特開2012−068247(JP,A)
【文献】 特開2014−134411(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/111291(WO,A1)
【文献】 特開2001−264240(JP,A)
【文献】 特開平09−281079(JP,A)
【文献】 米国特許第07846272(US,B1)
【文献】 Brady M.P,Wet oxidation of stainless steels:New insights into hydrogen ingress,Corros Sci,2011年 5月,Vol.53/No.5,Page.1633-1638
【文献】 Takeda Masatoshi,Hydrogen distribution in titanium materials with low outgassing property,Vacuum,2009年 9月18日,Vol.84/No.2,Page.352-356
【文献】 園部勝 他,Al−1wt%Mg合金表面層における水素同位体の挙動,富山大学トリチウム科学センター研究報告8,日本,1988年,27−40ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/74
G01N 27/00−27/49
G01N 33/00−33/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする金属部材に対して水素を蓄積する水素蓄積工程と、
水素を蓄積した前記金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定する分布測定工程と
測定された水素の分布より前記金属部材における表面からの水素の拡散深さを決定する深さ決定工程と、
前記金属部材の表面に形成されている酸化膜の厚さと前記拡散深さとの比較により前記金属部材における水素の侵入特性を評価する評価工程と
を備えることを特徴とする金属部材に対する水素侵入特性評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属部材に対する水素侵入特性評価方法において、
前記分布測定工程は、グロー放電発光分析法により、水素を蓄積した前記金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定することを特徴する金属部材に対する水素侵入特性評価方法。
【請求項3】
請求項1記載の金属部材に対する水素侵入特性評価方法において、
前記分布測定工程は、グロー放電質量分析法により、水素を蓄積した前記金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定することを特徴する金属部材に対する水素侵入特性評価方法。
【請求項4】
請求項1記載の金属部材に対する水素侵入特性評価方法において、
前記分布測定工程は、二次イオン質量分析法により、水素を蓄積した前記金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定することを特徴する金属部材に対する水素侵入特性評価方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の金属部材に対する水素侵入特性評価方法において、
前記水素蓄積工程は、電気化学的方法により前記金属部材に対して水素を蓄積することを特徴する金属部材に対する水素侵入特性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属から構成された金属部材に対する水素侵入特性を評価する金属部材に対する水素侵入特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プレストレスコンクリート構造物や自動車などの部材として、高強度の炭素鋼が広く用いられている。このような高強度鋼など応力が加わった状態における金属部材に水素が侵入すると、元来の金属の特性である靭性が低下する水素脆化現象が生じることがある。水素脆化が起きた金属部材では、設計上の所定の強度が損なわれるため、金属部材自体の破壊、さらには金属部材から構成される構造物の破壊につながる恐れがある。この水素脆化現象は、炭素鋼などの鉄鋼の他、チタンおよびアルミニウムなどの金属でも生じ得る。
【0003】
一方、水素脆化を起こしにくい金属部材には、例えば、鉄を主成分とする金属部材においてはステンレスSUS316Lがある。しかしながら、この材料は、一般の炭素鋼に比べて高価であり、生産性などの点からも炭素鋼の代替にはなり得ない。このため、安価な炭素鋼の中でも水素脆化に対する耐性が高い、言い換えると、水素脆化感受性が低い鋼材の種類を選定する必要がある。または、安価な炭素鋼を水素脆化が問題とならない使用条件で用いる必要がある。これを実現するためには、水素脆化感受性を評価することが重要となる。
【0004】
水素脆化感受性の評価のひとつに、水素侵入量の評価がある。水素侵入量は、例えば、幾種類かの金属部材について,所定の大きさに加工し,加工された各々の金属部材を溶液中に浸漬し、自発的にもしくは電気化学的に金属部材中に水素を侵入させる試験を行い、水素侵入量を測定して評価するものである。この結果、ある水素侵入試験条件で、各々の金属部材における水素侵入量を把握できるので、引張試験などの別の力学的試験を用いて、水素侵入量における各々の金属部材での力学的特性を把握すれば、水素脆化感受性を評価できる。
【0005】
また、ある一種の鋼材についての水素脆化感受性の評価の場合であれば、例外を除き、一般には水素侵入量が多いほど、力学的特性は劣ることから、いくつかの使用環境を仮定したいくつかの実験条件において、水素侵入量が多い結果を与える実験条件に相当する使用環境の方が水素脆化は起き易いということが、力学的試験を行わなくても、推定することができる。この水素侵入量の測定に用いられる分析法としては、例えば、昇温脱離分析法がある(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】南雲 道彦 著、「水素脆性の基礎 水素の振る舞いと脆化機構」、株式会社 内田老鶴圃、第1版、55−67頁、2008年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、現在一般には、金属部材の水素侵入量の評価は、所定の大きさに加工した金属部材の全体を用いた分析によりなされている。この分析では、金属部材に対して侵入した水素の全体の量を把握しており、どの金属部材がどの程度の水素侵入の容易性を有しているかを把握することができる。実際に使用される金属部材の表面には、製造段階もしくは製造後の段階において、内部の金属組織に比較して薄い酸化膜が形成されているが、上述した金属部材の水素侵入量の評価では、加工時に、研磨などの方法によってあらかじめ酸化膜が除去されている。これは、金属部材の水素侵入量の評価は、内部の金属組織を対象として行われるためである。
【0008】
しかしながら、実際に使用されている状態における金属部材に対する水素の侵入特性を評価する場合、上述した酸化膜の影響を含めて、内部の金属組織への水素侵入の容易性を評価しなければならない。これに対し、昇温脱離分析法などの金属部材の全体を用いた分析では、上述したように酸化膜を除去して測定を行うため、酸化膜中に侵入した水素の量と、酸化膜の下の内部の金属組織に侵入した水素の量とを分離して評価することはできない。このように、従来の分析方法では、実際に使用されている状態における金属部材に対する水素の侵入特性を評価することは困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、実際に使用されている状態における鋼材などの金属部材に対する水素の侵入特性が評価できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る金属部材に対する水素侵入特性評価方法は、対象とする金属部材に対して水素を蓄積する水素蓄積工程と、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定する分布測定工程とを備える。
【0011】
上記金属部材に対する水素侵入特性評価方法において、測定された水素の分布より金属部材における表面からの水素の拡散深さを決定する深さ決定工程と、金属部材の表面に形成されている酸化膜の厚さと拡散深さとの比較により金属部材における水素の侵入特性を評価する評価工程とを備える。
【0012】
上記金属部材に対する水素侵入特性評価方法において、分布測定工程は、グロー放電発光分析法により、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定すればよい。また、分布測定工程は、グロー放電質量分析法により、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定してもよい。また、分布測定工程は、二次イオン質量分析法により、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定してもよい。なお、水素蓄積工程は、電気化学的方法により金属部材に対して水素を蓄積すればよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したことにより、本発明によれば、実際に使用されている状態における鋼材などの金属部材に対する水素の侵入特性が評価できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態における金属部材に対する水素侵入特性評価方法を説明するフローチャートである。
図2図2は、電気化学的方法により金属部材に対して水素を侵入させる装置の構成を示す構成図である。
図3図3は、ある鋼材Aに対する水素チャージ工程による水素の深さ方向の濃度分布の測定結果の1例について示す特性図である。
図4図4は、ある鋼材Bに対する水素チャージ工程による水素の深さ方向の濃度分布の測定結果の1例について示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における金属部材に対する水素侵入特性評価方法を説明するフローチャートである。この金属部材に対する水素侵入特性評価方法は、まず、ステップS101で、対象とする金属部材に対して水素を蓄積する(侵入させる)。例えば、電気化学的方法により金属部材に対して水素を蓄積することができる。また、高圧水素雰囲気に金属部材を載置することで、金属部材に対して水素を侵入させるようにしても良い。
【0016】
次に、ステップS102で、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布(濃度分布)を測定する。グロー放電発光分析法,グロー放電質量分析法,または、二次イオン質量分析法により、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定することができる。
【0017】
このように、新たに水素が蓄積された状態で、金属部材の酸化膜および金属組織における深さ方向の水素の分布を測定しているので、酸化膜を通しての金属組織への水素の侵入特性を把握することができ、次に示すことにより、金属部材における水素の侵入特性が評価できるようになる。
【0018】
ステップS103で、上述したように測定された水素の分布より金属部材における表面からの水素の拡散深さを決定する。次に、ステップS104で、金属部材の表面に形成されている酸化膜の厚さと拡散深さとの比較により金属部材における水素の侵入特性を評価する。ここで、酸化膜の厚さは、水素の分布測定において酸素の分布(濃度分布)も同時に測定することで決定できる。このような深さ方向の水素の分布測定技術では、よく知られているように、水素の分布と同時に、酸素の深さ方向の分布が測定可能である。この酸素の分布測定の結果より、一定の基準を用いて酸化膜の厚さの情報も得られる。なお、酸化膜の厚さについての情報は、他の分析方法によって求めることができる。
【0019】
上述したように、金属部材における酸化膜および金属組織における水素の分布を測定することで、酸化膜を通した水素の侵入のし易さに対応して金属組織にまで拡散する状態が把握できるようになる。これにより、例えば、ある鋼材では、一部の水素が酸化膜を通して下の金属組織にまで侵入しているものと判断できる。このように酸化膜を通した水素の拡散状態が把握できれば、実際に使用されている状態における水素の侵入特性が把握できるので、例えば、この鋼材は水素がより侵入し易いものと評価できる。
【0020】
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0021】
[実施例]
まず、対象とする金属部材に対して水素を侵入させる(蓄積する)ための装置について図2を用いて説明する。図2は、電気化学的方法により金属部材に対して水素を侵入させる装置の構成を示す構成図である。
【0022】
この装置は、容器201に収容したアルカリ性水溶液202と、ガルバノポテンショスタット203とを備える。ガルバノポテンショスタット203には、作用極配線204,対極配線205,参照極配線206が接続している。対極配線205には対極207が接続し、参照極配線206には参照極208が接続している。また、作用極配線204には、対象となる金属部材の試料片211が接続される。これら接続されている試料片211,対極207,参照極208は、アルカリ性水溶液202に浸漬されて用いられる。
【0023】
本実施例では、まず、金属部材として炭素鋼製の鋼棒を対象とし、この鋼棒の表面付近から採取した部材を平板状に成形して試料片211としている。また、試料片211においては、酸化膜(自然酸化膜)が形成されている表面領域以外は、封止膜(不図示)を形成し、アルカリ性水溶液202に接触しないようにしている。また、本実施例では、実際に使用する環境としてコンクリート中の鋼材を想定し、アルカリ性水溶液202を用いた。
【0024】
アルカリ性水溶液202は、水酸化ナトリウム0.1M水溶液(pH13相当)とした。なお、このpHは、8〜14の間で、実験者または実験を指示する者が意図する範囲の条件としてよい。また、本実施例では、水素ガスの発生を抑制し、水素の侵入を促進する触媒としてチオシアン酸アンモニウムを1重量パーセントとなるようにアルカリ性水溶液202添加している。実験者または実験を指示する者が意図する範囲の条件で、水素の侵入を促進する他の薬品を添加してもよい。
【0025】
また、本実施例では、水素の侵入を促進するため、作用極である試料片211と参照極208としての水銀−酸化水銀電極との間の電位を、マイナス1100mVに保持した。この値は、実験者または実験を指示する者が意図する範囲の条件で、水素の侵入を促進する電位としてもよい。また、水銀-酸化水銀電極以外の参照極を用いてもよい。例えば、参照極208として銀塩化銀電極を用い、試料片211と参照極208との間の電位をマイナス500mVからマイナス1500mV程度の間の一定の電位としてもよい。また、本実施例では、ガルバノポテンショスタット203を用いて電位を一定としたが、実験者または実験を指示する者が意図する範囲の条件で、同様のガルバノポテンショスタットを用いて電流を一定としてもよい。
【0026】
本実施例では、電位を保持した状態での浸漬時間を50時間とした。なお、この時間は、実験者または実験を指示する者が意図する範囲の条件で定めてもよい。
【0027】
以上の水素蓄積条件は、異なる鋼材で構成される部材を用いた複数の試料片における水素の侵入特性を比較するのであれば、すべての試料片に対して一律の条件とする。また、ある一種の鋼材で構成される部材を用いた複数の試料片における水素の侵入特性を比較するのであれば、いくつかの使用環境を仮定したいくつかの実験条件を、実験者または実験を指示する者が意図する範囲で設定すればよい。
【0028】
図3は、ある鋼材Aに対する水素チャージ工程による水素の深さ方向の濃度分布の測定結果の1例について示す特性図である。深さ方向元素分析法は、グロー放電発光分析法である。酸素の深さ方向の濃度分布も併せて示してある。図3において、実線が水素の深さ方向の濃度分布を占めし、点線が酸素の深さ方向の濃度分布を示している。
【0029】
グロー放電発光分析法により与えられる横軸はスパッタ時間であるが、同等の鋼材の標準試料を用いる方法によって、横軸をスパッタ時間から相当する深さに換算できる。また、グロー放電発光分析法により与えられる縦軸は、元素ごとの固有の波長の発光強度であるが、水素などの対象元素が既知量含まれた標準試料を用いる方法によって、縦軸を発光強度から相当する濃度に換算できる。また、グロー放電質量分析法や二次イオン質量分析法で与えられる縦軸は、元素ごとの固有の質量のイオン強度であるが、水素などの対象元素が既知量含まれた標準試料を用いる方法によって、縦軸をイオン強度から相当する濃度に換算できる。
【0030】
試料片211の表面に形成されている酸化膜の厚さについての情報は、他の分析方法によって求めてもよいが、本実施例では、測定された図3の酸素の深さ方向の濃度分布において、濃度0.01重量パーセントを基準として、この基準以上の濃度を示す表面からの深さを、便宜上、金属部材の侵入特性に影響を与える酸化膜の実質的な厚さと定める。図3の点線の変化から分かるように、実施例においては、鋼材Aによる試料片の酸化膜の実質的な厚さはおおむね4μmである。同様に、図3の水素の深さ方向の濃度分布において、濃度0.0001重量パーセントを基準として、この基準以上の濃度を示す表面からの深さを、便宜上、水素の拡散深さと定める。図3の実線の変化より、水素の拡散深さはおおむね5.5μmである。
【0031】
鋼材によって、または、試料片として採取した鋼材の部位によって、酸化膜の厚さは異なるため、酸化膜の実質的な厚さは試料片によって異なる。よって、酸化膜の実質的な厚さと水素の拡散深さとの間の相対的関係を用いて、酸化膜を通しての金属組織への水素の侵入特性を評価する。本実施例では、水素の拡散深さが、酸化膜の実質的な厚さを超えても、酸化膜の実質的な厚さの2倍までにとどまれば、すなわち、水素の拡散深さの酸化膜の実質的な厚さに対する比率が2以下であれば、酸化膜の影響により、金属組織への水素の侵入は小さいと評価する。図3に示す結果では、水素の拡散深さの酸化膜の実質的な厚さに対する比率が2以下であるので、金属組織への水素の侵入は小さいと評価する。この比率は、実験者または実験を指示する者が意図する範囲の条件で設定してもよい。
【0032】
図4は、ある鋼材Bに対する水素チャージ工程による水素の深さ方向の濃度分布の測定結果の1例について示す特性図である。深さ方向元素分析法は、グロー放電発光分析法である。酸素の深さ方向の濃度分布も併せて示してある。図4において、実線が水素の深さ方向の濃度分布を示し、点線が酸素の深さ方向の濃度分布を示している。
【0033】
図3を用いて説明で用いた取り決めに従えば、図4に示す結果は、鋼材Bによる試料片の酸化膜の実質的な厚さはおおむね2μmであることを示している。同様に、図4に示す結果は、水素の拡散深さは10μm以上であることを示している。図4の結果では、水素の拡散深さの酸化膜の実質的な厚さに対する比率は5以上であり、2以下ではないので、金属組織への水素の侵入は大きいと評価する。
【0034】
このように、本発明により、酸化膜を通した水素の拡散状態が把握できる。このため、鋼材Aと鋼材Bとについて、実際に使用されている状態における水素の侵入特性を把握し、比較できる。この例では、鋼材Bは鋼材Aよりも、水素がより侵入し易いものと評価できる。
【0035】
以上に説明したように、本発明によれば、対象とする金属部材に対して水素を蓄積した後、水素を蓄積した金属部材の表面から深さ方向の水素の分布を測定するようにした。また、測定された水素の分布より金属部材における表面からの水素の拡散深さを決定し、酸化膜の厚さと拡散深さとの比較により金属部材における水素の侵入特性を評価するようにした。この結果、実際に使用されている状態における鋼材などの金属部材に対する水素の侵入特性が評価できるようになる。
【0036】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述した実施例では、金属部材として鋼材を対象としたが、これに限るものではなく、チタンおよびアルミニウムなどによる金属部材であっても同様である。
【符号の説明】
【0037】
201…容器、202…アルカリ性水溶液、203…ガルバノポテンショスタット、204…作用極配線、205…対極配線、206…参照極配線、207…対極、208…参照極、211…試料片。
図1
図2
図3
図4