特許第6042855号(P6042855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6042855放射線画像撮影装置、放射線画像撮影方法、及び放射線画像撮影プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6042855
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】放射線画像撮影装置、放射線画像撮影方法、及び放射線画像撮影プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/06 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61B6/06 330
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-195704(P2014-195704)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-192846(P2015-192846A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-70545(P2014-70545)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】榎本 淳
(72)【発明者】
【氏名】位田 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】川村 隆浩
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0046822(US,A1)
【文献】 特開平9−149895(JP,A)
【文献】 特開2003−260053(JP,A)
【文献】 特開2005−109908(JP,A)
【文献】 Christiaan Fivez et al.,Multi-resolution contrast amplification indigital radiography with compensation for scattered radiation,ImageProcessing,1996年 9月16日,vol.1,pp.339-342
【文献】 高橋港一 他,医用X線画像診断に関するグリッド型散乱フィルタ特性のFDTD法による並列計算解析,電気学会論文誌. C, 電子・情報・システム部門誌,電気学会,2007年12月 1日,Vol.127, No,12,pp.1973-1981
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像に対し、前記被写体を透過した放射線に含まれる散乱線の影響を除去する散乱線除去処理を行う放射線画像撮影装置であって、
前記放射線画像の撮影条件を取得する取得部と、
前記取得部により取得された撮影条件に基づいて、前記放射線画像の撮影において前記散乱線を除去するために仮想的に使用したものとするグリッドの特性であり、散乱線の除去量を設定するための仮想グリッド特性を導出する導出部と、
前記導出部により導出された仮想グリッド特性に応じた前記除去量で、前記放射線画像に散乱線除去処理を実行する実行部と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記撮影条件と、当該撮影条件に応じた仮想グリッド特性と、が対応付けられて記憶された記憶部をさらに備え、
前記導出部は、前記取得部により取得された撮影条件に対応する前記仮想グリッド特性を前記記憶部から読み出すことにより、前記仮想グリッド特性を導出する、
請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記導出部が、前記取得された撮影条件に加えて前記被写体の体格に関する情報も使用して仮想グリッド特性を導出する、
請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記仮想グリッド特性は、前記グリッドのグリッド比である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記取得部は、撮影条件の実績値を取得する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記導出部は、さらに前記被写体の体厚の推定値に基づいて前記仮想グリッド特性を導出する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記放射線画像撮影装置は、エネルギーが異なる放射線を前記被写体に照射することにより、第1放射線画像及び第2放射線画像を撮影し、
前記導出部は、前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像の各々に対する仮想グリッド特性を導出し、
前記実行部は、前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像の各々に散乱線除去処理を実行し、
前記実行部により、前記散乱線除去処理が実行された前記第1放射線画像及び前記第2放射線画像の各画素同士を対応させて、重みを付けた差分計算処理を行い、差分画像を生成するエネルギーサブトラクション処理部を備えた、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記仮想グリッド特性は、前記グリッドのグリッド比であり、前記被写体に照射された放射線のエネルギーが高い方が、グリッド比が高い、
請求項7に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像に対し、前記被写体を透過した放射線に含まれる散乱線の影響を除去する散乱線除去処理を行う放射線画像撮影方法であって、
前記放射線画像の撮影条件を取得し、
取得された撮影条件に基づいて、前記放射線画像の撮影において前記散乱線を除去するために仮想的に使用したものとするグリッドの特性であり、散乱線の除去量を設定するための仮想グリッド特性を導出し、
導出された仮想グリッド特性に応じた前記除去量で、前記放射線画像に散乱線除去処理を実行する、
ことを含む処理を実行させる放射線画像撮影方法。
【請求項10】
被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像に対し、前記被写体を透過した放射線に含まれる散乱線の影響を除去する散乱線除去処理を行う放射線画像撮影方法をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラムであって、
前記放射線画像の撮影条件を取得し、
取得された撮影条件に基づいて、前記放射線画像の撮影において前記散乱線を除去するために仮想的に使用したものとするグリッドの特性であり、散乱線の除去量を設定するための仮想グリッド特性を導出し、
導出された仮想グリッド特性に応じた前記除去量で、前記放射線画像に散乱線除去処理を実行する、
ことを含む処理を実行させる放射線画像撮影プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影方法、及び放射線画像撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体を透過した放射線により被写体の放射線画像を撮影する場合、特に被写体の厚さが厚い場合、被写体内において放射線が散乱し、この散乱放射線(以下、「散乱線」という)により、撮影される放射線画像のコントラストが低下するという場合がある。このため、放射線画像の撮影における、散乱線の影響を軽減するために、被写体と放射線検出器との間に散乱線除去用のグリッド(以下「グリッド」という)を配置して撮影を行うことがある。グリッドを用いて撮影を行うことによって被写体により散乱された放射線が放射線検出器に到達しにくくなるため、放射線画像のコントラストを向上させることができる(例えば、特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−82111号公報
【特許文献2】特開平10−262961号公報
【特許文献3】特開2004−329783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グリッド処理を用いた放射線画像の撮影を行う場合、撮影条件等に応じて、適切な特性のグリッドが用いられる。そのため、使用するグリッドの特性の設定を行うことにより、技師や医師等のユーザの作業負担が増加する場合がある。
【0005】
一方、従来技術のように、グリッドを用いた撮影を行うと、被写体像とともにグリッドのピッチに対応した細かな縞模様(モアレ)が放射線画像に含まれてしまうため、撮影された放射線画像が見難いものとなってしまう場合がある。このような縞模様を除去する画像処理も周知であるが(例えば、特開2013−172881号公報参照)、処理時間が増大する場合がある。
【0006】
そこで、放射線検出器との間にグリッドを設けずに撮影された放射線画像に対して、画像処理により、散乱線の影響を除去する技術がある。さらに、使用を想定するグリッドの特性を指定し、散乱線の除去量をコントロールすることが可能である。以下、画像処理によりグリッドを設けた場合と同様に、使用を想定したグリッドの特性に基づいて、散乱線の影響を除去する処理を、仮想グリッド処理という。
【0007】
仮想グリッド処理を用いる撮影を行う場合も、グリッドを用いて撮影を行う場合と同様に、撮影条件等に応じて、適切な使用を想定する仮想グリッド特性を設定するため、ユーザの作業負担が増加する。
【0008】
本発明は、撮影条件の設定に係るユーザの作業負担の軽減を図ることができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影方法、及び放射線画像撮影プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線画像撮影装置は、被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像に対し、被写体を透過した放射線に含まれる散乱線の影響を除去する散乱線除去処理を行う放射線画像撮影装置であって、放射線画像の撮影条件を取得する取得部と、取得部により取得された撮影条件に基づいて、放射線画像の撮影において散乱線を除去するために仮想的に使用したものとするグリッドの特性であり、散乱線の除去量を設定するための仮想グリッド特性を導出する導出部と、導出部により導出された仮想グリッド特性に応じた除去量で、放射線画像に散乱線除去処理を実行する実行部と、を備える。
【0010】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、撮影条件と、撮影条件に応じた仮想グリッド特性と、が対応付けられて記憶された記憶部をさらに備え、導出部は、取得部により取得された撮影条件に対応する仮想グリッド特性を記憶部から読み出すことにより、仮想グリッド特性を導出してもよい。
【0011】
また、本発明の放射線画像撮影装置は導出部が、取得された撮影条件に加えて被写体の体格に関する情報も使用して仮想グリッド特性を導出してもよい。
【0012】
また、本発明の放射線画像撮影装置の仮想グリッド特性は、グリッドのグリッド比であってもよい。
【0013】
また、本発明の放射線画像撮影装置の取得部は、撮影条件の実績値を取得してもよい。
【0014】
また、本発明の放射線画像撮影装置の導出部は、さらに被写体の体厚の推定値に基づいて仮想グリッド特性を導出してもよい。
【0015】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、エネルギーが異なる放射線を被写体に照射することにより、第1放射線画像及び第2放射線画像を撮影し、導出部は、第1放射線画像及び第2放射線画像の各々に対する仮想グリッド特性を導出し、実行部は、第1放射線画像及び第2放射線画像の各々に散乱線除去処理を実行し、部により、散乱線除去処理が実行された第1放射線画像及び第2放射線画像の各画素同士を対応させて、重みを付けた差分計算処理を行い、差分画像を生成するエネルギーサブトラクション処理部を備えてもよい。
【0016】
また、本発明の放射線画像撮影装置の仮想グリッド特性は、グリッドのグリッド比であり、被写体に照射された放射線のエネルギーが高い方が、グリッド比が高くしてもよい。
【0017】
本発明の放射線画像撮影方法は、被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像に対し、被写体を透過した放射線に含まれる散乱線の影響を除去する散乱線除去処理を行う放射線画像撮影方法であって、放射線画像の撮影条件を取得し、取得された撮影条件に基づいて、放射線画像の撮影において散乱線を除去するために仮想的に使用したものとするグリッドの特性であり、散乱線の除去量を設定するための仮想グリッド特性を導出し、導出された仮想グリッド特性に応じた除去量で、放射線画像に散乱線除去処理を実行する、ことを含む処理を実行させる。
【0018】
本発明の放射線画像撮影プログラムは、被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像に対し、被写体を透過した放射線に含まれる散乱線の影響を除去する散乱線除去処理を行う放射線画像撮影方法をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラムであって、放射線画像の撮影条件を取得し、取得された撮影条件に基づいて、放射線画像の撮影において散乱線を除去するために仮想的に使用したものとするグリッドの特性であり、散乱線の除去量を設定するための仮想グリッド特性を導出し、導出された仮想グリッド特性に応じた除去量で、放射線画像に散乱線除去処理を実行する、ことを含む処理を実行させるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、撮影条件の設定に係るユーザの作業負担の軽減を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態の放射線画像撮影装置の構成の一例を示す構成図である。
図2】仮想グリッド特性と、被写体情報と、撮影条件との対応関係を表すテーブルの具体的一例を示す図である。
図3】第1の実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。
図4】第2の実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。
図5】第3の実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。
図6】エネルギーと散乱線の関係の一例を説明するための説明図である。
図7】エネルギー分布の異なる2種類の放射線Xのスペクトル分布の一例を説明するための説明図である。
図8】高エネルギー及び低エネルギーの放射線Xのグリッド比と減弱係数との対応関係の一例を説明するための説明図である。
図9】第4の実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。
図10】各実施の形態の放射線画像撮影装置を回診車に適用し、被写体の病室に配置した状態の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0022】
[第1の実施の形態]
【0023】
本実施の形態の放射線画像撮影装置は、放射線検出器と被写体との間にグリッドを配置せず、撮影された放射線画像に対して、画像処理により散乱線の影響を除去する仮想グリッド処理を行う機能を有する。
【0024】
まず、本実施の形態の放射線画像撮影装置の構成について説明する。図1には、本実施の形態の放射線画像撮影装置の構成の一例を示す。図1に示すように、本実施の形態の放射線画像撮影装置10は、画像処理装置12、U/I(User Interface)部13、制御装置14、及び撮影装置16を備える。
【0025】
撮影装置16は、放射線源18及び放射線検出器20を備える。放射線源18は、線源制御部22の制御に基づいて、被写体19に放射線Xを照射する機能を有する。放射線検出器20は、放射線源18から照射され、被写体19を透過した放射線Xを検出して被写体19の放射線画像を出力する機能を有する。本実施の形態の放射検出器20は、可搬型の電子カセッテであり、いわゆるFPD(Flat Panel Detector)である。
【0026】
制御装置14は、線源制御部22及び検出器制御部24を備える。線源制御部22は、画像処理装置12により設定された撮影条件に従って放射線源18の駆動を制御する機能を有する。検出器制御部24は、放射線検出器20を制御し、放射線検出器20から出力された放射線画像を取得して、画像処理装置12に出力する機能を有する。
【0027】
画像処理装置12は、受付部26、導出部28、記憶部30、実行部32、及び取得部33を備える。また、U/I部13は、入力部34及び表示部36を備える。なお、画像処理装置12、U/I部13、及び制御装置14を含んだ装置の具体的一例としては、放射線画像撮影に関するコンソールが挙げられる(後述、図10参照)。
【0028】
入力部34は、ユーザが、放射線画像の撮影に関する指示を、画像処理装置12に対して行うためのものである。入力部34の具体例としては、キーボード、マウス、及びタッチパネル等が挙げられる。
【0029】
受付部26は、U/I部13の入力部34から放射線画像の撮影に対するユーザの指示を受け付ける機能を有する。なお、本実施の形態では、放射線技師や医師等、放射線画像撮影装置10を操作する者や放射線画像の撮影を行う者を「ユーザ」という。
【0030】
そのため、U/I部13は、入力部34に対してユーザが行った指示(操作)を検出する機能を有する。
【0031】
本実施の形態の受付部26は、LAN(Local Area Network)等の通信回線やネットワーク回線等を介して、RIS(Radiology Information System)等の外部のシステムから放射線画像の撮影に関するオーダ等の情報を取得する機能を有する。そのため、U/I部13は、ネットワークI/F(Interface)機能を有する。
【0032】
記憶部30は被写体19の被写体情報と、撮影条件と、仮想グリッド特性と、の対応関係をあらわすテーブルを記憶する機能を有する。また、本実施の形態の記憶部30は、仮想グリッド特性と、実行部32で仮想グリッド処理を行うための情報と、を対応付けたテーブルを記憶する機能を有する。なお、仮想グリッド処理を行うための情報としては、仮想グリッドについて散乱線透過率Ts、及び被写体19を透過して直接、放射線検出器20に照射される一次線の透過率である一次線透過率Tpを含む。散乱線透過率Ts、及び一次線透過率Tpは0以上、1以下の間の値をとる。なお仮想グリッド特性は、本実施の形態に限定されず、例えば、グリッド密度(格子密度)、収束型か平行型か、収束型の場合の集束距離、及び中間物質の材料等を含んでいてもよい。
【0033】
記憶部30は、不揮発性の記憶部であればよく、具体例としては、HDD(Hard Disk Drive)等が挙げられる。図2には、被写体情報と、撮影条件と、仮想グリッド特性との対応関係を表すテーブルの具体的一例を示す。
【0034】
図2に示すように、本実施の形態では、開示の技術の被写体の体格に関する情報の一例である被写体情報とは、被写体19の主に、体格に関する情報であり、具体例として、年齢、体型、及び撮影部位を含む。体型(例えば、普通や太め等)により、放射線Xの散乱線の量が異なる。体型が太め、すなわち被写体19の厚み(照射方向の厚み)が大きい方が、散乱線が多くなる。また、撮影部位(例えば、胸部や腹部等)により、散乱線の分布が異なる。なお、被写体19の体格(体型)は、被写体19の身長及び体重から推定するようにしてもよい。また、被写体情報として、その他、被写体19の放射線画像上での位置や、被写体19の組成の分布等に関する情報を含んでいてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、撮影条件として、放射線源18の管電圧、及び被写体19に向けて照射される放射線Xの線量(管電流×照射時間)を用いている。なお、撮影条件はこれに限らず、放射線源18から放射線検出器20までの距離や、被写体19から放射線検出器20までの距離等を含んでいてもよい。
【0036】
また、仮想グリッド特性とは、撮影された放射線画像に対して、画像処理により散乱線の影響を除去する仮想グリッド処理を行うために使用が想定される、仮想的なグリッドの特性である。
【0037】
仮想グリッド特性として、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、グリッド比を用いている。一般に、グリッドは、放射線Xの吸収率が高い鉛の薄膜と、鉛薄膜間の中間物質(インタースペース)で放射線Xの吸収率が低い物質とが、例えば4.0本/mm程度の細かな格子密度で交互に配置されている。中間物質の材料としては、例えば、アルミニウム、紙、及び炭素繊維等が用いられている。グリッド比は、鉛と鉛間の距離(中間物質の厚さ)を「1」とした場合の、鉛の高さの比率で定義される。グリッド比が高いと、散乱線の減少に効果的であり、散乱線の除去量が多くなるため、一般的に、使用する放射線源18の管電圧が高い(放射線Xのエネルギーが高くなる)ほど、散乱線が増加するため、高いグリッド比が用いられる。
【0038】
取得部33は、撮影条件を取得する機能を有する。本実施の形態の画像処理装置12では、放射線画像の撮影の際に、実際に被写体19に照射された撮影条件の実績値を取得部33が取得する。実際の撮影においては、線源制御部22にセットされた撮影条件と、撮影条件の実績値とが異なる場合がある。例えば、放射線源18の管球の劣化により、線源制御部22にセット(設定)したよりも多い、または少ない線量が被写体19に照射される場合や、被写体19の体厚が大きい場合等は、撮影するユーザが当初セットされた撮影条件から調整することにより、実績値がセットされた撮影条件と異なる場合がある。取得部33による撮影条件の実績値の取得方法は、特に限定されない。例えば、線源制御部22が放射線源18等をモニタし、放射線Xを照射した場合の、放射線源18の管電圧や管電流を取得し、取得部33は、線源制御部22を介して撮影条件の実績値を取得するようにしてもよい。
【0039】
導出部28は、取得部33が取得した撮影条件に対応する仮想グリッド特性(グリッド比)を、記憶部30に記憶されている対応関係を表すテーブルに基づいて導出する機能を有する。また、導出部28は、撮影条件を制御装置14(線源制御部22)に対してセットする機能を有する。さらに、導出部28は、導出した仮想グリッド特性(グリッド比)に関する情報を表示部36に表示させる機能を有する。
【0040】
実行部32は、撮影装置16により撮影された放射線画像、より詳しくは、放射線検出器20が出力した放射線画像を検出器制御部24を介して取得し、取得した放射線画像に対して、仮想グリッド処理を行う機能を有する。実行部32により仮想グリッド処理が行われた放射線画像は、U/I部13の表示部36に表示される。表示部36は、放射線画像の撮影に関する情報や、撮影された放射線画像等が表示される機能を有する。表示部36の具体例としては、液晶等のディスプレイが挙げられる。
【0041】
実行部32で実行される散乱線を除去するための仮想グリッド処理の具体的一例について説明する。
【0042】
実行部32は、検出器制御部24を介して放射線検出器20から取得した放射線画像を解析することにより、散乱成分情報すなわち散乱線含有率分布を得る。本実施の形態の実行部32では、放射線画像の解析は、放射線画像の撮影における照射野情報、被写体情報、及び撮影条件に基づいて行う。なお、照射野情報とは、照射野絞りを用いて撮影を行った場合における、放射線画像に含まれる照射野の位置、及び大きさに関する照射野分布を表す情報である。
【0043】
照射野情報、被写体情報、及び撮影条件は、上述したように放射線画像に含まれる散乱線の分布を決める要因となっている。例えば、散乱線の大小は照射野の大きさにより左右され、被写体19の体厚が大きいほど散乱線は多くなり、被写体19と放射線検出器20との間に空気が存在すると散乱線が減少する。したがって、これらの情報を用いることにより、より正確に散乱線含有率分布を得ることができる。
【0044】
実行部32は、放射線画像内の被写体19の体厚分布T(x,y)から、下記の(1)及び(2)式に基づいて一次線像及び散乱線像を算出する。さらに、実行部32は、算出した一次線像及び散乱線像から(3)式に基づいて、散乱線含有率分布S(x,y)を算出する。なお、散乱線含有率分布S(x,y)は0以上、1以下の間の値をとる。
【0045】
Ip(x,y) = Io(x,y)×exp(-μ×T(x,y)) ・・・(1)
【0046】
Is(x,y) = Io(x,y)*Sσ(T(x,y)) ・・・(2)
【0047】
S(x,y) = Is(x,y)/(Is(x,y)+Ip(x,y)) ・・・(3)
【0048】
上記(1)〜(3)式において、(x,y)は放射線画像の画素位置の座標、Ip(x,y)は画素位置(x,y)における一次線像、Is(x,y)は画素位置(x,y)における散乱線像である。また、Io(x,y)は画素位置(x,y)における被写体19の表面への入射線量、μは被写体の線減弱係数、及びSσ(T(x,y))は画素位置(x,y)における被写体19の体厚に応じた散乱の特性を表す畳みこみカーネルである。上記(1)式は公知の指数減弱則に基づく式であり、(2)式は、「J M Boon et al, An analytical model of the scattered radiation distribution in diagnostic radiolog, Med. Phys. 15(5), Sep/Oct 1988」(参考文献1)に記載された手法に基づく式である。なお、被写体19の表面への入射線量Io(x,y)は、どのような値を定義してもS(x,y)を算出する場合に除算によってキャンセルされるため、例えば、「1」とする等、任意の値とすればよい。
【0049】
また、被写体19の体厚分布T(x,y)は、放射線画像における輝度分布が被写体19の体厚の分布と略一致するものと仮定し、放射線画像の画素値を線減弱係数値により厚さに変換することにより算出すればよい。なお、これに代えて、センサ等を用いて被写体19の体厚を計測してもよいし、立方体あるいは楕円柱等のモデルで近似してもよい。
【0050】
ここで、上記(2)式における「*」は、畳みこみ演算を表す演算子である。カーネルの性質は、被写体19の体厚の他に、照射野の分布、被写体19の組成の分布、撮影条件、及び放射線検出器20の特性等によっても変化する。上記の参考文献1に記載された手法によれば散乱線は一次線に対する点拡散関数(point spread function、上記(2)式におけるSσ(T(x,y)))の畳みこみにより近似することができる。なお、Sσ(T(x,y))は、照射野情報、被写体情報、及び撮影条件等に応じて実験的に求めることができる。
【0051】
なお、撮影における照射野情報、被写体情報、及び撮影条件に基づいてSσ(T(x,y))を算出してもよいが、各種照射野情報、各種被写体情報、及び各種撮影条件とSσ(T(x,y))とを対応づけた対応関係を表すテーブルを記憶部30に記憶しておき、撮影における照射野情報、被写体情報、及び撮影条件に基づいて、記憶部30に記憶されている対応関係を表すテーブルを参照してSσ(T(x,y))を求めるようにしてもよい。なお、Sσ(T(x,y))をT(x,y)にて近似するようにしてもよい。
【0052】
実行部32は、仮想グリッド特性、及び散乱成分情報に基づいて、放射線画像における散乱線とみなせる周波数帯域の周波数成分を低減させることにより、散乱線除去処理を行う。このため、実行部32は、放射線画像を周波数分解して複数の周波数帯域毎の周波数成分を取得し、少なくとも1つの周波数成分のゲインを低減する処理を行い、処理済みの周波数成分及びこれ以外の周波数成分を合成して、散乱線除去処理済みの放射線画像を取得する。なお、周波数分解の手法としては、放射線画像を多重解像度変換する手法の他、ウェーブレット変換、及びフーリエ変換等、公知の任意の手法を用いることができる。
【0053】
実行部32は、散乱線透過率Ts及び一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)から、周波数成分を変換する変換係数R(x,y)を下記の(4)式により算出する。
【0054】
R(x,y) = S(x,y)×Ts + (1-S(x,y))×Tp ・・・(4)
【0055】
散乱線透過率Ts、一次線透過率Tp、及び散乱線含有率分布S(x,y)は0以上、1以下の間の値となるため、変換係数R(x,y)も0以上、1以下の間の値となる。実行部32は、変換係数R(x,y)を複数の周波数帯域のそれぞれについて算出する。
【0056】
なお、以下では、放射線画像の画素値をI(x,y)、周波数分解により得られる周波数成分画像をI(x,y,r)、周波数合成をI(x,y)=ΣrI(x,y,r)、周波数帯域毎の変換係数をR(x,y,r)、周波数帯域毎の散乱線透過率、及び一次線透過率をTs(r)、Tp(r)で表す。なお、rは周波数帯域の階層を表し、rが大きいほど低周波であることを表す。したがって、I(x,y,r)は、ある周波数帯域の周波数成分画像となる。散乱線含有率分布S(x,y)は放射線画像に対するものをそのまま用いればよいが、散乱線透過率Ts、及び一次線透過率Tpと同様に周波数帯域のそれぞれについて取得するようにしてもよい。
【0057】
本実施の形態においては、周波数成分毎に変換係数R(x,y,r)を算出し、周波数成分画像I(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算して、周波数成分画像I(x,y,r)の画素値を変換し、変換係数R(x,y,r)が乗算された周波数成分画像I(x,y,r)(すなわち、I(x,y,r)×R(x,y,r))を周波数合成して処理済みの放射線画像I′(x,y)を取得する。したがって、実行部32において行われる処理は、下記の(5)式により表される。なお、変換係数R(x,y,r)は0以上、1以下の間の値となるため、周波数成分(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算することにより、その周波数成分の画素位置(x,y)における画素値、すなわちゲインが低減されることとなる。
【0058】
I’(x,y)=Σr{I(x,y,r)×R(x,y,r)}
【0059】
=Σr{I(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} ・・・(5)
【0060】
実行部32では、上述のように算出した変換係数を用いて上記(5)式に示す処理を行うことにより取得された処理済みの放射線画像においては、使用が想定されるグリッドの特性(種類)に応じて散乱線成分が除去されたものとなる。
【0061】
なお、本実施の形態の画像処理装置12は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びHDDを備えたコンピュータ等により実現される。例えば、CPUが詳細を後述する撮影制御処理のプログラムを実行することにより、受付部26、導出部28、実行部21、及び取得部33としての機能が実現する。なお、撮影制御処理のプログラムは、予めROM等の不揮発性の記憶部に記憶させておいてもよいし、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型の記憶部やネットワーク等の回線を通じて、画像処理装置12にインストールするようにしてもよい。
【0062】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影装置10の画像処理装置12において実行される、撮影制御処理について説明する。撮影制御処理は、開示の技術の、放射線画像撮影方法の一例に対応している。
【0063】
図3に、本実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。図3に示した撮影制御処理は、例えば、受付部26が放射線画像の撮影指示を受け付けた場合に実行される。
【0064】
ステップS100では、受付部26は、外部のシステムや入力部34から受け付けた、放射線画像の撮影に関するオーダ情報を表示部36に表示させる。ここで、表示されるオーダ情報の具体例としては、被写体19を識別するための、被写体19の名前やID(identification)、撮影部位、撮影方向(正面等)、及び撮影枚数等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、これから行われる放射線画像の撮影を特定するための情報であればよい。
【0065】
オーダ表示に応じて、ユーザは、被写体19を挟んで、放射線検出器20及び放射線源18を撮影位置にセットする。さらにユーザは、表示されたオーダ情報に基づいて、オーダ情報の指示を行う。なお、本実施の形態に限らず、上記ステップS100におけるオーダ情報の表示を省略し、ここで、ユーザがオーダ情報の全てを入力部34から指示するようにしてもよい。
【0066】
次のステップS102では、表示されたオーダ情報に基づいてユーザが入力部34により行ったオーダ情報を受付部26が受け付ける。なお、受け付けた情報から順次、表示部36に表示し、ユーザに確認を促すようにするとよい。
【0067】
次のステップS104では、導出部28が、受け付けたオーダ情報に対応する撮影条件を、例えば、図2に示した、記憶部30に記憶させてあるテーブルに基づいて、取得する。例えば、被写体情報をオーダ情報として受け付けた場合は、受け付けた被写体情報に対応する撮影条件を取得する。例えば、図2に示した具体例1では、年齢が成人で、体型が普通で、撮影部位が胸部である被写体情報に対しては、撮影条件として、管電圧=αkVp、管電流=βmA、及び照射時間=γmsecを取得する。なお、撮影条件を取得する場合、被写体情報、特に被写体19の体格(体型等)を加味するようにしてもよい。上述したように、被写体19の体厚が大きい場合、体厚が薄い場合に比べて、放射線源18の管電圧を高くすることが好ましい。そのため、被写体情報、特に、被写体19の体厚に対して、撮影条件(主に管電圧)を異ならせた、撮影条件を対応付けたテーブルを用いることが好ましい。例えば、図2に示した具体例2では、具体例1と異なり、体型が「太め」となっているため、撮影条件の管電圧は、α+θ(θ>0)kVpとなっており、具体例1よりも高くなっている。
【0068】
なお、本実施の形態では、被写体情報等のオーダ情報から、導出部28が撮影条件を取得しているがこれに限らず、ユーザが入力部34から撮影条件を指示するようにしてもよい。
【0069】
次のステップS106では、導出部28は、取得した撮影条件を制御装置14の線源制御部22にセットする。線源制御部22は、導出部28によりセットされた撮影条件に応じて、放射線源18を制御して放射線画像の撮影を行う。
【0070】
撮影条件がセットされると、線源制御部22は、放射線源18を制御して、被写体19に対して放射線Xを照射する。また、検出器制御部24が、放射線検出器20を制御することにより、被写体19を透過した放射線Xを放射線検出器20が検出し、被写体19像を表す放射線画像を検出器制御部24に出力する。
【0071】
次のステップS108では、取得部33が撮影条件の実績値を取得したか否かを判定する。未だ取得していない場合は、待機状態となる。一方、撮影条件の実績値を取得した場合は、ステップS110へ進む。
【0072】
次のステップS110では、導出部28が、取得部33が取得した撮影条件の実績値に対応する仮想グリッド特性(グリッド比)を記憶部30に記憶させてあるテーブルに基づいて導出する。導出部28が、撮影条件の実績値として、管電圧=α+θkVp、管電流=βmA、及び照射時間=γmsecを取得した場合は、図2の具体例2に示すように、仮想グリッド特性(グリッド特性)=4:1を導出する。なお、導出部28は、被写体19の体格を加味して仮想グリッド特性を導出するようにしてもよい。例えば、体型が普通で管電圧が70kVpの場合、グリッド比は、4:1が好ましく、体型が太めで管電圧が70kVpの場合は、放射線検出器20に到達する放射線の線量が体型が普通の場合に比べて低減するため、グリッド比は、3:1が好ましいとする。このような場合、管電圧を70kVpという情報を用い、体格(体型)に関する情報を用いずにグリッド比を導出した場合よりも、被写体19の体型を加味することにより、より適切なグリッド比を導出することができる。
【0073】
次のステップS112では、実行部32が、検出器制御部24を介して、放射線検出器20から放射線画像を受信したか否かを判定する。未だ、放射線画像の撮影中の場合等、放射線画像を未だ受信していない場合は、待機状態になる。一方、放射線画像を受信した場合は、ステップS114へ進む。
【0074】
ステップS114では、実行部32が、上記ステップS110で導出部28が導出した仮想グリッド特性に応じた仮想グリッド処理を、受信した放射線画像に対して行い、放射線画像から散乱線の影響を除去する。具体的には、実行部32は、導出した仮想グリッド特性(グリッド比)に対応する散乱線透過率Ts、及び一次線透過率Tpを記憶部30に記憶されている対応関係を表すテーブルから取得する。また、実行部32は、取得部33から撮影条件の実績値を取得する。そして、散乱線透過率Ts、一次線透過率Tp、及び撮影条件に基づいて、上述した(1)〜(5)式を用いて、仮想グリッド処理を行う。
【0075】
次のステップS116では、仮想グリッド処理により、実行部32で散乱線の影響が除去された放射線画像を表示部36に表示させた後、本処理を終了する。
【0076】
なお、上記ステップS104の後、若しくは、ステップS106の後の、放射線画像の撮影を行う前に、ユーザにより撮影条件の微調整を行ってもよい。例えば、被写体19の体格が普通であるが、撮影部位の体厚が普通の体型として想定しているものよりも若干、大きい場合等、ユーザの判断により、管電圧等の撮影条件を調整するようにしてもよい。調整を行う場合は、入力部34によりユーザが行った調整指示を受付部26を介して導出部28が取得し、取得した調整指示に基づいて、線源制御部22に対してセットされている撮影条件を調整するように指示すればよい。このようにして撮影条件の調整を行った場合は、ステップS114の実行部32による仮想グリッド処理では、調整された撮影条件に応じて仮想グリッド処理を行う。
【0077】
[第2の実施の形態]
【0078】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置10と同様の部分については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0079】
放射線画像撮影装置10の構成は、第1の実施の形態(図1参照)と同様であるため、説明を省略する。本実施の形態の導出部28は、放射線検出器20が撮影した放射線画像に基づいて、被写体19の体厚(体厚分布)を推定し、体厚の推定値、及び取得部33が取得した撮影条件の実績値に基づいて仮想グリッド特性を導出する点で第1の実施の形態の導出部28と異なっている。
【0080】
本実施の形態の導出部28における、被写体19の体厚の推定について説明する。導出部28は、仮想モデルMを放射線撮影した場合に得られると推定される画像である、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成した推定画像Imを生成して、推定画像Imと被写体19の放射線画像Ikとの違いが小さくなるように、仮想モデルMの体厚分布を修正することにより、推定画像Imと被写体19の放射線画像Ikとの違いに基づいて、推定画像Imが被写体19の放射線画像Ikに近似するように正確に体厚分布Tを修正する。修正した仮想モデルMの体厚分布Tを被写体Kの体厚分布Tkとすることにより、被写体19の放射線画像Ikの体厚分布Tkを決定する。
【0081】
より詳しくは、導出部28は、以下のように被写体19の体厚の推定を行う。
【0082】
記憶部30には、複数の撮影条件ごとに濃度値(画素値)と体厚との対応関係を表すテーブルが予め作成されて記憶されている。また、記憶部30には、初期体厚分布T(x,y)を有する被写体19の仮想モデルMが記憶される。また、記憶部30には、各処理で必要とされる各種パラメータ、生成された画像(推定一次線画像、及び推定散乱線画像等)が適宜記憶されるものとする。なお、導出部28が推定する体厚とは、照射された放射線Xの経路上における空気領域を除いた被写体領域の厚さの総計を意味する。
【0083】
まず、導出部28、記憶部30、検出器制御部24を介して放射線検出器20から被写体19の放射線画像Ikを取得する。
【0084】
次に、導出部28は、記憶部30から、初期体厚分布T(x,y)を有する仮想モデルMを取得する。仮想モデルMは、初期体厚分布T(x,y)に従った体厚がxy平面上の各位置に対応付けられた被写体19を仮想的に表すデータである。また、仮想モデルMに含まれる構造物(ここでは肺野、骨、及び臓器等の解剖学的構造物)と構造物の配置と、構造物の放射線Xに対する特性等を示す特性情報は、比較用被写体の胸腹部の肺野、骨等どの解剖学的構造物の配置及び組成に基づいて設定されている。
【0085】
また、仮想モデルMの初期体厚分布T(x,y)は任意の分布とされてもよいが、本実施の形態では、初期体厚分布Tが生成されて取得される。導出部28は、撮影条件を取得し、記憶部30から被写体19の撮影条件に応じた画素値と体厚との対応関係を表すテーブルを取得する。記憶部30から比較用被写体(人体)に放射線Xを照射して得られた画像データを取得し、上記対応関係を表すテーブルに基づいて、比較用被写体の画像データの各画素の画素値に対応する体厚を特定することにより比較用被写体の画像データの体厚分布を取得する。そして、導出部28は、画像データの体厚分布を仮想モデルMの初期体厚分布T(所定の体厚分布)として、下記の(6)式のように取得する。なお、初期体厚分布Tは、本実施の形態のように仮想モデルMの取得処理において生成されてもよいし、仮想モデルMの取得処理に先立って予め設定されていてもよい。
【0086】
【数1】
・・・(6)
【0087】
次いで導出部28は、被写体19の放射線画像と同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipと、被写体19の放射線画像と同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定散乱線画像Isとを合成した推定画像Imを生成する。
【0088】
導出部28は、仮想モデルMを、被写体19の放射線画像Ikと同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipを、下記(7)式に従って生成し、生成した推定一次線画像Ipを用いて、(8)式に従って推定散乱線画像Isを生成する。そして、導出部28は、(9)式に示すように推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成することにより、推定画像Imを生成する。なお、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを1回目に作成する場合には、(7)及び(8)式において初期体厚分布T(x,y)が用いられる((7)及び(8)式においてn=1である)。
【0089】
【数2】
・・・(7)
【0090】
【数3】
・・・(8)
【0091】
【数4】
・・・(9)
【0092】
上記(7)〜(8)式において、(x,y)は被写体19の放射線画像Ikの画素位置の座標、Ip(x,y)は画素位置(x,y)における推定一次線画像、Is(x,y)は画素位置(x,y)における推定散乱線画像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における線量、Im(x,y)は画素位置(x,y)における推定画像、μは被写体の線減弱係数、K(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)は画素位置(x,y)における被写体厚に応じた点拡散関数(Point Spread Function)を表す畳みこみカーネルである。なお、線量Io(x,y)は、被写体19が存在しないと仮定した場合に放射線Xが放射線検出器20で検出される線量であり、撮影条件に応じて変化する。また、θx’,y’は、撮影条件や仮想モデルMの特性情報によって特定されるパラメータを表している。
【0093】
なお、推定画像Imは、仮想モデルMに放射線Xを照射して撮影した場合に得られると推定される画像であればよく、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成した画像と実質的に見なせるものであればよい。例えば、上記(7)〜(9)式に替えて下記の(10)式を用いて、一次線成分と散乱線成分を合わせたカーネルを畳み込み積分して推定画像Imを生成してもよい。ここで、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)は、一次線成分と散乱線成分を合わせた点拡散関数を表すカーネルである。また、撮影により得られた放射線画像から推定一次線画像、及び推定散乱線画像を合成した推定画像を生成可能であれば、任意のモデル関数を用いてよい。
【0094】
【数5】
・・・(10)
【0095】
続いて、導出部28は、被写体19の放射線画像Ikと推定画像Imとの違い(エラー値Verror)が、許容可能な程度に十分小さくなった場合は、体厚分布Tを被写体19の放射線画像Ikの体厚分布Tkとして決定する。
【0096】
なお、エラー値Verrorが許容可能な程度に十分小さいといえない場合は、導出部28は、体厚分布Tn−1(n=1の場合には、初期体厚分布T)を修正する。修正方法は、被写体19の放射線画像Ikと推定画像Imの違いが小さくなるように体厚分布Tn−1の各位置の修正値を取得できる任意の方法であれば適用可能であり、特に限定されない。例えば、仮想モデルMの一画素以上の部分領域ごとに、仮想モデルMの体厚分布Tn−1を変動させて、推定画像Imと被写体19の放射線画像Ikとの違いを小さくする部分領域の体厚を算出する処理を実施する。そして、算出された各部分領域の体厚によって仮想モデルMの体厚分布を修正すればよい。
【0097】
このようにして、本実施の形態の導出部28は、検出器制御部24を介して放射線検出器20から取得した放射線画像に基づいて、被写体19の体厚を取得することができる。なお、被写体19の体厚の取得方法は、上記方法に限らない。例えば、第1の実施の形態の実行部32で説明したように、被写体19の体厚分布T(x,y)は、放射線画像における輝度分布が被写体19の体厚の分布と略一致するものと仮定し、放射線画像の画素値を線減弱係数値により厚さに変換することにより算出すればよい。また、これに代えて、センサ等を用いて被写体19の体厚を計測してもよいし、立方体あるいは楕円柱等のモデルで近似してもよい。
【0098】
次に、本実施の形態の撮影制御処理について説明する。図4には、本実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。本実施の形態の撮影制御処理は、第1の実施の形態の撮影制御処理(図3参照)におけるステップS110の替わりにステップS111が設けられている。また、ステップS108とステップS111との間に、ステップS109が設けられている。その他の撮影制御処理における各ステップは、第1の実施の形態と同様である。
【0099】
まず、ステップS100〜S108の各処理では、受付部26は、放射線画像の撮影に関するオーダ情報を表示部36に表示させる。オーダ表示に応じて、ユーザは、被写体19を挟んで、放射線検出器20及び放射線源18を撮影位置にセットする。さらにユーザは、表示されたオーダ情報に基づいて、オーダ情報の指示を行う。次に、受付部26がユーザにより指示されたオーダ情報を受け付ける。次に、導出部28が、受け付けたオーダ情報に対応する撮影条件を、記憶部30に記憶させてあるテーブルに基づいて、取得する。次に、導出部28は、取得した撮影条件を制御装置14の線源制御部22にセットする。線源制御部22は、導出部28によりセットされた撮影条件に応じて、放射線源18を制御して放射線画像の撮影を行う。検出器制御部24が、放射線検出器20を制御することにより、被写体19を透過した放射線Xを放射線検出器20が検出し、被写体19像を表す放射線画像を検出器制御部24に出力する。実行部32は、放射線画像を受信したか否かを判定し、実行部32が放射線画像を受信した場合は、ステップS108の次にステップS109へ進む。
【0100】
ステップS109で、導出部28は、上述したように、被写体19の放射線画像から被写体19の体厚を推定する。
【0101】
次のステップS111では、導出部28が、取得部33が取得した撮影条件の実績値、及び上記ステップS109で推定した被写体19の体厚の推定値に対応する仮想グリッド特性(グリッド比)を記憶部30に記憶させてあるテーブルに基づいて導出する。
【0102】
次のステップS112〜S116の各処理は、第1の実施の形態の撮影制御処理のステップS112〜S116の各処理と同様である。すなわち、実行部32が、検出器制御部24を介して、放射線検出器20から放射線画像を受信した場合は、実行部32が、上記ステップS111で導出部28が導出した仮想グリッド特性に応じた仮想グリッド処理を、受信した放射線画像に対して行い、放射線画像から散乱線の影響を除去する。具体的には、実行部32は、導出した仮想グリッド特性(グリッド比)に対応する散乱線透過率Ts、及び一次線透過率Tpを記憶部30に記憶されている対応関係を表すテーブルから取得する。また、実行部32は、取得部33から撮影条件の実績値を取得する。そして、散乱線透過率Ts、一次線透過率Tp、及び撮影条件に基づいて、上述した(1)〜(5)式を用いて、仮想グリッド処理を行う。なお、本実施の形態の実行部32では、仮想グリッド処理を行う場合、被写体19の体厚として、上記ステップS109の処理により、導出部28が推定した推定値を用いる。実行部32は、仮想グリッド処理により、散乱線の影響が除去された放射線画像を表示部36に表示させた後、本処理を終了する。
【0103】
このように本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、導出部28が被写体19の体厚を推定し、推定した体厚に基づいて仮想グリッド特性(グリッド比)を導出しているため、より適切な仮想グリッド特性(グリッド比)を導出することができる。また、導出部28が推定した被写体19の体厚を用いて実行部32で仮想グリッド処理を行うことができるため、実行部32の処理負荷を低減することができる。
【0104】
[第3の実施の形態]
【0105】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、上記各実施の形態に係る放射線画像撮影装置10と同様の部分については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0106】
放射線画像撮影装置10の構成は、上記各実施の形態(図1参照)と同様であるため、説明を省略する。一方、本実施の形態の放射線画像撮影装置10は、撮影制御処理において、第2の実施の形態の撮影制御処理(図4参照)と異なる処理を含むため、異なる処理について説明する。
【0107】
図5には、本実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。本実施の形態の撮影制御処理は、第2の実施の形態の撮影制御処理においてステップS112とステップS114との間に、ステップS113の処理が設けられている点で、第2の実施の形態と異なっている。そのため、図5に示すように、本実施の形態の撮影制御処理のステップS100〜S112、S114、及びS116の各処理は、第2の実施の形態のステップS100〜S112、S114、及びS116の各処理と同様である。従って、ここでは、本実施の形態の放射線画像撮影装置10における撮影制御処理のステップS113の処理について説明する。
【0108】
ステップS112で実行部32が検出器制御部24を介して放射線検出器20から放射線画像を取得した後のステップS113は、前回、実行部32が行った仮想グリッド処理において用いた仮想グリッド特性を表示部36に表示させる。例えば、同一の被写体19においては、撮影された放射線画像の画質(見た目)を揃えるため、前回と同様の仮想グリッド処理を行うことをユーザが所望する場合がある。そのため、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、前回、同一の被写体19の放射線画像に対して行った仮想グリッド処理における仮想グリッド特性を取得し、表示部36に表示させる。なお、前回に比して仮想グリッド特性が変化したことが解るように、例えば、前回の仮想グリッド特性と今回導出した仮想グリッド特性とを並べて表示する等とすることが好ましい。
【0109】
なお、前回の仮想グリッド特性は、予めオーダ情報に含まれている場合は、オーダ情報から取得してもよいし、被写体19を識別する情報(ID等)に対応付けて放射線画像撮影装置10内(例えば、記憶部30)に記憶しておくようにしてもよい。なお、今回が被写体19の初回の撮影にあたる場合は、本ステップは省略すればよい。
【0110】
また、表示部36に表示させる仮想グリッド特性は、同一の被写体19に対するものでなくてもよい。例えば、異なる被写体19同士の比較を行いたい場合等は、先に放射線画像の撮影を行い、実行部32により散乱線の影響を除去した放射線画像の生成における、仮想グリッド特性を表示するようにしてもよい。
【0111】
ステップS113の処理により、表示部36に表示された仮想グリッド特性を確認したユーザは、前回の仮想グリッド特性を用いたい場合は、入力部34により、仮想グリッド特性を変更する旨を指示する。
【0112】
次のステップS114では、導出部28は、仮想グリッド特性に応じた、仮想グリッド処理を行った後、ステップS116で、仮想グリッド処理後の放射線画像を表示部36に表示した後、本処理を終了する。なお、ステップS114において、導出部28は、ステップS113の処理により仮想グリッド特性の変更が指示された場合は、指示された仮想グリッド特性(前回の仮想グリッド特性)に応じた仮想グリッド処理を行う。
【0113】
このように、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、前回、行った放射線画像の撮影における仮想グリッド処理に用いた仮想グリッド特性を表示部36に表示させるため、ユーザは、仮想グリッド特性の確認を行い易くなる。そのため、例えば、放射線画像同士の画質(見た目)を揃えることが容易になる。
【0114】
[第4の実施の形態]
【0115】
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態では、本発明を、エネルギーサブトラクション撮影を行う放射線画像撮影装置に適用した場合について説明する。なお、上記各実施の形態に係る放射線画像撮影装置10と同様の部分については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0116】
エネルギーサブトラクション撮影とは、同一の被写体に対してエネルギーの異なる放射線を複数回照射して、複数(2枚)の放射線画像を取得し、2枚の放射線画像に対して差分計算処理を行うことで、放射線画像中の軟部組織に相当する画像部及び骨部等の硬部組織に相当する画像部の一方を強調して、他方を除去した差分画像(以下、「エネサブ画像」という)を取得するための撮影である。例えば、胸部の軟部組織に相当するエネサブ画像を用いると、肋骨で隠れていた病変を見ることが可能になり、診断性能を向上させることができる。以下では、2枚の放射線画像の各画素同士を対応させて、差分計算処理を行い、エネサブ画像を生成することをエネルギーサブトラクション処理という。
【0117】
本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、エネルギーの異なる放射線を複数回照射するために、2枚の放射線画像を撮影するにあたり、それぞれ放射線源18の管電圧を異ならせて放射線Xを照射している。以下では、放射線源18の管電圧を高く(高エネルギー)して放射線Xを照射して撮影した放射線画像を高圧画像、高圧画像を撮影した場合よりも低い管電圧(低エネルギー)により放射線Xを照射して撮影した放射線画像を低圧画像という。
【0118】
図6には、人体の骨部と軟部の放射線減弱係数と放射線源18の管電圧(エネルギー)との関係の一例を示す。図6に示した通り、管電圧のエネルギーが低い、低圧の場合は、骨部及び軟部の差が大きく、両者のコントラストが高くなる。一方、管電圧のエネルギーが低い高圧の場合は、骨部及び軟部の差が小さく、両者のコントラストが低くなる。そのため、エネルギーサブトラクション処理では、例えば、低圧画像−(高圧画像×重み付け係数)とした差分計算処理を行うことで、軟部組織のみのエネサブ画像を生成することができる。
【0119】
そのため、高圧画像及び低圧画像の撮影におけるエネルギー差を大きくして、エネルギーサブトラクション処理を行うことにより、エネルギー分離が良くなり、よりコントラストの高いエネサブ画像が得られる。
【0120】
図7には、エネルギー分布の異なる2種類の放射線Xのスペクトル分布の一例を示す。図7に示した一例では、高エネルギーの放射線Xとして管電圧が120kVpで照射した場合と、低エネルギーの放射線Xとして管電圧が60kVpで照射した場合を示している。図7に示した通り、高い管電圧で放射線Xを照射した場合、実際には、照射された放射線Xには、高エネルギー成分だけではなく、低エネルギー成分も含まれている。そのため、高圧画像から、低エネルギー成分を除去することが好ましい。
【0121】
一方、図8には、高エネルギー及び低エネルギーの放射線Xのグリッド比と減弱係数との対応関係の一例を示す。図8に示した通り、グリッド比が高いほど、抵エネルギー成分の方が、高エネルギー成分に比べて、より除去されることがわかる。
【0122】
また、上述したように、放射線Xのエネルギーが高くなるほど、散乱線が増加するため、グリッド比を高くすることが好ましい。
【0123】
従って、高圧画像に対しては、低エネルギー成分の除去、及び散乱線の除去の観点から、高いグリッド比を用いてグリッド処理を行うことが好ましい。また、低圧画像に対しては、散乱線が少なく撮影にえられた画素値を減らしたくないため、低いグリッド比を用いてグリッド処理を行うことが好ましい。
【0124】
そこで、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、管電圧を異ならせて、高圧画像及び低圧画像を撮影し、高圧画像に対しては高いグリッド比で仮想グリッド処理を行い、低圧画像に対しては低いグリッド比で仮想グリッド処理を行い、仮想グリッド処理が行われた高圧画像及び低圧画像をエネルギーサブトラクション処理して、エネサブ画像を生成する。グリッド比としては、例えば、管電圧が40kVpのときは3:1のグリッド比が用いられ、管電圧が100kVpのときは10:1のグリッド比が用いられる。
【0125】
具体的には、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、実行部32がエネルギーサブトラクション処理部の一例として機能し、エネルギーサブトラクション処理を行う。
【0126】
本実施の形態の放射線画像撮影装置10におけるエネルギーサブトラクション撮影を行う場合の撮影制御処理について説明する。図9には、本実施の形態の撮影制御処理の一例のフローチャートを示す。第1の実施の形態の放射線画像撮影装置10における撮影制御処理と同様の処理については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
エネルギーサブトラクション撮影を行う場合、図9に示した撮影制御処理では、ステップS100〜S150の処理により、エネルギーサブトラクション撮影に関する情報を含んだオーダ情報を、受付部26が受け付ける。そして、放射線画像撮影装置10は、受け付けたオーダ情報に基づいて、撮影条件として放射線源18の管電圧を異ならせて2枚の放射線画像(高圧画像及び低圧画像)を撮影し、実行部32が、高圧画像及び低圧画像を受信する。
エネルギーサブトラクション撮影を行う場合、2枚の放射線画像(高圧画像及び低圧画像)が必要となるため、ステップS112の後に、ステップS150で2枚の放射線画像を受信したか否か判断し、受信していない場合は、ステップS106に戻り、2枚目の放射線画像の撮影を行うようにしている。
2枚の放射線画像(高圧画像及び低圧画像)を受信すると、ステップS150からステップS152へ進み、実行部32が、高圧画像及び低圧画像の各々に対して、第1の実施の形態の撮影制御処理のステップS114と同様に、撮影条件に応じた仮想グリッド処理を行う。さらに、次のステップS154で、実行部32は、仮想グリッド処理が行われた高圧画像及び低圧画像に対してエネルギーサブトラクション処理を行い、エネサブ画像を生成する。そして、次のステップS156で、生成されたエネサブ画像を表示部36に表示させた後、本処理を終了する。
【0127】
従来の放射線画像撮影装置におけるエネルギーサブトラクション撮影では、被写体の体動やコストの問題から、高圧画像及び低圧画像に応じたグリッド比が異なる2種類のグリッドを差し替えるのが困難なため、高圧画像及び低圧画像を撮影する場合にグリッドを用いずに撮影するか、または、1種類のグリッドを使用して高圧画像及び低圧画像を撮影することが通常であった。
【0128】
これに対して本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、取得部33が取得した撮影条件の実績値に基づいて導出部28が高圧画像及び低圧画像の仮想グリッド特性を導出するため、ユーザが、グリッド比の変更等に係るユーザの作業負担の軽減を図ることができ、また、エネルギー分離がよいエネサブ画像を取得することができる。
【0129】
以上説明したように上記各実施の形態の放射線画像撮影装置10は、画像処理装置12が、受付部26、導出部28、記憶部30、実行部32、及び取得部33を備える。受付部26は、入力部34からオーダ情報を受け付ける。導出部28は、受け付けたオーダ情報に対応する撮影条件を記憶部30に記憶されているテーブルに基づいて、取得して線源制御部22にセットする。線源制御部22は、セットされた撮影条件に応じて放射線源18を制御して、放射線画像の撮影を行う。取得部33は、撮影における撮影条件の実績値を線源制御部22から取得する。導出部28は、取得部33が取得した撮影条件の実績値に基づいて、仮想グリッド特性を導出する。実行部32は、放射線検出器20により撮影された放射線画像を、検出器制御部24を介して取得する。実行部32は、取得した放射線画像に対して、導出部28が導出した仮想グリッド特性、及び導出部28が取得した撮影条件に基づいて、仮想グリッド処理を行い、散乱線の影響を除去した放射線画像を生成し、表示部36に表示させる。
【0130】
このように上記各実施の形態の放射線画像撮影装置10では、取得部33が取得した撮影条件の実績値に基づいて導出部28が仮想グリッド特性を導出するため、ユーザが、オーダ情報、または撮影条件を入力部34から指示することにより、実行部32で適切に仮想グリッド処理が行われる。従って、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、撮影条件の設定に係るユーザの作業負担の軽減を図ることができる。
【0131】
また、上記各実施の形態の放射線画像撮影装置10では、実際に放射線検出器20と被写体19との間にグリッドを配置せずに撮影された放射線画像を実行部32が取得し、取得した放射線画像に対して画像処理として仮想グリッド処理を行うことにより、放射線画像から散乱線の影響を除去している。放射線検出器20と被写体19との間に実際に配置されるグリッドは、上述したように、鉛とアルミニウム等の中間物質が細かな格子密度で交互に配置されているため、重量があるものとなっている。そのため、例えば、図10のように、寝ている被写体19と放射線検出器20との間にグリッドを配置する必要があるが、配置の作業の負担、及び撮影における被写体19の負担が大きいものとなる。また、収束型のグリッドの場合、放射線の斜入により放射線画像に濃度ムラが発生するおそれがある。また、放射線画像には被写体像とともにグリッドのピッチに対応した細かな縞模様(モアレ)が記録されてしまい、放射線画像が見づらいものとなってしまうおそれもある。縞模様を除去する画像処理は、従来技術として例えば、特開2013−172881号公報等に記載された技術等が周知であるが、従来の技術では、処理時間が増大する場合がある。これに対して、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、実際のグリッドを用いずとも、グリッドを設けた場合と同様に、仮想グリッド特性に基づいた仮想グリッド処理により、放射線画像から散乱線の影響を除去しているため、被写体19やユーザの負担をさらに低減することができる。また、放射線画像がモアレ等により見づらいものとなることを抑制することができる。
【0132】
また、放射線画像撮影装置10では、受付部26で受け付けたグリッド特性に基づいて、実行部32が仮想グリッド処理を行うため、使用を想定する仮想グリッド特性を指示することにより、散乱線の除去量をコントロールすることが可能である。
【0133】
なお、上記各実施の形態では、放射線検出器20がFPDの場合について説明したがこれに限らず、その他の形態の放射線検出器であってもよい。また、放射線画像撮影装置10の構成も特に限定されない。なお、放射線画像撮影装置10として、回診車に適用することが好ましい。放射線画像撮影装置10を回診車に適用し、被写体19の病室に配置した状態の具体例を図10に示す。
【0134】
図10に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置10は、放射線検出器20及び回診車50を備えている。また、回診車50は、放射線源18と、コンソールとして機能する画像処理装置12、U/I部13、及び制御装置14と、を備えている。放射線検出器20は、寝台52と寝台52に仰臥している被写体19としての患者との間に配置される。一方、本実施の形態に係る回診車50は、アーム54を備えており、アーム54の一端部には放射線源18が設けられる。放射線源18は、寝台52に仰臥している被写体19の上部に配置される。また、回診車50は、本体部58の底部に車輪60が設けられており、病院内を移動可能とされている。回診車50は、U/I部13を介して放射線画像の撮影が指示されると、撮影条件に応じて、画像処理装置12及び制御装置14の制御により、放射線検出器20を用いて放射線画像の撮影を行う。
【0135】
また、上記各実施の形態では、取得部33が取得した撮影条件の実績値に基づいて、導出部28が仮想グリッド特性を導出しているがこれに限らない。例えば、オーダ情報に含まれる撮影条件やユーザが指示した撮影条件等、導出部28が線源制御部22に対してセットした撮影条件に基づいて導出部28が仮想グリッド特性を導出するようにしてもよい。
【0136】
また、上記各実施の形態における放射線Xは、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0137】
その他、上記各実施の形態で説明した放射線画像撮影装置10等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0138】
10 放射線画像撮影装置
12 画像処理装置
13 U/I部
14 制御装置
20 放射線検出器
26 受付部
28 導出部
30 記憶部
32 実行部
33 取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10