特許第6043151号(P6043151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043151熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びそれから成形した絶縁性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043151
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びそれから成形した絶縁性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20161206BHJP
   C08G 59/22 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20161206BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20161206BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C08G65/40
   C08G59/22
   B32B15/08 Z
   B32B15/08 J
   B32B15/20
   B32B5/28 Z
   B32B27/00 A
   B32B27/12
   C08J5/24CFC
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-237704(P2012-237704)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-88464(P2014-88464A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089406
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏
(72)【発明者】
【氏名】青柳 栄次郎
(72)【発明者】
【氏名】野澤 英則
(72)【発明者】
【氏名】軍司 雅男
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−283370(JP,A)
【文献】 特開2003−119370(JP,A)
【文献】 特開平10−120761(JP,A)
【文献】 特開平10−251377(JP,A)
【文献】 特許第3226550(JP,B2)
【文献】 特開2009−292977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−65/48
59/00−59/72
B32B 5/00−5/32
B32B 15/00−15/20
B32B 27/00−27/42
C08J 5/00−5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価フェノール化合物を必須の反応原料成分として含み、アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基を合わせた水酸基当量が550g/eq.〜2000g/eq.であり、且つ重量平均分子量が10,000〜200,000である下記一般式(1)で表される熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
【化1】
上記式(1)中、V、Wは置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種であり、同一であっても異なっていてもよくいが、少なくとも1つは下記一般式(2)であり、Bは水素原子または下記一般式(4)で表される基であり、mは繰り返し数であり、平均値は1<m<100である。
【化2】
(式中、nは0より大きい値を示し、X、Yは置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基又は下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種であり、同一であってもよく異なっていてもよい。)
【化3】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は、二価の基、単結合又はフルオレニル基から選ばれる少なくとも1種である。)
【化4】
【請求項2】
二価フェノール化合物のフェノール性水酸基当量が100g/eq.〜3800g/eq.である請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
【請求項3】
二価グリシジルエーテル化合物及び二価フェノール化合物を反応原料成分として含む熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂組成物であって、二価グリシジルエーテル化合物のエポキシ当量が150g/eq.〜3900g/eq.である請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
【請求項4】
二価フェノール化合物が一般式(5)で表される、請求項1〜3のいずれかの項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
【化5】
(式中、kは0又は0より大きい値を示し、X及びYは請求項1に記載の一般式(2)に同じである。)
【請求項5】
二価グリシジルエーテル化合物が一般式(6)で表される請求項1〜4のいずれかの項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
【化6】
(式中、kは0又は0より大きい値を示し、X及びYは請求項1に記載の一般式(2)に同じであり、Gはグリシジル基を示す。)
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかの項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、熱硬化性樹脂、及び、硬化剤を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項6記載の樹脂組成物。
【請求項8】
熱可塑性成分および/またはゴム成分を含む請求項6又は請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項6〜8の何れかの項に記載の樹脂組成物から成形された絶縁フィルム。
【請求項10】
請求項6〜8の何れかの項に記載の樹脂組成物を銅箔に塗布してなるプリント配線板用樹脂付き銅箔およびフレキシブルプリント配線板用樹脂付き銅箔。
【請求項11】
請求項6〜8の何れかの項に記載の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に塗工及びまたは含浸することを特徴とするプリプレグ。
【請求項12】
請求項6〜8の何れかの項に記載の樹脂組成物、または請求項9に記載の絶縁フィルムまたは請求項10に記載のプリント配線板用樹脂付き銅箔、または請求項11に記載のプリプレグにいずれかから得られる電気積層板・フレキシブル電気積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気用層間絶縁積層板、磁気テープバインダー、絶縁ワニス、自己融着エナメル電線ワニス等の電気・電子分野及び接着剤、絶縁塗料やフィルム等として有用な、低誘電率及び低誘電正接、耐熱性、接着力に優れた熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及び熱可塑性ポリヒドロキポリエーテル樹脂・エポキシ樹脂・硬化剤・添加剤・充填材からなる樹脂組成物並びこれらを用いた接着フィルム及びプリプレグ、さらにはこれらを用いた積層板、多層プリント配線板や絶縁性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピュータのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。
【0003】
電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根,誘電正接および使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、使用される信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。
【0004】
誘電損失は、電気信号を減衰させて信号の信頼性を損なうので、これを抑制するために絶縁体には誘電率、誘電正接の小さな材料を選定する必要がある。
【0005】
こうしたものとしては、フッ素樹脂、硬化性ポリオレフィン、シアネートエステル系樹脂、硬化性ポリフェニレンオキサイド、アリル変性ポリフェニレンエーテル、ジビニルベンゼンまたはジビニルナフタレンで変性したポリエーテルイミド等の高分子材料が提案されている。これらの樹脂は極性基数が少なく、低誘電率・低誘電正接な材料ではあるが、極性基数が少ないために金属との接着力や、他樹脂との接着力が著しく乏しいという課題を有している。また、絶縁基板材料用途や封止材用途に広く用いられているエポキシ樹脂との相溶性が悪く、ハンドリング性に課題を有している。
【0006】
接着力に優れ、エポキシ樹脂との相溶性が良い樹脂として、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂が知られている。特許文献1には、芳香族−脂肪族交互ポリエーテル樹脂及びその製造方法が開示されており、特許文献2には低分子エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂とのブレンド物が開示されている。熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂はフェノキシ樹脂としても知られており、グリシジルエーテル基由来の水酸基を有していることから、金属や他樹脂との接着力に優れている。しかしながら、水酸基はモル分極率が高く誘電正接を高くする要因となっている。そのため、従来の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、水酸基が多いために誘電正接が高いといった課題を有していた。
従って、誘電率及び誘電正接が高くなる要因である極性基を削減した構造が提案されている。特許文献3や特許文献4にはフルオレン骨格を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の提案がなされているが、従来のポリヒドロキシポリエーテル樹脂と比較し水酸基数が大きくは変わらないため、低誘電率化及び低誘電正接化は充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−74125号公報
【特許文献2】特開昭63−146918号公報
【特許文献3】特許第4878810号
【特許文献4】特開2008−255308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐熱性と溶剤溶解性を有し、低吸水性であり、且つ誘電特性も改善される熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、更には電気・電子材料等の分野で封止材、接着剤、絶縁保護材料等として使用することにより優れた信頼性を与えることが出来る、該ポリエーテル樹脂を含有する硬化性樹脂組成物及び該樹脂組成物から成形される絶縁性フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で表され、且つアルコール性水酸基およびフェノール性水酸基を合わせた水酸基当量が550g/eq.〜2000g/eq.であり、且つ重量平均分子量が10,000〜200,000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算による重量平均分子量である。以下、分子量というのはこの測定法による重量平均分子量をいう)である熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、
【0010】
【化1】
上記式(1)中、V、Wは置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基又は下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種であり、同一であっても異なっていてもよくいが、少なくとも1つは下記一般式(2)であり、Bは水素原子または下記一般式(4)で表される基であり、mは繰り返し数であり、平均値は1<m<100である。
【0011】
【化2】
(式中、nは0より大きい値を示し、X、Yは置換基を有してもよいフェニレン基、ナフチレン基又は下記一般式(3)で表される基から選ばれる少なくとも1種であり、同一であってもよく異なっていてもよい。)
【0012】
【化3】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、またはハロゲン元素であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R2は、二価の基、単結合又はフルオレニル基から選ばれる少なくとも1種である。)
【0013】
【化4】
【0014】
(2)二価フェノール化合物のフェノール性水酸基当量が100g/eq.〜3800g/eq.である前記(1)項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、
【0015】
(3)二価グリシジルエーテル化合物及び二価フェノール化合物を反応原料成分として含む熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂組成物であって、二価グリシジルエーテル化合物のエポキシ当量が150g/eq.〜3900g/eq.である前記(1)項又は(2)項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、
【0016】
(3)二価フェノール化合物が一般式(5)で表される、前記(1)〜(3)項のいずれかの項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、
【0017】
【化5】
(式中、kは0又は0より大きい値を示し、X及びYは請求項1に記載の一般式(2)に同じである。)
【0018】
(4)二価グリシジルエーテル化合物が一般式(6)で表される前記(1)〜(4)項のいずれかの項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、
【0019】
【化6】
(式中、kは0又は0より大きい値を示し、X及びYは請求項1に記載の一般式(2)に同じであり、Gはグリシジル基を示す。)
【0020】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかの項に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、熱硬化性樹脂、及び、硬化剤を必須成分とする樹脂組成物、
【0021】
(6)熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である前記(5)項に記載の樹脂組成物、
【0022】
(7)熱可塑成分および/またはゴム成分を含む前記(5)または前記(6)項に記載の樹脂組成物、
【0023】
(8)前記(6)〜(7)項のいずれかの項に記載の樹脂組成物から成形される絶縁フィルム及び薄膜を支持ベースフィルム上に形成してなる接着フィルム、
【0024】
(9)前記(6)〜(8)項のいずれかの項に記載の樹脂組成物を銅箔に塗布してなるプリント配線板用樹脂付き銅箔及びフレキシブルプリント配線板用樹脂付き銅箔、
【0025】
(10)前記(6)〜(7)項のいずれかの項に記載の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材に塗工及びまたは含浸する事を特徴とするプリプレグ、
【0026】
(11)前記(6)〜(7)項のいずれかの項に記載の樹脂組成物、または前記(8)項に記載の絶縁フィルム、または前記(9)項に記載のプリント配線板用樹脂付き銅箔、または前記(10)に記載のプリプレグのいずれかから得られる電気積層板・フレキシブル電気積層板である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂組成物、及び該樹脂から成形される絶縁性フィルムは、耐熱性、溶剤溶解性、耐湿性に優れるとともに、誘電特性、特に誘電正接に優れた硬化物を与え、電気・電子部品類の絶縁ワニスや接着フィルム等の用途に好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に於いて、分子量が10,000未満では、熱可塑性が失われて、自己造膜性を示さなくなる。また分子量が200,000を超えると、溶剤で溶解しても、一般に工業的に利用されている溶媒濃度である70重量%から40重量%の濃度では、溶液粘度が高過ぎ、製膜使用可能な溶液粘度にするために溶剤を多量に加えなければならず、不経済であり、環境に対してもVOC(揮発性有機化合物)を可能なかぎり低減する方向にある現状では好ましいとはいい難い。こうしたことから、分子量は10,000〜200,000が好ましく、より好ましくは15,000〜100,000である。
【0029】
ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造には、二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応による方法、二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類の付加重合反応による方法が知られている。本発明に用いられるポリヒドロキシポリエーテル樹脂はいずれの製法により得られるものであっても良いが、アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基を合わせた水酸基当量が400g/eq.〜2000g/eq.であることが必要であり、好ましくは550g/eq.〜1500g/eq.であり、より好ましくは600g/eq.〜1200g/eq.である。水酸基当量が400g/eq.未満では誘電特性に劣り、2000g/eq.を超える場合は接着性に劣ものとなる恐れがある。
【0030】
二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応の場合は、二価フェノール類として、一般式(5)で表される化合物を用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらの二価フェノールは、単独で使用しても良いし、また2種類以上を併用しても良い。この際、二価フェノールのフェノール性水酸基当量は、175g/eq.〜3800g/eq.であることが必要である。100g/eq.のとき175g/eq.未満では、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に含有されるアルコール性2級水酸基の生成量が多くなり、低誘電率化及び低誘電正接化の効果が十分でなく、3800g/eq.以上では、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に含有されるアルコール性2級水酸基が少なくなり接着力の低下が問題となる。
【0031】
二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類の付加重合反応の場合は、二価フェノールとして一般式(5)で表される化合物を用いることができる。この際、二価フェノールは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良く、二価フェノール化合物のフェノール性水酸基当量が平均で100g/eq.〜3800g/eq.であることが必要である。100g/eq.未満ではフェノール性水酸基とグリシジル基との反応により生成されるアルコール性2級水酸基が多くなり低誘電正接化の効果が十分でなく、3800g/eq.以上では生成されるアルコール性2級水酸基が少なくなり接着力の低下が問題となる。
また、二価グリシジルエーテル化合物として一般式(6)で表される化合物を用いることができる。この際、二価グリシジルエーテルは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良く、二価グリシジルエーテル化合物のエポキシ当量が平均で150g/eq.〜3900g/eq.であることが必要である。150g/eq.未満では前記と同様にアルコール性2級水酸基が多くなり低誘電正接化の効果が十分でなく、3900g/eq.以上では、前記と同様にアルコール2性級水酸基が少なくなり接着力の低下が問題となる。
【0032】
また、二価フェノール類の二価グリシジルエーテル化合物と二価フェノール類の付加重合反応の場合は、製造反応に使用する二価グリシジルエーテル化合物と二価フェノール化合物の配合当量比は、フェノール性水酸基:エポキシ基=0.9:1〜1.1:1が好ましい。この配合当量比が0.9より小さくなっても、1.1より大きくなっても充分に高分子量化することができない。より好ましくは0.94:1〜1.06:1、最も好ましくは0.97:1〜1.03:1である。
【0033】
本発明で用いる二価グリシジルエーテル化合物の末端基純度は特に規定する必要はないが、製造される熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂が十分に高分子量化するために、加水分解性塩素が500ppm以下であり、αジオール含有量が10meq./100グラム以下であることが好ましい。
【0034】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を付加重合反応で製造する際に使用する触媒は、グリシジル基とフェノール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよく、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等、酢酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0035】
有機リン化合物の具体例としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスフォニウムブロマイド、テトラメチルホスフォニウムアイオダイド、テトラメチルホスフォニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルブチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0036】
第3級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0037】
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。環状アミン類の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等が挙げられる。
【0038】
これらの触媒は併用することができる。通常、触媒の使用量は反応固形分中、0.001重量%〜1重量%であり、その使用量は製造条件により決定され、アルカリ金属化合物を使用すると熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中にアルカリ金属分が残留し、残留量によっては、それを使用した電気電子部材の絶縁特性を極端に悪化させることが知られており、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中のアルカリ金属含有量の総量は10ppm以下にすることが好ましい。
【0039】
また、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等を触媒として使用した場合も、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中に触媒残渣として残留し、残留量によっては、アルカリ金属化合物の残留と同様に電気電子部材の絶縁特性を悪化させることが知られており、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中の窒素含有量を150ppm以下にすることが好ましい。
【0040】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂には、難燃性の付与のためにハロゲンを導入しても良い。ハロゲンにより難燃性を付与する場合、ハロゲン含有量が5重量%未満では十分な難燃性を付与できない。5重量%以上ではどの濃度でも難燃性が付与可能となるが、40重量%以上の濃度にしても難燃性の更なる向上は認められないことから、ハロゲン含有量を5重量%から40重量%の範囲に制御するのが実用的である。本発明に於いて、ハロゲン元素の種類はいずれのものでもよいが、商業生産の観点からは市販されている、臭素化合物、塩素化合物、フッ素化合物を利用するのがよい。
【0041】
本発明における熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、その製造時の合成反応の工程において、溶媒を用いても良く、その溶媒としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を溶解するものであれば、どのようなものでも良い。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。
【0042】
アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0043】
これらの溶媒は併用することができる。合成反応においてこれらの溶媒を使用する場合の固形分濃度は35%〜95%が好ましい。また、反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0044】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を製造する重合反応は、使用する触媒が分解しない程度の反応温度で行う。反応温度は、50〜230℃が好ましく、より好ましくは60〜210℃、特に好ましくは90℃〜190℃である。反応圧力は通常、常圧であり、反応熱の除去が必要な場合は、使用する溶剤のフラッシュ蒸発・凝縮還流法、間接冷却法、またはこれらの併用法により行われる。また、アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することもできる。
【0045】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は低誘電性、耐熱性、可撓性のある物質であり、単独で用いることもできるが、本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を必須成分として、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、溶剤、無機充填剤、繊維基材等種々の材料を併用することもできる。本発明に使用されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0046】
また、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂等を使用することができる。また、本発明に使用される硬化剤としては、例えば、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類等各種フェノール系硬化剤を、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
さらに、窒素原子を含有してなるフェノール系硬化剤を使用する事もでき、難燃性、接着性が向上する。窒素原子を有するフェノール系硬化剤としては、トリアジン構造含有ノボラック樹脂、DIC株式会社製フェノライト7050シリーズ、三菱化学株式会社製メラミン変性フェノールノボラック樹脂、群栄化学株式会社製アミノトリアジンノボラック樹脂PS−6313などがある。上記のフェノール樹脂の配合量については、1エポキシ当量のエポキシ樹脂に対し0.5〜1.3フェノール性水酸基当量のフェノール樹脂を配合することが望ましい。この範囲を外れると得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性が損なわれるという問題が生じる。
【0048】
また、硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、グアニジン類、各種のイミダゾール類や三級アミン類、またはこれらのマイクロカプセル化したもののほか、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物など、公知慣用のものを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0049】
さらに、必要に応じて溶剤を添加しても良く、その溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール等が挙げられ、これらの溶剤は単独または、2種類以上の混合溶剤として使用することも可能である。
【0050】
その他、必須成分ではないが、本発明の特性を損なわない範囲であるならば、保存安定性のために紫外線防止剤、可塑剤等、また無機充填材として水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、シリカ等、カップリング剤としてシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等も使用可能である。また、さらに難燃性を向上させるために、ノンハロゲンタイプのリン系、窒素系、シリコン系難燃剤等を添加しても良い。さらに柔軟性、接着性を向上させるために、ポリエステル系、ポリビニルブチラール系、アクリル系、ポリアミド系熱可塑性高分子物質等やNVRBCTBN、VTBN等のゴム成分等を添加しても良い。例えば日本ゼオン製品ニポール1072、日本合成ゴム製品PNR−1H、N−632S、宇部興産製品RLP、CTBN−1008等をそのまま用いることができる。
【0051】
また、本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物の機械強度の向上や難燃性の向上の為、有機及び/または無機のフィラーを添加することできる。有機フィラーとしては、コアシェル構造を有するアクリルゴム微粒子、シリコンパウダー、ナイロンパウダー等を挙げることができ、また無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、酸化アンチモン等を挙げることができ、繊維状無機物絶縁材料は繊維状チタン酸カリウムを挙げることができる。これらの無機フィラーは、特開2000−121629号公報に開示されているようなシラン系カップリング剤等で表面処理して使用することもできる。
【0052】
また、本発明の低誘電正接の特徴を活かし、高誘電率フィラーを充填することで、高誘電率且つ低誘電正接が求められているミリ波対応機器に応用することも可能である。高誘電率無機充填剤としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコニウム、チタン酸亜鉛、二酸化チタン等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。これらの高誘電率無機充填剤は、特開2000−121629号公報に開示されているようなシラン系カップリング剤等で表面処理して使用することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明するが本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例に於いて、「部」は「重量部」を示す。さらに本発明では以下の試験方法を使用した。
【0054】
(1)重量平均分子量
装置 :HLC−8120(東ソー社製)
カラム:SuperHZ2000×1本+SuperHZ3000×1本+SuperHZ4000×1本(東ソー社製)
温度 :40℃
溶離液/流量:THF 0.35ml/min.
検出器:RI
較正法:標準ポリスチレンによる換算
(2)エポキシ当量:JIS K−7236で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(3)フェノール性水酸基当量:JIS K−0070で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(4)水酸基当量:ジメチルホルムアミド25mlを200mlガラス栓付三角フラスコにとり、試料を精秤して加え溶解させる。1mol/Lフェニルイソシアネートトルエン溶液とジブチルスズマレート触媒溶液1mlとをそれぞれピペットで加え、よくふりまぜて混合し密栓して、30分間反応させる。反応終了後2mol/L−ジブチルアミントルエン溶液20mlを加えよくふりまぜて混合し、15分間静置して過剰のフェニルイソシアネートと反応させる。次に、メチルセロソルブ30mLとブロムクレゾールグリーン指示薬0.5mlとを加え、過剰のアミンを1mol/L過塩素酸メチルセロソルブ溶液で滴定し、色が青から黄色へ変色するまで滴定する。このとき、水分の影響を受けるため、あらかじめ試料をオーブンなどで乾燥させておく。また、フェノール性水酸基や、アルコール性1級水酸基及びアルコール性2級水酸基が測定される。
水酸基当量(g/eq.)=1000×W/(C×(S−B))
C:1mol/L過塩素酸メチルセロソルブ溶液の濃度(mol/L)
W:試料量(g)
B:滴定の際のブランクテストに要した1mol/L過塩素酸メチルセロソルブ溶液の滴定量(ml)
S;試料の適定に要した1mol/L過塩素酸メチルセロソルブ溶液の滴定量(ml)
計算による2級アルコール性水酸基当量算出:熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のアルコール性水酸基当量は、計算値より求めることができる。付加重合法で合成する場合は二価グリシジルエーテル化合物のエポキシ当量と二価フェノール化合物のフェノール水酸基当量から計算することができ、二価フェノール類とエピクロルヒドリンの直接反応の場合は二価フェノール化合物のフェノール性水酸基当量から計算することができる。本発明のポリヒドロキシポリエーテル樹脂に含有される主な水酸基は、側鎖に存在するアルコール性2級水酸基である。
(5)ガラス転移温度 :SII社製 EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定した。
(6)比誘電率及び誘電正接の測定:空洞共振法(ベクトルネットワークアナライザー(VNA)E8363B(アジレント・テクノロジー製)、空洞共振器摂動法誘電率測定装置(関東電子応用開発製))によって、1GHzの値を測定した。
(7)接着力:JIS K6854−1に準拠し、オートグラフにて、25℃雰囲気下、50mm/min.による測定した。
【0055】
合成例1
メタノール569重量部中に水酸化カリウム142重量部を撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み攪拌し、これにビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン(以後、TMBPSと略す)388重量部を投入しアルカリ金属塩とした。
これとは別の、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、4,4‘−ビスクロロメチルビフェニル(以後、BCMBと略す)159重量部とビス(2-メトキシエチル)エーテル708重量部を仕込んだ。10分間撹拌した後に、TMBPSのアルカリ金属塩全量を一括投入し、攪拌しながら65℃まで昇温させ、2時間攪拌した。
反応終了後、50mmHgの減圧下100℃まで昇温し、メタノール全量とビス(2-メトキシエチル)エーテルを51重量部留去した後、エピクロルヒドリン467重両部を入れ撹拌溶解させた。均一に溶解後、180mmHgの減圧下75℃に保ち、48%水酸化ナトリウム水溶液33gを1時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロルヒドリンを分離槽で分離しエピクロルヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、淡黄色固形状のエポキシ樹脂456重量部を得た(R−1)。得られた樹脂のエポキシ当量は467g/eq.であった。
【0056】
合成例2
メタノール321重量部中に水酸化カリウム80重量部を撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み攪拌し、これにビスフェノールA(新日鐵化学製、水酸基当量114g/eq.、以後BPAと略す)163重量部を投入アルカリ金属塩とした。
これとは別の、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、BCMB54重量部とメチルイソブチルケトン380重量部を仕込んだ。10分間撹拌した後に、BPAのアルカリ金属塩全量を一括投入し、攪拌しながら65℃まで昇温させ、4時間攪拌した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのち溶媒を留去し、白色固形状の二価フェノール化合物(R−2)100重量部を得た。得られた樹脂(R−2)のフェノール性水酸基当量は201g/eq.であった。
【0057】
合成例3
メタノール510重量部中に水酸化カリウム128重量部を撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み攪拌し、これにBPA259重量部を投入しアルカリ金属塩とした。
これとは別の、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、BCMB200重量部とメチルイソブチルケトン266重量部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込んだ。10分間撹拌した後に、BPAのアルカリ金属塩全量を一括投入し、攪拌しながら65℃まで昇温させ、4時間攪拌した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのち溶媒を留去し、白色固形状の二価フェノール化合物(R−3)200重量部を得た。得られた樹脂(R−3)のフェノール性水酸基当量は590g/eq.であった。
【0058】
実施例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学製YD−8125、エポキシ当量172 g/eq.)を24重量部、合成例3で得られた(R−3)76重量部、シクロヘキサノンを11部、触媒として2エチル4メチルイミダゾール(四国化成工業製、以後2E4MZと略す)0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン22重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量759 g/eq.、重量平均分子量33,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−1)を100重量部得た。この樹脂をラボプラストミル(形式4C150、株式会社東洋精機製作所製)で溶融脱気し、加熱条件下で厚みが70μmになるようプレスし、誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、この樹脂をシクロヘキサノン/メチルエチルケトン=1/6の比率で固形分30%となるよう希釈し、合成樹脂ワニスIとした。合成樹脂ワニスIを離型フィルム(PET)に溶剤乾燥後の樹脂厚みが60 μmになる様にローラーコーターにて塗布し、160℃、60分間溶剤乾燥を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし絶縁性フィルムを得た。また、標準試験板(PM−3118M、日本テストパネル工業製)に絶縁性フィルムと35 μm銅箔(3EC−III 、三井金属鉱業製)を重ねてドライラミネーターにより160℃でラミネートして、銅箔剥離強度測定用試験片を得た。
【0059】
実施例2
合成例1で得られた(R−1)81重量部、BPA19重量部、シクロヘキサノンを11部、触媒として2E4MZ0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン22重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量585 g/eq.、重量平均分子量35,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−2)を100重量部得た。実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスIIとした。合成樹脂ワニスIIを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0060】
実施例3
合成例1で得られた(R−1)74重量部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(新日鐵化学製、水酸基当量175g/eq.、以下BPFLと略す)26重量部、シクロヘキサノンを11部、触媒として2E4MZ0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン22重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量645g/eq.、重量平均分子量37,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−3)を100重量部得た。実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスIIIとした。合成樹脂ワニスIIIを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0061】
実施例4
合成例1で得られた(R−1)76重量部、TMBPS(水酸基当量153g/eq.)24重量部、シクロヘキサノンを11部、触媒として2E4MZ0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン22重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量623g/eq.、重量平均分子量32,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−4)を100重量部得た。実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスIVとした。合成樹脂ワニスIVを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0062】
実施例5
BPFL型エポキシ樹脂(新日鐵化学製ESF−300、エポキシ当量251 g/eq.)60重量部、BPFL40重量部、シクロヘキサノンを25部、触媒として2E4MZ0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン8重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量431g/eq.、重量平均分子量80,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−5)を100重量部得た。実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスVとした。合成樹脂ワニスVを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0063】
実施例6
合成例1で得られた(R−1)45重量部、合成例3で得られた(R−3)55重量部、シクロヘキサノンを11部、触媒として2E4MZ0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン22重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量1056g/eq.、重量平均分子量45,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−6)を100重量部得た。実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスVIとした。合成樹脂ワニスVIを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0064】
比較例1
YD−8125を48重量部、合成例2で得られた(R−2)52重量部、シクロヘキサノンを11部、触媒として2E4MZ0.015重量部を、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、常圧、160℃の温度で9時間反応させた後、シクロヘキサノン22重量部、メチルエチルケトン200重量部を加え、水洗し溶媒を留去したのち、アルコール性水酸基当量374g/eq.、重量平均分子量33,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(P−7)を100重量部得た。実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスVIIとした。合成樹脂ワニスVIIを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0065】
比較例2
BPA型フェノキシ樹脂(新日鐵化学製YP−50S、アルコール性水酸基当量284 g/eq.)を実施例1と同様にラボプラストミルを用いて比誘電率及び誘電正接測定用の絶縁性薄膜を得た。また、実施例1と同様にシクロヘキサノン/メチルエチルケトン混合溶媒を用いて合成樹脂ワニスIXとした。合成樹脂ワニスIXを用いた以外は実施例1と全く同様に絶縁フィルム及び銅箔剥離強さ測定用試験板を得た。
【0066】
分子量は樹脂組成物を、ガラス転移温度及び誘電特性は絶縁性薄膜を、接着力は銅箔剥離強さ測定用試験板をそれぞれ使用して測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
実施例7
フェノール硬化剤(昭和電工製BRG−555、フェノール性水酸基当量105 g/eq.)1.08重量部をNV.50となるようにメチルエチルケトン1.08重量部を加えワニスとした。これに実施例5で得た合成樹脂ワニスV10重量部、BPA型エポキシ樹脂(新日鐵化学製YD−128、エポキシ当量187 g/eq.)1.92重量部、硬化促進剤として2E4MZを0.0035重量部とをそれぞれ加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルムへ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60 μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃、60分間溶剤乾燥及び硬化を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを180℃、60分間後硬化させて、硬化フィルムを得た。
【0070】
実施例8
NV.50となるようにBRG−555を0.54重量部、メチルエチルケトン0.54重量部を混ぜワニスとした。これに実施例5で得た合成樹脂ワニスV15重量部、YD−128を0.96重量部、硬化促進剤として2E4MZを0.0034重量部、それぞれ加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルムへ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60 μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃、60分間溶剤乾燥及び硬化を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを180℃、60分間後硬化させて、硬化フィルムを得た。
【0071】
比較例3
NV.50となるようにBRG−555を1.08重量部、メチルエチルケトン1.08量部を混ぜワニスとした。また、YP−50Sをシクロヘキサノン/メチルエチルケトン=1/6の比率でNV.30%となるよう希釈し、このYP−50Sワニスを10重量部と、YD−128を1.92重量部、硬化促進剤として2E4MZを0.0056重量部、それぞれ加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルムへ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60 μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃、60分間溶剤乾燥及び硬化を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを180℃、60分間後硬化させて、硬化フィルムを得た。
【0072】
比較例4
NV.50となるようにBRG−555を0.94重量部、メチルエチルケトン0.94重量部を混ぜワニスとした。また、YP−50Sをシクロヘキサノン/メチルエチルケトン=1/6の比率でNV.30%となるよう希釈し、このYP−50Sワニスを15重量部と、YD−128を0.96重量部、硬化促進剤として2E4MZを0.0051重量部、それぞれ加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルムへ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60 μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃、60分間溶剤乾燥及び硬化を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを180℃、60分間後硬化させて、硬化フィルムを得た。
【0073】
誘電特性は硬化フィルムを、接着力は銅箔剥離強度測定用試験片をそれぞれ使用して測定した。
【0074】
【表3】