(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の気液分離部において分離された吸収液の熱を回収し、前記第2の熱交換部によって加熱される前の前記二酸化炭素含有吸収液を予熱する第3の熱交換部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
前記第2の気液分離部において分離された、凝縮した水を、前記第1の気液分離部によって分離された吸収液に導入する第2の凝縮水導入部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、製鉄所、ボイラー等のプラントにおいては、大量の化石燃料(例えば、石炭、重油、超重質油)を燃焼させている。したがって、化石燃料の燃焼に伴って、二酸化炭素(CO
2)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスが上記プラントから排出されることとなる。排気ガスに含まれる物質の中で、二酸化炭素は、地球温暖化の要因となっており、気候変動に関する国際連合枠組条約等において大気への排出量が規制されている。
【0003】
そこで、燃焼に伴う排気ガスや、プロセスに伴う排気ガス等の二酸化炭素を含む排気ガスから二酸化炭素を分離して回収し、その後、二酸化炭素が取り除かれた排気ガスを大気へ排出する技術(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)が開発されている。CCSを利用した二酸化炭素回収装置は、吸収液(二酸化炭素を吸収していない吸収液、以下、リーン吸収液と称する)と排気ガスとを接触させて、排気ガスに含まれる二酸化炭素をリーン吸収液に吸収させることで、排気ガスから二酸化炭素を除去する吸収塔と、二酸化炭素を吸収した吸収液(以下、リッチ吸収液と称する)から二酸化炭素を放出させてリーン吸収液に再生する再生塔とを備え、再生塔で再生されたリーン吸収液は、吸収塔で再利用される。そして、再生塔で放出された二酸化炭素は、圧縮機で圧縮された後、大気に排出されずに、地下の帯水層や地中の油田に貯留されたり、海洋や河川に溶解させられたりする。
【0004】
再生塔において、リッチ吸収液から二酸化炭素を放出するためには、リッチ吸収液を加熱する必要がある。そこで、再生塔の下部においてリボイラで加熱することで、リッチ吸収液から、二酸化炭素と水蒸気を含む回収ガスを放出させ、再生塔の塔頂から回収ガスを排出し、排出した回収ガスを冷却器(コンデンサ)で冷却して水蒸気を凝縮させ、得られた凝縮水を再度再生塔に返送する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、リッチ吸収液から水を蒸発させるために利用された潜熱が、冷却器で回収されて捨てられてしまうことになっていた。
【0006】
そこで、再生塔の下流側に1台の圧縮機を備えておき、再生塔から排出された回収ガスを圧縮機で圧縮する際に生じる熱を回収し、回収した熱を再生塔で利用する構成が考えられる。しかし、1台の圧縮機で、再生塔において必要な熱エネルギーを回収できる程度に回収ガスを圧縮すると、圧縮後の回収ガスの温度が200℃を超えてしまう。そうすると、圧縮機のインペラ等の部材を、200℃を上回っても耐えられる程度の耐熱性を有する特別な材料で構成する必要があり、圧縮機自体のコストが増大していた。
【0007】
そこで、再生塔の下流側に複数の圧縮機を直列に備えておき、再生塔から排出された回収ガスを圧縮機で圧縮する際に生じる熱を回収し、回収した熱を再生塔で再利用する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(二酸化炭素回収装置100)
図1は、本実施形態にかかる二酸化炭素回収装置100の構成を説明するための図である。
図1に示すように、二酸化炭素回収装置100は、二酸化炭素分離回収ユニット110と、二酸化炭素圧縮ユニット200とを含んで構成される。
【0019】
二酸化炭素分離回収ユニット110は、二酸化炭素を含有するガスGから二酸化炭素を分離し、二酸化炭素圧縮ユニット200は、二酸化炭素分離回収ユニット110において分離された二酸化炭素を圧縮する。以下、二酸化炭素分離回収ユニット110および二酸化炭素圧縮ユニット200の具体的な構成について説明する。
【0020】
(二酸化炭素分離回収ユニット110)
吸収部(吸収塔)120は、例えば、向流型気液接触装置で構成され、二酸化炭素を含有するガスGを吸収液(以下、リーン吸収液Lと称する)に接触させて、リーン吸収液Lに二酸化炭素を吸収させ、二酸化炭素含有吸収液(以下、リッチ吸収液Rと称する)を生成する。
【0021】
ここで、ガスGは、例えば、燃焼に伴う排気ガスや、プロセスに伴う排気ガスであるが、吸収部120においてリーン吸収液Lに二酸化炭素を効率よく吸収させるために適した温度(例えば、40℃)であるとよい。なお、燃焼やプロセスに伴う排気ガスが、高温である場合には、別途の冷却装置で冷却した後に吸収部120に導入するとしてもよい。リーン吸収液Lは、例えば、アルカノールアミン類等の二酸化炭素に対して親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水溶液で構成される。
【0022】
また、吸収部120は、その内部に、リーン吸収液LとガスGとの接触面積を大きくするための充填材122が設けられている。充填材122は、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料で構成される。
【0023】
本実施形態において、ガスGは吸収部120の下部から導入され、リーン吸収液Lは吸収部120の上部から導入される。そうすると、ガスGが吸収部120の下部から上部へ通過し、かつ、リーン吸収液Lが吸収部120の上部から下部へ通過する間、すなわち、ガスGおよびリーン吸収液Lが充填材122を通過する間に気液接触することで、ガスG中の二酸化炭素がリーン吸収液Lに吸収される。二酸化炭素が除去されたガスCは、吸収部120の頂部から排出される。なお、リーン吸収液Lが二酸化炭素を吸収することによって発熱してリッチ吸収液Rの液温が上昇することで、ガスCに含まれ得る水蒸気等を除去するための冷却凝縮部124を吸収部120の上部に設けてもよい。
【0024】
送出ライン130は、吸収部120の下部と、後述する第1の気液分離部140とを接続するライン(配管)である。
【0025】
第3の熱交換部132は、後述する返送ライン160を流通するリーン吸収液L(第1の気液分離部140から送出されたリーン吸収液Lおよび後述する第2の気液分離部230から送出された凝縮水の混合物、以下、単に混合リーン吸収液Lと称する)が有する熱(顕熱)を回収し、送出ライン130を流通するリッチ吸収液Rを加熱する。例えば、混合リーン吸収液L(例えば、120℃)は、第3の熱交換部132によって60℃まで冷却される。これに伴い、送出ライン130を流通するリッチ吸収液Rが加熱される。
【0026】
第3の熱交換部132を備える構成により、吸収部120で利用するために冷却が必要な混合リーン吸収液Lを冷却するとともに、二酸化炭素の放出のために加熱が必要なリッチ吸収液Rを加熱することが可能となる。
【0027】
また、第3の熱交換部132によって加熱されたリッチ吸収液Rは、送出ライン130において、後述する第2の熱交換部310によって、さらに加熱される。例えば、第3の熱交換部132および第2の熱交換部310の双方による熱交換によって、50℃のリッチ吸収液Rは、110℃に加熱される。
【0028】
また、第2の熱交換部310によって加熱されたリッチ吸収液R(110℃)は、送出ライン130において、後述する第1の熱交換部320によってさらに加熱(120℃)される。第2の熱交換部310、第1の熱交換部320による加熱処理については、後に詳述する。
【0029】
加熱部134は、スチームヒータ、電気ヒータ等で構成され、第1の熱交換部320によって加熱されたリッチ吸収液Rを加熱して、気液混合流体を生成する。ここで、加熱部134は、リッチ吸収液Rに対して潜熱を与えることになるため、気液混合流体の温度は、120℃に維持されることとなる。
【0030】
第1の気液分離部140は、加熱部134によって加熱されることで生成された気液混合流体を、液体(リーン吸収液L)と、気体(二酸化炭素および水蒸気を含有する回収ガスX)とに分離する。
【0031】
循環ライン142は、第1の気液分離部140の底部、および、送出ライン130における第1の熱交換部320によって加熱される箇所と、加熱部134によって加熱される箇所との間を接続するライン(配管)である。循環ライン142を備えることにより、第1の気液分離部140から、送出ライン130における第1の熱交換部320によって加熱される箇所と、加熱部134によって加熱される箇所との間に、リーン吸収液Lおよびリッチ吸収液Rの混合液(以下、リーン吸収液Lおよびリッチ吸収液Rの混合液を単に混合液と称する)を導入することができ、混合液を、加熱部134に循環させることが可能となる。
【0032】
したがって、加熱部134は、第1の熱交換部320によって加熱されたリッチ吸収液Rに加えて、第1の気液分離部140から送出された混合液を加熱することが可能となる。
【0033】
返送ライン160は、第1の気液分離部140の底部と吸収部120の上部とを接続するライン(配管)である。
【0034】
(吸収液の流れ)
続いて、二酸化炭素分離回収ユニット110における吸収液の流れについて説明する。吸収部120において生成され、吸収部120の底部に貯留されたリッチ吸収液Rは、ポンプ170aによって、送出ライン130を通じて、第1の気液分離部140へ送出される。リッチ吸収液Rは、送出ライン130を通過する間、第3の熱交換部132、第2の熱交換部310、第1の熱交換部320、加熱部134によって加熱され、第1の気液分離部140において気液分離されることで、リーン吸収液Lに再生される。リッチ吸収液Rからリーン吸収液Lへの再生(以下、単に吸収液の再生と称する)については、後に詳述する。
【0035】
第1の気液分離部140において分離されたリーン吸収液Lは、ポンプ170bにより、返送ライン160を通じて、吸収部120の上部に返送される。こうして、吸収液は、吸収部120と第1の気液分離部140とを循環することになる。なお、リーン吸収液Lは、返送ライン160を通過する間に、第3の熱交換部132、冷却部162によって、吸収部120における二酸化炭素の吸収に適した温度まで冷却される。
【0036】
一方、第1の気液分離部140において分離された回収ガスXは、二酸化炭素圧縮ユニット200に排出されることとなる。
【0037】
(吸収液の再生)
リッチ吸収液Rは、送出ライン130を通過する間、まず、第3の熱交換部132および第2の熱交換部310によって加熱される。そして、リッチ吸収液Rは、第1の熱交換部320によってさらに加熱されることにより、リッチ吸収液R中で吸収剤と二酸化炭素との結合が解除される。すなわち、吸収剤と二酸化炭素との化合物が、吸収剤と、二酸化炭素とに分解される。
【0038】
そして、リッチ吸収液Rは、加熱部134によってさらに加熱されることにより、リッチ吸収液Rから二酸化炭素が放出されるとともに、水が蒸発して水蒸気が生成されて、リーン吸収液Lと、回収ガスXとを含む気液混合流体となる。
【0039】
気液混合流体は、第1の気液分離部140に導入され、リーン吸収液Lと回収ガスXとに気液分離される。こうして、吸収液の再生が行われることとなる。
【0040】
つまり、第3の熱交換部132、第2の熱交換部310、第1の熱交換部320、加熱部134、第1の気液分離部140が、リッチ吸収液Rからリーン吸収液Lへの再生を行う機能を有する。
【0041】
従来は、充填塔を利用して、吸収液の再生を行っていたため、(1)吸収剤と二酸化炭素との化合物の分解、(2)吸収液からの二酸化炭素の放出、および吸収液からの水の蒸発、(3)再生されたリーン吸収液Lと、回収ガスXとの分離の3つのプロセスを1つの充填塔で行っていた。
【0042】
しかし、本実施形態では、第1の熱交換部320が(1)吸収剤と二酸化炭素との化合物の分解を、加熱部134が(2)吸収液からの二酸化炭素の放出、および吸収液からの水の蒸発を、第1の気液分離部140が(3)再生されたリーン吸収液Lと、回収ガスXとの分離を行う構成としたため、高価な充填塔が不要となり、充填塔にかかるコストを低減することが可能となる。
【0043】
また、このような構成とすることで、充填塔で吸収液を再生する構成と比較して、回収ガスX中における二酸化炭素に対する水蒸気の比率を大きくすることができる。したがって、二酸化炭素圧縮ユニット200において、低い圧縮率でも、回収ガスXの温度を上昇させることができる。したがって、圧縮部を複数段にせずとも、すなわち1の圧縮部であっても、吸収液の再生に必要な熱量を回収することができる。かかる構成については、後述する。
【0044】
また、加熱部134がリッチ吸収液Rに与える熱量によっては、加熱部134によって一度加熱されただけでは、リッチ吸収液Rに吸収された二酸化炭素を実質的にすべて放出するのは困難であることもある。そこで、循環ライン142を備えることで、第1の気液分離部140で分離された混合液が加熱部134を循環することになるため、実質的にすべての二酸化炭素をリッチ吸収液Rから放出させることが可能となる。
【0045】
(二酸化炭素圧縮ユニット200)
通過ライン210は、二酸化炭素分離回収ユニット110を構成する第1の気液分離部140から排出された回収ガスX(二酸化炭素および水蒸気)が通過するライン(配管)である。なお、ここでは、第1の気液分離部140から排出された回収ガスXの温度は、例えば、120℃である。
【0046】
圧縮部220は、通過ライン210に設けられ、第1の気液分離部140から排出された回収ガスXを、例えば、240kPa(G)に圧縮する。なお、Pa(G)は、大気圧をゼロとしたゲージ圧を示す。そうすると、圧縮後の回収ガスの温度は、例えば、190℃になる。
【0047】
第1の熱交換部320は、圧縮部220の下流側において、圧縮部220による回収ガスXの圧縮に伴って発生する熱(潜熱)を回収して、上述した二酸化炭素分離回収ユニット110を構成する送出ライン130を流通するリッチ吸収液Rであって、第3の熱交換部132および第2の熱交換部310で加熱されたリッチ吸収液Rをさらに加熱する。
【0048】
例えば、圧縮部220の下流側の回収ガスX(例えば、190℃)は、第1の熱交換部320によって120℃まで冷却される。これに伴い、第2の熱交換部310によって110℃に加熱されたリッチ吸収液Rは、第1の熱交換部320によって120℃まで加熱される。なお、ここで、第1の熱交換部320が加熱してもリッチ吸収液Rの温度の上昇が緩慢であるのは、リッチ吸収液R中において、水が蒸発する際に熱が消費されるためである。
【0049】
ここで、第1の気液分離部140から排出された回収ガスXは、圧縮部220によって圧縮され、第1の熱交換部320によって熱が回収されると、回収ガスX中の水蒸気が凝縮して水となる。そこで、圧縮部220の下流側であり、第1の熱交換部320の下流側に、第2の気液分離部230を設ける。
【0050】
第2の気液分離部230は、圧縮部220の下流側に設けられ、第1の熱交換部320によって熱(潜熱)が回収されることによって、回収ガスXにおいて凝縮した水(凝縮水)を回収ガスXから分離する。
【0051】
第2の熱交換部310は、第2の気液分離部230において、凝縮水が分離された回収ガスXの熱(顕熱)を回収して、上述した送出ライン130を流通するリッチ吸収液Rであって、第3の熱交換部132に加熱されたリッチ吸収液Rを加熱する。
【0052】
例えば、第1の熱交換部320によって冷却され、第2の気液分離部230によって凝縮水が分離された回収ガスX(例えば、120℃)は、第2の熱交換部310によって60℃まで冷却される。これに伴い、第3の熱交換部132によって加熱されたリッチ吸収液Rは、第2の熱交換部310によって110℃まで加熱される。
【0053】
上述したように、本実施形態にかかる第1の気液分離部140で分離された回収ガスXは、充填塔で吸収液を再生する構成と比較して、回収ガスX中における二酸化炭素に対する水蒸気の比率が大きい。したがって、圧縮部220によって、圧縮された後の回収ガスXの温度が200℃程度となるような低い圧力に回収ガスXを圧縮したとしても、第1の熱交換部320は、多量の水蒸気の潜熱を回収することができる。つまり、1の圧縮部であっても、吸収液の再生に必要な熱量を回収することが可能となる。
【0054】
また、圧縮部220は、圧縮された後の回収ガスXの温度が200℃程度にしかならないため、圧縮部220を構成するインペラ等の部材を、安価な材料で構成することができ、圧縮部220のコストを低減することが可能となる。また、インペラ等の部材の耐熱温度が200℃程度の圧縮機が、一般的に広く流通しているため、このような圧縮機を、圧縮部220に容易に利用することができる。
【0055】
第3の気液分離部250は、第2の熱交換部310によって熱(顕熱)が回収されることによって、回収ガスXにおいて凝縮した水(凝縮水)を回収ガスXから分離する。
【0056】
第1の凝縮水導入部260は、凝縮水導入ライン262と、圧力調整弁264とを含んで構成される。凝縮水導入ライン262は、第3の気液分離部250の底部と、上述した返送ライン160におけるポンプ170bと冷却部162との間を接続するライン(配管)である。凝縮水導入ライン262には、圧力調整弁264が設けられており、第3の気液分離部250において分離された凝縮水(60℃)は、圧力調整弁264によって圧力が調整されて、凝縮水導入ライン262を通じて、上述した返送ライン160におけるポンプ170bと冷却部162との間に導入される。
【0057】
第2の凝縮水導入部270は、凝縮水導入ライン272と、圧力調整弁274とを含んで構成される。凝縮水導入ライン272は、第2の気液分離部230の底部と、上述した返送ライン160における第3の熱交換部132の上流側とを接続するライン(配管)である。凝縮水導入ライン272には、圧力調整弁274が設けられており、第2の気液分離部230において分離された凝縮水(120℃)は、圧力調整弁274によって圧力が調整されて、凝縮水導入ライン272を通じて、上述した返送ライン160における第3の熱交換部132の上流側に導入される。
【0058】
上述したように、加熱部134において、リッチ吸収液Rから二酸化炭素を放出するために加熱を行うと、二酸化炭素とともに水(水蒸気)がリッチ吸収液Rから放出される。そうすると、第1の気液分離部140で分離されるリーン吸収液L中の水の量が低下し、吸収剤の濃度が上昇することとなる。そこで、第1の気液分離部140から排出された回収ガスXに含まれる水蒸気由来の凝縮水(第2の気液分離部230および第3の気液分離部250で分離された凝縮水)を、第1の気液分離部140で分離されたリーン吸収液Lに混合することで、吸収部120で利用するリーン吸収液Lの吸収剤の濃度を最適にすることができる。
【0059】
第2の気液分離部230で分離された凝縮水は、温度が120℃と高いため、返送ライン160における第3の熱交換部132の上流側に導入する。こうすることで、第3の熱交換部132は、第1の気液分離部140から分離されたリーン吸収液Lの顕熱のみならず、凝縮水の顕熱を回収することが可能となる。なお、第2の気液分離部230で分離された凝縮水は、返送ライン160ではなく、第1の気液分離部140に導入してもよい。
【0060】
ここで、第3の気液分離部250で分離された凝縮水も、返送ライン160における第3の熱交換部132の上流側に導入する構成が考えられるが、第3の気液分離部250で分離された凝縮水の温度は、第1の気液分離部140におけるリーン吸収液L(またはリッチ吸収液R)の温度よりも極めて低温(60℃)である。したがって、第3の気液分離部250で分離された凝縮水を返送ライン160における第3の熱交換部132の上流側に導入すると、第3の熱交換部132において回収できる熱量が低下してしまう。
【0061】
そこで、第3の気液分離部250において分離された凝縮水を、返送ライン160における第3の熱交換部132の下流側に導入することで、第3の熱交換部132が回収する熱エネルギーの損失を抑制しつつ、リーン吸収液Lを最適な濃度に維持することが可能となる。
【0062】
(第1の熱交換部320と、第2の熱交換部310および第3の熱交換部132とによる熱交換効率)
図2は、第1の熱交換部320と、第2の熱交換部310および第3の熱交換部132との温度(T)−熱量(Q)線を説明するための図である。
図2中、第1の熱交換部320のTQ線を実線で示し、第3の熱交換部132および第2の熱交換部310のTQ線を破線で示す。
【0063】
図2に示すように、吸収部120から送出されたリッチ吸収液Rは、(A)→(B)に示す順で加熱され、第1の気液分離部140でリーン吸収液Lと回収ガスXに分離された後、回収ガスXは、(C)→(D)に示す順で冷却される。
【0064】
具体的に説明すると、第2の気液分離部230によって凝縮水が分離された回収ガスXの顕熱は、第2の熱交換部310によって回収され、吸収部120から送出されたリッチ吸収液Rが加熱される。これにより、120℃の回収ガスXは、60℃に冷却される(D)とともに、第2の気液分離部230による加熱に加えて、第3の熱交換部132によって、40℃のリッチ吸収液Rは、110℃に加熱される(A)。
【0065】
一方、第1の気液分離部140で分離され、圧縮部220によって圧縮された回収ガスXの潜熱は、第1の熱交換部320によって回収され、第3の熱交換部132および第2の熱交換部310で加熱されたリッチ吸収液Rがさらに加熱される。これにより、200℃の回収ガスXは、120℃に冷却される(C)とともに、第1の熱交換部320によって、110℃のリッチ吸収液Rは、120℃に加熱される(B)。
【0066】
ここで、(A)における温度上昇および(D)における温度低下と、(B)における温度上昇および(C)における温度低下とを比較すると、(A)における温度上昇および(D)における温度低下の方が、傾きが大きいことが分かる。これは、(A)および(D)において、リッチ吸収液Rや回収ガスXに顕熱を与えたり、顕熱を回収したりしており、(B)および(C)において、リッチ吸収液Rや回収ガスXの潜熱を与えたり、潜熱を回収したりしているためである。
【0067】
なお、熱付与におけるTQ線(A)、(B)と、熱回収におけるTQ線(C)、(D)との差分が小さいほど熱交換効率が高いといえるが、
図2中、(E)で示す領域においては、熱付与におけるTQ線(B)と、熱回収におけるTQ線(C)との差分が急激に大きくなっており、熱交換効率が低いことが分かる。これは、圧縮部220によって回収ガスXがスーパーヒートされたためであると考えられる。この現象は、圧縮部220の下流側では必ず生じる現象である。したがって、圧縮部の数が多ければ多いほど、熱交換効率が低い箇所が増加することになる。
【0068】
しかし、本実施形態にかかる二酸化炭素回収装置100では、圧縮部220が1つであっても、吸収液の再生に必要な熱量を回収することができるため、熱交換効率が低い箇所を最低限(1箇所)に抑えることが可能となる。
【0069】
(実施例)
二酸化炭素回収装置100による吸収液の再生(実施例)と、充填塔を利用した吸収液の再生(比較例)との消費エネルギーの比較を行った結果を表1に示す。比較例においては、圧縮部を設けず、充填塔から排出された回収ガスの熱を回収していない。
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例において、加熱部で消費するエネルギーは621kWであり、これに対し、比較例において、加熱部で消費するエネルギーは975kWであった。また、実施例では圧縮部によって回収ガスXを圧縮するための動力に61kWを要した。
【0071】
したがって、消費した総エネルギーは、実施例において682kWであり、比較例において975kWであった。これにより、実施例では、比較例と比較して、消費エネルギーを30%程度削減できることが分かった。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態にかかる二酸化炭素回収装置100によれば、リッチ吸収液Rからリーン吸収液Lへ再生する構成を工夫することで、圧縮部220が1つであっても、吸収液の再生に要する熱エネルギーを効率よく回収することが可能となる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上述した実施形態において、加熱部134において一度加熱しただけで、リッチ吸収液Rに吸収された二酸化炭素を実質的にすべて放出することができる程度の熱量を、加熱部134がリッチ吸収液Rに与えることができれば、循環ライン142を設けずともよい。
【0075】
また、吸収部120において、リーン吸収液Lが二酸化炭素を吸収することによって得られる熱(反応熱)を回収して、送出ライン130における第2の熱交換部310の下流側のリッチ吸収液Rを加熱してもよい。
【0076】
また、充填材122を、ステンレス鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料で構成する場合を例に挙げて説明したが、リーン吸収液Lやリッチ吸収液Rの処理温度における耐久性や耐腐食性を有する材料であって、所望する接触面積を提供し得る形状のものを適宜選択してもよい。