(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043253
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光通信装置及び動的波長割当方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20161206BHJP
H04J 14/00 20060101ALI20161206BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20161206BHJP
H04B 10/272 20130101ALI20161206BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04B9/00 E
H04B9/00 272
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-175529(P2013-175529)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-46676(P2015-46676A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智暁
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊二
【審査官】
速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−186588(JP,A)
【文献】
特開2011−135280(JP,A)
【文献】
特開平09−083491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加入者装置と単一の局側装置とがPONトポロジで接続された光加入者システムにおける前記局側装置として機能する光通信装置であって、
前記加入者装置からの要求に応じて、前記局側装置と通信を行うための通信波長を前記加入者装置に割り当てる動的波長帯域割当回路を備え、
前記動的波長帯域割当回路が、
通信波長のうちの上り又は下りに使用されている使用波長の使用波長数及び通信量を測定する通信量測定部と、
与えられた契機に、前記通信量測定部の測定した通信量を、前記局側装置の1波長あたりの最大収容可能帯域で按分した数を下回らない最小の整数を算出することで前記通信量測定部の測定した通信量を転送するに足りる必要波長数を求め、前記必要波長数が使用波長数よりも少ないか否かを判定し、必要波長数が使用波長数よりも少ない場合は使用波長のうちのいずれかの波長を使用停止波長に決定するスリープ波長決定部と、
前記使用停止波長を使用していた前記加入者装置を、使用波長のうちの使用停止波長とは異なる波長に切り替える波長切替部と、を備え、
前記波長切替部の切り替えを契機に、前記スリープ波長決定部の決定した使用停止波長の送受信器をスリープ状態に移行する光通信装置。
【請求項2】
複数の加入者装置と単一の局側装置とがPONトポロジで接続された光加入者システムにおける前記局側装置として機能する光通信装置であって、
前記加入者装置からの要求に応じて、前記局側装置と通信を行うための通信波長を前記加入者装置に割り当てる動的波長帯域割当回路を備え、
前記動的波長帯域割当回路が、
通信波長のうちの上り又は下りに使用されている使用波長の使用波長数及び通信量を測定する通信量測定部と、
与えられた契機に、前記通信量測定部の測定した各使用波長の通信量と各使用波長の最大収容可能帯域との差分である残帯域を算出し、使用波長のうちのいずれかの通信量が別の使用波長の前記残帯域より小さい場合に、必要波長数が使用波長数よりも少ないと判定し、必要波長数が使用波長数よりも少ない場合は別の使用波長の前記残帯域より小さいと判定された通信量の使用波長を、使用停止波長に決定するスリープ波長決定部と、
前記使用停止波長を使用していた前記加入者装置を、使用波長のうちの使用停止波長とは異なる波長に切り替える波長切替部と、を備え、
前記波長切替部の切り替えを契機に、前記スリープ波長決定部の決定した使用停止波長の送受信器をスリープ状態に移行する光通信装置。
【請求項3】
複数の加入者装置と単一の局側装置とがPONトポロジで接続された光加入者システムにおける前記局側装置として機能する光通信装置であって、
前記加入者装置からの要求に応じて、前記局側装置と通信を行うための通信波長を前記加入者装置に割り当てる動的波長帯域割当回路を備え、
前記動的波長帯域割当回路が、
通信波長のうちの上り又は下りに使用されている使用波長の使用波長数及び通信量を測定する通信量測定部と、
与えられた契機に、前記通信量測定部の測定した各使用波長の通信量を用いて、任意の使用波長から順に、当該使用波長に割り当てられた加入者装置の通信量の総和が、当該使用波長の最大収容可能帯域を超えないよう加入者装置の通信量を割り当て、波長を割り当てるべき加入者装置がなしとなった場合に、前記通信量測定部の測定した通信量を転送するに足りる必要波長数が使用波長数よりも少ないと判定し、必要波長数が使用波長数よりも少ない場合は波長を割り当てるべき加入者装置がなしとなった波長を、使用停止波長に決定するスリープ波長決定部と、
前記使用停止波長を使用していた前記加入者装置を、使用波長のうちの使用停止波長とは異なる波長に切り替える波長切替部と、を備え、
前記波長切替部の切り替えを契機に、前記スリープ波長決定部の決定した使用停止波長の送受信器をスリープ状態に移行する光通信装置。
【請求項4】
複数の加入者装置と単一の局側装置とがPONトポロジで接続された光加入者システムにおける前記局側装置として機能する光通信装置であって、
前記加入者装置からの要求に応じて、前記局側装置と通信を行うための通信波長を前記加入者装置に割り当てる動的波長帯域割当回路を備え、
前記動的波長帯域割当回路が、
通信波長のうちの上り又は下りに使用されている使用波長の使用波長数及び通信量を測定する通信量測定部と、
与えられた契機に、前記通信量測定部の測定した通信量を転送するに足りる必要波長数が使用波長数よりも少ないか否かを判定し、必要波長数が使用波長数よりも少ない場合は使用波長のうちのいずれかの波長を使用停止波長に決定するスリープ波長決定部と、
前記使用停止波長を使用していた前記加入者装置を、使用波長のうちの使用停止波長とは異なる波長に切り替える波長切替部と、
使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、前記スリープ波長決定部及び前記波長切替部の動作を中止させる輻輳処理部と、を備え、
前記波長切替部の切り替えを契機に、前記スリープ波長決定部の決定した使用停止波長の送受信器をスリープ状態に移行する光通信装置。
【請求項5】
前記動的波長帯域割当回路は、
使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、前記スリープ波長決定部及び前記波長切替部の動作を中止させる輻輳処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光通信装置。
【請求項6】
前記輻輳処理部は、
使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、通信波長のうちの使用していない波長のいずれかを新たな使用波長に決定し、
前記波長切替部は、輻輳の発生した波長を使用している加入者装置を、前記新たな使用波長に割り当てる
ことを特徴とする請求項4または5に記載の光通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重及び時分割多重を組み合わせたPON(Passive Optical Networks)における、波長組の割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急速なインターネットの普及に伴い、光加入者システムの大容量化、高度化、経済化が求められている中、それを実現する手段としてPONの研究が進められている。PONとは、光受動素子による光合分波器を用いて、1個の局側装置(OLT:Optical Line Terminal)及び伝送路の一部を複数の加入者装置(ONU:Optical Network Unit)で共有することにより、経済化を図る光通信システムである。
【0003】
現在、日本では主に1Gbpsの回線容量を最大32ユーザで時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)によって共有する経済的な光加入者システムの一つであるGE−PON(Gigabit Ethernet Passive Optical Network)(Ethernetは登録商標)が導入されている。これにより、FTTH(Fiber To The Home)サービスが現実的な料金で提供されるようになった。
【0004】
また、より大容量のニーズに対応するため、次世代光加入者システムとして、総帯域が10Gbps級である10G−EPONの研究が進められており、2009年に国際標準化が完了した。これは、送受信器のビットレートを増大させることにより、光ファイバなどの伝送路部分はGE−PONと同一のものを利用しながら、大容量化を実現する光加入者システムである。
【0005】
さらなる将来には、超高精細映像サービスやユビキタスサービスなど10G級を超える大容量が求められることが考えられるが、単純に送受信器のビットレートを10G級から40/100G級に増大させるだけでは、システムアップグレードにかかるコストの増大により、実用化が難しいという課題があった。
【0006】
これを解決する手段として、帯域要求量に応じて局側装置内の送受信器またはその周辺回路を含むインタフェース盤(ラインカード)であるOSU(Optical Subscriber Unit)を段階的に増設することができるように、送受信器に波長可変性を付加し、時分割多重(TDM)及び波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を効果的に組み合わせた波長可変型WDM/TDM−PONが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
波長可変型WDM/TDM−PONは非特許文献2にあるように、ユーザの要求に合わせて段階的な総帯域の増設や柔軟な負荷分散が可能となるシステムとして近年注目されており、その段階的な総帯域の増設時に、負荷分散を行うために、ONUの所属するOSUの変更には動的波長帯域割当アルゴリズムを用いる。動的波長帯域割当(DWBA: Dynamic Wavelength and Bandwidth Allocation)は、所属するOSU内において、ONUからの上りの動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)と、所属OSUを切替える波長切替の組み合わせによって実現される。
【0008】
図1に本発明に関連する波長可変型WDM/TDM−PONシステムの一例を示す。波長可変型WDM/TDM−PONシステムは、局側装置(OLT)と加入者装置(ONU)を備える。OLT91とONU92間はパワースプリッタまたは波長ルータなどの受動光部品93を用いたpoint−to−multipoint構成のPONトポロジで接続される。
【0009】
OLT91は、m種の各λ1
d,u〜λm
d,uの波長組を送受信するm個のラインカードOSU11と、動的波長帯域割当回路13を備える。OSU#1〜OSU#mはONU92から送信されるλ1
d,u〜λm
d,uのそれぞれの波長信号を送受信する。OLT91にはONU#1〜ONU#hのh台のONU92が接続され、それぞれのONU92は下りと上りの波長の組であるλ1
d,u〜λm
d,uのいずれかの波長の組を用いて送受信する。ONU92はOLT91からの指示に従ってλ1
d,u〜λm
d,uの波長を切替えて送受信することができる。
【0010】
各ONU92には設置されるユーザ宅の通信装置からの上り信号が入力され、ONU92内部の光送受信器で上り光信号として送信される。上り信号はONU92側のパワースプリッタまたは波長ルータからはOLT91に向けて1本の光ファイバに多重されるため、上り信号が重ならないよう各ONU92が送信する上り信号の送信時刻、送信継続時間をOLT91が算出し、制御する。OSU#1〜OSU#mで受信した上り信号S1
u〜Sm
uはOLT91内の多重分離部12にて集約され、一つの上り信号に多重されて中継ネットワーク側に送信される。一方中継ネットワーク側から各ONU92への下り信号は、多重分離部12にて下り信号に記されている宛先ONU情報とONU92の所属するOSU情報を基に、OSU#1〜OSU#mへの下り信号S1
d〜Sm
dに分離される。分離された下り信号S1
d〜Sm
dはOSU#1〜#mの有するλ1
d,u〜λm
d,uの波長で、各ONU92に送られる。下り信号は各OSU11の波長で同報されるが、ONU92の送受信波長が所属する各OSU11の送受信波長に設定されているため、ONU92は受信する波長の信号から、自宛の情報を選択し、ONU92からユーザ宅の通信装置へ出力される。
【0011】
動的波長帯域割当回路13は、DWBA計算部132、切替指示信号生成部133、制御信号送信部134、要求信号受信部131を備える。要求信号受信部131は、各ONU92から送信された帯域要求を含んだ信号を各OSUを通じて受信する。DWBA計算部132は、その要求に基づいて各ONU92に割り当てる上りデータ信号および要求信号の送信時刻及び送信継続時間を算出する。切替指示信号生成部133は、その情報を格納した指示信号を生成する。制御信号送信部134は、生成した指示信号を、各OSU11を通じて各ONU92へ送信する。これにより、各OSU11は、要求のあったONU92に向けて、波長切替指示とともに、切替先波長とその波長の送信開始時刻及び送信継続時間を送信する。また、DWBA計算部132は、PON区間のONU92とOSU11の接続情報を管理している。波長を切替えた際、DWBA計算部132は、波長を変更したONU92に関して、多重分離部12が宛先が当該ONUの下り信号の転送先OSU11を変えるよう多重分離部12に指示する。
【0012】
図2にONUの構成を示す。ONU92は、データ受信部21、データ送信部28、上りバッファメモリ22、下りバッファメモリ27、宛先解析選択受信部26、フレーム送出制御部23、フレーム組立送信部24、波長可変光送受信器25、要求帯域計算部32、要求信号生成部31、指示信号受信部29、波長切替制御部30を備える。
【0013】
データ受信部21は、ユーザからの上り信号を受信する。上りバッファメモリ22は、受信した上り信号を一時的に蓄積する。フレーム送出制御部23は、指示信号受信部29から指定された上り信号の送信開始時刻および送信継続時間に従って、上り信号をフレーム組立送信部24に送る。フレーム組立送信部24はPON構成においてOLT91に信号を送信するために必要なフレーム形式を構成し、波長可変光送受信器25に送る。波長可変光送受信器25は波長切替制御部30で指定された波長λ1
d,u〜λm
d,uのいずれかで光信号に変換してOLT91へ送信する。OSU11からの下り信号は、波長可変光送受信器25において、指定された波長を選択して受信し、宛先解析選択受信部26において下り信号の宛先を解析して自宛の情報のみを選択し、下りバッファメモリ27に格納する。データ送信部28は下りバッファメモリ27に蓄積されている情報をユーザへ下り信号として送信する。
【0014】
波長可変光送受信器25は、OLT91からの指示信号を受信して電気信号に変換し、指示信号受信部29へ送る。指示信号受信部29は、指示信号の指示内容を解析し、指示信号に波長切替指示、切替先波長及び切替開始時刻が含まれていれば、含まれていた切替開始時刻に切替先波長及び切替実行指示を波長切替制御部30に送る。波長切替制御部30は波長切替制御に従って波長可変光送受信器25の波長を切替える。
【0015】
また、OLT91はONU92の要求する帯域の情報をONU92から受信して帯域の割当に利用する。その方法はさまざまであるが、例えばこの要求帯域の情報をOLT91へ送信するよう指示信号を用いて指示し、その指示に従ってONU92がOLT91へ要求帯域の情報を要求信号に記載することもある。その場合、指示信号受信部29は要求信号送出を要求する指示信号を受信すると、要求信号生成部31へ要求信号の生成を指示する。要求信号生成部31は要求帯域計算部32に要求する帯域を算出するよう指示する。要求帯域計算部32は上りバッファメモリ22に蓄積されている上り信号のデータ量を計測しており、そのデータ量に基づき要求帯域量を決定し、要求信号生成部31へ要求帯域量を送る。要求信号生成部31は要求量を記載した要求信号を生成し、フレーム送出制御部23に送る。
【0016】
前記指示信号には要求信号の送信開始時刻および送信継続時間の情報が含まれていることもある。その場合、指示信号受信部29はフレーム送出制御部23に指示信号に含まれていた要求信号の送信開始時刻および送信継続時間の情報を送り、フレーム送出制御部23は指示された時刻に要求信号をフレーム組立送信部24に送り、波長可変光送受信器25を介してOLT91へ要求信号を送信する。また、OLT91から送信される指示信号にはONU92がユーザ側から受信した上り信号をOLT91へ送信する送信開始時刻および送信継続時間が含まれている。指示信号受信部29はフレーム送出制御部23に指示信号に含まれていた上り信号の送信開始時間および送信継続時間の情報を送り、フレーム送出制御部23は指示された時刻に上り信号を上りバッファメモリ22からフレームを取り出し、送信継続時間の期間フレーム組立送信部24に送り、波長可変光送受信器25を介してOLT91へ送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Kazutaka Hara et al,“Flexible load balancing technique using dynamic wavelength bandwidth allocation (DWBA) toward 100Gbit/s−class−WDM/TDM−PON”,Tu.3.B.2,ECOC2010,2010
【非特許文献2】S.Kimura,“WDM/TDM−PON Technologies for Future Flexible Optical Access Networks”,6A1−1,OECC2010,2010
【非特許文献3】玉置他,“次世代光アクセスネットワークに向けた波長可変型WDM/TDM−PON”,電子情報通信学会技術研究報告,vol.112,no.118, pp.39−44,2012年7月
【非特許文献4】太田他、“低遅延なEPONを実現する動的帯域割当方式”、電子情報通信学会技術研究報告.NS、ネットワークシステム、vol.102、no.20、pp.5−8、2002年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
非特許文献3においては、環境負荷低減効果、電力削減による経済性をさらに高めるため、背景技術に示した波長割り当て変更手順を用い、OSU11に所属するONU92の割当を変更し、使用しないOSU11を電源断またはスリープ状態にすることによる局側装置の省電力動作が可能であることを示している。しかし、具体的なスリープ状態への遷移手順や、OSU11の稼働台数については示されていない。ここで、スリープ状態とは、OSU11の通信を停止する際に供給される電力を完全に遮断せず、OSU11の通信再開を迅速に行うための最低限の電力を供給している状態を指す。
【0019】
OSU稼働台数の削減による省電力効果を最大にするためには、このスリープ化するOSU数を多くする、すなわち稼働させるOSU数を最小にすることが望ましい。使用しないOSU11とは、通信の用に供しないOSU11であるため、通信の状態に合わせてどのように使用するOSU11を最小化するか、その具体的な手順の策定が課題となる。また、光加入者システムはコスト低減要求が高く、スリープ状態にするOSU11を決めるための手順は、簡易かつ実装が容易であることが求められる。
【0020】
本発明は、複数の加入者装置と単一の局側装置とをPONトポロジで接続された光加入者システムにおいて、加入者装置からの要求に応じて局側装置と通信を行うための通信波長を加入者装置に割り当てる際に、簡易かつ実装が容易に稼働させるOSU数を最小にすることの可能な光通信装置及び動的波長割当方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明の光通信装置は、
複数の加入者装置と単一の局側装置とがPONトポロジで接続された光加入者システムにおける前記局側装置として機能する光通信装置であって、
前記加入者装置からの要求に応じて、前記局側装置と通信を行うための通信波長を前記加入者装置に割り当てる動的波長帯域割当回路を備え、
前記動的波長帯域割当回路が、
通信波長のうちの上り又は下りに使用されている使用波長の使用波長数及び通信量を測定する通信量測定部と、
与えられた契機に、前記通信量測定部の測定した通信量を転送するに足りる必要波長数が使用波長数よりも少ないか否かを判定し、必要波長数が使用波長数よりも少ない場合は使用波長のうちのいずれかの波長を使用停止波長に決定するスリープ波長決定部と、
前記使用停止波長を使用していた前記加入者装置を、使用波長のうちの使用停止波長とは異なる波長に切り替える波長切替部と、を備え、
前記波長切替部の切り替えを契機に、前記スリープ波長決定部の決定した使用停止波長の送受信器をスリープ状態に移行する。
【0022】
本願発明の光通信装置では、前記スリープ波長決定部は、前記通信量測定部の測定した通信量を、前記局側装置の1波長あたりの最大収容可能帯域で按分した数を下回らない最小の整数を算出することで前記必要波長数を求めてもよい。
【0023】
本願発明の光通信装置では、前記スリープ波長決定部は、前記通信量測定部の測定した各使用波長の通信量と各使用波長の最大収容可能帯域との差分である残帯域を算出し、使用波長のうちのいずれかの通信量が別の使用波長の前記残帯域より小さい場合に、必要波長数が使用波長数よりも少ないと判定し、別の使用波長の前記残帯域より小さいと判定された通信量の使用波長を、前記使用停止波長に決定してもよい。
【0024】
本願発明の光通信装置では、前記スリープ波長決定部は、前記通信量測定部の測定した各使用波長の通信量を用いて、任意の使用波長から順に、当該使用波長に割り当てられた加入者装置の通信量の総和が、当該使用波長の最大収容可能帯域を超えないよう加入者装置の通信量を割り当て、波長を割り当てるべき加入者装置がなしとなった場合に、必要波長数が使用波長数よりも少ないと判定し、波長を割り当てるべき加入者装置がなしとなった波長を、前記使用停止波長に決定してもよい。
【0025】
本願発明の光通信装置では、前記動的波長帯域割当回路は、使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、前記スリープ波長決定部及び前記波長切替部の動作を中止させる輻輳処理部をさらに備えてもよい。
【0026】
本願発明の光通信装置では、前記輻輳処理部は、使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、通信波長のうちの使用していない波長のいずれかを新たな使用波長に決定し、前記波長切替部は、輻輳の発生した波長を使用している加入者装置を、前記新たな使用波長に割り当ててもよい。
【0027】
本願発明の光通信装置では、前記与えられた契機は、予め定められた一定周期であってもよい。
【0028】
本願発明の動的波長割当方法は、
複数の加入者装置と単一の局側装置とがPONトポロジで接続された光加入者システムにおいて、前記局側装置と通信を行うための通信波長を前記局側装置が前記加入者装置に割り当てる動的波長割当方法であって、
通信波長のうちの上り又は下りに使用されている使用波長の使用波長数及び通信量を測定する通信量測定手順と、
与えられた契機に、前記通信量測定手順で測定した通信量を転送するに足りる必要波長数が使用波長数よりも少ないか否かを判定し、必要波長数が使用波長数よりも少ない場合は使用波長のうちのいずれかの波長を使用停止波長に決定するスリープ波長決定手順と、
前記スリープ波長決定手順で決定した使用停止波長を使用していた前記加入者装置を、当該使用停止波長とは異なる使用波長に切り替える波長切替手順と、
前記スリープ波長決定手順で決定した使用停止波長波長の送受信器をスリープ状態に移行するスリープ手順と、
を順に有する。
【0029】
本願発明の動的波長割当方法では、前記スリープ波長決定手順において、前記通信量測定手順で測定した通信量を、前記局側装置の1波長あたりの最大収容可能帯域で按分した数を下回らない最小の整数を算出することで前記必要波長数を求めてもよい。
【0030】
本願発明の動的波長割当方法では、前記スリープ波長決定手順において、前記通信量測定部の測定した各使用波長の通信量と各使用波長の最大収容可能帯域との差分である残帯域を算出し、使用波長のうちのいずれかの通信量が別の使用波長の前記残帯域より小さい場合に、必要波長数が使用波長数よりも少ないと判定し、別の使用波長の前記残帯域より小さいと判定された通信量の使用波長を、前記使用停止波長に決定してもよい。
【0031】
本願発明の動的波長割当方法では、前記スリープ波長決定手順において、前記通信量測定部の測定した各使用波長の通信量を用いて、任意の使用波長から順に、当該使用波長に割り当てられた加入者装置の通信量の総和が、当該使用波長の最大収容可能帯域を超えないよう加入者装置の通信量を割り当て、波長を割り当てるべき加入者装置がなしとなった場合に、必要波長数が使用波長数よりも少ないと判定し、波長を割り当てるべき加入者装置がなしとなった波長を、前記使用停止波長に決定してもよい。
【0032】
本願発明の動的波長割当方法では、使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、前記スリープ波長決定手順及び前記波長切替手順の動作を中止させる輻輳処理手順を、前記スリープ波長決定手順及び前記波長切替手順と同時に有してもよい。
【0033】
本願発明の動的波長割当方法では、前記輻輳処理手順において、使用波長のうちのいずれかの波長で輻輳が発生した場合、通信波長のうちの使用していない波長のいずれかを新たな使用波長に決定し、輻輳の発生した波長を使用している加入者装置を、前記新たな使用波長に割り当ててもよい。
【0034】
本願発明の動的波長割当方法では、前記与えられた契機は、予め定められた一定周期であってもよい。
【0035】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、複数の加入者装置と単一の局側装置とをPONトポロジで接続された光加入者システムにおいて、加入者装置からの要求に応じて局側装置と通信を行うための通信波長を加入者装置に割り当てる際に、簡易かつ実装が容易に稼働させるOSU数を最小にすることの可能な光通信装置及び動的波長割当方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の波長可変型WDM/TDM−PONシステムの構成図である。
【
図2】本発明の波長可変型WDM/TDM−PONシステムにおけるONUの構成図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるOSU増減設前の状態の一例を示す。
【
図4】本発明の実施例1におけるOSU増減後の状態の一例を示す。
【
図5】本発明の実施例2におけるOSU増減設前の状態の一例を示す。
【
図6】本発明の実施例2におけるOSU増減設後の状態の一例を示す。
【
図7】本発明の実施例3におけるOSU増減設前の状態の一例を示す。
【
図8】本発明の実施例3におけるOSU増減設後の状態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0039】
本発明に係る光加入者システムは、複数のONU92と単一のOLT91とをPONトポロジで接続した構成を有する。OLT91が各ONU92の波長を決定し、各ONU92がOLT91から指示された波長を用いてOLT91と通信を行う。OLT91は、本発明に係る光通信装置として機能する。
【0040】
本発明に係る光通信装置は、動的波長帯域割当回路13が通信量測定部、スリープ波長決定部、波長切替部及び輻輳処理部と、を備える。本発明に係る動的波長割当方法は、動的波長帯域割当回路13が、通信量測定手順と、スリープ波長決定手順と、波長切替手順と、スリープ手順と、を順に実行する。スリープ波長決定手順又は波長切替手順と並行して、輻輳処理手順を実行してもよい。スリープ波長決定部、波長切替部及び輻輳処理部は、DWBA計算部132に備わる。通信量測定部は、OSU11又は多重分離部12に備わる。
【0041】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態は、上り又は下り総トラフィック量をモニタし、OSU最大帯域、稼働するOSU台数、稼働OSUの総トラフィックに対して、
(数1)
稼働OSU台数×OSU最大収容可能帯域>総トラフィック
となる最小のOSU台数を稼働させ、残りのOSUは電源を遮断、またはスリープ状態へ移行する手順である。
次に本実施形態の動作を説明する。
【0042】
図3及び
図4に本発明の実施形態1における稼働OSU台数の増減設の動作を示す。本実施形態においては、OLT91は3台のOSU11を搭載し、OSU#1、#2、#3はλ1
d、λ2
d、λ3
dの下り波長を用いることが可能で、それぞれの波長は下り40Gbit/sのTDM−PONである。ONU92は5台接続されており、省電力動作実施前のOSU11の割当は、OSU#1にONU#1、#2、OSU#2にONU#3、OSU#3にONU#4、#5が割り当てられているとする。この場合、使用波長数は3である。ONU#1、#2、#3、#4の下り利用帯域は10Gbit/s、ONU#5の下り利用帯域は20Gbit/sである。以上の状況を
図3に示す。
【0043】
OLT91のDWBA計算部132は全OSU11の合算した上り利用帯域を、多重分離部12は全OSU11の合算下り利用帯域を測定しており、動的波長帯域割当回路13がOSU増減設の判断を行う際にこれらの測定値を参照する。DWBA計算部132で測定するOSUの利用帯域は、OSUが占有しているとみなす帯域であれば特に指定しない。例えば、動的波長帯域割当回路13が参照した時点での瞬時値でもよいし、それ以前の一定期間の平均値でもよいし、一定区間の最大値でもよい。
【0044】
次に、低消費電力のためのOSU減設手順について説明する。
まず、動的波長帯域割当回路13は、通信量測定手順を実行する。具体的には、動的波長帯域割当回路13は、指定されたタイミングで、多重分離部12で測定している全OSU11の下り合算トラフィック量を読み出す。本実施形態においてはONU#1〜#5の利用帯域を合算して60Gbit/sとなる。
【0045】
そして、動的波長帯域割当回路13は、スリープ波長決定手順を実行する。具体的には、OSU11の下りリンク最大収容可能帯域で割り、その数を下回らない最小の整数を求める。本実施形態では最大収容可能帯域をリンクレートの40Gbit/sと規定する。ただし、最大収容可能帯域は必ずしもリンクレートと等しい必要はない。輻輳を回避することを目的として、リンクレート以下の値とすることも可能である。本実施形態においては、合算トラフィック60Gbit/sを40Gbit/sで除算し、その数を下回らない最大の整数は2と算出される。すなわち、必要波長数は2であり、必要波長数が使用波長数よりも少ないため、稼働OSUの台数を2に減らすと定める。
【0046】
スリープ波長決定手順では、次に、稼働しているOSU11から電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させる使用停止波長のOSU11を選定する。また、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行すると定めた使用停止波長のOSU11に所属しているすべてのONU92について、波長切替によって割当を変更する切替先OSU11を定める。この電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させるOSU11および切替先OSU11の選定方法は本出願において特に指定しない。本実施形態においては、OSU#3をスリーブ状態へ移行させるとし、ONU#4、#5をOSU#2へ波長切替によって所属変更することとする。
【0047】
次に、動的波長帯域割当回路13は、波長切替手順を実行する。具体的には、動的波長帯域割当回路13は、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行するOSU11に所属しているすべてのONU92の波長切替を実施する。波長切替を実施するONU92の順番は本実施形態では特に指定しない。電源を遮断もしくはスリープ状態に移行するOSU11に所属していたONU92がすべて波長切替によって変更された後に、当該OSU11の電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させる。本実施形態においては、ONU#4、#5の下り波長または上り下りの波長組をOSU#2へ波長切替を実施し、OSU#3の下り波長または上り下りの波長組に所属するONU92をすべて移行させた後にOSU#3をスリープ状態にする。
【0048】
図4に上記示して省電力動作のための波長切替手順を実施した後の各OSU11の収容状況、下り帯域の利用状況を示す。OSU#2にはONU#3、#4、#5が所属し、OSU#3はスリープ状態へ移行する。
【0049】
上記所属ONU92を波長切替する移行最中に、あるOSU11の上り又は下りのどちらかで輻輳が発生した場合は、輻輳処理手順を実行することが好ましい。輻輳処理手順では、OSU11の電源遮断またはスリープ状態への移行を中止する。
【0050】
また、前記波長割り当ての変更を中止した後、またはOSU11が電源を遮断もしくはスリープ状態に移行した後に、あるOSU11の上りまたは下りで輻輳が発生した場合は、輻輳処理手順を実行し、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行したOSU11を使用状態に回復させ、輻輳発生したOSU11からONU92を波長切替えすることで負荷分散が可能になる。この時、再起動させるOSU11の選定方法は本実施形態では特に指定しない。一度電源遮断もしくはスリープ状態にしたOSU11を再起動するには時間がかかると想定されるが、非特許文献4に示されるような要求信号に応じて動的に帯域を割り当てる動的帯域割当計算による上り、多重分離部12による下り、それぞれの公平制御を有することで、輻輳時における割当帯域の公平性は保つことができる。
【0051】
本実施形態の説明においては、所属OSU変更の判断に下り割当波長およびトラフィックに着目して説明したが、上り割当波長およびトラフィックにおいても同様に行うことが可能である。ただし、上りの場合は上りの総トラフィック量の算出は、DWBA計算部132において動的に帯域割当を計算した結果を集約した全OSU11の上り割当帯域の合算値か、多重分離部12から中継ネットワークに出力されるポートにおける出力帯域を測定した値を用いる。
【0052】
また、本実施形態においては、波長切替を実施する際には、下り波長の切替について記載したが、下り波長の切替と同時に上り波長も切替えることにより上り下り共に所属するOSU11を変更することも可能である。これは上り波長の切替においても同様である。
【0053】
本実施形態によって、以下の効果が期待できる。
本発明は、動作させるOSU11の数を、下りの総トラフィック量を1つのOSU11の下り最大帯域で割った数を下回らない最小の整数とすることで、下りトラフィックをすべて通過させ、かつ最小のOSU数を稼働させるというOSU11の省電力動作が可能になる。
【0054】
また、電源遮断またはスリープ状態へ移行するOSU11を定め、そのOSU11に所属するONU92を、電源遮断またはスリープ状態へ移行しないOSU11へ波長切替によって順次移行させたのちに、そのOSU11の電源を遮断またはスリープ状態に移行することで、各ONU92の通信トラフィックを可能な限り乱すことなく、省電力動作への移行が可能になる。特に波長切替動作が無瞬断で行えるのであれば、省電力動作への移行はユーザトラフィックへの影響なく行える。
【0055】
また、ONU92の波長割り当て変更の実施中に、OSU11の上りまたは下り帯域の輻輳が発生した場合には即座に割り当て変更を中止し、波長割り当て変更もしくは中止後にOSU11の上りまたは下り帯域の輻輳が発生した場合には電源を遮断またはスリープ状態となっていたOSU11を再稼働させることが好ましい。輻輳の発生したOSU11から再稼働した新たな使用波長のOSU11へONU92を波長変更させるため、上りトラフィック量の増加に合わせた総帯域の拡張が可能になる。
【0056】
また、本実施形態では下り、または上りの総利用帯域を測定している。この上り、下りの帯域測定はそれぞれ1か所で測定するため実現が比較的容易であり、本実施形態の適用が容易になるという利点がある。
【0057】
また、本実施形態において、OSU11の減設の契機を任意に与え、その契機におけるトラフィック量の測定結果を用いて稼働OSU台数を決定する。この契機を定期的に与えることで、常時稼働OSU台数を必要最小数に保つことが可能になる。また、あるOSU11のトラフィック量が増加した際には、電源を遮断もしくはスリープ状態にあったOSU11を再起動させる、またはOSU減設を中止することが好ましい。これにより、通信トラフィック量の変化に応じて使用するOSU数を増減させ、かつ稼働OSU台数が概ね最小となる局側装置の省電力動作が可能になる。
【0058】
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態は、上り又は下りトラフィック量をOSU11毎にモニタしており、空き帯域があればOSU11に割り当てられているONU92をすべて割り当て変更させ、移行元OSU11は電源を遮断またはスリープ状態へ移行する。
【0059】
次に本実施形態の動作を説明する。
図5及び
図6に本発明の第2の実施形態におけるOSU11の増減設の動作を示す。本実施形態においては、OLT91は3台のOSU11を搭載し、OSU#1、#2、#3はλ1
d、λ2
d、λ3
dの波長を用いることが可能で、それぞれの波長は下り40Gbit/sのTDM−PONである。ONU92は5台接続されており、省電力動作実施前のOSU11の割当は、OSU#1にONU#1、#2、OSU#2にONU#3、OSU#3にONU#4、#5が割り当てられているとする。この場合、使用波長数は3である。ONU#1、#2、#3、#4の下り利用帯域は10Gbit/s、ONU#5の下り利用帯域は20Gbit/sである。以上の状況を
図5に示す。
【0060】
OLT91のDWBA計算部132または各OSU11は、各OSU11から多重分離部12へ転送される上り信号の利用帯域を、多重分離部12または各OSU11は各OSU11への下り信号の利用帯域を測定しており、動的波長帯域割当回路13がOSU増減設の判断を行う際に参照する。DWBA計算部132で測定する各利用帯域は、OSUが占有しているとみなす帯域であれば特に指定しない。例えば、動的波長帯域割当回路13が参照した時点での瞬時値でもよいし、それ以前の一定期間の平均値でもよいし、一定区間の最大値でもよい。
【0061】
次に、低消費電力のためのOSU減設手順について説明する。まず、動的波長帯域割当回路13は、指定されたタイミングで多重分離部12または各OSU11で測定している各OSU11の下りトラフィック量を読み出す。本実施形態においてはOSU#1が20Gbit/s、OSU#2が10Gbit/s、OSU#3が30Gbit/sとなる。また、各OSU11の最大収容可能帯域と利用帯域の差分である残帯域を求める。本実施形態では最大収容可能帯域をリンクレートと等しい40Gbit/sとし、残帯域は、OSU#1が20Gbit/s、OSU#2が40Gbit/s、OSU#3が10Gbit/sとなる。ただし、最大収容可能帯域は必ずしもリンクレートと等しい必要はない。輻輳を回避することを目的として、リンクレート以下の値とすることも可能である。
【0062】
次に、使用しているOSU11から電源を遮断、もしくはスリープ状態に移行させるOSUを11選定する。このとき、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させるOSU11の利用帯域が切替先のOSUの残帯域未満となるように切替先OSU11を選ぶ。以上の条件を満たすOSU11が存在しない場合は、移行の手順は実施しない。
【0063】
以上の条件を満たすOSU11がある場合、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させるOSU11に所属するすべてのONU92を切替先のOSU11へ移行させると定める。上記の条件を満たすのであれば、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させるOSU11および切替先OSU11の選定手順は本実施形態では特に指定しない。本実施形態においては、使用帯域が30Gbit/sのOSU#3をスリープ状態へ移行させると定め、ONU#4、#5を残帯域が30Gbit/sのOSU#2へ波長切替によって所属変更することとする。
【0064】
次に、動的波長帯域割当回路13は、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行するOSU11に所属しているすべてのONU92の波長切替を実施する。波長切替を実施するONU92の順番は本出願では特に指定しない。電源を遮断もしくはスリープ状態に移行するOSU11に所属していたONU92がすべて波長切替によって変更された後に、当該OSU11の電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させる。本実施形態においては、ONU#4、#5をOSU#2へ波長切替を実施し、OSU#3に所属するONU91をすべて移行させた後にOSU#3をスリープ状態にする。
【0065】
図6に省電力波長切替手順を実施した後の各OSU11の収容状況及び下り帯域の利用状況を示す。OSU#2にはONU#3、#4、#5が所属し、OSU#3はスリープ状態へ移行することになる。
【0066】
上記所属ONU92を波長切替する移行最中に、あるOSU11の上り又は下りのどちらかで輻輳が発生した場合は、OSU11の電源遮断またはスリープ状態への移行を中止する。また、前記波長割り当ての変更を中止した後、またはOSU11が電源を遮断もしくはスリープ状態に移行した後に、あるOSU11の上りまたは下りで輻輳が発生した場合は、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行したOSU11を使用状態に回復させ、輻輳が発生したOSU11からONU92を波長切替えすることで負荷分散が可能になる。この時、再起動させるOSU11の選定方法は本実施形態では特に指定しない。一度電源遮断もしくはスリープ状態にしたOSU11を再起動するには時間がかかると想定されるが、非特許文献4に示されるような要求信号に応じて動的に帯域を割り当てる動的帯域割当計算による上り、多重分離部12による下り、それぞれの公平制御を有することで、輻輳時における割当帯域の公平性は保つことができる。
【0067】
本実施形態の説明においては、所属OSU変更の判断に下り割当波長およびトラフィックに着目して説明したが、上り割当波長およびトラフィックにおいても同様に行うことが可能である。ただし、上りにおけるOSU11毎の上りトラフィック量の算出は、DWBA計算部132において動的に帯域割当を計算した結果を各OSUごとに集約した上り割当帯域の合算値か、各OSU11から多重分離部12に出力されるポートにおける出力帯域を測定した値を用いる。
【0068】
また、本実施形態においては、波長切替を実施する際には、下り波長の切替について記載したが、下り波長の切替と同時に上り波長も切替えることにより上り下り共に所属するOSU11を変更することも可能である。これは上り波長の切替においても同様である。
【0069】
本実施形態によって、以下の効果が期待できる。
本発明は、電源遮断またはスリープ状態へ移行するOSU11の利用帯域が、切替先のOSU11の残帯域より小さい場合、電源遮断またはスリープ状態へ移行するOSU11に所属する全てのONU92を、切替先のOSU11へ移行させることにより、割当変更によってトラフィックがOSU11の最大帯域を超え、フレーム損が発生することなく、稼働するOSU11を減らす省電力動作が可能になる。
【0070】
また、電源遮断またはスリープ状態へ移行するOSU11を定め、そのOSU11に所属するONU92を、電源遮断またはスリープ状態へ移行しないOSU11へ波長切替によって順次移行させた後に、そのOSU11の電源を遮断またはスリープ状態に移行することで、各ONU92の通信トラフィックを可能な限り乱すことなく、省電力動作への移行が可能になる。特に波長切替動作が無瞬断で行えるのであれば、省電力動作への移行はユーザトラフィックへの影響なく行える。さらに、本実施形態においては電源遮断またはスリープ状態へ移行するOSU11に所属するONU92すべてを、1つのOSU11へ移行させる。したがって、移行にかかわらない別のOSU11(
図5及び
図6におけるOSU#1に相当する)ではONU92の増減が発生せず、ユーザトラフィックへの影響が全くないという利点がある。
【0071】
また、ONU92の波長割り当て変更の実施中に、OSU11の上りまたは下り帯域の輻輳が発生した場合には即座に割り当て変更を中止し、波長割り当て変更もしくは中止後にOSU11の上りまたは下り帯域の輻輳が発生した場合には、電源を遮断またはスリープ状態となっていたOSU11を再稼働させることが好ましい。輻輳の発生したOSU11から再稼働したOSU11へONU92を波長変更させるため、上りトラフィック量の増加に合わせた総帯域の拡張が可能になる。
【0072】
また、本実施形態では下り、または上りの各OSU11の利用帯域を測定している。この上り、下りの帯域測定はそれぞれOSU11毎に1か所で測定するため実現が比較的容易であり、本実施形態の適用が容易になるという利点がある。
【0073】
また、本実施形態において、OSU減設の契機を任意に与え、その契機におけるトラフィック量の測定結果を用いて稼働OSU台数を決定する。この契機を定期的に与えることで、常時稼働OSU台数を小数に保つことが可能になる。また、あるOSU11のトラフィック量が増加した際には、電源を遮断もしくはスリープ状態にあったOSU11を再起動させる、またはOSU減設を中止することが好ましい。これにより、通信トラフィック量の変化に応じて使用するOSU数を増減させ、かつ稼働OSU台数が概ね少ないという局側加入者収容装置の省電力動作が可能になる。
【0074】
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態は、上り又は下りトラフィック量をONU92毎にモニタし、空き帯域にONU92ごと割当変更させる。割当ONU92がなくなったOSU11は電源を遮断するかまたはスリープ状態へ移行する。
【0075】
次に本実施形態の動作を説明する。
図7及び
図8に本発明の第3の実施形態におけるOSU11の増減設の動作を示す。本実施形態においては、OLT91は3台のOSU11を搭載し、OSU#1、#2、#3はλ1
d、λ2
d、λ3
dの波長を用いることが可能で、それぞれの波長は下り40Gbit/sのTDM−PONである。 ONU92は5台接続されており、省電力動作実施前のOSU割当は、OSU#1にONU#1、#2、OSU#2にONU#3、OSU#3にONU#4、#5が割り当てられているとする。ONU#1、#2、#3、#4の下り利用帯域を10Gbit/s、ONU#5の下り利用帯域を20Gbit/sである。以上の状況を
図7に示す。
【0076】
OLT91のDWBA計算部132または多重分離部12は各ONU92の上り利用帯域を、多重分離部12は各ONU92の下り利用帯域を測定しており、動的波長帯域割当回路13がOSU増減設の判断を行う際に参照する。DWBA計算部132で測定する各利用帯域は、ONUが占有しているとみなす帯域であれば特に指定しない。例えば、動的波長帯域割当回路13が参照した時点での瞬時値でもよいし、それ以前の一定期間の平均値でもよいし、一定区間の最大値でもよい。
【0077】
次に、低消費電力のためのOSU減設手順について説明する。まず、動的波長帯域割当回路13は、指定されたタイミングで多重分離部12で測定している各ONU92の下りトラフィック量を読み出す。次に、各OSU11の最大収容可能帯域と利用帯域の差分である残帯域を求める。本実施形態においては、OSU#1は20Gbit/s、OSU#2が40Gbit/s、OSU#3が10Gbit/sとなる。また、本実施形態では最大収容可能帯域をリンクレートと等しい40Gbit/sとするが、必ずしもリンクレートと等しい必要はない。輻輳を回避することを目的として、リンクレート以下の値とすることも可能である。
【0078】
次に、各ONU92がOSU#1から順にOSU11の下りの最大収容可能帯域を超えなくなるまでONU92を収容するよう、各ONU92の所属OSU11を再配置する。この時、測定によって得られたONU92の下り利用帯域を用いて、波長割り当て変更後のOSU11の下り最大収容可能帯域を超えないよう波長の再割り当てが行われるのであれば、再割当を定めるOSU11の選択順序は問わない。ONU92の再配置を定めた結果、所属ONU92がなくなるOSU11を、電源遮断もしくはスリープ状態に移行させるOSU11と決定する。本実施形態においては、OSU#1にONU#1、#2、#5を所属するとし、OSU#2にONU#3、#4を所属させるとし、所属ONU92がなくなるOSU#3をスリープ状態へ移行させると定める。
【0079】
次に、動的波長帯域割当回路13は、所属OSU11が変更となるすべてのONU92の波長切替を実施する。波長切替を実施するONU92の順番は本実施形態では特に指定しない。電源を遮断もしくはスリープ状態に移行するOSU11に所属していたONU92がすべて波長切替によって変更された後に、当該OSU11の電源を遮断もしくはスリープ状態に移行させる。本実施形態においては、ONU#4、#5をOSU#2、OSU#1へ波長切替を実施し、OSU#3に所属するONU92をすべて移行させた後にOSU#3をスリープ状態にする。
【0080】
図8に省電力波長切替手順を実施した後の各OSU11の収容状況及び下り帯域の利用状況を示す。OSU#1にはONU#1、#2、#5、OSU#2にはONU#3、#4が所属し、OSU#3はスリープ状態へ移行する。
【0081】
上記所属ONU92を波長切替する移行最中に、あるOSU11の上り又は下りのどちらかで輻輳が発生した場合は、OSU11の電源遮断またはスリープ状態への移行を中止する。また、前記波長割り当ての変更を中止した後、またはOSU11が電源を遮断もしくはスリープ状態に移行した後に、あるOSU11の上りまたは下りで輻輳が発生した場合は、電源を遮断もしくはスリープ状態に移行したOSU11を使用状態に回復させ、輻輳発生したOSU11からONU92を波長切替えすることで負荷分散が可能になる。この時、再起動させるOSU11の選定方法は本実施形態では特に指定しない。一度電源遮断もしくはスリープ状態にしたOSU11を再起動するには時間がかかると想定されるが、非特許文献4に示されるような要求信号に応じて動的に帯域を割り当てる動的帯域割当計算による上り、多重分離部12による下り、それぞれの公平制御を有することで、輻輳時における割当帯域の公平性は保つことができる。
【0082】
本実施形態の説明においては、所属OSU変更の判断に下り割当波長およびトラフィックに着目して説明したが、上り割当波長およびトラフィックにおいても同様に行うことが可能である。ただし、上りのONU92ごと上りトラフィック量の算出は、DWBA計算部132におけるOSU11毎の上り割当帯域の値または多重分離部12を通過した各ONU92毎の上り信号の帯域を測定した値を用いる。
【0083】
また、本実施形態においては、波長切替を実施する際には、下り波長の切替について記載したが、下り波長の切替と同時に上り波長も切替えることにより上り下り共に所属するOSU11を変更することも可能である。これは上り波長の切替においても同様である。
【0084】
本実施形態によって、以下の効果が期待できる。
本発明は、各ONU92のトラフィック測定量から、各OSU11の波長割当を再配置するため、稼働させるOSU台数を各OSU11の最大帯域を超えない範囲で最小にすることが可能となる。したがって、移行によってトラフィックがOSU11の最大帯域を超え、フレーム損が発生することなく、稼働するOSU台数を最小にする省電力動作が可能になる。
【0085】
また、電源遮断またはスリープ状態へ移行するOSU11を定め、そのOSU11に所属するONU92を、電源遮断またはスリープ状態へ移行しないOSU11へ波長切替によって順次移行させたのちに、そのOSU11の電源を遮断またはスリープ状態に移行することで、各ONU92の通信トラフィックを可能な限り乱すことなく、省電力動作への移行が可能になる。特に波長切替動作が無瞬断で行えるのであれば、省電力動作への移行はユーザトラフィックへの影響なく行える。
【0086】
また、ONU92の波長割り当て変更の実施中に、OSU11の上りまたは下り帯域の輻輳が発生した場合には即座に割り当て変更を中止し、波長割り当て変更もしくは中止後にOSUの上りまたは下り帯域の輻輳が発生した場合には電源を遮断またはスリープ状態となっていたOSU11を再稼働させることが好ましい。輻輳の発生したOSU11から再稼働したOSU11へONU92を波長変更させるため、上りトラフィック量の増加に合わせた総帯域の拡張が可能になる。
【0087】
また、本実施形態において、OSU減設の契機を任意に与え、その契機におけるトラフィック量の測定結果を用いて稼働OSU台数を決定する。この契機を定期的に与えることで、常時稼働OSU台数を最小に保つことが可能になる。また、あるOSU11のトラフィック量が増加した際には、電源を遮断もしくはスリープ状態にあったOSU11を再起動させる、またはOSU減設を中止することが好ましい。これにより、通信トラフィック量の変化に応じて使用するOSU数を増減させ、かつ稼働OSU台数が概ね最小という局側装置の省電力動作が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明にかかる動的波長割当方式は、波長可変型WDM/TDM−PONにおいて、稼働するOSU数を削減することでシステムの消費電力を低減するための、ONUの再割り当てを行う波長の割当方法および手順を提供できる。
【符号の説明】
【0089】
11:OSU
12:多重分離部
13:動的波長帯域割当回路
21:データ受信部
22:上りバッファメモリ
23:フレーム送出制御部
24:フレーム組立送信部
25:波長可変光送受信器
26:宛先解析選択受信部
27:下りバッファメモリ
28:データ送信部
29:指示信号受信部
30:波長切替制御部
31:要求信号生成部
32:要求帯域計算部
91:OLT
92:ONU
93:光部品
131:要求信号受信部
132:DWBA計算部
133:切替指示信号生成部
134:制御信号送信部