特許第6043260号(P6043260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043260
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】通信システム及び光信号伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 7/38 20060101AFI20161206BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20161206BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20161206BHJP
【FI】
   H03M7/38
   H04B9/00 267
   H04W88/08
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-188484(P2013-188484)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-56736(P2015-56736A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直剛
(72)【発明者】
【氏名】桑野 茂
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−524117(JP,A)
【文献】 特開2012−065081(JP,A)
【文献】 特開2009−210644(JP,A)
【文献】 特開2007−028034(JP,A)
【文献】 特開平10−243405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00−11/00
H04B 10/2575
H04W 88/08
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送受信するアンテナ部と前記アンテナ部の制御を行う信号処理部とが光伝送路を用いて接続されている通信システムであって、
前記アンテナ部及び前記信号処理部は、
前記無線信号をデジタル化した伝送データの量子化ビット数を削減する際の誤差を予測するための前記無線信号の平均電力及び分散に応じた予測係数を記憶する予測係数記憶部と、
無線帯域割当の変更周期毎に入力される無線帯域割当情報を基に前記無線信号の平均電力及び分散を算出し、算出結果に応じて前記予測係数記憶部から出力する予測係数を決定する予測係数出力制御部と、
前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伝送データの誤差信号を生成する誤差予測部と、
前記誤差予測部の生成した誤差信号を圧縮して前記光伝送路を伝送する誤差信号伝送部と、
前記誤差信号伝送部の伝送した誤差信号を伸長する伸長部と、
前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伸長部の伸長した誤差信号を復元する信号復元部と、
を備える通信システム。
【請求項2】
前記誤差信号伝送部は、エントロピー符号化を用いて誤差信号の圧縮を行うことを特徴とする、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記伝送データよりもデータ長の長い予測係数算出用データを用いて予測係数を算出する予測係数算出部を備え、
前記信号処理部の前記予測係数記憶部は、前記予測係数算出部の算出した予測係数を記憶し、
前記アンテナ部の前記予測係数記憶部は、前記信号処理部より前記予測係数が通知された際、これまで記憶していた予測係数を消去して該通知された予測係数を記憶することを特徴とする、請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
無線信号を送受信するアンテナ部と前記アンテナ部の制御を行う信号処理部とが光伝送路を用いて接続されている通信システムの光信号伝送方法であって、
前記アンテナ部及び前記信号処理部において、
前記無線信号をデジタル化した伝送データの量子化ビット数を削減する際の誤差を予測するための前記無線信号の平均電力及び分散に応じた予測係数を記憶する予測係数記憶部を参照し、無線帯域割当の変更周期毎に入力される無線帯域割当情報を基に前記無線信号の平均電力及び分散を算出する予測係数出力制御部の算出結果に応じ、前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伝送データの誤差信号を生成する誤差予測手順と、
前記誤差予測手順で生成した誤差信号を圧縮して前記光伝送路を伝送する誤差信号伝送手順と、
を有する光信号伝送方法。
【請求項5】
無線信号を送受信するアンテナ部と前記アンテナ部の制御を行う信号処理部とが光伝送路を用いて接続されている通信システムの光信号伝送方法であって、
前記アンテナ部及び前記信号処理部において、
前記光伝送路を伝送された誤差信号を伸長する伸長手順と、
前記無線信号をデジタル化した伝送データの量子化ビット数を削減する際の誤差を予測するための前記無線信号の平均電力及び分散に応じた予測係数を記憶する予測係数記憶部を参照し、無線帯域割当の変更周期毎に入力される無線帯域割当情報を基に前記無線信号の平均電力及び分散を算出する予測係数出力制御部の算出結果に応じ、前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伸長手順で伸長した誤差信号を復元する信号復元手順と、
を有する光信号伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BBU−RRU間で伝送されるデジタルRoF信号の圧縮技術に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラーシステムにおいて、セル構成の自由度を向上するため、基地局の機能を信号処理部(BBU:Base Band Unit)とRF部(RRU:Remote Radio Unit)に分割して物理的に離れた構成とする事が検討されている。この時BBU−RRU間において無線信号はRoF技術により伝送される。RoF技術は光伝送方法によりアナログRoF技術とデジタルRoF技術に大別できるが、近年は伝送品質に優れたデジタルRoF技術の検討が盛んであり、CPRI(Common Public Radio Interface)(例えば、非特許文献1参照。)等の標準化団体の下、使用策定が進められている。またBBU−RRU間の接続媒体として、同軸ケーブルや光ファイバ等が用いられるが、特に光ファイバによって接続する事により、伝送距離を拡大する事ができる。
【0003】
一つのBBUが複数のRRUを収容する事もできる。これにより、各RRUに必要なBBUを一つに集約する事ができ、運用コスト及び設置コストを削減することが可能となる。このような形態の一例として、BBU−RRU間をPON(Passive Optical Network)システムで接続する形態が提案されている。PONの信号多重方法としては、TDM(Time Division Multiplex)、WDM(Wavelength Division Multiplex)、FDM(Frequency Division Multiplex)等が選択できる。
【0004】
以後、BBU−RRU間のデジタルRoF伝送技術を関連技術と呼ぶ。また、BBUで作成した無線信号のI軸Q軸ごとのデジタル信号(IQデータ)を光信号に変換してRRUへ伝送し、RRUで受信した光信号を無線信号に変換して、無線端末へと送信するリンクを下りリンクと呼ぶ。一方、無線端末が送信した無線信号をRRUで受信し、受信した無線信号を光信号に変換してBBUへ伝送し、BBUで受信した光信号をIQデータに変換して信号の復調を行うリンクを上りリンクと呼ぶ。
【0005】
本発明に関連するRRUの装置構成例を図7に示す。RRU91は上りリンクの信号処理のため、無線信号の送/受信を行うアンテナ11と、送信/受信を切り替える送受切替部12と、受信した無線信号の信号電力を信号処理ができるレベルまで増幅する増幅器13と、無線信号をベースバンドにダウンコンバートするダウンコンバート部14と、ダウンコンバートされたアナログ信号をIQデータに変換するA/D変換部15と、IQデータに対してフィルタリング処理を行うベースバンドフィルタ部(上り)16と、IQデータとBBU93−RRU91間の制御信号を多重するフレーム変換部17と、電気信号を光信号に変換して送信する電気−光(E/O)変換部18を有する。送受切替部12は、FDD(Frequency Division Duplex)と、TDD(Time Division Duplex)のどちらにも対応できる。
【0006】
またRRU91は下りリンクの信号処理のため、BBU93から受信した光信号を電気信号に変換する光−電気(O/E)変換部28と、受信信号からBBU93−RRU91間の制御信号及びIQデータを取り出すフレーム変換部27と、IQデータに対してフィルタリング処理を行うベースバンドフィルタ部(下り)26と、IQデータをアナログ信号に変換するD/A変換部25と、アナログ信号をアップコンバートするアップコンバート部24と、電力を決められた送信電力まで増幅する増幅器23と、送受切替部12と、アンテナ11を有する。
【0007】
本発明に関連するBBUの装置構成例を図8に示す。BBU93は上りリンクの信号処理のため、光信号を電気信号に変換するO/E変換部31と、受信信号から制御信号及びIQデータを取り出すフレーム変換部32と、IQデータに対して復調を行う変復調部33を有する。またBBU93は下りリンクの信号処理のため、無線信号のIQデータを出力する変復調部33と、IQデータと制御信号を多重するフレーム変換部34と、電気信号を光信号に変換して送信するE/O変換部35を有する。
【0008】
CPRIでLTE(Long Term Evolution)信号を伝送する場合を例に取ると、システム帯域幅20MHzのシステムに対しては30.72MHzのサンプリング周波数が用いられ、またI軸とQ軸のそれぞれに対するデジタルサンプリングにおいて上り信号は4〜20ビット、下り信号は8〜20ビットの量子化ビット数が適用される。またフレーム変換部34ではフレーム全体の1/16に制御信号が挿入され、さらに信号は8B/10B符号化した後に伝送される。したがって、デジタルRoF伝送のためには光ファイバ区間で非常に広帯域が必要となる。
【0009】
デジタルRoF伝送の所要帯域を削減する手法として、予測符号化を用いて量子化ビット数を削減する手法がある。該手法では、無線信号の数サンプル点から次サンプル点の振幅値を予測する。図9に、予測の動作例を示す。図9では、過去3サンプル点から次サンプル点を予測している。予測手法の一つである線形予測法では、過去の数サンプル点にそれぞれ係数を乗算して加算した値を予測値とする。この時の係数を、以後予測係数と呼ぶ。予測係数は、実際のサンプル点の値と予測値の差である誤差信号が小さくなるよう設定される。予測の精度が高いほど、誤差信号の振幅値はほとんど0に近くなる。
【0010】
図10に、誤差信号の確率密度関数の一例を示す。図10では、LTE PHY層のパラメータに基づくOFDM無線信号に対して、過去32サンプル点で次サンプル値を予測している。予測係数は、512サンプル点ごとに誤差信号のユークリッドノルムが最小となるよう決定した。図10より、誤差信号の振幅値は0付近ほど確率密度が高いとわかる。そこで、この誤差信号をハフマン符号化などのエントロピー符号化により符号化すれば、出現確率の高い振幅値ほど少ないビット数で伝送できるため、デジタルRoF伝送の所要帯域を減少できる。
【0011】
予測係数は、ある長さのサンプル点に対して誤差が小さくなるよう算出される。以後、このサンプル点の一まとまりを予測ブロックと呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】CPRI,“CPRI Specification V5.0”,Sep.,2011,http://www.cpri.info/spec.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
関連する誤差信号を予測する方式では、予測ブロックごとに送信側から受信側へ予測係数を伝送する必要があるため、伝送効率の低下につながっていた。また、送信したいIQデータに対して、該IQデータの誤差信号の平均振幅値または平均電力値が小さくなるよう予測係数を作成して誤差信号を算出して、該誤差信号を圧縮して伝送する。このため、予測ブロックが貯まるまでのバッファリング時間と、予測係数の算出に要する時間が、BBU93−RRU91間の伝送における遅延となる。予測ブロックの長さを減らすことで遅延時間を減少できるが、予測ブロックごとに送信側から受信側へ予測係数を伝送する必要があるため、伝送効率の低下につながる。
【0014】
本発明は、BBU−RRU間で伝送されるデジタルRoF信号の量子化ビット数を、予測符号化を用いて削減するに際し、伝送効率低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、送信したいIQデータとは別のデータを用いて予測係数を算出しておき、該IQデータを誤差予測する際の予測係数として用いる。
【0016】
具体的には、本発明に係る通信システムは、
無線信号を送受信するアンテナ部と前記アンテナ部の制御を行う信号処理部とが光伝送路を用いて接続されている通信システムであって、
前記アンテナ部及び前記信号処理部は、前記無線信号をデジタル化した伝送データの量子化ビット数を削減する際の誤差を予測するための前記無線信号の平均電力及び分散に応じた予測係数を記憶する予測係数記憶部と、
無線帯域割当の変更周期毎に入力される無線帯域割当情報を基に前記無線信号の平均電力及び分散を算出し、算出結果に応じて前記予測係数記憶部から出力する予測係数を決定する予測係数出力制御部と、
前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伝送データの誤差信号を生成する誤差予測部と、
前記誤差予測部の生成した誤差信号を圧縮して前記光伝送路を伝送する誤差信号伝送部と、
前記誤差信号伝送部の伝送した誤差信号を伸長する伸長部と、
前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伸長部の伸長した誤差信号を復元する信号復元部と、
を備える。
【0017】
本発明に係る通信システムでは、前記誤差信号伝送部は、エントロピー符号化を用いて誤差信号の圧縮を行ってもよい。
【0019】
本発明に係る通信システムでは、前記信号処理部は、前記伝送データよりもデータ長の長い予測係数算出用データを用いて予測係数を算出する予測係数算出部を備え、前記信号処理部の前記予測係数記憶部は、前記予測係数算出部の算出した予測係数を記憶し、前記アンテナ部の前記予測係数記憶部は、前記信号処理部より前記予測係数が通知された際、これまで記憶していた予測係数を消去して該通知された予測係数を記憶していてもよい。
【0020】
本発明に係る通信システムでは、前記アンテナ部及び前記信号処理部は、過去にシステム内で伝送されたデータを前記予測係数算出用データとして用いて前記予測係数を算出する予測係数決定部を備え、
前記予測係数記憶部は、前記予測係数決定部の算出した予測係数を記憶していてもよい。
【0021】
具体的には、本発明に係る光信号伝送方法は、
無線信号を送受信するアンテナ部と前記アンテナ部の制御を行う信号処理部とが光伝送路を用いて接続されている通信システムの光信号伝送方法であって、
前記アンテナ部及び前記信号処理部において、
前記無線信号をデジタル化した伝送データの量子化ビット数を削減する際の誤差を予測するための前記無線信号の平均電力及び分散に応じた予測係数を記憶する予測係数記憶部を参照し、無線帯域割当の変更周期毎に入力される無線帯域割当情報を基に前記無線信号の平均電力及び分散を算出する予測係数出力制御部の算出結果に応じ、前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伝送データの誤差信号を生成する誤差予測手順と、
前記誤差予測手順で生成した誤差信号を圧縮して前記光伝送路を伝送する誤差信号伝送手順と、
を有する。
【0022】
具体的には、本発明に係る光信号伝送方法は、
無線信号を送受信するアンテナ部と前記アンテナ部の制御を行う信号処理部とが光伝送路を用いて接続されている通信システムの光信号伝送方法であって、
前記アンテナ部及び前記信号処理部において、
前記光伝送路を伝送された誤差信号を伸長する伸長手順と、
前記無線信号をデジタル化した伝送データの量子化ビット数を削減する際の誤差を予測するための前記無線信号の平均電力及び分散に応じた予測係数を記憶する予測係数記憶部を参照し、無線帯域割当の変更周期毎に入力される無線帯域割当情報を基に前記無線信号の平均電力及び分散を算出する予測係数出力制御部の算出結果に応じ、前記予測係数記憶部の記憶する予測係数を用いて、前記伸長手順で伸長した誤差信号を復元する信号復元手順と、
を有する。
【0023】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、送信したいIQデータとは別のデータを用いて予測係数を算出しておき、該IQデータを誤差予測する際の予測係数として用いる。これにより、本発明は、IQデータを送信する際、予測ブロックを貯めるバッファリング時間と、予測係数の算出に要する時間を省き、遅延時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1のRRUの装置構成例を示す。
図2】実施形態1のBBUの装置構成例を示す。
図3】実施形態2のRRUの装置構成例を示す。
図4】実施形態2のBBUの装置構成例を示す。
図5】実施形態3のRRUの装置構成例を示す。
図6】実施形態3のBBUの装置構成例を示す。
図7】関連する発明のRRUの装置構成例を示す。
図8】関連する発明のBBUの装置構成例を示す。
図9】予測の動作例を示す。
図10】誤差信号の確率密度関数の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
実施形態1のRRU91の装置構成例を図1に示す。RRU91は、下りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、圧縮された信号を元に戻す伸長部41と、誤差信号から元の信号を復元する信号復元部42と、予測係数を記憶する予測係数記憶部(下り)44と、予測係数記憶部44から出力する予測係数を指定する予測係数出力制御部(下り)43を有する。RRU91は、上りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、信号の誤差信号を作成する誤差予測部47と、誤差予測部47の出力する誤差信号を圧縮する圧縮部48と、予測係数を記憶する予測係数記憶部(上り)46と、予測係数記憶部46から出力する予測係数を指定する予測係数出力制御部(上り)45を有する。圧縮部48は、エントロピー符号化等の動作によりビット数を減らし、デジタルRoF伝送の所要帯域を削減する。エントロピー符号化とは、複数ビットをまとめたシンボル単位で入力ビット系列を処理し、シンボル毎の出現確率を調べ、出現確率の高いシンボルほど短いビット系列になるように変換することで、出力ビット系列の長さを入力ビット系列の長さより短くする符号化方法である。エントロピー符号化を行うためには、予め誤差信号の振幅値の分布関数を計測しておく必要がある。
【0028】
実施形態1のBBU93の装置構成例を図2に示す。BBU93は、下りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、信号の誤差信号を作成する誤差予測部57と、誤差予測部57の出力する誤差信号を圧縮する圧縮部58と、予測係数を記憶する予測係数記憶部(下り)56と、予測係数記憶部56から出力する予測係数を指定する予測係数出力制御部(下り)55を有する。BBU93は、上りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、圧縮された信号を元に戻す伸長部53と、誤差信号から元の信号を復元する信号復元部54と、予測係数を記憶する予測係数記憶部(上り)51と、予測係数記憶部51から出力する予測係数を指定する予測係数出力制御部(上り)52を有する。
【0029】
RRU91はアンテナ部として機能し、BBU93は信号処理部として機能する。予測係数記憶部44及び46が、RRU91における予測係数記憶部として機能する。予測係数記憶部56及び51が、BBU93における予測係数記憶部として機能する。下りリンクにおいては、圧縮部58、フレーム変換部34、E/O変換部35、O/E変換部28及びフレーム変換部27が誤差信号伝送部として機能する。上りリンクにおいては、圧縮部48、フレーム変換部17、E/O変換部18、O/E変換部31及びフレーム変換部32が誤差信号伝送部として機能する。
【0030】
本実施形態に係る光信号伝送方法は、下りリンクの信号処理のときに、BBU93が誤差予測手順及び誤差信号伝送手順を実行した後、にRRU91が伸長手順及び信号復元手順を実行する。
誤差予測手順では、誤差予測部57が、予測係数記憶部56の記憶する予測係数を用いて、伝送するIQデータの誤差信号を生成する。
誤差信号伝送手順では、誤差予測部57で生成した誤差信号を圧縮部58が圧縮し、E/O変換部35が光ファイバへ送信する。
伸長手順では、伸長部41が、光ファイバを伝送された誤差信号を伸長する。
信号復元手順では、信号復元部42が、予測係数記憶部44の記憶する予測係数を用いて、伸長部41で伸長した誤差信号を復元する。
【0031】
本実施形態に係る光信号伝送方法は、上りリンクの信号処理のときに、RRU91が誤差予測手順及び誤差信号伝送手順を実行した後に、BBU93が伸長手順及び信号復元手順を実行する。
誤差予測手順では、誤差予測部47が、予測係数記憶部46を参照し、予測係数記憶部46の記憶する予測係数を用いて、伝送するIQデータの誤差信号を生成する。
誤差信号伝送手順では、誤差予測部47で生成した誤差信号を圧縮部48が圧縮し、E/O変換部18が光ファイバへ送信する。
伸長手順では、伸長部53が光ファイバを伝送された誤差信号を伸長する。
信号復元手順では、信号復元部54が、予測係数記憶部51の記憶する予測係数を用いて、伸長部53で伸長した誤差信号を復元する。
【0032】
予測係数記憶部44、46、51及び56の記憶する予測係数の値は、予め与えておいても良い。また、定期的に変更しても良い。定期的に変更する際は、予測係数をBBU93側から送信しても良い。この場合、BBU93は、予測係数を算出する予測係数算出部を備える。また、一つだけでなく複数の予測係数を記憶しても良い。予測係数出力制御部43、45、52及び55の指定する予測係数は、常に同じでも良いし、定期的に変更されても良い。定期的に変更するためには、変更タイミングをBBU93からRRU91へ通知するか、またはBBU93−RRU91間で同期を取り各々の変更タイミングが揃うようにする必要がある。
【0033】
予測係数出力制御部43、45、52及び55に外部情報を入力しても良い。例えば、無線帯域割当情報を入力する。無線帯域割当の変更周期毎に、無線信号で使用されている周波数位置及び周波数帯域幅が変わり、無線信号の平均電力や分散等の特性が変化する。このため、無線帯域割当の周期毎に、割り当てられている周波数位置及び周波数帯域幅に応じて予測係数を変えることで、誤差信号の振幅値を低減できると考えられる。
【0034】
予測係数は、送信したいIQデータとは別のデータを用いて作成する。この際用いる別のデータのデータ長を長くするほど、予測ブロック長が長くなるため、予測の精度が向上する。
【0035】
本実施形態に係る発明では、送信したいIQデータとは別のデータを用いて予測係数を算出しておき、該IQデータを誤差予測する際の予測係数として用いる。これにより、IQデータを送信する際、予測ブロックを貯めるバッファリング時間と、予測係数の算出に要する時間を省き、遅延時間を低減する。また、本実施形態に係る発明は、一つの予測係数を固定的に使う。これにより、BBU93−RRU91間での予測係数の交換を省き、伝送効率低下を抑制することができる。
【0036】
(実施形態2)
実施形態1では、予測係数を予めBBU93及びRRU91で記憶しておく必要がある。実施形態2では、BBU93−RRU91間で送受信された、過去のIQデータを基に予測係数を算出して利用することにより、予測係数を予めBBU93及びRRU91で記憶しておく必要を省く。
【0037】
実施形態2のRRU91の装置構成例を図3に示す。RRU91は、下りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、圧縮された信号を元に戻す伸長部41と、誤差信号から元の信号を復元する信号復元部42と、これまでに得られたIQデータを基に予測係数を算出する予測係数決定部(下り)62を有する。RRU91は、上りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、信号の誤差信号を作成する誤差予測部47と、誤差予測部47の出力する誤差信号を圧縮する圧縮部48と、ベースバンドフィルタ部(上り)16の出力するIQデータを基に予測係数を算出する予測係数決定部(上り)61を有する。任意の時点において予測係数決定部(上り)61で用いられるIQデータは、同時点において誤差予測部47に入力されたIQデータよりも過去の時点のIQデータである。
【0038】
実施形態2のBBU93の装置構成例を図4に示す。BBU93は、下りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、信号の誤差信号を作成する誤差予測部57と、誤差予測部57の出力する誤差信号を圧縮する圧縮部58と、IQデータを基に予測係数を算出する予測係数決定部(下り)64を有する。任意の時点において予測係数決定部(下り)64で用いられるIQデータは、同時点において誤差予測部57に入力されたIQデータよりも過去の時点のIQデータである。BBU93は、上りリンクの信号処理のため、関連技術と異なり、圧縮された信号を元に戻す伸長部53と、誤差信号から元の信号を復元する信号復元部54と、これまでに得られたIQデータを基に予測係数を算出する予測係数決定部(上り)63を有する。
【0039】
予測係数決定部(上り)61及び予測係数決定部(下り)62は、算出した予測係数を記憶し、RRU91における予測係数記憶部として機能する。予測係数決定部(上り)63及び予測係数決定部(下り)64は、算出した予測係数を記憶し、BBU93における予測係数記憶部として機能する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る発明は、受信側で予測係数を算出する。このため、BBU93−RRU91間での予測係数の交換を省き、伝送効率低下を抑制することができる。
【0041】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態2で算出した予測係数を記憶して固定的に用いることで、予測係数算出に要する演算量を削減する。
【0042】
実施形態3のRRU91の装置構成例を図5に示す。RRU91は、下りリンクの信号処理のため、実施形態2と異なり、予測係数決定部(下り)62で算出された予測係数を記憶する予測係数記憶部(下り)72を有する。RRU91は、上りリンクの信号処理のため、実施形態2と異なり、予測係数決定部(上り)61で算出された予測係数を記憶する予測係数記憶部(上り)71を有する。
【0043】
実施形態3のBBU93の装置構成例を図6に示す。BBU93は、下りリンクの信号処理のため、実施形態2と異なり、予測係数決定部(下り)64で算出された予測係数を記憶する予測係数記憶部(下り)74を有する。BBU93は、上りリンクの信号処理のため、実施形態2と異なり、予測係数決定部(上り)63で算出された予測係数を記憶する予測係数記憶部(上り)73有する。
【0044】
予測係数決定部61、62、63及び64で予測係数を算出する頻度は、任意の値に設定することができる。該頻度を、無線帯域割当の周期ごととしても良い。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る発明は、受信側で予測係数を算出し、算出した予測係数を用いる。このため、BBU93−RRU91間での予測係数の交換を省き、伝送効率低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
11:アンテナ
12:送受切替部
13:増幅部
14:ダウンコンバート部
15:A/D変換部
16:ベースバンドフィルタ部(上り)
17:フレーム変換部
18:電気−光(E/O)変換部
23:増幅器
24:アップコンバート部
25:D/A変換部
26:ベースバンドフィルタ部(下り)
27:フレーム変換部
28:光−電気(O/E)変換部
31:O/E変換部
32:フレーム変換部
33:変復調部
34:フレーム変換部
35:E/O変換部
41:伸長部
42:信号復元部
43:予測係数出力制御部(下り)
44:予測係数記憶部(下り)
45:予測係数出力制御部(上り)
46:予測係数記憶部
47:誤差予測部
48:圧縮部
51:予測係数記憶部(上り)
52:予測係数出力制御部(上り)
53:伸長部
54:信号復元部
55:予測係数出力制御部(下り)
56:予測係数記憶部(下り)
57:誤差予測部
58:圧縮部
61:予測係数決定部(上り)
62:予測係数決定部(下り)
63:予測係数決定部(上り)
64:予測係数決定部(下り)
71:予測係数記憶部(上り)
72:予測係数記憶部(下り)
73:予測係数記憶部(上り)
74:予測係数記憶部(下り)
91:RRU
93:BBU
図1
図2
図3
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図5
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図10