特許第6043307号(P6043307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043307
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ネットワーク制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/713 20130101AFI20161206BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20161206BHJP
   H04L 12/751 20130101ALI20161206BHJP
【FI】
   H04L12/713
   H04L12/70 D
   H04L12/751
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-33799(P2014-33799)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-159457(P2015-159457A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌村 星平
(72)【発明者】
【氏名】島崎 大作
(72)【発明者】
【氏名】植松 芳彦
【審査官】 速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−225056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0126502(US,A1)
【文献】 米国特許第7903546(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0231578(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0176355(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0159325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/713
H04L 12/70
H04L 12/751
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のルータおよび第2のルータと、前記第1のルータの切り替え先である予備の第3のルータと通信可能に接続されるネットワーク制御装置であって、
前記ネットワーク制御装置は、
前記第2のルータから取得した経路情報に基づいて前記第3のルータにインストールする経路情報を生成し、前記第1のルータと同一のコンフィグレーションの設定された前記第3のルータに前記生成した経路情報をインストールする
ことを特徴とするネットワーク制御装置。
【請求項2】
前記ネットワーク制御装置は、
前記第2のルータとの間に通信を確立して経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記第2のルータと接続している前記第1のルータの接続状態を模擬し、前記第1のルータと同一のコンフィグレーションの設定された前記第3のルータに前記生成した経路情報をインストールし、前記第1のルータと前記第2のルータとの間の伝送パスを、前記第2のルータと前記第3のルータとの間に切り替える接続状態模擬部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク制御装置。
【請求項3】
前記ネットワーク制御装置は、
前記第2のルータとの間に通信を確立して経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記経路情報取得部によって取得された経路情報および記憶部に記憶されている前記通信ネットワークのトポロジ情報に基づいて、前記第1のルータと同一のコンフィグレーションの設定された前記第3のルータにインストールする経路情報を演算して生成する経路演算部と、
前記第3のルータに当該生成した経路情報をインストールし、前記第1のルータと前記第2のルータとの間の伝送パスを、前記第2のルータと前記第3のルータとの間に切り替える経路設定部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のネットワーク制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現用のルータを予備のルータに切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク事業者は、ネットワーク全体の資源を有効に活用し、情報転送の品質を維持するとともに、無駄な資源を削減することによってネットワークコストを低減する施策の推進を図っている。その実現に向けて、将来のサービスの多様化に伴うネットワークの突発的かつ不規則な変更に柔軟に対応でき、ネットワーク資源を有効に利用できるネットワーク仮想化技術についての検討が進められている。
【0003】
ネットワーク仮想化技術は、ネットワークを構成する光ファイバ、クロスコネクト、ルータ等の様々な物理資源の一部分を、論理的なシステム(ルータ、スイッチ、光伝送装置等)や論理的なリンクで表現される仮想資源で構成される仮想網として実現したり、複数のネットワーク事業者の提供するネットワークの物理資源を組み合せて1つの仮想網として実現したりする技術である。このネットワーク仮想化技術を用いることによって、物理資源の利用状態や障害等の環境変化に応じて、仮想網間で物理資源の共用が可能になる。また、各仮想網への物理資源の割り当てを最適に決定することができれば、資源量の低減効果やネットワークの可用性の向上が可能となる。
【0004】
非特許文献1には、物理資源(ルータ)を共用の予備資源(予備のルータ)に切り替える方法として、一時的に経路を二重化し経路情報の交換を行った後にコンフィグ(コンフィグレーション;ルータのシステム環境を設定する情報)の変更等を行って予備資源へ切り替えるケースが開示されている。このケースでは、切り替え用のコンフィグの作成や経路の二重化を行う処理を実行するノードが、経路を切り替えるために予備IF(インタフェース)を常時確保する必要がある。そのため、当該ノードの運用負荷や資源量が増加するという問題がある。その問題に対して、非特許文献1では、現用のルータ(仮想ルータ)を共用の予備のルータに切り替える方法として、伝送レイヤで経路を冗長化するとともに転送パケットを複製することによって、IP(Internet Protocol)レイヤのトポロジを変化させることなく、ルーティングプロトコルメッセージの受信を可能にし、プロトコルを収束させ、経路を同期させる方法が開示されている
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】森弘樹、外6名、“仮想光トランスポート制御技術における論理IP 網への物理資源割当変更方式 ”、2013年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B-6-43、p.43、2013年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、現用のルータを共用の予備のルータに切り替える場合、転送パケットの複製を用いているため、BGP(Border Gateway Protocol)のようにTCP(Transmission Control Protocol)コネクションを用いてメッセージをやり取りするプロトコルに対しては、コネクションを確立できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、BGPのようにTCPコネクションを確立してメッセージをやり取りするルータ(仮想ルータ)を予備のルータに切り替える場合に、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時に通信(例えば、セッション)の切断を回避する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のネットワーク制御装置は、第1のルータおよび第2のルータと、前記第1のルータの切り替え先である予備の第3のルータと通信可能に接続されるネットワーク制御装置であって、前記ネットワーク制御装置が、前記第2のルータから取得した経路情報に基づいて前記第3のルータにインストールする経路情報を生成し、前記第1のルータと同一のコンフィグレーションの設定された前記第3のルータに前記生成した経路情報をインストールすることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、ネットワーク制御装置は、第2のルータ(現用のルータ)から取得した経路情報に基づいて、切り替え先の第3のルータ(予備のルータ)にインストールする経路情報を生成する。そして、ネットワーク制御装置は、第1のルータ(現用のルータ)と同一のコンフィグレーションを設定した第3のルータに前記生成した経路情報をインストールする。このことによって、ネットワーク制御装置は、経路情報の同期を可能にすることができ、第1ルータを予備の第3のルータに切り替える場合に、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時に通信(例えば、セッション)の切断を回避することができる。
【0010】
また、本発明の前記ネットワーク制御装置は、前記第2のルータとの間に通信を確立して経路情報を取得する経路情報取得部と、前記第2のルータと接続している前記第1のルータの接続状態を模擬し、前記第1のルータと同一のコンフィグレーションの設定された前記第3のルータに前記生成した経路情報をインストールし、前記第1のルータと前記第2のルータとの間の伝送パスを、前記第2のルータと前記第3のルータとの間に切り替える接続状態模擬部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、ネットワーク制御装置の接続状態模擬部は、第1のルータの接続状態を模擬して、自身に設定しておく。このことによって、ネットワーク制御装置は、切り替え先の第3のルータとの間で、伝送パス切り替え時に通信(例えば、セッション)を切断することなく切り替えることができる。そのため、ネットワーク制御装置は、第1のルータを予備の第3のルータに切り替える場合に、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時に通信の切断を回避することができる。
【0012】
また、本発明の前記ネットワーク制御装置は、前記第2のルータとの間に通信を確立して経路情報を取得する経路情報取得部と、前記経路情報取得部によって取得された経路情報および記憶部に記憶されている前記通信ネットワークのトポロジ情報に基づいて、前記第1のルータと同一のコンフィグレーションの設定された前記第3のルータにインストールする経路情報を演算して生成する経路演算部と、前記第3のルータに当該生成した経路情報をインストールし、前記第1のルータと前記第2のルータとの間の伝送パスを、前記第2のルータと前記第3のルータとの間に切り替える経路設定部とを備えることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、ネットワーク制御装置の経路演算部は、切り替え先の第3のルータにインストールする経路情報を演算する。このことによって、ネットワーク制御装置は、切り替え先の第3のルータとの間で、伝送パス切り替え時に通信(例えば、セッション)を切断することなく切り替えることができる。そのため、ネットワーク制御装置は、第1のルータを予備の第3のルータに切り替える場合に、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時に通信の切断を回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ルータを予備のルータに切り替える場合に、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時に通信(例えば、セッション)の切断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のネットワーク制御装置を含む仮想網システムを示す図であり、(a)は構成例を表し、(b)は仮想網を表し、(c)は物理網を表す。
図2】第1実施形態におけるネットワーク制御装置の機能例を示す図である。
図3】第1実施形態におけるシーケンス例を示す図である。
図4】第2実施形態におけるネットワーク制御装置の機能例を示す図である。
図5】第2実施形態におけるシーケンス例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以降の説明では、仮想網上の論理的なシステム(ルータ、スイッチ、光伝送装置等)を論理システム、論理的なリンクを論理リンクと称する。
【0017】
(仮想網システム)
はじめに、本実施形態のネットワーク制御装置1を含む仮想網システム100の構成例について、図1(a)を用いて説明する。
仮想網システム100は、図1(a)に示すように、複数のOXC(Optical cross-Connect)等の光伝送装置(ノード)5およびIPルータ(ノード)6ならびに各光伝送装置5間の通信経路を示すリンクにより構成される通信ネットワーク50と、各IPルータ6および各光伝送装置5と通信可能に接続されるネットワーク制御装置1とを備える。ネットワーク制御装置1は、図1(a)では1台が記載されているが、後記する機能毎に複数台で構築したり、制御対象のノード種別や数毎に同一機能の装置を複数台備えたりしても構わない。
【0018】
図1(b)は、図1(c)に示す物理網上に収容される仮想網を示している。仮想網は、1つの物理網に対して、IPルータ[仮想]7(論理システム)や論理リンク9を適宜分割して、複数形成することができる。図1(b)には、実線で表す仮想網と、点線で表す仮想網とが示されている。
【0019】
図1(c)に示す物理網は、光伝送装置5およびIPルータ6を示すシステム、ならびに任意の光伝送装置5間および光伝送装置5とIPルータ6との間を接続するリンクで構成される。なお、システムには、不図示のスイッチが含まれていてもよい。また、図1(c)では、1つのIPルータ6は、論理システムを示すIPルータ[仮想]7の配置によって表現され、図1(b)に示す仮想網の構成に依存して、実線および点線の2つのIPルータ[仮想]7で表されることもある。また、各論理システムを始終点とし、その終始点を接続する伝送路8を経由して、論理パス4が物理網上に設定される。その論理パス4が、図1(b)に示す仮想網では、論理リンク9を構成する。
【0020】
物理網上には、複数の論理システムおよび論理リンク9で構成される予め計画されたトポロジの仮想網が配置されている。そして、ある論理システム(IPルータ[仮想]7)が物理的に故障した場合やその保守作業の場合に、当該論理システム(IPルータ[仮想]7)を別の物理システム(別のIPルータ[仮想]7)上に移設して切り替えることが行われる。
【0021】
なお、図1(a)に示したネットワーク制御装置1は、物理網(図1(c))上に構築される仮想網(図1(b))を制御する機能を有する。そして、ネットワーク制御装置1は、現用のIPルータ[仮想]7を切り替え先の予備のルータに切り替える場合、BGP経路を同期する機能を有する。なお、ネットワーク制御装置1の機能の詳細については後記する。
【0022】
次に、本実施形態では、BGPのようにTCPコネクションを確立してメッセージをやり取りするルータ(論理システム)を予備のルータに切り替える場合、その切り替えを実行する2通りの手法があり、それぞれの手法を実行する2種類のネットワーク制御装置について説明する。第1実施形態では、現用のルータのBGPピアの状態を複製し、切り替え先の予備のルータに当該現用のルータのBGP経路情報をインストールする手法を実行するネットワーク制御装置について説明する。第2実施形態では、現用のルータから取得したBGP経路情報ならびに物理網のトポロジ情報に基づいて、切り替え先の予備のルータにインストールする経路情報を演算し、その演算したBGP経路情報を切り替え先の予備のルータにインストールする手法を実行するネットワーク制御装置について説明する。なお、いずれの実施形態においても、同じ仮想網内の現用のルータ(図1(a)に示すIPルータ[仮想]7)間では、iBGP(internal BGP)セッションが確立されており、BGPが動作しているものとする。
【0023】
(第1実施形態)
第1実施形態では、ネットワーク制御装置が現用のルータのBGPピアの状態を複製し、切り替え先の予備のルータに当該現用のルータのBGP経路情報をインストールする場合について説明する。
まず、第1実施形態におけるネットワーク制御装置の機能例について、図2を用いて説明する(適宜、図1(a)(b)(c)参照)。ただし、ネットワーク制御装置1の機能全てを説明するのではなく、本発明に関係する機能について説明する。
【0024】
ネットワーク制御装置1は、処理部11、記憶部12および通信部13を備える。処理部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメインメモリによって構成され、記憶部12に記憶されているアプリケーションプログラムをメインメモリに展開して、資源割当変更演算部111、資源設定部112、BGPピア確立部(経路情報取得部)113およびBGPピア複製部(接続状態模擬部)114を具現化している。
【0025】
資源割当変更演算部111は、後記する記憶部12の物理網DB(Database)121に記憶されている物理網のトポロジ情報および変更情報(物理故障、保守作業等)と、記憶部12の仮想網DB122に記憶されている仮想網のトポロジ情報および要求性能機能情報とを参照し、資源割当の変更先を演算する機能を有する。トポロジ情報とは、通信ネットワーク50を構成する各ノード(IPルータ6および光伝送装置5)とそのノード間の接続に関する情報である。また、要求性能機能情報とは、システムのIF(Interface)数、CPU性能、メモリ容量およびフィルタ機能ならびにリンクの容量等に対して要求される情報である。
【0026】
資源設定部112は、資源割当変更演算部111の演算結果に基づいて、物理網に論理パスや論理システムの設定を行う機能を有する。
【0027】
BGPピア確立部113は、現用のルータ(図1(a)に示すIPルータ[仮想]7)との間にBGPセッションを確立し、BGP経路情報を取得する機能を有する。また、BGPピア確立部113は、取得したBGP経路情報をBGPピア複製部114(後記)にインストールする機能を有する。
【0028】
BGPピア複製部114は、BGPを実行する機能を有するとともに、現用のルータのBGPピアの状態(接続状態;現用のルータに設定されているピアのルータとの間の接続の状態のこと)を擬似的に複製(模擬)し、取得されたBGP経路情報を、切り替え先の予備のルータにインストール(広告)する機能を有する。また、BGPピア複製部114は、予備のルータにコンフィグを設定する機能およびstatic routeの設定・削除を実行する機能を有する。
【0029】
記憶部12は、ハードディスク等の記憶装置であり、物理網DB121および仮想網DB122が記憶される。
物理網DB121には、通信ネットワーク50の物理網のトポロジ情報および変更情報(物理故障、保守作業等)が記憶される。
仮想網DB122には、仮想網のトポロジ情報および要求性能機能情報が記憶される。ここで、要求性能機能情報とは、システムのIF(Interface)数、CPU性能、メモリ容量およびフィルタ機能ならびにリンクの容量等に対して要求される情報である。
【0030】
通信部13は、通信インタフェースであり、通信ネットワーク50の各ノード(光伝送装置5およびIPルータ6)と種々の情報を送受信する機能を有する。
【0031】
次に、第1実施形態におけるシーケンス例について、図3を用いて説明する(適宜、図2参照)。図3では、現用のルータB(第1のルータ)を、切り替え先の予備のルータC(第3のルータ)に切り替えるケースで説明する。
なお、通信ネットワーク50では、現用のルータA(第2のルータ)およびルータBがiBGPセッションを確立している。また、ルータAおよびルータBでは、BGPが動作している。また、ルータAとルータBとの間では、KEEPALIVEが所定の周期で交換されているものとする。また、ネットワーク制御装置1は、ルータA,B,Cとも通信可能になっているものとする。
【0032】
ステップS301では、BGPピア確立部113は、切り替え対象ではないルータAとの間に、iBGPセッション(通信)を確立する。
ステップS302では、BGPピア確立部113は、ルータAからBGP経路情報を取得する。
【0033】
ステップS303では、BGPピア確立部113は、取得したBGP経路情報をBGPピア複製部114にインストールする。
ステップS304では、BGPピア複製部114は、ルータAのBGPピアの状態(ルータAと接続しているルータBの接続状態)を擬似的に複製する。
【0034】
ステップS305では、BGPピア複製部114は、ルータCに、ルータBと同一のコンフィグ(コンフィグレーション)を設定する。
ステップS306では、ルータCおよびルータAは、ルータCとルータAとの間で、IGP(Interior Gateway Protocol)経路(OSPF(Open Shortest Path First)等)を同期する(非特許文献1の手法等を用いることができる。)。
【0035】
ステップS307では、BGPピア複製部114は、ルータCに、ネットワーク制御装置1へのstatic routeを設定する。
ステップS308では、BGPピア複製部114は、ルータCとの間にstatic route経由でiBGPセッションを確立する。
【0036】
ステップS309では、BGPピア複製部114は、自身が保持するBGP経路情報をルータCにインストールする。
ステップS310では、ルータCは、インストールされたBGP経路情報に基づいて、BGPベストパス(ルータC用のBGP経路情報)を演算する。その後、ネットワーク制御装置1とルータCとの間では、KEEPALIVEが送受信される。
【0037】
ステップS311では、BGPピア複製部114は、ルータAとルータBとの間の伝送パスを、ルータAとルータCとの間に切り替える。
ステップS312では、BGPピア複製部114は、ルータCから、static routeを削除する。
【0038】
ステップS313では、ルータCは、IGP経路情報に基づいて、iBGPピアの経路を、ルータCとルータAとの間に変更する。そして、ネットワーク制御装置1とルータCとの間では、KEEPALIVEが送受信される。
ステップS314では、BGPピア確立部113は、ルータAとの間のiBGPセッションを切断する。
なお、ステップS311〜S313の処理は、BGPのHoldTime内で実施される必要がある。
このようにして、ネットワーク制御装置1は、現用のルータBを切り替え先の予備のルータCに切り替えることができる。
【0039】
以上、第1実施形態では、BGPピア複製部114は、ルータAのBGPピアの状態を複製して、自身に設定しておく。このことによって、ネットワーク制御装置1は、切り替え先の予備のルータCとの間で、伝送パス切り替え時にBGPセッション(通信)を切断することなく切り替えることができる。また、ネットワーク制御装置1は、BGPピアソースのアドレスにはループバックアドレスを指定しておくことによって、伝送パスの切り替えやstatic routeの削除時にも自動的にIGP経路に基づいてBGPセッションの経路を切替えることができるので、セッション(通信)を維持することができる。そのため、ネットワーク制御装置1は、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時にセッションの切断を回避することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、現用のルータから取得したBGP経路情報ならびに物理網のトポロジ情報に基づいて、切り替え先の予備のルータにインストールする経路情報を演算し、その演算した経路情報を切り替え先の予備のルータにインストールする場合について説明する。
まず、第2実施形態におけるネットワーク制御装置1aの機能例について、図4を用いて説明する(適宜、図1(a)、図2参照)。ただし、ネットワーク制御装置1aの機能全てを説明するのではなく、第1実施形態と異なる機能について説明し、第1実施形態で説明済の機能についてはその説明を省略する。
【0041】
ネットワーク制御装置1aは、処理部11a、記憶部12および通信部13を備える。処理部11aは、第1実施形態で説明した資源割当変更演算部111、資源設定部112、BGPピア確立部113以外に、経路演算部115および経路設定部116を備えている。処理部11aは、図示しないCPUおよびメインメモリによって構成され、記憶部12に記憶されているアプリケーションプログラムをメインメモリに展開して、各部(111〜113,115,116)を具現化している。
【0042】
ここでは、第1実施形態のネットワーク制御装置1には備わっていない経路演算部115および経路設定部116の機能について説明する。
経路演算部115は、BGPピア確立部113で取得したBGP経路情報、物理網DB121に記憶されている物理網のトポロジ情報および変更情報(物理故障、保守作業等)に基づいて、切り替え先の予備のルータにインストールするBGP経路情報を演算する機能を有する。
経路設定部116は、経路演算部115によって演算されたBGP経路情報を、切り替え先の予備のルータにインストールする機能を有する。また、経路設定部116は、予備のルータにコンフィグを設定する機能を有する。
【0043】
次に、第2実施形態におけるシーケンス例について、図5を用いて説明する(適宜、図2参照)。図5では、第1実施形態の場合と同様に、現用のルータB(第1のルータ)を、切り替え先の予備のルータC(第3のルータ)に切り替えるケースで説明する。
なお、通信ネットワーク50では、現用のルータA(第2のルータ)および現用のルータBがiBGPセッションを確立している。また、ルータAおよびルータBでは、BGPが動作している。また、ルータAとルータBとの間では、KEEPALIVEが所定の周期で交換されているものとする。また、BGPピア確立部113は、ルータAおよびルータBとiBGPセッションを確立しており、所定の周期または切り替え直前にBGP経路情報を収集するものとする。また、ネットワーク制御装置1は、ルータA,B,Cとも通信可能になっているものとする。
【0044】
ステップS501では、BGPピア確立部(経路情報取得部)113は、切り替え対象ではないルータAとの間に、iBGPセッション(通信)を確立する。
ステップS502では、BGPピア確立部113は、ルータAからBGP経路情報を取得する。
【0045】
ステップS503では、BGPピア確立部113は、取得したルータAのBGP経路情報を経路演算部115に出力する。
ステップS504では、経路演算部115は、BGPピア確立部113が取得したルータAのBGP経路情報、物理網DB121に記憶されている物理網のトポロジ情報および変更情報(物理故障、保守作業等)に基づいて、切り替え先の予備のルータCにインストールするルータC用のBGP経路情報を演算し生成する。
【0046】
ステップS505では、経路設定部116は、ルータCに、ルータBと同一のコンフィグを設定する。
ステップS506では、ルータCおよびルータAは、ルータCとルータAとの間で、IGP経路(OSPF等)を同期する(非特許文献1の手法等を用いることができる。)。
【0047】
ステップS507では、BGPピア確立部113は、ルータCとの間にiBGPセッションを確立する。
ステップS508では、経路演算部115は、ステップS504で生成したルータC用のBGP経路情報を経路設定部116に出力する。
【0048】
ステップS509では、経路設定部116は、経路演算部115によって生成されたルータC用のBGP経路情報を、ルータCにインストールする。
ステップS510では、ルータCは、BGP経路情報を設定する。
【0049】
ステップS511では、経路設定部116は、ルータAとルータBとの間の伝送パスを、ルータAとルータCとの間に切り替える。
ステップS512では、BGPピア確立部113は、ルータAとの間のiBGPセッションを切断する。
このことによって、ネットワーク制御装置1aは、ルータBを切り替え先の予備のルータCに切り替えることができる。
【0050】
以上、第2実施形態では、経路演算部115は、切り替え先のルータCにインストールするBGP経路情報を演算する。このことによって、ネットワーク制御装置1aは、切り替え先の予備のルータCとの間で、伝送パス切り替え時にBGPセッション(通信)を切断することなく切り替えることができる。そのため、ネットワーク制御装置1aは、IPレイヤのトポロジを変更せず、切り替え時にセッション(通信)の切断を回避することができる。
【0051】
以上、第1実施形態[第2実施形態]のネットワーク制御装置1[1a]は、ルータA(現用のルータ)からBGP経路情報を取得し、その取得したBGP経路情報に基づいて、切り替え先のルータC(予備のルータ)にインストールするBGP経路情報を生成する。そして、ネットワーク制御装置1[1a]は、ルータBと同一のコンフィグを設定したルータCに前記生成したBGP経路情報をインストールする。このことによって、ネットワーク制御装置1[1a]は、BGP経路情報の同期を可能にすることができ、BGPセッションを維持した状態で、ルータBとルータAとの間の伝送パスを、ルータAとルータCとの間に切り替えることができる。
【0052】
また、第1および第2実施形態に示した方法では、BGPが動作しているルータの切り替えが、同一コンフィグを用いてIPレイヤのトポロジを変更せずに実行できる。そのため、予備資源の共用による資源量や設備コストの削減と運用コストの削減とを実現することができる。また、セッションの切断を回避することで伝送パスの切り替え時のルーティングの再収束を抑制することができる。
【0053】
本実施形態で説明したBGPのケースは、経路制御プロトコルの一例であって、本発明は、BGP以外の経路制御プロトコルが用いられている場合にも適用可能である。また、本発明は、仮想ネットワークに限定されることはなく、物理的なネットワークにも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,1a ネットワーク制御装置
4 論理パス
5 光伝送装置(ノード)
6 IPルータ(ノード)
7 IPルータ[仮想]
8 伝送路
9 論理リンク
11 処理部
12 記憶部
13 通信部
100 仮想網システム
111 資源割当変更演算部
112 資源設定部
113 BGPピア確立部(経路情報取得部)
114 BGPピア複製部(接続状態模擬部)
115 経路演算部
116 経路設定部
121 物理網DB
122 仮想網DB
図1
図2
図3
図4
図5