特許第6043486号(P6043486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043486
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】試験測定装置及び周波数偏位トリガ方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20161206BHJP
   G01R 23/12 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01R13/20 N
   G01R23/12
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-15155(P2012-15155)
(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2012-154932(P2012-154932A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】13/015,128
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・エイ・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジー・ニーリム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・シー・カルビン
(72)【発明者】
【氏名】シェーン・エイ・ハザード
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−002249(JP,U)
【文献】 実開平05−075680(JP,U)
【文献】 特開2009−005362(JP,A)
【文献】 特開2006−186994(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0129355(US,A1)
【文献】 実開平05−017569(JP,U)
【文献】 米国特許第04603703(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
G01R 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受ける入力端子と、
上記入力端子からの上記入力信号を受ける第1入力回路と、
トリガ条件をユーザから受けるよう構成される第2入力回路と、
上記第1入力回路に接続されるdF/dTトリガ回路とを具え、
上記dF/dTトリガ回路が、位相ロック・ループ(PLL)回路と、トリガ回路とを有し、
上記PLL回路が、
電圧制御発振回路と、
該電圧制御発振回路からの信号と上記入力信号との位相差を位相差信号として出力する位相検出回路と、
上記位相差信号をフィルタ処理して、比例パス出力信号として出力するローパス・フィルタと、
上記比例パス出力信号を積分した積分出力信号を生成する積分回路と、
上記比例パス出力信号と上記積分出力信号とを合算し、上記電圧制御発振回路に制御電圧信号として供給する加算回路とを有し、
上記トリガ回路が、上記比例パス出力信号を受けて、上記比例パス出力信号が上記トリガ条件を満たしたときにトリガ・イベントを生成する試験測定装置。
【請求項2】
試験測定装置の入力端子に入力信号を受けるステップと、
上記試験測定装置のユーザからトリガ条件を受けるステップと、
位相ロック・ループ(PLL)回路の電圧制御発振回路からの信号と上記入力信号との位相差を位相差信号として出力するステップと、
上記PLL回路の比例パス上で上記位相差信号をローパス・フィルタ処理し、比例パス出力信号として出力するステップと、
上記PLL回路からの上記比例パス出力信号をトリガ回路に伝送するステップと、
上記比例パス出力信号を積分した積分出力信号を生成するステップと、
上記比例パス出力信号と上記積分出力信号とを合算し、上記PLL回路の電圧制御発振回路に制御電圧信号として供給するステップと、
上記比例パス出力信号が上記トリガ条件を満たすと、上記トリガ回路を用いて上記試験測定装置にトリガをかけさせるステップと
を具える周波数偏位トリガ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験測定装置及びトリガ方法に関し、特に、信号中の周波数偏位に応じてトリガをかける試験測定装置及び周波数偏位トリガ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル・データ・ストリームは、EMI(電磁波干渉)の放射レベルを低減するために、スペクトラム拡散クロック(SSC)変調方式で変調されることが多い。例えば、ハードディスク・ドライブ(HDD)、パソコン、コンピュータ・モニタなどの電子機器は、EMIを低減するために、SSCを利用している。
【0003】
一般的なSSC変調方式では、三角波周波数変調プロファイル(profile:外形)を実行し、データ信号の基本波の中心周波数を−5000ないし0ppm(parts per million)だけレベルを下げて広げる(ダウン・スプレッド)。図1Aは、この方法で得られる時間対周波数トレースの理想的な形状の例を示す。この形式のトレースは、例えば、第2世代シリアルATA(SATA:serial advanced technology attachment)のハードディスク・ドライブ信号で用いられる研究レベルの5000ppmダウン・スプレッドSSC形状に対応する。
【0004】
民生品レベルのクロック発生器は、安定性に問題があることが多く、仕様やその他の定義などに基づく許容範囲から外れた問題のある信号を生成する傾向がある。これは、図1Bでスパイク10として示すようなスパイクなどの偏位を信号中に生じる結果となる。その他の問題のとなる偏位としては、例えば、図1Cに示す「バットマン」プロファイル12、図1Dに示す「1:100 SSCグリッチ」プロファイル14、図1Eに示す遷移フリンジ(縁)16を伴う「ノイズの多いSSC」プロファイルなどがある。
【0005】
電子産業では、仕様から逸脱したSSC変調信号が原因の問題がよく知られるようになってきた。これまで、何がSSC信号中のスパイクや偏位を構成しているのかをより明確に定義するための複数の手法が提案されてきている。例えば、「dF/dT(デルタ周波数(周波数差分)/デルタ時間(時間差分))の定義が提案され、これは復調SSC信号について、偏位したスパイクを定義するのに利用できる。例えば、図1Fでは、望ましい変調SSC信号が線108として示されている。しかし、第1要素102及び第2要素104を有するスパイクが位置120に生じている。位置120は、図1Fに示すように、復調SSC信号の傾斜区間108のおおよそX%に対応する。
【0006】
スパイク(偏位)の第1要素102は+dF/dTに対応し、第1要素104は−dF/dTに対応する。これらは、言い換えると、スパイクのポジティブ及びネガティブなスロープ(傾斜)要素である。異常又は偏位したスパイクとするかは、スパイクの大きさが、例えば、所定タイム・インターバル(例えば106で示す時間間隔)での移動平均内において1875ppmといった値を超えたか否かで定義することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−186994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SATA、シリアル・アタッチドSCSI(SAS)、DisplayPort、PCI Expressなどの種々の仕様及びプロトコルは、SSC信号の偏位に関する制限を含み、こうし定義や同様の定義の範囲から外れた信号は「非準拠」とみなされる。しかし、従来のリアルタイム(RT)オシロスコープのトリガ・システムは、こうした偏位イベントが発生したときに検出する能力を持っていなかった。加えて、dF/dTスパイクは不規則に生じるので、長い捕捉データ・レコードを検索して、そうしたイベントを見つけようとすることなしに、そうしたイベントを即座に分離することが望ましい。捕捉したレコードを検索することは、負荷の大きな演算であり、分単位の時間がかかることもある。更には、従来のRTオシロスコープでは、アクイジション(取込み)メモリ中に希なイベントを捕捉する可能性が極めて低く、このため、取込み条件を緩めに設定すれば、過剰に不要な情報を含む調査結果となってしまう。
【0009】
従って、SSC信号などの信号中のdF/dT問題を診断したり、信号中の偏位の存在をタイムリーに測定するのは困難又は不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、スペクトラム拡散クロック(SSC)信号に関連する1つ以上の信号のような信号中の周波数偏位についてトリガをかけて分離する測定技術を提供する。実施形態によっては、その信号は、SSC変調がわずか又は無いデータ信号としても良い。SSC信号に基づくデータ信号のような信号を試験測定装置の入力端子に受けた後、SSC信号はローパス・フィルタ処理され、トリガ回路に送られる。フィルタ処理されたSSC信号中の周波数偏位が、1つ以上のしきい値を超えるか、横切ると、トリガ・イベントが生成される。
【0011】
実施形態の例によっては、試験測定装置の入力端子がSSCデータ信号を受けて、最初に、入力データ等化回路、スライサ回路、マルチプレクサ(MUX)、判定帰還等化回路、その他の適切なプリ処理回路などの入力回路を用いて、SSCデータ信号を処理する。dF/dTトリガ回路が入力回路に接続され、これはSSCデータ信号を受けて、SSC信号中の周波数偏位が、1つ以上のユーザ定義又は所定のしきい値を超えるか横切ると、トリガ・イベントを生成する。
【0012】
dF/dTトリガ回路は、種々の形で実現できる。例えば、dF/dTトリガ回路は、信号をフィルタ処理する位相ロック・ループ(PLL)回路と、SSC信号中の周波数偏位が1つ以上のウィンドウ・トリガしきい値を超えるか横切ると、トリガ・イベントを生成するトリガ回路とを含んでいても良い。これに代えて、dF/dTトリガ回路が、アナログ・デジタル変換回路(ADC)及びデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を含んでいても良い。ADCは、PLL回路から信号を受けてデジタル化し、DSPはデジタル化信号を受けて、デジタル化信号が所定の期待SSCプロファイル、マスク又はパターンを破るとトリガ・イベントを生成する。
【0013】
より具体的には、本発明の第1観念は、試験測定装置であって、
信号を受ける入力端子と、
上記入力端子からの上記信号を受ける入力回路と、
上記入力回路に接続されるdF/dTトリガ回路とを具え、
上記dF/dTトリガ回路が、上記入力回路からの上記信号を受けて、上記信号の周波数偏位率が所定パターンを破ると、トリガ・イベントを生成するよう構成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の第2概念は、第1概念の試験測定装置において、上記dF/dTトリガ回路が、信号のdF/dTが1つ以上のしきい値を超えるか又は横切るとトリガ・イベントを生成するよう構成されることを特徴としている。
【0015】
本発明の第3概念は、第2概念の試験測定装置において、1つ以上の上記しきい値がユーザが定義可能であることを特徴としている。
【0016】
本発明の第4概念は、第2概念の試験測定装置において、1つ以上の上記しきい値が予め定められていることを特徴としている。
【0017】
本発明の第5概念は、第2概念の試験測定装置において、上記信号は、スペクトラム拡散クロック(SSC)信号に基づくデータ信号であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第6概念は、第2概念の試験測定装置において、
位相検出回路と、該位相検出回路に接続された可変ローパス・フィルタとを含み、位相ロック・ループ(PLL)の比例パス出力信号を生成する回路を更に具え、
上記dF/dTトリガ回路が、上記可変ローパス・フィルタの出力端子に接続され、上記PLLの上記比例パス出力信号を受けるように構成されるトリガ回路を含み、該トリガ回路が上記PLLの上記比例パス出力信号に応じて上記トリガ・イベントを生成するように構成されることを特徴としている。
【0019】
本発明の第7概念は、第1概念の試験測定装置において、上記dF/dTトリガ回路が、上記信号のdF/dTが波形マスクを破ったときに上記トリガ・イベントを生成するように構成されることを特徴としている。
【0020】
本発明の第8概念は、第1概念の試験測定装置において、上記dF/dTトリガ回路が、位相ロック・ループ(PLL)回路と、該PLL回路に接続されたアナログ・デジタル変換回路(ADC)と、該ADCに接続されたデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)とを有し、上記ADCが上記PLL回路からの信号を受けてデジタル化し、上記DSPがデジタル化信号を受けて、上記デジタル化信号が所定期待パターンを破ったときに上記トリガ・イベントを生成するように構成されることを特徴としている。
【0021】
本発明の第9概念は、第8概念の試験測定装置において、上記所定期待パターンが所定期待SSCパターンを含み、dF/dTのピークが上記所定期待SSCパターンを破ったときに上記トリガ・イベントを生成するように上記DSPが構成されることを特徴としている。
【0022】
本発明の第10概念は、第8概念の試験測定装置において、上記PLL回路から受ける上記信号は、上記PLLの積分パスと上記PLLの比例パスからの信号を合算した合算信号を含み、上記DSPは、上記合算信号を上記所定期待SSCパターンと比較し、比較結果に応じて上記トリガ・イベントを生成するように構成されることを特徴としている。
【0023】
本発明の第11概念は、第8概念の試験測定装置において、上記DSPは、上記PLL回路から受ける上記信号の高周波数成分を、上記PLL回路から受ける上記信号の低周波数成分から分離するよう構成されることを特徴としている。
【0024】
本発明の第12概念は、第8概念の試験測定装置において、上記ADCと上記PLL回路の間にアンチ・エイリアス・フィルタを更に具えることを特徴としている。
【0025】
本発明の第13概念は、周波数偏位に対して瞬時にトリガをかける周波数偏位トリガ方法であって、
試験測定装置の入力端子に信号を受けるステップと、
位相ロック・ループ(PLL)回路の比例パス上で(比例パスの途中において)上記信号をローパス・フィルタ処理するステップと、
上記PLL回路からの上記フィルタ処理信号をトリガ回路に伝送するステップと、
上記信号の周波数偏位率が所定パターンを破ると上記トリガ回路を用いて上記試験測定装置がトリガをかけるステップとを具えている。
【0026】
本発明の第14概念は、第13概念の周波数偏位トリガ方法において、上記トリガ回路が、上記信号のdF/dTが1つ以上のしきい値を超えるか又は横切ると上記試験測定装置がトリガをかけることを特徴としている。
【0027】
本発明の第15概念は、第13概念の周波数偏位トリガ方法において、上記トリガ回路がアナログ・デジタル変換回路(ADC)及びデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を含み、更に、
上記PLLの積分パス及び上記PLLの比例パスからの信号を合算して合算信号を生成するステップと、
上記合算信号を上記DSPに伝送するステップと、
上記DSPを用いて、dF/dTイベントが所定期待パターンを破ったときに、上記試験測定装置にトリガをかけさせるステップとを具えることを特徴としている。
【0028】
本発明の第16概念は、第15概念の周波数偏位トリガ方法において、上記合算信号にアンチ・エイリアス・フィルタ処理を行うステップを更に具えることを特徴としている。
【0029】
本発明の第17概念は、第15概念の周波数偏位トリガ方法において、
上記ADCを用いて上記合算信号をデジタル化するステップと、
上記DSPを用いて上記dF/dTイベントを含む上記デジタル化合算信号を上記所定期待パターンと比較するステップと、
上記所定期待パターンに関連する1つ以上のしきい値を上記dF/dTイベントが横切ったとき、上記試験測定装置がトリガをかけるステップとを更に具えることを特徴としている。
【0030】
本発明の第18概念は、第13概念の周波数偏位トリガ方法において、上記試験測定装置のユーザからの入力に応じてdF/dTトリガをイネーブル(enable:利用可能に)するステップを更に具えることを特徴としている。
【0031】
本発明の第19概念は、第13概念の周波数偏位トリガ方法において、上記試験測定装置のユーザからの入力に応じて1つ以上のdF/dTトリガしきい値を設定するステップを更に具えることを特徴としている。
【0032】
本発明の第20概念は、第13概念の周波数偏位トリガ方法において、
所定期待パターンによって定まる上位しきい値よりも高い開始トリガしきい値を選択するステップと、
上記開始トリガしきい値から上記上位しきい値へと徐々に上記トリガしきい値を低くする処理を、上記フィルタ処理信号中のdF/dTイベントが徐々に低くなる上記トリガしきい値を横切るまで行うステップと
を更に具えることを特徴としている。
【0033】
本発明の第21概念は、第13概念の周波数偏位トリガ方法において、上記信号がスペクトラム拡散クロック(SSC)信号に基づくデータ信号であることを特徴としている。
【0034】
本発明の第22概念は、フレキシブル・ディスク(FD)、光ディスク、固定ディスク、RAM、ROM又はフラッシュ・メモリを含む装置であって、試験測定装置で実行したときに、上記第13概念のステップを実行する結果となる命令を有する装置アクセス可能な媒体を具えることを特徴としている。
【0035】
本発明の目的、効果及び他の新規な点は、以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲及び図面とともに読むことによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A図1Aは、好ましいスペクトラム拡散クロック(SSC) 変調信号の時間対周波数トレースを簡略して描いた図である。
図1B図1Bは、偏位のあるSSC変調信号の時間対周波数トレースを簡略して描いた図である。
図1C図1Cは、偏位のあるSSC変調信号の例で、「バットマン」プロファイルのトレースを示している。
図1D図1Dは、偏位のあるSSC変調信号の例で、「1:100 SSCグリッチ」プロファイルのトレースを示している。
図1E図1Eは、偏位のあるSSC変調信号の例で、「ノイズの多いSSC」プロファイルのトレースを示している。
図1F図1Fは、偏位のあるSSC変調信号の例の種々の構成要素を示した図である。
図2図2は、入力端子、入力回路、コントローラ、表示ユニット、dF/dTトリガ回路を含む本発明による試験測定装置の実施形態の簡略化したブロック図である。
図3図3は、図2のdF/dTトリガ回路の本発明の実施形態を示す図である。
図4図4は、図3のdF/dTトリガ回路を別の観点から描いた本発明の実施形態を示す図である。
図5図5は、DSPを含む図2のdF/dTトリガ回路の本発明の実施形態を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態によるdF/dTトリガの設定入力手段を示す図である。
図7図7は、SSCデータ信号を受けてトリガ・イベントを生成するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2は、試験測定装置200の実施形態の簡略化したブロック図であり、これは、入力端子210、入力回路215、コントローラ225、表示ユニット227、dF/dTトリガ回路220を含んでいる。試験測定装置200は、リアルタイム・デジタル・オシロスコープなどの適切な試験測定装置としても良い。簡潔で一貫性のある説明のため、ここではオシロスコープを試験測定装置として説明するが、これに限定されるものではない。
【0038】
ここでは、オシロスコープ200は、種々の実施形態での利用に適した入力端子210のような複数のチャンネル又は入力を有するものとする。オシロスコープは、入力端子210が1つだけという場合もあるが、本発明は、4入力端子や任意数の入力端子を有するオシロスコープでも等しく適用できる。オシロスコープ200の各構成要素は、ここでは互いに直接接続されるとして示されているが、オシロスコープ200は、必ずしも図示しない種々の他の回路要素又はソフトウェア要素、入力端子、出力端子、インタフェースを含むとしても良く、これらは、オシロスコープ200の描かれている構成要素間等に配置される。
【0039】
入力端子210は、例えば、SSC信号に基づくデータ信号である被試験電気信号を受ける。入力回路215は、信号を受けて、信号にプリ処理を行う。入力回路は、例えば、入力データ等化回路、スライサ回路又はマルチプレクサ(MUX)を含んでいても良い。実施形態によっては、入力回路215は、被試験信号をオシロスコープの他の構成要素に伝達する前に処理又は改善するために、判定帰還等化(DFE)回路、フィルタなどの適切な回路要素を含んでいても良い。入力回路215は、単一のハードウェア・チップ要素で構成しても良いが、種々のタスクを実行するように、多数のハードウェア・チップ要素で構成しても良い。
【0040】
入力回路215は、信号を変更や改善したり、信号を変調や復調したりできるが、ここではこうした変調や改善された信号を単に「SSCデータ信号」と呼ぶことにする。SSCデータ信号と呼ぶとは言っても、SSCデータ信号だけに限定するものではなく、信号中に隠れてしまう信号や、関連する信号や成分も含むものとする。また、SSC信号は、SSC信号に基づくデータ信号としても良い。実施形態によっては、データ信号は、意図的なSSC変調をわずかしか含まないか無い場合もあり得る。
【0041】
dF/dTトリガ回路220は、入力回路215と動作可能に接続され、SSCデータ信号を受けるように構成される。dF/dTトリガ回路220は、信号のdF/dTが1つ以上のしきい値を超えるか横切ると、トリガ・イベントを生成する。例えば、SSC信号中の周波数偏位が1つ以上のしきい値を超えるか横切ると、dF/dTトリガ回路220がトリガ・イベントを生成するとしても良い。1つ以上のトリガしきい値は、ユーザが定義できるものでも良いし、システムで予め定義しておいても良い。dF/dTトリガ回路220及びその機能については、図3図7を参照して、以下で詳細に説明する。
【0042】
コントローラ225は、入力回路215及びdF/dTトリガ回路220に動作可能に接続される。コントローラ225は、また、表示ユニット227にも接続され、表示ユニット227は、1つ以上のSSC変調又は復調トレース、dF/dTトリガ・コントロールやトリガ情報を表示できるように、表示を適宜変更できるようになっている。コントローラ225は、また、被試験信号を処理し、対応する波形、トレース又は測定値を表示ユニット227で表示するようにする。これに代えて、又は、波形、トレース及び測定値を表示するのに加えて、コントローラ225は、バスなどの有線で、これらを外部装置230に伝送するようにしても良い。外部装置230は、例えば、オシロスコープ200から独立したコンピュータや、外部メモリ装置などである。
【0043】
オシロスコープ200のいずれの構成要素も、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの組合せで実現しても良い。例えば、本願で開示する構成要素のいくつかを、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・アレイ(FPGA)などの適切なハードウェア回路要素を用いて実現しても良い
【0044】
図3は、図2のdF/dTトリガ回路220の本発明の実施形態を示す図であり、これはトリガ回路340を含んでいる。dF/dTトリガ回路220は、データ212を受ける入力回路215に接続される。データ212は、入力端子210で受けたときに、本質的に被試験電気信号を含み、実施形態によっては、被試験電気信号はSSC信号である。
【0045】
dF/dTトリガ回路220は、位相ロック・ループ(PLL)回路330を含む。PLL回路330は、例えば、ノン・リターン・ゼロ(NRZ)位相検出回路332を含み、これは、再生クロック350及び再生データ355を出力する。位相検出回路332は、可変ローパス・フィルタ334に接続され、これは、信号中の高周波数ノイズを低減する。可変利得素子336は、可変ローパス・フィルタ334に接続され、信号利得を調整するように構成される。可変積分回路338は、可変利得素子336の出力端子に接続される。PLLのループ帯域幅は、好ましくは100kHzくらいに設定され、これは上述(図1Fのタイム・インターバル106の例)した1.5マイクロ秒のタイム・インターバルに対応する。しかし、タイム・インターバルは、1マイクロ秒、10マイクロ秒、100ナノ秒などでも良く、PLLの帯域幅はそれに従って設定されることに注意されたい。実際、タイム・インターバルは、オシロスコープのユーザのニーズに応じた信号を制限する仕様又は定義に基づき、適切なタイム・インターバルに設定すると良い。
【0046】
可変利得素子336及び可変積分回路338の出力信号は、加算回路339に供給される。加算回路339は、可変積分回路338及びPLLの可変利得素子336の出力信号を合算して、対応する合算信号を電圧制御発回路(VCO)バンク331に出力する。VCOバンク331は、合算信号に合わせて出力周波数信号を生成する。この出力周波数信号は、オプションでプログラマブル分周回路342を通して位相検出回路332に戻され、これによってフィードバック・ループが構成される。

【0047】
PLL回路330の1つの例を説明したが、PLL回路の他の変形例を考えても良い。例えば、PLL回路がデジタル又はアナログ素子と、種々の異なる構成要素を含み、説明した構成要素の代わりにこれらを用いるようにしても良い。クロック再生PLLを図示し、利用しているが、別の形態のPLL回路を用いるようにしても良い。
【0048】
クロック再生PLLでは、積分パス出力が最近の入力データ周波数の平均に比例する電圧を生成し、一方、比例パス出力は、入力データ周波数偏位に比例する電圧を最近の入力データ周波数偏位の平均から生成する。積分回路は、その特性上、高周波数は通過させずに遮断する。そのため、積分回路338は、フィードバック・ループ(例えば、PLL330内に含まれるなど)中に使用されると、高周波数での積分回路の低利得を補うために、そのフィードバック・ループの入力部において高周波数エネルギーが生じる。積分回路の入力に見られるような、こうしたループ全体のハイパス・フィルタ効果によって、微分又は微分の近似をdF/dTトリガ回路に提供する。図3のdF/dTトリガ回路220は、位相検出回路332と、可変ローパス・フィルタ334を含み、比例出力信号を生成する。比例パス出力端子はトリガ回路340に接続され、トリガ回路340はPLLの比例出力信号を受ける。可変ローパス・フィルタ334の出力端子は、オプションの付加ローパス・フィルタ360を介してトリガ回路340に接続される。付加ローパス・フィルタ360は、比例パス出力端子とトリガ回路340間の高周波数ノイズを更に低減できる。
【0049】
信号中の偏位のしきい値の大きさ及び継続時間を指定でき、こうしたしきい値はトリガ回路340を用いて監視できる。例えば、SSC信号中の周波数又は電圧偏位の大きさや周波数又は電圧偏位の継続時間が、1つ以上のユーザ定義又は所定のしきい値を超えたとき、トリガ回路340はトリガ・イベント345を生成する。言い換えると、トリガ回路340は、PLL回路330の比例パス出力信号に応じて、トリガ・イベント345を生成する。トリガ・イベント345は、任意の信号、タイム・スタンプなど、しきい値を横切ったことを示す適切な指標となるものを含めることができるが、ここでは単に「トリガ・イベント」と呼ぶことにする。
【0050】
トリガ回路340は、種々の形態で実現でき、異なる条件においても種々のパラメータを用いて動作可能であることに注意されたい。実施形態によっては、トリガ回路340は、ウィンドウ・トリガ回路であり、ウィンドウ・トリガを実行する。信号がウィンドウ内か外に存在するか、ウィンドウに対して信号が出るか又は入るときというイベントにオシロスコープがトリガをかけるという形でウィンドウ・トリガを実現できるが、好ましい実施形態では、信号がウィンドウ内か外に存在するというイベントについてオシロスコープがトリガをかける。ウィンドウは、ユーザが調整可能な2つ以上の電圧又は振幅しきい値によって定義できる。言い換えると、もしSSC信号のような信号が、2つ以上のユーザが調整可能なしきい値を横切るか、それらの内側又は外側(どちらとするか設定による)に存在すれば、トリガ・イベント345が生じるようにできる。実施形態によっては、時間制限機能を用いて、矩形時間ウィンドウを実現しても良い。こうした場合では、SSC信号のような信号が矩形時間ウィンドウの内側か又は外側(どちらとするか設定による)に存在するときに、トリガ・イベント345が生じるようにできる
【0051】
1つの実施形態としては、dF/dTが1875ppmを超えたとき、トリガ回路340がトリガ・イベント345を生成する。このとき、dTは、1.5マイクロ秒である。もう1つの方法としては、位相の変化の大きさがユーザ定義によるか又は所定の1つ以上のトリガしきい値を超えるか横切った場合にトリガ・イベントが生じるとしても良い。1.5マイクロ秒以外でも、タイム・インターバルは1マイクロ秒、10マイクロ秒、100ナノ秒などでも良いことに注意されたい。実際、タイム・インターバルは、オシロスコープのユーザのニーズに応じた信号を制限する仕様又は定義に基づき、適切なタイム・インターバルに設定できる。
【0052】
更には、dF/dTトリガ回路220は、SSC信号中の周波数又は電圧偏位に対して(つまり、トリガ・イベントが生じたときに)瞬時にトリガをかけることができ、その偏位又はトリガ・イベントを表示ユニット227に表示させることができる。このようにして、オシロスコープ200は、dF/dTスパイクが生じるなど、そうしたスパイクが希にしか生じないとしても、このような障害となるイベントを分離できる。
【0053】
実施形態によっては、トリガ回路340に1.5マイクロ秒当たり1875ppmよりも高い値に対応するしきい値を設定しても良く、例えば、1.5マイクロ秒当たり2000ppmとし、続いて、しきい値を徐々に低くするようにしても良い。もし1875ppmに対応するしきい値に到達する前にトリガ回路340がトリガを生成したら、SSC信号は仕様に非準拠(non-conformant)と判断できる。この高めの開始しきい値は、2100ppm、2500ppmやもっと高い値に対応するしきい値など、任意の適切な値から始めることができる。しきい値を低くするやり方は、連続的とするか又は段々(階段状に)にしても良いし、手動や自動でも良い。例えば、ユーザが開始しきい値を選択し、そのしきい値をトリガ・イベントが検出されるまで徐々に低くしても良い。別のやり方としては、オシロスコープ200に開始しきい値を自動で選択する機能を設け、そのしきい値をトリガ・イベントが検出されるまで自動で低くするようにしても良い。このようにすることで、SSC信号中の重大な関心を持つべき場所の範囲を絞り込める可能性が高まり、そして、SSC信号が期待される許容誤差内に収まっているか否か、許容誤差からどの程度外れているかが測定できるようになる。
【0054】
図4は、図3のdF/dTトリガ回路220を別の観点から描いた本発明の実施形態を示す図である。その構成要素は、図3に関して説明したものとおおよそ対応するので、詳細な説明は省略する。追加として、図4では、PLL回路330で処理されるSSC信号450の種々の段階の例を示している。SSC信号450は、可変ローパス・フィルタ334で処理された後、トリガ回路340に供給される。
【0055】
電圧レベル420及び425は、期待SSCプロファイルに比例する電圧又は期待SSCプロファイル内に収まる電圧を表す。期待SSCプロファイルは、SSC信号の成分(要素)がユーザ定義又は所定の(予め定めた)リミット(限度)内に収まるか、そして、これらから外れるかというものである。SSC信号の成分がしきい値410の外へ出ると、期待SSCプロファイルが破られたことになり、トリガ・イベントが生じる。しきい値410は、トリガ回路340を用いて設定又はプリセット(予め設定)できる。もし上位しきい値410の向こう側まで伸びる又は横切る変動415のような期待値を超えて突出したSSC信号のために異常な電圧が検出されると、トリガ回路340は、そのイベントでトリガをかけて、トリガ・イベント345を出力する。同様に、下位しきい値410の向こう側まで変動が伸びれば、トリガ・イベント345が生じる。
【0056】
図5は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)540を含む図2のdF/dTトリガ回路の本発明の実施形態を示す図である。加算回路339は、可変積分回路338と可変利得素子336の出力信号を加算して、合算出力信号を生成する。加算回路339からの合算出力信号は、SSC信号からのデータ入力周波数に追従して周波数プロファイルを生成し、これがデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)540で処理される。可変積分回路338が配置されたパスのことを、ここでは積分出力パス又は単に積分パスと呼ぶことにする。PLLに含まれるネガティブ・フィードバックは、VCOバンク331の入力において、PLLのループ帯域幅の範囲でSSC信号550の全ての成分を再生成する。PLLのループ帯域幅は、この場合、例えば、50MHzなど、かなり高い値に設定される。アナログ・デジタル変換回路(ADC)554が、PLL回路330に接続される。ADCは、例えば、100メガ・サンプル毎秒(MS/s)程度までのサンプル・レートをサポートするものにすると良い。PLLやADCといった構成要素の性能は、日進月歩で向上するものであり、本発明の原理に沿って、任意の帯域幅及びサンプル・レートを適用できることは、当業者であれば理解できるであろう。ADC554は、PLL回路330からの合算出力信号を受けて、デジタル化する。
【0057】
DSP540は、ADC554に接続され、ADC554からのデジタル化信号を受ける。DSP540は、例えば、FPGAを用いて実現でき、このため、新しい規格やSSCプロファイル・アルゴリズムに後から容易にアップグレードできる。DSP540は、デジタル化信号が所定の期待SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンを破ったときに、トリガ・イベント345を生成する。
【0058】
期待SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンとは、上述のように、SSC信号のデジタル成分がユーザ定義又は所定のリミット(限度)内に収まるか、そして、これらから外れるかというものである。言い換えると、DSPは、PLLの合算出力信号を予め定めた所定の期待SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンと比較し、比較結果に応じてトリガ・イベント345を生成する。実施形態によっては、DSP540は、SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンとの比較を容易にするために、PLL回路から受けた信号の高周波数成分と低周波数成分を分離することもある。別の実施形態では、DSP540がPLL回路から受けた信号を所定の波形マスクと比較し、もし信号がこの所定波形マスクから外れると、トリガ・イベント345が生成される。
【0059】
更に別の実施形態では、数学的にSSC信号の微分成分を取って、SSCプロファイル中の変化率の大きい部分を抽出し、所定の期待SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンと比較しても良い。信号は、SSCに関する判断対象としない高周波数位相ノイズを充分にフィルタ処理しておくことが好ましい。
【0060】
更には、プロファイル基準を進化させる観点から言えば、SSCプロファイルに関するフィルタ又はマッチング・アルゴリスムは容易に変更できる。例えば、FPGAのコードを単純にアップグレードして、アップデートしたフィルタ又はマッチング・アルゴリスムを利用するようにすることで、オシロスコープ200を設計製造した後であっても、更には、市場に出荷した後であっても、期待SSCプロファイルその他の定義されたリミットをメンテナンスできる。
【0061】
dF/dTトリガ回路220は、性能を改善するために、ADC554とPLL回路330の間に、アンチ・エイリアス・フィルタ556を設け、SSC信号550中に存在するエイリアシングを低減するようにしても良い。アンチ・エイリアス・フィルタ556は、50MHzフィルタとしても良い。アンチ・エイリアス・フィルタのような構成要素の処理速度は、日進月歩で向上するので、本発明の原理に沿って、その他の帯域を適用できることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0062】
図6は、本発明の実施形態によるdF/dTトリガを設定するための入力手段605、610、615及び620を含む試験測定装置600を描いたものである。試験測定装置600は、図2のオシロスコープ200に対応するものであり、その機能は上述の通りである。表示ユニット227は、SSC信号、dF/dTトリガしきい値などを表示するディスプレイ625を含んでいる。入力領域615は、ディスプレイ625を通してユーザの入力を受け、dF/dTトリガしきい値やその他の関連するdF/dTトリガ設定を利用できるようにしたり、設定したりできるようにする。例えば、入力領域615は、dF/dTトリガ設定を利用、設定できるようにする1つ以上のメニュー・オプションを提供しても良い。
【0063】
加えて、入力手段605、610又は620は、dF/dTトリガ設定を利用、設定できるようにするために利用される。例えば、入力手段605は、dF/dTトリガをイネーブルするのに利用され、入力手段610はSSC信号の種々のしきい値やプロファイルを選択するの利用され、入力手段620はトリガ・イベントが生成された後でSSC信号の位置を調整するのに利用される。オシロスコープのユーザは、これらの入力を用いて、dF/dTトリガしきい値を設定及び操作できる。
【0064】
図7は、SSC信号を受けてトリガ・イベントを生成するフローチャート700である。ここで説明する方法は、SSC信号に関連する周波数偏位を瞬時にトリガすることを含んでいる。この方法は、ステップ705に示すように、オシロスコープ200のような試験測定装置の入力端子でSSCデータ信号を受けることから始まる。ステップ710において、SSC信号が再生(recover)され、PLL回路の比例パス上で(比例パスの途中において)ローパス・フィルタ処理が行われる。上述のように、積分回路の周りのフィードバック・ループは、そのノードにおいてハイパス機能を実現するので、これがSSC信号の微分(つまり、dF/dT)を評価する機能を提供する。こうしたハイパス・フィルタ機能は、もし信号がデジタル化されて、DSP540で処理されるならば必要ない。そして、図5に示すように、信号は、VCO331の入力端子(つまり、加算回路339の出力端子)から取り出される。ステップ715では、SSC信号をデジタル化するかどうか判断される。この判断は、オシロスコープ200を製造する前に行っても良いし、もう1つのやり方としては、ユーザがどちらのオプションでも直ぐに行えるよう、この判断機能をオシロスコープ200に組み込んでも良い。
【0065】
もしステップ715での判断がNO(ノー)なら、フローはステップ740に進み、ローパス・フィルタ処理されたSSC信号は、PLL回路からトリガ回路へ送られる。ステップ745では、フィルタ処理SSC信号中の周波数偏位が1つ以上のトリガしきい値を超えているか又は横切っているか否かについて、トリガ回路を用いて判断される。もしYES(イエス)なら、フローはステップ750に進み、トリガ回路を用いてトリガ・イベントが生成される。もしNOなら、フローはその先の処理のために最初に戻る。
【0066】
一方、もしステップ715での判断がYESなら、フローはステップ725に進む。PLL回路の比例パスと積分パスの信号を合算した合算信号(VCO制御信号)が、ステップ725でPLL回路からADCへと送られ、ステップ730でデジタル化される。ステップ735では、DSPを用いて、トリガ・イベントを生成するか否かの判断が行われる。もしデジタル化信号の周波数プロファイルが、所定の期待SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンを破ったら、フローはステップ750に進み、DSPがトリガ・イベントを生成する。言い換えると、SSC信号のデジタル化周波数プロファイルが、DSPを用いて所定の期待SSC基準、プロファイル、マスク又はパターンと比較され、比較結果に応じてトリガ・イベントが生成される。合算信号を、オプションで、ADCに送られる前に、アンチ・エイリアス・フィルタ処理しても良い。もしステップ735での判断がNOなら、フローはその先の処理のために最初に戻る。
【0067】
特定の実施形態を説明して来たが、本発明の原理はこれら実施形態に限定されるものはないことが理解されよう。例えば、上述の実施形態では、SSC信号の異なる特性について説明しているが、本質的に、上述した特性はSSC特性に限定されるものでなく、ジッタ測定など、その他の統計的形式の測定にも拡張できる。例えば、統計値、ヒストグラムのような測定値についても更なる分析が行える。最小値、最大値、中間値、平均値、標準偏差などの統計値を測定に適用できる。その他の分析形式としては、測定値のトレンド・プロット、ヒストグラムなどを含めても良いことが理解されるであろう。
【0068】
更には、トリガしきい値を徐々に低くすることによって、オシロスコープがたまたま取り込んだ任意の時間ウィンドウを分析するよりも、分析中のデータが「悪い」信号内容を表しているかについて、より確かな確信を持つことが可能になる。加えて、判定帰還等化(DFE)フィルタその他の適切なフィルタを用意して、dF/dTトリガ回路で処理する前又は後に、SSC信号に適用しても良い。
【0069】
更には、本発明の実施形態は、フレキシブル・ディスク(FD)、光ディスク、固定ディスク、RAM、ROM又はフラッシュ・メモリを含む装置であって、試験測定装置で実行したときに、装置が上述した種々の実施形態のステップを実行する結果となる命令を有する装置アクセス可能な媒体としても良い。その他の変形、変更も、本発明の原理を離れることなく実施可能であることが理解されよう。
【符号の説明】
【0070】
200 試験測定装置(オシロスコープ)
210 入力端子
215 入力回路
220 dF/dTトリガ回路
225 コントローラ
227 表示ユニット
230 外部装置
330 PLL回路
331 VCOバンク
332 NRZ位相検出回路
338 積分回路
339 加算回路
340 トリガ回路
342 プログラマブル分周回路
図1A
図1B
図1C
図1F
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図1D
図1E