(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体、及び少なくとも前記表面シート及び前記吸収体に形成された圧搾部を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記吸収性物品の幅方向の中央に位置する中央吸収部と、前記中央吸収部よりも前記幅方向の両外側に位置する一対の外側吸収部と、を有しており、
前記中央吸収部の厚みは、前記外側吸収部の厚みよりも厚く、
前記中央吸収部は、前記吸収体の前端部から後端部まで配置されており、
前記圧搾部は、前記吸収体の長手方向中心よりも前方に位置する前側圧搾部と、前記吸収体の長手方向中心よりも後方に位置する後側圧搾部と、前記長手方向に延びる一対の長手圧搾部と、を有し、
前記前側圧搾部及び前記後側圧搾部は、前記一対の外側吸収部と前記中央吸収部とに跨がっており、
前記前側圧搾部は、第1前側圧搾部と、前記第1前側圧搾部よりも前方に位置する第2前側圧搾部と、を備えており、
前記後側圧搾部は、第1後側圧搾部と、前記第1後側圧搾部よりも後方に位置する第2後側圧搾部と、を備えており、
前記長手圧搾部は、第1長手圧搾部と、前記第1長手圧搾部よりも前記幅方向の外側に位置する第2長手圧搾部と、を備えており、
前記第1前側圧搾部、前記第1後側圧搾部、及び一対の前記第1長手圧搾部によって囲まれた中央領域は、前記圧搾部を有しない、吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)吸収性物品の全体構成
図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品1について説明する。
図1は、吸収性物品の平面図である。
図2は、
図1に示すA−A断面図であり、
図3は、
図2に示すB−B断面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキンである。
【0015】
実施の形態に係る吸収性物品は、昼用の生理用ナプキンである。本実施の形態に係る吸収性物品は、長手方向において着用者の前側に位置する前側領域よりも、着用者の後側に位置する後側領域の長さが長いが、前側領域の長さと後側領域の長さが略同じであってもよい。また、夜用の生理用ナプキンであってもよい。
【0016】
吸収性物品1は、着用者の肌に当接する表面シート10と、液体を透過しない液不透過性の裏面シート20と、吸収体30とを有する。吸収体30は、表面シート10と裏面シート20との間に配設される。従って、吸収体30は、
図1において破線で示される。吸収体30は、吸収性物品1の長手方向L及び幅方向Wにおける中央部分に配設される。
【0017】
表面シート10は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。表面シート10は、少なくとも吸収体30の表面を覆う。表面シート10は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。本実施の形態の表面シート10は、目付20g/m
2のポイントボンド不織布からなる。
【0018】
裏面シート20の長さは、表面シート10の長さと略同一である。裏面シート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。裏面シート20は、着用時の違和感を生じさせない程度の柔軟性を有する材料とすることが好ましく、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付15〜30g/m
2の範囲から得られるフィルムを用いることができる。裏面シート20は、不透液性且つ透湿性であることが望ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂に無機充填剤を溶融混練したものを延伸処理した微多孔性シートによって構成することができる。本実施の形態の裏面シート20は、目付23g/m
2のポリエチレンフィルムからなる。
【0019】
吸収体30は、親水性繊維、パルプを含む。吸収体30は、経血などの体液を吸収可能な材料によって形成される。例として、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、粒子状ポリマー、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維、もしくは親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維、ケミカルボンド処理されたエアレイドパルプ等を単独又は混合して用いることができる。
【0020】
吸収体30は、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によって積層して形成されてもよいし、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成型したエアレイドシートでもよいし、ティッシュ(例えば、目付15g/m
2)上に高吸収ポリマーを混入した粉砕パルプを配置し、ティッシュで包むことによって形成されていてもよい。本実施の形態に係る吸収体30は、針葉樹クラフトパルプと高吸収性ポリマーを積層し、テッシュ(図示せず)で包むことによって形成されている。
【0021】
吸収体30は、前後方向に延びる形状であり、裏面シート20よりも略一回り程度小さい。吸収体30の幅方向Wの長さは、成人女性の股間隔に対応しており、概ね50〜80mmである。吸収体30は、ホットメルトなどの接着剤によって裏面シート20に接着される。なお、吸収体の構成については、後述にて詳細に説明する。
【0022】
吸収性物品1では、表面シート10と裏面シート20の周縁が接合されて、吸収体30が内封される。表面シート10と裏面シート20との接合方法としては、ヒートエンボス加工、超音波、又はホットメルト接着剤のいずれか一つ、又は複数を組み合わせることが可能である。
【0023】
裏面シート20において、下着と接触する表面には、複数の領域において粘着剤(図示せず)が塗布されている。粘着剤は、吸収体の裏面側において長手方向Lに沿って間欠的に配置されている。使用前の状態では、粘着剤は、図示しない剥離シートに接している。剥離シートは、使用前に粘着剤が劣化するのを防止している。そして、使用時に着用者によって剥離シートが剥離される。
【0024】
なお、剥離シートを有しない吸収性物品においては、吸収性物品を個別に包装する包装シートによって使用前に粘着剤が劣化するのを防止するように構成されていてもよい。粘着剤と包装シートが接する場合には、包装シートの表面には、粘着剤の粘着力を低下させることなく粘着剤を剥離可能にする処理を施すことが望ましい。
【0025】
吸収性物品1には、表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧縮した圧搾部が形成されている。圧搾部は、エンボス加工によって表面シート10と吸収体30とが厚み方向に圧搾されて形成された溝である。この圧搾部の構成については、後述にて詳細に説明する
(2)吸収体及び圧搾部の構成
吸収体30は、吸収性物品の幅方向中央に位置する中央吸収部31と、中央吸収部31よりも幅方向外側に位置する一対の外側吸収部32と、を有する。中央吸収部31は、吸収性物品の幅方向中心から幅方向両側に向かう所定範囲に配置されている。中央吸収部は、長手方向に沿って延びている。中央吸収部31は、吸収体の前端部から後端部まで連続して形成されている。中央吸収部31の吸収材料の目付は、外側吸収部32の吸収材料の目付よりも高い。具体的には、中央吸収部31の吸収材料の目付は、550g/m
2であり、外側吸収部32の吸収材料の目付は、200g/m
2である。
【0026】
また、中央吸収部31の厚みは、外側吸収部32の厚みよりも厚い。具体的には、圧搾部が形成されていない領域の中央吸収部31の厚みは、7mmであり、圧搾部が形成されていない領域の外側吸収部32の厚みは、4mmである。
【0027】
中央吸収部31は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む領域に設けられている。なお、排泄口当接領域は、着用者の股間部と当接する領域であり、着用者の両脚の間に位置する。なお、排泄口当接領域の中心は、後述する中央領域CAの中心と一致する。また、排泄口当接領域の中心は、例えば、ウイング部を有する吸収性物品においては、ウイング部の長手方向の中心と一致する。ウイング部を有しない吸収性物品においては、吸収体の幅方向の長さ寸法が最も短い位置が、排泄口当接領域の中心の長手方向の位置となる。
【0028】
圧搾部は、長手方向に延びる長手圧搾部と、吸収体の長手方向中心30CLよりも前方に位置する前側圧搾部と、吸収体の長手方向中心30CLよりも後方に位置する後側圧搾部と、を有する。
【0029】
長手圧搾部は、一対の第1長手圧搾部81と、第1長手圧搾部81よりも幅方向外方に位置する一対の第2長手圧搾部82と、を有する。第1長手圧搾部81及び第2長手圧搾部82は、中央吸収部31よりも幅方向外側に位置する。第1長手圧搾部81及び第2長手圧搾部82は、中央吸収部31に形成されずに、外側吸収部32に形成されている。
第1長手圧搾部81は、幅方向に間隔を空けて一対で配置されている。
【0030】
第2長手圧搾部82は、第1長手圧搾部81よりも幅方向両外側に配置され、長手方向に延びている。第2長手圧搾部82は、幅方向に間隔を空けて一対で配置されている。第2長手圧搾部82には、幅方向外側に向かう凸形状を有する4つの曲線部82Rが長手方向に連続して設けられている。曲線部82Rは、その長手方向両端部から長手方向中心に向かうにつれて幅方向外側に延びている。よって、曲線部82Rの長手方向中心82RCLは、各曲線部において最も幅方向外側に位置しており、各曲線部82Rの長手方向端部82RLは、各曲線部において最も幅方向内側に位置している。曲線部は、幅方向外側に向かう円弧形状であるが、必ずしも円弧形状でなくてもよい。
【0031】
第2長手圧搾部82は、4つの曲線部82Rが連続して配置されており、一の曲線部82Rの長手方向端部82RLは、隣接する曲線部82Rの長手方向端部82RLと一致するため、第2長手圧搾部82には、曲線部82Rの長手方向端部82RLが5か所設けられている。
【0032】
曲線部82Rの長手方向端部82RLのうち、長手方向中央に位置する長手方向端部82RLは、排泄口当接領域の幅方向外側に位置する。この長手方向中央に位置する長手方向端部82RLは、曲線部82Rと曲線部82Rとの間に位置し、幅方向内側に向かう凸形状である。
【0033】
前側圧搾部は、第1前側圧搾部83と、第1前側圧搾部83よりも前方に位置する第2前側圧搾部84と、を備える。第1前側圧搾部83及び第2前側圧搾部84は、少なくとも幅方向に延び、一対の外側吸収部32と中央吸収部31とに跨がっている。
【0034】
第1前側圧搾部83は、一対の第1長手圧搾部81間において第1長手圧搾部81同士を繋ぐように設けられている。具体的には、一対の第1長手圧搾部81の前側端部同士を繋ぐように第1前側圧搾部83が配置されている。
【0035】
第2前側圧搾部84は、一対の第2長手圧搾部82よりも幅方向内側かつ一対の第2長手圧搾部82よりも長手方向外側(前側)に配置されている。第2前側圧搾部84は、第2長手圧搾部82と離間している。
【0036】
後側圧搾部は、第1後側圧搾部85と、第1後側圧搾部85よりも後方に位置する第2後側圧搾部86と、を備える。第1後側圧搾部85及び第2後側圧搾部86は、少なくとも幅方向に延び、一対の外側吸収部32と中央吸収部31とに跨がっている。
【0037】
第1後側圧搾部85は、一対の第1長手圧搾部81間において第1長手圧搾部81同士を繋ぐように設けられている。具体的には、一対の第1長手圧搾部81の後側端部同士を繋ぐように第1後側圧搾部85が配置されている。
【0038】
第2後側圧搾部86は、一対の第2長手圧搾部82よりも幅方向内側かつ一対の第2長手圧搾部82よりも長手方向外側(後側)に配置されている。第2後側圧搾部86は、第2長手圧搾部82と離間している。
【0039】
第1長手圧搾部81、第1前側圧搾部83、及び第1後側圧搾部85は連続して配置され、平面視にて環状である。中央領域CAは、第1長手圧搾部81、第1前側圧搾部83、及び第1後側圧搾部85によって囲まれた領域である。
【0040】
なお、第1長手圧搾部81及び第2長手圧搾部82は、長手方向Lに沿った直線に対して傾斜するように形成されていてもよく、長手方向Lに沿った直線と、第1長手圧搾部81又は第2長手圧搾部82とによって形成される角度(鋭角側)が45度以下であるものとする。一方、前側圧搾部及び後側圧搾部は、幅方向Wに沿った直線に対して傾斜するように形成されていてもよく、幅方向Wに沿った直線と、前側圧搾部又は後側圧搾部によって形成される角度(鋭角側)が45度未満であるものとする。
【0041】
このように構成された吸収性物品によれば、中央吸収部31が吸収体の前端部から後端部まで形成されているため、着用者の排泄口当接領域に吸収体を密着させた状態で、排泄口当接領域の前側や後側において着用者と吸収性物品との隙間が生じ難くなる。また、吸収体の幅方向中央に中央吸収部31が設けられているため、製品の中央付近で多量の体液(経血)を集中して吸収できる。
【0042】
また、中央吸収部31は、吸収体の前端部から後端部まで連続して設けられているため、中央吸収部31に排出された体液が、中央吸収部31に沿って前後に拡散してしまうおそれがある。しかし、中央吸収部31を幅方向に横断する前側圧搾部及び後側圧搾部が形成されているため、吸収体の長手方向中心から前後方向に体液が拡散した場合に、前側圧搾部及び後側圧搾部で体液を引き込むことができる。よって、前後方向への体液の拡散を防止し、体液の漏れを抑制できる。
【0043】
更に、前側圧搾部及び後側圧搾部が形成されていない吸収体にあっては、中央領域CAの中央吸収部31において体液を吸収した際に、体液の吸収速度よりも前後方向へ拡散速度が速いことによって、吸収体の前端部又は後端部に体液が到達してしまい、液漏れが生じることがある。しかし、前側圧搾部及び後側圧搾部が形成された吸収体にあっては、前側圧搾部及び後側圧搾部で体液が吸収されるため、体液の拡散速度が低減する。よって、体液の吸収速度よりも前後方向へ拡散速度が速いことによる体液の漏れを抑制できる。
【0044】
また、前側圧搾部及び後側圧搾部は、比較的厚みが厚い中央吸収部31と、厚みが薄い外側吸収部32と、に跨がっている。圧搾部が中央吸収部31に形成されているため、剛性を高めることができる。更に、外側吸収部32は、着用者の脚に当たりやすい部分であり、当該部分の剛性が高過ぎると、着用者への刺激が強くなることがある。しかし、外側吸収部32は、比較的厚みが薄く、圧搾部の剛性が低いため、肌への刺激を抑制することができる。
【0045】
第1長手圧搾部81及び第2長手圧搾部82を設けることにより、吸収体30の長手方向における曲げ剛性が高まり、製品のよれを抑制できる。また、中央吸収部31は、排泄口当接領域の中心に対して配置されており、中央吸収部31に対して多くの体液が排出される。例えば、長手圧搾部を中央吸収部31に形成すると、中央吸収部31に対して排出された体液が長手圧搾部を介して、前後方向に拡散することがある。しかし、外側吸収部32のみに長手圧搾部を形成しているため、着用者から排出された体液の拡散を抑制できる。
【0046】
曲線部82Rの長手方向端部82RLのうち、長手方向中央に位置する長手方向端部82RLは、凸形状であるため、両脚で吸収性物品が挟まれた際に、吸収体が長手方向端部82RLを基点にして、吸収体の中央を隆起させるように変形する。それにより、フィット性が高まり、身体と吸収体との隙間を減少させることができる。
【0047】
更に、第1長手圧搾部81が、幅方向内側に向かう凸形状であってもよい。具体的には、例えば、第1長手圧搾部81は、第1長手圧搾部81の長手方向両端部から長手方向中心に向かうにつれて幅方向内側に延びる形状としてもよい。このような構成によれば、第1長手圧搾部81の長手方向中心が、第1長手圧搾部81において最も幅方向内側に位置する。第1長手圧搾部81は、幅方向に間隔を空けて一対で配置されている。
【0048】
このように第1長手圧搾部が、幅方向内側に向かう凸形状であることによっても、両脚で吸収性物品が挟まれた際に、吸収体が長手方向端部82RLを基点にして、吸収体の中央を隆起させるように変形する。それにより、フィット性が高まり、身体と吸収体との隙間を減少させることができる。
【0049】
更に、第2長手圧搾部82が複数の曲線部を有するため、吸収性物品の耐久性を向上させつつ、装着時に吸収体を身体にフィットさせることができる。具体的には、装着された状態において吸収性物品1に幅方向内側に向かって力が掛かると、第2長手圧搾部82を介して幅方向内側に力が伝播する。このとき、第2長手圧搾部82の幅方向内側端部は、曲線部82Rの長手方向端部82RLである。第2長手圧搾部82に力が掛かかると、5カ所の曲線部の長手方向端部に力が集中し、この曲線部の長手方向端部から分散して応力が伝播する。
【0050】
例えば、第2長手圧搾部82の幅方向内側端部が1か所であると、当該1か所に応力が集中して、集中箇所が局所的に変形してしまうことがある。例えば、排泄口当接領域の長手方向中央の1か所に応力が集中すると、排泄口当接領域の長手方向中央の幅が局所的に短くなり、排泄口に対向して吸収体を配置できず、体液の漏れが発生したり、吸収体30が硬化したりするおそれがある。
【0051】
しかし、5カ所の曲線部の長手方向端部に力がかかり、分散して応力が伝播するため、応力集中を抑制できる。よって、吸収性物品の耐久性を向上させて、吸収性物品1を長時間使用した場合であっても、吸収体の硬化を抑制したり、排泄口当接領域のみの幅が短くなることを抑制したりできる。
【0052】
また、幅方向内外側から幅方向内側に向かう力は、第2長手圧搾部82を介して第1長手圧搾部81に伝播し、第1長手圧搾部81を介して中央領域CAが幅方向内側に押圧される。このとき、中央領域CAは、圧搾部を備えないため、第1長手圧搾部81及び第2長手圧搾部82よりも剛性が低く変形し易い。よって、中央領域CAは、第1長手圧搾部及び第2長手圧搾部82を介して幅方向内側に押圧され、着用者の肌当接面側に隆起する。中央領域CAが着用者側に隆起することにより、吸収体が着用者に近づき、体液を迅速に吸収することができる。
【0053】
また、曲線部の長手方向端部は、複数配置されており、それぞれが長手方向にずれて位置するため、吸収性物品が前側や後側にずれて配置された場合であっても、いずれかの曲線部の長手方向の端部で応力を分散させつつ幅方向内側に吸収体を圧縮できる。
【0054】
また、曲線部82Rの長手方向端部は、第2長手圧搾部82の幅方向内側端部に位置しており、第1長手圧搾部81との距離が短い部分である。曲線部82Rの長手方向端部は、その前後部分と比較して第1長手圧搾部81と第2長手圧搾部82とが近接しており、比較的剛性が高くなる。このように、力が掛かり易い曲線部82Rの長手方向端部の剛性を高く構成することにより、第2長手圧搾部82の変形を抑制し、吸収性物品の耐久性を向上させることができる。
【0055】
また、幅方向に延びる前側圧搾部及び後側圧搾部が設けられているため、幅方向外側から幅方向内側に向かう力がかかった際に、幅方向内側に変形することを抑制し、排泄口当接領域の硬化を抑制できる。特に、第1長手圧搾部をつなぐ第1前側圧搾部83及び第1後側圧搾部85を備えることにより、幅方向外側から内側に向かう応力を環状の圧搾部に沿って分散でき、部分的な硬化を抑制できる。
【0056】
第2前側圧搾部84が形成された部分の吸収性物品の厚みは、第1前側圧搾部83が形成された部分の吸収性物品の厚みよりも薄い。また、吸収体の第2後側圧搾部86が形成された部分の吸収性物品の厚みは、第1後側圧搾部85が形成された部分の吸収性物品の厚みよりも薄い。また、吸収体の第2長手圧搾部82が形成された部分の収性物品の厚みは、第1長手圧搾部81が形成された部分の収性物品の厚みよりも薄い。
【0057】
具体的には、中央吸収部31における第1前側圧搾部83の吸収性物品の厚み及び中央吸収部31における第1後側圧搾部85の吸収性物品の厚みは、1.57mmであり、中央吸収部31における第2前側圧搾部84の吸収性物品の厚み及び中央吸収部31における第2後側圧搾部86の吸収性物品の厚みは、1.45mmである。また、第1長手圧搾部81の吸収性物品の厚みは、1.4mmであり、第2長手圧搾部82の吸収性物品の厚みは、0.6mmである。
【0058】
第1前側圧搾部83の厚みが第2前側圧搾部84の厚みよりも薄く、第1前側圧搾部83の密度が第2前側圧搾部84の密度よりも高い。また、第1後側圧搾部85の厚みが第2後側圧搾部86の厚みよりも薄く、第1後側圧搾部85の密度が第2後側圧搾部86の密度よりも高い。また、第1長手圧搾部81の厚みが第2長手圧搾部82の厚みよりも薄く、第1長手圧搾部81の密度が第2長手圧搾部82の密度よりも高い。
【0059】
吸収体の縁側に位置する圧搾部(第2前側圧搾部84、第2後側圧搾部86、第2長手圧搾部82)の密度が高く、体液の引き込み性が高いため、吸収体の縁側(前端部側、後端部側、側端部側)に体液が拡散した場合であっても、吸収体の縁から体液が漏れることを防止できる。
【0060】
更に、第2前側圧搾部84の幅は、第1前側圧搾部83の幅よりも長い。また、第2後側圧搾部86の幅は、第1後側圧搾部85の幅よりも長く、第2長手圧搾部82の幅は、第1長手圧搾部81の幅よりも長い。
【0061】
具体的には、第1前側圧搾部83の幅及び第1後側圧搾部85の幅は、3.0mmであり、第2前側圧搾部84の幅及び第2後側圧搾部86の幅は、2.0mmである。また、第1長手圧搾部81の幅は、3.0mmであり、第2長手圧搾部82の幅は、2.0mmである。
【0062】
なお、吸収体の縁側に位置する圧搾部(第2前側圧搾部84、第2後側圧搾部86、第2長手圧搾部82)の幅と、吸収体の内側に位置する圧搾部(第1前側圧搾部83、第1後側圧搾部85、第1長手圧搾部81)の幅との差は、例えば、0.5mm〜5.0mmとすることができる。例えば、吸収体の縁側に位置する圧搾部の幅と、吸収体の内側に位置する圧搾部の幅との差が0.5mm以下であると、縁側に位置する圧搾部よりも外側から力がかかった際に、同じ箇所で変形してしまい、縁側に位置する圧搾部と内側に位置する圧搾部とが同じように折れ曲がってしまうおそれがある。しかし、吸収体の縁側に位置する圧搾部の幅と吸収体の内側に位置する圧搾部の幅との差が0.5よりも大きいことにより、縁側に位置する圧搾部と内側に位置する圧搾部とが同じように折れ曲がってしまうことを抑制し、縁側に位置する圧搾部と内側に位置する圧搾部とがつながることを防止できる。
また、吸収体の縁側に位置する圧搾部の幅と、吸収体の内側に位置する圧搾部の幅との差が5.0mm以上であると、吸収体の縁側の曲げ剛性が高くなりすぎて、違和感に繋がるおそれがあるためである。
【0063】
このように、吸収体の縁側に位置する圧搾部の幅を比較的長く形成することによっても、吸収体の縁側に位置する圧搾部の体液の引き込み性が高めることができる。よって、吸収体の縁側(前端部側、後端部側、側端部側)に体液が拡散した場合であっても、体液が吸収体の縁から漏れることを防止できる。
【0064】
また、吸収体の縁側に位置する圧搾部(第2前側圧搾部84、第2後側圧搾部86、第2長手圧搾部82)の厚みを、吸収体の内側に位置する圧搾部(第1前側圧搾部83、第1後側圧搾部85、第1長手圧搾部81)の厚みよりも薄くしたり、吸収体の縁側に位置する圧搾部の幅を、吸収体の内側に位置する圧搾部の幅よりも長くしたりして、吸収体の縁側に位置する圧搾部の体液の引き込み性を高めると、吸収体の縁側に位置する圧搾部が形成された部分の吸収性物品の曲げ剛性が、吸収体の内側に位置する圧搾部が形成された部分の吸収性物品の曲げ剛性よりも高くなる。たとえば、吸収体の内側に位置する圧搾部の曲げ剛性が、吸収体の縁側に位置する圧搾部よりも曲げ剛性が高いと、着用者の排泄口に近い部分が硬くなり、装着感が悪化するおそれがある。しかし、着用者の排泄口から比較的離れた縁側の圧搾部の曲げ剛性を高くすることにより、着用者の排泄口に近い部分が硬くなることによる装着感の悪化を抑制しつつ、吸収性物品全体の剛性を高めることができる。
【0065】
また、前側圧搾部が形成された部分の吸収体の曲げ剛性及び後側圧搾部が形成された部分の吸収体の曲げ剛性は、長手圧搾部が形成された部分の吸収性物品の曲げ剛性よりも高いことが望ましい。このような構成によれば、脚等によって吸収性物品の幅方向外側から幅方向内側に向かって力がかかった場合に、幅方向において吸収体の形状を維持しつつ、長手方向を変形させることができる。よって、吸収体の側部を体の曲線に沿って変形させて、体の形状に合わせて吸収体をフィットさせることができる。
【0066】
なお、圧搾部は、高圧搾部と低圧搾部とを含んで形成されていてもよいし、全体が同じ力で圧縮されて形成されていてもよい。また、圧搾部は、表面シート側から裏面シート側に向かって圧縮されていてもよいし、裏面シート側から表面シート側に向かって圧縮されていてもよいし、表面シート側から裏面シート側に向かって圧縮された圧搾部と、裏面シート側から表面シート側に向かって圧縮された圧搾部と、が形成されていてもよい。
【0067】
なお、吸収性物品等の曲げ剛性は、例えば、JIS-1096に規定されているガーレー法を用いて測定することができる。また、吸収体の目付及び密度は、例えば、以下の測定方法によって測定することができる。包装体によって包装された吸収性物品においては包装体を開封し、折り畳まれた吸収性物品を展開して、目付及び密度を測定する部分の厚み及び面積を測定する。次いで、目付及び密度を測定する部分を吸収性物品から切り出し、切り出した部分の重量を測定する。次いで、切り出した部分から表面シート及び裏面シート等、吸収体以外の部分を取り除き、吸収体の重量を測定する。吸収体の重量と、目付及び密度を測定する部分の面積とに基づいて目付を算出する。目付及び厚みに基づいて、密度を算出する。
【0068】
なお、厚みは、以下のような測定方法によって測定することができる。具体的には、サンプルの吸収性物品を、液体窒素に含浸させて凍結させた後、圧搾部が延在する方向を横切る方向に沿って剃刀でカットし、常温に戻した後、電子顕微鏡(例えば、キーエンス社VE7800)を用いて、50倍の倍率で吸収性物品の厚みをカットした方向全体において測定する。測定した値のうち、最小値(つまり、最も厚みが少ない部分)を厚みの値として用いた。なお、サンプルの吸収性物品を凍結させる理由は、カット時の圧縮により厚みが変動するのを防ぐためである。
【0069】
(3)吸収性物品の製造方法及び製造装置
次に、実施形態に係る吸収性物品1の製造方法及び製造装置の一部について説明する。なお、説明しない方法については、既存の製造方法及び製造装置を用いることができる。
図4及び
図5は、後述する圧搾部形成工程に用いられるエンボスロールを示している。
【0070】
吸収性物品の製造方法は、第1ステップとして、表面シート生成工程を行う。次いで、第2ステップとして、吸収体成型工程を行う。具体的には、吸収体成型装置としての成型ドラムによって、吸収体を構成する吸収材料を積層して吸収体30を成型する。このとき、吸収体成型装置は、中央吸収部31の目付が外側吸収部32の目付よりも高くなるように吸収材料を積層する。
【0071】
第3ステップにおいて、接合工程を行う。具体的には、第2ステップにおいて成型した吸収体と、第1ステップにおいて接合した表面シートとを接合する接合工程を行う。
【0072】
第4ステップにおいて、圧搾工程を行う。具体的には、吸収体30と表面シート10とを厚み方向に圧縮し、圧搾部を形成する。
【0073】
圧搾部の加工方法は、
図4及び
図5に示す一対のエンボスロールによって施す。一対のエンボスロールは、第1エンボスロール101と、第2エンボスロール102と、を有する。第1エンボスロールの外周面には、径方向外側に突出した突出部103が形成されている。突出部103は、底部104と、底部104よりも径方向外側に突出した複数の頂部105と、を有する。底部104と当接した部分は、比較的弱く圧縮された低圧搾部となり、頂部と当接した部分は、比較的強く圧縮された高圧搾部となる。なお、
図1においては、高圧搾部と低圧搾部とを区別せずに図示しているが、圧搾部には、高圧搾部と低圧搾部とが設けられている。また、第2エンボスロールの外周面は、平滑面である。
【0074】
このように構成された一対のエンボスロールの間に吸収体を通過させて、当該エンボスロールによって上下方向に押圧して圧搾部を形成する。上側の第1エンボスロールの外周面の突出部と、第2エンボスロールの外周面とによって吸収体を厚み方向に押圧して圧搾部を形成する。
【0075】
このとき、中央吸収部31を圧搾する一対のエンボスロール間の距離Dは、外側吸収部32を圧搾する一対のエンボスロール間の距離よりも長くなるように設定されている。一対のエンボスロール間の距離が短ければ短い程、圧搾時の圧力が高くなる。例えば、圧搾時の圧力が高くなりすぎると、表面シートが破れてしまうことがある。特に、中央吸収部31の厚みは、外側吸収部32の厚みよりも厚く、一対のエンボスロール間の距離が一定であると、中央吸収部31に対する圧力が高くなりすぎて、表面シートが破れる等の不具合が発生することがある。しかし、中央吸収部31を圧搾する一対のエンボスロール間の距離が外側吸収部32を圧搾する一対のエンボスロール間の距離よりも長くなるように設定されているため、表面シートの破れ等の不具合を抑制し、中央吸収部31においても均等な圧搾溝を形成できる。
【0076】
本実施の形態の中央吸収部31を圧搾する一対のエンボスロール間の距離は、0.1mmであり、外側吸収部32を圧搾する一対のエンボスロール間の距離は、0mmである。なおエンボスロール間の距離は、これに限定されるものではなく、適宜設定できる。例えば、中央吸収部31を圧搾する一対のエンボスロール間の距離は、0.02mm〜0.2mmとすることができる。一対のエンボスロール間の距離が0.02mm以下であると、頂部による圧搾部と底部による圧搾部との差異が少なくなる。一方、一対のエンボスロール間の距離が0.3mm以上であると、圧搾時の圧力を十分に付与できず、一般的なパルプ目付(300〜1000g/m
2)において十分なエンボスを形成することができないことがある。
【0077】
なお、このような吸収性物品の製造装置によれば、中央吸収部31が吸収体の前端部から後端部まで連続した吸収体のみならず、長手方向中央部のみに中央吸収部31が配置された構成においても、圧搾部を安定して形成することができる。
【0078】
また、第4ステップにおいて、一対のエンボスロールによって圧搾部を形成する前に、第2前側圧搾部及び第2後側圧搾部を形成する部分の吸収体を厚み方向に押圧することが望ましい。第1前側圧搾部及び第1後側圧搾部を形成する部分を押圧せずに、第2前側圧搾部及び第2後側圧搾部を形成する部分を押圧することにより、第2前側圧搾部及び第2後側圧搾部を形成する部分の厚みを薄くすることができる。この状態で、一対のエンボスロールによって圧搾部を形成することにより、第1前側圧搾部よりも第2前側圧搾部の厚みを薄く形成でき、かつ第1後側圧搾部よりも第2後側圧搾部の厚みを薄く形成できる。
【0079】
第5ステップにおいて、裏面シート接合工程を行う。具体的には、圧搾部を形成した吸収体及び表面シート等と、裏面シートとを接合する。裏面シートを接合した後、接着剤を塗布する工程を備える。上記の工程により、本実施の形態に係る吸収性物品を製造することができる。
【0080】
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0081】
例えば、吸収性物品1は、幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるウイング部43,44を備えていてもよいし、吸収体30の幅方向外側及び表面シートの幅方向外側を覆うサイドシートを備えていてもよい。
【0082】
また、長手圧搾部は、第1長手圧搾部81又は第2長手圧搾部82のみで構成されていてもよいし、第2長手圧搾部82よりも幅方向外側に位置する第3長手圧搾部を備えていてもよい。また、本発明に係る吸収性物品は、長手圧搾部を備えていなくてもよい。第2長手圧搾部82は、曲線部のみならず、直線状に配置された直線部を有していてもよい。
【0083】
前側圧搾部は、第1前側圧搾部83又は第2前側圧搾部84のみで構成されていてもよいし、第2前側圧搾部84よりも長手方向外側に位置する第3前側圧搾部を備えていてもよい。
【0084】
後側圧搾部は、第1後側圧搾部85又は第2後側圧搾部86のみで構成されていてもよいし、第2後側圧搾部86よりも長手方向外側に位置する第3後側圧搾部を備えていてもよい。
【0085】
また、吸収性物品は、生理用ナプキンに限られず、吸収パッド、パンティーライナーであってもよい。また、例えば、吸収性物品は、吸収体の幅方向外側端部に、ギャザーが形成されていてもよい。
【実施例】
【0086】
次いで、実施例に係る吸収性物品と比較例に係る吸収性物品とを用いて、吸収性物品の曲げ剛性を測定し、吸収性物品の柔軟性(変形容易性)について評価した。
【0087】
実施例に係る吸収性物品は、上述の実施形態に係る吸収性物品である。比較例に係る吸収性物品は、吸収体の目付が350g/m
2であり、吸収体全体が略均一の目付である。実施例に係る吸収性物品は、中央吸収部31の吸収材料の目付は、200g/m
2であり、外側吸収部32の吸収材料の目付は、550g/m
2である。
【0088】
(曲げ剛性の測定方法)
曲げ剛性 は、ガーレー法(JIS−1096)によって測定される。曲げ剛性の測定対象部分のサンプルは、吸収性物品毎に3つのサンプルを採取した。サンプルは、短手長さ0.5inch×長手長さ1.5inchとした。
【0089】
3つのサンプルは、第1前側圧搾部83が形成された領域を含むサンプルAと、第1長手圧搾部81が形成された領域を含むサンプルBと、第1長手圧搾部81及び第2長手圧搾部82が形成された領域を含むサンプルCと、からなる。サンプルの長手方向が圧搾部の延びる方向に沿うように採取した。
【0090】
(測定結果)
測定結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
実施例のサンプルAの曲げ剛性と、比較例のサンプルAの曲げ剛性とを比較すると、実施例の外側吸収部32の目付が比較例の目付よりも低いにも拘わらず、実施例の曲げ剛性が高いことがわかる。外側吸収部32と中央吸収部31とに跨がって第1前側圧搾部83を設けることにより、曲げ剛性が効果的に高くなることがわかった。
【0093】
また、実施例のサンプルBの曲げ剛性と、比較例のサンプルBの曲げ剛性とを比較し、かつ実施例のサンプルCの曲げ剛性と、比較例のサンプルCの曲げ剛性とを比較すると、比較例に係る吸収性物品は、着用者の脚に当たり易い吸収体の幅方向外側端部の剛性が高く、柔軟性が低下することがわかった。
【0094】
これに対して、実施例に係る吸収性物品は、外側吸収部32と中央吸収部31とに跨がって形成された圧搾部によって曲げ剛性を確保しつつ、着用者の身体に当たりやすい吸収体の幅方向外側端部の曲げ剛性を低くし、柔軟性を確保して、装着感を向上できることがわかった。