(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リン酸基を含む共重合体の固形分10質量%の水溶液の粘度が、25℃で、2.5mPa・s〜35.0mPa・sである請求項1から2のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに刺激を印加し、前記インクジェット記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに刺激を印加し、前記インクジェット記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(インクジェット記録用インク)
本発明のインクジェット記録用インクは、水と、水溶性溶剤と、顔料と、リン酸基を含む共重合体とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0013】
前記リン酸基を含む共重合体としては、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)及び下記一般式(4)のいずれかで表される構造単位とを少なくとも含む。
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。M
+は、アルカリ金属イオン、有機アミンイオン及び水素イオンのいずれかを表し、前記共重合体におけるM
+の半数以上がアルカリ金属イオン及び有機アミンイオンのいずれかであり、残りは水素イオンである。
【化6】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化7】
ただし、前記一般式(3)中、R
3は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化8】
ただし、前記一般式(4)中、R
4は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【0014】
前記一般式(1)で表される構造単位に含まれるリン酸基は、親水性を示すが、多価金属イオン(特にカルシウムイオン)と結合することで疎水性を示す特徴がある。そのため、リン酸基を含む共重合体を顔料分散剤として用いたインクジェット記録用インクは、水溶性の多価金属塩を含む記録媒体に画像を形成した場合には、記録媒体からインクへ溶出する多価金属イオンにより、前記一般式(1)で表される構造単位に含まれるリン酸基が疎水化し、顔料を巻き込んで凝集することで、紙の表面上に顔料が留まり、画像濃度が向上する。
しかし、PPC普通紙の場合、含まれる多価金属塩は一般的に難水溶性の炭酸カルシウムであり、インク中へ溶出するカルシウムイオン量は少ない。そのため、前記一般式(1)で表される構造単位を含むだけでは、普通紙において充分な画像濃度を得ることができない。
前記課題を解決する方法の一つとして、リン酸基を含む共重合体における前記一般式(1)で表される構造単位の比率を高くすることが考えられる。しかし、前記一般式(1)で表される構造単位の比率を高くすると、リン酸基同士の相互作用が強くなるためかリン酸基を含む共重合体のゲル化が起こり、インクの保存安定性の低下を引き起こすという問題がある。したがって、従来のリン酸基を含む共重合体の構成比率は20質量%未満にせざるを得なかった。
【0015】
本発明においては、前記一般式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位と、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位とを組み合わせることで、顔料への親和性が向上し顔料を巻き込んだ凝集効果が向上し、更に水溶性溶剤の含有量が多いインクでも保存安定性が向上する。また、共重合体のゲル化が発生しにくくなり、前記一般式(1)で表される構造単位の比率を高くすることができ、更に多価金属イオン(特にカルシウムイオン)との反応性を向上できる。顔料との親和性は前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位が特に良好であり、前記一般式(2)で表される構造単位と併用することで、顔料への親和性の向上、リン酸基を含む共重合体のゲル化抑制の効果が得られる。
本発明のインクジェット記録用インクは、前記一般式(1)で表される構造単位及び前記一般式(2)で表される構造単位に、更に、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位を含むリン酸基を含む共重合体を用いることにより、水溶性多価金属塩が少ない一般的な普通紙においても高い画像濃度を得ることができ、インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させることができる。
【0016】
<リン酸基を含む共重合体>
前記リン酸基を含む共重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位、前記一般式(2)で表される構造単位、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の構造単位を含む。
【0017】
前記リン酸基を含む共重合体は、インクジェット記録用インクが普通紙等の記録媒体上に着弾した際に普通紙中に含まれる多価金属イオン(特にカルシウムイオン)と反応して凝集する特性を有するものである。この機能により、インクが紙中に浸透するのが抑制されて高い画像濃度を得ることができる。
本発明においては、前記リン酸基を含む共重合体を顔料分散剤又は添加剤として使用することができるが、特に顔料分散剤として用いることにより、更に高画像濃度及び保存安定性が良好なインクを提供することができる。
【0018】
前記一般式(1)中、R
1は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
前記一般式(1)中のM
+のアルカリ金属イオンにおけるアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、などが挙げられる。
前記一般式(1)中のM
+の有機アミンイオンにおける有機アミンとしては、例えば、モノ、ジ或いはトリメチルアミン、モノ、ジ或いはトリエチルアミン等のアルキルアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール(AEPD)等のアルコールアミン類;コリン、モルホリン、N−メチルモノホルリン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等の環状アミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の有機アンモニウム、などが挙げられる。
これらの中でも、インクの保存安定性、吐出安定性の点から、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミンが好ましい。
前記M
+としては、半数以上がアルカリ金属イオン又は有機アミンイオンであり、残りは水素イオン(プロトン)であることが好ましく(リン酸基を含む共重合体の中和率は50%以上が好ましく)、画像濃度、及び保存安定性、吐出安定性の点から、すべて(中和率が100%)がアルカリ金属イオン又は有機アミンイオンであることが特に好ましい。
前記中和率が、50%未満であると、顔料の分散が不安定となり、顔料分散体の初期粘度が高くなったり、保存安定性が低下したりすることがある。
前記中和率は、リン酸基を含む共重合体の合成時の前記一般式(1)で表される構造単位(下記一般式(5)で表されるモノマー)の仕込み量に対する中和剤の添加量の比率から求めることができる。
【0019】
前記リン酸基を含む共重合体は、前記一般式(1)で表される構造単位、前記一般式(2)で表される構造単位、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位以外にも、その他のモノマー由来の構造単位を含むことができる。
前記その他のモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合性の疎水性モノマー、重合性の親水性モノマー、などが挙げられる。
【0020】
前記重合性の疎水性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−クロロメチルスチレン等の芳香族環を有する不飽和エチレンモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、(メタ)アクリル酸ラウリル(C12)、(メタ)アクリル酸トリデシル(C13)、(メタ)アクリル酸テトラデシル(C14)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル(C15)、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル(C16)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル(C17)、(メタ)アクリル酸ノナデシル(C19)、(メタ)アクリル酸エイコシル(C20)、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル(C21)、(メタ)アクリル酸ドコシル(C22)等の(メタ)アクリル酸アルキル;1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセ等のアルキル基を持つ不飽和エチレンモノマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記重合性の親水性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸、4−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和エチレンモノマー;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド等の非イオン性不飽和エチレンモノマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記リン酸基を含む共重合体における前記一般式(1)で表される構成単位の含有率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記共重合体の全質量に対して、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜50質量%がより好ましい。前記含有率が、10質量%未満であると、画像濃度が低下することがあり、60質量%を超えると、顔料分散体及びインクの保存安定性が低下することがある。
【0023】
前記リン酸基を含む共重合体における前記一般式(2)で表される構成単位の含有率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記共重合体の全質量に対して、1質量%〜40質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0024】
前記リン酸基を含む共重合体は、下記一般式(5)で表されるモノマーと、下記一般式(6)で表されるモノマーと、下記一般式(7)及び下記一般式(8)のいずれかで表されるモノマーと、必要に応じてその他のモノマーとを重合させて合成することができる。次いで、得られた共重合体は、アルカリ金属塩基及び有機アミン塩基のいずれかで中和処理される。
【化9】
ただし、前記一般式(5)中、R
5は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化10】
ただし、前記一般式(6)中、R
6は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化11】
ただし、前記一般式(7)中、R
7は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化12】
ただし、前記一般式(8)中、R
8は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【0025】
前記一般式(5)で表されるモノマーとしては、例えば、2−メタクイロキシエチルアシッドホスホエート、2−アクロイロキシエチルアシッドホスホエートが挙げられる。
前記2−メタクイロキシエチルアシッドホスホエートとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、共栄社化学工業株式会社から「ライトエステルP−1M」、ユニケミカル株式会社から「ホスマーM」の製品名で市販されており入手可能である。
前記2−アクロイロキシエチルアシッドホスホエートとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、共栄社化学工業株式会社から「ライトアクリレートP−1A」の製品名で市販されており入手可能である。
【0026】
前記一般式(6)で表されるモノマーとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。
前記2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとしては、適宜合成したものを使用することができる。
前記2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとしては、適宜合成したものを使用することができる。
【0027】
前記一般式(7)で表されるモノマーとしては、例えば、ステアリルメタアクリレート、ステアリルアクリレートが挙げられる。
【0028】
前記一般式(8)で表されるモノマーとしては、例えば、ベンジルメタアクリレート、ベンジルアクリレートが挙げられる。
【0029】
本発明で用いられるリン酸基を含む共重合体の重合方法としては、特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等、公知の種々の合成方法を利用することができるが、重合操作及び分子量の調整が容易なことから、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましい。
前記ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものなら使用可能で、具体的には、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、シアノ系のアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,2’−イソバレロニトリル)、非シアノ系のジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
これらの中でも、分子量の制御がしやすく、分解温度の低い有機過酸化物やアゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が特に好ましい。
前記重合開始剤の使用量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合性単量体の総質量に対して、1質量%〜10質量%が好ましい。
また、リン酸基を含む共重合体の分子量を調整するために、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール、チオフェノール、ドデシルメルカプタン、1−ドデカンチオール、チオグリセロール等の連鎖移動剤を重合系に適量添加してもよい。
重合温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜150℃が好ましい。重合時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3時間〜48時間が好ましい。
【0030】
前記リン酸基を含む共重合体は、前記一般式(5)で表されるモノマーと、前記一般式(6)で表されるモノマーと、前記一般式(7)及び前記一般式(8)のいずれかで表されるモノマーとを少なくとも出発物質として合成される。なお、前記リン酸基を含む共重合体にその他のモノマー成分を追加してもよい。
前記リン酸基を含む共重合体は、例えば、四口フラスコに温度計、攪拌機、窒素導入管を設置し、溶媒と、前記一般式(5)で表されるモノマーと、前記一般式(6)で表されるモノマーと、前記一般式(7)及び前記一般式(8)のいずれかで表されるモノマーとを、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤を加え、常温〜150℃にて重合できる。
【0031】
前記リン酸基を含む共重合体におけるリン酸基は、その一部もしくは全てが塩基で中和処理される。なお、前記中和処理は、インクの製造において顔料と共重合体とを混合した状態で行うことも可能である。
前記中和処理に用いる塩基としては、例えば、アルカリ金属、有機アミン、などが挙げられ、これらの具体例は、上述したとおりである。
【0032】
前記リン酸基を含む共重合体の10質量%水溶液の粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃で、2.5mPa・s〜35.0mPa・sが好ましく、4.0mPa・s〜30.0mPa・sがより好ましい。前記粘度が、2.5mPa・s未満であると、普通紙等の記録媒体から溶出してくる金属イオンと顔料分散剤の反応性が低下し、画像濃度が若干低下することがあり、35.0mPa・sを超えると、顔料の分散安定性が低下し、顔料分散体の保存安定性が若干低下することがある。
前記粘度は、例えば、回転粘度計(TV−22形粘度計、コーンプレートタイプ、東機産業株式会社製)などにより測定することができる。
【0033】
前記リン酸基を含む共重合体は、特に制限はなく、各種分野に幅広く用いることができるが、インクジェット記録用インクにおける、キレート剤、顔料濃度向上剤、顔料用結着樹脂、粘度調整剤等の添加剤、顔料分散剤、などとして好適に用いることができる。
前記リン酸基を含む共重合体を添加剤として使用する場合の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。前記含有量が0.5質量%以上の添加から画像濃度向上の効果が明確に表れ、10質量%以下にすることで、インクをヘッドから吐出する際に適した粘度の範囲に抑えることが可能となる。
【0034】
前記リン酸基を含む共重合体を顔料分散剤として使用すると、普通紙における画像濃度を向上させることができる。更に、水溶性溶剤の含有量が20質量%を超えるリッチなインクでの保存安定性に一層の向上が見られる。
前記リン酸基を含む共重合体を顔料分散剤として使用する場合の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記顔料100質量部に対して、1質量部〜100質量部が好ましく、5質量部〜80質量部がより好ましい。この範囲内で最も適した顔料の粒径が得られ画像濃度と分散性と保存安定性が良好な範囲となる。また、上記効果を損なわない範囲で、後に記載する分散剤を共重合体と併用してもよい。
【0035】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水、などが挙げられる。
前記水の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%〜60質量%が好ましい。
【0036】
<水溶性溶剤>
前記水溶性溶剤は、保湿効果の付与による吐出安定性の向上を図る機能などを有している。
前記水溶性溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネイト、炭酸エチレンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水分蒸発による吐出不良を防止する点から、1,3−ブタンジオール、2−ピロリドン、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0037】
前記水溶性溶剤の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜50質量%が好ましい。前記含有量が、10質量%未満であると、インクが水分蒸発し易くなり、インクジェット記録装置内のインク供給系でインクの水分蒸発により増粘インク詰まり等が生じることがある。前記含有量が、50質量%を超えると、インクジェット記録装置内では増粘インク詰まりは発生しにくくなるが、インクを所望の粘度にするために顔料や樹脂等の固形分の減量が必要なことがあり、インク記録物の画像濃度が低下することがある。
【0038】
<顔料>
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機顔料、及び有機顔料のいずれであってもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ローダミンBレーキ顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
黒色用のものとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料、などが挙げられる。
【0039】
前記カーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が15nm〜40nm、BET法による比表面積が、50m
2/g〜300m
2/g、DBP吸油量が40mL/100g〜150mL/100g、揮発分が0.5%〜10%、pHが2〜9であるものが好ましい。
前記カーボンブラックとして市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF−88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(いずれも、三菱化学株式会社製);Raven 700、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255(いずれも、コロンビアンケミカルズ社製);Regal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(いずれも、キャボット社製);カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4、NIPEX160(いずれも、エボニックデグッサ社製)、などが挙げられる。
【0040】
前記カラー用のものでイエローインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、などが挙げられる。
【0041】
前記カラー用のものでマゼンタインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド48(Ca)、C.I.ピグメントレッド48(Mn)、C.I.ピグメントレッド57(Ca)、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット19、などが挙げられる。
【0042】
前記カラー用のものでシアンインクに使用できる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー3、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:34、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63、C.I.ピグメントブルー66;C.I.バットブルー4、C.I.バットブルー60、などが挙げられる。
また、本発明で使用する各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
なお、イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー74、マゼンタ顔料として、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレッド19、シアン顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3を用いることにより、色調、耐光性が優れ、バランスの取れたインクを得ることができる。
更に、本発明で使用される顔料は、分散剤等の界面活性剤や樹脂で被覆したグラフト処理やカプセル化処理した物を使用することも可能であるが、本発明の化合物を分散剤に使用した方がより好ましい。
なお、効果を損なわない範囲で上述した顔料を併用してもよい。
前記顔料の体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150nm以下が好ましい。
前記顔料の体積平均粒径は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定することができる。
前記顔料の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜20質量%が好ましい。
【0043】
前記顔料としては、顔料分散体を用いることが好ましい。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、及び更に必要に応じてその他の成分を混合した後、分散機で分散し、粒径を調整して得られる。
前記顔料分散剤としては、本発明の前記リン酸基を含む共重合体を用いることが好ましいが、その他の使用可能な分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の種々の界面活性剤、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物、高分子型の分散剤、などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチル−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系界面活性剤、などが挙げられる。
【0045】
前記顔料分散体を作製する際の顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜30質量%がより好ましい。
得られた顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置等で粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0046】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸透剤、pH調整剤、水分散性樹脂、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0047】
−浸透剤−
前記浸透剤としては、炭素数8〜11のポリオール化合物及び炭素数8〜11のグリコールエーテル化合物のいずれかを含有することが好ましい。
前記浸透剤は、前記湿潤剤とは別なものであり、前記湿潤剤よりも湿潤性が比較的少ないので、「非湿潤剤性である媒質」ということができる。これら非湿潤剤性である浸透剤は、25℃の水中において0.2質量%〜5.0質量%の間の溶解度を有するものが好ましい。
これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[溶解度:4.2質量%(25℃)]、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール[溶解度:2.0質量%(25℃)]が特に好ましい。
その他のポリオール化合物として、脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオールなどが挙げられる。
その他の併用できる浸透剤としては、インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、エタノール等の低級アルコール類、などが挙げられる。
前記浸透剤の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜4質量%が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4質量%を超えると、顔料の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、また記録用メディア(記録媒体)への浸透性が必要以上に高くなったり、画像濃度の低下や裏抜けが発生したりすることがある。
【0048】
−pH調整剤−
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェット記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを8.5〜11、好ましくはpHを9〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。前記pHが、8.5未満及び11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。8.5未満の時には、インク保管中にインクpHが低下して高分子微粒子が粒子径の増大により凝集することがある。
前記pHは、例えば、pHメータ(HM−30R、TOA−DKK社製)により測定することができる。
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、などが挙げられる。前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などが挙げられる。前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、などが挙げられる。前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、などが挙げられる。
【0049】
−水分散性樹脂−
前記水分散性樹脂としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えて、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用である。
前記水分散性樹脂の具体例としては、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂、などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリウレタン樹脂微粒子、アクリル−シリコーン樹脂微粒子及びフッ素系樹脂微粒子が好ましい。
前記水分散性樹脂の体積平均粒径は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インクが過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の体積平均粒径は50nm以上であることが好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出安定性を悪化させる。そこで、インク吐出安定性を阻害させないために体積平均粒径は200nm以下がより好ましい。
ここで、前記水分散性樹脂の体積平均粒径は、23℃、55%RHの環境下において、日機装株式会社製マイクロトラックUPAで動的光散乱法により測定したものである。
また、前記水分散性樹脂は、前記水分散顔料を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して顔料の定着性を向上させることが好ましい。そのため、前記水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。
また、前記水分散性樹脂のガラス転移温度が−40℃以下になると樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度が−30℃以上の水分散性樹脂であることが好ましい。
前記水分散性樹脂の前記インクジェット記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜15質量%が好ましく、2質量%〜7質量%がより好ましい。
【0050】
−防腐防黴剤−
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、などが挙げられる。
【0051】
−キレート試薬−
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム、などが挙げられる。
【0052】
−防錆剤−
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
【0053】
−酸化防止剤−
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0054】
−紫外線吸収剤−
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0055】
<インクジェット記録用インクの製造方法>
前記インクジェット記録用インクは、水、水溶性溶剤、顔料、及びリン酸基を含む共重合体、更に必要に応じて他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、必要に応じて攪拌混合して製造することができる。
前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0056】
本発明のインクジェット記録用インクの25℃での粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mPa・s〜20mPa・sが好ましい。前記粘度を3mPa・s以上とすることによって、印字濃度や文字品位を向上させる効果が得られる。一方、前記粘度を20mPa・s以下に抑えることで、吐出性を確保することができる。
前記粘度は、例えば、粘度計(RL−550、東機産業株式会社製)を使用して、25℃で測定することができる。
前記インクジェット記録用インクの表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃で、40mN/m以下が好ましい。前記表面張力が、40mN/mを超えると、記録用メディア上のインクのレベリングが起こり難く、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
【0057】
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記インクジェット記録用インクを容器中に収容するものであり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
前記容器としては、その形状、構造、大きさ、材質に特に制限無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルムなどで形成されたインク袋を少なくとも有するものなどが好適に挙げられる。
【0058】
本発明のインクカートリッジの一態様について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本発明のインクカートリッジの一例を説明するための概略平面図である。
図2は
図1のインクカートリッジのケース(外装)を含めた概略平面図である。
インクカートリッジ200は、
図1に示すように、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、
図2に示すように、通常、プラスチックス製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0059】
(インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段等を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、刺激発生工程、制御工程等を含む。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0060】
<インク飛翔工程及びインク飛翔手段>
前記インク飛翔工程は、本発明の前記インクジェット記録用インクに、刺激を印加し、前記インクジェット記録用インクを飛翔させて画像を形成する工程である。
前記インク飛翔手段は、本発明の前記インクジェット記録用インクに、刺激を印加し、前記インクジェット記録用インクを飛翔させて画像を形成する手段である。前記インク飛翔手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インク吐出用の各種のノズル、などが挙げられる。
【0061】
前記刺激は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられる。具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ、などが挙げられる。
【0062】
前記インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等に応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器、などが挙げられる。
【0063】
ここで、本発明のインクジェット記録装置により本発明のインクジェット記録方法を実施する一の態様について、図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明のシリアル型インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
この
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、装置本体101の前面112の一端部側には、前面112から前方側に突き出し、上カバー111よりも低くなったインクカートリッジ装填部104とを有する。インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ200の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
【0064】
装置本体101内には、
図4及び
図5(
図3に示すインクジェット記録装置における一部拡大断面図)に示すように、図示を省略している左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータによって
図5に示すように矢示方向に移動走査する。
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどインクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、図示しないインク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部104に装填された本発明のインクカートリッジ200から前記インクが供給されて補充される。
【0065】
一方、給紙トレイ103の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ143)、及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられる。
【0066】
また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。
なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
【0067】
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱自在に装着されている。
両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト157が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次行の記録を行う。
記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。そして、サブタンク135内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ200から所要量のインクがサブタンク135に補給される。
【0068】
このインクジェット記録装置においては、本発明のインクカートリッジ201中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ200における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ200は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したりする場合、あるいは装置本体101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ200の交換を容易に行うことができる。
【0069】
なお、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【0070】
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【0071】
(インク記録物)
本発明のインク記録物は、本発明のインクジェット記録用インクにより記録された画像を記録媒体(記録メディア)上に有してなる。
前記記録メディアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、普通紙、印刷用塗工紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、普通紙及び印刷用塗工紙の少なくともいずれかが好ましい。前記普通紙は安価である点で有利である。また、前記印刷用塗工紙は光沢紙に比べ比較的安価でしかも平滑な光沢ある画像を与える点で有利である。しかし、乾燥性が悪く一般にインクジェット用には使用困難であったが、本発明のインクジェット記録用インクにより乾燥性が向上し使用可能となった。
本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
また、以下の略号は次の化合物を意味する。
PMA:2−メタクイロキシエチルアシッドホスホエート(「ホスマーM」、ユニケミカル株式会社製)
PA:2−アクロイロキシエチルアシッドホスホエート(「ライトアクリレートP−1A」、共栄社化学工業株式会社製)
MPC:2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(日油株式会社製)
APC:2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(日油株式会社製)
SMA:ステアリルメタアクリレート(「ライトエステルS」、共栄社化学工業株式会社製)
SA:ステアリルアクリレート(「ライトアクリレートS−A」、共栄社化学工業株式会社製)
BzMA:ベンジルメタアクリレート(「ライトエステルBZ」、共栄社化学工業株式会社製)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0074】
共重合体の粘度は、以下の方法に従って測定した。また、また、共重合体の中和率は、以下のようにして算出した。
【0075】
<共重合体の粘度の測定>
合成された共重合体の10質量%水溶液の粘度の測定は、回転粘度計(TV−22形粘度計、コーンプレートタイプ、東機産業株式会社製)を用いて行った。具体的な操作を以下に示す。共重合体を1.1mL採取し粘度計のサンプルカップに入れた。25℃で、サンプルカップを粘度計本体に取り付けて1分間静置した後、粘度計のローターを回転し、1分間後の値を読み取った。
【0076】
<共重合体の中和率>
共重合体の中和率は、共重合体の合成時のリン酸基を含むモノマーの仕込み量に対する中和剤の添加量の比率から求めた。
【0077】
(合成例1)
−共重合体1の合成−
PMA;12.00g、MPC;4.00g、SMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体1の水溶液とした。得られた共重合体1の水溶液の粘度は、25℃で、13.7mPa・sであった。
【0078】
(合成例2)
−共重合体2の合成−
PMA;12.00g、MPC;4.00g、BzMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体2の水溶液とした。得られた共重合体2の水溶液の粘度は、25℃で、14.3mPa・sであった。
【0079】
(合成例3)
−共重合体3の合成−
PMA;12.00g、MPC;4.00g、SMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が50%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体3の水溶液とした。得られた共重合体3の水溶液の粘度は、25℃で、10.1mPa・sであった。
【0080】
(合成例4)
−共重合体4の合成−
PMA;12.00g、APC;4.00g、SA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体4の水溶液とした。得られた共重合体4の水溶液の粘度は、25℃で、14.5mPa・sであった。
【0081】
(合成例5)
−共重合体5の合成−
PMA;12.00g、MPC;4.00g、BzMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものをモノエタノールアミン(EA)で中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体5の水溶液とした。得られた共重合体5の水溶液の粘度は、25℃で、13.5mPa・sであった。
【0082】
(合成例6)
−共重合体6の合成−
PA;12.00g、MPC;4.00g、SMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体6の水溶液とした。得られた共重合体6の水溶液の粘度は、25℃で、12.8mPa・sであった。
【0083】
(合成例7)
−共重合体7の合成−
PMA;2.67g、MPC;2.67g、SMA;8.00g、及びエタノール253.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体7の水溶液とした。得られた共重合体7の水溶液の粘度は、25℃で、4.0mPa・sであった。
【0084】
(合成例8)
−共重合体8の合成−
PMA;5.33g、MPC;13.33g、BzMA;34.66g、及びエタノール213.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体8の水溶液とした。得られた共重合体8の水溶液の粘度は、25℃で、27.2mPa・sであった。
【0085】
(合成例9)
−共重合体9の合成−
PMA;8.00g、MPC;2.00g、BzMA;3.33g、及びエタノール253.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体9の水溶液とした。得られた共重合体9の水溶液の粘度は、25℃で、6.2mPa・sであった。
【0086】
(合成例10)
−共重合体10の合成−
PMA;32.00g、MPC;5.33g、SMA;16.00g、及びエタノール213.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体10の水溶液とした。得られた共重合体10の水溶液の粘度は、25℃で、30.0mPa・sであった。
【0087】
(合成例11)
−共重合体11の合成−
PMA;2.13g、MPC;2.67g、BzMA;5.87g、及びエタノール256.00gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体11の水溶液とした。得られた共重合体11の水溶液の粘度は、25℃で、3.1mPa・sであった。
【0088】
(合成例12)
−共重合体12の合成−
PMA;6.13g、MPC;12.26g、SMA;42.93g、及びエタノール205.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体12の水溶液とした。得られた共重合体12の水溶液の粘度は、25℃で、31.8mPa・sであった。
【0089】
(合成例13)
−共重合体13の合成−
PMA;6.40g、MPC;2.13g、SMA;2.13g、及びエタノール256.00gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体13の水溶液とした。得られた共重合体13の水溶液の粘度は、25℃で、3.6mPa・sであった。
【0090】
(合成例14)
−共重合体14の合成−
PMA;36.80g、MPC;6.13g、BzMA;18.4g、及びエタノール205.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体14の水溶液とした。得られた共重合体14の水溶液の粘度は、25℃で、32.7mPa・sであった。
【0091】
(合成例15)
−共重合体15の合成−
PMA;1.60g、MPC;9.60g、SMA;20.80g、及びエタノール768.00gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;8.00gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体15の水溶液とした。得られた共重合体15の水溶液の粘度は、25℃で、2.6mPa・sであった。
【0092】
(合成例16)
−共重合体16の合成−
PMA;3.06g、MPC;15.33g、BzMA;42.93g、及びエタノール2.5.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体16の水溶液とした。得られた共重合体16の水溶液の粘度は、25℃で、31.2mPa・sであった。
【0093】
(
参考合成例17)
−
参考共重合体17の合成−
PMA;8.53g、MPC;1.06g、SMA;1.06g、及びエタノール256.00gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを
参考共重合体17の水溶液とした。得られた
参考共重合体17の水溶液の粘度は、25℃で、4.7mPa・sであった。
【0094】
(
参考合成例18)
−
参考共重合体18の合成−
PMA;49.06g、MPC;3.06g、BzMA;9.20g、及びエタノール205.33gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを
参考共重合体18の水溶液とした。得られた
参考共重合体18の水溶液粘度は、25℃で、34.7mPa・sであった。
【0095】
(合成例19)
−共重合体19の合成−
PMA;12.00g、MPC;4.00g、BzMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものをジメチルエタノールアミン(DMEA)で中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを共重合体19の水溶液とした。得られた共重合体19の水溶液の粘度は、25℃で、14.2mPa・sであった。
【0096】
(比較合成例1)
−比較共重合体1の合成−
マレイン酸100g、スチレン100g、水500g、及び過硫酸アニモニウム15gを、4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、80〜90℃でAIBN;2gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が100%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを比較共重合体1の水溶液とした。得られた比較共重合体1の水溶液の粘度は、25℃で、13.5mPa・sであった。
【0097】
(比較合成例2)
−比較共重合体2の合成−
比較合成例1におけるマレイン酸、及びスチレンを、PMA、及びスチレンとした以外は、比較共重合体1の合成と同様にして、比較共重合体2の水溶液を得た。得られた比較共重合体2の水溶液の粘度は、25℃で、14.4mPa・sであった。
【0098】
(比較合成例3)
−比較共重合体3の合成−
比較合成例1におけるマレイン酸、及びスチレンを、マレイン酸、及びMPCとした以外は、比較共重合体1の合成と同様にして、比較共重合体3の水溶液を得た。得られた比較共重合体3の水溶液の粘度は、25℃で、14.1mPa・sであった。
【0099】
(比較合成例4)
−比較共重合体4の合成−
PMA;12.00g、MPC;4.00g、SMA;24.00g、及びエタノール226.67gを4つ口フラスコに入れて攪拌し、均一溶液とした。この溶液に30分間窒素を吹き込んだ後、65℃でAIBN;2.67gを加えて5時間以上重合反応させた。重合液をエバポレーターにより脱溶媒した粘調物を水に希釈しながら、10質量%に濃度調整したものを水酸化ナトリウムで中和率が40%になるように中和し、3日間透析膜精製し、精製後10質量%に正確に濃度調整したものを比較共重合体4の水溶液とした。得られた比較共重合体4の水溶液の粘度は、25℃で、8.4mPa・sであった。
【0100】
次に、合成例1〜
16、19、
参考合成例17〜18、及び比較合成例1〜4の共重合体について、表1及び表2に示す。
【0101】
【表1-1】
*EA:モノエタノールアミン
*DMEA:ジメチルエタノールアミン
【表1-2】
【0102】
【表2-1】
【表2-2】
【0103】
(顔料分散体の調製例1)
<顔料分散体1の調製>
下記処方(1)にて、下記カーボンブラック顔料、共重合体、及び純水の混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)で周速10m/sで10分間循環分散して、ブラック顔料分散体を得た。
−処方(1)−
・カーボンブラック顔料(NIPEX150、エボニックデグサ社製、ガスブラック)・・・20質量部
・共重合体1の水溶液(固形分10.0質量%)・・・75質量部
・純水・・・5質量部
【0104】
(顔料分散体2の調製例2)
−顔料分散体2の調製−
顔料分散体の調製例1のカーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体2を得た。
【0105】
(顔料分散体の調製例3)
−顔料分散体3の調製−
顔料分散体の調製例1のカーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体3を得た。
【0106】
(顔料分散体の調製例4)
−顔料分散体4の調製−
顔料分散体の調製例1のカーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体4を得た。
【0107】
(顔料分散体の調製例5)
−顔料分散体5の調製−
顔料分散体の調製例1の共重合体1の水溶液を、共重合体2の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体5を得た。
【0108】
(顔料分散体の調製例6)
−顔料分散体6の調製−
顔料分散体の調製例5のカーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3に代えた以外は、顔料分散体の調製例5と同様にして、顔料分散体6を得た。
【0109】
(顔料分散体の調製例7)
−顔料分散体7の調製−
顔料分散体の調製例5のカーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122に代えた以外は、顔料分散体の調製例5と同様にして、顔料分散体7を得た。
【0110】
(顔料分散体の調製例8)
−顔料分散体8の調製−
顔料分散体の調製例5のカーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74に代えた以外は、顔料分散体の調製例5と同様にして、顔料分散体8を得た。
【0111】
(顔料分散体の調製例9)
−顔料分散体9の調製−
顔料分散体の調製例1の共重合体1の水溶液を、共重合体3の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体9を得た。
【0112】
(顔料分散体の調製例10)
−顔料分散体10の調製−
顔料分散体の調製例1の共重合体1の水溶液を、共重合体4の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体10を得た。
【0113】
(顔料分散体の調製例11)
−顔料分散体11の調製−
顔料分散体の調製例1の共重合体1の水溶液を、共重合体5の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体11を得た。
【0114】
(顔料分散体の調製例12)
−顔料分散体12の調製−
顔料分散体の調製例1の共重合体1の水溶液を、共重合体6の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体12を得た。
【0115】
(顔料分散体の調製例13)
−顔料分散体13の調製−
顔料分散体の調製例12のカーボンブラック顔料を、ピグメントブルー15:3に代えた以外は、顔料分散体の調製例12と同様にして、顔料分散体13を得た。
【0116】
(顔料分散体の調製例14)
−顔料分散体14の調製−
顔料分散体の調製例12のカーボンブラック顔料を、ピグメントレッド122に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体14を得た。
【0117】
(顔料分散体の調製例15)
−顔料分散体15の調製−
顔料分散体の調製例12のカーボンブラック顔料を、ピグメントイエロー74に代えた以外は、顔料分散体の調製例12と同様にして、顔料分散体15を得た。
【0118】
(顔料分散体の調製例16〜
25、及び28)
−顔料分散体16〜
25、及び28の調製−
顔料分散体の調製例1の化合物1の水溶液を、共重合体7〜
16、及び19の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、顔料分散体16〜
25、及び28を得た。
(参考顔料分散体の調製例26〜27)
−参考顔料分散体26〜27の調製−
顔料分散体の調製例1の化合物1の水溶液を、参考共重合体17〜18の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、参考顔料分散体26〜27を得た。
【0119】
(比較調製例1)
−比較顔料分散体1の調製−
顔料分散体の調製例1において、顔料分散体の調製例1の共重合体1の水溶液を、比較共重合体1の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例1と同様にして、比較顔料分散体1を得た。
【0120】
(比較調製例2)
−比較顔料分散体2の調製−
顔料分散体の調製例3において、顔料分散体の調製例3の共重合体1の水溶液を、比較共重合体1の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例3と同様にして、比較顔料分散体2を得た。
【0121】
(比較調製例3)
−比較顔料分散体3の調製−
顔料分散体の調製例4において、顔料分散体の調製例4の共重合体1の水溶液を、比較共重合体1の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例4と同様にして、比較顔料分散体3を得た。
【0122】
(比較調製例4)
−比較顔料分散体4の調製−
顔料分散体の調製例5において、顔料分散体の調製例5の共重合体1の水溶液を、比較共重合体1の水溶液に代えた以外は、顔料分散体の調製例5と同様にして、比較顔料分散体4を得た。
【0123】
(比較調製例5)
−比較顔料分散体5の調製−
比較調製例1の比較共重合体1の水溶液を、比較共重合体2の水溶液に代えた以外は、比較調製例1と同様にして、比較顔料分散体5を得た。
【0124】
(比較調製例6)
−比較顔料分散体6の調製−
比較調製例1の比較共重合体1の水溶液を、比較共重合体3の水溶液に代えた以外は、比較調製例1と同様にして、比較顔料分散体6を得た。
【0125】
(比較調製例7)
−比較顔料分散体7の調製−
比較調製例1の比較共重合体1の水溶液を、比較共重合体4の水溶液に代えた以外は、比較調製例1と同様にして、比較顔料分散体7を得た。
【0126】
(実施例1)
<インクジェット記録用インクの作製>
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクジェット記録用インクを作製した。
・調製例1の顔料分散体1(顔料濃度20質量%)・・・44.4質量部
・1,3−ブタンジオール・・・15質量部
・グリセリン・・・20質量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・1質量部
・2,2−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・1質量部
・ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(FS−300、Dupont社製、成分40質量%)・・・2.5質量部
・純水・・・16.1質量部
【0127】
(実施例2)
−インクジェット記録用インクの作製−
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクジェット記録用インクを作製した。
・顔料分散体の調製例1の顔料分散体1(顔料濃度20質量%)・・・44.4質量部
・1,3−ブタンジオール・・・15質量部
・グリセリン・・・20質量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・1質量部
・2,2−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・1質量部
・ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(FS−300、Dupont社製、成分40質量%)・・・2.5質量部
・アクリル−シリコーン樹脂エマルジョン(昭和高分子株式会社製、ポリゾールROY6312)・・・6質量部
・純水・・・10.1質量部
【0128】
(実施例3)
−インクジェット記録用インクの作製−
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクジェット記録用インクを作製した。
・顔料分散体の調製例2の顔料分散体2(顔料濃度20質量%)・・・33.3質量部
・1,3−ブタンジオール・・・15質量部
・グリセリン・・・20質量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2質量部
・ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(FS−300、Dupont社製、成分40質量%)・・・2.5質量部
・純水・・・27.2質量部
【0129】
(実施例4)
−インクジェット記録用インクの作製−
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクジェット記録用インクを作製した。
・顔料分散体の調製例3の顔料分散体3(顔料濃度20質量%)・・・33.3質量部
・1,3−ブタンジオール・・・15質量部
・グリセリン・・・20質量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2質量部
・ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(FS−300、Dupont社製、成分40質量%)・・・2.5質量部
・純水・・・27.2質量部
【0130】
(実施例5)
−インクジェット記録用インクの作製−
下記処方の材料を30分間混合攪拌し、インクジェット記録用インクを作製した。
・顔料分散体の調製例4の顔料分散体4(顔料濃度20質量%)・・・33.3質量部
・1,3−ブタンジオール・・・15質量部
・グリセリン・・・20質量部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2質量部
・ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル(FS−300、Dupont社製、成分40質量%)・・・2.5質量部
・純水・・・27.2質量部
【0131】
(実施例6〜10)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1〜5において、顔料分散体1〜4を顔料分散体5〜8に代えた以外は、実施例1〜5と同様にして、実施例6〜10のインクジェット記録用インクを得た。
【0132】
(実施例11〜13)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を顔料分散体9〜11に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例11〜13のインクジェット記録用インクを得た。
【0133】
(実施例14〜18)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1〜5において、顔料分散体1〜4を顔料分散体12〜15に代えた以外は、実施例1〜5と同様にして、実施例14〜18のインクジェット記録用インクを得た。
【0134】
(実施例19〜
28及び31)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を顔料分散体16〜
25及び28に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例19〜31のインクジェット記録用インクを得た。
(参考例29〜30)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を参考顔料分散体26〜27に代えた以外は、実施例1と同様にして、参考例29〜30のインクジェット記録用インクを得た。
【0135】
(比較例1)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を比較顔料分散体1に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録用インクを得た。
【0136】
(比較例2)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例3において、顔料分散体1を比較顔料分散体2に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録用インクを得た。
【0137】
(比較例3)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例4において、顔料分散体1を比較顔料分散体3に代えた以外は、実施例4と同様にして、比較例3のインクジェット記録用インクを得た。
【0138】
(比較例4)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例5において、顔料分散体1を比較顔料分散体4に代えた以外は、実施例5と同様にして、比較例4のインクジェット記録用インクを得た。
【0139】
(比較例5)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を比較顔料分散体5に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例5のインクジェット記録用インクを得た。
【0140】
(比較例6)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を比較顔料分散体6に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例6のインクジェット記録用インクを得た。
【0141】
(比較例7)
−インクジェット記録用インクの作製−
実施例1において、顔料分散体1を比較顔料分散体7に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例7のインクジェット記録用インクを得た。
【0142】
次に、表3−1〜表3−
3に実施例の内容、
表3−4に実施例及び参考例の内容、及び表4に比較例の内容をまとめて示す。
【0143】
【表3-1】
【表3-2】
【0144】
【表3-3】
【0145】
【表3-4】
【0146】
【表4】
【0147】
次に、実施例1〜
28、31
、参考例29〜30、及び比較例1〜7の各インクジェット記録用インクについて、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表5及び表6に示した。
【0148】
<画像濃度>
23℃で50%RH環境下、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO GX5000)に作製した各インクを充填し、Microsoft Word2000(Microsoft社製)にて作成した64point文字「■」の記載のあるチャートをMyPaper(株式会社リコー製)に打ち出し、印字面の「■」部をX−Rite938にて測色して、画像濃度を評価した。このとき、印字モードは、プリンタ添付のドライバで普通紙のユーザー設定より「普通紙−標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。なお、各色の画像濃度の判定は、以下の評価基準を基に行った。
〔評価基準〕
◎ :ブラック:1.25以上、
マゼンタ:1.00以上、
シアン:1.00以上、又は、
イエロー:0.85以上
○ :ブラック:1.2以上、
マゼンタ:0.95以上、
シアン :0.95以上、又は、
イエロー:0.8以上
○△ :ブラック:1.15以上、
マゼンタ:0.9以上、
シアン :0.9以上、又は、
イエロー:0.75以上
△ :ブラック:1.10以上、
マゼンタ:0.85以上、
シアン :0.85以上、又は、
イエロー:0.7以上
× :ブラック:1.10未満、
マゼンタ:0.85未満、
シアン :0.85未満、又は、
イエロー:0.70未満
【0149】
<インク保存安定性>
各インクジェット記録用インクをインクカートリッジに充填して60℃で2週間保存し、保存前の粘度に対する保存後の粘度の変化率を下記基準により評価した。なお、インクの粘度は、東機産業株式会社製の粘度計RE80Lを使用し、25℃で測定した。
[評価基準]
◎:粘度の変化率が±3%未満
○:粘度の変化率が±3%以上±6%未満
○△:粘度の変化率が±6%以上±10%未満
△:粘度の変化率が±10%以上±20%未満
×:粘度の変化率が20%以上
【0150】
<インク吐出安定性>
吐出安定性については、印刷物を印刷した後、記録ヘッドにキャップした状態でインクジェットプリンターを50℃の環境下で1ヶ月放置した。放置後のプリンタの吐出状態が初期の吐出状態に回復するか否かを下記のクリーニング動作回数によって、下記評価基準に従い評価した。
[評価基準]
◎ :クリーニング無しで印刷できた。
○ :1〜3回の動作により回復した。
○△ :4〜5回の動作により回復した。
△ :6〜10回の動作により回復した。
× :10回以上の動作によっても回復がみられなかった。
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
表5及び表6の結果から、前記一般式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位と、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位とを含むリン酸基を含む共重合体を含有する本発明のインクジェット記録用インクは、いずれも、画像濃度、インクの保存安定性及び吐出安定性に優れており、実用において問題となる特性は見られなかった。
実施例1〜
28、31
、及び参考例29〜30と比較例1〜7との比較から、本発明のインクジェット記録用インクは、画像濃度が高く、インクの保存安定性及び吐出安定性が同等以上であることがわかった。
更に、実施例同士の比較から以下のことがわかった。
実施例1〜5と6〜10の比較から、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位であっても同様の効果が認められた。
実施例1、11と比較例7の比較から、前記一般式(1)で表される構造単位の中和塩による中和率が50%以上で効果が得られることがわかった。
実施例1と12との比較から、前記一般式(2)及び前記一般式(3)で表される構造単位のR
2及びR
3が、メチル基及び水素原子のいずれであっても同様の効果が得られることがわかった。
実施例1と13との比較から、前記一般式(1)で表される構造単位の中和塩の種類によらず同様の効果が得られることがわかった。
実施例1〜5と14〜18の比較から、前記一般式(1)で表される構造単位のR
1が、メチル基及び水素原子のいずれであっても同様の効果があることがわかった。
実施例19〜22により、前記一般式(1)で表される構造単位と、前記一般式(2)で表される構造単位と、前記一般式(3)及び前記一般式(4)のいずれかで表される構造単位との比率を変えても同様の効果があることがわかった。
実施例1〜22、31と23〜26との比較から、リン酸基を含む共重合体の10質量%水溶液の粘度が4.0mPa・s〜30.0mPa・sであると、画像濃度、インクの保存安定性及び吐出安定性のいずれにおいても優れていることがわかった。
実施例23〜26と
実施例27〜
28、参考例29〜30との比較から、前記一般式(1)で表される構造単位の比率が、10質量%〜60質量%であると、画像濃度、インクの保存安定性及び吐出安定性のいずれにおいても優れていることがわかった。
実施例1〜5、6〜10、及び14〜18から、顔料の色によらず効果があることがわかった。
実施例1と2、6と7、14と15から、インクの処方によらず効果があることがわかった。
【0154】
以上の結果から、本発明のインクジェット記録用インクは、普通紙に含まれる多価金属イオン(特にカルシウムイオン)との反応による凝集効果により、各色インクで、画像濃度が明らかに優れ、インクの保存安定性及び吐出安定性について同等以上であることがわかった。即ち、本発明のインクジェット記録用インクは、インクの保存安定性が良好で、しかも乾燥性が良好であり普通紙や印刷用塗工紙で高い画像濃度が得られ、記録ヘッドからのインクの吐出安定性が良好で、かつノズル周辺にインク固着がないため、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができる。また、本発明のインク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用できる。インクジェット記録方式による記録装置としては、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などが適用できる。
【0155】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 水と、水溶性溶剤と、顔料と、リン酸基を含む共重合体とを含有してなり、
前記リン酸基を含む共重合体が、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位と、下記一般式(3)及び下記一般式(4)のいずれかで表される構造単位とを、少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録用インクである。
【化13】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。M
+は、アルカリ金属イオン、有機アミンイオン及び水素イオンのいずれかを表し、前記共重合体におけるM
+の半数以上がアルカリ金属イオン及び有機アミンイオンのいずれかであり、残りは水素イオンである。
【化14】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化15】
ただし、前記一般式(3)中、R
3は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化16】
ただし、前記一般式(4)中、R
4は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
<2> 前記リン酸基を含む共重合体における一般式(1)で表される構造単位の含有率が10質量%〜60質量%である前記<1>に記載のインクジェット記録用インクである。
<3> 前記リン酸基を含む共重合体の固形分10質量%の水溶液の粘度が、25℃で、2.5mPa・s〜35.0mPa・sである前記<1>から<2>のいずれかに記載のインクジェット記録用インクである。
<4> 前記リン酸基を含む共重合体が、下記一般式(5)で表されるモノマーと、下記一般式(6)で表されるモノマーと、下記一般式(7)及び下記一般式(8)のいずれかで表されるモノマーと、を重合させてなる前記<1>から<3>のいずれかに記載のインクジェット記録用インクである。
【化17】
ただし、前記一般式(5)中、R
5は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化18】
ただし、前記一般式(6)中、R
6は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化19】
ただし、前記一般式(7)中、R
7は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
【化20】
ただし、前記一般式(8)中、R
8は、水素原子及びメチル基のいずれかを表す。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用インクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジである。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに刺激を印加し、前記インクジェット記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法である。
<7> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用インクに刺激を印加し、前記インクジェット記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
<8> 記録媒体上に、前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用インクにより記録された画像を有してなることを特徴とするインク記録物である。