【実施例】
【0016】
(実施例1)
上記内燃機関用のスパークプラグの製造方法にかかる実施例につき、
図1〜
図6を用いて説明する。
本例の製造方法によって得られるスパークプラグ1は、
図1に示すごとく、互いの間に火花放電ギャップ11を形成して対向配置された中心電極2と接地電極3とが、火花放電ギャップ11に向かって突出するように電極母材20、30に接合された放電チップ4、5をそれぞれ備えている。
【0017】
本例においては、接地電極3における放電チップ5が、火花放電ギャップ11側に配された放電部51と、放電部51よりも融点の低い材料からなると共に電極母材30と接合される母材接合部52とを、互いに接合してなる。一方、中心電極2における放電チップ4は、複合部材ではない。
【0018】
本例のスパークプラグ1の製造方法は、以下に示す、チップ作製工程と、仮接合工程と、本接合工程とを有する。すなわち、以下の工程を経ることにより、電極母材30に放電チップ5を接合してなる接地電極3を形成する。
チップ作製工程においては、
図2に示すごとく、放電部51と母材接合部52とを互いに接合して、放電チップ5を作製する。仮接合工程においては、抵抗溶接によって、
図3に示すごとく、放電チップ5を母材接合部52において電極母材30に仮接合する。本接合工程においては、レーザ溶接によって、
図4に示すごとく、母材接合部52の一部と電極母材30の一部とを溶融し、凝固させることにより、放電部51の側面511と電極母材30の表面とが滑らかに繋がるようにしつつ放電チップ5を電極母材30に接合する。
【0019】
図1に示すごとく、接地電極3の電極母材30は、スパークプラグ1のハウジング12の先端から先端側へ延びると共に中心軸側へ屈曲している。中心電極2の電極母材20は、ハウジング12の内側に保持された絶縁碍子13の内側に保持されている。ハウジング12及び接地電極3の電極母材30は、いずれもニッケル合金からなる。また、中心電極2の電極母材20もニッケル合金からなる。
【0020】
そして、接地電極3の電極母材30は、スパークプラグ1の軸方向(以下において、適宜「プラグ軸方向」という。)において中心電極2と対向する対向面31を備え、該対向面31に、放電チップ5が接合されている。また、プラグ軸方向において対向面31に対向する、中心電極2の電極母材20の先端に、放電チップ4が接合されている。本例において、中心電極2の放電チップ4は、複合部材ではなく、例えば、イリジウム合金等の貴金属チップからなる。すなわち、貴金属からなる放電チップ4が、中心電極2の電極母材20の先端に溶接等によって接合されている。
【0021】
一方、接地電極3の放電チップ5は、上述のごとく、放電部51と母材接合部52とを互いに接合した複合部材からなる。この複合部材からなる放電チップ5を備えた接地電極3を形成するにあたって、上記のチップ作製工程と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。各工程の一例につき、以下に具体的に説明する。
【0022】
チップ作製工程においては、まず、比較的高融点(例えば、融点1700℃以上)の材料からなる放電部51と、放電部51よりも低融点の材料からなる母材接合部52を用意する。放電部51の材料としては、例えば、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)等を用いることができる。また、母材接合部52としては、例えばNi(ニッケル)合金を用いることができる。なお、このNi合金としては、例えば、融点1400〜1450℃のものを用いることができる。
【0023】
これらの金属部材を打ち抜き加工等することによって、それぞれ、円柱形状の放電部51及び母材接合部52とする。そして、母材接合部52の直径は、放電部51の直径よりも大きい。
このように形成された円柱形状の放電部51と母材接合部52とを、
図2に示すごとく、両者の中心軸を一致させつつ軸方向に重ね合わせる。そして、両者を互いに押圧した状態で、熱処理を行い、放電部51と母材接合部52とを拡散接合によって接合する。これにより、複合部材(クラッド材)としての放電チップ5を得る。それゆえ、放電チップ5における放電部51と母材接合部52との界面付近には、放電部51と母材接合部52のそれぞれ材料の原子が互いに相手側に拡散した拡散層(図示略)が形成されている。
【0024】
上記チップ作製工程において得られる放電チップ5は、母材接合部52の直径が放電部の直径よりも大きい。それゆえ、この段階においては、母材接合部52と放電部51との間には、段差が形成されており、この段差部分に母材接合部52の角部521がエッジ状に突出して現れている。
【0025】
チップ作製工程において得られた放電チップ5を、仮接合工程において、
図3に示すごとく、電極母材30の対向面31に仮接合する。仮接合は、抵抗溶接によって行う。すなわち、電極母材30の対向面31における所定の位置に、放電チップ5を母材接合部52側の面において当接させる。そして、放電チップ5を、抵抗溶接の電極によって、電極母材30との間で挟持しつつ、放電チップ5と電極母材30との間に電流を流す。これにより、ジュール熱によって放電チップ5を電極母材30に溶接して、仮接合する。
【0026】
次いで、本接合工程において、レーザ溶接によって、
図4に示すごとく、放電チップ5を電極母材30に接合する。すなわち、
図5に示すごとく、電極母材30に仮接合された放電チップ5に対して、その接合部の周囲から、レーザ光Lを照射する。ここで、レーザ光Lは、電極母材30に対する接合部の全周にわたる複数箇所から照射する。また、放電部51の融点よりも低い温度にてレーザ溶接を行う。すなわち、本接合工程においては、放電部51を溶融させず、母材接合部52の一部と電極母材30の一部とを溶融させる。これにより、
図6に示すごとく、母材接合部52の外周部に、母材接合部52と電極母材30とが溶け合って凝固した溶融部522が環状に形成される。
【0027】
また、このレーザ溶接によって、母材接合部52の角部521(
図3、
図5)が、
図4、
図6に示すごとく、形状的に除去されて、放電部51の側面511と電極母材30の表面(対向面31)とを滑らかにつなぐような傾斜面523が形成される。この傾斜面523は、放電チップ5の中心軸を通る平面による断面の形状が、曲線と直線とを滑らかに繋ぐような形状となっていると共に、放電部51の側面511と電極母材30の対向面31とも滑らかに繋がっている。
【0028】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記本接合工程においては、レーザ溶接によって、母材接合部52の一部と電極母材30の一部とを溶融し、凝固させることにより、放電チップ5を電極母材30に接合する。これにより、放電部51の側面511と電極母材30の対向面31とが滑らかに繋がるような状態で、放電チップ5を電極母材30に接合する。それゆえ、得られるスパークプラグ1において、放電チップ5の側部に母材接合部52の角部521(
図3)が現れることもなく、電界強度が局部的に高くなる部位が母材接合部52に形成されることを防ぐことができる。その結果、母材接合部52への飛び火を抑制することができる。
【0029】
また、上記のように、レーザ溶接によって、母材接合部52の一部と電極母材30の一部とを溶融し、凝固させることにより、放電チップ5を電極母材30に接合するため、特に母材接合部52の外形を、
図4に示すごとく、放電部51の側面511と電極母材30の対向面31とに沿うような形状にしやすい。それゆえ、容易に、放電部51の側面511と電極母材30の対向面31とが滑らかに繋がるようにしつつ放電チップ5を電極母材30に接合することができる。
【0030】
また、チップ作製工程において得られる放電チップ5(
図2)は、母材接合部52の直径が放電部51の直径よりも大きい。これにより、放電部51と母材接合部52との接合を安定して行いやすい。すなわち、放電部51の端面の全面を母材接合部52に容易に当接させることができるため、母材接合部51に対する接合面積を一定とすることが容易となり、接合強度を安定して得ることができる。ところが、母材接合部52の直径が放電部51の直径よりも大きい場合、両者の間には段差が生じ、母材接合部52の角部521が現れることとなる。この角部521が現れたままの状態で放電チップ5が電極母材30に接合されると、スパークプラグ1の放電火花が母材接合部52に飛び火しやすくなる。そこで、上述のごとく、本接合工程において、放電部51の側面511と電極母材30の対向面31とが滑らかに繋がるようにしつつ放電チップ5を電極母材30に接合することにより、
図4に示すごとく、母材接合部52の角部521を取ることができる。これにより、放電チップ5の側面を放電部51の側面511から電極母材30の表面(対向面31)にかけて、角部521等の突起のない滑らかな形状でつなぐことができる。その結果、母材接合部52への飛び火を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、本接合工程においては、放電部51の融点よりも低い温度にてレーザ溶接を行う。これにより、高融点材料からなる放電部51の体積及び形状を、充分に確保して、スパークプラグ1の耐消耗性を確保することができる。
【0032】
以上のごとく、本例によれば、母材接合部への飛び火を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグの製造方法を提供することができる。
【0033】
(実施例2)
本例は、
図7〜
図9に示すごとく、中心電極2の放電チップ4も、火花放電ギャップ11側に配された放電部41と、放電部41よりも融点の低い材料からなると共に電極母材20と接合される母材接合部42とを、互いに接合してなる複合材によって構成した例である。
【0034】
そして、中心電極2を形成する際にも、実施例1において説明した、チップ作製工程と、仮接合工程と、本接合工程とを行う。
チップ作製工程は、実施例1のチップ作製工程と同様に、放電部41と母材接合部42とを拡散接合して、放電チップ4を得る。次いで、仮接合工程において、放電チップ4を、
図8に示すごとく、中心電極2の電極母材20の先端面21に、抵抗溶接によって仮接合する。すなわち、放電チップ4を接合する前の中心電極2の電極母材20の先端部分は、略円錐形状となっていると共にその先端が軸方向に直交する平坦面を有する。この平坦面である先端面21に、母材接合部42側を当接させるようにして放電チップ4を仮接合する。
【0035】
次いで、本接合工程において、レーザ溶接によって、放電チップ4を電極母材20に接合する。このとき、放電チップ4の母材接合部42と電極母材20との溶融部422が環状に形成される。そして、母材接合部42の角部421(
図8)が、
図9に示すごとく、形状的に除去されて、放電部41の側面411と電極母材20の表面(略円錐状部分の側面22)とを滑らかにつなぐような傾斜面423が形成される。この傾斜面423は、放電チップ5の中心軸を通る平面による断面の形状が、曲線と直線とを滑らかに繋ぐと共に、放電部41の側面411と電極母材20の表面(側面22)とも滑らかに繋ぐような形状となっている。
【0036】
その他は、実施例1と同様である。なお、本例又は本例に関する図面において用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0037】
本例の場合には、中心電極2側においても、放電火花が電極母材42へ飛び火することを抑制することができる。その結果、中心電極2と接地電極3との放電部41、51同士の間において、より確実に正常な放電火花を生じさせることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0038】
なお、上記実施例以外にも、例えば、中心電極を実施例2と同様の構成としつつ、接地電極の放電チップを複合材ではない金属チップによって構成したり、接地電極に放電チップを設けない構成とたりすることもできる。